3月, 2023 | 平和フォーラム

2023年03月31日

憲法審査会レポート No.12

2023年3月30日(木) 第211回国会(常会) 第5回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54481
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【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230330005.htm

【マスコミ報道から】

自民、緊急事態認定に司法関与も 衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023033000865&g=pol
“自民党の新藤義孝氏は、緊急事態認定の手続きに関し、「一義的に政治が行うものだが、裁判所の関与を一切否定するものではない」と指摘した。司法の関与について、自民、公明両党はこれまで慎重姿勢を示し、日本維新の会、国民民主党が必要と主張してきた。”

立民、議員の任期延長議論を容認 緊急集会明確化で憲法審
https://nordot.app/1014113337286262784
“立憲民主党は30日の衆院憲法審査会で、緊急事態時の国会議員任期延長について、参院の緊急集会では対応できないと明確になれば議論すべきだと表明した。憲法学者の見解を踏まえた検討が必要だとして、参考人質疑を要求。武力攻撃や大災害時に、内閣に権限を集中させる「緊急事態条項」の概念そのものは、不要とも強調した。”

公正な運営に尽力 中山太郎氏をしのぶ声相次ぐ 衆院憲法審査会
https://mainichi.jp/articles/20230330/k00/00m/010/216000c
“立憲民主党の枝野幸男氏は現状の憲法審について「強引かつ独善的な議論と運営が拡大し、合意形成の機運がますます乏しくなっている」と指摘。「中山氏の懐深い人柄があったから建設的な議論が進んだ。合意形成可能な論点と方向性はどこにあるのか、もう一度考えるべきだ」と述べ、性急な改憲論議をけん制した。”

小西氏サル発言に反発続出 立民「本人に確認し対処」
https://nordot.app/1013994603433754624
“日本維新の会の三木圭恵氏は「衆院憲法審に対する侮辱だ。憲法審として謝罪を求めるべきだ」と非難。国民民主党の玉木雄一郎氏も「与野党合意で真摯な議論を重ねてきた衆院憲法審への冒涜だ。発言の撤回と謝罪を求めたい」とした。幹事会でも「断じて許されない」と抗議の声が出た。対応は森英介会長に一任された。”

衆院憲法審査会・発言の要旨(2023年3月30日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/241171

“緊急事態の任期延長”憲法改正の条文案まとめる 維新、国民など2党1会派
https://news.ntv.co.jp/category/politics/4757e3400b604da5a83324df1e075363
“日本維新の会と国民民主党、野党系無所属議員の会派「有志の会」の2党1会派は、緊急事態における国会議員の任期延長について憲法改正の条文案をまとめました。”
“2党1会派は今回の改正案をたたき台として、憲法審査会で各党が合意できる条文作成につなげたい考えです。”

【傍聴者の感想】

今回初めての傍聴でしたが、いま行われている憲法審査会がどういうものなのか、知ることができてよかったと思います。

複数の委員が逝去された中山太郎・元自民党衆院議員への哀悼の意を表していました。立憲民主党の枝野幸男・衆院議員はとくに2007年の憲法改正国民投票法成立に触れ、中山元議員がそれまで積み重ねてきた合意形成の努力を与党がないがしろにしたことにより強行採決となったことを述べていました。

立憲民主党の小西洋之・参院議員の発言に対して謝罪を求める場面は、悪い意味でとても「愉快」でした。この話になった途端に「おさるさん、おさるさん」と連呼し、委員の間で笑いがおきていましたが、憲法審査会というのは面白おかしく話せば、それでいいのでしょうか? 私は、ここまで早く時間がすぎてくれないかと願ったのは初めてです。

憲法審査会をよく知っている人たちから「今回は一番ひどいかもしれない」と聞きました。真剣さに欠ける方々がいる中での憲法審査会など、何の意味があるのでしょうか? 私は、それが疑問で仕方ありません。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

「真剣さに欠ける」憲法を論じる姿勢

上記の傍聴者の感想では、「憲法審査会というのは面白おかしく話せば、それでいいのでしょうか? 」、「真剣さに欠ける方々がいる中での憲法審査会など、何の意味があるのでしょうか? 私は、それが疑問で仕方ありません。」と記されています。全く同感です。
憲法は国の最高法規であり、その改正は日本の市民の平和や幸福に大きな影響を及ぼします。にもかかわらず、憲法審査会を傍聴した市民からこうした感想を持たれる状況で憲法改正など議論すべきでしょうか?

憲法審査会は約1時間半程度の時間ですが、3月30日の憲法審査会の開催中、喫煙室でタバコを吸っている自民党議員がいました。1時間半の会議を中座して喫煙するのが憲法の議論をする姿勢でしょうか?

この審査会では小西議員の発言が批判されました。確かに「猿」はよくない表現だと思います。

ただ、日本維新の会の小野泰輔議員も「お猿さんに対しても失礼だと思うんですね。お猿さんは、我々人間のように堂々巡りの議論はしません」と発言していました。この発言も、憲法審査会に出席している議員を「猿」以下と発言したに等しい発言です。こうしたレベルの主張がなされる場で憲法改正などを議論すべきでしょうか?

そして折に触れて言及しますが、憲法審査会での憲法論議、あまりにも憲法や歴史、他国の政治の動向などの知識が欠けていることには唖然とします。こうした点でも憲法審査会での改憲論議は問題だらけです。

【国会議員から】枝野幸男さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会委員)

本院において、初代憲法調査会長を務めて以来、長きにわたって憲法議論の中心を担われた中山太郎先生が御逝去されました。哀悼痛惜の念に堪えません。

私は、中山調査会長、調査特別委員長の下で、会長代理、野党筆頭理事を務めました。熱心に海外調査が行われた時代で、毎年のように一週間を超える海外調査に御一緒するなど、院外も含め、党派を超えて温かい御指導をいただきました。

中山先生が中心を担われていた時代は、意見の違いはあっても、建設的な議論が進められました。調査会の最終報告書は、全会一致にこそならなかったものの、その文言の一つ一つを、議決には反対した会派も含めて、全ての会派で丁寧に協議し、客観的で中立的な報告書として取りまとめることができました。だからこそ、その報告書に基づいて、難しいとされてきた特別委員会の設置と国民投票法制定に向けた議論をスムーズに進めることができたのです。

私はあの当時、このままの議論を進めていけば、十年程度のうちに初めての憲法改正国民投票に至るのではないかと、ある意味で期待していました。

残念ながら、二〇〇七年、国民投票法採決に至る経緯で中山会長が十年近く積み重ねてこられた合意形成の努力が壊され、いわゆる強行採決となりました。中山委員長を先頭とした委員会の現場とは別のところで、当時の官邸を始めとする与野党の政治的駆け引きに巻き込まれてしまったものです。

