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2013年度 主な課題

2013年4月24日

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2013年度 主な課題

以下は2013年4月24日に開かれたフォーラム平和・人権・環境第15回総会において決定された2012年度総括と2013年度運動方針です。

1.   運動の展開にあたって

(1)   2013年の特徴的な情勢について

  1. リーダーの交代相次ぐ世界
       朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では、17年にわたり最高指導者の地位にあったキム・ジョンイル(金正日)国防委員長の死去(2011年12月)を受け、2012年4月、次男のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長が正式に国防委員会第一委員長に就任、権力を掌握しました。
       ロシアでは、5月にウラジーミル・プーチン首相が4年ぶりに大統領に復帰しました。
       同じく5月、フランスでフランソワ・オランド前社会党第一書記が大統領に就任し、ミッテラン大統領以来の社会党政権が誕生しました。
       アメリカでは現職のオバマ大統領が再選されましたが、アメリカと並ぶ大国である中国では、習近平(シー・ジンピン)前副主席が国家主席に選出され、2003年から続いた胡錦濤(フー・チンタオ)体制が終了しました。
       隣国の韓国においては、2012年12月、保守系与党セヌリ党のパク・クネ(朴槿恵)候補が、民主統合党のム・ジェイン(文在寅)候補を破り、大統領に選出されました。
       こうした各国での政権交代は、これから世界が新しい枠組みに変化していく可能性を秘めていることを示しています。世界的な不況の中で、政権が国民の不満をどのように吸収していくのか、どの政権もきびしい状況に置かれています。アメリカ中心に運営されてきた世界銀行や国際通貨基金(IMF)による世界経済のあり方は、BRICs諸国などの台頭の中で、極めて重要な段階に突入しています。G8からG20へ、新興諸国の役割が重要視され、欧米諸国や日本を中心としたこれまでの枠組みでは対応しきれない世界情勢があります。アメリカと歩調を同じくしてきた日本も、対中国・対アジア経済政策などにおいて独自の判断を求められる局面が多くなると考えられ、新しい経済・外交への主体的な対応が求められます。
       
  2. 民主党政権の混迷
       バブル経済崩壊以降の日本経済の不況や新自由主義的経済政策の中で、非正規労働者が増加し、地方経済が大きく疲弊しました。そのような経済状況に対し、民主党は、国民の生活に着目した社会民主主義的政策を掲げ、2009年8月の衆議院総選挙で勝利を収め、政権交代を果たしました。このことは、アメリカとの深い連携を軸に経済成長を遂げてきた、日本の戦後社会のあり方自体を問うものでもありました。 民主党・社民党・国民新党の連立政権は、公的事業の仕分けなど財政の効率化と透明化に努力するとともに、子ども手当や高校無償化の導入、農業者に対する戸別所得補償制度など、自民党政権では成し得なかった政策の実現を図り、成果を上げてきました。しかし、党内不一致や官僚機構の反発、アメリカの圧力などから、「コンクリートから人へ」の象徴でもあった八ッ場ダム工事中止の断念や「最低でも県外」と主張した普天間基地移設問題の辺野古新基地建設回帰、加えて在日外国人地方参政権付与、高校無償化制度の朝鮮学校への適用、取り調べの可視化、死刑廃止、人権救済制度の確立などの課題では中途半端な状態が続きました。普天間問題、社会保障と税の一体改革やTPP参加をめぐって政権内の意見対立を呼び込み、社民党の政権離脱、「国民の生活が第一」の分党や議員の離散を繰り返し、国民の期待や信頼を損ねていく結果となりました。
       野田佳彦首相は2012年11月16日、党内の反対を押し切って衆議院解散に踏み切りましたが、選挙結果は公示前議席231を57へと大きく減らすこととなりました。
       
  3. 台頭する品格なき改憲勢力
       昨年12月16日投開票の第46回衆議院議員選挙では、自民党が176増の294議席、公明党が10議席増の31議席と圧勝し、2009年以来の政権の座に返り咲きました。また、注目された日本維新の会も54議席を確保し、57議席に甘んじた民主党に次いで第3党の位置を確保しました。選挙戦最中において自衛隊を「国防軍」になどと改憲を主張した安倍晋三総裁率いる自民党、そして結党から改憲を主張してきた日本維新の会の議席をあわせると、改憲勢力は衆議院において7割を超える圧倒的多数を形成していることになります。
       しかし、世論調査の結果を見ると、国防軍に関する憲法9条改「正」には反対が52%と賛成の36%を上回っており、決して改憲を選択したことではないことが分かります。また、選挙結果を分析すると、自民党は選挙区において43%の得票をもって79%の議席を占めており、小選挙区制度のゆがみが議席独占の結果を招いたとも言えます。自民党はこの圧倒的多数を利用して、選挙期間中封印してきた原発推進や辺野古新基地建設などを強行しようとしています。また、反動的教育改革や改憲再軍備など一貫して持ってきた政策をあからさまに推進しようと画策しています。7月に予定される参議院議員選挙が、日本社会をどうしていくのかを問う大きな試金石であり、民主主義社会の成熟度が問われるものとなるでしょう。
       安倍晋三自民党総裁は、選挙期間中、領土問題を挙げては民主党の対応を弱腰外交と非難し、自衛隊がジュネーブ条約の適用外にあるとの虚言を弄し、国防軍保持の改憲やアメリカとの集団的自衛権行使を容認すべきとの主張を繰り返しました。また、歴史認識問題に触れて、これまでの河野談話や村山談話を否定し、「近隣諸国条項」を廃止するなどと発言しました。アジアとの関係性を抜きにして日本が成立し得ない状況にもかかわらず、過去の歴史的事実を歪曲しことさらに対立をあおる姿勢は、日本の将来に大きな禍根を残すことになるでしょう。
       政府・自民党は、すでに集団的自衛権行使の議論を進め容認の姿勢を固めています。今後は改憲勢力の圧倒的多数を利用し、手始めとしての96条改「正」など、自民党が主張する改憲案の成立をあらゆる方向から進めていくものと考えられます。日本維新の会の石原慎太郎共同代表や橋下徹共同代表などの発言は、安倍首相の発言と何ら変わるものはなく、きわめて保守的なものです。維新の会に所属する国会議員の顔ぶれを見る限り新しい社会を提起できるとは考えられません。石原共同代表は、「日本国憲法は諸悪の根源」と述べ、北朝鮮の拉致問題を例に挙げ、「(憲法)9条がバリア(障害)になって、(拉致された)同胞を武力で解放できなかった。国家としてのシェイム(恥)」と主張しました。また、「財政的に成り立ちえない高福祉低負担の社会保障制度がまかり通るのは、憲法にうたわれている権利と義務が全く不均衡だからだ。こんな憲法を持っている国は世界中ない」とも語りました。このような品格なき政治家の発言がまかり通る状況は、民主国家と呼べるものではありません。
       
  4. 新自由主義への回帰
       社会の閉塞感や中国を中心としたアジア諸国の経済的台頭を背景に、「公益及び公の秩序」優先や「強い日本」を主張する国家主義的勢力の台頭を許してはなりません。民主党が当初めざした「公助」を基本にした社会保障政策は、自民党の台頭によって「自助」を基本にした新自由主義的政策に転換していくものと考えられます。
       政府・自民党は、緊急経済対策として2012年度補正予算で13.1兆円を、13年度当初予算として92.6兆円を閣議決定しました。民主党政権下の2012年度予算より総額を抑えたとする予算額は、経済対策予備費を計上しないなど見た目の削減であり、緊急経済対策の補正を含めると自民党が「ばらまき」と批判した民主党政権下の予算を超えるものです。参議院選挙対策を視野に入れた場当たり的な経済対策は問題と言えます。 予算案を個別に見れば、生活保護基準の引き下げや地方公務員の更なる給与削減措置、公共事業費15%増や11年ぶりの防衛費の増額などは「人からコンクリートへ」「地方から中央へ」「福祉から防衛へ」と言うべきで、民主党政権下の政策を全く否定するものとなっています。「地域自主戦略交付金(一括交付金)」の廃止は、公共事業を再び中央支配に戻すものです。子ども手当が自民党の強い反対で児童手当となったと同じように、高校無償化制度への所得制限の導入や農家の戸別所得補償も名称の変更と同時に見直しが検討されています。予算措置や財政対策を見るかぎり、自助を基本にした新自由主義的政策が如実に表れています。
       結局、自民党の経済政策は、大企業中心の経済成長を基本としたものから抜け出せず、戦後一貫して行われてきた公共投資による箱物行政を踏襲するものです。変化しつつある世界経済の中で、財政の行き詰まりは遠からず国民生活を直撃するものと思われます。
       この総選挙において、平和フォーラムが主張する「脱原発」「オスプレイ配備反対」「改憲阻止」の主張が、自民党による「強い日本を取り戻す」とする根拠ない声高の主張に対抗しきれなかったことを事実として認める必要があります。脱原発や米軍基地問題などの平和・人権・環境の課題は、社会の極めて深刻な閉塞感の中で、経済再生・雇用確保などの生活に密着した主張に押し込まれました。しかし、公共投資の声に押された株価の上昇など、一過性の可視的政策には日本の将来を規定する新鮮な内容はありません。私たちの主張を、脱原発後の廃炉事業も含めた立地地域の経済対策やエネルギー政策の転換の中での雇用創出や、国家主義的主張がいかにアジアとの経済交流に打撃となるのかといった具体的な内容として、ひろく提起していくことが必要です。
       民主党を中心とする民主リベラル勢力が、「決断することが大切」と言いながら、決断できずに来たことが国民の信頼を損ねてしまったことを真摯に捉え、具体的施策と財政的裏付けを明確に示し、国民の信頼を取り戻しつつ再生の道を歩まなくてはなりません。世論調査でも明らかなように、自民党の政策が支持されたものではなく、自民党の勝利は小選挙区制度そのものと民主党政権のもたらした政治的混乱によるものであり、2009年の政権交代で民主党が掲げた政治理念は、今後も重要な位置を占めていくものと考えられます。
       
  5. 現実化する改憲
       自民圧勝の総選挙結果は、この間、自重してきた自民党結党以来の主張である自主憲法制定の可能性を大きくしました。加えて、改憲を主張する日本維新の会の勢力拡大もそれを後押ししています。改憲の主張には、個人の権利の制限と立憲主義の否定という側面と、「国防軍の保持」や「集団的自衛権の容認」という日米同盟強化と再軍備化への側面があります。
       本来憲法が持つ基本的機能は、権力を抑制し個々の人権を保障するものです。そのことが近代市民革命によって形作られた立憲主義の基本であると言えますが、しかし、自民党の改憲案は、主権者たる国民の権利抑制を基本につくられています。公務員の政治活動や在日外国人の参政権などの否定、戒厳令をほうふつとさせる緊急事態条項、国民への憲法遵守義務の創設のほか、国旗・国歌を憲法に規定し、その尊重義務を国民に課しています。また「家族」が互いに助け合わなくてはならないとする条項に至っては、作成者たちの政治家としての資質さえ疑われるものです。
       「天賦人権論は認めない」とする自民党議員の発言は、そのことを象徴するものであり、安倍首相が主張する教育改革は、改憲案に頻出する「公益及び公の秩序」を重視し、個人の権利を抑制する国家主義そのものです。戦前の教育勅語に象徴される、個人の倫理観にまで踏み込んだ思想統制の方向が社会に与える影響は大きく、グローバル化する社会にあって「多民族多文化共生」という歴史的・社会的要請を大きくゆがめるものです。
       一方で、中国の経済的・政治的伸長への対抗として、防衛力強化と日米同盟強化の考えは、尖閣諸島をめぐる対立などから、現実性のあるものとして報道されています。これまでも「日米防衛協力のための指針」の改訂などを通じて、緊急事態法など「戦争をする国づくり」が憲法解釈をゆがめる形で進められてきました。しかし、「集団的自衛権」を違憲とする内閣法制局解釈の中で、有事への共同対処に関しては大きな制限が加えられてきましたが、東アジアでの政治的軍事的プレゼンスの強化をもくろむアメリカは、予定される再改訂作業の中で日本政府に対して共同軍事行動を、より鮮明に要求するものと考えられます。
       2012年版の防衛白書は、海洋進出を積極的に図る中国を脅威と捉え、在沖縄米軍を重要な抑止力として位置づけています。中国の太平洋進出に対して、沖縄が戦略的に重要な要であるとする考え方は、日本にとってどのような利益があるのかには大きな疑問があります。
       私たちは、敗戦後の日本に国民的な圧倒的賛意をもって迎えられた日本国憲法の理念の実現こそ、日本の政治家が果たすべき使命であると考えます。そして、そのことが被害を与えた近隣諸国や、戦争の惨禍の中で亡くなった先達への責任であると考えます。日本国憲法の前文と9条の理念をもって、アジアの平和へ寄与していくことが、世界から求められる日本のあり方であり、そのことが日本に対する信頼を醸成し、ひいては日本の国益にかなうものと考えます。政府は憲法96条を改悪し、改憲を容易なものにしようとしています。私たちは、今夏の参議院選挙を全力で闘いぬき、これらの策動を阻止しなくてはなりません。
       
  6. 混迷する日中・日韓関係
       中国と日本が領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)は、日本政府が民有地を借り上げることで実効支配をしてきましたが、何ら関係のない東京都の石原慎太郎都知事(当時)が購入計画を発表し、政治問題として表面化しました。日本政府は、9月10日の関係閣僚会議で正式に国有化を決定しましたが、そのことに中国は反発し、反日デモや日系企業への襲撃事件が中国各地で発生するなど、極めて重大な事態に至りました。官民レベルでの交流にも大きな障害が生じ、9月27日に北京の人民大会堂で予定されていた「日中国交正常化40周年記念式典」も中止されました。
       同様に、韓国が実効支配し日韓両国が領有権を主張する竹島(韓国名:ドクト)には、8月にイ・ミョンバク(李明博)韓国大統領が上陸し警備にあたる韓国軍を激励するパフォーマンスを行うなど、政治的・外交的に注目されました。
       そうした中で、自民党を中心に「弱腰外交」との政権批判が展開され、一部議員が尖閣諸島(魚釣島)へ上陸を強行したり、東京都の調査船が尖閣諸島沖で調査と称するパフォーマンスを行うなど、中国政府・市民の反感を買う行為を繰り返しました。このような強硬的態度は、日中・日韓の友好関係を破壊し日本経済に大きな打撃をあたえる可能性を持っています。
       尖閣諸島問題は、1972年、田中角栄首相と周恩来首相によって結ばれた日中共同声明や1978年の日中平和友好条約締結の際にも、大局を考慮して議論を避けてきた課題です。現状における意見の違いを認めることを基本に、日中・日韓の将来に向かっての友好関係の構築に邁進し、その過程において問題の解決に向けて努力するという姿勢が重要です。
       
