12月, 2023 | 平和フォーラム

2023年12月31日

武器輸出の大幅緩和と7兆円超え防衛予算案を閣議決定

木元茂夫

2023年12月22日、岸田内閣は安全保障政策に係る3つの重要な決定を行った。①防衛装備移転3原則の運用指針を改訂し殺傷武器の輸出に道を開いた。②24年度防衛予算案の決定。歳出ベースで7兆2249億円(23年度6兆6601億円)、契約ベースで9兆3625億円(23年度8兆9525億円)という史上最高額である。23年度に続き長距離ミサイルを大量購入。③マスコミにはあまり報道されなかったが、内閣府に事務局を置く宇宙開発戦略本部が、「宇宙基本計画工程表」を改訂し、長距離ミサイルの誘導に係る衛星の打上げ計画を決定した。

武器輸出の拡大と、長距離ミサイルの開発と購入、その誘導体制の確立について概観していく。

1.殺傷能力ある武器が輸出可能に

「防衛装備移転3原則の運用指針」の改訂は、23年7月以降、岸田首相自らが自民・公明のプロジェクトチームにハッパをかけて、決定を急がせたものである。第1に「国際共同開発・生産のパートナー国に対する防衛装備の海外移転」が明記された(注1)。岸田内閣はこの改訂を踏まえ、ロッキードマーチン社が開発し、三菱重工がライセンス生産している短距離対空ミサイルPAC-3の米国への輸出を決定した。詳細は1月以降に協議するとしているが、日本が米国へ輸出することによって米国の在庫が確保され、米国のウクライナ等への「支援」が可能になる「玉突き輸出」効果が起きる。また、英国、イタリアと2035年完成を目指して共同開発が決定した「次期戦闘機」も、英国とイタリアへの輸出が可能になる。

第2に「我が国との間で安全保障面での協力関係がある国に対する防衛装備の海外移転」として、 ① 部品 ② 救難、輸送、警戒、監視及び掃海に係る協力に関する完成品(当該本来業務の実施又は自己防護に必要な自衛隊法上の武器を含む)」と明記された。このうち、掃海艇には20ミリ機関砲が装備されているが、こうした殺傷武器を搭載した状態での輸出が可能になってしまった。

この決定の二日前、完成品武器輸出としては、最初のケースとなる「警戒監視レーダー」の引き渡し式典がフィリピンで実施された。出席した西脇防衛装備庁審議官は「航空自衛隊及び陸上自衛隊におけるフィリピン空軍レーダー要員への教育」等の人的交流の拡大を指摘し、「日本は引き続き、比軍の発展を支援します。」「インド太平洋地域において多くの安全保障上の課題が存在する中、両国が協力する意義」を強調した(注2)

しかし、「引き続きフィリピン軍の発展を支援」という政策は、いつ誰が決定したのか。国会での慎重な審議を抜きに、岸田内閣はフィリピンとの軍事協力を急速に強化しようとしている。相互アクセス協定(円滑化協定)が交渉に入ることが報道され、従来日米で実施してきた「共同指揮所演習」を、24年度は日米にオーストラリアとフィリピンを加えて行うと明らかにしている。

2.長距離ミサイルの大量調達、イージス・システム搭載艦の建造と「いずも型護衛艦」の改修

「防衛力抜本強化の進捗と予算-令和6年度予算の概要」(注3)から主なものをあげる。まず目につくのは長距離ミサイルの大量購入である。奄美大島、宮古島、石垣島に次々に配備された12式地対艦ミサイル。現在は射程距離約200キロメートルであるが、射程距離1000キロメートル以上となる「能力向上型」の開発費に176億円。地上発射型、艦艇発射型、航空機発射型の3つの開発費である。「能力向上型」の「製造態勢の拡充」に480億円。防衛省に確認したところ、「初期の設備投資費用にあてられるもので初度費と言っている」(23年11月21日回答)。さらに取得費に961億円。「地上装置等」に130億円。

「島嶼防衛用高速滑空弾」の開発費に127億円、その「能力向上型」の開発費に840億円、「極超音速誘導弾」の開発費に725億円。「極超音速」とはマッハ5以上のスピードで飛翔し、迎撃が困難なミサイルのことである。これらの費用は23年度予算にも計上されていて、防衛省は23年4月に三菱重工と3,780億円の契約を結んでいる。24年度予算はその追加である。12式の量産費は23年度が939億円、24年度が961億円、合計1,800億円である。価格は公表されていないが、単純に1発1億円と仮定すると、1800発ものミサイルを購入することになる。

あらたに、「新地対艦・地対地精密誘導弾」の開発経費が323億円計上された。8月の「政策評価書」(注4)によれば2024年から2029年までの6年をかけて開発する計画で総事業費は約408億円、その大半を24年度予算に計上したことになる。「当該事業を行う必要性」として「島嶼部を含む我が国に侵攻してくる艦艇や上陸部隊等に対して脅威圏外から対処するため、本州等から対処できる射程及び着上陸した侵攻部隊等を効率的に撃破できる高精度の誘導性能並びに高残存性を有する装備品が必要である」としている。これまで12式地対艦ミサイルは熊本と南西諸島に配備されてきたが、「本州等から対処」という言葉が防衛省の資料に登場したのは、はじめてではないだろうか。長距離ミサイルの配備が全国に拡大することが予想される。

「当該年度から実施する必要性」として、「周辺国が近年、防空能力に優れた艦艇を導入」していることをあげている。これは、中国海軍が8隻建造した南昌級ミサイル駆逐艦(11,000トン、射程距離1500キロメートルの長距離巡航ミサイルを搭載)を意識したものであろう。

次に新たに建造する艦艇。イージス・システム搭載艦の建造等に3731億円を計上している。「既計上分を含めて機械的に積算すれば、取得経費は1隻当たり約3920億円」としているが、最新のイージス艦「はぐろ」(2021年就役)の建造費が約1,700億円であるから、その倍以上の建造費である。何故、そんな高額になってしまったのか、その理由を防衛省は明らかにしていない。これまでのイージス艦に採用されているSPY-1Dレーダーとは異なり、ロッキードマーチン社の最新レーダーSPY-7を採用したことがその理由であると推測されるが、防衛省に問い合わせても「SPY-7の維持・整備経費については米国政府等と協議中であるため、具体的にお答えできる段階にはありません」(23年2月13日付防衛省回答)と、内訳を明示しない姿勢をとり続けている。