私は、一日も早く国民投票法採決の傷を癒やし、中山方式とも呼ばれた建設的な議論が回復することを望んできました。しかし、残念ながら、今日に至るまで、むしろ強引かつ独善的な議論と運営が拡大し、合意形成の機運がますます乏しくなっていると言わざるを得ません。
中山方式とは、現状のように、ただ形式的に、あるいは国会対策的に野党を巻き込もうとしたものではありません。そのような考えでは、憲法について、よい方向に変わるなら変えるべきという立場の私はともかく、現行憲法では変えるべきではないという立場が明確な政党を含めて、全ての政党の担当者が中山会長を信頼し、立場を超えて建設的に議論するなどという状況はつくれるはずがありませんでした。
中山先生には憲法と立憲主義に対する謙虚で深い御認識がありました。憲法は与野党などの政治的立場を超えて権力を拘束するものであり、主要政党間の対立点にしてはならないということです。

どの勢力が多数派となろうと、従うべき規範が憲法である以上、違いを強調するのではなく、一致点を探して、その一致点から議論を進めるという認識が共有されていました。

憲法制定権力である主権者国民に対する謙虚な姿勢でも一致していました。衆参両院で三分の二を構成できたとしても、そこに至る経緯で国民を巻き込んだ十分な合意形成がなされていなければ、国民投票で否決されるおそれがある。このことを中山先生は十分過ぎるくらい御理解されていました。そして、特に初めての国民投票で否決される事態とならば、憲法をめぐる議論が更に混乱し、我が国の民主主義に救い難い傷となることを恐れていました。

このような中山先生の御認識と、困難な時期に外務大臣を経験されるなど、幅広い御経験に基づいた懐深いお人柄があったからこそ、建設的な議論が進んだのです。私にとっても、中山先生に御指導、御厚情賜ったことで、党派、意見の違いを超えた得難い貴重なものを幾つも学ばせていただくことができました。御逝去の報に接し、この場をかりて改めて敬意を表しますとともに、心から御礼申し上げます。
昨今の憲法審査会の状況を見るに、中山先生の時代には遠く及ばないにしても、あの当時とは似ても似つかぬ状況で、私個人としては、建設的な合意形成について、悲観的を超えて、絶望しています。真摯に憲法を考えられるなら、中山先生の爪のあかでも煎じて飲まれたらよいのではないでしょうか。

今後の議論に向けて、中山先生に学んで、具体的に一点だけ提起いたします。

各党各会派がそれぞれに改憲案を提起し、主張をぶつけ合うというのは、真に国民を巻き込んだ幅広い合意形成をする上で超え難い障害になるということです。もちろん、民主政治の基本は、各党派間で主張をぶつけ合い、競い合うことにあります。しかし、選挙などで競い合うことが避け得ない中、合意形成が重要なはずの憲法において、そして憲法が重要であればあるほど、一つの政治勢力が自分たちの主張を強く示せば、他の政治勢力との妥協が困難になります。どの党の提案が出発点になり、どの党の主張で修正されたなどという国会対策的なプロセスが注目されれば、真の合意形成に向け、超え難い障害となります。

ですから、どこかの党派の案をベースに議論するのではなく、議論の方向性を一致できそうなテーマは何なのかという点から全ての会派間で真摯に議論し、その合意に基づいて会派間で段階的に方向性を確認しながら順次具体化していく。条文案などというものは、このようなプロセスで内容的な合意形成がなされた上で初めて審査会全体で作業をすべきもの、これが憲法調査会から調査特別委員会に至る中で中山会長を中心に考えられていた合意形成プロセスです。

議論を進めることについて一致できそうなテーマは何か、そして方向性について合意できそうなテーマは何か、このことは既に示されています。

それは中山調査会の調査報告書です。あらゆる論点について、思いつきのような議論ではなく、幅広い各国の状況や歴史的経緯なども含めて調査し、議論した上でまとめられました。充実した内容である上に、その時点における合意形成の見通しについても示されています。繰り返しますが、この報告書は、議決に賛成した会派にとどまらず、議決には反対した会派の代表も含めて文言を整理しており、その記載事項については全会派が事実上一致していたと言えます。

報告書から二十年近くが経過して、本院を構成する党派にも変化があり、議員の構成も変わりました。憲法についての新たな議論もあります。そのままで全て通用すると言うつもりはありません。

しかし、幅広い、真の合意形成に向けて建設的な議論を進めるのであれば、少なくとも、そのスタートラインはここにあることは間違いありません。

この機会に、中山先生の最大の御業績の一つとも言える衆議院憲法調査会の報告書を全ての皆さんに再度、まさか、二度や三度は読んでおられると思いますが、再度御熟読いただき、ここをスタートラインに、合意形成可能な論点と方向性はどこにあるのか、もう一度考えていただくことを強く望んで、発言といたします。

(憲法審査会での発言から)

【国会議員から】奥野総一郎さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

立憲民主党憲法調査会事務局長の奥野総一郎です。3月30日の憲法審査会発言の概要ですが、「論憲」の立場から幅広く議論をすることを呼びかけました。

憲法は、「徹底した国会中心主義」を採用し、いわゆる「緊急事態条項」を設けていません。つまり、いかなる場合でも立法機能・行政監視機能等国会機能の維持を大前提としています。緊急時には迅速な臨時会召集、衆議院が解散中の場合「参議院緊急集会」による対応を想定しています。また、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症それぞれにつき基本法制があり、濫用の恐れなく緊急事態等の認定が行われる仕組みができています。「緊急事態条項」概念を憲法に持ち込む必要はありません。

したがって緊急政令・緊急財産処分を憲法に規定する必要もありません。ただいま公明党の吉田委員も同趣旨のご発言をされたと理解しております。

我々は、いわゆる「緊急事態条項」は不要と考えますが、これまでも申し上げてきた通り「選挙困難事態」への対応については議論が必要と考えています。有事の際など日本全土で選挙が長期間にわたって行えないような「選挙困難事態」が起きた場合どう対処するか、について憲法に明示されていないからです。

緊急集会についての論点は、
任期満了時に招集可能かどうか。
あくまで暫定的・一時的な制度ではないか

これに関連して臨時会などと同様のフルサイズの機能を有さないのではないか。玉木委員が指摘されているように本予算審議が可能かどうか。これらの点について、参考人質疑を求めます。森会長にお取り計らいを願います。合わせて先日提案したように、参議院と合同での議論も必要です。

解釈や国会法等の改正で対応できないということが明確になれば、我々も「議員任期の延長」を議論すべきと考えます。
「議員任期の延長」を考える場合、その要件として「選挙困難事態」を定義する必要があります。どのような場合が該当するか、慎重な議論が必要です。