  7. 歴史を歪曲する政府方針
       安倍首相は、河野談話と教科書検定における近隣諸国条項を廃止するとし、戦後50年を契機に、植民地支配と侵略について「痛切な反省と心からのお詫び」を表明し、その後の歴代首相が踏襲してきた「村山首相談話」に変わる新たな談話の発出を追求するとしています。河野談話と村山談話は基本的に一体のものであり、河野談話を否定しながら村山談話に代わるものという発想は、村山談話を否定すると言うことに他なりません。
       アメリカ・ニュージャージー州の地方紙「スターレッジャー」に昨年11月、「日本軍従軍慰安婦は自発的であり軍の関与はない」とする意見広告が掲載されましたが、これには安倍晋三首相や下村博文文科大臣など閣僚・政府関係者8人を含む26人の自民党国会議員が賛同をしています。アジアの歴史的事実を否定する、こうした主張には、アメリカ側からも「韓国などとの対立をあおり、日米の利益にならない」とする考えが表明されるなど、世界的に受け入れられず、安倍政権が意図するナショナリズムの高揚は、日本を国際社会から孤立させる危険性をはらんでいます。
       戦後の日中国交正常化を成立させた日中共同声明は、「日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する」「両国国民は、両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している」とし、そのために日本政府は、侵略戦争を深く反省するとしています。日中国交正常化から40年の節目を超えた今、もう一度この共同声明の基本に立ち返ることが重要です。平和フォーラムは、今こそ戦後補償問題を根本から解決していくことを通じて、アジア諸国との新しい関係構築を果たすべきだと考えます。
       
  8. 制裁では進まない解決
       昨年8月29日、日朝赤十字担当者による大戦中の日本人の遺骨収集についての話し合いをきっかけとして、4年ぶりの日朝協議が始まりました。しかし、12月に入って朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が人工衛星打ち上げを予告すると、アメリカや日本などを中心に、これが実質的なミサイルの打ち上げであり国連安保理決議に違反であるとして強く反発し、協議は中断しました。森本敏防衛大臣は、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載する海上自衛隊のイージス艦を東シナ海に展開、沖縄県など7カ所に配備する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による破壊措置命令を発動しました。12月12日、テポドン2を改良したと見られる3段式ロケットが打ち上げられ、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)が、衛星が軌道に乗ったことを確認しました。
       北朝鮮に対して同一歩調を取る日米韓は、北朝鮮と友好関係を保ってきた中国を巻き込んで、禁輸品目の追加や資産凍結、金融取引を禁止対象拡大など制裁措置の拡大強化の方向を示しました。この状況に対して北朝鮮は、2013年2月12日に3回目の核実験を強行しました。国連安全保障理事会は3月7日に、北朝鮮に対してきびしい経済制裁を科す「制裁決議2094号」を、参加15か国全会一致で決定しました。北朝鮮は、全面対決に突入したとして「休戦協定の白紙化」「1号戦闘勤務態勢突入」など挑発的な発言を繰り返しています。一方、米軍は韓国との共同軍事演習へB2ステルス爆撃機やF22ステルス戦闘機を参加させるとともに、横須賀基地所属のミサイル防衛(MD)能力を持つイージス艦「フィッツジェラルド」や海上配備型の高性能レーダーを韓国沖に派遣しています。北朝鮮は、この米韓の行動に反発を強めるとともに、他方で新首相にパク・ボンジュ(朴奉珠)前朝鮮労働党軽工業部長が任命したと報じています。このことは、朝中間の経済交流を重視し、経済政策の進展を図る姿勢の表れであり、北朝鮮が求めていることが何であるかを象徴しています。
       安倍首相は、独自制裁として、北朝鮮への送金に関する制裁や渡航制限の強化を打ち出しています。一方で、拉致対策本部も強化し、拉致問題を必ず解決するとの意思を表明しています。しかし、これまでも制裁措置は継続して行われてきましたが、拉致問題は解決に向け進展してはいません。平和フォーラムは、日朝国交の回復こそが拉致問題解決のための早道であるとし、制裁措置を停止し日朝協議を再開していくことが重要であるとの考えを示してきました。北朝鮮側は日朝協議の再開を望むと表明しており、日本政府はこのような機会を逃がすことなく、平壌宣言の基本に返って日朝協議を進めていかなくてはなりません。北朝鮮の孤立化は、北東アジアの平和にとって極めて大きな脅威となるに違いありません。自衛隊の展開を考える前に、話し合いによる外交の進展を求めるべきだと考えます。
       
  9. 傲慢なアメリカと卑屈な日本政府
       アメリカ政府・米軍は、10月1日、一時的に岩国基地に搬入した垂直離着陸機MV-22オスプレイを沖縄県の普天間基地に正式に配備しました。重大事故を試作段階から繰り返してきたオスプレイは、極めて高度な操縦能力が要求され、加えてオートローテーション機構がないなどの構造的欠陥も指摘されています。
       地元沖縄は、仲井真弘多知事以下41自治体の首長および議会の議長すべてが反対しています。また、アメリカが示した環境レビューに日本全国の訓練ルートで飛行する計画が記載されていることから、当該自治体や全国市町村会が反対を表明するなど、多くの自治体から意見書や請願などがあげられています。
       オスプレイの飛行には、①アメリカ国内で市民の反対から飛行中止に追い込まれていること、②日本の航空法で必備とされるオートローテーション機構がないこと、③訓練飛行を規定しない日米地位協定に基づいて航空法の特例として訓練飛行を行うとしていること、④配備は機種変更であるとして事前協議の必要がないと日本政府が言明していること、⑤日米合同委員会で決めた飛行制限が守られていないことなど、多くの問題が指摘されます。
       米軍は、今後MV-22を12機追加配備すること、また事故率の極めて高い空軍仕様のCV-22を嘉手納基地に配備することも表明しています。これまでも各地で米軍機の墜落事件が起きてきましたが、このような大きな反対を押し切ってのオスプレイ配備強行は、日米関係を大きく損なうものです。
       このような中で、昨年10月16日、日本人女性が米兵2人に暴行される事件が発生しました。米軍は19日に夜間外出禁止令を発出しましたが(12月26日に解除)、その後も全国で不祥事が相次いでいます。1995年の少女暴行事件で日米地位協定の運用の改善が行われ、女性への性暴力が起訴前の身柄引き渡しの対象となっているにもかかわらず、1996年以降に女性への性暴力で摘発された米兵の約86%が逮捕されず、不拘束で処理されていたことが明らかになっています。日米地位協定の見直しが強く要求されてきたにもかかわらず、運用改善さえ徹底されず、日本政府は見直しに向けての話し合いも提起してきませんでした。市民生活を脅かしながらなおオスプレイは抑止力などと主張するアメリカの傲慢な姿勢と日本政府の卑屈な態度を許してはなりません。
       沖縄を中心に大きな負担となっている在日米軍は、日本政府が主張するように日本の安全のための「抑止力」として機能しているでしょうか。米軍の駐留が、日本のアジア外交をゆがめ、その安全と平和の脅威になっていることも事実です。アメリカの軍事力や核の傘に頼る平和政策は、アジアにおいて日本の立ち位置を極めて困難なものにしています。協調と対話、互恵を基本にしたアジアでの主体的な日本外交の構築が求められています。
       
  10. 人権後進国の日本
       自民党政府は、高校無償化制度を朝鮮学校へ適用しないことを決定し、2月20日、省令改「正」を行いました。高校無償化制度は国際人権規約にも定められている「中等・高等教育の無償化の漸進的導入」(13条2項bとc )の理念を法制化したものであり、国会議論を経て、同条項への留保の撤回を決定したものです。すべての子どもに学ぶ権利を平等に実現していくという法律の趣旨からも、当然に日本国内で学ぶ高校生すべてに適用されるものであり、そうした法律の趣旨を省令改「正」によって曲げることは許されません。
       日本政府は、①公務員のストライキ権、②労働者の公休日の報酬の支払い、③市民的及び政治的権利に関する国際規約の第1選択議定書(権利を侵害された場合の個人通報制度)④同第2選択議定書(死刑の廃止)などを留保し、国連基準から見て極めて重要な人権課題を抱えています。人権とは社会的マイノリティーの人権がまず守られてこそ、全体の人権が守られるのであり、戦前からのアジア諸国民特に日本が植民地支配を行った韓国・北朝鮮への差別感の払拭、その国から強制連行などで日本に在住することを余儀なくされた在日韓国・朝鮮人への差別の払拭が、日本の人権課題の進展への大きな力になることでしょう。戦後補償問題の解決を含めて、重点的なとりくみが求められます。
       
  11. 女性参画の後退と困難な女性の自立
       2012年10月24日、世界経済フォーラム(WEA)が発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート」では、日本の男女格差(ジェンダーギャップ)指数は135ヵ国中101位となり、前年の98位からダウンしています。男女賃金格差も深刻で、2012年の経済協力開発機構(OECD)の報告によれば、16才未満の子どもを養育する男女の賃金格差は比較できる30ヵ国中日本が最大であるとされています。また、衆議院選挙で当選した女性は38人で全体の7.9%、指導的立場で活躍する女性の比率を2020年までに30%にしようとする政府目標からはほど遠いものとなっています。女性大統領を生んだ韓国は、女性議員の割合が15.7%で世界105位、日本は143位となっています。
       日本国憲法の策定に参画した故ベアテ・シロタ・ゴードンさんは、「憲法によって、日本の女性は美徳を失ったとの意見もある」と発言した自民党女性議員に対して、「でも、別の憲法だったら、あなたもこうしてはいられなかったかもしれませんね」と返事をしたというエピソードがあります。日本社会の根底に、いまだ「女性は育児と家庭」と言った女性参画を阻む役割分業意識が根強くあります。2012年12月に発表された内閣府の男女平等参画調査によれば、これまで一貫して減ってきていた「女性は家庭を守るべきだ」との設問に対する賛成が、一転して前回よりも10ポイントも上昇し51.6%となりました。特に20代の賛成が突出して増えたとされています。背景には、性に対する社会的偏見や就労と子育ての両立が困難なことなど様々な状況が想定されます。
       第3次となった男女共同参画基本計画に記載された、①固定的性別役割分担意識をなくした男女平等の社会、②男女の人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会、③男女が個性と能力を発揮することによる、多様性に富んだ活力ある社会、④男女共同参画に関して国際的な評価を得られる社会に向けて真剣なとりくみが求められています。
       
  12. 進まない復興と見えない個人
       東日本大震災と福島原発事故の発生から2年が過ぎました。しかし、被災3県の復興はすすんでいません。仮設住宅でのふたつの冬を過ごしているにもかかわらず、住宅建設は半ばです。復興のための経済支援策も様々な要因から必要とする方々に行き渡るものではなく、将来の生活不安から支援の受け入れを断念する例も散見されます。被災者の立場に立った支援の方途を検討する必要があります。
       復興予算が、全国の税務署耐震工事に流用される、また、尖閣問題を視野に入れた海上保安庁の巡視船建造費に流用されるなど目的外に執行されている実態が明るみに出ています。また、不適切な除染作業の実態も報告されています。きびしい生活の中で、国民は被災地復興のための増税措置を容認しましたが、そのことは真に被災県の復興につながるものでなくてはなりません。また、きびしい作業を強いられている福島第一原発の事故現場では、作業員の被爆労働が問題となっています。外国人労働者が従事する実態も明らかになっています。早期の事故の収束も重要ですが、線量バッジの不使用や重層する下請け労働でのピンハネなど、収束作業に責任ある立場の東京電力は、協力企業の責任にせず自ら労働条件の改善にあたることが求められます。
       「私は国がおかしいと思うんです。帰れないなら帰れない、とはっきり言えばいいんです。でもそれを言わないから、地元の人の気持ちがばらばらになっちゃうんです。国は私たちに補償したくないだけなんですよね」。1月14日の朝日新聞の「声」欄で紹介された高校生の言葉は、福島県の実態を象徴しています。子どもの健康被害への対応や被災者への対応は、原発推進策や財政への影響を考慮しているのではないかと思われるほど、福島県民の立場に立ったものではありません。放射線被害が立証できなくてはならないとするこれまでの政府の姿勢をあらため、被災があったという事実に基づく補償が必要と考えます。「福島事故子ども・被災者支援法」が2012年6月に施行されましたが、未だその対象地域の設定さえされず、具体的施策は打ち出されないままになっています。国民には我慢と自己犠牲を強いる政府の姿勢に変化はありません。
       
  13. 真摯な対応を求められる原子力規制
       原子力規制委員会の有識者調査団は、敦賀原発直下に活断層が存在すると結論づけました。東通原発(青森県)、大飯原発(福井県)においても活断層である疑いが濃厚です。今後、志賀原発(石川県)、美浜原発(福井県)、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)など、全国の原発で活断層調査が進められています。地震国であり、至るところに活断層が存在する日本において、原発建設がいかに問題のあるものだったのか、加えてこれまでの調査や認可がいかに推進の立場に立ったいい加減なものであったかが明確になっています。
       原子力規制委員会の専門家チームは、新しい原発の安全基準の骨子案をまとめました。活断層の定義、想定される津波への対策、放射性物資除去のフィルター設置、バックフィット制度の導入など、不十分ながらも従来の曖昧な姿勢を排除したものとなっています。しかし、福島原発事故の原因が明確にされない中で、今年7月までの基準策定は性急です。東京電力が虚偽の説明を行い、国会事故調による非常用復水器の調査を拒んだことが明らかになりました。非常用復水器の調査は地震動が原発に直接影響を与えたか否かを判断する材料となっています。津波以前の地震動において、原発に重大な損傷を与えたのであれば、安全基準の策定にも重大な影響を与えるものです。原子力規制委員会の活動原則にある「独立した意志決定」「透明で開かれた組織」の原則に立ち返り、慎重に対応すべきであると考えます。
       福島原発事故の現状から考えれば、原発の稼働には厳しすぎるという言葉はあたりません。安全基準の審議の中で意見を求められた電力会社側は「福島のような極端なケースを想定する必要はない」と主張しています。このような立場は、決して国民の理解を得られません。事故を起こした側のこのような無責任な態度は、これまでの原子力行政の官民癒着構造と利益優先・安全無視の姿勢を象徴しています。事務局の原子力規制庁は、「福島第一原発の経験から、より安全側に立つべきで、異論があるなら、対策を増やすことのデメリットを具体的に示してほしい」と反論したとされています。より高度な安全を要求する新安全基準の策定は、廃炉にかかる費用や使用済み核燃料処分の費用を含めて、原子力発電がいかにコストの高いものであり、市場原理の上でも成立し得ないものであることを明らかにしています。
       
  14. 無視すべきではない国民的議論
       民主党政権が策定した「革新的エネルギー環境戦略」は、脱原発の実現を2030年代とするなど、不満の残る内容ですが、国民的議論の上に立つものであり、政権交代によって無視できるものではありません。自民党は総選挙において積極的に原発推進を主張したわけではありません。自民党の獲得した比例票は1660万で、脱原発を主張した政党の総得票数約3000万には遠いものです。総選挙に勝利した後の原発推進の主張は、国民的コンセンサスとは言えません。自民党は、民主党政権の政策を継承し脱原発の方向を明確にする責任があります。
       現在の原子力行政を方向づける法律は、2008年の「エネルギー基本計画」と「原子力政策大綱」であり、3.11以前の原発推進の姿勢からの法しか存在しないのが現状です。脱原発法制定全国ネットワークが、その成立をめざし衆議院提出にこぎ着けた「脱原発基本法案」はひとたび廃案となりましたが、第183回国会で参議院に提出されました。自民党の圧勝と政党の分裂などの中で、その議論自体極めてきびしい状況に置かれています。しかし、前述の法的状況から言えば、国会議論の誘発のためにも「脱原発基本法」は重要なファクターと評価できます。政党の枠を越えて「脱原発」の議論をすすめるためにも、国会内・外でのとりくみの継続が求められています。
       