財務省も「SPY-7搭載のイージス艦は、米国も含めて現時点で例がない」ため「調達上のスケールメリットが働きにくい」、「新たなレーダーと組み合わせるイージス・システムの開発・試験・維持などの相当部分を我が国の事業単独で行う必要」があるため、「ライフサイクルコストの増加が懸念される」(23年10月27日財務省 防衛)と指摘している。米海軍の最近のイージス艦は、レイセオン社のSPY-6を採用しているため、その経験を利用することもできない。

そもそも「イージス・システム搭載艦」は、秋田県と山口県に配備する予定だったイージス・アショアの代替施設として計画されたものであるが、イージス・アショア用に契約したSPY-7を洋上仕様に改装して使用した。中国の南昌級以上の大きさと多種類のミサイルを搭載するイージス艦を建造することになってしまった。

新型補給艦の建造に830億円。燃料や弾薬などを海自の護衛艦に補給する艦艇である。米軍艦艇への燃料補給も頻繁に行っている。補給艦は現在5隻体制(8,100トン型3隻、大型の13,500トン型2隻)であるが、14,500トン型とさらに大型化し、6隻体制になろうとしている。

新型FFMの建造は2隻で1740億円。FFは駆逐艦より小型のフリゲート艦の略称、Mは機雷(Mine)の略で、機雷掃海のための水上無人機と水中無人機を搭載し、機雷敷設能力もある。島嶼防衛戦では相手国が敷設した機雷を除去し、また、占領された島嶼を奪回した後、機雷を敷設して相手国の艦艇の接近を阻むという発想である。従来の「もがみ」型FFMが3,900トンであったのに対し、新型は4,880トンとなり通常の護衛艦なみとなった。12式地対艦ミサイル「能力向上型」も搭載する。5年間で12隻建造する計画であり、海上自衛隊の主力艦艇となる。

「いずも」型護衛艦の改造に423億円。「いずも」は艦首の形状変更等の第2次改修工事を実施し、短距離離陸と垂直着陸が可能なステルス戦闘機F-35Bを13機程度搭載できる小型の空母になる。海自は「インド太平洋方面派遣」訓練という長期の軍事行動を毎年実施している。23年は「いずも」も参加し4月20日から9月17日まで、フィリピンやベトナム、オーストラリアに寄港。22年に中国と安保協定を締結したソロモン諸島や、フランス領のニューカレドニアにも寄港した。数年先、ステルス戦闘機を搭載した「いずも」が南シナ海で軍事行動をすれば、中国との緊張はさらに高まるであろう。

次に航空機。「いずも」と「かが」に搭載予定のF-35Bは7機1,282億円を計上、これは宮崎県の新田原基地に配備することが決定している。鹿児島県の馬毛島に建設中の自衛隊基地には「いずも」の艦橋に似せた「模擬着艦施設」が建造され、離発着の訓練が予定されている。青森県の三沢基地と石川県の小松基地に配備するF-35Aは8機1,120億円が計上された。

電波情報収集機RC-2は1機493億円 を計上、すでに3機が埼玉県の入間基地に配備されており4機目の製造となる。防衛省は「RC-2の情報収集能力及び長時間の運用能力は非常に有用です。また、その情報共有機能をもって、航空自衛隊内だけでなく、他自衛隊との統合運用、米軍との共同ISR(情報・監視・偵察)活動においても活躍が期待されています」(「令和3年度防衛白書」)と表明。

「電子作戦機」の開発に141億円が計上された。2024年から32年までの予定で総事業費約824億円となっている(注5)。「政策評価書」には「P-1哨戒機を活用」、「海上自衛隊の要求」などの記述がある。
防衛省はすでに「スタンド・オフ電子戦機」の開発と試作機の製造を2020年から25年までの予定で進めてきた。「スタンド・オフ・レンジから妨害対象に応じた効果的な電波妨害を実施し、相手の組織的な戦力発揮の阻止」(注6)が明記されている。「既存のC-2輸送機を活用」するとして、輸送機の製造元の川崎重工と契約している。その試作機が完成しないうちに、今度は「電子作戦機」という新たな機体の開発を開始するという。P-1哨戒機も川崎重工の製造である。この2つの機体が完成した時、自衛隊の電子戦能力は大幅に強化される。

3.長距離ミサイルの誘導-準天頂衛星

これまで、射程100から200キロメートルのミサイルしか保有してこなかった日本においては、長距離ミサイルの誘導技術は未確立である。防衛省に質問書を提出したところ、「準天頂衛星などの測位衛星信号の利用については、現在検討中」(23年11月21日付)という回答であった。米国のGPSにあたる測位衛星「みちびき」の打上げスケジュールを決定しているのは内閣府の宇宙開発戦略本部である。23年6月に決定された「宇宙安全保障構想」には、「我が国の周辺国等による弾道ミサイルや極超音速滑空兵器等の開発・装備化に対応するため」「必要な能力の獲得について検討する」とある。

この構想を踏まえて、12月22日に「宇宙基本計画工程表」が改訂された(注7)。「宇宙安全保障のための宇宙システム利用の抜本的拡大」として、いくつもの工程表がならぶ。

●ミサイル防衛用宇宙システムによる必要な技術の確立
我が国の周辺国・地域による弾道ミサイルや極超音速滑空兵器(HGV)等の開発・装備化に対応するため、広域において継続的に脅威を探知・追尾し、各種装備品の間の迅速な情報伝達を行う能力や、衛星で捉えたミサイル追尾情報を、直接、迎撃アセットに伝達する能力の重要性を踏まえ、必要な技術実証を行う。
●7機体制構築に向け、H3ロケットの開発状況をふまえて、2024年度から2025年度にかけて順次準天頂衛星を打ち上げ、着実に開発・整備を進める。その際、JAXAとの連携を強化した研究開発体制により、効率的に機能・性能向上を図る。持続測位が可能となる7機体制の確立および機能・性能向上に対応した地上設備の開発・整備等に取り組み、より精度・信頼性が高く安定的なサービスを提供する。
●準天頂衛星6号機及び7号機への米国のセンサの搭載を進めるとともに、引き続き運用に向けた米国との調整を進める。
●準天頂衛星システムについて、7期体制から11機体制に向け、コスト縮減などを図りつつ、検討・開発に着手する。

