2011年、東北アジア平和キャンペーン、集会等の報告

2011年06月16日

200人参加し「東アジアとの新しい連帯を求めて-教科書と歴史認識を考える全国集会」


集会の様子

 6月16日、平和フォーラムは「東アジアとの新しい連帯を求めて-教科書と歴史認識を考える全国集会」を東京ウイメンズプラザで開催し、約200人が参加しました。
 2010・2011年度の使用教科書に関して、新たに検定合格した「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」編の自由社版中学校用歴史教科書が横浜市の18採択区のうち8区で採択され、扶桑社版が愛媛県今治市や同上島町において新たに採択されました(2009年8月)。杉並区や栃木県大田原市などを加え、採択率を1.7%に伸ばしています。
 新指導要領に基づく中学校用歴史・公民教科書に関しては、1.アジア蔑視と東京裁判の否定を基本に歴史を歪曲し侵略戦争を美化する、2.各時代の権力側の視点に立って、働く者や女性や弱者を差別・軽視するという内容の「つくる会」と「教科書改善の会(改善の会)」が編集した教科書がそれぞれ検定を合格しています。
 平和フォーラムは、東アジアとの新しい連帯を築くことを目途に、日中・日韓共同宣言や村山首相談話(1995年8月)の内容を超える新たな首相談話を求めるとともに、そこに示された、これまで日本政府が公式な見解としてきた歴史認識を基本として教科書検定を行うことなどを求め「東アジアとの新しい連帯を築く」署名(394,201筆)を集約し、政府・文部科学省などへ提出しました。こうしたなか、菅直人首相は、不十分ながらも植民地支配を謝罪するなど首相談話を発表しました(2010年8月10日)。
 つくる会系教科書の検定合格にアジア諸国民からの抗議の声が高まっています。文科省の教科書検定の姿勢は、教育にあからさまに政治を持ち込むことであり、世界に通用しない自己本位の歴史観を容認するものです。
 集会はこうした立場から、高島伸欣琉球大学名誉教授が「戦後民主主義の破壊をもくろむ教科書を斬る」、上杉聰大阪市立大学講師が「つくる会教科書とは何か」をテーマに講演、育鵬社・自由社版教科書の内容と問題点を詳しく指摘しました。
 高嶋さんは、「つくる会」系の教科書が2社に増え、その1社の育鵬社は、3月の震災を「国難」とし、被災地を訪れる天皇を取り上げて賛美していると説明。自由社の教科書を使用している横浜市教育委員会の講演で、「つくる会」系の教科書を応援する桜井よし子さんが、福島瑞穂さんの慰安婦問題に関する発言について虚偽の報告をしていること。桜井さんが応援する間違いだらけの教科書が「つくる会」系の教科書であること。自由社の歴史教科書は、2010年度用では検定意見516が指摘され、さらにその後には、巻末の年表盗用も発覚しているという欠陥本であること。教科書採択の背後には、金まみれの保守勢力がいること。それは原発に関する記述にも表れ、1981年には、「公民」を出版している7社のうち5社までが、当時の文部省の指導により、原発の記述が「危険」から「不安」に書き換えさせられていること。「安全神話」が教室から社会全体に広められて30年になること、などを話しました。
 日本の戦争責任資料センター事務局長でもある上杉聰さんは、「あなたはこんな危ない教科書を子どもたちに渡せますか?」と題するわかりやすくプレゼンテーション。「つくる会」系の教科書は、平和は軍事力によってしか守れないと教える内容で、自衛隊と兵器の写真が満載していること。また、徴兵制のある国を積極的に紹介し、軍隊をなくした「コスタリカ憲法」を紹介する他の教科書とは大きな違いがあることなどを指摘しました。
 また、集会では韓国から参加した「アジアの平和と歴史教育連帯」の梁美康さんが連帯あいさつ。「つくる会」系の教科書が2社に増えてしまったことに大変危機感を持ったえており、「近隣諸国条項」を検定基準とした教科書の採択をと訴えました。

 → 「教科書白書2011(歴史的分野・公民的分野)PDF版」
 → チラシ「開かれた教科書採択を!~子どもたちにより良い教科書を」

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