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憲法理念の実現をめざす第56回大会基調

2019年11月12日

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 1.はじめに

1946年11月3日、日本国憲法が公布されました。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」し武力の不保持と戦争放棄を誓うとともに、主権が国民にあることを宣言し、侵すことのできない永久の権利としてすべての基本的人権が国民に与えられました。

以来、73年が経過しました。しかし、「この憲法を尊重し擁護する義務を負う」安倍首相は、2012年の自民党「憲法改正草案」の発表以降、2013年の特定秘密保護法、2015年の戦争法、2017年の共謀罪法など憲法違反の法律を矢継ぎ早に、強行採決によって成立させてきました。

そもそも、自民党の改憲草案は、①「天賦人権に基づく」侵すことのできない永久の権利としての基本的人権を否定し「公共及び公の秩序」の名のもとに基本的人権を制限、②現憲法で「人類普遍の原理」とされた主権在民は軽んじ「国があっての国民」へ、また、立憲主義の理念もかなぐり捨て、権力を縛る憲法から国民を縛るものへ変化させる、③「戦争放棄」の題がついた9条を「安全保障」に置き換え、集団的自衛権が全面的に認められる「国防軍」を創設するとともに、国内の治安維持をも展開、④立憲体制を停止させる「緊急事態宣言」を盛り込むというもので、日本国憲法の基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を真っ向から否定するものといえます。

また、2015年の安保関連法(戦争法)は、集団的自衛権の行使を認めるかどうかが最大の争点でした。この集団的自衛権については戦後70年近く自民党政権も内閣法制局も「違憲である」として何度も国会で答弁してきました。また、憲法学者の大多数はもとより、衆議院憲法審査会で参考人として出席した憲法学者3名が「憲法違反」との認識を表明し、世論調査でも6割が法案に反対、8割が今決めるべきではないとの声がありました。

しかし、与党は、なり振りかまわない過去最大の会期延長と強行採決により法案を成立させましたが、この憲法違反の集団的自衛権行使を基本とした戦争法の成立以降、防衛予算の増大により、日本の軍事大国化と日米による軍事一体化が加速するとともに、これまでの軍拡の歯止めとされてきた「専守防衛」の枠すら超えて攻撃型装備の購入や配備が進むなど、今日の日本の安全保障において実態的にも戦争放棄と武力の不保持をうたった9条破壊が進行しています。

安倍首相は、参議院選挙で与党が改選議席の過半数を占めたことに触れ、「少なくとも議論は行うべき。それが国民の審判だ」と強調するとともに、自民党改憲推進本部が取りまとめた「改憲4項目」にはこだわらず「柔軟な議論を行う」とし、野党の一部の取り込みにも意欲をみせています。

また、参議院での改憲勢力の3分の2割れ後も「(2021年9月までの)総裁任期の中で改憲に挑みたい」と引き続き改憲に執着しています。実態的な9条破壊から、憲法改正によって自衛隊を明記することにより、フルスペックの「戦争できる国づくり」へ進もうとしています。絶対に許すことはできません。

一方、憲法の空洞化は、憲法の平和主義にとどまりません。様々な選挙や県民投票で何度も示された民意を無視して進む辺野古新基地建設や、圧倒的な脱原発を求める声を無視して進められる原発推進政策などをみれば、主権が国民にあることすら忘れさせられてしまいます。

また、財務省福田前事務次官のセクハラと財務省の対応は官僚たちの人権感覚の低さをさらけ出しましたが、「人身売買、奴隷労働」といわれる技能実習制度をはじめ、横行するヘイトスピーチ、朝鮮高校に加え朝鮮学校幼級部を幼児教育・保育無償化の適用除外とし、テレビキャスターのコメントや週刊誌による韓国に対する嫌悪感を煽る報道の在り方などは「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努める」とする憲法理念とは真逆の事態が進行しており、まさに基本的人権の侵害が拡大しているといえます。

さらに、憲法9条について詠んだ俳句を「公民館便り」の掲載から除外したさいたま市や、参議院選挙での安倍首相の街頭演説で上がった抗議の声に対する警察の弾圧、愛知で開催された表現の不自由展・その後」への行政の介入など、警察や行政によって不当に表現の自由が制限される事態も生まれています。

このように、今、現実に、日本国憲法の空洞化が進み、大きくその理念が歪められてきていることを認識しなくてはなりません。

私たちは、ここに開催された第56回護憲大会を機に、改めて平和憲法を守る闘いを強化するとともに、憲法の空洞化を阻止し「平和・自由・人権」という憲法理念をあらゆる場面で実現し「すべての命を尊重する社会を」作り出していかなければなりません。

 

2.総裁任期中に憲法改悪を目論む安倍政権

7月21日投開票の第25回参議院選挙において、私たちは、安倍首相の最大の政治目標であった「改憲勢力」による改憲発議に必要な3分の2の議席確保を阻止し、新たに参議院で改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。しかし、参議院では引き続き与党が過半数を占めた結果、安倍政権の続投を許すこととなり、安倍首相は野党の一部の取り込みに意欲を見せるなか、選挙後のインタビューでも「残された総裁任期の中で改憲に挑む」と決意を述べています。

また、その後の内閣改造、自民党役員人事では、全体として日本会議や神道政治連盟に所属する議員を中心とする極右内閣が継続されるとともに、役員人事と合わせ改憲シフトが鮮明な内閣改造が行われました。

しかし、この内閣改造を受けて9月11・12日の実施された世論調査(共同通信社)では、改憲に反対が47.1%で賛成の38.8%を上回ったほか、新内閣の取り組むべき課題としては「年金・医療・介護」47.0%、「景気や雇用対策」35.0%、「子育て・少子化対策」25.7%と大きな期待が寄せられる一方、「憲法改正」は5.9%に止まり、民意とかけ離れた安倍政権の独りよがりの「憲法改正」といえます。

10月4日、臨時国会が開会しました。自民・公明は今会期中に、改憲発議の前提条件となる「国民投票法」改正を行う方向で合意しており、憲法審査会をめぐって、与党が審議に応じない野党に対する攻撃をいっそう強めるなど与野党の激しい攻防が繰り広げられることが予想されます。

現に、10月4日の所信表明演説では、安倍首相は「令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会ではないでしょうか」などと述べています。また、8日行われた衆参代表質問では、安倍首相は「自民党は既に憲法改正のたたき台を提示している。野党各党にも案を持ち寄ってもらい、憲法審査会の場で、国民の期待に応える活発な議論を行ってほしい」などとも発言しています。

安倍首相は、日程上ほぼ不可能になりつつある「2020年までの改憲」から、「総裁任期中の改憲(2021年9月まで)」へと日程を引き延ばしながら、改憲へ執着し続けています。

また、野党に対する分断・取り込みや、マスコミ・インターネットを使っての改憲煽動など、さまざまなかたちでの改憲攻勢が予想されるとともに、一部に今臨時国会中の解散総選挙もささやかれており、市民連合を中心に衆議院選挙区での野党共闘の体制構築についても喫緊の課題となってきています。

これまで長期間分裂していた平和運動は、2014年の安保法制(戦争法)の闘い以降、「戦争させない・9条壊すな!総がかり実行委員会」(総がかり行動実行委員会)を共闘組織として合流し、平和フォーラムも参加する中で、安倍政権との対決の中心的役割を果たしてきました。また、全国各地においても「19日行動」を中心に、安保法制の廃止と安倍改憲に反対する様々なとりくみが継続的にとりくまれてきました。

総がかり実行委員会および「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」(全国市民アクション)は、参議院選挙の結果を受けて、これまでのとりくみを総括するとともに、今後のとりくみについては、参議院における改憲勢力の3分の2割れという新たな情勢を踏まえ、総がかり実行委員会として、安倍政権の打倒・退陣を求めてさらに組織と運動の強化を進めていくこととしました。