客観的な要件を定めるとともに、認定には憲法裁判所等司法の関与が必要であると考えます。「選挙困難事態」の認定が議員任期延長の要件とすると、これを全て内閣に委ねることは濫用の虞があり、国会に全て委ねるとお手盛りになる恐れがあるためです。
先週北側幹事は「憲法裁判所については、大きな憲法上の課題で多くの論点がある」とおっしゃられましたが、大きな憲法上の課題であるからこそ、この場での議論にふさわしいと考えます。

私はより広く憲法判断ができる欧州型の「憲法裁判所」を創設することが三権分立の観点からも「立憲主義」にかなうと考えます。
憲法裁判所について憲法審査会での集中討議を求めます。

参議院憲法審査会をめぐる動向について

【マスコミ報道から】

参院憲法審、来月5日初開催
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023032901064&g=pol
“参院憲法審査会は29日の幹事懇談会で、今国会初の審査会を4月5日に開くことで合意した。”

参院憲法審査会4月5日に開催 今国会初
https://www.sankei.com/article/20230329-SKLKZLEX2NK4ZDO3LNM6KE4U2M/
“テーマは、衆院解散中に緊急の必要がある場合に内閣が求めることができる「参院の緊急集会」とし、内閣法制局から論点説明を受け、意見交換などを行う。”
“幹事懇では今後、隣接県を一つの選挙区にする「合区」についても議論していくことも確認した。”

参院憲法審査会 小西筆頭幹事を更迭へ 立民 泉代表
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230331/k10014025411000.html
“立憲民主党で参議院憲法審査会の筆頭幹事の小西洋之議員が「審査会の毎週開催はサルがやることで、蛮族の行為だ」と発言したことについて、泉代表は党として謝罪し、筆頭幹事を更迭すると明らかにしました。”

 

2023年03月31日

環境影響をも無視して強行された陸自石垣駐屯地開設 ―住民への説明はミサイルの搬入後に

木元茂夫

環境影響をも無視した石垣駐屯地の開設

 台湾有事を口実とした南西諸島への自衛隊配備が、環境影響をも無視して、強引に強行されている。その一つとして石垣島に配備された陸自石垣駐屯地の最新の動きを報告する。

 駐屯地の工事がはじまったのは2019年3月だった。同年4月に沖縄県環境アセスメント条例が改正施行され、適用事案が50ヘクタール以上から、20ヘクタール以上に引き下げられるのを見て、それを回避するための強引な着工だった。与那国駐屯地も、宮古島駐屯地も環境アセスメントは行われないままに工事が行われ、駐屯地が完成してしまった。環境への影響、住民への影響を、慎重に検討し自然破壊を回避することよりも、駐屯地の早期完成を優先させたのだ。

 防衛省・沖縄防衛局のこのやり方は、沖縄に対するあからさまな差別というしかない。2023年3月5日から陸自車両の搬入が行われ、16日に編成完結式を強行。しかし、小銃射撃場もグラウンドも完成しておらず、4棟を予定していた火薬庫も3棟の完成にとどまっての見切り発車である。残り1棟は23年度に着工するということだ。

 3月16日までに570名の陸自隊員が配備された。これらは、新たに編成された八重山警備隊、北熊本の健軍駐屯地からやって来た第303地対艦ミサイル中隊(地上から海上の艦艇に向けて発射するミサイル「12式地対艦誘導弾」を装備。もともとは射程約120km、改善型が約200km、能力向上型は1000km以上と報道されている)、長崎県大村の竹松駐屯地からやってきた第348高射中隊(地上から航空機やミサイルに向けて発射する「03式中距離地対空誘導弾」を装備、射程距離は約60km)、駐屯地業務隊などで構成される。駐屯地の面積は約47haである。2016年に与那国駐屯地が開設され沿岸警備隊等を配備(約170名)、2019年に奄美駐屯地/瀬戸内分屯地(合計で約610名)と宮古島駐屯地(約700名)が開設され石垣島と同じ地対艦、地対空ミサイル部隊が配備された。隊員の人数は3月22日の住民説明会で沖縄防衛局が配布した資料によるもので、2023年度末のものとしている。

 「12式地対艦誘導弾」は26年度をめどに「能力向上型」が配備され、射程距離が1000km以上となる。各島の「住民説明会」の時点ではそうした説明はなく、防衛省は「配備先は決まっていない」としているが、住民の不安と不満が渦巻いている。

 昨年12月19日、石垣市議会は、内閣総理大臣、内閣官房長官、防衛大臣、沖縄防衛局に宛てた下記の意見書を賛成多数で採択している。

 「16 日には安保関連3文書を閣議決定され、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有の明記がなされた。 これらの装備や法整備が進むことで、他国の領土を直接攻撃することが可能となり、近隣諸外国を必要以上に刺激するおそれがあり、有識者からも慎重な議論を求める声があがり、憲法違反の可能性も指摘されている。 国境の島ともいわれる、石垣島の現場で日々生活するなかで自衛隊の配備にはこれまで賛否 の意見があったが、防衛省主催の住民説明会では、配備される誘導弾(ミサイル)は、他国領土を攻撃するものではなく迎撃用であくまでも専守防衛のための配備という説明であり、それを前提に議論が行われてきた。 ここにきて突然、市民への説明がないまま、他国の領土を直接攻撃するミサイル配備の動きに、市民の間で動揺が広がっており、今まで以上の緊張感を作りだし危機を呼び込むのではないかと心配の声は尽きない。 石垣市議会は、「平和発信の島」、「平和を希求する島」との決意のもと議会活動しており、自ら戦争状態を引き起こすような反撃能力をもつ長射程ミサイルを石垣島に配備することを到底容認することはできない」(注1)