  15. エネルギー政策と地域振興の新しい形を
       3.11福島原発事故以降も、原発関連の電力各社は、6自治体へ計31億8000万円の寄付金を支払っています。一部は公表もされていません。これらは電力料金に上乗せさせられているものであることは明らかです。原発マネーに依存せざるを得ない地方自治体と、そのことを利用して原発立地を図ってきた電力会社のこれまでのあり方が問われます。2012年度の原発関連の地方自治体への交付金は、「原発立地地域対策交付金」「原子力発電施設周辺地域交付金」など総額約1575億円にも達しています。基地問題にも共通して言えますが、これまでの、地方の自立を阻み、交付金によって中央の意志に従わせる政治のあり方を問い直さなくてはなりません。
       原発の廃炉が地方経済の後退を呼ぶとする原発立地自治体の危惧は無視すべきではなく、政府は原発に代わる具体的振興策を提示すべきです。そのことなしに「脱原発」を立地市町村に理解してもらうことはできません。原発に代わる再生可能エネルギーは、そもそも小規模地域分散型のエネルギーであり、そのことでの地方経済・雇用の促進策を検討すべき段階に来ていると言えます。
       
  16. プラハ演説の具体化、プルトニウム利用政策への批判拡大
       2012年4月、北大西洋条約機構(NATO)の外相・国防相会議は、オバマ米大統領の「核なき世界」「核体制の見直し」に呼応して、比較的短距離の戦術核削減の方向と、核兵器非保有国に核兵器使用しないとする「消極的安全保障」の導入を決定しました。核兵器廃絶の方向性が現実のものとなっています。米ロ間においても新戦略核兵器削減条約(新START)が発行し、2018年までに戦略核の30%を削減していくとしています。
       2012年3月に、「核セキュリティーサミット」が韓国・ソウルで開催され、オバマ大統領は韓国外国語大学で演説し「テロリストの手に渡ることを防ぐためにも、分離したプルトニウムを大量に増やし続けることは絶対にしてはならない」と主張しました。核兵器の削減が進む一方において、北朝鮮やイランにおける核開発疑惑問題、NPT核不拡散条約に参加しないインド・パキスタン・イスラエルなどの核保有問題など、核拡散が進むという状況の中で、使用する術のないプルトニウムを増やすことは「核テロ」の可能性を高めることにつながりかねないという懸念が示されています。オバマ発言の背景には、核実験を繰り返す北朝鮮、核燃料サイクル計画の中でプルトニウムを抱え込んでいる日本、その狭間においてプルトニウム利用政策を求める韓国の3カ国の思惑があると考えます。
       分離プルトニウムは世界で250トン、核兵器に換算すると約3万発分にものぼります。日本はそのうち約45トン、核兵器5000発分ものプルトニウムを所有しています。原発の使用済み核燃料を再処理してできるプルトニウムが、核兵器の材料である事実をしっかりと認識すべきであると考えます。1月30日から3日間の日程で静岡で開催された国連アジア太平洋平和軍縮センター主催の「国連軍縮会議」の席上、アメリカ・モントレー国際研究所のマイルス・ポンパー上席研究員は、日本の核燃料サイクル政策について「プルトニウムを使う核兵器を持たないのに、核燃料サイクルをめざしているのは日本だけ」と指摘し、自公政権は核燃料サイクルを維持する立場とみられるが「稼働している原発が関西電力大飯原発(福井県)だけになった現状では延期すべきだ。プルトニウムが使い切れず大量に余れば、近隣諸国の不安が拡大する」との懸念を表明しました。
       自民党の石破茂幹事長の「原子炉技術や各燃料再処理技術は潜在的な核抑止力」との主張は、根強く日本国内に存在するものです。日本維新の会の石原共同代表は、明確に「核兵器保有」を主張しています。原発の依存しない社会をつくるためにも、日本が主張してきた核兵器廃絶のためにも、事故を繰り返し破綻したと言える高速増殖炉「もんじゅ」、六ヶ所再処理工場の計画を断念し、プルトニウム利用政策(核燃料サイクル計画)からの脱却が求められます。
       2012年10月22日、国連総会第一委員会において、スイスやノルウェーなど非核保有国30ヵ国以上が、核兵器の非人道性に焦点をあて「核兵器を非合法化する努力の強化」を促すための共同声明を発表しました。しかし、日本政府はこの声明に賛同せず、世界の平和団体などからきびしい批判を浴びました。日本非核宣言自治体協議会(会長:田上富久・長崎市長)は、翌日玄葉外務大臣宛に抗議文を提出しています。被爆国でありながら、アメリカの「核の傘」の下にあり続けるばかりか、「核兵器廃絶」に消極的な日本政府の態度は許されません。
       
  17. TPP参加の前にすべき議論を
       自民党は、衆議院総選挙にあたって環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題について「聖域なき関税撤廃」には反対の立場を主張しましたが、安倍首相は3月15日に交渉への参加を表明しました。「ASEAN+3」を主導する中国に対抗するアメリカがすすめるTPPの「聖域なき関税撤廃」は、日本社会の経済的慣行や社会的共通資本を崩壊させ、日本社会を根本から変えていく恐れがあります。また、小規模の集約農業を続けてきた日本農業は関税の撤廃によって崩壊していくものと考えられます。日本の食料自給率は、更なる低下を招く可能性があります。
       民主党は、農家への戸別所得補償制度をスタートさせましたが、輸出産業か農業かの対立を語るのではなく、食料自給率低下、食料の国外依存という生活の安全保障の課題をどのように克服していくのかの議論をまず始めなくてはなりません。
       

(2)   とりくみの基本スタンス

  1. 憲法理念の実現をはかる
       衆議院総選挙の結果、自民党や日本維新の会などの改憲勢力が衆議院の3分の2を超えることになりました。今年7月に予定される参議院議員選挙の結果によっては、改憲への動きが大きく進むことが予想されます。バブル崩壊以降の日本社会の閉塞感は、アジア諸国の台頭と日本経済の不況と不安定雇用の増大の中でますます強まっています。「日本を取り戻す」と言うような安易な主張が、閉塞感を払拭するのではないかとの期待の中で支持を広げるとともに、領土問題などへの国家主義的な強硬姿勢に共感が広がることとなっています。安倍晋三首相はそのような情勢を利用し、「国防軍の保持」など改憲を示唆しています。
       「個人の権利主張が行き過ぎて社会の秩序を乱している」「基本的人権の尊重が、国益を損なうことにつながっている」など全く根拠のない主張を繰り返し、「政治権力のあり方や立法が憲法の規定に従って決定され、個人の権利を国家権力から守る」とする近代市民革命以降確立されてきた「立憲主義」を否定し、個人の権利を制限する「自民党改憲案」なるものが策定されています。「自民党改憲案」には、天皇の元首化、国防軍の保持、集団的自衛権の行使、日の丸・君が代の遵守義務、「公益及び公の秩序」の強調、公務員の権利制限、そして国民の憲法遵守義務など敗戦の混乱から新しい日本をつくるとした日本国憲法の理念を否定するものばかりが並びます。自民党は、憲法改正を規定した96条から変えるとし、来る参議院選挙の勝利を画策しています。
       この情勢の中で、改憲を阻止するとりくみは重要です。「憲法理念の実現をはかる」ことを掲げ、「憲法理念の実現をめざす大会」(護憲大会)をはじめとしたとりくみをすすめてきた平和フォーラムの運動の内実が問われています。憲法とは何か、改憲勢力の意図するものは何か、改憲によって社会のあり方や国民生活はどう変わるか、様々な視点からとりくみを重ね広く国民的議論をすすめます。第50回護憲大会は、オスプレイ配備や辺野古新基地建設にゆれる沖縄の地で開催します。
       
  2. アジア諸国への差別の払拭と人権確立
       尖閣諸島問題や竹島問題をめぐって、東アジア諸国との軋轢が続いています。日本は、地理的にも文化的にもアジアに存在する国であることは論を俟ちません。平和フォーラムは、アジア諸国との新しい友好と共存共栄の関係を結んでいくことが重要であると考え、侵略戦争と植民地支配への謝罪と戦後補償の問題の解決を求めてきました。そのことが、アジア諸国との新しい関係を築いていくための乗り越えなくてはならない壁なのだと考えます。
       東アジア諸国が問題とする「戦時性的被害者(従軍慰安婦)」に関しては、米下院も2007年7月、旧日本軍による「慰安婦」の強制連行について、日本政府に謝罪を求める決議を満場一致で採択しています。1999年にはカリフォルニア州議会が、今年1月29日にはニューヨーク州議会も同じ趣旨の決議を満場一致で採択しています。安倍首相が同盟国であるとするアメリカからも非難される状況は大きな問題です。史実を自国に都合よく歪曲する姿勢では、アジアとの友好的関係を築くことはできず、国際的にも孤立していく可能性をはらんでいます。
       尖閣諸島問題においても、自国領土とする中国政府の主張を無視し続けるのではなく、両国に主張の違いがあることを認めた上で、両国融和を基本として現実的解決に向けて話し合っていくことが重要だと考えます。
       平和フォーラムは、問題の存在を認め、将来に向けた対話を積み重ねることが重要であり、そのためにも戦後補償問題を解決するとりくみが重要と考えます。また、高校無償化制度の朝鮮学校への適用、外国人地方参政権付与問題など、在日韓国・朝鮮人に対する差別問題は、国際的に要請されている人権課題として解決をめざさなくてはなりません。
       「人権後進国」と言われても不思議のない日本の社会は、在日韓国・朝鮮人をはじめとするマイノリティーへの差別構造の温存にもその原因を求めることができます。アジア諸国に対する差別の払拭こそが、日本社会全体の人権課題の解決を進めることになると考えます。同様に、北朝鮮との間に横たわる多くの課題についても、差別の払拭と対話を重視した中で解決の方向が見えてくるものと考えます。そのためにも制裁措置一辺倒の姿勢を改める必要があります。平和フォーラムは、そのような視点をもって国内でのとりくみをすすめます。
       
  3. オスプレイ配備撤回と基地縮小・撤去
       アメリカ政府・米軍は、沖縄県民の強い反対を押し切って、その危険性ゆえに移転計画のある普天間飛行場にMV-22オスプレイ(海兵隊仕様)12機を配備し、さらに12機を追加配備する予定としています。また、嘉手納飛行場へCV-22オスプレイ(空軍仕様)を配備する計画も公表しています。日本政府は、オスプレイ配備は装備の変更でありアメリカの専権事項であるとし、日米安保条約の事前協議の対象とはならないとの姿勢を貫いてきました。このような日本政府の姿勢が、沖縄県民の大きな反発を招いていると言えます。オスプレイは正月3日から訓練飛行を始め、日米合同委員会での訓練飛行における合意事項も無視した飛行が繰り返されています。
       一方、日米地位協定下の不平等と抑圧を強いられてきた沖縄においては、またも女性への暴行事件が発生しています。米軍は夜間外出禁止令を発動しましたが、その後も住居侵入、暴行事件などの米兵犯罪が止むことはありません。このような事態にあっても、日本政府は日米地位協定の見直しは提起しないとしています。沖縄の基地負担軽減などの言葉は全く中身のないものとなっています。沖縄では、「いつまで占領下扱いなの」「沖縄差別ではないか」との声が上がっています。沖縄への差別的な基地負担を許すことなく、全国から「米軍基地はいらない」の声を上げていくことが重要です。
       平和フォーラムは、これまでの低空飛行訓練の実態を調査してきました。今後、オスプレイの全国での低空飛行訓練の実態把握に努めるとともに、沖縄県民と全国との連帯を強化し、米軍基地撤去に向けてとりくみを展開していきます。4月13日から14日に開催した「オスプレイ配備と米軍基地問題を考える全国集会」の成果を、「5・15沖縄平和行進」(5月16日~19日)、そして「憲法理念の実現をめざす第50回大会 in 沖縄」(11月3日~5日)の成功につなげていかなくてはなりません。
       
  4. 脱原発の実現へ、「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみ
       安倍首相は、民主党が国民的議論を経て策定した「革新的・エネルギー環境戦略」をゼロベースで見直すとしました。自民党の勝利は、全有権者のうち、比例代表で15%、選挙区でも25%の支持しか得られていません。衆議院選挙において自民党が圧勝したからと言って「脱原発」が否定されたわけではありません。国民が選択した「脱原発」の方向性を、政府・自民党は尊重しなくてはなりません。
       推進と規制の癒着という批判から、独立した組織として出発した原子力規制委員会は、新安全基準の骨子を策定しました。活断層や津波の想定、原発施設の改善など、これまでとは変わり相当きびしい安全水準を求められることになっています。福島原発事故の現状や原発関連企業のこれまでの姿勢を考えると、より高度な安全基準を求めるべきで、東電の虚偽の報告で不十分となっている事故調査を継続し、福島原発事故の十分な原因究明を行った後に、「新安全基準」を決定すべきです。7月中とされる決定時期は早計であると考えます。厳格な安全基準が、安易な再稼働を阻止し、「脱原発」の道筋をより明確なものにするに違いありません。また、安全性への投資や使用済み核燃料の処分問題などを考えると、原発の生む電力が決して安いものでないことが明らかになりつつあります。再処理についても、使用目的のないプルトニウムの生産はNPT体制を揺るがしかねず、被爆国日本が採るべき政策ではありません。
       平和フォーラム・原水禁は、そのような視点を持って脱原発運動の先頭に立つものです。「さようなら原発1000万人アクション実行委員会」の事務局を担い、広範な市民との連帯の下に「脱原発」の実現に向けたとりくみを強化していきます。
       
  5. 福島抜きの「脱原発」はありえない
       福島第一原発事故によって被災した人々を支援するための「子ども・被災者生活支援法」が、「被災者の生活を守り支えるための被災者生活支援など施策を推進し、もって被災者の不安の解消及び安定した生活の実現に寄与することを目的とする」ことを明記したものとして、昨年6月に成立しましたが、対象地域さえ定まらず、実際の施策は遅々として進みません。
       いいかげんな除染作業や収束作業、うやむやにされる被曝実態、見通しの立たない避難生活、「帰れないならはっきり帰れないと言ってほしい」と言う高校生の言葉は福島の置かれている実態を象徴しています。ほっておかれ、忘れられる福島にしてはなりません。被災から2年目の「さようなら原発1000万人アクション」は「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」をテーマに集会や講演会を開催しました。被災地を抜きにした「脱原発」のとりくみはあり得ません。
       平和フォーラム・原水禁は、「フクシマ・プロジェクト」を組織し、福島とつながるとりくみに展開をめざしてきました。しかし、未だとりくみはめざすものとなっていません。①県民の現在の健康と暮らしの保障、②放射線被害による回復できない損害と健康被害への補償、③脱原発による確実な未来に向けた保証、平和フォーラム・原水禁は、これら三つの課題を受け止め、福島に寄り添い将来に向けてとりくみを継続します。
       
  6. 「アジアで生きる」を基本に、生活の実態から
       「ASEAN+3」の中国を中心としたアジアの経済統合にくさびを刺す、アメリカ中心の「環太平洋経済連携協定」(TPP)は、「聖域なき関税撤廃」を要求するもので、農業などを中心とした第一次産業が壊滅的な影響を受けるばかりではなく、日本が長きにわたって培ってきた「社会的共通資本」「地域公共サービス」に大きな打撃を与えるものです。政府・自民党は「聖域なき関税撤廃」としないことについて担保できたとして、TPP交渉参加に踏み切りました。しかしアメリカおよび関係諸国の主張は日本政府の主張と隔たりがあり、より慎重な姿勢を貫くべきだと考えます。
       グローバル化が急速に進む世界にあって、平和を実現するにあたって、富の独占と収奪を排除し公正な再分配を行うことは重要な課題です。そのことと日本社会との共存を図ることが重要です。食料自給率を高めることが重要な課題とされていますが、民主党政権の行った「戸別所得補償制度」など継続的・実効的政策を展開しつつ、「人間の安全保障」という考え方を基本に、共存共栄の自由貿易のあり方を求めるとりくみをすすめなくてはなりません。
       
