集会等の報告

2010年12月11日

第42回食とみどり、水を守る全国集会・分科会報告

 

平和フォーラムは、農民団体、消費者団体などとともに、12月10日~11日、東京・千代田区の日本教育会館で「第42回食とみどり、水を守る全国集会」を開催しました(既報)。
全国集会2日目にはフィールドワークを含め6つの分科会が開かれ、1日目の全体集会や分散会での提起を受け、それぞれ活発な議論・活動交流が行われました。

 

 第 1 分 科 会

第1分科会

第1分科会「食の安心・安全・安定をめぐって」では、最初に群馬県教職員組合書記長の川口正昭さんから、安心・安全でおいしい学校給食を提供するためのとりくみについて報告されました。

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高崎市では2004年から、「安全でおいしい給食を子どもたちに食べさせたい」という栄養教職員を中心に地場農産物の活用が始まり、農家や農協の直営店、共同選果場、福祉施設等から32品目購入。市内すべての自校方式小中校園及び給食センターで使用している。さらに、安全・安心

な国産大豆の使用、「高崎しょうゆ」や「高崎特栽ソース」の開発商品の利用、高崎特別栽培米、「高崎うどん」の利用などが図られている。また、給食の生ごみ(野菜くずや残渣)を回収し、堆肥化している。地場産野菜の使用量は年々増え、年間野菜使用量のおよそ35%(2008年度)になった。新鮮な地場産物を給食に使用していることから、子どもたちも苦手な物も食べられるようになり、家庭でも安心・安全な地場農産物への関心が高まってきた。今後の課題として、合併をして大きくなった高崎市の学校給食全体に、必要な量の地場農産物を供給することができるか。学校給食に使用できる地場農産物の種類を増やすには、どのようにしたらよいかなどがあげられました。

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次に東京都福祉保健局健康安全部・食品医薬品情報担当課長の渡部浩文さんから東京都における食の安全・安心に関するとりくみについての報告がありました。東京都食品安全条例(平成16年3月制定)の内容や、同条例と東京都食品安全審議会、食品安全対策推進調整会議等による食品安全推進体制の説明、食の安全・安心情報の提供の方法、食品等の監視・検査では、JAS法に基づく表示適正化対策、食品の適正表示推進者の育成などを行っていることを報告されました。渡部さんは「リスク評価は国がやっているので、国が遅れている部分をやれる条例を都は作っている。リスクコミュニケーションは消費者からの考えを聞く場と考える」と述べられました。

参加者との質問・応答では、全国的には学校給食が自校方式からセンター方式、民間委託化が進んでいる現状や、非常勤の栄養士が多いこと、調理員の仕事を格上げすべきことなどが訴えられ、討論がされました。

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助言者の神山美智子さん(食の安全・監視市民委員会代表)からは、「食品安全委員会は消費者側に立つ視点が大切であり、リスクの管理も含め、食品安全庁にすべきである」との提起も行われました。

最後に、環太平洋連携協定(TPP)などの貿易自由化では、食の安全基準も引き下げられることなども訴えられ、消費者・生産者の提携の重要性が確認されました。

 第 2 分 科 会

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第2分科会「食料・農業・農村政策をめぐって」では、農業政策の展開、所得補償政策などの政策展望と課題、TPP(環太平洋連携協定)などの農産物輸入の動きと今後の運動等に焦点を当て、討論を行いました。助言者に東京大学大学院農学生命科学研究科教授の谷口信和さん、報告者には、農業団体関係者として北海道農民連盟書記長の白川祥二さん、自治体“農”ネット元代表の堀井修さん、行政関係者として農林水産省大臣官房政策課上席調査官の山口靖さんから、それぞれ報告して頂きました。

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北海道農民連盟書記長の白川祥二さんは、北海道農民連盟の運動の一つとして、戸別所得補償制度導入に関する提言を説明。特に、北海道では約30万haを有する畑作(小麦、てん菜、馬鈴薯、大豆など)に対する戸別所得補償制度については、持続可能な畑作農業を実現するため総合的な所得補償制度の確立が重要である。また、TPPによる北海道への影響を説明。北海道経済の重要な地位を占める農業や関連産業に重大な影響を与えるとし、TPPについては反対である、とされました。

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自治体“農”ネット元代表の堀井修さんは、1960年代に118kgであった米消費量が現在では60kgまで半減した。減反ではなく、どうすれば米の消費を拡大できるかを施策とし、米を中心とした食生活に回帰すべきだ。パンと比べ、体内のインシュリンの分泌が緩やかな米粒を食べなくなったことが糖尿病患者の増加した一因であるとし、健康面からも米食は良いことを紹介されました。

 

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農林水産省大臣官房政策課上席調査官の山口靖さんからは、現在の農林水産省の取組みについての紹介があり、地域を生かした6次産業化、各地域の食文化の観光資源としての活用、日本の農産物の輸出、バイオマス等の再生化エネルギー、環境保全に係る交付金、介護福祉と食の連携、生涯食育社会、総合的な食料安全保障の確立などを説明されました。