 当初の説明とは異なる長距離攻撃兵器の配備の可能性が高まった中での、石垣駐屯地の開設だった。

石垣駐屯地開設前後の動き

 駐屯地開設前後の石垣島の動きを、日付を追って整理してみる。

3月05日 陸上自衛隊の、12式地対艦ミサイルの発射機搭載車両を含む約150台の車両を石垣駐屯地に搬入。
3月16日 編成完結式。井戸川一友第15旅団長(当時)と井上雄一郎駐屯地司令が市役所に中山市長を訪問。
 市長は「自衛隊の重要な拠点として島に入っていただいた。ぜひ住民の皆さんと融和を図りながらしっかりと部隊運営をしてほしい。行政も連携していきたい」と歓迎の挨拶。また、「石垣島は最後になったが、これで奄美大島以南の南西諸島の防衛の形が整った。自衛隊が任務を果たす上でも、やはり住民との協調、相互理解が必要だと思う。オープンにできるところはオープンにして互いの信頼関係を深めてもらいたい」と語った。
 玉城デニー沖縄県知事は石垣駐屯地の開設について、「本来なら開設前に住民に十分説明するのが筋だ。住民にはいろいろな意見がある。住民の不安を払拭する意味と、説明責任において、政府はさらにていねいな説明をしてほしい」「県が必要な協議を求めた場合、しっかりと応じてほしいということも重ねて要請したい」と出張先の長野県で記者団に向け、こう発言した。(「沖縄タイムス」2023年3月17日付)
3月18日 大型揚陸艦「おおすみ」(呉基地配備)石垣港入港、ミサイル陸揚げ、駐屯地へ搬入。コンテナ18個。
3月22日 石垣駐屯地開設説明会は、石垣市、沖縄防衛局、石垣駐屯地が主催して、こうした一連の動きが終わった22日にようやく開催された。(「毎日新聞」2023年3月12日付)は、
「会場となった約千人収容の石垣市民会館大ホールは、空席が目立った。質疑応答では市民からの質問に沖縄防衛局や駐屯地側の担当者は「具体的に決まっておりません」など歯切れの悪い返答をする場面も。市民からは「これまで丁寧に説明すると言ってきたじゃないか」と厳しい声が上がった。一方「納得できた」と説明会を評価する声もあった」と報じている。
4月2日には、浜田防衛相も出席して、石垣駐屯地開設記念式典が予定されている。 
 こうして経過をたどると、まことにキナ臭い状況の中での、石垣駐屯地の開設であった。井上雄一朗駐屯地司令は「米海兵隊は島嶼をいかに守っていくかについて構想として持っている。われわれのような島嶼の初動をもつ部隊としても、連携は今後検討されていくと思っている」と述べており、この発言は要注意である。米海兵隊は島嶼防衛ではなく、琉球弧の島々を拠点にして中国軍との対決、中国海軍の第1列島線内への封じ込めを検討しているのではないか。こうした米軍の戦略と本気で連携していくことが、自衛隊の中で強固に意志一致されているのだろうか。

 4月10日からフィリピンではじまる「バリカタン23」では、これまでさまざまな演習で繰り返されて来た、退役した艦艇を実際にロケット弾で撃沈する訓練にとどまらず、飛行場奪回訓練まで行われるという。南シナ海のファイアリー・クロス礁を埋め立てて中国軍が建設した飛行場に対する攻撃を想定したものではないかと思われる。米軍の訓練がさらにエスカレートし、中国軍との限定的な衝突が起きた場合、自衛隊はどう対応するのであろうか。しかし、岸田内閣の対応は「防衛力の強化」の一点張りである。

 石垣駐屯地開設の当日、参議院の「政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会」(注2)では、
 石橋通宏議員(立憲民主、社民)が、「いよいよ石垣島の自衛隊のミサイル基地も運用が始まっていくと理解しておりますが、この間、本当にもう現地の皆さんは、沖縄、とりわけ南西諸島がもう軍事要塞化を進められているという本当に強い懸念。どうするんですか、今回の安保三文書も絡めて。何かあったら沖縄が真っ先に攻撃対象になるかもしれない。観光客の皆さんこれからどんどん来てくださいと言っている中で、避難計画もない、国民保護計画の見直しもない。どうやって県民の皆さん、南西諸島の皆さんの命の安心、暮らしの安心守るんですか」と政府の対応を質した。

 しかし、木村次郎防衛大臣政務官は、「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙していく中で、自衛隊の部隊の増強等により南西地域の防衛体制を強化する必要があります。防衛省は、これまで与那国島に沿岸監視部隊を、奄美大島及び宮古島に警備部隊、地対空誘導弾部隊及び地対艦誘導弾部隊の配備を行ってきましたが、本日16日の石垣駐屯地の開設により、南西地域の陸自部隊の空白を埋めるために計画していた部隊配備が完了することになります。このような部隊配備等は力による現状変更を許容しないとの我が国の意思を示し、島嶼部を含む南西地域への攻撃に対する抑止力、対処力を高めることで我が国への攻撃の可能性を低下させるものであり、沖縄県民を含む我が国国民の安全につながるものであります。防衛省としては、引き続き国民の生命と財産を守り、我が国を防衛するため、島嶼防衛のための取組に万全を期してまいります」と、石橋議員の質問には何ら答えない一般論に終始した。

 石垣島以外でも自衛隊の増強が計画されている。少しさかのぼるが3月9日の衆議院安全保障委員会(注3)では、石垣駐屯地以外の基地強化が問題になった。新垣邦男議員(立憲民主・社民)が、「沖縄訓練場への補給拠点設置や嘉手納弾薬庫内で共同使用が認められた火薬庫3棟は、何か建設されるということを聞いているんですが、どの辺りに位置するのか、そして、地域住民との位置関係を踏まえた説明をお願いしたい。要するに、もしやるのであったら説明会も開催してほしいという要望なんですね。これについて」と質した。

 これに対し、川島貴樹防衛省整備計画局長は、「南西地域の防衛体制の強化は喫緊の課題でございます。したがいまして、事態が発生したときにおきまして、平素から南西地域に配備されている部隊及び南西地域に展開した部隊の活動を迅速かつ継続的に支援するため、沖縄訓練場の敷地の中に補給処支処を新編することを計画をしてございます。また、平成15年から共同使用を行っております嘉手納弾薬庫地区におきまして、既存の火薬庫を追加的に自衛隊が共同使用することを本年1月の日米2プラス2の共同発表において公表されました。今後のことにつきましては日米間で詳細に調整がなされていくというふうに承知しておりますけれども、防衛省としては、引き続き、お伝えできる情報につきましては御地元の自治体等に適切に説明させていただきながら、本件を進めてまいりたいというふうに考えてございます」と答弁した。

 「適切に説明」とは、防衛省にとって適切という意味だろうか。宮古島では住民説明会で、火薬庫を「貯蔵庫」と虚偽の説明をしたことが暴露され、2019年3月に搬入した弾薬を撤去せざるを得なくなった。ミサイル搬入は保良地域に火薬庫を造成した後、2021年11月までずれ込んだ。石垣島ではミサイルを搬入してからの説明会開催であった。防衛省・沖縄防衛局の対応はあまりにもひどい。

 3月16日には石垣市でも市議会が開催されていたので傍聴に行った。花谷史郎議員が「12式地対艦ミサイルが長射程になった場合、必ずしも容認ではないと言うことですか」と市長に迫った。中山義隆市長は「現在のところ話が来ておらず、具体的な話が来た時点で検討したい」と答弁した。しかし、この日、中山市長は沖縄に駐屯する陸自15旅団長や石垣駐屯地司令と面談し、歓迎の意向を表明した。また、面談の内容は冒頭のみの公開で、全体は明らかにされていない。自衛隊は今後どう動いていくのか、中山市長の対応も要注意である。