4.まとめ

殺傷武器の輸出を容認し、長距離ミサイルを大量に購入し、巨大なイージス艦を建造し、ステルス戦闘機を搭載する空母を保有しようとしている日本。まさに、軍事大国への道をひた走っている。防衛予算の急膨張は、十分な検討もないままに支出が決定される武器・装備を生み出した。財務省ですら危惧の念をもつイージス・システム搭載艦はその典型であろう。防衛予算の使い方を具体的に批判し、対話と外交に力を入れる道に歩みをもどすこと、それがいま問われている。

注1 防衛装備移転三原則の運用指針 23年12月22日一部改訂
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/r51222_bouei3.pdf
注2 防衛省・自衛隊:比空軍主催警戒管制レーダー1基目引渡し式典への出席について
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/12/22h.pdf
注3 「防衛力抜本強化の進捗と予算-令和6年度予算の概要」
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/2024/yosan_20231222.pdf
注4 令和5年度政策評価書・新地対艦地対地誘導弾
https://www.mod.go.jp/j/policy/hyouka/seisaku/2023/pdf/jizen_13_honbun.pdf
注5 令和5年度政策評価書・電子作戦機
https://www.mod.go.jp/j//////policy/hyouka/seisaku/2023/pdf/jizen_10_honbun.pdf
注6 令和2年度政策評価書・スタンド・オフ電子戦機
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11591426/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/31/pdf/jizen_02_honbun.pdf
注7 宇宙基本計画工程表(令和5年度改訂)
https://www8.cao.go.jp/space/plan/plan2/kaitei_fy05/kaitei_fy0512.pdf

2023年12月27日

【声明】玉城沖縄県知事の不承認を支持 国は代執行をせず、県と協議を行え

辺野古新基地建設にかかわり、12月20日の福岡高裁那覇支部の代執行訴訟判決、および玉城デニー沖縄県知事の不承認表明と国による承認の代執行にかんし、フォーラム平和・人権・環境が声明を発出しましたので、ここにお知らせします。

玉城沖縄県知事の不承認を支持 国は代執行をせず、県と協議を行え

 辺野古新基地建設にかかわる12月20日の代執行訴訟判決で、福岡高裁那覇支部(三浦隆志裁判長)から、承認するよう命じられていた沖縄県の玉城デニー知事は12月25日、大浦湾側の軟弱地盤を埋め立てる設計変更を「承認しない」と正式に表明しました。これに対し、斉藤鉄夫国土交通大臣は26日、28日にも承認を代執行する方針を明らかにしました。

玉城知事は、代執行訴訟の高裁判決には様ざまな問題があるとして最高裁に上告するいっぽう、辺野古新基地建設に反対する県民の負託を受けていることから承認はできず、国に対し工事は中止し、解決に向けた真摯な対話に応じるように求めています。

司法の忖度を背景とした国の強権に対する玉城知事の表明は、民主主義と地方自治を全うする判断で、平和フォーラムは全面的に賛同し、支持します。

そもそも、玉城県知事に承認をするように命じた福岡高裁那覇支部の代執行訴訟判決は、国の主張を丸呑みした全く不当な判決以外の何物でもありません。

まず、裁判で争点となった代執行の三要件のうち、県に法令違反があるかないかの判断では、2023年9月4日の最高裁判決を根拠として、県が法令に違反していると判断しています。しかし最高裁では、公有水面埋立法に違反しているかどうかの判断は一切せず、単に行政不服審査に基づく裁決に応じることを県に求めた判決でした。県の法令違反が最高裁で判断されたわけではありません。

2つ目の要件である、他の方法で是正はできないのかの判断では、国と地方自治体は対等協力関係にあるにもかかわらず、その関係性を具体的に保証する対話・協議の必要性について、地方自治法の国による関与である「是正の指示」が代執行以外の方法であり、県の求める対話は代執行に代わるものではないと切り捨てました。

そして3つ目の公益の侵害の判断では、普天間基地周辺住民の生命身体の危険性を持ち出し、県が承認しないことは公益に反するとしました。しかし、普天間基地の危険性は今に始まったものではありません。米軍が銃剣とブルドーザーで住民を追い出して建設して以降、相次ぐ軍用機の墜落及び部品落下事故、日常的な爆音など、基地周辺住民は今日にいたるまで、常に命の危険に怯え、安心な生活を送ることができない事実があります。さらに辺野古新基地は完成まで、今後10数年はかかるとしています。その間も危険をそのままにしておくということなのでしょうか。公益を侵害しているのは、普天間基地返還のための協議をろくにも行わずに、普天間基地の危険性を放置している国ではありませんか。福岡高裁那覇支部の判断は、沖縄の歴史と現実に目を覆い、国に忖度したもので、司法の役割を放棄したと言わざるを得ません。

国は、12月28日に沖縄県に代わって設計変更の承認を行い、来年2024年1月12日にも、大浦湾側の工事に着手するとしています。国による地方自治体への代執行は前例がなく、地方自治の精神をないがしろにする懸念すべき事態です。

沖縄県は、普天間基地返還に向けた協議を求め、軟弱地盤の埋め立てについてもその科学的根拠を求めるなど、再三対話および事実に基づく協議を求めていました。しかし国は軟弱地盤の対策で充分な地質調査をしないばかりか、事実の隠蔽すら行ってきました。「ていねいに説明する」と国が言うのでれば、「辺野古が唯一」を繰り返して述べるのではなく、県と真摯に協議、対話こそすべきでしょう。代執行という強権発動で工事を進めるべきではありません。

国の代執行による着工を断じて許さず、辺野古新基地建設反対、普天間基地の即時全面返還、地方自治精神の再生をもとめ、平和フォーラムは全力をあげ、運動を進めていく決意です。

2023年12月27日
フォーラム平和・人権・環境
事務局長 染 裕之

声明PDFはこちら

2023年12月22日

ニュースペーパーNews Paper2023.12

ニュースペーパーNews Paper2023.12
12月号もくじ
表紙 第60回護憲大会
*対馬に「核のごみ」はいらない!  
 上原正行さんに聞く
*占領下のガザ封鎖と破壊
*No Nukes Asia Forumの報告
*第60回護憲大会(新潟県)の報告
*「タイガースの優勝を汚すな!」
*本の紹介「Q&A 関東大震災100年 朝鮮人虐殺問題を考える」