これらの報告の後、参加者との意見交換をおこない、「国民に米を食べるようにどのように促すのか」、「米価低迷を引き起こしているのはマニマムアクセス米ではないか」、「シカ、サルなどの鳥獣害被害が多いため、何か対策はないか」、「集落営農ではなく集団営農として取り組むにはどうすればよいか」などの発言があり、それぞれ助言者・報告者から応答、助言をする形ですすめられ、活発な議論がなされました。

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分科会の締めくくりに、助言者である谷口信和さんから、神奈川県での都市隣接型の農業の取組みなどが紹介され、生産者と消費者、農業者と都市住民の結びつきが大切なことが強調されました。

 

 

 

 第 3 分 科 会

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第3分科会「水・森林を中心とした環境問題をめぐって」では、最初に4名の方から報告を受けました。

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最初に合成洗剤追放全国連絡会の岩野淳事務局次長が、「水環境の再生に向けて─水質の現状と課題から考える」として、化学物質に関する最新の制度や雑排水の半分は合成洗剤であるとレポート報告。「水質問題解決には化学物質に関する基本法も必要」とし、さらに「この10年間、相模川の水温は毎年0.1度づつ上昇」と、桂川・相模川流域協議会の活動も紹介しながら水基本法の必要性について提起しました。

 

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東京電力環境部尾瀬・緑化グループの桒原泰穂さんからは、「尾瀬の水環境整備の取り組み」について、水力発電開発が計画された尾瀬国立公園の4割の土地を東京電力が継承していること。尾瀬の美しさは国民的財産であり、「緑」「水」「空気」をキーワードに、木道の維持管理、湿原の回復、浄化槽を完備した公衆トイレの設置等の自然保護活動に取り組んでいることが報告されました。

 

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つづいて杉山豊治連合社会政策局長から、『連合の「水基本法(仮称)」の考え方と森林・林業政策』が提起された。「地下水を含め水は公共財」、「良好な水環境を享受することは国民の権利」、「水道・下水道事業は公共サービス」「水環境への負荷の軽減は国民の責務」等、水基本法の論点と検討状況について報告。「日本は環境と成長が両立可能な潜在能力を持つ数少ない国だ。中・長期の視点に立ち水循環はじめ持続可能な成長モデルを創り、世界の環境問題に貢献していくことも求められる」との問題提起が行われました。

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全建総連・建設ユニオン多摩支部の大平善之さんは、「都市と山林─地域材活用、資源・水環境保全の取り組み」について報告。東京都の4割が森林面積だが、その7割が多摩地区に偏在。森林はCO2の固定・吸収と循環型社会の基盤でもある。国産材の利活用・需要創出から森林整備へ、経済循環から環境循環へと、八王子市での多摩材を使った地産池消の取り組みも紹介しながら訴えました。

 

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この後、参加者からの報告・質問に応え意見交換をし、助言者の高橋裕さん(東京大学名誉教授)と岡田秀二さん(岩手大教授)からは、水基本法の具体化のための課題やダム開発と生態工学、水ビジネスをめぐる動向、「森林・林業再生プラン」の実行に向けた課題などが提起され、さらに、貴重な日本の自然について教育の場で取り上げることが緊要であることも強調されました。

 

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さらに、水・森林を通じ地域から新たな公・共を再生していくことが共通したテーマである等の助言を受け、最後に、「緑と水は全ての生物の源。集会で学んだことを地域に持ち帰り、国民運動へと広げていこう」と確認しあいました。

 

 

 

 第 4 分 科 会

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第4分科会「フィールドワークその1─東京の里山復活と地域資源を活かす取り組み」は、「東京の里山復活と地域資源を活かす取り組み」として炭焼き施設、交流施設、里山づくりなどを視察しました。会場となったDAIGOエコロジー村は最寄駅のJR高尾駅からバスで約30分移動した東京の西の外れに位置し高尾山の北側の山間に展開されています。

エコロジー村村長の尾崎さん(元八王子議会議員)、教育長の幸地さん(元東京教組役員)から歓迎のあいさつを受けました。尾崎さんは通称「炭焼三太郎」と呼ばれていて、座学の会場となった小屋(三太郎小屋)のオーナーでもあり、またDAIGOエコロジー村のオーナーでもあります。また、幸地さんは三太郎小屋を交流施設としてスペースを利用し、退職した組合員の生涯活動の発表の場やコンサート会場として活用することを通じて、エコについて学んだり、自然と触れ合う機会を設けるなどの取り組みを地域の労働団体(自治労、全建総連首都圏建設ユニオンなど)やNPO法人日本エコクラブとの連携で展開しています(エコプロジェクト)。

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そもそも三太郎小屋は、養蚕農家が使用していた古民家を改修しオープンスペースを作り、ギャラリーやミニコンサートなどに活用しています。座学では、NPO日本エコクラブの川口さん(エコロジー村助役)からエコロジー村の活動の紹介を受けました。DAIGOエコロジー村は1996年に八王子市恩方醍醐地区において、江戸時代に大奥に大変重宝がられていた案下炭(あんげずみ)の再現を目的に有志により始まった炭焼き活動が原点でした。2001年にNPO法人日本エコクラブの傘下の団体会員となり、同クラブの主要活動フィールドのひとつとなっています。