安倍政権が引き続き「改憲」の旗幟を掲げるなか、私たちのたたかいも正念場を迎えています。

総がかり行動実行委員会の総括を受け、これまでの各地のとりくみについて点検・集約を進めるとともに、今後の護憲運動と安倍政権打倒に向けた戦線を改めて構築していかなければなりません。

 

3.憲法を逸脱した日本の防衛政策

(1)戦争放棄と武力の不保持から「戦争できる国づくり」へ

74年前の1945年8月、日本の敗戦によって、侵略戦争に明け暮れたアジア・太平洋戦争がようやく終結しました。この戦争で日本は、アジア・太平洋で約2000万人もの牲者を生み出し、自国内でも約300万人の犠牲者を出しました。

戦後の日本はこの戦争の反省にたち、戦争を放棄することを選択し、新たに制定された日本国憲法を、戦争放棄と武力の不保持をうたった平和憲法として携えてきました。しかし、その後、武力を放棄したはずの日本は、米ソ冷戦、朝鮮戦争を経て、自衛隊を保持するようになり、いまや世界有数の「軍事」大国となるに至っています。例えば、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、2018年の日本の軍事支出を466億ドル、世界9位であると発表しています。

これまでの自民党政権は、党内には自主憲法制定、国防軍の創設を主張する勢力や核武装まで意図する政治家を抱え込みながらも、日本の防衛施策の基本を「専守防衛」にとどめてきました。しかし、この日本の防衛政策を事実上変換したのが安倍政権であり、2015年9月の集団的自衛権行使を基本とした戦争法の強行採決により、憲法9条に関わる日本の防衛政策は大きく変質し、そのことをみるならばすでに「改憲」されたと言っても過言ではありません。

この戦争法の強行成立と前後して、安倍政権下の2013年に特定秘密保護法、2014年に「集団的自衛権」の行使容認の閣議決定、2015年4月には新しい日米ガイドラインを締結し、そして、2015年9月の戦争法をはさみ、2017年には共謀罪も強行成立させました。これにより日米軍事一体化がますます強化され、日本はアメリカとともに戦争ができる体制が整いました。

何が話し合われ、何をしようとしているのか、政府の都合の悪いことは秘密にされ、それを探れば逮捕され、政府のよからぬ企みに反対しようと話し合えば、これまた逮捕されることが事実上可能になったのです。

(2)日米軍事一体化で進む自衛隊の増強

安倍政権は2018年12月18日、専守防衛に反する攻撃型兵器の導入に踏み切った防衛計画の大綱(以下「30大綱」)、中期防衛力整備計画(以下「中期防」)を閣議決定しました。

日本の防衛政策は、東西冷戦終結後の1995年まで、1976年に初めて閣議決定された防衛計画の大綱(以下「76大綱」)に沿い、「必要最小限度の基盤的防衛力を保有」としていました。その後、湾岸戦争、台頭する中華人民共和国の覇権の拡大の中で、米国の要求に従い、自衛隊を海外派兵、南西諸島の防衛力整備へと、徐々に日本の領域から外へその活動の範囲を広げていきました。

そして、自衛隊の活動領域の拡大と合わせ、これまで掲げてきた「専守防衛」すら逸脱する軍事力整備が進められてきました。いずも級の護衛艦を空母へと改修し、その空母にはステルス戦闘機であるF35Bを搭載することになりました。スタンド・オフ・ミサイル、高速滑空弾と称して、長距離ミサイルの購入・開発も進められることにもなりました。平和フォーラムによる防衛省交渉の中では、イージス・アショアの発射管を変えれば、巡航ミサイルも装着できると防衛省官僚は発言しています。

さらに、自衛隊は南シナ海で米軍とともに対潜水艦作戦行動などの共同訓練を繰り返しています。このことは、中国に対して、米軍とともにインド洋、南シナ海に乗り出し、対中国封じ込みを目論む安倍政権の姿勢をはっきり示しています。日本の領域から大きくはみ出し、中国を刺激、挑発する行為は、東アジアの安全保障を不安定にし、軍拡競争を拡大させる愚かな軍事外交行動でしかありません。同様に空母化されるいずも級の護衛艦は太平洋に展開し、米軍とともに中国の海軍に対抗し、イージス・アショアの目的もグアムや米国本土への大陸間弾道ミサイルに対する対処と指摘されています。まさに守るも攻めるもアメリカのためと言えるのではないでしょうか。

こうした自衛隊の軍事力増強で、防衛費は伸び続け、2020年度の防衛費概算要求額は、5兆3千億円を超えました。私たちの暮らしに直結する社会保障関連予算を抑制し、軍事費を聖域化することは許されないことです。

政府は米国が主導する対イランの有志連合には参加しないものの、中東沖への自衛隊派遣の検討を開始しました。「独自」と言いつつ米の意向を汲んだものであることは明らかです。また、派遣する根拠を防衛省設置法に基づく調査・研究などとしていますが、このような口実でなし崩し的に自衛隊を海外に送ることは問題です。

(3)憲法の上に立つ日米地位協定

日本が米国を中心とする連合軍の占領から独立を果たしたのは、1951年4月、サンフランシスコ講和条約を調印し、翌1952年4月に同条約が発効したときです。そのとき同時に、日米安全保障条約、日米行政協定が締結されました。その後日米間で、安保条約と行政協定は改定交渉が進められ、1960年1月に新日米安全保障条約と日米地位協定が調印されました。安保条約に対する批判と自民党の岸信介首相の強引な国会運営に人びとの批判は高まり、全国的な「安保闘争」が闘われましたが、岸首相は条約に反対する国会議員を、警官隊によって排除した上で強行採決し、同年6月19日、同条約と協定は自然承認され、発効しました。

旧安保条約と行政協定は、独立を果たして「主権」を回復した日本の国内で、米軍が占領期と同じように自由に行動できるようにしたもので、その後改訂された新安保条約、日米地位協定も防衛分担金廃止などの改定は行われたものの、米軍の特権は維持されたままになっています。とりわけ基地の管理権を巡っては、日米地位協定3条では、合同委員会を通して日米両政府の協議が明文化されていますが、『日米地位協定合意議事録』では行政協定と変わらない米軍の占有が保障されています。なお、この合意議事録は、日米地位協定とは別に作成され、国会でも審議されなかったいわば「秘密協定」と言えるものです。

米軍基地は、日本のどこにでも作ることができ、その基地は米軍が排他的に管理することができます。そして、仮に基地返還となったとしても、原状回復義務はなく、ダイオキシン等で環境を破壊しても、その除去作業などは日本政府が負うことになり、したがって私たちの税金で行われることになります。また、米軍機は日本の航空法の適用が大幅に免除されています。また、米軍が事件や事故を起こしても日本の警察や消防などが現場検証にあたることすらできず、公務中の米軍人・軍属が事件を起こしても、日本には第一次裁判権もありません。こうした不平等な・従属的な日米関係は、日本国憲法の発布以降に日米間で作成された安保条約と行政協定、その後の日米地位協定とそれに付随する「秘密協定」にあります。

オスプレイをはじめとした米軍機の墜落事故や部品落下事故が、沖縄をはじめ全国で頻繁に発生しています。米軍・横田基地では、空軍特殊部隊用のオスプレイCV22の飛行訓練の拡大が懸念されます。このCV22の訓練区域となる沖縄県、東富士演習場(静岡県)、ホテルエリア(群馬県、栃木県、長野県、新潟県、福島県)、三沢射爆撃場(青森県)およびこれら訓練区域につながる飛行ルートでは、危険な飛行訓練が行われることは確実です。

私たちのいのちとくらしを守るためには、「秘密協定」を無効にし、日米地位協定の抜本的な改定を実現させていかなければなりません。

(4)弱体化する社会的規制力

日本の安全保障政策は、戦争放棄をした日本国憲法をなし崩しにしていく歴史を経て、ついに「集団的自衛権」の行使容認、「専守防衛」からの逸脱に至っています。そうした中、自衛隊に対する規制をはかる、いわゆるシビリアンコントロールも弱体化されている現状があります。

