2011年、人権コーナー、東北アジア平和キャンペーン、集会等の報告

2011年06月23日

「即刻朝鮮高校に『無償化』を!6.23集会~全国署名・集会・あらゆる行動へ」に1000人参加

集会の様子

 「即刻朝鮮高校に『無償化』を!6.23集会~全国署名・集会・あらゆる行動へ」が6月23日、東京・豊島公会堂で開かれ、市民・在日・日本全国や韓国からもかけつけた約1000人が参加しました。主催は327団体が賛同する「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」。平和フォーラムは集会を共催しました。
 朝鮮高校への無償化適用をめぐっては、昨年11月末までに全国10校からの申請を文部科学省が受理。しかし、菅政権は「外交上の配慮は判断材料にしない」との政府見解とは裏腹に、同月に起きた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による韓国砲撃事件を理由に適用の可否を判断する審査の実施を停止し、2010年度の3年生約600人は助成金支給を受けられないまま卒業するにいたりました。
 集会は、連絡会事務局長の長谷川和男さん(東京教組)の主催者代表あいさつ、韓国の歌手ソン・ビョンフィ(孫炳輝)さんの歌、監督のイ・ジサンさん、歌手のアン・チファン(安致環)さん、俳優のクォン・へヒョ(権海孝)さんの3人の韓国からのビデオメッセージ、藤本泰成平和フォーラム事務局長の共催者代表あいさつ、韓国映画監督キム・ミョンジュン(金明俊)さんのメッセージ、名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟支援する会の寺尾光身さんと韓国からかけつけた市民団体20人の紹介と連帯アピール、昨年の韓国強制併合100年日韓市民共同宣言実行委の日本側代表の伊藤成彦中央大学名誉教授から東日本大震災で大きな被害を受けた朝鮮学校にあてた義援金60万円を関係者に手渡しました。なお、韓国では東日本大震災で被害を受けた朝鮮学校の復旧を支援する市民団体「モンダンヨンピル」のとりくみはすすめられていますが、キム・ミョンジュン監督は実行委員長、ビデオメッセージのイ・ジサン監督、アン・チファンさん、クォン・へヒョさんもメンバーです。
 このうち、長谷川事務局長は、「民主党政権は政治も外交問題もかかわりなく無償化を実現すると言ってきたにもかかわらず、朝鮮学校だけがいまだに適用されていない」と語気を強め、「国籍や民族を問わず、日本で学ぶすべての子どもたちに一切の差別がないようにすること、裁判を含め朝鮮学校に即刻『無償化』を適用する方法を確認し合うために集会を開いた」と「無償化」実現までたたかうことを提起。藤本事務局長も、日本社会が未だに克服できていないアジア蔑視の構造を、自分たちの運動が打ち壊せていないことを詫び、「日本社会が一番大事にしなければならないことは、一人ひとりの思い、命に寄り添っていくことだ。そういう社会をめざすためには、『無償化』制度から朝鮮学校を外すことがあってはならない」と述べました。
 韓国の日本大使館前で「無償化」のために一人デモを行っているソン・ビョンフィさんは、「子どもたちよ、これがウリハッキョだ」などの歌を披露し、激励のエールを送りました。北海道の朝鮮学校の日常を3年にわたり記録した映画『ウリハッキョ』のキム・ミョンジュン監督は、子どもたちを相手に、外交上の理由で「無償化」制度から朝鮮学校への無償化通用凍結に加えて東京や大阪など5都府県で朝鮮学校への補助金支給停止措置が行なわれたことにも触れ、「どうしてこのようにひきょうになれるのかと絶望感さえ覚える」と厳しく批判。その上で、無償化問題の本質について「一国の最高権力機関である政府が、その社会の一番の少数者である外国人、それも一番弱い立場にある子どもたちを人質にして自分たちがけん制する国家に政治的な圧迫を加えている。何と拙劣で、おかしな行為なのか」と強調。「支配者」の論理は市民たちの力で打ち壊さなければならない、これ以上、日本政府が子どもたちを人質にする政治をしないように歯止めをかけてほしいと訴えました。
 つづいて、ぜんこく各地からとして伊藤晃二日朝長野県民会議議長と中村元気福岡県日朝友好協会副代表(いずれも日朝国交正常化連絡会共同代表)からのとりくみ報告が行われ、広島からメッセージが寄せられていること、大阪でも1000人規模の集会が同時開催され、連絡会メンバーが連帯あいさつしていることなどが紹介されました。
 さらに、当事者からの発言として朝鮮高校在校生として東京朝鮮中高級学校高校2年生の金聖羅さん、保護者として東京オモニ会の韓英淑副会長、教師として全国朝鮮高級学校校長会会長の慎吉雄先生が登壇。金聖羅さんは、立派な朝鮮人に育つよう朝鮮学校に送ってくれている保護者たちと、共にたたかっている生徒たちの思いを代弁しながら、「日本市民のなかには、私たちを支えてくれる人たちが多いことを知っている。日本に住むすべての人たちが認め合い、心から応援し合える社会にしたい。高校無償化を適用する問題は、そのような明るい未来につながっていくと信じている」と訴えたほか、槇吉雄会長は、「在日朝鮮人の民族教育は植民地時代に奪われた言葉と文字を取り戻す教育」であり、無償化凍結が続くならば日本社会は「過去の反省どころか、またわれわれの大事な財産である朝鮮学校と民族の言葉を奪う共犯者になるのではないか」と警鐘を鳴らすとともに「日本の真の良心を高校無償化実現で示してほしい」と提起しました。
 集会は、今後のたたかいの方向性と訴訟準備についてをテーマに、「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」共同代表の田中宏さん(一橋大学名誉教授)、金舜植弁護士、愛知の裵明玉弁護士、長谷川事務局長が檀上のパネルディスカッションで意見交換。発言者たちは、「無償化」問題の流れを簡潔に説明し、各地方自治体で浮上している朝鮮学校への補助金凍結問題などに触れました。弁護士たちは、今後、近日中に日本政府が「手続き」を再開しなければ、弁護団を組み、法的手段をとる意向を示しました。金弁護士は、「裁判の準備も始めているが、打たれても打たれても、立ち上がった最後までたたかう精神力と行動力が一番重要だ。保護者も生徒も朝鮮学校に通って(通わせて)良かったと言えるようにしたい」と語りました。
 集会は、最後に、全国署名運動の展開、裁判支援などの行動が提起され締めくくられました。

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