2023年12月12日

オスプレイは二度と飛ぶな!関連工事をやめろ!墜落事故で緊急申入れ

2023年11月29日、鹿児島県屋久島沖の海上に東京・横田基地に配備されている米空軍CV22オスプレイが墜落した問題で、フォーラム平和・人権・環境とオスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会は12月8日、外務省と防衛省に対して緊急申入れを行いました。
日本政府が事故に至る経過など事実確認を行っているのかと問いかけましたが、政府側は「事故機は訓練中であり、岩国基地から嘉手納基地に向かう途中であった、事故の詳細は米側に確認中である」と述べるにとどまりました。報道機関が目撃情報なども含め、事故機の状況を伝えているなか、日本政府として独自に情報を集めるなど事実確認を行う姿勢が極めて希薄であることに参加者から批判の声が相次ぎました。この日、東京平和運動センター並びに三多摩平和運動センターも要請書を提出しました。
また、12月12日には、九州ブロック労働組合連絡会議が九州各県の国会議員とともに、オスプレイの墜落に関わって、地元の声をもとに運用中止等を求めた要請書を提出しました。防衛省内でマスコミにも一部公開し、防衛省側は松本政務官が対応しました。
アメリカに対して日本があまりにものが言えていない現状が改めてうきぼりになり、今回この要請書提出を中心になって進めてきた磨島事務局長からは、『防衛省は国民を守っているのではない、アメリカを守っているのだ』という発言があったほどです。
九州各県からわざわざ東京まで来て要請しても、防衛省の返答は従来の主張を繰り返す平行線のものばかりであったことに、参加者からは落胆の声が聞かれました。

 

 

フォーラム平和・人権・環境/オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会の緊急申入書はこちら

東京平和運動センター/三多摩平和運動センターの要請書はこちら

九州ブロック労働組合連絡会議の要請書はこちら

https://373news.com/_news/storyid/186879/

2023年12月08日

憲法審査会レポート No.29

今週は参議院・衆議院ともに憲法審査会が開催されました。今臨時国会は12月13日閉会予定ですので、今国会での憲法審査会はこれをもって終了の見込みです。

【参考】

首相 緊急事態条項など4項目の憲法改正案踏まえ 絞り込み指示
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231205/k10014278941000.html
“憲法改正に向けた自民党の会合で岸田総理大臣は、党としてまとめている「緊急事態条項」など4項目の改正案を踏まえ、党派を超えて連携できる項目を絞り込むよう指示しました。”

憲法改正「項目取りまとめを」 岸田首相、実現本部に出席
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023120500918&g=pol
“内閣支持率が低迷する中、改憲に本気で取り組む姿勢を保守層にアピールする狙いがある。古屋圭司本部長は「(会議への出席は)党総裁としての思いを象徴している」と記者団に語った。”

憲法審査会が給料ドロボーと呼ばれないように
https://www.sankei.com/article/20231202-M7VE32UPQVLI7BYDZTTMWUGPWU/
“「実現できなければ、岸田文雄政権は終わり。はっきり言って、完全に終わりだ」。自民党の憲法改正推進議員連盟の衛藤征士郎会長は11月30日、断言した。首相が来年9月までの党総裁任期中の実現を目指す憲法改正について、である。強烈な言葉だが、「やるやる詐欺」にうんざりしている国民感情を代弁している。”

改憲実現に課題山積の自民 高村正彦元副総裁が公明と調整へ
https://www.sankei.com/article/20231207-YYHGW5MVZNKYZB6PPAXI7ECD7A/
“ただ、臨時国会は改憲案作りが具体化しないまま終了する見通しで、改憲を期待する他党や保守陣営では自民に対し、不信感が芽生えつつある。維新や国民民主などは自民の本気度が見えない場合、改憲の可否を問う国民投票に向けたスケジュール設定や定例日以外の憲法審の開催、閉会中審査などを求める書面を突き付ける構えだ。”

2023年12月6日(水)第212回国会(臨時会)
第2回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7679

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

参院 憲法審査会 憲法9条改正などめぐり各党が主張展開
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231206/k10014280031000.html
“参議院の憲法審査会で自由討議が行われ、大規模災害など緊急事態での国会の機能を憲法に規定するかや憲法9条を改正して自衛隊を明記するかなどをめぐり各党が主張を展開しました。”

自民、条文案へ作業部会提案 参院憲法審、立民反発
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023120600928&g=pol
“自民党の衛藤晟一氏は、緊急事態条項の創設や自衛隊の明記を挙げて、作業部会の設置を主張。「憲法改正原案を具体的に詰める」と強調した。”
“これに対し、立民の辻元清美氏は自民党派閥の裏金疑惑に触れ、「政治の信頼なくして憲法論議は成り立たない」と反発。”

参院憲法審 改憲に積極的な4党、緊急事態条項議論で温度差
https://mainichi.jp/articles/20231206/k00/00m/010/167000c
“自民、日本維新の会、国民民主の3党は、選挙の実施が困難な時に特例的に衆院議員の任期を延長する緊急事態条項創設に向けた早期の条文案作成を主張。一方、公明党は、衆院議員不在時の国会機能を代行する憲法54条2項の「参院の緊急集会」の権限も含めた議論の継続を求めた。衆院では条文案作成の方向で共同歩調をとった4党だが、参院では歩みに乱れが生じた。”

【傍聴者の感想】

12月6日の参議院憲法審査会では、各会派による憲法に対する考え方の表明から始まり、その後各委員から個別案件について意見表明が行われました。

与党会派は、自衛隊明記、緊急事態条項について憲法改正が必要であることが強く訴えました。また、憲法改正原案を作る作業チームを作り、具体的に進めていくべきと主張しました。

野党会派からは、パーティー券による裏金問題が起きていることを挙げ、そもそも憲法改正議論をする以前に「政治に対する信頼」という土台が成り立っていないと意見が出ました。

各委員からの発言が次々に行われましたが、やや感情的な発言が続きました。中曽根弘文会長(自民)が、委員からの発言や提案のうちの一部については「幹事会で取り扱う」としたうえでこの日の審査会は閉会しました。