日本でのシビリアンコントロールについては、憲法で内閣構成員の資格を文民とする規定をもうけているほか、2015年の防衛省設置法改正までは、日本におけるシビリアンコントロールの一形態として制度化されていた「文官統制」、つまり防衛官僚(文官)が制服組より優位な立場に立ち、制服組を統制するシステムがありました。

しかしながら、法改正により、制服組である「統合幕僚監部」と陸海空の各「幕僚長」が、防衛官僚と対等、並列の立場となり、また部隊の活動や訓練などの運用を計画していた内局の「運用企画局」が廃止され、「統合幕僚監部」が一元化的に関与するよう大幅な組織再編が行われました。そして、この再編以降、南スーダンPKOの日報問題に続き、自衛隊のイラク派遣での日報の隠蔽など、自衛隊のシビリアンコントロールが機能していない現実が明らかになりました。

また、文民で構成されているとはいえ、日本版NSC(国家安全保障会議)で日本の安全保障に関わる事項が決定され、協議事項は特定秘密だとして、内容の検証ができない構造になっていることは極めて問題です。

一方、2014年に武器輸出三原則を破棄して、あらたに防衛装備移転三原則を閣議決定した安倍政権の目論見は、武器・技術の輸出の拡大でしたが、現在さしたる成果はありません。しかし、2015年度に新設された「安全保障技術研究推進制度」を活用した大学・研究機関への助成では、大学に関しては2017年3月の日本学術会議の「戦争目的の軍事研究はしない」とする3度目の声明発表以降で応募件数が減少していますが、一方、研究機関では助成を受け取るところが少なからずあることも事実です。

私たちは、シビリアンコントロールを強め、平和主義をうたった憲法理念から遠のいていく現状を押しとどめるとともに、憲法改悪阻止はもちろん、憲法理念をひとつひとつ実現していくことが求められています。

 

4.辺野古新基地建設―問われる日本の法治主義と地方自治

辺野古新基地建設をめぐっては、あらゆる選挙で建設反対が幾度となく示され、2019年2月に行われた県民投票においても、沖縄県民の反対の民意が示されました。安倍政権は、沖縄県や県民の思いを尊重し、最低でも工事を一時停止し、真摯に話し合うべきです。

沖縄県は、米国政府も含めた三者協議を申し入れていましたが、しかし、安倍首相は何ら回答をしていません。こうした日本政府の姿勢は、地方自治の精神に反しているといえるでしょう。

また、沖縄防衛局が県の埋め立て承認の撤回に対し、国が行政不服審査法に基づき審査請求と撤回の執行停止を求めた問題では、私人の救済を目的とする法律をねじ曲げて適用し、国が「国民・私人になりすまし」たことが大きな問題です。これに対し、110名に上る行政法学者は、「国が一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されるはずもなく、違法行為に他ならない」と厳しく批判するとともに、政府が防衛局に同じ行政機関の国交省に申し立てさせたことに対し、「第三者性、中立性、公平性が期待しえない」と断じています。政権の意志を貫くためには、法律も無視する安倍政権の国政運営は、法治主義を踏みにじるものと言えます。

また、埋め立て海域の軟弱地盤や活断層の存在、サンゴの移植の課題、さらに360件に及ぶといわれる高さ制限を超えた基地周辺建造物の存在など、辺野古の基地建設は極めて困難であるといえます。にもかかわらず、工事を強行し続けることによって、壊滅的な環境破壊と人びとの生活を一変させる地域崩壊につながることは明白です。

地域の住民が自立し、地域の課題を自主的に解決していくことが、地域社会の民主化の基礎となるという考え方が、近代民主国家における地方自治の必要性として論じられています。日本においては、戦後の平和憲法下にあっても国と地方の関係は、ながらく中央集権的な関係にありました。しかし、地方分権改革と地方自治法改正により、国と地方は対等な関係へと向かいつつあるはずです。国と沖縄県の関係は、全く対等とは言えず、「国による沖縄いじめ」と言っても過言ではありません。

辺野古新基地建設に反対するとりくみは、米軍基地問題に対するたたかいはもとより、日本全体の民主主義、立憲主義、地方自治を取り戻す重要課題と言えます。

 

5.東北アジアの平和と非核化

(1)朝鮮半島における緊張緩和と米朝国交正常化に向けた動きを加速させよう

2018年4月27日、板門店においてムン・ジェイン(文在寅)大韓民国(以下韓国)大統領とキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮民主主義人民共和国(以下朝鮮)国務委員長による、11年ぶり通算3回の南北首脳会談が行われ、朝鮮半島情勢は大きく進展しました。共同宣言(板門店宣言)は、様々な南北交流促進のためのとりくみとともに、南北共同の目標として朝鮮半島の完全な非核化へ努力すること、朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に転換することなどが謳われ、ムン・ジェイン政権の「南北のすべての構成員が合意する平和的・民主的方式の統一をめざす」とする韓半島(朝鮮半島)政策の具体的とりくみとして重要です。

また、同年6月12日にはシンガポールにおいて史上初、歴史的な米朝首脳会談が開催され、米朝首脳による共同声明は、①米国と北朝鮮は、両国民が平和と繁栄を切望していることに応じ、新たな米朝関係を確立すると約束する、②米国と北朝鮮は、朝鮮半島において持続的で安定した平和体制を築くため共に努力する、③2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力するなど、朝鮮戦争の終結や朝鮮半島の非核化へ向けた画期的内容となっています。

その後も、朝鮮と韓国は歩調を合わせ、板門店宣言やシンガポール共同声明の合意事項の実現に向けとりくみをすすめ、9月18日から20日にかけては、ピョンヤンで首脳会談を開催し、合意されたピョンヤン共同宣言では、「軍事的敵対関係を終息させるために脅威の除去と根本的な敵対関係を解消させること」が確認され、民族経済の均衡的発展のための経済交流と協力、離散家族問題の解決、様々な文化交流を掲げるとともに、トンチャンリ(東倉里)のエンジン試験場・ミサイル発射台を廃棄や米国の「相応の措置」に合わせ、ニョンビョン(寧辺)の核施設の永久的廃棄などの追加措置を表明しました。

2019年2月27日に開催されたベトナム・ハノイでの第2回米朝首脳会談は、米国内のタカ派の影響もあってか、合意も取り決めもないままに終了しました。しかし、ハノイにおける米朝首脳会談が決裂して以降も、南北対話、中朝首脳会談など、情勢の打開に向けて様々動きがありました。とりわけ、中国の習近平国家主席は「朝鮮の安保の懸念の解決に中国が積極的な役割を果たす」と発言するなど、朝鮮半島を巡る情勢に積極的に介入する意志を示しています。6月28~29日のG20大阪会議の直後、韓国を訪問したトランプ米大統領は、30日に板門店を訪れてキム・ジョンウン朝鮮国務委員長と3度目の会談を行いました。ムン・ジェイン韓国大統領も交えて実質的には3国の首脳会談となっています。

9月10日、トランプ米大統領は、アフガニスタンやイラン、ベネズエラをめぐって強硬姿勢を貫いてきた国家安全保障担当のボルトン大統領補佐官を更迭しました。今後の米国の朝鮮政策は、ビーガン朝鮮政策特別代表とポンペオ国務長官を中心に進められ、膠着した事態が動き出すことも予想されます。

2018年4月27日の南北首脳会談以降、南北朝鮮が緊張緩和・非核化に向けて実質的な動きを始める中、米国をはじめとする国際社会が朝鮮の安全を保障し制裁解除に動き出さなくてはなりません。そして、ピョンヤン共同宣言とシンガポール共同声明を支持するとともに、「包括的妥結、段階的履行」による非核化実現・平和協定締結を求め、朝鮮半島の非核化への具体化への動きをつくり出し、東アジアにおける平和体制の構築に繋げていかなければなりません。