  7. 新自由主義を許さず、リベラルの拡大を
       政府・自民党は、生活保護費約670億円の削減を打ち出しながら、防衛費を2013年度当初予算で11年ぶりに350億円増額し、補正予算においても2100億円を積み上げました。緊急経済対策とした補正に、防衛費を載せる必要性は感じられません。
       国内総生産を2%押し上げ60万人の雇用を生み出すとした緊急経済対策を含め、民主党政権の下での予算総額を上回ります。自民党政権はばらまきではないとしながらも、公共事業費を15%増額するなど、旧来の経済対策から抜けきれず、「人からコンクリートへ」回帰する姿勢を示しています。
       一括交付金の廃止も「地方から中央へ」の回帰です。物価上昇率2%のインフレ策は、輸出産業には利益をもたらしますが賃上げに結びつく確約はなく、原油価格や小麦など輸入食料品などの高騰を招き、国民生活を直撃しています。間違えば構造不況を呼び込むことも懸念されます。
       そのすべてに同意するわけではありませんが、民主党政権下の「新経済戦略」で示された、グリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション、アジア経済戦略、観光・地域活性化戦略などの新しい雇用や社会づくりには目が向いていません。
       衆議院総選挙において、民主リベラル勢力は大きな後退を余儀なくされました。敗北の要因は民主党政権の混乱などにあるもので、2009年8月の衆議院選挙で示した政策が否定されたわけではなく、自民党の政策が選択されたわけでもありません。
       平和フォーラムは2009年9月以来、民主党・社民党・国民新党の三党連立政権の下で、政府への政策要求と運動は車の両輪であるとして、とりくみをすすめてきました。50年以上続いた自民党政権と強固な官僚政治の壁、アメリカとの同盟の壁、経済界の壁などを乗り越えることができず、またそのことによって平和フォーラムが求める政策も成就するに至りませんでした。しかし、その社会民主主義的政策、国民の生活に寄り添った政策は、今後の日本社会を見通したものであったことは重要です。このような政策を共有し、新しい社会の構築のための政策を実現するとりくみも再構築が求められています。平和フォーラムの会員議員を中心に「立憲フォーラム」が発足する運びとなっています。近代憲法の原則である「立憲主義」を基本として、新しい社会への方向性を示すことのできるよう、平和フォーラムも協力してそのとりくみの拡大に努めます。
       平和フォーラムは、3・11東日本大震災・福島原発震災以降「一人ひとりの命に寄り添う政治と社会」を求めてとりくみをすすめてきました。「命」という基本を共有できる組織・個人と手をつなぎ、「立憲フォーラム」を中心とした民主リベラル勢力の拡大をめざさなくてはなりません。
       

2.   平和・人権・民主主義の憲法理念の実現をめざすとりくみ

(1)   憲法の理念を実現するとりくみ

   憲法は、前文で「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」し、第9条で「戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認」を、第3章「基本的人権」や第10章「最高法規」で「基本的人権の本質、普遍性、永久不可侵性」を定めています。平和フォーラムの基本的立場は、これらに示された憲法理念の擁護と実現をめざすとともに、人権や民主主義の国際的な確立にむけた世界の到達点に立って、さらに発展させることです。そして、東北アジアの平和に向けたとりくみや、人々の生命の尊厳や生活を最重視する「人間の安全保障」の具体化をめざしてきました。
   2009年に誕生した民主党政権は、「連立政権樹立にあたっての政策合意」のなかで、「憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」との方向を打ち出しました。しかし、その後の3年余りの、民主党政権は、次々とマニフェスト・政権公約に反する動きをとりました。アメリカとの対等の関係、東アジア重視としながら、米軍基地の重圧のつづく沖縄では、普天間基地の国外・県外移設が裏切られたばかりか、危険な垂直離着陸機MV-22オスプレイ配備が強行されました。尖閣諸島など領土問題では中国をはじめ東アジアの人びととの関係を悪化させ偏狭なナショナリズムを煽る動きを強めました。武器輸出三原則の見直しや、集団的自衛権の行使への動きがすすめられ、政権への失望感を強めました。
   このもとで、平和フォーラムは、東アジアの人びととの友好のとりくみを軸に、沖縄と連携したオスプレイ配備阻止のとりくみをはじめとして、「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」や、震災・原発事故を受けて「生命の尊厳」「生存権」「人間の安全保障」に焦点をあてたとりくみを行いました。
   5月3日を中心とした5月の憲法月間には、日米安保条約から60年、沖縄復帰および日中国交回復から40年という節目の年でもあることを踏まえて、東京では「サンフランシスコ条約締結60年 今、日本は! ─日米・日中関係から考える」を主題にした「施行65周年憲法記念日集会」(5月3日・日本教育会館、650人)をはじめ、全国各地で集会・行動をとりくんだほか、「9の日」などの定例や節目の日のとりくみをおこないました。

(2)   改憲の動きをめぐって

   12月16日に行われた第46回衆議院議員総選挙は、「集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊を増強し、憲法を改正して国防軍とする」とした安倍晋三元首相を総裁とする自民党が294議席、「核武装」「自主憲法制定」を主張する石原慎太郎前東京都知事を代表とする日本維新の会が54議席をとり、合計すると衆議院議席数の3分の2を大きく超えるという重大な結果をもたらしました。自民党は、当面は「アベノミクス」ばらまき政策などで本年7月の参議院議員選挙を乗り切ろうとしています。参院選で安倍自民党や石原維新の会などが勢力を増大させれば、衆議院任期の4年以内に憲法改「正」問題が政治日程に登場することは間違いありません。
   直接の憲法問題では、第183通常国会での憲法審査会の動きが焦点です。すでに、民主党政権下でも、審査会は、昨年の第180通常国会までに、衆議院では、憲法の章ごとの審議を行い、第一章「天皇」、第二章「戦争放棄」、第三章「国民の権利及び義務」、第四章「国会」まで論議したとされています。参院では、「東日本大震災と憲法」をテーマに、人権保障、統治機構、国家緊急権などについて、参考人意見聴取などを行い、その後、今後のテーマとして二院制、新しい人権を取り上げるとした状態で中断しました。第183通常国会では、衆議院で大幅にタカ派的改憲論者が増加したなかで、憲法審査会がどう進むのか懸念されていましたが、3月14日の会合では第一章「天皇」および第二章「戦争放棄」の論点についての討議が行われ、自民党、維新の会、みんなの党が天皇元首化を主張したのをはじめ、9条についても自民党の「国防軍」設置などタカ派の主張が行われました。参議院では、3月13日から二院制のあり方についての討議を開始しています。
   超党派の枠組ですすめられている動きにも注意する必要があります。昨年4月には、民主、自民、公明、みんななど超党派議員でつくる「衆参対等統合一院制国会実現議員連盟」(一院制議連、会長・衛藤征士郎衆院副議長)が、憲法第42条の二院制の規定を改定し2017年から国会を定数500人以内の一院制とする内容の憲法改正原案を横路孝弘衆院議長(当時)に提出しました。この提出は、通常の議員立法で必要とされる各党の機関決定の手続きを踏んでいないため、横路議長は「仮受け」し、議院運営委員会で扱いを協議した結果、不受理となりました。もし受理されていれば、初の改憲原案となるところでした。
   また、「維新」を含め、超党派にうごきのある統治機構の問題をめぐる動きや、総選挙前から発言や首相就任後の国会答弁などからも安倍首相が改憲発議を3分の2から過半数に引き下げようとする憲法96条改正の動きを急速に進めようとすることが想定されます。すでに自民党、維新の会、みんなの党の有志議員の研究会が発足するなどの動きが始まっています。

(3)   「憲法理念の実現をめざす大会(護憲大会)」について

   平和フォーラムの改憲問題・憲法審査会の動きへの対応は、全国活動者会議(2月28日・静岡)での学習(愛敬浩二名古屋大学教授の講演)を行ったほか、2013年4月からは月1回ペースの「憲法問題連続学習集会」を開始するなどのとりくみをすすめてきました。秋の護憲大会でも議論し、問題点を指摘してきました。
   昨年の11月9日から11日には憲法理念の実現をめざす第49回大会を、「『生命の尊厳』をもとに、原発も基地もない平和な社会へ」をテーマに山口県山口市で開催しました。この大会は、衆議院解散目前の政治状況のなかで、①東日本大震災・福島原発事故からの復興と脱原発、②沖縄基地・オスプレイ問題に示される対米従属から脱却と東アジア地域の人びととの友好関係の確立、③日本の侵略戦争の歴史認識を欠落された「領土問題」などでの煽られ偏狭なナショナリズムと憲法理念を敵視する改憲勢力の増長を許さないことが焦点でした。
   大会には、全国47都道府県、中国地方と山口県内を中心にあわせて約2500人が参加する熱気あふれる大会となりました。広島をはじめとした中国ブロックの協力と初めての大会の周到な準備と参加のとりくみを精力的に行った山口県実行委員会の尽力によって、参加者の心に強く残る成果ある大会となりました。大会の運営に向けて多数の要員を配置し、献身的なとりくみでした。
   総選挙の結果、改憲の動きが具体化する危険性が高まったことを踏まえ、秋の護憲大会(50回大会)は、とりくみを全国集約する場として、きわめて重要性を増しています。本年は、沖縄の地で、11月3日から5日までの日程で行い、とりくみを早期から強力に準備します。

《2013年度運動方針》

  1. 自民党や維新の会などの改憲論や衆参憲法審査会の動向に対するとりくみを強め、院内外での学習会などを行います。中央・東京での開催とともに、ブロックでの開催を奨励し協力します。毎月1回ペースで定期的に、著名人が憲法に対する思いと考えを語るとともに、憲法学者が改憲論の問題点を指摘する連続学習会を開催します。また、機関誌「ニュースペーパー」での連載企画や冊子発行、論点整理のホームページなどを適宜、情報発信します。
  2. 「集団的自衛権の行使」「国防軍」「核武装」など「軍事力による平和」という逆行した流れを許さないとりくみを戦争被害の悲惨な実相などを明らかにしながらすすめます。人々の「生命」(平和・人権・環境)を重視する「人間の安全保障」の政策実現を広げていく「武力で平和はつくれない!9条キャンペーン」、「9の日行動」など各地で行います。「持続可能で平和な社会(脱原発社会)」を求める「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみと連携します。
  3. 新しい時代の安全保障のあり方や、アメリカや東アジア諸国との新たな友好関係についての国民的議論を巻きおこすとりくみを引き続きすすめます。
  4. 憲法前文・9条改悪の動きに対抗する憲法理念を実現し、立憲主義を確立するため、米軍再編、自衛隊増強などを許さないとりくみと連携して、「集団的自衛権の行使」に向けた憲法解釈変更を許さないとりくみを引き続きすすめます。また、日米軍事同盟・自衛隊縮小、「平和基本法」の確立、日米安保条約を平和友好条約に変えるとりくみをすすめます。
  5. 5月3日の「施行66周年憲法記念日集会」(東京・日本教育会館大ホール)をはじめ、憲法記念日を中心に5月を憲法月間として、多様なとりくみを全国各地ですすめます。自治体などに対して、憲法月間にその理念を活かした行事などの実施を求めます。
  6. 歴史的にも大きな節目となる本年度の「憲法理念の実現をめざす第50回大会」(護憲大会)は、憲法をめぐる動きが重大な局面にあることを踏まえて、下記日程で沖縄県において2500人規模で開催します。
          11月3日(日)午後      開会総会(那覇市民会館)
          11月4日(月)午前      分科会(那覇市他)
          11月5日(火)午前      閉会総会(那覇市)
       また、第51回大会を2014年11月1~3日に岐阜県で開催する準備もすすめます。

3.   平和実現と安全保障に関するとりくみ

(1)   安全保障政策をめぐる動き

  1. つくられた「領土問題」と緊張を利用した日米同盟
       民主党政権を突き崩すために、重大な役割を果たしたのが、尖閣諸島をめぐる「緊張」でした。この「緊張」によって、ナショナリズムを焚きつけ、東アジアの安全保障を緊張緩和から武力対立への流れに転換させられたと言って過言ではありません。
       2012年7月16日、石原慎太郎東京都前知事は、米ワシントンでの講演で、東京都による尖閣諸島の購入方針を発表、9月3日、野田前政権はこれに対し、「平穏かつ安定的な維持管理」をするためとして東京都の購入計画を阻んで国有化する方針を決めました。
       しかし、中国は、政府の尖閣諸島国有化方針に激しく反発、中国中央電視台などの多くのメディアが日本の尖閣国有化をめぐって対日批判を展開し、9月15日以降激しい反日デモが繰り返されました。2010年の海上保安庁巡視船と中国漁船との衝突事件以来の激しい対立と非難合戦が繰り広げられ、安全保障をめぐる厳しい局面に際会しました。
       両国のメディアも相手国を批難し、両国のナショナリズムを焚きつけ、緊張が緊張を生みました。
       これらの事態は、1993年のオスロ合意による「パレスチナ暫定自治」協定を突き崩すため、イスラエルのリクード党ネタニアフが2000年に「政治的緩衝」地域であるエルサレムの「神殿の丘」に突入し、意図的に緊張関係を生み出し、政権を奪取した手法と瓜二つです。
       石原前知事は、1972年の日中国交回復以来の「政治的緩衝」地域である尖閣諸島に、イスラエル右翼政党が行ったと同様の領土的緊張を持ち込み、安全保障上も積極的な意味を持っていた領土問題の「棚上げ」を突き崩す役割を演じたのです。
       「領土的緊張」はその後、オスプレイの配備を後押しし、日米軍事同盟強化を支え、集団的自衛権を称揚し、脱原発で高まる市民運動を抑えようとした点には疑いがありません。
       辺野古新基地建設を阻むことによって、時計の針を止めてきた日米基地再編も、尖閣諸島問題をめぐる政治的影響をフルに活用する事によって、再び急速度に動きはじめてきました。その先兵役がオスプレイであり、その強行配備です。
       アメリカは、日中の軍事的な緊張の高まりを回避したいとしつつも、オスプレイ配備、辺野古新基地建設など日米軍事同盟強化のために、この緊張を利用しています。
       また、中国も海上兵力などの強化を、この緊張への対応で進めています。平和フォーラムは、「領土的緊張」の即時抑制、緊張を利用した全当事国の軍事拡大反対を求め、問題の平和的解決を断固求めます。
       