初めての憲法審査会傍聴でした。参議院では比較的落ち着いた議論であると聞いていましたが、一度の発言に言葉を詰め込み、意見をぶつけ合う姿勢には驚きました。

とくに印象的だったのは、片山さつき議員(自民)が国防について「9条の通りにはなっていません」と言い切り、場内がざわつく場面でした。

ほかにも衛藤晟一議員(自民)の「崇高な仕事である」という理由から自衛隊を憲法に明記する必要があるとし、「集団的自衛権を全面的に認めるべき」だという主張。

松川るい議員(自民)の「憲法改正に意欲的な政党が多い」ことを理由として9条改憲を急ぐべきだという主張。

さらに古床玄知議員(自民)からは裁判所が積極的な憲法判断をするようになれば「自衛隊が憲法違反となる可能性があるため早く改憲すべき」という本末転倒な主張がありました。

改憲ありきの思惑ばかりが先走り、乱暴な改憲根拠を並べ立てる様子は、あきれるばかりでした。

高木真理議員(立憲)が「教育の無償化にかこつけた改憲議論は許されない」と指摘していましたが、誰も異論をはさめない課題で改憲につなげるようなやり方は、改憲がなし崩し的に行われていってしまうのではと心配になります。本当に憲法改正が必要なのか、法改正で対応可能なのか、腰を据えた議論こそ必要なのだと思います。

自分にとって都合のいい意見だけに耳を傾けるような政治では、決してよい未来は拓けません。改憲こそ日本全体の総意だと言わんばかりの主張がされている憲法審査会の現状は、広く共有されるべきだと思いました。

【国会議員から】小沢雅仁さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会委員)

議員任期延長改憲論について意見を申し上げます。

任期延長改憲の論拠となっている緊急集会70日間限定説は、憲法審で改憲を主張する会派の説明では、54条1項の40日プラス30日という文理解釈によってのみ、緊急集会を次の新しい国会が70日以内に召集されることを前提とした平時の制度と断定するものです。

しかし、こうした憲法解釈は、54条2項の国に緊急の必要があるときという文理や、緊急集会がナショナルエマージェンシーという大震災等の深刻な国家緊急事態にも対処する有事の制度として制定された立法事実に明確に反する上、民主政治を徹底させて国民の権利を十分擁護するなどの戦前の反省に立った非常時の権力濫用の排除です。

また、54条1項の40日プラス30日という規定の趣旨は、解散・総選挙の際の内閣の居座りを排除するものであり、権力の濫用を排除するために設けられた緊急集会の根本趣旨そのものにも全く反します。

すなわち、緊急集会は、1日も早い総選挙の実施を必須としつつ、その間に緊急性を要する立法等を行う必要がある場合に限り、70日を超えても開催できると当然に解すべきものです。にもかかわらず、こうした緊急集会の立法事実や根本趣旨に一言の言及もないまま、70日間限定説を繰り返すのは、緊急集会を恣意的に曲解するもので、濫用排除の制度を破壊して濫用可能な憲法改正を行おうとするものと断ぜざるを得ません。

憲法99条の憲法尊重擁護の義務と立憲主義に反する暴論は国民と参議院を愚弄するもので、我が会派は絶対に容認できず、議員任期延長改憲には明確に反対します。

緊急時における衆院の任期延長は、憲法制定時の経緯や国民主権、基本的人権の尊重、国会中心主義のいずれの観点においても重大な問題をはらむものと言わざるを得ません。

改めて議員任期延長改憲には断固反対を申し上げて私の意見とします。

(憲法審査会の発言から)

2023年12月7日(木) 第212回国会(臨時会)
第5回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54808

※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

国会議員の任期延長 自民 憲法改正条文案の起草機関を提案
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231207/k10014281041000.html
“衆議院憲法審査会が開かれ、大規模災害など緊急事態での国会議員の任期延長をめぐり、自民党が憲法改正の条文案の起草作業を行う機関を設置するよう提案したのに対し、立憲民主党は現時点で憲法に明記する必要はないと主張しました。”

自民、改憲へ作業機関の設置提案 緊急事態巡り条文案作成
https://www.47news.jp/10231446.html
“与党筆頭幹事を務める自民党の中谷元氏は、緊急事態時の国会議員任期延長や衆院解散禁止などの改憲条文案を作成するため、来年の通常国会で作業機関を設置することを提案した。日本維新の会と国民民主党も賛同した。”

自民、条文起草へ機関設置提案 衆院憲法審、緊急事態条項を想定
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023120700951&g=pol
“審査会後、自民・中谷氏は記者団に、起草機関について、立民の関心が高い「デジタル時代における人権保障」も取り扱う可能性に言及し、立民の理解を求めた。臨時国会での実質的な討議は、今回が最後の見通しだ。”

【傍聴者の感想】

今国会では初めて傍聴しました。

自民党からは緊急事態時の国会議員任期延長や衆院解散禁止などを中心に条文案作成の作業を行う機関設置を提案し、これに公明・維新・国民が賛意を表明するなど、改憲発議に向けた具体的なステップを進めようという方向性が顕著にあらわれていました。

ただ、それぞれの発言内容をみると、改憲それ自体が目的となっているのかどうかという点においては、改憲派のなかでも傾向が分かれている雰囲気を感じました。

改憲のためにスケジュール優先で手続きを事務的に進めるのか、一定議論を積み重ねたうえで進めるのか、という違いもあるように感じます。

時代とともに従来の制度だけでは解決できない問題も多々出てきていると思いますが、改憲それ自体を目的とせず、時代と社会環境の変化をしっかり見据えたうえで、その改善に向けた議論を行うべきだと思います。

一部改憲派野党の議員の私語は、議事進行のみならず、傍聴にも差し障りが出るもので、憲法審査会に対する向き合い方が問われているように感じました。

【国会議員から】中川正春さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

今日は、今国会最後の発言の機会をいただきましたので、憲法審査会の在り方と議論の進め方について、先日の北側幹事の問いかけに答える意味も含め、基本的な認識を共有していきたいと思います。

憲法をテーマにして、各党の政治的な立場を主張することは、もちろん否定されることではありません。その上で、私たちの憲法審査会では、何を行ってきたのか。もう一度、ここで確認してみたいと思います。