(2)深刻化する徴用工問題をはじめとした日韓対立

2018年10月30日の韓国大法院の徴用工判決に端を発した日韓対立は、2019年8月2日、日本政府によるに韓国のホワイト国からの除外と、これを受けて韓国政府が8月22日、日韓の軍事連携を象徴する「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)を破棄するなど、混迷を深めています。こうした日韓の対立は、韓米、日米の軍事同盟を基本に東アジアでの覇権を展開する米国にとっては極めて深刻で、米国防総省は韓国政府に対して「失望と強い懸念」を表明しています。

日本のマスコミ報道は、「韓国人元徴用工問題に端を発した日韓関係の悪化は、輸出手続きの厳格化という経済分野から、安保協力にも拡大した」として韓国批判の姿勢を強めていますが、そもそもホワイト国は、「安全保障貿易管理において、大量破壊兵器及び通常兵器の開発等に使われる可能性のある貨物の輸出や技術提供行為は、経済産業大臣への届け出およびその許可を受けることを義務付ける」としたキャッチオール規制( Catch-All Controls )を免除するもので、安全保障上問題のない国と位置づけ、アジアでは韓国のみ(韓国を含めて27カ国)が指定されていたものです。まさに、ホワイト国からの除外は、韓国は安全保障上信用できないと決めつけるものです。一方、GSOMIAは、国家間で軍事機密情報を共有化しようとするもので、日本側から安全保障上信用できないとホワイト国から除外された韓国にとって、軍事情報を日本と共有化することなどできるわけなどありません。

一方、日本政府は徴用工判決とホワイト国外しは関係がないとしていますが、安倍首相は、常に徴用工問題の解決が先決との発言を繰り返し、ホワイト国外しが徴用工問題の意趣返しであることは明白です。

また、日本のマスコミ報道は、ホワイト国外しとGSOMIA破棄の関連性には触れず、ホワイト国外しは単なる経済問題として、GSOMIAを破棄した韓国を一方的に批判する報道がはびこっています。公正・中立を基本に冷静な情報提供が必要なマスメディアが、ナショナリズムをあおる行為は許せません。

そもそも、韓国徴用工問題は、個人請求権の問題であり、元徴用工とその属した企業との問題です。日本政府は、サンフランシスコ講和条約などの請求権放棄の条項に関して、日本国民に対して「個人請求権は含まれない」と繰り返し説明してきました。日本の最高裁も、中国徴用工判決に際して、「日中韓の外交保護権は放棄されたが、個人請求権については、実体的に消滅させるものではなく、当該請求権に基づいて訴求する機能を失わせるに留まる」として、この法理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」の文言にも及ぶとしています。

また、1996年の国連人権委員会へのクマラスワミ報告は、「日韓請求権協定には個人請求権は含まれない」との立場を取っています。韓国大法院判決の「反人道的不法行為に対する個人の損害賠償請求権は依然として有効」との立場は、現在の国際的な人権環境では説得力をもつものと考えられます。

中国徴用工問題では、この間日本企業は和解を積み重ねてきましたが、和解の基本は、謝罪と記憶の継承そして賠償でした。日本政府および日本企業は、韓国政府の提起を受け止めて、徴用工問題を人道的問題と捉え、解決に向けて話し合いのテーブルにつくべきです。

こうした徴用工問題による日韓の対立の根底には、過去の植民地の歴史とそのことに対する安倍政権の歴史認識への反発があり、問題の解決を遅らせています。安倍政権の閣僚の韓国政府に対する不遜な態度と徴用工問題解決に拘泥するかたくなな姿勢から解決はほど遠いものといえます。

今、大幅に日韓の旅行者が減少し、草の根の交流が途絶える事態が起きています。例年、原水禁大会に参加する韓国光州の5・18拘束負傷者会からの参加も中止となり、愛知県などを訪問する光州の子どもたちの交流も中止されました。政治の対立を越えて、日韓連帯の輪を広げる努力が、まさに重要になっています。

(3)日朝国交正常化を推進しよう

米国トランプ政権の対朝鮮強硬政策を支持してきた安倍政権は、米朝首脳会談や南北首脳会談による、非核・平和に向けた朝鮮半島情勢に全く対応できずに来ました。安倍首相は、「条件を付けずに金委員長と向き合う」として無条件の対話を呼びかけましたが、朝鮮は「無条件と言いつつ、拉致・核・ミサイルなどの問題を必ず話すと言っているから、それは条件つけていることになる」「(高校授業料無償化措置からの朝鮮学校の除外について)この措置を撤回しない限り、両国の関係は1ミリたりとも前進しない」(朝鮮のソン・イルホ(宋日昊)日朝国交正常化担当大使)と批判し、首脳会談の受諾についても応える段階にないとしています。

安倍首相は、「拉致問題は日本の最重要課題」「拉致問題の解決なしには国交正常化はない」「致被害者の全員生存・全員帰国」とする「拉致三原則」に拘泥し、日朝国交正常化に向けた努力を怠ってきました。結果として拉致問題も今日まで全く進展がありません。一方で、朝鮮高校の授業料無償化から排除を継続し、在日朝鮮人の民族教育の権利を剥奪しています。10月1日から始まった幼保の無償化からも各種学校を理由に朝鮮学園の幼稚園を無償化から排除すしようとしています。このような在日朝鮮人差別を積極的に続けている現状では、日朝国交正常化や拉致問題の解決は、困難極まりないと言わざるを得ません。

(4)真摯に戦後責任問題に向き合い、東アジアの友好を築こう

第1次安倍内閣の2007年3月、安倍首相は、国会で慰安婦問題に触れて「強制性を示す客観的な証拠はなかった」「広い意味での強制性はあったけれども、狭い意味での強制性はなかった」と答弁しました。アジア各国や米国メディアなどから一斉に批判を浴びると、一転して河野談話を容認する姿勢に転じます。安倍首相は、議員に当選した直後から戦後の歴史教育を自虐史観として攻撃する「新しい歴史教科書をつくる会」を支援する「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長に就任、侵略戦争を聖戦と言い換え、極東軍事法廷(東京裁判)を否定する日本会議と歴史認識の立場を同じくしました。これらの歴史観は、米国など第2次世界大戦の戦勝国を基軸にした国連の立場とそもそも対立するものです。安倍首相の持つ歴史観は、戦後世界の歴史観と対立し、歴史修正主義と断ぜられるべきものです。

韓国徴用工問題での安倍政権のかたくなな姿勢は、このような歴史観から生まれていると考えられます。日本政府は、徴用工や日本軍慰安婦などの被害者はもちろん、植民地支配・侵略戦争の歴史から目を背けることなく、歴史を直視し、真摯な謝罪を行うなかで東アジア各国との友好関係を築いていかなければなりません。

 

6.人権確立に向けた様々なとりくみ

(1)「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」のとりくみ

安倍首相は、2012年12月の総選挙で再び政権の座に帰ると、2013年2月20日に文科省令を改正し、朝鮮高校を授業料無償化制度から完全に排除しました。これを不服として全国5ヵ所の地裁で朝鮮高校への無償化措置を求める訴訟が行われてきましたが、大阪地裁判決を除いて、朝鮮高校生の訴えを退ける不当判決が出されてきました。2019年8月27日、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は、学校側を敗訴とした一、二審判決を支持し、東京朝鮮中高級学校卒業生らの上告を退ける判断を下しました。朝鮮人学校の歴史をいっさい無視し、在日朝鮮人の民族教育の権利を侵害してきた日本政府と、その立場を忖度するような司法の姿勢を許すことはできません。また日本政府は、幼保無償化措置からも、各種学校であることを理由に朝鮮学校やブラジル学校の幼稚部を除外しています。