 沖縄県内での自衛隊の増強は、陸自第15旅団を師団に増強するのをはじめとして、まだまだ続いて行きそうだ。

注:
1.石垣市HP 意見書2022年
https://www.city.ishigaki.okinawa.jp/material/files/group/33/ikensyo-12-19-28.pdf
2.第211回国会 参議院「政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会」会議録、2023年3月16日。
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=121115359X00320230316
3.第211回国会 衆議院「安全保障委員会」会議録、2023年3月9日。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001521120230309002.htm

2023年03月29日

「関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者の追悼と責任追及の行動」、3.28学習会を開催

平和フォーラムが参加する「関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者の追悼と責任追及の行動」実行委員会は、3月28日、第1回目の学習会を開催しました。

はじめにドキュメンタリー映画「払い下げられた朝鮮人」(1986年)を上映しました。旧陸軍は「保護」を名目に在日朝鮮人を習志野の収容所に強制的に集めましたが、その一部の人びとは近隣の「自警団」に「払い下げ」られ、殺害されました。事件の真相を追うとともに被害者追悼のとりくみを取材した作品です。上映後、監督の呉充功(オ・チュンゴン)さんが登壇し、本作品に関するエピソードを紹介。また、ヘイトデモに掲げられた「良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ」のプラカードは、朝鮮人虐殺事件が日本社会において過去の出来事ではないことを示していると語りました。

続いて、明治学院大学教授の鄭栄桓(チョン・ヨンファン)さんが「『虐殺否定論』の問題、批判的検証から」と題し、講演を行いました。朝鮮人虐殺否定論が史料を切り貼りし、事実を歪曲していることを指摘。否定論を利用して追悼文拒否が中立的立場であるかに装う小池百合子都知事などの事例を挙げながら、歴史修正主義の言説を支えるものについて解説しました。

実行委員会は今後も学習会やフィールドワークを行いつつ、関東大震災100年を迎える本年9月1日前後には犠牲者追悼と責任追及の行動にとりくむ予定です。

2023年03月24日

憲法審査会レポート No.11

2023年3月23日(木) 第211回国会(常会) 第4回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54465
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【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230323004.htm

【マスコミ報道から】

改憲テレビCM、規制巡り論議 自民は慎重、立民「必要」
https://nordot.app/1011473741620445184
“衆院憲法審査会が23日開かれ、改憲手続きを定めた国民投票法が議題となった。自民党は、改憲案の賛否を訴えるテレビCMに関し、自主規制のガイドラインが整備されているとして放送事業者への規制には慎重な考えを示した。立憲民主党は、情報の公平性を保つためには法律によるCM規制が必要だと訴えた。”

国民投票法めぐり議論 衆院憲法審 立民「CM規制必要」 自公「改憲発議可能」と主張【詳報あり】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/239758
“衆院憲法審査会は23日、改憲手続きを定めた国民投票法について討議した。立憲民主党は、テレビCMやインターネット広告の規制導入が国民投票の前提になると主張。自民党と公明党は、現行法の下でも実施は可能だという認識を示した。”

立民、議員任期延長の改憲不要 衆院憲法審が自由討議
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023032300865&g=pol
“衆院憲法審査会は23日、緊急事態条項を創設する憲法改正を巡り議論した。大規模災害など緊急時の議員任期延長の規定に関し、立憲民主党の中川正春氏は「一定の範囲で権力を集中させ、危機対応を即応的に行うことが目的であれば、憲法改正は必要ない」と主張した。”

衆院憲法審査会 国民投票法のあり方など議論
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230323/k10014016951000.html
“自民党は、去年衆議院に提出した国民投票法の改正案は、公職選挙法に合わせて投票環境を整備するもので、審議が行われていないことは残念だと指摘し、速やかな成立を求めました。”

憲法改正の国民投票CM規制、平行線たどる 衆院憲法審
https://mainichi.jp/articles/20230323/k00/00m/010/267000c
“自民の新藤義孝氏は「日本民間放送連盟の自主的な取り組みを理解する。この問題は一定の整理がなされている」と述べ、CMを出す政党側の自主規制の議論に移ろうとしたが、立憲の中川正春氏は「法律によるコマーシャル規制は必要だ」とし、政党による意見表明CM禁止などの法制化を求めた。”

【傍聴者の感想】

初めて衆議院憲法審査会の傍聴に参加しました。

与党の自公、野党の立民、共産、野党だが改憲派である維新、国民、衆院会派「有志の会」が国民投票法、緊急事態条項などをめぐり議論を交わしました。維新が推す憲法裁判所について、公明の議員が明確に異なる意見を述べるなど、改憲派は一体ではないようです。しかし改憲をめざすすべての政党の、とにかく早く開催を重ねて、議論の整理をごり押しして、改憲発議に向けて突き進んでいこうという姿勢は明らかでした。結論ありきというのが、露骨に見て取れました。

国民投票をめぐる議論の中で、ネット上の情報操作に長けた団体が結果を左右したとされる例として、イギリスのEU脱退での「ケンブリッジ・アナリティカ」などの活動が紹介されました。技術革新が民主主義の発展に活かされず、逆に選挙や特に直接民主主義の困難性を増やしている事実が提起されています。また「安保3文書」など憲法と安全保障の問題について、憲法審で議論を深める必要があるという意見も出されました。

改憲派の拙速な議論の進め方により、民主主義的な政治プロセスに関わる、「言論の自由と人権保護の関係」など多くの重要課題に関する論議が深められず、貴重な時間が無駄に費やされていることに、憤りを覚えました。

【国会議員から】本庄知史さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会委員)

3月23日、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題が議題ということで、我が国の安全保障との関係について発言しました。

■フェイクニュースなど国民投票と安全保障との関係について
まず、憲法改正の国民投票においては、広告放送を巡る議論と並んで、デジタル・デモクラシーの課題が大きな論点となります。特に、フェイクニュースをはじめとする悪意を持った偽情報の流布が及ぼす影響、そして、外国政府等の外部勢力による関与・介入の可能性と危険性について、十分留意する必要があります。

例えば、2016年米国大統領選挙におけるFacebook個人情報の不正利用、いわゆる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」や、英国のEU離脱「ブレグジット」国民投票では、フェイクニュースが社会問題となりましたが、これらはロシアの関与が指摘されています。

ロシアについては、2014年のクリミア半島併合、昨年のウクライナ侵攻における、「ウクライナがロシア系住民を大量虐殺している」などのフェイクニュースもよく知られています。また、中国については、2020年の台湾総統選挙において拡散された「蔡英文総統が学歴詐称をしている」といったフェイクニュースへの関与などが指摘されています。我が国でも、昨年8月、当時の岸防衛大臣がウクライナを非難したかのように見せた虚偽のツイートが拡散されました。