これまでの審議過程の中では、少なくとも我々与野党の筆頭幹事の間では、一つの共通した認識がありました。それは、憲法議論では、国民の分断を引き起こすようなことがあってはならないということです。だから、各党が策定した具体的な憲法改正案を、この審査会に正式な形で提出して、多数決でもって決していくことは、しないという暗黙のルールが尊重されてきました。憲法改正の議論は、出来得る限り幅の広い合意を形成することを目指すこと。その合意のもとに、幹事会なり、特別の小委員会なりを作って、それぞれ話し合いのもとに、憲法改正素案を練っていくことが前提になっていると理解しています。

時に、審査会の自由討議に対して、それぞれが言いっぱなしで何も出てこないではないかと批判する人がいます。しかし、これまでの、私達筆頭幹事間での理解は、違います。それぞれ、議員個人として、または党としての場合もありますが、自由討議で表明されたのは、審査会の委員による様々な立法事実とその解決策の提起だったと思っています。現在の憲法に照らして、憲法違反と判断される現実が指摘されたこともある。あるいは、時代の変遷の中で、これまで憲法によって捉えられなかった新しい課題が生じ、憲法改正の必要性が主張されたこともあります。私達の課題は、これらの議論を、どのように発展させていくかということだと思います。

以上のような前提に立って、これからの憲法審査会の進め方として、主に二つの作業を進めることを提案します。

まず一つは、それぞれ提起される課題について、その課題ごとに、どこまで広い合意が可能となるのか、積極的に見極めていくプロセスは必要だと思います。

9条関連、解散権、憲法裁判所、人権委員会、情報分野の人権保障、環境権、一票の格差と地方分権、教育の無償化、同性婚など、それぞれの課題にどこで大方の合意を見出すことができるのか。さらに、幹事会の合意を前提として、次のステップに移って行けるのか。もう少し焦点を絞って、深掘りのできる議論をしていく必要があります。

そのためには、自由討議において、具体的な課題を絞って議論を集約することで、それぞれの方向性を確認していく作業が必要だと思います。ただし、特に、前回の審査会において北側幹事からも指摘のあった、緊急事態条項については、現時点では、私達は憲法に明記する必要はないと考えていることを、これまで何回も申しあげてきました。この課題については、合意が見えていないと判断しています。

今の時点で意見集約できそうだと思われる課題は、国民投票法に関連した見直し作業です。この課題については、特に、ネット社会の進展などによって、当初の国民投票法のあり方では公平、公正な国民投票の実施が出来ない、新しい要素を入れた見直しが必要だという方向性は、確認できていると思います。その原案作成のための作業部会などの設置も含め、前に進めることが出来るのではないでしょうか。

第二に考えていかなければならない事は、国民との対話です。多くの皆さんに指摘されているように、憲法議論に対する国民の関心は、まったく低いものだと思います。この現状を踏まえれば、憲法改正ありきを前提に、それを政治キャンペーン化して利用することは、厳に慎まなければならないと思うのです。

具体的な憲法課題を抜きにして、単に、憲法改正に賛成か、それとも反対かの2極化した世論形成は、国民の中の憲法議論を空洞化します。私達が、審査会の議論で抽出した憲法課題を、国民に投げかけて、幅の広い議論を喚起することを考える必要があります。憲法学者だけでなく、それぞれの分野での有識者を交える討論会や、地方での公開の公聴会の開催などと同時に、マスコミを通じた広報などを提案します。

国際的にも様々な課題に直面している時です。憲法を通じて、私たちの基本的な「生き様」を再検証し、次の時代の生き方を示していけるような審査会の議論にしていきたい。その思いをもって私の発言といたします。

(憲法審査会での発言から)

2023年12月06日

2023ピーススクールを開催しました【3/28報告動画追加掲載】

11月17日から19日まで、二泊三日の日程で「平和フォーラム2023ピーススクール」を開催しました。

ピーススクールは、平和運動を担う若い世代を育成することを主な目的として、様々な課題を丁寧に伝え、共に考える場として、今年で4回目開催をむかえました。講演やグループワーク、フィールドワークを通して、平和運動や原水禁運動、人権課題などの現状や課題を学ぶ機会とするものです。

今年は、全国各地から32団体の41人が参加し、職種や世代も違う6~7人でグループをつくり、課題ごとに意見交換をおこない、同世代の仲間と問題意識を共有しました。

最終日には、グループワークの総集編として、「安全保障に関する防衛力の強化」「原発推進政策」「労働組合の政治活動・平和運動積極参加」をテーマに、賛成・反対に分かれ、ディベートを行いました。本来の自分の考えと違う立場で主張を展開することは大変だったようで、時に笑いも起きながらのやり取りが続きました。

また、一部参加者はピーススクール終了後に開催された「19日行動」にも参加し、より実践的に学びを深めました。

事前にハードな日程表を見ていた参加者たちは「難しそう」「大変そう」というイメージを抱えて参加したものの、「学びが多かった」「貴重な経験になった」という感想も多く寄せられ、参加者同士の交流を楽しんでいました。

ピーススクール参加者の皆さんが、今回得た経験を活かし、それぞれの職場や地域での活動で、さらなる活躍をされることを期待しています。

 

ピーススクール日程

 

報告動画を追加しました(3/28追記)

 

2023年12月01日

憲法審査会レポート No.28

今週は参議院憲法審査会不開催のため、衆議院憲法審査会のみのレポートです。

【参考】

岸田首相、憲法審の経験なし 辻元氏「改憲姿勢は右派向け」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023112700714&g=pol
“岸田文雄首相は27日の参院予算委員会で、衆院憲法審査会など国会の憲法審議組織に所属したことがないと明らかにした。立憲民主党の辻元清美参院議員は、首相が改憲に前のめりだと指摘し、「自民党総裁再選のために右派をつなぎ留めたい(からだ)」と批判した。”

自民議連、改憲論議加速へ意欲 衛藤氏「年内に条文案」
https://www.47news.jp/10200408.html
“来年9月までの自民党総裁任期中の改憲実現に意欲を示す岸田文雄首相に関し、衛藤氏は総会後、記者団に「実現できなければ岸田政権は終わりだ」とも言及した。”

2023年11月30日(木) 第212回国会(臨時会)
第4回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54793
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

「広報協議会」で討議 役割巡り賛否交錯―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113000150&g=pol
“衆院憲法審査会は30日午前、憲法改正発議に伴い設置する「国民投票広報協議会」の規定について討議した。新聞・放送広告の掲載手続きなど、国民投票に際して同協議会が担う事務について各党が意見を表明した。”