  2. 東アジアの緊張と米軍戦略
       二期目をむかえたオバマ政権は、第七艦隊の運用領域=アジア太平洋地域に、安全保障戦略の主軸を置いています。なかでも対中国戦略を優先課題とし、米中外交、米日外交、ASEANをはじめとする他の環太平洋諸国との外交と、三つのベクトルでこの地域に対応しようとしています。
       しかし、アメリカは、経済的な中国の成長を容認しながらも、軍事的な成長に制限をかけようとしてきた「封じ込み」戦略を継続することを基礎に新たな安全保障を検討しています。2012年1月にアメリカが発表した新国防戦略のポイントは以下の通りです。
    1. 冷戦期のアメリカの軍事戦略は、同時に発生する一つの世界戦争と一つの地域紛争に勝利するというものであったが、冷戦後は同時に発生する二つの地域紛争に勝利するというもの。新国防戦略では、一つの紛争に勝利し一つの紛争を抑止するもの。
    2. 地上兵力の削減。イラクからの全面撤退とアフガニスタンからの段階的撤退、また欧州や中南米での兵力削減を通して、陸軍と海兵隊の兵力を削減するもの。
    3. 中国とイランへの対処。アメリカの前方展開戦略に対抗しようとしている国として、中国とイランを名指し。この二ヵ国に対処するためにアジア太平洋地域を重視し、この地域では兵力の削減を行わず在日・在韓米軍は維持し、オーストラリア・シンガポール・フィリピンなどの同盟国との軍事協力をいっそう強化するもの。/li>
       これらの観点で在日米軍の基地再編が志向されています。
       在日米軍の基地再編は、第一に辺野古新基地建設をはじめとする従来計画を基本にその実施をひきつづき日本に迫り、第二に日本の集団的自衛権の拡大を求め、いっそうの日米共同作戦機能を高めること。第三に、米海兵隊機能を日本の陸上自衛隊に肩代わりさせ、在日米軍の「空と海」の即応兵力強化する――にあると言えます。
       基地再編計画が沖縄の闘いによって「遅れ」、岩国に影響を及ぼし、厚木基地艦載機訓練機能の岩国移転が遅れることを通告し、米軍は、「計画の遅れが日本側にある」と暗に圧力をかけています。
       また、2012年2月に米軍が報じた海兵隊についての計画は、①グアムに移転する海兵隊員の数を、8000人から4700人に削減する。②残る3300人は、ハワイ・オーストラリア・フィリピンなどアジア太平洋地域のアメリカ同盟国への配置とする。また一部、日本本土への配置も検討する。③グアムに移転する海兵隊は第3海兵遠征軍の司令部部隊を中心としていたが、現時点では司令部部隊と第31海兵遠征隊(31MEU)を沖縄に残し、実戦部隊の多くを移転することを検討。④他方、第1海兵航空団の司令部を日本本土へ移転する。
       ――というものであり予断を許しません。
       
  3. 武器輸出三原則の緩和と自衛隊法の改悪
       民主党政権は、2011年に武器輸出三原則の抜本的緩和について発表し、多国間で行われる武器の共同開発に日本のメーカーが参加することなどが可能になりました。
       2012年12月に発足した安倍自民党政権は、アルジェリア人質事件を受け、「邦人保護のため海外での武器使用基準を緩和するなどの自衛隊法改正」と国家安全保障会議(日本版NSC)の設置をめざすことを発表しました。自衛隊法改悪の内容は、海外での災害、騒乱などの緊急事態における武器使用基準を緩和と、輸送手段の確保を柱としています。
       また、国家安全保障会議は、現行の国民保護法・武力攻撃災害対策措置法の範囲を超え、超法規体制の有事体制に道を開くことと軌を一にするもので、国家緊急権を志向する自民党の改憲案を先取りするものです。
       また、航空自衛隊の次期主力戦闘機となる最新鋭ステルス機F35に関し、政府は12月4日、日本企業が部品製造に参加した際、国際紛争の助長回避を目的とした武器輸出三原則を例外として認める方針を固めました。国際紛争の助長回避すべき対象国としてイスラエルが含まれていますが、F35導入と引き替えに、中東紛争問題で日本を米・イスラエル側に立たせることを意味する問題です。
       野田政権が踏み出した武器輸出原則の緩和は、自民党に引き継がれ、武器使用基準の緩和、在外邦人救出を名目とする海外派兵の拡大、軍事治安有事を一体的に対処する国家安全保障会議、武器開発において紛争地域に介入することをめざしています。
       さらに、注意すべきは対テロ出動を自衛隊法機能に持たせようとする自衛隊法の改悪の問題です。自民党は党内部会においてこれらの課題を検討しています。現行自衛隊法は、防衛出動、災害派遣出動、海外派遣出動、治安出動を柱としていますが、これにテロ対策出動を加えるというものです。
       これらの事態を看過することは出来ません。平和フォーラムは引き続き自衛隊の出動機能拡大と海外派兵に反対します。

       

(2)   オスプレイの強行配備とこれに反対するとりくみ

   米政府は、2012年6月29日、日本政府に対し、MV-22オスプレイの普天間基地配備に関する「接受国通報」を行いました。通告を受けるべき日本に「兵備の運用変更」を「通報」するというやり方でオスプレイ配備が一方的に通告されたのです。オスプレイ12機を積載した輸送船グリーンリッジは、7月22日釜山港を出港し23日早朝、岩国基地に接岸、オスプレイの陸揚げを行いました。岩国市長、山口県知事は一斉に反発、地元では山口県では、7月23日「オスプレイ陸揚げ・配備阻止!岩国現地大行動」(山口・岩国市)をはじめとして数多くの反対行動が行われました。
   7月のオスプレイ強行配備を起点に、平和フォーラムと各地方組織は、連続的なとりくみを展開してきました。
   7月11日「沖縄・普天間基地へのオスプレイ配備中止を求める集会」(東京・文京区民センター)、9月9日「オスプレイ配備反対沖縄県民大会」(宜野湾市・海浜公園)、9月9日「オスプレイ配備を中止に追い込もう国会包囲行動」(国会周辺)、9月19日「オスプレイ配備の危険性を考える集会」、11月4日「止めるぞ!オスプレイの沖縄配備 許すな!低空飛行訓練全国集会」(東京・芝公園)、11月5日「沖縄基地問題議員懇談会」(国会内)、12月22日「オスプレイ問題講演会」(那覇市)、12月23日「オスプレイ配備撤回!米兵による凶悪事件糾弾!怒りの御万人大行動」(宜野湾市)、2013年1月14日「オスプレイの沖縄配備と全国での低空飛行訓練に対抗する相談会」(連合会館)、1月27日「NO OSPREY 東京集会」(日比谷野外音楽堂)、4月13~14日「オスプレイ配備と米軍基地問題を考える全国集会」(津田ホール、日本青年館)。
   また、「オスプレイの普天間基地への配備中止を求める請願署名」、政府、米大使館へのハガキ行動、総理・外務・防衛大臣への要求打電行動、さらには、飛行訓練ルート自治体首長と議会への要請行動の提起です。
   平和フォーラムは、以下の評価と問題意識を基礎に、オスプレイ配備・低空飛行訓練に対するとりくみを行います。

【オスプレイの配備・全国的な飛行訓練の問題点と平和フォーラムの評価】

  1. これまで米軍機低空飛行訓練は、公然たる通知訓練として実施されず「暗黙の訓練」であったが、オスプレイの配備に関わる「環境レビュー」が、これを公然たる訓練に押し上げ、全国8ルートの飛行訓練の既成化をはかるもの。
  2. 「暗黙の訓練」としてあった米軍ジェット機の飛行訓練について、外務省は、基地間の移動であり、航空法に準じて実施されていると述べていたが、これから実施されるオスプレイを含む全国での飛行訓練について、これまでの見解をくつがえし、低空飛行訓練は「航空法の適用外」であり、「地位協定5条2項」が根拠であると主張しはじめた。
       しかし、「基地でもなく、訓練区域でもない場所で訓練できるのか」という問いについて、これらの根拠では反論に耐えられないと知るや、外務省は「米軍は安保条約によって認められており、訓練のない駐留は考えられない。訓練は地位協定ではなく安保条約に基づいている」と答弁。つまり地位協定上で低空飛行訓練の法的根拠が無いことを表明。また、同じく、航空特例法もこの「新たな」訓練を根拠づけることは不可能。
       したがって、全国の米軍機低空飛行訓練は、そもそも安保条約と地位協定を逸脱し、その質的変化をもたらすものであり、オスプレイの配備は、米軍への「基地提供」範囲を逸脱することを伴って実施されるもの。
       また、岸・ハーター交換文書による日米安保条約上の事前協議はさらに有名無実、矮小なものと化す。
  3. オスプレイが行う飛行訓練の実態が明らかでない。
       これまでの艦載機飛行訓練などが実施してきた低空旋回訓練に加え、「空中投下訓練、扉の開閉、C103機による空中給油」など、オスプレイ特有の訓練が予想される。
  4. 垂直モードで離着陸を行うオスプレイは、基本構造の上でも欠陥機であること。
       この危険な欠陥機を、世界一危険な普天間基地に配備したその姿勢の中に、日米両政府の沖縄に対する態度が現れている。
       オスプレイは、開発段階から事故が連続し30人以上が死亡している。安全性に対する疑問は、アメリカ国内でも強まっており、現に、2012年岩国搬入の直前、4月にモロッコで、6月にフロリダで墜落事故を起こしている。
       航空法11条は、「耐空証明を受けた航空機以外の用途禁止」を定めており、その耐空証明について、「航空法施行規則」は、「回転翼航空機は、全発動機が不作動である状態で、自動回転飛行により安全に進入し及び着陸することができるものでなければならない」(オートローテーション)とある。オスプレイはオートローテーション機能に欠陥を持ち、耐空証明を持たない軍用機である。
       また、低速飛行時に遭遇する緊急事態で、フライトコンピューター(自動制御)から手動制御に転換ができないと多くのパイロットが指摘している。
  5. 米ニューメキシコ州キャノン空軍基地では、オスプレイの低空飛行訓練による騒音や安全性に不安をもった住民の反対運動により、「住民不安に配慮する」という理由で飛行訓練計画を延期。同じくハワイ州の2空港ではオスプレイの離着陸時のダウンオッシュ(下降気流)が希少海洋生物や考古学的資源に悪影響をおよぼすとして、環境影響評価が中止。
       アメリカで適用されている市民意見、環境上の配慮が日本に全く適用されない。
       その最たる差別的な押しつけが、また沖縄にもたらされる。
  6. オスプレイは、垂直飛行モードと水平飛行モードを併用するため、ティルトローター機でありながら巨大な爆音をともなって飛行する。普天間基地周辺でのオスプレイ訓練飛行は、すでに本年1月3日から始まったが、騒音は最大97デシベルを記録。
       低空で巡航するオスプレイの爆音問題は、これまでにない被害をもたらす。米軍機の爆音は、「違法爆音」であるとする多くの判決を勝ち取ってきたが、オスプレイは飛行することによって違法の上の違法行為を繰り広げる。
  7. 日米合同委員会は、オスプレイ飛行基準を定めたが、「可能な限り」「運用即応体制上の必要性から不可欠と認められる場合を除いて」と無限な例外条件をつけたザル基準である。
       合意した内容(2012年9月19日防衛省・外務省発)――
    • 低空飛行訓練について、最低安全高度(地上500フィート)以上の高度で飛行し、原子力エネルギー施設、史跡、人口密集地域などの上空を回避すること。
    • 米軍施設区域周辺における飛行経路について、可能な限り学校や病院を含む人口密集地域上空を避けるよう設定し、可能な限り海上を飛行すること。
    • 垂直離着陸モードや転換モードでの飛行について、運用上必要となる場合を除き、垂直離着陸モードでの飛行を米軍の施設・区域内に限り、転換モードの時間を可能な限り短くすること。
    • 適用される騒音規制措置に関する合同委員会合意をMV-22の運用においても引き続き遵守すること。
    • 普天間飛行場における夜間訓練飛行は、在日米軍に与えられた任務を達成し、又は飛行要員の練度を維持するために必要な最小限に制限し、シミュレータの使用などにより、夜間訓練飛行による普天間飛行場周辺住民への影響を最小限とすること。
    • 沖縄への配備後、日本国内の沖縄以外の場所でMV-22の飛行訓練を行う可能性について、日米間で検討すること。
       ――これらの基準が、すでに守られていない実態が多数報告されている。
       また、オスプレイの飛行訓練に「事前通告」があるのか否か。この点も判然としない。
  8. オスプレイ配備と飛行訓練は、米軍基地の新たな増設・増強をもたらす。
       沖縄県東村高江のヘリパット建設をはじめ、米軍再編計画に関わらず、追加設備と基地増強を推進する。現在12機の海兵隊機MV-22に加え、米空軍長官は、空軍仕様のCV-22オスプレイ12機を嘉手納基地に配備する計画を表明。嘉手納基地も質的な変化をとげようとする。
       環境レビューは、他に、岩国基地とキャンプ富士のオスプレイ使用をにおわせているが、全国の米軍基地が、離着陸基地として使用される。防衛省は「地位協定上全国どの米軍施設も使用可能」と述べたが、各米軍基地はこれによって新たな設備増強と任務をおびる。
  9. オスプレイの普天間基地への強行配備は、「停滞する」米軍再編にふたたびモーションをかける政治的脅迫である。世界一危険な普天間基地にあえてオスプレイ配備することによって、辺野古新基地建設を進めるよう圧力をかけていることに等しい。普天間の基地固定化をとるか新基地をとるか恫喝していることに等しい。
  10. オスプレイは、CH46Eの後継機とされるが、輸送機ではなく、極めて機動性の高い汎用攻撃機。
       米海兵隊の攻撃能力は格段に高くなるが、これによって東シナ海で新たな軍拡競争を招来する。
       オスプレイは、CH46Eに比べ速度2倍、搭載能力3倍、行動半径4倍という性能を有す。
       日米両政府は、同機の沖縄配備によって、在日米軍の兵力(抑止力)が強化されると言うが、まさにこのことが、在沖縄米軍の固定化、恒常化をさらに強くするものに他ならない。
       軍備の強化は、必ず相手国の軍備の強化をもたらす。沖縄はさらに危険な「前線」に追いやられる。

(3)   辺野古新基地建設をめぐる動向と沖縄のとりくみ

   2012年3月27日、沖縄県は国に対して、辺野古新基地建設に関する環境影響評価(アセスメント)に対する県知事意見を提出しました。県知事意見では、辺野古での基地建設は「生活や自然環境の保全は不可能」で、埋め立ては「免許することができない」としました。
   こうした沖縄側の明確な拒否にもかかわらず、前野田首相は国会答弁で従来の政府方針を進めると表明し、安倍総理も、政府方針踏襲が沖縄の基地負担軽減の道であると述べました。今後は、埋め立て不許可を不服として、政府が沖縄県知事を裁判所に訴えることや、政府の一存で埋め立てができるようにする特別措置法の制定などが考えられます。
   「基地負担軽減」のために新たな基地をまた沖縄につくることに沖縄県民総意が反対しています。その象徴が辺野古基地建設反対のとりくみです。
   2013年1月28日に、沖縄県内の全市町村首長が、安倍総理に提出した建白書はこのように述べています。「軍普天間基地は市街地の真ん中に居座り続け、県民の生命・財産を脅かしている世界一危険な飛行場であり、日米両政府もそのことを認識しているはずである。このような危険な飛行場に、開発段階から事故を繰り返し、多数にのぼる死者をだしている危険なオスプレイを配備することは、沖縄県民に対する「差別」以外なにものでもない」。これら沖縄全体の反発にもかかわらず、3月22日、沖縄防衛局は沖縄県に対し、辺野古移設に必要な公有水面埋め立て申請を提出、執拗に辺野古新基地建設をすすめる安倍政権の姿勢を見せつけています。
   平和フォーラムは政府による基地建設を許さないために、沖縄と連帯してとりくみを進めます。

(4)   宣伝活動

学習・宣伝用の資材として、以下を作成しました。
  • 「日米安保を問う!!」特別号・第6号(印刷物を配布)
  • 「資料 沖縄と米軍基地」(印刷物とEメールで清刷りを送付)
  • 各種解説資料・宣伝チラシ(Eメールで清刷りを送付)
  • 基地問題の各種DVD(YouTubeへのUP・DVDの配布)
  • ホームページ「STOP!米軍・安保・自衛隊」を通して活動の報告情報提供