無償化制度からの適用除外は、朝鮮民族への差別意識を利用して「拉致問題に進展がないこと」を理由に恣意的に行われたものであり、拉致問題への対応や朝鮮によるミサイル実験などと同様に、政権維持、国民支持を固める政策として行われてきました。

子どもの人権を、政治的思惑から奪うことは許されません。高校無償化制度からの朝鮮学校差別は、あきらかな民族差別であり、すべての子どもたちの学ぶ権利を保障しようという高校無償化法の理念からもかけ離れたものです。また、2018年8月に行われた国連人種差別撤廃委員会の対日審査のなかで、朝鮮学校にも制度を適用するよう勧告が出されています。裁判の結果に関わらず、朝鮮学校への無償化制度適用や各自治体からの補助金支給を求める活動をすすめ、在日コリアンとの共生を実現していかなくてはなりません。

(2)先住民族としてのアイヌの権利確立を

2019年4月19日の参議院本会議で、アイヌ民族を先住民族として初めて位置づけた「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ新法)が可決・成立しました。アイヌ民族は、12世紀頃から独自のアイヌ文化を形成してきました。しかし、明治維新後の1869年に北海道開拓使が設置され、本土からの移民による北海道開拓が本格化する中で、一方的に土地を奪われ「旧土人」として、独自の伝統文化も否定され日本社会への同化を強要され、長きにわたってアイヌ民族は、民族根絶政策の中に押し込まれてきました。戦後アイヌ民族は、北海道アイヌ協会(1961年から2009年までは「ウタリ協会」、その後再改称)を組織して、民族の権利へのとりくみを開始しました。

国連が、1990年の総会で1993年を「世界の先住民族のための国際年」(国際先住民年)とすることを採択した後、1992年のニューヨークでの開幕集会で、アイヌ民族を代表して野村義一北海道ウタリ協会理事長が記念演説を行いました。野村理事長は日本政府の同化政策によって「アイヌ語の使用を禁じられ、伝統文化を否定され、経済生活を破壊され、抑圧と収奪の対象とされ」と、先祖伝来の土地で民族として伝統的な生活ができなくなった深刻な実態を訴え、こうした民族の誇りを取り戻す運動は、1997年に「北海道旧土人保護法」の廃止と「アイヌの文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」の成立に結びつきます。

しかし、日本政府は、2007年の国連総会における「先住民族の権利に対する国際連合宣言」採択に賛成票を投じながら、アイヌ民族の権利回復には後ろ向きです。国連の宣言文は、先住民族の権利やその構成員の人権は他の者と差別なく平等に保障されるべきことが強調されるとともに, 先住民族の特殊性や多様な歴史的・文化的背景を考慮して、自決権や固有の権利、とりわけ国家によって奪われた土地や資源に対する権利の尊重が謳われています。しかし、今年成立した「アイヌ新法」においても、欧米諸国が先住民族に認めている土地や漁業権等の権利回復が盛り込まれていません。アイヌ文化振興や民族共生空間の運営、アイヌ施策推進地域の認定など、新法に盛り込まれている内容は観光施策と結びついていて、アイヌ民族のアイデンティティーおよび権利回復に結びついていないとの指摘がされています。

日本政府は、アイヌ民族、琉球民族、朝鮮民族などに対する差別を温存してきました。そのことは、ヘイトスピーチなど多くの問題を引き起こしています。朝鮮高校の無償化排除などの在日朝鮮人差別、米軍基地問題に象徴される沖縄差別などを含めて問題は多岐にわたります。日本は単一民族国家との幻想を振りまき、様々な民族の文化を否定し国家の多様性を認めてこなかった歴史を総括し、多文化・多民族共生の社会構築へ歩み出すべきです。

(3)外国人労働者の権利確立を

様々な課題が指摘されているにもかかわらず、外国人労働者受け入れのための出入国管理法改正案を、自民・公明の与党は、2018年12月8日、参議院法務委員会で採決を強行し、本会議で採択しました。2019年4月1日から新入管法は施行され、5年間で34万5000人の外国人労働者の受け入れを見込んでいます。現代の奴隷制度としてきびしく批判される「技能実習制度」は温存され、その延長上に「特定技能1号」が設けられました。「技能実習制度」はもともと途上国への技術移転を目的としていましたが、実際は企業の人手不足解消策の労働力として利用されています。

家族の帯同も許されず、転職や居住の自由も与えられず、悪質なブローカーなども存在し、最低賃金以下の労働や人権侵害などが後を絶ちません。臨時国会で技能実習生が2年間で69人死亡していたことをどのように総括するのかを問われた安倍首相は、「初めて伺ったわけで、私は答えようがない」と答弁しています。「特定技能1号」は延長を含めて10年間の労働が認められますが、家族の帯同は許されず、転職の自由や一時帰国に関しても曖昧なままです。その多くが、技能実習生からの移行とみられ、労働環境の改善が喫緊の課題です。

2019年9月、日立製作所が、外国人技能実習において法令違反があったとして国の改善命令を受けました。実習生は、電気機器組み立ての技能実習と聞いていたが、120キロの窓を新幹線車両に取り付ける作業ばかりさせられたと訴えています。日立は、約100人の実習生を解雇しています。日立製作所は、外国人労働者の受け入れ拡大を訴えてきた経団連の会長の出身企業です。入管法改正と外国人労働者受け入れが、労働力確保を目的として人権侵害を引き起こすことのないように十分な監視が必要です。

外国人労働者を人としてではなく労働力としてのみ受け入れようとする政府・企業の姿勢は、絶対に認められません。すでに日本には多くの外国人労働者が存在しており、政府は、人権侵害がまかり通る技能実習生制度の見直しと本格的な移民受け入れ政策の検討を行い、多文化共生社会の実現をすすめていかなければなりません。

(4)進行する貧困と格差社会

バブル経済が崩壊し、新自由主義政策が進行する中、国内では貧困と格差社会の進行に歯止めがかかりません。日本は、米国・中国に次ぐ世界第三位の経済大国でありながら、国内の貧困問題は深刻なレベルに至っています。平均所得は2017年度のデータでは551万6000円で、戦後最大値を示した1994年の664万2000円と比べると100万円以上減少しています。平均所得以下の世帯は約6割となっています。また、母子家庭の平均所得は282万9000円、平均所得以下の世帯は64.8%を占めています。所得が200万円未満の世帯は全体で11.5%ですが、母子家庭では36.3%に上ります。相対的貧困率は2012年の16.1%から若干改善して2015年に15.6%を示していますが、一人親家庭(多くが母子家庭)の貧困率はいまだ50%を超えて、OECD加盟35か国中ワースト1位となっています。

貧困層の拡大は、非正規労働者の増加に原因を見つけることができます。2018年の役員を除く雇用者5,596万人のうち、非正規の職員・従業員は84万人増加し,2120万人。就労人口の37.8%で、2018年賃金構造基本統計調査の雇用形態別賃金を見れば、正規労働者の平均賃金を100として、非正規職員は65.5%、女性の非正規労働者は58%にしかなりません。このような状況が、母子家庭の貧困率を高めていると考えられます。

社会学者の橋本健二早稲田大学教授が、「アンダークラス」と指摘する非正規労働者からパート主婦や役員・管理職を除いた人々は、就業人口の14.9%、929万人が存在します。彼らの多くは、フルタイムで働いているが、非正規という理由で圧倒的に所得が低く、平均年収は186万円、貧困率は38.7%に達します。結婚して家庭を作ることが困難で、男性の66.4%が未婚者、女性の43.9%が離死別を経験していると言われます。生活の満足感や幸福感が圧倒的に低い傾向にもあります。親しい人の数も少なく、いじめや不登校の経験者、中途退学の経験者も少なくありません。新たな貧困層は、社会問題化しています。