憲法改正の国民投票に際して、こういった外部勢力の関与・介入によって、世論が操作され、投票結果に影響が出ることがあってはなりません。立憲民主党は、こういった問題意識から、国民投票広報協議会とファクトチェックを行う民間団体等との連携や外国人等からの資金援助の禁止などを盛り込んだ国民投票法改正案を提案しています。

他方、政府の側でも、昨年12月の「国家安全保障戦略」において、「偽情報の拡散も含め認知領域における情報戦への対応能力を強化する」としていますが、国家による恣意的な情報統制につながらないよう、十分留意しなくてはなりません。
以上を踏まえ、日進月歩のインターネットやデジタル分野に係る憲法改正国民投票の課題について、安全保障の観点からも議論を重ね、必要十分な法改正を行うことが必要であると考えます。

※なお、「存立危機事態におけるミサイル反撃能力行使と憲法の関係」についても発言しました。詳細はインターネット「衆議院TV」のアーカイブ動画、議事録をご覧ください。

2023年03月24日

ニュースペーパーNews Paper 2023.3

3月号もくじ

ニュースペーパーNews Paper2023.3

表紙 福島原発事故 中間貯蔵施設
*差別を否定する法律が必要
ジャーナリスト 石橋 学さんに聞く
*イノベーション・コースト構想のまやかし
*差別を許す「キシダ政治を許さない」
*なぜ朝鮮人虐殺の歴史を記憶すべきか
*安倍政権と日本の明日

2023年03月17日

憲法審査会レポート No.10

2023年3月16日(木) 第211回国会(常会) 第3回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54436

※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230316003.htm

【マスコミ報道から】

自民、改正国民投票法成立求める 立民はネット広告規制、憲法審
https://nordot.app/1008935439681372160
“自民党の新藤義孝氏は16日の衆院憲法審査会で、自民や日本維新の会などが昨年提出した国民投票法改正案について「審議をいたずらに延ばすことなく粛々と処理すべきだ」と述べ、早期成立を求めた。立憲民主党の近藤昭一氏は、国民投票時に改憲案の賛否を訴えるテレビCMやインターネット広告を巡り、規制を設けるべきだと主張した。”

自民、投票法改正案「早期成立を」 立民はCM規制を主張―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023031600944&g=pol
“自民党の新藤義孝氏は、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案について「早急に審議し結論を出さなければならない」と述べ、早期成立を求めた。改正案は、開票立会人などに関する規定を公職選挙法に合わせるもの。昨年4月に与党と日本維新の会などが共同提出したが、実質審議は行われていない。”

国民投票でのCM規制の在り方など議論 衆院憲法審査会
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230316/k10014010041000.html
“…憲法改正の国民投票が行われる際の、テレビCMやインターネット広告の規制の在り方などをめぐって、議論が行われました。”
“一方、日本維新の会は、大規模災害など緊急事態の対応について憲法への規定を急ぐべきだとして速やかな意見集約を求めました。”

与野党が国民投票法などを議論 衆院憲法審
https://www.sankei.com/article/20230316-6RWQ3I5RYZOWHL3BBS256PPQNM/
“緊急事態条項新設も議論となり、日本維新の会の岩谷良平氏は「立民と共産党を除く党派の立憲主義を守る観点からの積極的な議論により、一致点と相違点が明確になってきた」とさらなる深化を訴えた。”

緊急事態条項めぐり議論 改憲勢力の中でも見解に差 衆院憲法審【詳報あり】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/238467
“緊急事態時に国会議員任期の延長などを可能とする改憲を巡り、自民党が衆参両院の過半数の賛成で「緊急事態」と認定する案を訴えたのに対し、公明党や日本維新の会などは3分の2以上の多数の賛成にする必要があると主張し、改憲勢力の中でも見解が分かれた。”

維新・馬場代表「憲法審、立民抜きでも開催を」
https://www.sankei.com/article/20230316-5ANHMNWWMZMU5MCD5AUA67KUNQ/
“「仮に(立憲民主党が)ボイコットするようなことがあっても、憲法審査会を進めていただきたい。自民党に(開催を)求めたい」”
“国民民主党、衆院会派「有志の会」と共同で検討中の同条項条文案に関して「成案が得られれば、それがベースになっていく。自民にも党内の意思決定を行ってもらい、成案作りを促進したい」と語った。”

【傍聴者の感想】

午前10時開会予定の衆議院憲法審査会は、12分遅れで開会しました。

傍聴初参加だったので、どのような議論になるのか期待感もあったのですが、毎回のように傍聴されている方からは「委員のみなさんそれぞれ意見を主張するだけよ」と聞かされ、斜に構えて傍聴し始めました。

しかし、様子が違いました。緊急事態にかかわる事項や国民投票をめぐるこれまで出されている意見に対する見解や反論など、各委員からそれぞれ発言していました。

高市総務大臣の放送法をめぐる問題をとりあげ自説を展開し、改憲は許されないとする発言もありましたが、それはこの場では「浮く」発言になっていました。

改憲ありきの憲法審査会の開催を許さないという立場からすれば、一方通行のめちゃくちゃな「議論」のほうがまだましという思いがあったにもかかわらず、そうした発言が「浮く」までになっている今の状況は、かなり危ないと感じました。

また、傍聴席の前段は記者席なのですが、数名の記者がいるだけで、席は埋まっていませんでした。「情報発信を強化しなければ」という思いを強くした傍聴となりました。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

自民、公明、日本維新の会、国民民主党、有志の会の「改憲5会派」は、「法律」等で対応が可能か、あるいは法律的に対応すべきかの検討も十分にせず、憲法改正しようとしています。

「議員任期延長の改憲論」も、公職選挙法やその改正で対応が可能かどうかの検討も十分にせずに憲法改正を主張しています。改憲手続法(憲法改正国民投票法)も、主権者意志が公正・公平に反映できる制度かどうかの十分な検討もしないで「憲法改正国民投票」が可能と主張しています。国会議員として職責を果たさず、「職務怠慢」です。

改憲手続法については、3月16日の衆議院憲法審査会での近藤昭一議員による緻密な問題提起への法的対応が「国民主権」の観点から必須です。テレビCM、ネットCM、外国にいる日本人や洋上にいる人たちの投票環境の整備もしないで憲法改正国民投票をするのでは、国民(市民)の声を聞く気がないと言わざるを得ません。

2016年のアメリカ大統領選挙には「サイバー9.11」とも呼ばれるような、ロシアがアメリカの大統領選挙に介入した疑惑もあります。外国政府や外国の団体が日本の国民投票に影響を及ぼすことがあれば「国民主権」からも問題です。