《2013年度運動方針》

  1. MV-22オスプレイの配備撤回、全国展開しようとしている飛行訓練の阻止にとりくみます。
       米軍機の飛行訓練についての全国調査を基礎に、全自治体での飛行訓練反対のとりくみを組織します。
        安保条約の解釈拡大、地位協定の逸脱である飛行訓練反対のために、自治体請願、意見決議採択などのとりくみを実施します。
       また、米空軍機CV-22オスプレイ12機の追加配備阻止、嘉手納基地展開阻止に取り組みます。
  2. 辺野古新基地建設に関し、公有水面埋め立て免許申請が行われ着工が開始しようとする動きにあります。これらの状況を警戒し、平和フォーラムは組織の総力を挙げ、新基地建設を阻止します。
       また、東村高江でのヘリパット建設阻止、普天間基地の即時閉鎖、返還を求めてとりくみます。これらのとりくみを強化するため沖縄5・15平和行進に参加します。
  3. アメリカと日本の政府は、厚木基地に駐留する空母艦載機部隊の岩国基地への移転を進めようとしています。さらに日本政府は、岩国基地移転後に空母艦載機部隊が行うFCLP(陸上空母着艦訓練)の施設を馬毛島に建設しようとしています。また現在は沖縄にいる第1海兵航空団の司令部を、岩国基地に移転しようとする動きも出てきました。平和フォーラムは、これらの地域の連携を強化し、岩国基地の強化反対、馬毛島FCLP施設建設阻止、厚木からの空母艦載機部隊の撤退、横須賀基地からの原子力空母の撤退を求めます。また、佐世保への新型強襲揚陸艦ボノム・リシャールの配備阻止にとりくみます。
  4. 上記を含む米軍再編の白紙撤回にとりくみます。
  5. 在沖縄海兵隊の155ミリりゅう弾砲の訓練移転や、戦闘機の訓練移転、また米軍艦船による民間港湾使用に反対します。実施に際しては、地域運動組織を中心に、中止や撤回を求めるとりくみを進めます。
  6. 武器輸出三原則の緩和や、PKO五原則の緩和・PKO法の改正、沖縄への自衛隊部隊の配備増強など、自民党政権下、急速に進められようとしている軍事拡大政策に反対します。
  7. 自衛隊の市中パレードや市街地での訓練など、自衛隊による市民生活への浸透に反対します。そのために各地の運動組織が行うとりくみに協力します。
  8. 米軍基地・自衛隊基地などの周辺住民によって進められている、爆音訴訟に協力します。
  9. 米軍犯罪の被害者によって進められている、被害者補償の制度化に協力します。日米地位協定の抜本改正を求めとりくみます。
  10. 自衛隊員の自殺や自衛隊内でのいじめ・セクシャルハラスメントなどの問題にとりくみます。これらに関連して、国と自衛隊を相手に行われている裁判を支援します。
  11. 全国基地問題ネットワークや、沖縄基地問題にとりくむ市民団体、またアジア太平洋地域の反基地運動団体との連携と協力を進めます。
  12. 平和フォーラムとしての「東アジア共同体構想」をまとめます。そのために学習会や集会を実施します。外交・安全保障政策の転換を求めます。また「東アジア共同体構想」が国会内外で多数派となるように、民主党・社民党・無所属の国会議員との連携を進めます。

4.   東アジアの非核・平和の確立と日朝国交正常化に向けたとりくみ

   冷戦構造のなお存続している東アジアとの関係、なかでも急成長を遂げている中国との友好な関係構築は喫緊の課題です。アメリカ一辺倒の安全保障から、東アジアひいては環太平洋全体での安全保障体制の構築に、平和憲法を持つ日本がリーダーシップを発揮する必要があります。そうした立場から平和フォーラムは、侵略戦争や植民地支配への反省に立った国家的歴史観の構築や戦後補償、靖国問題の解決、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化などの課題をとりんできました。
   しかし、この間、「領土問題」という形で、中国・台湾との尖閣諸島(中国名:釣魚島)、韓国との竹島(韓国名:ドクト)問題が浮上し、それぞれの国のナショナリズムが煽られるなか、対立を強めています。とりわけ、昨年12月の総選挙で誕生した安倍第2次政権はきわめて危険です。日中間の領土問題について、安倍自民党は「議論の余地なし」との姿勢に加えて、自衛隊の配備強化や改憲などタカ派方針を示し、中国をはじめ東アジア諸国の人びとに強い警戒感を与えました。日中国交正常化・平和条約の折には、中国側は日本の平和憲法の評価し、領土問題は今後の課題として残した課題であり、対話を閉ざす姿勢があってはなりません。安倍政権は「価値観外交」などと称して諸外国との対中国連携を画策していますが、日本の問題の根底には、日本の戦争責任と歴史認識が問われていることは明らかです。
   平和フォーラムは、日中国交回復から40年の節目のときに「東アジアの平和・友好にむけた課題」が重要となっていることを踏まえて、11月に山口で開催した護憲大会で中国・韓国ゲストを招いてのシンポジウムを行ったほか、5月3日憲法記念日集会や2月11日の「建国記念の日」を考える集会(日本教育会館、250人)でもテーマとして開催しました。また、8月15日前後には「戦争犠牲者追悼、平和を誓う集会」(8月15日・千鳥ヶ淵国立戦没者墓苑、200人)、「平和の灯をヤスクニの闇へ キャンドル行動」(8月11日・豊島公会堂)に協力しました。
   日本軍慰安婦問題は世界各国から日本政府に対して謝罪を求める声が高まっていましたが、韓国では2011年8月30日の憲法裁判所判決、2012年最高裁判所判決など、司法の場で、韓国政府が日本軍「慰安婦」問題をはじめ、戦後補償実現のために努力してこなかった事実が問われるとともに、強制連行被害への賠償について個人請求権は消滅していないとの判決を行いました。そのため、親日保守といわれたイ・ミョンバク(李明博)前大統領であれ、パク・クネ(朴槿恵)大統領であれ、政権として対日要求を続けることになります。被害者たちは高齢で、償うための時間は多く残されておらず、早急に解決しなければなりません。日本では、菅政権のもとで韓国併合100年にあたっての首相談話などを実現させましたが、その後、野田政権では1990年代の河野官房長官談話などで示された認識よりも後退する動きを見せましたが、現在、河野談話や村山談話の否定をねらう安倍晋三を首相とする政権でいっそう後退することは間違いありません。
   平和フォーラムは、歴史認識と戦後処理の課題解決に向けて、「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」の制定をはじめとしたとりくみを強めなければなりません。「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動2010」の要請に応じて、5月には「平和の碑はがきキャンペーン」への協力、8月15日行動などに参加しました。また、日本の戦争責任資料センターが行った「日本軍『慰安婦』問題に関する日韓交渉/仲裁を前進させる国際シンポジウム」(9月22日・星陵会館)に賛同・協力しました。このほか、「朝鮮人強制労働被害者補償立法実現を求める署名」(個人署名63,959筆、団体署名2,274団体集約。5月に内閣府に提出)に協力しました。
   東北アジアの平和構築にあたって、世界で唯一、日本が国交を持たない北朝鮮との国交正常化と核開発問題の解決は最重要課題です。しかし、2008年8月以降中断していた日朝政府間協議は、民主党に政権が代わっても、制裁を強めるばかりで、まともに行われないままでした。
   しかし、2011年12月以後、キム・ジョンイル(金正日)国防委員長の死去、翌年のキム・ジョンウン(金正恩)への指導者交代と4月15日のキム・イルソン(金日成)主席生誕100年などのなかで、平和フォーラム・日朝国交正常化連絡会(東北アジアに非核・平和の確立を!日朝国交正常化を求める連絡会)の役員を含む多数のメンバーの訪朝が4月から5月にかけて実現し、訪朝関係者を中心に9月のピョンヤン宣言10周年の節目に改めて、国交正常化に向けたとりくみを広げようとの機運が広がりました。
   日朝国交正常化連絡会は、6月26日に総会(日本教育会館、150人)を開催し、日朝ピョンヤン宣言10周年のとりくみを全国で行うことを確認し、アピール「日朝平壌宣言10周年をむかえて交渉再開を訴える」を発信しました。
   9月13日にはアントニオ猪木さんやデヴィ・スカルノさんなども呼びかけ人となった「日朝平壌宣言10周年 日朝国交正常化をめざす全国集会」(星陵会館、400人)を行い、10月19日には集会で採択されたアピールをもとに日朝交渉再開・対話を求める政府要請を官邸で行いました。また、9月には北海道・長野・愛知・大阪・福岡などで集会・行動をとりくんだほか、全国各地で新たに日朝友好のとりくみがひろげられました。
   このなかで、日朝政府間協議は、北朝鮮側が、先の大戦中になくなった日本人の遺骨収集や墓参をめざすメンバーの訪朝を受け入れたことをきっかけとして、両国の赤十字の話し合い、さらに、政府間交渉に発展して、ようやく8月末に課長級協議が4年ぶりに再開され、12月はじめに局長級の本格協議の開催が予定されました。この時期こそ、日朝関係を大きく前進させ国交正常化へと進む大きなチャンスでした。しかし、11月に人工衛星発射計画が発表されると日本側が協議を延期しました。
   その後、北朝鮮の昨年12月の人工衛星発射、今年2月12日の3回目の核実験強行とこれに対する国連安保理による制裁強化の応酬に加えて、北朝鮮が「休戦協定の白紙化」まで述べはじめる重大な事態を迎えています。核開発を対米外交の切り札にしようとする北朝鮮と平和的・協調的対応を取り切れずにきた国際社会双方に責任があります。平和フォーラム・原水禁は、「北朝鮮に対する安保理決議に関する見解」(1月24日)、「朝鮮民主主義人民共和国の3回目の核実験実施に対する声明」(2月12日)などを明らかにしてきました。
   北朝鮮は、NPTへ復帰するために核開発を放棄すべきです。国際社会も6カ国協議メンバーを中心にあらゆるチャンネルで誠意をもって北朝鮮との対話と協議を開始し、平和的・友好的関係の構築に努力すべきです。しかし、中国が安保理制裁を容認したなかで、北朝鮮がもっとも対話を求めるアメリカのオバマ政権は動きを遅々とさせています。韓国のパク大統領は、不十分ながらも対話姿勢を示していますが、北朝鮮は応じていません。民族和解協力汎国民協議会(民和協)や、進歩連帯など韓国民主団体による対話と交流も欠かせません。とくに7月27日の朝鮮戦争休戦協定60周年にかかわるとりくみは重要です。
   しかし、日本では「圧力」一辺倒の安倍政権が誕生し、独自制裁の動きを強めています。これまで日本政府が行ってきた制裁措置は、何ら成果を上げていないことが明白です。制裁に関しては、朝鮮中央会館(朝鮮総聯本部)競売問題や在日朝鮮人の人権侵害の動きには注意する必要があります。
   昨年進んだ日朝協議は、北朝鮮側が、先の大戦中に亡くなった日本人の遺骨収集や墓参をめざすメンバーの訪朝を受け入れたことをきっかけとして、両国の赤十字の話し合いから政府間交渉に発展したものです。この時期こそ、日朝関係を大きく前進させ国交正常化へと進む大きなチャンスでした。拉致問題も交渉の中でこそ解決に導くことができるもので、拉致家族からも歓迎する動きが広がっていましたが、またも中座し失望を与えています。
   政府は、日本による植民地支配の清算について誠実な謝罪と反省を表明し、在朝被爆者をはじめとする戦争被害者への措置を具体化するとともに、日本人遺骨収集など諸懸案を具体的に前進させて、日朝間の信頼関係を構築していくべきです。在日朝鮮人の生活と権利を脅かすことにしかならない制裁措置は無意味であり、解除する必要があります。日朝国交正常化連絡会と平和フォーラムは、6月26日の総会にあわせてその問題点を指摘するパンフレット「制裁白書」を発行しました。
   「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大いに寄与する」と確認した2002年の日朝平壌宣言の原点に立ち戻ることが必要です。平和フォーラムと日朝国交正常化連絡会は、在朝被爆者問題(11月26日・連合会館・連絡会学習会)や在日朝鮮人の人権問題、日本人の遺骨収集や墓参問題などと連関しながら、連絡会学習会(3月8日・連合会館)をはじめ引き続き地道なとりくみを継続していきます。

《2013年度運動方針》

  1. 中国・韓国・朝鮮など東アジア近隣諸国との平和と友好に向けて、対話と協調のとりくみをつづけます。
  2. 東アジア諸国との平和と友好の基本となる、日本人の侵略と戦争の歴史認識に関わるとりくみを行います。これまでの河野談話、村山首相談話に加えて、韓国併合100年に際しての「菅首相談話」などを活かし、安倍政権による否定や歪曲を・変更を許さないとりくみを行います。
  3. 2002年日朝平壌宣言の趣旨に沿い、日朝国交正常化に向けた交渉再開・対話を求める日朝国交正常化連絡会を中軸としたとりくみをすすめます。そのため、連絡会への全国各地の運動組織の参加を求め、連携を強めるとともに、国交正常化に向けた世論を喚起するため、継続的に全国各地での講演会・学習会・全国行動をおこないます。東京では月1回程度の連絡会の定期的学習会や集会・行動をひきつづき行うほか、必要に応じて随時集会をおこないます。
  4. 日朝国交正常化に向けて政府・外務省、国会議員、各政党に対する働きかけをおこないます。
  5. 日朝国交促進国民協会、原水禁など在朝被爆者支援連絡会をはじめ、在日の人権確立や、北朝鮮の人道支援のとりくみ、韓国の平和・人道支援運動、朝鮮学校支援の市民運動との連携・交流・協力をすすめます。日本人遺骨問題での解決に向けたとりくみに協力します。在日朝鮮人の生活と権利を脅かす制裁解除のとりくみ、高校無償化からの朝鮮学校排除などの差別を許さないとりくみを行います。