生活保護や医療・介護費、国民年金など社会保障に関する予算は縮小する傾向にあり、高齢者の貧困も深刻さを増してきています。全世代にわたる貧困の拡大は、教育機会の不均衡を伴って、貧困の連鎖として新たな階層を形成しつつあります。

現代の貧困問題は、「自己責任」「本人の努力が足りない」という個人の問題ではなく、現在の新自由主義政策からの脱却はもとより、雇用形態の改善をはじめ、税制度の抜本的な改革や様々なセーフティネットの充実が求められる構造的問題です。私たちは、こうした非正規雇用をはじめ、女性、高齢者、子どもなど弱者をむしばむ貧困問題にしっかりと向き合うことが求められています。

(5)女性の権利の確立を

安倍政権は、「女性活躍の旗を高く掲げ」、すべての女性が輝く社会づくりを公約として掲げています。しかし、「女性活躍推進」と「働き方改革」は、名称とは裏腹に、月100時間という長時間労働を合法化してしまいました。「同一労働同一賃金」は「人材活用の仕組みが違えば労働条件が違ってもかまわない」という正規雇用と非正規雇用の差別的取り扱いを固定化する結果となっています。差別賃金を補完しているのが税制です。所得税の配偶者控除の対象上限額が年103万円から150万円に引き上げられ、正社員並み(時給800円で1875時間)に働いても配偶者控除の壁が女性を「非正規雇用」「低賃金」に縛り付け、それは年金額にも及び、女性が生涯貧困から抜け出せない強固なシステムとなっています。

この男性稼ぎ主型賃金制度と税制は戦前の家父長制度の延長線にあり、このように経済的に下位に置かれ、安くていつでも解雇できる、労働力を産み、介護や育児を押しつける便利な道具として女性を貶めています。このような経済的・社会的地位の低さこそ日本で差別やハラスメント、女性への暴力が無くならない原因なのです。憲法24条は、両性の平等を謳い女性を家制度から解放しましたが、日本会議などは、「日本は憲法9条で武装解除され、24条で精神の武装解除をされた」と言ってはばからず「戦争のできる国作り」を精神的に支えた家父長制を基本にした家制度の復活を目論んでいます。自民党改憲草案を見れば明らかです。

幼児教育・保育の無償化が10月から実施されていますが、朝鮮学校幼稚部や外国人の幼児教育を対象外とする差別的取り扱いが問題となっています。さらに、最も経済的支援が必要な0~2歳児の無償化は実施されておらず、そこには「3歳までは母親が育てるべき」という3歳児神話で女性労働者を縛ろうとしているか、財政支出を抑えているのかは別として、女性が働き続ける環境整備と格差の是正にはつながらない政策です。

私たちは、選択的夫婦別姓の実現や、女性に差別的な税制や社会保障制度の改正、長時間労働・低賃金の労働環境を改めるよう、声を上げていかなければなりません。また、昨年から「#MeToo」あるいは「#WeToo」運動で職場のセクハラや性暴力の告発を女性たちがはじめていますが、他方で性被害や職場のハラスメントに対する警察権力や司法の判断に性暴力の加害者を擁護する傾向が強まっています。性暴力やハラスメントの被害者が権力のある加害者に訴えられるという理不尽なスラップ訴訟も増えているからです。ノーベル平和賞受賞者のデニ・ムクウェゲ医師は「戦争は女性の身体を戦場にする。戦時性暴力は平時の意識の延長にある」と平時の性暴力を正当に処罰することの大切さを訴えています。セクハラやDV、レイプの加害者が処罰されず、被害者の訴えが退けられることが続けば、法治国家ですらなくなります。

ILOでは仕事の世界におけるハラスメント禁止条約(190号条約)が採択され、日本政府も賛成しました。一刻も早く日本政府に批准させることが必要です。選択的夫婦別姓の実現、差別賃金・社会制度の解消など、女性も男性も安心して働き、一人ひとりの尊厳が守られる社会をつくらなくてはなりません。

(6)安倍政権の本質に存在する差別構造

自民党の杉田水脈衆議院議員は、新潮21に掲載した「『LGBT』支援の度が過ぎる」と題した寄稿文において、LGBTは「子供を作らない、つまり『生産性』がない」などと差別的な主張を展開し、大きな批判にさらされました。こうした主張に対し、安倍晋三首相や二階俊博・自民党幹事長など政権の中枢からはむしろ擁護する発言が相次ぎ、さらには掲載紙が杉田議員への批判に反論する特集を組んだことから、さらに波紋を広げました。

また、4月には、財務省の福田淳一事務次官が女性記者に対してセクハラを行ったことが明らかになりました。しかし、当の福田事務次官のセクハラと、麻生財務相の「セクハラ罪という罪はない」「被害者は名乗り出ろ」という発言など財務省の対応は、官僚たちと官僚機構の人権感覚の低さをさらけ出しました。

2019年7月3日、日本記者クラブで開催された党首討論会において、安倍首相は記者団からの「選択的夫婦別姓を認めるか」「LGBTに法的な権利を与えることを認めるか」と言う質問に、反対の立場を取り、質問をした記者団に対して「単純化してショーみたいにするのはやめたほうがいい」「イエスかノーかは政治ではないですから」と「反論」しました。しかし、出席した他の政党党首は賛成に手を上げていることから、安倍首相の多様性を否定する姿勢が鮮明になりました。

米国で性的少数者(LGBT)の市民権運動を世界に広げた「ストーンウォールの反乱」がおきて今年で五十年が経過します。日本国内でも、様々にLGBTの権利を求める運動が広がっています。LGBTのカップルに証明書類を発行する同性パートナー制度が、2015年の東京都渋谷区をはじめに、今年8月現在24の自治体に広がっています。今のところ、税の配偶者控除や法定相続の権利は認められていませんが、公営住宅での同居や様々な場面での配偶者としての扱いなど、夫婦と同等の待遇が受けられるようになっています。また、北海道立高校の入学願書は、2020年度の入試から性別記載欄を廃止することが決定しています。北海道教育委員会は、「個人の性的志向や性自認の多様性への適切な配慮」とその趣旨を説明しています。LGBTなど多様な性のあり方に配慮するこのような動きを拡大していくことが求められています。

7月の参議院選挙では、女性候補の割合が強調され、LGBTや障がい者の立候補が目立ちました。中央省庁の障害者雇用推進法の法定雇用率の不正、大学医学部入試における女性差別問題、そしてLGBTに対する差別発言、様々な差別状況の顕在化とそれに対する市民の運動が、政治情勢の変化を呼び込んできたといえます。マイノリティーの権利が侵害される社会では、マジョリティーの権利も侵害される、在日コリアンへの、アイヌ民族などの先住民への差別、沖縄差別、部落差別、障がい者や性的少数者への差別の解消に、日本社会がしっかりとコミットしていくことが、市民社会の責任であり、またそのことによって自らの権利を守ることにつながると考えます。

日本におけるお粗末な人権感覚は、日本社会全体の人権問題に関するとりくみの弱さに起因していますが、一方で首相自らが差別的・排他的な考えにたつ安倍政権の問題でもあります。今年9月8日、柴山昌彦文部科学大臣が、高校生の「昼食の時間に政治の話をする」などのツイートに「こうした行為は適切でしょうか?」と返信したことが問題になりました。参政権が18歳まで認められる時代に、日本も批准している子どもの権利条約にある「意見表明権」を認めようとしない発言が、安倍政権の人権感覚を象徴していると考えます。

ここ数年で、障害者差別解消法、部落差別解消推進法、ヘイトスピーチ解消法など、多くの人権法が成立してきました。しかし、こうした社会的少数者・弱者に対する人権確立のとりくみは緒に就いたばかりであり、公的機関による人権侵害や差別を徹底的に糾弾するとともに、全ての社会的少数者・弱者が共存できる社会を創造することが求められ、こうしたとりくみこそが、日本社会を一人ひとりの人権を大切にする社会に成長させることにつながるものといえます。