立憲民主党の道下大樹議員がとりあげた「放送法」の問題、階猛議員が指摘した「フェイクニュース」への対策も憲法改正国民投票には必須です。

【国会議員から】近藤昭一さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会委員)

3月16日、衆議院憲法審査会で発言しました。テーマは日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法についてで、現行国民投票法が持つ根本的な欠陥と改正法附則第4条について下記の点を指摘しました。

2021年、国民投票法が改正された際、施行後3年を目途に有料広告規制、資金規正、ネット規制などの検討と必要な法制上の措置を講ずるという附則第4条が加えられました。附則は付帯決議とは異なり、法的拘束力があり、これらの措置を講じることは法的義務です。

国民投票法制定から10年以上がたち、グローバル化、ネット化など、大きな変化があり、外国勢力の干渉の恐れもあります。現行の国民投票法では、有料テレビ広告の規制は不十分であり、さらにネット広告の規制は全くない状況で、公平公正な投票が確保されるという憲法上の要請が満たされていません。

投票環境が整備され、公平及び公正な投票が確保されることは、憲法上の要請であり、憲法96条及び附則4条の趣旨に則り、現行国民投票法の重大な欠陥の是正に真摯に取り組まなくてはならないと考えます。改正手続の重大な欠陥を放置したまま改憲発議をすることは絶対にあってはならないという点を強調しました。

2023年03月13日

南西諸島の戦場化を許さない!安保関連3文書の閣議決定撤回!3.27集会

3月27日、「南西諸島の戦場化を許さない!安保関連3文書の閣議決定撤回!3.27集会」が開催されます。平和フォーラムも賛同団体としてとりくみますので、下記の通りご案内します。

→チラシデータ(PDF)

南西諸島の戦場化を許さない!安保関連3文書の閣議決定撤回!3.27集会

日時:3月27日(月)18時30分~20時30分 ※18時開場
場所:全水道会館大会議室
内容:明真南斗さん(琉球新報記者)講演「南西諸島の最前線基地化の現状」
/沖縄からの訴え(オンライン、沖縄島・宮古島・石垣島・与那国島より(現在、交渉中))
会場費:500円
主催:「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会

2023年03月10日

憲法審査会レポート No.9

2023年3月9日(木) 第211回国会(常会) 第2回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54393
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230309002.htm

【マスコミ報道から】

衆院憲法審査会 緊急事態の認定の在り方などについて各党主張
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230309/k10014003061000.html
“9日開かれた衆議院憲法審査会では、大規模災害や戦争など緊急事態での対応を憲法に規定するかどうかを中心に議論が行われ、緊急事態の認定の在り方や、国会を召集できない場合の政府の権限強化などについて、各党が主張を展開しました。”

緊急事態条項めぐり議論 「条文案作成」に維新・国民民主など着手 衆院憲法審【詳報あり】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/235609
“自民党は論点整理の議論の加速を訴え、改憲を目指す3会派は条文案作成を主張。”
“自民党の新藤義孝氏は緊急事態時の任期延長について「上限を1年とし、再延長も可能とするのが合理的だ」と提案。内閣に国会が議決していない予算の執行と法律の制定を認めることなど八つの論点の資料を配布し、議論するよう各党に促した。”

「緊急事態条項」巡り討議 衆院 憲法審査会
https://www.fnn.jp/articles/-/497566
“「緊急事態条項」の創設をめぐり、9日の審査会では、議員任期の延長について、自民党の新藤議員が原則「上限1年」との提案をし、公明党の浜地議員は、新型コロナウイルスの感染拡大もふまえ「任期延長問題の結論を出すのは今だ」などと述べた。”

【傍聴者の感想】

はじめに与党筆頭幹事の新藤議員から、「緊急事態条項」の論点整理と残された論点に関する今後の議論の方向性、とする別紙資料が配られ、ここまでの衆議院憲法審査会の議論をまとめる形で提起がありました。しかし、立憲民主党の奥野議員がすぐに発言したように、あくまでもこの論点整理は個人的であり、審査会全体として合意して作成したものではありません。「5会派」(自民・公明・維新・国民・有志)でほぼ共通認識がある論点については、あたかも整理が終わったかのように議論を進めようとする姿勢を看過することはできません。

今回の審査会で立憲民主が主張した点は、①「参議院の緊急集会」の位置づけについては参議院と一緒に議論すべき、②国民投票法の整理については未だ課題が多く残っている、③拙速な議論を進めることはよくない、④「専守防衛」の中身が変わってしまった→「新たな論理」について議論すべき、といった内容でした。維新・国民・有志は緊急事態条項について具体的提案を検討する実務者会議を立ち上げ、議論を進めていることも明らかにし、自民からはその内容に期待している旨の発言がありました。

憲法を変えることを目的とした議論に終始しているため、どこをどう変えるのかという各論がすでに始まっているようですが、本論である現行憲法のどこに問題があるかについての議論が十分ではないように感じます。憲法を変えることが目的になってはいけません。憲法改正発議が3分の2という特別数になっている意味を確認したうえで、「お試し改憲」のようなやり方を許さない市民の運動を強めていく必要があることを再認識しました。

【国会議員から】吉田晴美さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会委員)

憲法審査会では、緊急時の国会機能の維持と改憲の議論に終始している。

たしかに、緊急時における国会機能の維持は重要課題であり、地震大国である日本においては、早急に対策を講じるべき課題である。

しかし、そもそも、平時における国会は機能しているのだろうか。

憲法とは、権力の濫用や暴走に歯止めをかけるためのものである。それにもかかわらず、今、国会では、憲法53条に基づく臨時会召集要求を内閣が放置するという憲法違反が常態化し、また、時の政権与党が自分たちに都合よく恣意的に衆議院解散権を行使しているのが実情である。これでは、平時においても国会が機能しているとは到底いえない。

また、国会の機能維持のためには、本当に改憲が必要なのだろうか。

関東大震災から100年。大規模災害は、明日にも起きるかもしれない。だからこそ、早急な対策を講じる必要があり、憲法改正ありきではなく、実質的に、何を変える必要があるか、それは法律で対応できるのか、改憲が必要なのか。冷静に議論すべきである。

今後、憲法審査会において、真に充実した議論がなされるよう、私も引き続き尽力する。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)「参議院の緊急集会に関する衆議院憲法審査会での発言に関連して」

【1】緊急集会の権能についての憲法審査会での発言

2023年3月2日、衆議院憲法審査会で有志の会の北神圭朗議員は「憲法学の学説上、通説は、緊急集会においては、内閣が請求で示した案件の審議以外の権能を行使することは限定的にのみ認められているとされています。国会法もこの限定説に立っていて、緊急集会ではそもそも行使できない国会の権限があるという解釈の上に成り立っています」と発言しています。