維・国、改憲論議の継続要求 条文案の早期作成で―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023113001185&g=pol
“維新の青柳仁士氏は「審査会開催をできる限り増やして討議を加速させるべきだ」と主張した。国民の玉木雄一郎代表も緊急事態条項の創設に絞った作業部会の設置を要求。自民党の中谷元氏は「憲法改正できるよう最大限努力していくことは当然の責務だ」と同調した。”
“これに対し、立憲民主党の階猛氏は期限を区切って改憲を目指す首相の姿勢に触れ、「改正の内容を示さずに、期限だけを指定するのは百害あって一利なしだ」などと反発した。”

賛成会派だけで改憲条文検討も 公明、立民に早期結論を要求
https://www.47news.jp/10200017.html
“国民の玉木雄一郎氏は、岸田文雄首相が来年9月までの総裁任期中の改憲に意欲を示していることを踏まえ「任期延長など緊急事態条項について条文案を取りまとめることが現実的ではないか」と主張した。”

衆院憲法審査会 国民投票の広報などめぐり 各党が主張展開
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231130/k10014273331000.html
“衆議院憲法審査会が開かれ、憲法改正の発議後に行う国民投票の広報のあり方や、今後の議論の進め方などをめぐり、各党が主張を展開しました。”

【傍聴者の感想】

11月30日、10時から衆議院憲法審査会が開催され、各党・会派からの意見表明と質疑が行われました。

所信表明演説で岸田首相が、来年9月の任期までに憲法改正を図りたいと発言したことについて、与党と首相の間で真意を確認し、調整がしたかどうかが問われました。自民党の中谷元・与党筆頭幹事は個人的なこととして答弁を控えるとして答えませんでした。「個人的問題」としてすまされるような問題ではないし、責任ある政党としての態度でもありません。いっぽう議論の中で、改正に向けての「熱意が感じられない」(維新・国民)などとの発言が出るありさまでした。

しかし、今期も会期日数がわずかで、発議に向けた法案や関連する法案の内容も具体的に詰められていない中で、首相の言う9月までの改憲は幻でしかありません。
それに関連して改憲派の委員からは、閉会中の審議の継続や改正に向けたスケジュールを示せという声があがりました。

また今回の議論に上がった国民投票法や国民広報協議会の在り方、緊急事態と議員任期の延長問題を巡って与野党での議論はまだまだ隔たりがありました。

緊急事態について、公明党の北側一雄委員は、「議論が煮詰まっており、立憲民主党として「態度を明らかに」と迫り、与党単独で審議に入ると圧力をかけてきました。しかし緊急事態とはいったいどのような事態を具体的に想定しているのかも示さず、条件だけを羅列して具体的な想定もないまま、自民党の石橋茂議員が発言したように「本当に現実味を持って議論されるのか」という指摘に十分にこたえられていません。

国民広報協議会のありかたも、デジタル化、IT、フェイク情報など様々な課題があり、近年その状況が著しく反化する中にあって、どのようにしていくかは議論が煮詰まっておらず、広報の規制の問題も自民党は「政治的表現の自由にかんがみ、できるだけ自由に規制を少なく」という立場で、立憲民主党は公平・公正の立場から規制を設けることと対立する主張をしていました。

国民投票法の中でネット広報をどこまで規制できるか、さらにフェイク情報にどのように対応していくかも十分議論されてはいませんでした。

今回の会議でも自公の他に維新や国民は改正に向けて議論を加速させる発言が目立ちました。しかし最後に発言した石破議員の共同通信の世論調査で憲法改正について国民の関心がたった7%としかなかったことに委員会は危機感をもつべきだという指摘は、改正を急ぐ委員に対して向けられてものでもあったようにも思えました。「本当に現実味を持った議論がなければ」国民は関心を示さないということだと思います。

国民世論との隔たりをかかえたままの改憲論議は危ういものでしかありません。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

「公明が立民に最後通告? 改憲会派だけで改憲案づくり示唆」―2023年11月30日衆議院憲法審査会

戦争をさせない1000人委員会ウェブサイト「壊憲・改憲ウォッチ(36)」より転載
http://www.anti-war.info/watch/2312011/

タイトルは『産経新聞』2023年12月1日付〔電子版〕の見出しです。

憲法審査会についての『産経新聞』の記事の内容には賛同できないことが多いですが、11月30日の衆議院憲法審査会の上記の見出しについてはその通りでした。

公明党の北側一雄議員は議員任期延長の改憲論について「議論が相当に詰まっているのは間違いない」と発言した上で、立憲民主党が賛成しない場合、「賛成会派だけで条項案についてもやはり検討していくようなステージに入ってきていかざるを得ないんじゃないかな、その時期が近づいてきているように思う」などと発言しました。

公明党は立憲民主党を抜きにして、改憲5会派だけで改憲条文案づくりをすすめることを示唆しました。

日本維新の会の青柳仁士議員は、広報協議会の関係規定の議論について、立憲民主党・社民党と共産党を念頭に置き、改憲阻止のために「無為に遅らせる議論」を「工作」とした上で、「全会一致」でなく、「機が熟すれば多数決という民主的な手続でなされるべきです」と発言しました。

国民民主党の玉木雄一郎議員も「少なくとも4党1会派ではおおむね意見の集約が図れていると思います」と発言した上で、「議員任期の特例延長規定を創設するための憲法改正の条文案を作る作業部会の設置についてぜひお願いしたい」と発言しました。

2023年11月、新潟県で護憲大会が開かれました。

パネリストとして参加していた新垣邦男議員は、「国政に出る前は北中城村長を長くやっていたんですが、国会というところは格式高い、すごく高邁な議論をしているんだろうなと思っていたんです」と述べていました。

新垣議員が批判するように、衆議院憲法審査会ではレベルの低い主張がされています。

日本維新の会や国民民主党は「自民党の熱意と本気度がなかなか感じられない」(玉木雄一郎議員)などと自民党を批判しました。

公明党も強行的な憲法審査会の運営を示唆しました。

11月30日の憲法審査会の最期に発言したのが石破茂議員でした。

彼は、たとえば以下の主張をしました。

「なぜ〔参議院の〕緊急集会ではだめなのかという議論が私は十分だと思っていません」。

日米地位協定について、石破氏が防衛庁長官であった2004年に沖縄国際大学にCH53が墜落したときに日本の警察が全く入れなかったことなどを例に挙げ、「本当にそれが独立国家のあるべき姿か」と批判し、「地位協定の改定も含めて早急に議論しなければ、独立主権国家日本たり得ない」と発言しました。