 

7.権力による労働組合潰しを許さない

全日建関西地区生コン支部(関生支部)に対し、2017年12月のストライキ闘争や、建設現場でのゼネコンによる違法行為を摘発するコンプライアンス活動などの正当な組合活動を「威力業務妨害」や「恐喝未遂」として、滋賀県警や大阪府警が仕立て上げた6つの事件に加え、2019年6月以降、京都府警、和歌山県警が加わり、新たに6つの事件で19人の組合員が逮捕、起訴されるという弾圧へと拡がってきています。

いずれの容疑も、正当な労働組合活動を、威力業務妨害や恐喝未遂という犯罪にでっち上げたものであり、労働組合法を根本から否定するものです。さらに滋賀と大阪の警察・検察は逮捕された組合員やその家族に対して組合からの脱退勧奨を行うなど、違法行為をほしいままにしています。

また、5年前に解決済みの労使交渉課題も恐喝容疑がかけられるなど逮捕者は拡大し、関生支部の委員長や副委員長に至っては1年間に5回、6回と逮捕が繰り返され、1年以上にわたって長期勾留されたままです。しかも、保釈された組合役員の多くが組合事務所への立ち入りをはじめ仲間との面談や電話も禁止されています。

こうした事態は、戦後の労働組合運動が経験したことのないものです。平和フォーラムは、司法や警察権力が一体となった空前の権力弾圧に対し、自らの課題としてとりくみをすすめ、4月15日には「関西生コンを支援する会」(支援する会)の結成総会を行い、その事務局など中心的役割を平和フォーラムが担っていくこととなりました。

これまでの署名やカンパのとりくみに加え、現在、新たな取り組みとして、支援する会が中心になって、7月8日には国連人権理事会恣意的拘禁作業部会に重大な人権侵害事件として申し立ても行なっており、国内の世論喚起合わせ、国際世論からもこうした弾圧を跳ね返すとりくみが求められています。

 

8.核兵器廃絶に背を向ける被爆国日本

戦後の冷戦体制の終焉とそれに先立つ1987年の米ソによる中距離核戦力(INF)全廃条約の締結により核兵器開発に対する一定の制限が行われてきました。

しかし、2019年2月、トランプ大統領によるロシアへの一方的なINF全廃条約破棄通告と8月の失効により、米国、ロシアともに、互いを牽制し合うかのように、軍拡に繋がるようなミサイルの実験、開発が行なわれようとしています。軍縮を牽引するはずの国連安保理の緊急会合も各国の足並みの乱れにより成果は得られず、INF全廃条約に変わる新たな軍縮の枠組みが見通せないだけでなく、2021年に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)についても、その後の方向性に関して全く議論されていません。

このINF全廃条約の破棄は、米国、ロシアの2国間以外にも中国など含めた東アジアの核兵器拡大競争につながるものであり、日本としても傍観することが決して許されない事態を迎えています。

一方、核兵器の廃絶を求めて2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約は、2019年9月末現在で32カ国が批准し、発効要件の半数を超えるところまできています。しかし、日本政府は、アメリカなど核保有国とともに条約に反対し、署名・批准は行わないとしています。

このように核兵器開発をめぐって新たな緊張が生まれるなか、日本政府は、唯一の戦争被爆国として広島や長崎の被爆者の願いであった世界の核兵器廃絶へ向けて、早期に核兵器禁止条約に署名・批准するとともに、核保有国の核兵器禁止条約への参加にも積極的にとりくまなければなりません。

日本国憲法がうたう「全世界の国民が(中略)平和の内に生存」出来るように努力することこそ、日本の進むべき道です。日本国憲法の理念に反する核抑止論というレトリックを使ったままでは、国際社会からの信頼を失いかねません。

 

9.原発再稼働・核燃料サイクル・原発輸出の破綻

(1)安倍政権による原発推進政策

安倍政権は、2018年に原子力基本計画を改訂し、さらに、原発再稼働推進、核燃料サイクル推進、原発輸出推進を強引に押しすすめようとしています。

これまで再稼働した原発は、関西(大飯、美浜)、四国(伊方)、九州(川内、玄海)の3電力の9基となっています。しかし、テロ対策施設(大型航空機の衝突を受けた際などに原子炉を遠隔で冷却する緊急時制御室などを備える施設)建設が遅れている問題で、2019年4月24日、原子力規制委員会は、再稼働に向けた審査後5年以内とされた設置期限の延長を原則認めないことを決めたため、これまでに再稼働した9基は、設置期間に間に合わなければ、この期限を迎える2020年以降に順次、運転停止することになりました。

このテロ対策をめぐっては、関西電力・四国電力・九州電力の3社が4月17日、6原発12基で設置期限を超える見通しを示した上で、規制委員会に期限の延長などを求めましたが、九州(川内や玄海)、関西(高浜、大飯、美浜)、四国(伊方)が期限を超える見通しとしており、原発の再稼働を進める安倍政権にとってテロ対策施設建設は大きなハードルとなっています。

また、北海道においても、泊原発の再稼働が大きな焦点となっていますが、敷地内に走る活断層の問題やテロ対策施設の建設、避難計画の問題など多くの問題を抱えています。とくに函館の対岸にある大間原発(青森県大間町)は、世界に類のない「フルMOX原発」であるにもかかわらず、これまでに原発運転実績もない電源開発が計画を進めていることは大きな問題です。なお、大間原発に対しては、30キロ圏内に位置する函館市も反対の声をあげています。

(2)福島第二原発、柏崎刈羽原発など原発の廃炉問題

一方で7月31日、東京電力は福島第二原発4基を廃炉とすることを正式決定し、これによって福島県から全ての原発(10基)が廃炉となりました。「原発のない福島を」と県民が求めていたことがようやく実現に向けた一歩を踏み出したことになります。

8月26日、東京電力は、現在停止している「柏崎刈羽原発6・7号機が再稼働してから5年以内」との条件を付けながらも、柏崎刈羽原発の廃炉を検討していると地元自治体に伝えました。2007年7月の中越沖地震で、柏崎刈羽原発は甚大な被害を被っています。福島のことも踏まえるならば、東京電力に柏崎刈羽原発を再稼働する資格などなく、廃炉にするほかありません。

震災後に廃炉方針が打ち出された原発は21基となり、さらに今後も増えていくことは明らかで、すでに「廃炉の時代」に入っています。しかし、各電力会社とも、作業員・技術者の確保、資金の確保、廃炉技術の開発、放射性廃棄物の処理・処分の問題など多くの課題が山積しています。

(3)核燃料サイクル計画-再処理工場の破綻と核のごみ

六ヶ所再処理工場は、1997年に完成予定でしたが、これまでトラブルや設計見直しなどが相次ぎ、24回も完工を延期してきました。現時点での目標では、2021年上期に完成させるとしています。次々と原発が廃炉になるなかで、再処理工場の運転の前提となるプルサーマル計画や高速炉開発計画が滞り、プルトニウム利用はまったく進んでおらず、六ヶ所再処理工場の存在意義自体が問われています。

また、現在47トンもあるプルトニウムの使い道すら明らかではありません。再処理工場が稼働すればさらに多くのプルトニウムを保有することととなり、「余剰プルトニウムは持たない」とする国際公約と違反します。プルトニウムは核兵器にも転用可能な核物資でもあり、国際社会から疑惑の目を向けられるのは当然です。

2016年に廃炉が決まった高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の後継となる高速開発計画では、本格的な利用開始は今世紀後半とされ、具体的な内容は先送りになっています。また、フランスと共同で進めている「アストリッド」計画は、規模の縮小など後継炉開発が行き詰まっているのが現状で、まさに核燃料サイクルは破綻したと言うべきです。