3月9日、公明党の濵地雅一議員も「これまでの経緯又は学説の多数からよりますと、や はり、参議院の緊急集会にいわゆるフルサイズの国会の権能を与えることは、憲法54条2項は許容していない」と発言しています。

彼らは参議院の緊急集会に関する憲法学説を正確に把握していません。不正確な認識のもと憲法審査会で発言しています。

【2】議案の発議権について

国会法99条1項では「内閣が参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長にこれを請求しなければならない」と定められています。国会法101条では「参議院の緊急集会においては、議員は、第九十九条第一項の規定により示された案件に関連のあるものに限り、議案を発議することができる」と定められています。議案の発議権について、たとえば京都大学の土井真一教授は「緊急集会は内閣提出の議案・審議のみを行うと解することも狭きに失する」と述べています。

佐藤功教授や奥野健一教授の見解を引用しながら、土井教授は「内閣の求める案件とは、そもそも内閣の提出する議案に限られるものではなく」、「参議院議員は、内閣提出の議案について修正案及び対案を提出しうると解すべきであるし、また、内閣提出の予算案に関連する法律案等の提出も認められると解される」と述べています(長谷部恭男編『注釈日本国憲法(3)』(有斐閣、2020年)697ページ)。

【3】緊急集会の権限

「緊急の必要性」がないもの、たとえば「憲法改正の発議」(96条)は参議院の緊急集会の権能としては認められませんが、参議院の緊急集会は「国会の権能を代行する」ものであるため、その権能は広く認められるという学説が有力です。

たとえば法学協会『註解日本国憲法〔下巻〕』(有斐閣、1964年)841ページでは、「緊急集会の召集は内閣によってなされるから、そこでとられる措置とは、内閣の求める案件に基づくものに限られるのではないかという疑があるが、しかし一度び召集された以上、議院自身は自由に活動し得なければならないから、議院の発議にかかる事項についても、同様の措置がとられ得ると解すべきである」とされています。

伊藤正己『憲法入門』(有斐閣、2008年)200ページでも、「性質上参議院の単独の議決のみによりえないもの、たとえば憲法改正の発議は、そこでは許されない」が、「緊急集会は国会の権能を代行するものであるから、法律、予算など国会の権能に属するすべての事項を議することができる」とされています。

野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅱ 第5版』(有斐閣、2019年)121ページでも「〔参議院の〕集会は、国会の権能を代行するものであるから、法律、予算など国会の権能に属する事項のすべてを議することか可能である」とされています。

樋口陽一『憲法Ⅰ』(青林書院、1998年)234-235ページでも、憲法改正の発議などを除き、「緊急集会は、国会にかかるものであり、その権能は、国会の権能の全部に及ぶ」と指摘されています。

有志の会の北神議員は3月2日の憲法審査会で「国会法上、緊急集会を請求するときは総理から案件というものを示さなければいけないわけです。原則的には、このいわゆる案件に限ってのみ、緊急集会は審議・議決ができるのです」と発言しています。国会法101条は「示された案件に関連のあるもの」(太字強調は筆者による)との規定になっている以上、「案件に限ってのみ」という北神議員の発言は国会法の読み方としても正確ではありません。

さらに国会法を根拠に憲法で明記された参議院の緊急集会の権能を論じるのは極めて不適切です。

「参議院の緊急集会にいわゆるフルサイズの国会の権能」を認めないのはその通りだとしても、国会の権能を代行するため、参議院の緊急集会の権能は広く認められるべきと学説では考えられています。公明党の濵地雅一議員の発言も適切ではありません。

参議院憲法審査会をめぐる動向について

【マスコミ報道から】

参院憲法審開催折り合わず 与野党、引き続き協議
https://www.sankei.com/article/20230308-3UCBSFFGMJOGNIP4IL6SCLEATU/
“与野党は8日、参院憲法審査会幹事懇談会を国会内で開き、参院では今国会初となる憲法審の開催日について協議した。自民党は3月中の実施を提案したが、立憲民主党は参院予算委員会で令和5年度予算案を審議している間は反対だと主張し、折り合わなかった。”

参院憲法審、開催日程で折り合わず 今国会初の幹事懇談会
https://mainichi.jp/articles/20230308/k00/00m/010/178000c
“”幹事懇では、立憲の小西洋之・野党筆頭幹事が放送法の「政治的公平」を巡る解釈変更疑惑について審査会でも議論するよう求めた。自民の山本順三・与党筆頭幹事は記者団に「議論が拡散してしまう」と否定的な見方を示した。
“与野党は、参院選「合区」の解消、参院の緊急集会について討議することでは合意した。”

2023年03月06日

緊急院内集会「人の命を危うくする、入管法改悪はもうやめてください!」

政府与党による入管法改「正」案を今通常国会に再提出する動きが具体化していることを踏まえ、「STOP長期収容市民ネットワーク」は、3月15日、下記の緊急院内集会を開催しますので、ご案内します。オンライン配信もありますので、ご参加・ご視聴をお願いします。

緊急院内集会「人の命を危うくする、入管法改悪はもうやめてください!」

日時:3月15日(水)12時~13時30分
場所:参議院議員会館講堂 ※オンライン配信あり

参加方法:

① 会場でのご参加
メディア・一般の方は、お申し込みフォームにご記入の上、お越しください。
参加申し込み:https://forms.gle/9YhLs6WcWNpeV2eu5
※申し込み締切:3月14日(火)17時
※一般の方のお申し込み多数の場合は締め切る場合がありますのでご了承ください。
※マスク等感染症対策の上、ご来場ください。
※差別的、暴力的な言動を繰り返す場合には、退出いただくことがあります。

②YouTubeでの同時配信視聴

プログラム:

1.入管法政府案の課題
・大橋毅さん(弁護士)「難民認定制度を改善しないままに送還を進めることの課題」
・児玉晃一さん(弁護士)「収容制度の抜本的な改善が行われていないことの課題」
・鈴木江理子さん(国士舘大学文学部教授)「在留特別許可制度の改善、アムネスティの必要性について」
2.国際社会からの声〜アムネスティ・インターナショナルによる入管収容調査の結果報告
3.当事者・支援者の声
4.国会議員からの発言

主催:「STOP!長期収容」市民ネットワーク
構成団体:公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本、NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、全国難民弁護団連絡会議、認定NPO法人難民支援協会、日本カトリック難民移住移動者委員会、入管問題調査会、全件収容主義と闘う弁護士の会ハマースミスの誓い、特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ
協力:#FREEUSHIKU、Save Immigrants Osaka、外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)、外国人人権法連絡会、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)、難民・移民フェス、なんみんフォーラム(FRJ)、反差別国際運動(IMADR)、反貧困ネットワーク、フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)、マイノリティ宣教センター

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