私は折に触れ、「日本維新の会や国民民主党の主張を聞くと、自民党がまともに見える」と発言してきました。

たとえば日米地位協定や憲法に関する主張や結論、石破議員と私は根本的に違いますが、それでもきちんと現実を踏まえて丁寧な議論をしようとする姿勢はそれなりに感じられます。

一方、圧倒的多くの国民が求めてもいないのに憲法改正国民投票を「国民の権利」などと発言し、まだ十分な議論も尽くされていないのに公明党、日本維新の会、国民民主党は強行的な手続・手段を主張します。

こうした状況で改憲の条文案が作成され、改憲が進むことが本当に国民のためなのでしょうか?

【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

前回の衆院憲法審査会で自民党の中谷筆頭は、憲法改正や国民投票は、国民に理解していただくためにはプロセスや内容が非常に大事だと発言しました。その後、岸田首相は、来年9月までの自民党総裁任期中の憲法改正を目指す旨を答弁しました。

そもそも岸田首相は、憲法改正の期限にはこだわるものの、改正の内容についてはこだわりが見えません。22日の予算委員会でも、三木委員から緊急事態の際の議員の任期延長について憲法改正議論を進めることについて見解を問われ、答弁を避けました。

憲法改正の期限については自民党総裁の立場を持ち出して積極的に答弁しつつ、憲法改正の内容については内閣総理大臣の立場を持ち出して答弁を避ける、極めて御都合主義の姿勢です。

今に始まったことではありませんが、岸田首相は、ぶれずに一貫した言動を取るべきです。仮に内閣総理大臣の立場にこだわるのであれば、行政府のトップとして憲法尊重擁護義務を負う以上、憲法改正の期限に言及すべきではありません。他方、自民党総裁の立場にこだわるのであれば、憲法改正の内容を示さずに改正の期限だけを指定するのは、建築工事の発注において、設計図を示さずに完成時期を指定するようなものです。立ち位置が定まらない岸田氏の発言は百害あって一利なしだと指摘します。

さて、憲法に関し国会が何を優先して議論すべきか。今年5月の朝日新聞の世論調査が参考になります。 それによると、7項目の中からの複数回答で、1位が憲法改正のための国民投票の在り方で46%、2位がデジタル時代における人権保障の在り方で44%、3位が敵基地攻撃能力の保有で43%です。緊急事態時の国会議員の任期延長は18%にすぎず、下から2番目です。

わが党は、国民が最も関心を持っている上位2つのテーマにつき、通常国会終了後にワーキングチームをつくり、私が座長となって検討を進めてきました。

デジタル時代における人権保障のあり方については、生成AIの急激な発達、普及や戦闘地域でのフェイク情報の拡散により、先ほどの世論調査の時点よりも更に国民の関心は高まっていると思います。

私たちは、インターネットとSNSの普及に加え、昨今のAIやデジタル技術の急速な進展が国民に多くの恩恵をもたらしていることを否定するものではありません。他方で、利用者の関心を引きつけることを重視するアテンションエコノミー、対象者の特性や個人情報を分析し、嗜好や行動パターンを推測して情報提供するマイクロターゲティングの悪影響は看過できません。そして、こうした手法などにより、個々人が自分の趣味、嗜好に合う情報だけに取り込まれてしまうフィルターバブルや、同じような意見を持つ者同士で議論を重ねて極端な考えに至るエコーチェンバーという現象が見られるようになっています。

また、誤情報、偽情報といった有害無益な情報や他者を傷つける情報が拡散し、周知されやすくなる一方、本来拡散、周知されるべき公共の利害に関わる重要な情報については、公権力による廃棄、隠蔽、改ざんや報道機関への圧力によって拡散、周知されにくくなっている状況が生じていることは極めて問題です。

これらの結果、社会の分断が進み、民主主義の前提たる建設的な議論が困難になるほか、個人の意思形成過程がゆがめられ、内心の自由が侵される憲法十九条の問題、本人に無断でその人物像が形成、利用され、個人の人格的自律が脅かされ憲法十三条の問題、匿名による無責任な誹謗中傷や個人情報の発信、拡散により名誉権やプライバシー権が侵害される同じく憲法13条の問題、国民が本来入手すべき情報を入手できないことにより言論の自由や取材、報道の自由が空洞化する憲法21条の問題などなど、数々の憲法問題が現に生じたり、将来生じたりする危険が高まっています。

以上の問題を解決する方法として、現状の憲法規範には手を加えず、法令で必要な措置を講じるべきか、それとも、憲法規範そのものを必要な範囲で見直すとともに、これを具現化する法令を制定していくべきか、両論あり得ると思いますが、議論に際しては、憲法が志向する国家観が大きく変容してきたことを念頭に置くべきと考えます。

すなわち、19世紀以前の憲法は夜警国家を志向し、国家の役割は極力限定して、国家からの自由を保障することが中心でした。しかしながら、産業資本主義と都市化、工業化の進展により、二十世紀の憲法は福祉国家を志向し、国家による自由を保障するようになりました。そして21世紀の今、金融資本主義とグローバル化、デジタル化の進展により、憲法は情報国家、つまり、国民の自己実現と自己統治にとって不可欠な思想、言論の自由市場を機能させるために国家が積極的な役割を果たす国家、これを志向する必要があるのではないでしょうか。

こうした歴史的視座に立った場合、情報国家にふさわしい憲法はどうあるべきかというテーマは極めて重要です。憲法改正という選択肢も視野に置きつつ、党派を超えて建設的な議論を行うべきです。

衆院憲法審査会では、これまで国会議員の任期を延長すべしという意見があちらからもこちらからも上がり、響き渡ってきました。これぞまさしくエコーチェンバーです。衆院憲法審査会が時代や民意から隔絶されたフィルターバブルに陥ることなく、国民が真に望む重要なテーマについて腰を落ち着けて虚心坦懐に議論する場となることを切に望みます。

(憲法審査会での発言から)

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