里山の斜面を利用して大小おおよそ10以上の炭焼窯が設置され、関東では最大規模の炭焼村となっています。会員は個人会員、団体会員からなっており、気軽に炭焼きを楽しむとともに、環境教育の普及啓発活動の場や、八王子市教育委員会をはじめ各教育機関の実践の場としても活用されています。また、村内における森林活動もエコロジー村の重要な取り組みのひとつで、定期的な下草刈りや間伐、東京都の美しい森作り事業を利用した広葉樹の植樹、専門家による林業体験なども実施されています。この他にも「DAIGOどんぐり銀行プロジェクト」、「炭焼三太郎小屋プロジェクト」、「星の見える丘プロジェクト」(東京都桧原村での活動)、「多摩の森救援隊プロジェクト」、「エコプロジェクト」などエコロジー村を中心にそれぞれの団体やメンバーが参加し活動の拠点として利用されています。

座学の後、DAIGOエコロジー村の拠点でもある炭焼窯の現場に移動し、白炭や竹墨の窯だし作業の実演を視察しました。また、自治労八王子市職員労組の手作りの豚汁などを食べながら、東京の中にもある里山の自然を満喫しました。

 

 第 5 分 科 会

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第5分科会「フィールドワークその2-東京の農業と市民体験農園の取り組み」は、東武東上線「和光市駅」に集合し、バスに乗り、「白石農園」へと向かいました。「和光市駅」が埼玉県であることから分かるように、東京都練馬区は埼玉県と接し、都市化が進んでいるものの、西側地域にはまだまだ多くの農地が残されています。都市化が進んだ地域での農業のあり方と多面的な効果について、現場を見ながら学びました。

まず、練馬区の農業振興施策について、練馬区役所の都市農業課長が説明を行いました。練馬区では、産業として農業を育成するだけでなく、農業が持つ癒しの効果、教育的効果、自然環境保護、さらには地震などの災害時の避難場所としての活用など、多面的効果に着目して農業及び農地の保全に努めていると話されました。

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「白石農園」に隣接している農園レストランでおいしい昼食(南フランス料理)をとり、白石好孝さんの講演がありました。いうまでもなく昼食で使われた野菜は、農園で採れたものでした。

白石さんは、15年ほど前に、キャベツを中央卸売市場に出荷した際に、有名な高原キャベツと自分の作ったキャベツが鮮度、質から考えると遜色がないのに、大きな値段の差がつけられ、そして、自分のキャベツはその後どのような扱いを受けるのか分からない、厳しく言えばくず野菜扱いを受けるような気がして、中央卸売市場に出すのをやめ、自分の農業のあり方を地元に密着した形で再構築しなければならないと考えはじめ、現在の「市民体験農園」にたどり着いたと述べました。

「市民体験農園」は単なる農地の貸し出しではなく、農業のカルチャースクールとして、農作業計画を白石さんがたて、それに即して参加者に農作業をお願いしているため、整然とした感じでした。誰が農作業計画を作っているのか、そこが農地法上とても重要であるという話でした。

白石さんの話は大変おもしろく、参考になるものでした。また、「白石農園」で小さな子どもが土の上を寝ころんだりしているところを見ると、本当に農業の持つ多面的効果というものを感じさせてくれる内容でした。

 

  第 6 分 科 会

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第6分科会「フィールドワークその3─水路都市・東京と築地市場をめぐる」では、両国駅前に集合した35人の全国から参加者と事務局を担った自治労都庁職3人が「東京水辺ライン」の水上バスに乗り込み、築地市場に向けて出発しました。片道20分の短い旅程でしたが、墨田川両岸の歴史をめぐる説明を聞きながら、船は進みます。当日は、隅田川の水位が高く、橋の下をくぐる際は屋根の上の2階席で立っているとぶつかりそうになるスリル満点の状態で、参加者からその度に歓声が上がっていました。

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築地市場の勝鬨門から市場内の厚生会館に入った一同は、築地の仲卸「鈴与」社長・生田與克さんから、魚と漁業に関する講演を受けました。生田さんは、著書として「日本一うまい魚の食べ方」、ホームページ「魚河岸野郎」を開設するなど、各方面で活躍中の方です。べらんめい調で始まった講演は、魚河岸の人々の気質の話から、美味しい魚の食べ方、マグロ漁の辛さ、幅広い体験に基づき興味が尽きない話題が続きました。

限りある資源を乱獲する遠洋漁業の実態と、飽くことのない消費者の要求、それに応える商売を見直さなければならないことを痛感し、集会の趣旨にふさわしい内容となりました。それにしても、加工食品の実態を聞くとネギトロはもう食べられなくなってしまいました。

その後、自治労都庁職の中央市場支部の案内で場内見学を行い、市場の構造や実態に触れることができました。最後は、お待ちかねの昼食で、ふぐ料理で有名な天竹で会食し、解散となりました。築地の実態と、漁業と消費の在り方を考えさせられ、そして美味しい分科会となりました。

 

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