5.   民主教育をすすめるとりくみ

   日の丸・君が代強制問題や「新しい歴史教科書をつくる会」系の教科書問題を扱った実教出版の「高校日本史A」および「高校日本史B」の教科書について、東京都教委は、事前に都立高校校長に採択しないよう秘密裏に指示しました。また、横浜市教委においては、事務方が各学校の意向を無視して、別の教科書を教育委員の審議会に提案するという、法制度を無視した方法で採択を阻止しました。そもそも、高校教科書の採択は各学校権限で行われるものです。このような事態の背景には、教職員に日の丸・君が代の起立と斉唱を強制する都教委の方針や、つくる会系教科書を全中学校で採択した横浜市の教育行政のあり方があります。自らの行いを批判的に記載する教科書を、法を枉げてまで排除しようとする行政の姿勢は教育現場に相応しいものではありません。平和フォーラムは、神奈川県教委へ「横浜市立高校の教科書採択に関わる調査・指導・是正に関する要望」を提出し、市教委の不法かつ一方的な採択を指導・是正するよう求めました。市民団体も、横浜市教委採択の差し戻しを求め、神奈川県教委への陳情を行っています。
   2012年9月17日、大阪教科書の会や全国の市民団体、平和フォーラムと韓国のNGO「アジアの平和と歴史連帯」などが集まり、教科書問題や歴史認識の問題へのとりくみを協議しました。教科書問題や歴史認識の課題は、これまでも日中韓の間で議論を重ねてきました。相互に現状を理解し合い、将来に向けたとりくみを行うことが重要であり、認識の共有化を図りつつ連帯してのとりくみを継続していきます。
   2006年9月の第一次安倍晋三政権は「戦後レジームからの脱却」「美しい国日本」を標榜し、戦後の民主主義教育を支えてきた教育基本法を、愛国心を強調し「個」重視から「公」を重視する国家主義的な方向へ改悪しました。2012年12月の衆議院総選挙においては、安倍晋三自民党総裁は、「アクション2教育再生-教育を、取り戻す」との選挙公約を掲げ、世界トップレベルの学力、規範意識、歴史や文化を尊重する態度を育むとする「教育再生」を実行するとしました。大学生への体験活動の強要、道徳教育の強化、伝統文化に誇りを持てる教科検定基準の見直しと「近隣諸国条項」の廃止、教育委員会制度の改「正」などを提起しています。このような諸政策は、アジア諸国との軋轢を生むとともに、子どもたちの人間形成や歴史認識をゆがめ、グローバル社会での活躍の大きな障害になるものと考えます。「個人」よりも「公」に重きを置く国家主義的な教育改革を「子どもの権利条約」など、国連を中心とした国際的な教育・人権水準に沿った方向に戻していく地道なとりくみが要請されています。
   第二次安倍政権は、首相官邸に「教育再生実行会議」を設置しました。メンバーの構成や内容は、これまでの歴史認識を自虐的とする「新しい歴史教科書をつくる会」の主張に沿ったものです。安倍首相の姿勢は、「従軍慰安婦は強制ではない」とする意見広告に賛同したり、「近隣諸国条項」を廃止するとしたり、国際的な歴史認識を覆そうとするもので、アジア諸国はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパ諸国からも反発されることは必至と言えます。
   また、教育課題を、「責任観と道徳の欠如による教育荒廃」に単純化し、教職員組合がその原因であるかのように批判する行為はあまりにも一方的な論理であると考えます。その結果として、民主教育を否定し憲法を改「正」しようとするものならば、極めて悪質な宣伝行為であると考えます。それぞれが主張する政策を議論しあうことなく一方をおとしめる政治的策動を許すことは出来ません。
   グローバル化が進行し、もはや一国のみで存在することの出来ない世界にあって、とくにアジア諸国とのつながりは日本の存続にとって決しておろそかに出来ないものです。自民党政権・安倍首相の発言や政策は、今後の日米関係、東アジア諸国との関係をつくっていく上で、極めて問題のあるものです。また、「個人」を否定しようとする国家主義的教育のあり方は、戦前の教育や軍隊内でそうであったように、教育問題となっている「体罰」「いじめ」「差別・選別」「人権の否定」につながっていくものです。教育施策や方針の中に、憲法の平和主義と基本的人権の尊重といった理念や「子どもの権利条約」を生かすとりくみが重要です。
   採択、「近隣諸国条項」の否定、検定制度や教育委員会制度の改悪など、多くの教育課題に対して、アジアでの市民連帯の下に、全力でとりくみます。

《2013年度運動方針》

  1. 「教育再生実行会議」の議論を注視しつつ、同会議の議論に対峙する教育議論の場づくりに平和フォーラムとして市民との連帯の中でとりくみます。
  2. アジア諸国の市民と連帯して、共通の歴史観からの新しい友好関係の構築にとりくみます。
  3. 日教組と連携し、教科書検定制度のさらなる弾力化・透明化へ向けた制度改革にとりくみます。政府・文科省などへの要請にとりくみます。
  4. 採択地区の小規模化、地域や学校現場の声を反映した学校単位での教科書採択を求めてとりくみます。
  5. 全国の採択地域と連帯して、育鵬社・自由社など歴史事実を歪曲する教科書採択に反対してとりくみます。
  6. 各採択地域の状況を調査しつつ、地域の運動との連携をめざします。
  7. 育鵬社版教科書などを使用しなくてはならない教職員に対する教材提供を追求します。
  8. 高校教科書採択問題にたいして、学校採択尊重の視点からとりくみます。

6.   多文化・多民族共生社会に向けた人権確立のとりくみ

   2011年3月11日に発生した東日本大震災は、生命の尊厳、人権保障の重要性を私たちに再認識させるものとなりました。とくに被災した高齢者、障害者、女性、外国籍住民など弱い立場に置かれた人々を支えるとりくみを多くの市民が担ったことは、共生社会を展望していく上で多くの教訓を示しています。一方で、「共謀罪」の焼き直し部分を数多く含むものとして危険性を指摘されている「コンピュータ監視法」案が震災直後に閣議決定されるなどの動きも起きています。震災や疫病対策などの「非常事態」を名目としながら、人権を規制する動きが強められていくことに十分注意しなければなりません。12月16日の衆議院選挙での自民党の過半を制する勝利によって、安倍政権が成立しました。自民党が今年4月に発表した憲法改正草案は人権の制約原理を「公共の福祉」から「公益及び公の秩序」に変更するなど、基本的人権の概念を全否定するものです。このような次期政権下での反人権的な諸政策を許さない、私たちのとりくみの内実が問われていくことになると予想されます。
   44年の長きにわたり冤罪を訴えてきた布川事件の再審で無罪判決が確定するなかで、取調べの可視化については、民主党政権下では大きく進展をみせ、一昨年8月に法務省の勉強会から提出された最終報告は全面可視化を提言するものでした。しかし、1月18日、法務大臣の諮問機関である法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」の示した試案では、取り調べの可視化の義務付けを殺人など裁判員裁判事件に限定するものとなっています。人権保障のためには、冤罪の温床となってきた警察・検察の取調べの過程公開と証拠の全面開示を実現しなくてはなりません。また、狭山事件発生から50年を迎える今年こそ、再審実現をかちとらなくてはなりません。
   人権確立を求める当事者や人権団体、日弁連などによってとりくまれてきた、人権確立を求める当事者や人権団体、日弁連などによってとりくまれてきた、人権救済機関設置要求の高まりのなかで、9月、法務省の外局として「人権委員会」を設置する法案を閣議決定しました。しかし11月16日の衆議院解散によって審議に入らないまま廃案となりました。平和フォーラムも参加・協力する「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動」(人権共同行動)は法務省案の問題点を指摘しながら、被差別当事者によりそった内容を実現していくためにとりくみをすすめています。
   在日外国人の人権問題の解決が喫緊の課題となっています。とくに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との様々な外交的問題を口実とした在日朝鮮人に対する抑圧の高まりは看過できません。また、国内における排外主義的な雰囲気が醸成されるなかで、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」などによる集会妨害、インターネットを利用した差別扇動などの動きに対する注意が必要です。
   朝鮮学校無償化問題については、朝鮮学校生徒とその家族、教職員から「朝鮮高級学校生徒たちへの『高校無償化』即時適用を求める署名」が多くの市民によってとりくまれるなど広がりを見せていますが、安倍政権の「国民の理解が得られない」ことを理由とした朝鮮学校への無償化の適用見送りの意向を受け、文科省は朝鮮学校への適用根拠となる省令の条文の削除を行う改「正」をすすめようとしています。平和フォーラムとしても、改「正」にあたってのパブリックコメント募集に対するとりくみをすすめました(1月26日まで)。また、朝鮮学校への攻撃の動きは助成打ち切りなどのかたちで、全国の地方自治体へと波及しています。「朝鮮学園を支援する会全国交流会」(5月20日・日本教育会館、11月17日・神奈川朝鮮中高級学校)、著名人をはじめ韓国の市民も多数協力して行われた「モンダンヨンピル・コンサート」(6月22日・なかのZERO)には全国の多くの市民の参加がありましたが、こうした市民のネットワークをつうじて、全国各地での朝鮮学校を支える活動を取り結び、情報共有を進めていくことが求められています。
   外国人参政権については、継続して保守勢力によるネガティブキャンペーンが繰り広げられています。とくに外国籍住民が投票可能な地方自治体の住民投票条例をその攻撃の矛先が向けられています。
   2009年に改「正」された入管法が2012年7月に施行されましたが、管理と監視の強化による外国籍住民の人権状況の動向にはとくに注意しなくてはなりません。「改定入管法に反対し、ともに生きる宣言集会」(7月7日・東京・韓国YMCA)、「入管法施行問題シンポジウム」(12月15日・韓国YMCA)の開催に参加・協力してきましたが、今後も入管法の問題性を批判的に検証し、その見直しを求めていかなくてはなりません。また、6月に神奈川県内のカトリック教会に無断侵入した警察官がフィリピン人信徒を不当に逮捕した事件では、外国人の人権支援にとりくんできた諸団体とともに抗議署名にとりくみました。外国人労働者の権利確立を求める「マーチ・イン・マーチ」(3月25日・上野水上音楽堂)は、震災下でみられた国籍を超えた被災住民の相互扶助と、被災地と全国各地を結ぶ支援・連帯を意識したものとして開催されましたが、多文化・多民族共生社会を目指すこうした実践をいっそうすすめることが重要です。
   これら日本における、在日韓国・朝鮮人をはじめとしたアジアに対する差別の根幹には、過去の植民地支配の歴史についての未清算と無知が存在しています。日本を開かれた社会へとつくりかえていくためには、この問題を主体的にとりくまなくてはなりません。在日朝鮮人の人権状況について、歴史性を踏まえた理解と問題解決をめざす「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみをすすめます。
   第3次男女共同参画基本計画は、第2次計画で安倍政権によって後退した部分を修正し、国連の女性差別撤廃委員会の勧告をほぼ受け入れた内容で、2010年12月17日に決定しました。なかでも「選択的夫婦別姓の実現」や、「男女同一価値労働、同一賃金の法制化」、政策決定の場への女性の参画手段として「クオータ制の導入」などが明記され、その実効性をあげることが、運動課題になっています。すでに今年に入って、民法の夫婦同姓規定は、個人の尊厳を定めた憲法13条や、男女平等規定の24条に違反し、これら差別法規の改廃義務を定めた女性差別撤廃条約に反しているとして、5人の男女が国を相手どり、「国賠訴訟」に踏み切りました。I女性会議は原告を支え、全国的な「別姓訴訟」の支援にとりくんでいます。平和フォーラムとしても、女性の人権を国際的な水準に引き上げる運動に協力することが求められています。
   国際人権諸条約の未批准・留保の多さに端的に現れているように、日本はこれまで国際的な人権水準から大きく遅れをとってきました。過去をみても人権確立を求める動きへの敵対が目立った自公政権への回帰によって、人権状況のバックラッシュ(ゆり戻し)がすすまないようにしなければなりません。
   国連・人種差別撤廃委員会日本審査総括所見(2010年3月)において、人権救済機関や差別禁止制度の不備や、部落民、アイヌ、沖縄、在日韓国・朝鮮人と中国人、外国人居住者、難民など、29項目にもわたる懸念と勧告が指摘されています。この間、「世界人権宣言64周年記念東京集会」(12月5日・日本教育会館)などのとりくみに協力してきましたが、世界に開かれた多文化・多民族共生社会の実現のために、国際水準に見合う人権確立に向けたとりくみを今一度強化し、運動をすすめていきます。

《2013年度運動方針》

  1. 実効性ある人権救済法の制定と国際人権諸条約・選択議定書の批准に向けたとりくみ
    1. 国際人権諸条約の批准促進を求めます。とりわけ、個人通報制度にかかわる条約の選択議定書の早期実現を求めます。実効的な人権救済機関設置の実現に向けて、当事者を中心としたとりくみに参加・協力します。
    2. 国連の「国内人権機関の地位に関する原則」(パリ原則)にそった独立性と実効性ある人権救済機関を制度化する法律の制定、「差別禁止法」の制定に向けてとりくみます。「国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動(人権共同行動)」や日弁連と協力して政府に対して実現を求めてとりくみます。
    3. 全国の自治体でより充実した「人権教育・啓発推進に関する基本計画」を策定・実行を求めるとともに、「人権のまちづくり」や「人権の核心は生存権」との認識のもとに生活に密着した「社会的セーフティネット」などのとりくみを広げていきます。また、地域・職場でさまざまな差別問題など人権学習・教宣活動をおこないます。

       
  2. 男女共同参画社会の実現に向けたとりくみ
    1. 「男女共同参画第3次基本計画」に明記された「選択的夫婦別姓の実現」「男女同一価値労働、同一賃金の法制化」「クオータ制の導入」などを実効化するため、I女性会議などがとりくむ「別姓訴訟」支援をはじめ、女性の人権を国際的な水準に引き上げる運動に協力します。
    2. 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めるI女性会議など「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク」(JNNC)のとりくみに協力します。
    3. 女性の重要性・ジェンダーの視点を強調した人権確立の国際社会の流れを活かしたとりくみをすすめます。
    4. 平和フォーラム自身の組織構成、諸会議をはじめ、かかわる運動全般で女性が参加できる条件・環境づくりをおこないます。

       
  3. 地方参政権など在日定住外国人の権利確立のとりくみ
    1. 韓国の「在韓外国人処遇基本法」(2007年)などに学び、在日外国人の権利確立の制度実現に向けたとりくみをすすめます。
    2. 差別なき定住外国人参政権法案の制定に向けて、参政権ネット、民団と協力して、全国各地でとりくみをすすめます。
    3. 子どもの権利に立った外国人学校の整備など多民族・多文化共生社会の実現に向けたとりくみをおこないます。「朝鮮学園を支援するネットワーク」をはじめ、全国各地でのさまざまな動きに注視・連携しつつ、朝鮮学校支援のとりくみをすすめます。高校無償化の朝鮮学校への適用をめざしてとりくみます。
    4. 2009年改定の入管法施行を検証し、これを見直させるため、外国人人権法連絡会や日弁連のとりくみに参加・協力します。
    5. 無権利状態におかれた外国人労働者などの救済に向けて外国人研修生権利ネットワークなどのとりくみや、生活と権利を守るための外国人労働者総行動「マーチ・イン・マーチ」のとりくみに協力します。

       
  4. 司法制度・地方主権などに関するとりくみ
    1. 裁判員制度は多くの問題点があるので、抜本的に見直させるとりくみをおこないます。
    2. 最高裁判所裁判官国民審査にかかわって、日常的な判決チェックをおこなうとともに、権利の行使として「×」を増大させるとりくみをすすめます。また、期日前投票などの改善を中央選管に求めます。
    3. えん罪をなくすとりくみに参加・協力するとともに、日弁連や「取調べの全面可視化を求める市民団体連絡会」などのとりくみに協力して「取調べ可視化法」の実現をめざします。50年の節目を迎える狭山差別裁判の再審実現に向けたとりくみに協力します。
    4. 制定前から重大な人権侵害をもたらす恐れが指摘されていた医療観察法の廃止を求めるとりくみをすすめます。
    5. 共謀罪の新設を許さず、盗聴法の廃止に向けたとりくみをおこないます。「コンピュータ監視法」などの動きに注意し抜本的修正を求めます。
    6. 警察公安による微罪逮捕や自衛隊による取調べ事件や情報収集増大の動きを警戒し、不当弾圧、人権侵害を許さないとりくみをおこないます。
    7. 地方分権を促進し、地方自治体の自主財源の確保とともに、条例制定権の拡大、拘束力のある住民投票の導入などのとりくみをおこないます。
    8. 反住基ネット連絡会のとりくみに協力します。
    9. 言論や表現の自由を暴力やテロで封じる動きを許さないとりくみを随時、おこないます。