日本原子力研究開発機構・幌延深地層研究センターは、8月2日、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の地層処分における研究期間を2028年末までに延長する新たな研究計画案を北海道および幌延町に提出しました。1998年の「深地層研究所(仮称)計画」では「全体の研究期間は20年程度」と明記されおり、2028年までさらに研究期間を延長する新計画案は、これまでの約束を反故にするものです。

核のごみの地層処分については、2017年に国が「科学的特性マップ」として「適地」を公表しましたが、現在までどこの自治体も受け入れ調査(文献調査)に同意していません。一方で原発の再稼働や新増設を進める安倍政権の原子力政策は、処理処分できない核のごみを増やすばかりで、長年「トイレなきマンション」と指摘されてきた根本的な矛盾を、今日さらに深刻化させています。

(4)重要性を増す「さようなら原発1000万人アクション」と原発ゼロ基本法案

福島原発事故以降「さようなら原発1000万人アクション」は、全国各地の団体・個人とともに、脱原発実現に向け奮闘してきました。原水禁・平和フォーラムは運動の中核を担い、運動を推進しています。

「さようなら原発1000万人アクション」として、立憲民主党など野党4党で提出した「原発ゼロ基本法案」に対する団体署名や屋内集会なども展開し、「早期審議入り」を求める声を上げてきました。法案は、いまの臨時国会に持ち越されました。引き続き院内外から原子力政策の真摯な議論を求める運動と世論づくりが急務です。

 

10.急がれる福島の復旧・復興

(1)困難な廃炉作業―収束はさらに長期化、避難生活と政府支援の打ち切り

東日本大震災・福島原発事故から8年半が過ぎ、依然として事故の収束作業は難航しています。廃炉に向けて最も困難といわれる溶融燃料(デブリ)の取り出し作業は、高い放射線に阻まれています。また、現在もデブリの全容を把握するには至っておらず、取り出しの技術の確立もこれからとなっています。政府・東京電力は、デブリの取り出し開始を2021年内、廃炉完了の目標を2041年から2051年と時期を示していますが、さらに長期化するものと考えられます。

被災者はいまだ厳しい状況におかれています。現在42,705人(2019年6月11日・福島県発表)の県民が避難生活を強いられ、この統計に含まれていない多くの自主避難者などはさらに厳しい状況のなかにあります。震災関連死も2000人を超えました。その原因は福島原発事故の影響によるふるさと喪失や生業を奪われ、長期にわたる避難生活、将来への不安などがあります。

居住制限区域・避難指示解除準備区域では、帰還困難区域を除き、除染作業によって年間被曝量20mSvを基準に、それを下回る地域から順次避難指示が解除されています。避難指示解除に合わせて、住宅支援などの補償が打ち切られ、避難者は追いつめられています。一方、帰還者も高齢者が中心で、インフラの整備やコミュニティの再生など多くの課題を抱えています。

福島原発事故の刑事責任を求めて、被害者らが訴えた「福島原発刑事訴訟」は、9月19日、東京地裁は不当にも旧経営陣3名に対して無罪を言い渡しました。あれだけの事故と被害をもたらした東京電力の経営責任を一切認めない司法判断は、市民社会の感覚からも大きく離れた不当判決です。

(2)子どもや住民、被曝労働者の「いのち」を守れ

2019年4月8日、福島県は、2018年12月31日時点での「県民健康調査」を実施し、事故当時18歳以下であった約38万人を対象にした甲状腺検査の結果、悪性ないし悪性の疑いの判定数が212人、内手術実施が169人であったことを公表しました。行政による長期にわたる公的なケアと医療面、経済面でのサポートや、県民の健康不安、特に子どもの健康にしっかりと向き合うことが求められているにもかかわらず、国や福島県は、原発事故との因果関係すら認めていません。

除染作業は、多くの労働者が多重下請けの中に置かれ、放射線量の高い場所での労働は、常に被曝と健康被害のリスクにさらされています。本来、収束作業の責任を持つ東電や除染作業を受注している大手ゼネコンなどが、本来、労働者の線量管理や健康管理に責任を持たなくてはなりませんが、下請けの多重構造のなかで、杜撰な管理の下、責任があいまいにされています。

また、中間搾取が常態化し、現場労働者の権利侵害も多数報告されています。このような中で、東京電力は、外国人技能制度を悪用し、福島原発事故の収束作業に外国人労働者を投入しようとしましたが、厚生労働省の指示で現在は見送られています。しかし、廃炉作業の人員不足を外国人労働者で賄おうとする動きは依然として続いています。専門的知識や言葉の問題、帰国後の健康管理や保障、横行するピンハネなど多くの課題が残されており、収束作業への外国人労働者の投入は許されません。

今後も長く続く事故の収束作業や除染作業における現場労働者の労働条件整備や、被爆線量の低減を求めていくことが重要です。

 

11.関西電力の原発マネー問題の徹底追及を!

関西電力の会長や社長など20人の役員・幹部に、高浜原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から3.2億円もの多額の金品などが長年に渡り流されていることが明らかになり、八木誠会長と岩井茂樹社長は辞任に追い込まれました。金品を受領した原子力部門の幹部も更迭されました。

問題は原子力部門にとどまらず、送電部門にも3名の幹部に250万相当の商品券が渡され、関連会社「関西プラント」役員にも商品券が渡されています。調査が進めばその金額はさらに膨れあがるとも言われています。

いわゆる原発マネーが、各地の原子力施設がある地域や関連する企業・政治家などに流れていることは、これまで度々指摘されてきました。今回明らかになった関西電力の問題では、経営トップがかかわっていたうえ、社内調査報告や報酬減額処分については取締役会に報告さえしていませんでした。企業としてのコンプライアンス意識の低さとガバナンスの欠如は、看過できない重大な問題です。

関西電力は、元助役の強権的体質や地元との関係維持のためにやむをえず授受してしまったかのような発言を繰り返し、あたかも被害者のように見せようとしています。しかし、事の本質はそこにはなく、電気料金が原資となった原発マネーが、関係者に還流し、それが秘密裏に処理されてきたのではないかということです。そしてまた、電力という公共事業を担う企業のトップが行ってきたということに大きな問題があります。

経営トップがコンプライアンスも守れない企業に、原発を動かす資格がないことは明らかで、この問題を徹底的に追及するとともに、原発の稼働停止を求める世論をさらに高めていかなくてはなりません。

 

12.日米貿易協定などの通商交渉に関して

9月25日、日米両首脳が、米ニューヨークで、日米貿易協定に最終合意し、共同声明に署名しました。2018年9月に始まった二国間交渉はわずか1年で妥結しました。2020年1月1日の協定発効を視野に入れ、日本は現在の臨時国会での承認をめざすとしています。

日本は、牛肉など米国産農産物への関税を環太平洋経済連携協定(TPP)の水準に引き下げたのに対し、米国側の乗用車や自動車部品に課す関税の削減は先送りされました。このように、協定内容は日本側が一方的な譲歩を重ねたものであり、トランプ大統領の再選のために成果を誇示することを目的とした拙速な合意です。そのため、農業・農民団体はもちろん、野党各党からも反対の声が上がっています。

米国側は、牛肉や豚肉、小麦など日本への輸出金額の多い農産物で、今のTPP加盟国と同じ待遇を勝ち取りました。これにより、米国は70億ドル(7800億円)の輸出増を見込んでいます。今後、国会での審議を経て日米FTAが発効するならば、2018年12月のTPPや2019年2月のEUとの経済連携協定に続き、北海道をはじめ、日本の農畜産業に甚大な打撃を与えます。また、史上最低となった食料自給率のさらなる低下、安全な食の確保にも大きな影響を与えることは必至です。

こうした一連の交渉について、政府はかつてないほど情報を明らかにしませんでした。市民をないがしろにする安倍政権の姿勢が露呈したものです。日米交渉は今後も継続されます。これまでの交渉の情報公開や市民との意見交換をさらに求めていく必要があります。

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