2013年、集会等の報告

2013年04月03日

澤地久枝さん、山内敏弘さん講師に憲法問題連続学習集会第1回開く

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2012年12月総選挙は、改憲を掲げる安倍晋三総裁の自民党が294議席、石原慎太郎代表の日本維新の会が54議席をとり、合計で衆議院の3分の2議席を大きく超える結果となりました。7月の参院選で彼らの議席を増大させてしまえば改憲が政治日程に登場することは間違いなく、すでに改憲発議を3分の2から過半数に引き下げる憲法96条改定に、安倍首相は積極姿勢を見せ、「維新」やみんなの党と連携した動きもすすめられていることから、平和フォーラムは、自民党などの改憲論や衆参憲法審査会の動向に対するとりくみの一環として、毎月1回ペースで著名人の方が憲法に対する思いと考えを語るとともに、憲法学者が改憲論の問題点を指摘する連続学習集会を開始しました。
第1回目の学習集会が、4月3日、東京・連合会館で130人の参加者のもと、「さようなら原発1000万人署名」「九条の会」の呼びかけ人で作家の澤地久枝さんの「私と憲法」、一橋大学と獨協大学の名誉教授の山内敏弘さんの「憲法をめぐる状況と課題」の2つの講演が行われました。
このうち、澤地さんは、「総選挙の結果自民党が大勝して残念だったとみんな言うが、私はがっかりしたくない。国民は憲法改悪まで全権委任したわけではない。公務員は憲法を守る義務があるのに、安倍も石被も憲法違反もいいところだ」と政権の座で「改憲」を公言すること自体が問題だと指摘。自らの旧満州(現在の中国東北地区)からの敗戦後引き揚げ体験に触れながら、「戦後これほど憲法が危険な状態になったことはない。護憲や反原発でなかなか一つになれないのが現状だが、『改憲』させないために一つにならなければいけないとき」「どんな未来を残すのかを本気で考えなければならない」「もう一度態法の原点に戻って考え直そう」とアピール。戦後日本のあり方について澤地さんは、サンフランシスコ対日講和条約が米軍駐留継続を認める旧安保条約と同時に結ばれたことに触れつつ「日本は一日も占領から自由になった日はない。とくに、本土は形なりとも独立したかもしれないが、沖縄は占領下に置き捨てられた。天皇も(47年天皇メッセージで沖縄)占領が続くことを望むと言った」と指摘。本土復帰の72年に沖縄の人々が作った「憲法手帳」を掲げ、一日も早い平和憲法の適用を熱望していた沖縄の願いを裏切り続けてきた戦後の歴史を忘れてはいけないと訴えました。
山内さんは、憲法は戦後もっとも危険な状況にあるとともに、すでに「改憲」を先取りし地ならしする動きとして、生活保護バッシングや、産業競争力会議で「解雇の自由」が論議され、武器輸出3原則の見直し、領土問題でナショナリズムのあおりなどの点を指摘。自民党憲法草案の問題点は、表現の自由や結社の自由を制限する、集団的自衛権、国防軍、家族制度の強調など条文ごとにたくさんあるが、一番の問題は現憲法が「国家権力を縛るための憲法」であったのに対し、自民案は「国民を縛り、義務を課すための憲法であり、天皇は憲法に縛られない」ことが大前提になっている点とし、言葉では「国民主権」と記述されていても、憲法の上に天皇という権力が存在するのが特徴で、様々な国連の人権条約などにも違反する内容であること。前文にある「全世界の人の平和生存権」は自国民だけではなく国際平和を追求する世界に誇れる内容も、すっぽり取り去っていることも特徴としました。国会の改憲発議要件を「3分の2の賛成」から「2分の1」へと緩める憲法96条改憲論について「9条、人権条項、国民主権の改憲を行なうために外堀ないし内堀を埋めるためのもの」と述べ、単なる改憲に関する技術的な問題ではないと強調しました。自民党が96条改憲の根拠として、現憲法は「世界的に見て改正しにくい」としていることについて山内さんは(米国憲法の修正には上下両院の3分の2の賛成または全州の3分の2の州議会の要請という発議要件に加え、全州議会の4分の3の承認が必要とされていることを紹介し、「アメリカのことをいろいろモデルにするのならば、米連邦、州の例を踏まえた場合、日本国憲法96条の改正要件は厳しすぎるとは言えない」と指摘。併せて、国民投票における改憲成立には投票者の過半数の賛成に加え有権者の過半数の投票という要件がある韓国の事例(日本の国民投票法には最低投票率要件がない)、憲法の根幹部分に関する改正には国民投票に至る前に、国会議員の3分の2以上の多数決と解散、新たに選出された議員の3分の2以上の賛成が必要とされているスペインの事例も紹介しました。また、同じく自民が国会での手続きを厳格にすると国民の意思表明の機会を狭めるとの理由を挙げていることに関して、自民の新改憲草案が前文に「日本国は、天皇を戴(いただ)く国家」との規定を盛り込むとともに、天皇の元首化や天皇の憲法尊重擁護義務の解除などを定めていることに触れ、「こんな国民主権をないがしろにするような改憲草案を書いている人たちに国民主権は大事だから国民投票をもっとできるようにしようと言う資格はない」と批判しました。
平和フォーラムは、つづいて5月3日午後に東京・日本教育会館一ッ橋ホールで「施行66周年憲法記念日集会」を清水雅彦日体大准教授と師岡康子弁護士を講師に開催するとともに、第2回目の憲法学習集会を5月22日、ルポライターの鎌田慧さんと名古屋学院大准教授の飯島滋明さんを講師に開きます。

山内敏弘さんレジュメ   自民党改憲草案

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