       
  5. 「過去の清算」と戦後補償の実現と「在日朝鮮人歴史・人権月間」のとりくみ
    1. アジア・太平洋の人びとの和解と共生をめざして、日本と日本人が戦争に対する反省・謝罪、補償に向けた姿勢を示し、二度と戦争による犠牲者を出さない非戦の誓いを新たにするとりくみをすすめます。不十分なものとはいえ、2010年8月10日の「菅首相談話」を活かし、別項の日朝国交正常化を含めた一連のとりくみをすすめます。
    2. ひきつづき首相・閣僚などの靖国参拝や靖国神社国家護持に反対するとともに、政府に国立の非宗教的戦争被害者(関係諸国すべてを含む)追悼施設の建設を要求し、靖国問題の決着を求めていきます。このもとに8月15日に千鳥ヶ淵戦没者墓苑をはじめ各地で戦争犠牲者追悼・平和を誓う集会をおこないます。衆参両院議長、首相・閣僚の千鳥ヶ淵墓苑での追悼・献花との連携をはかります。
    3. 「過去の歴史を直視するため、内閣に日本の侵略行為や植民地支配の歴史的事実を調査する機関を設置し、政府機関が保有する記録を全面開示する」「戦後処理に関する全情報を開示し、戦後処理の在り方を再検討し、残された戦後諸課題に立ち向かう」ことを政府に求めるとりくみをすすめ、戦後補償をとりくむ市民団体や、歴史の事実を明らかにする立法(国立国会図書館法改正、恒久平和調査局設置)を求める市民グループとの共同のとりくみをおこないます。
    4. 「菅首相談話」にも明記された遺骨問題や文化財返還問題で、「韓国・朝鮮の遺族とともに全国連絡会」や「韓国・朝鮮文化財を考える連絡会議」と連携したとりくみをすすめます。「強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク」などがすすめる「朝鮮人強制労働被害者補償立法の実現を求める要請署名」に協力します。
    5. 「在日朝鮮人歴史・人権月間」など、在日朝鮮人の歴史的背景への理解をすすめ、その人権確立をめざすとりくみに協力します。
    6. 司法解決の道は狭められてきたものの、国際法や道義的責任に基づき企業・国に謝罪と補償を求め立法解決への道を開こうとする戦後補償のとりくみに支援・協力します。
    7. 米下院「慰安婦問題」決議をはじめ国際的に広がる日本の首相の公式謝罪表明要求を、首相が真摯に受け止め実行することを求めるとりくみをすすめます。
    8. 差別なき戦後補償を求めて東京大空襲訴訟・空襲被害者立法の支援のとりくみをおこないます。また、東京大空襲朝鮮人犠牲者追悼集会などに協力します。
    9. 1967年から戦前の「紀元節」を「建国記念の日」とした問題点を忘れず、2月11日に歴史認識にかかわる集会をおこないます。

       

7.   核兵器廃絶に向けたとりくみ

(1)   核廃絶に向けて

   世界には2万発を超す核兵器が存在しています。これは世界を何度でも破壊しつくす量です。最近では2月13日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が3回目の地下核実験を行い、核兵器の小型化など、核技術のいっそうの進展が懸念されています。
   核兵器廃絶は人類的な緊急課題です。しかし核兵器廃絶への道のりは、このような日本を取りまく状況を含め、未だ厳しい現実があります。
   昨年秋に開催された第67回国連総会では、核兵器廃絶提案がいくつもの国から出されましたが、その中で日本案は、アメリカなど核兵器保有国に対して「究極的廃絶」を主張するだけで、今回も具体的要求が乏しいもので、提案に賛同する国が増えたとは言え、その内実が問われるものでした。また、ノルウェーやスイスなどが提案した、「核兵器を非合法化する努力の強化」を促すための共同声明への日本の対応は、被爆国としてあるまじき対応でした。ヒロシマ・ナガサキの体験を持ち、核兵器の非人道性を最もよく知るはずの日本政府が、呼びかけ国となることを拒否しました。被爆国の政府として、「核兵器廃絶」への意志が感じられない対応は問題です。さらに、アメリカの核の傘に依存するという立場はいまなお変わらず、被爆国日本の主張の信頼性を失わせています。保守的な核政策の自民党政権に代わったいま、今後の核軍縮政策が進展することは難しい状況にあります。
   2012年は、NPT(核不拡散条約)再検討会議で合意された、中東非核化会議の開催年でしたが、混迷を極める中東情勢や核兵器保有国の核軍縮に対する消極的姿勢の中で、開催すらできないまま年を越してしまいました。核保有国であるイスラエルの非協力やイランの核開発疑惑など、中東における非核化の流れはますます困難になっています。
   核兵器の廃絶を訴える米・オバマ政権は、米ロの新戦略核兵器削減条約(新START)に署名しながら、一方で昨年12月6日には未臨界核実験を行っています。さらに未臨界核実験を補完する新しいタイプの実験を行ってもいます。EU連合内戦術核兵器の撤廃を認めるなど、核軍縮において一定の成果を上げたとはいえ、オバマ政権の核政策そのものの内実が問われています。
   そのような中で、原水禁としては、7月から9月にかけて、連合・核禁会議とともに、アメリカ、フランス、イギリスなどの核兵器保有国の大使館に対して申し入れ行動を行ってきました(ロシアは郵送)。さらにアメリカの未臨界核実験に対しては抗議声明を発出しました(12月10日)。
   日本とインドの間で原子力協力協定の策定への交渉がすすめられています。日本の原子力産業の生き残りのため、NPT未加盟国のインドに対する原子力機器輸出へ踏み込むことも想定されます。インドを例外国扱いにして、原子力機器を輸出することは、NPT体制をさらに骨抜きにするものであり、またインドの核開発を容認し、加担するものです。私たちは、日本の非核政策のあり方も含めて、インドへの原子力輸出の問題を捉えていかなければならないとして、これらの動きを批判してきました。
   韓国で昨年3月、「環太平洋原子力会議」(18日~23日・釜山)、「原子力エネルギー展示会韓国2012」(19日~21日・釜山)、「原子力産業サミット」(23日~3月24日・ソウル)、そして「核セキュリティーサミット」(26日~27日・ソウル)が相次いで開催されました。核保有国や核産業は原発の有用性と核テロの危険性をことさらに強調しましたが、核兵器の脅威については、北朝鮮の問題を除いて、言及されることはありませんでした。しかし、この核テロの強調は、核の平和(商業)利用の名の下、核開発が国際的に進展する中で、核物質の拡散が、核の安全保障問題(軍事利用問題)に影響を及ぼすところまで拡大してきたものといえます。このことは、核の「軍事利用」と「平和利用」は表裏一体であることを、ますます明らかなものとして示しています。核兵器や原発の縮小そして廃棄が、世界の安全にとって重要な課題であることは明らかです。
   この「核セキュリティーサミット」が韓国で開かれた背景には、韓国の積極的な原発輸出政策と核燃料再処理施設を保有したいとする意向があります。また、そのことは日本のプルトニウム利用政策と深く関連しています。日本は現在、約45トンのプルトニウムを保有しており、世界から「核武装」への懸念を持たれるものとなっています。現に「安全保障政策」の一環として核燃料再処理工場は必要だとする石破茂・自民党政調会長(当時)の発言や読売新聞社説(2011年9月7日付)などは、その懸念をいっそう高めています。韓国の再処理の動きや日本のプルトニウム利用政策は、東北アジア非核地帯化をめざす上で大きな障壁となりつつあります。原水禁は一貫として、これらについて批判してきました。あらためて、韓国の反核・脱原発運動との連携強化のなかで、プルトニウム利用政策からの撤退を実現していかなくてはなりません。
   北朝鮮は、今年1月22日に「人工衛星」を打ち上げ、さらに2月13日には3回目の核実験を行いました。「人工衛星」発射は、国際的には「弾道ミサイル」実験との認識が強くあり、それに加えて核実験を強行したことによって国際社会に大きな衝撃を与えました。日本をはじめ東北アジアにとっても新たに緊張を高める出来事でした。原水禁としてもすぐさま声明(2月13日)を発出し、強く抗議をしました。北朝鮮をめぐる状況は、今後も国内外で一段と厳しいものになりつつありますが、緊張緩和に向けた六ヵ国協議の再開、日朝・米朝対話の再開など対話による平和と安定、そして東北アジアの非核化を求めるとりくみの強化が求められています。
   先のNPT再検討条約会議で議題となった「核兵器禁止条約」の実現に向けて、世界のNGOの活動は活発に続いています。さらに「核兵器の非人道性」宣言に取り組む国々や国際NGOなどが、国連を中心に動いています。私たちはこれらの国際的な動きとの連携を重視しながら、日本の新政権に対して、「核の傘」からの脱却と東北アジア非核地帯化構想の実現を求める努力を重ねなければなりません。この間、原水禁は「核兵器廃絶市民連絡会」に参加し、日本政府や国会議員との交渉を重ね、共同声明にも加わってきました。さらに、被爆67周年原水禁世界大会では、連合・核禁会議の3団体共催の「平和シンポジウム」(8月5日・広島、8月8日・長崎)や大会分科会をつうじて、核軍縮や東北アジアの平和と安定についての必要性・重要性を訴えてきました。
   私たちは、日本政府の核容認とも言えるこれまでの姿勢を改めさせ、被爆国の責務として世界平和と核軍縮のリーダーシップをとるように求めていくことが必要です。自民党政権に代わったことで核軍縮の面でこれまでの政策を後退させないように、さらに働きかけを強めていかなくてはなりません。そのためにも、私たちの運動を強化することとともに、非核自治体や平和市長会議との連携を深め、核廃絶に向けての共同の動きを加速させなくてはなりません。

(2)   原水爆禁止世界大会/ビキニ・デーについて

   被爆67周年原水爆禁止世界大会の参加者数は、福島大会・850名、国際会議・100名、平和ヒロシマ集会(三団体主催)・6500名、平和ナガサキ集会(三団体主催)・4500名、「メッセージ from ヒロシマ2012」・350名となりました。海外ゲストは5ヵ国18名の参加でした。
   いまだ震災の影響もあって地域や組織によってはとりくみが厳しい状況にありますが、原水禁内の参加者数は、地域によっては増減があるものの、全体としては昨年比でほぼ同数となり、各地の奮闘が伺われました。一方で、労働組合や各地の原水禁組織の参加が中心であり、脱原発の盛り上がりの中にあって、市民参加の点では課題が残っています。開かれた大会づくりをつうじて、もっと市民が参加しやすいものとしていくことが求められています。

《2013年度運動方針》

  1. 核兵器廃絶にとりくむ世界のNGOや市民団体との国際的な連携強化をはかります。
  2. 原水禁・連合・核禁会議3団体での核兵器廃絶に向けた運動の強化をはかります。
  3. 東北アジア非核地帯化構想の実現のために、日本政府や日本のNGOへの働きかけを強化し、具体的な行動にとりくみます。さらにアメリカや中国、韓国などのNGOとの協議を深めます。
  4. 非核三原則の法制化へ向けた議論と行動にとりくみます。
  5. 非核自治体決議を促進します。自治体の非核政策の充実を求めます。さらに非核宣言自治体協議会や平和市長会議への加盟・参加の拡大を促進させます。
  6. 政府・政党への核軍縮に向けた働きかけを強化します。そのためにも核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)や国会議員と連携したとりくみをすすめます。
  7. 被爆68周年原水爆禁止世界大会と国際会議を広島、長崎で開催します。
          7月28日            福島大会(福島市内)
          8月4日~6日      広島大会(8月5日/国際会議)
          8月7日~9日      長崎大会
  8. 2014年3月に被災60周年ビキニ・デー集会を、被爆69周年原水禁世界大会に連動する集会として開催します。

8.   原子力政策の根本的転換と脱原子力に向けたとりくみ

(1)   さようなら原発1000万人アクション

   2011年3月11日に発生した東日本大地震は、東日本一帯に甚大な被害をもたらし、その中で福島第一原発が原子力史上最悪の大事故を引き起こす結果となりました。「安全神話」のもと原発が国策として強引に進められ、その下で「命」が軽んじられてきたことがあらためて浮き彫りになりました。2年経ったいまでも事故の収束も見えない中で、あらためて「核と人類は共存できない」ことを強く認識させています。私たちは事態の早期収束を願うとともに、このような惨禍を生み出した原発からの脱却に向けた政策転換を強く求めます。
   3・11以降、私たちは、「命」に寄り添うことを基本に、「つながろうフクシマ!」を掲げ、さまざまな運動を展開してきました。そして「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみをその中心で支えてきました。7月16日には東京・代々木公園で「さようなら原発10万人集会」を開催し、約17万人の大結集をつくりだすことができました。これは一昨年の6万人集会(2011年9月19日・明治公園)に引き続く大集会となりました。その他にも「原発ゼロの日、さようなら原発集会」(5月5日・芝公園、5000人)、「さようなら原発集会in日比谷」(10月13日、6500人)、「脱原発世界会議日比谷集会」(12月15日、1800人)、「つながろうフクシマ!さようなら原発大集会」(3月9日、1万5000人)などのとりくみを行ってきました。また呼びかけ人による記者会見もこれらの集会前後に行うなど、世論喚起と運動の盛り上げのための情報宣伝に努めました。
   また同時に進められている1000万人署名は、国内外に大きな反響を与えてきました。現在、署名は823万3949筆に達し(2013年4月1日現在)が集まり、昨年6月15日には、第一次提出分約750万筆分を、呼びかけ人の大江健三郎さんや澤地久枝さんらが官房長官や衆議院議長に手渡し、脱原発への政策転換を強く求めました。今後も新政権への要請行動として第二次提出に向けて、署名運動を盛り上げ、1000万筆達成の実現が求められています。なおこの署名活動のなかで全国各地から寄せられた手紙を、書籍『ほうしゃのう きらきら きらいだよ』(七つ森書館刊)としてまとめました。

(2)   脱原発法の制定へ

   各地で「さようなら原発1000万人アクション」のとりくみが展開されるとともに、毎週金曜日に首相官邸前をはじめ全国各地で行われている「金曜行動」など、さまざまな自然発生的な運動が盛り上がってきました。首相官邸前での行動には数万人もの人々が集まるまでになりました。とくに昨年夏には「電力危機キャンペーン」が打ち出されるなか大飯原発の再稼働が強行され、それに反対する運動が全国に広がりました。原水禁としても全力で1000万人署名や7・16集会の成功を支え、エネルギー環境会議へのパブリックコメントの集中などを強く訴え、脱原発への大きな流れをつくりだしてきました。その結果パブリックコメントの8割以上が脱原発を求める意見となり、エネルギー環境会議から「2030年代には原発稼働ゼロ」の方針が打ち出されました。政策転換を求める大衆的な世論が、民主党政権の原発方針決定の後押しをしました。
   そのような中で脱原発法制定全国ネットワークが結成され、原水禁・平和フォーラムとしても参加し、脱原発法の制定に向けた法案作成、政党・議員への働きかけなどとりくみをすすめ、昨年の通常国会会期末(9月24日)に議員立法として脱原発基本法を提案するところにまでこぎつけました。しかし、国会解散、総選挙によっていったん廃案となってしまいました。その後の自民党政権の成立によって再び原発推進に戻る懸念が強まるなか、3月11日に参議院での再提出を行いました。エネルギー政策について、国会の場で正面から議論させることが求められています。

(3)   フクシマ課題の前進を

   福島第一原発について、政府は、2011年12月16日に「冷温停止状態」になったことを理由に「収束宣言」を発しました。しかし、事故の収束にはほど遠い状況にあるにもかかわらず強行された「政治的」なパフォーマンスでしかなく、かえって政府に対する不信感を高めるものとなりました。その後も事態は厳しく、労働者の被曝の増大、汚染水の漏えいなどの課題が山積する中で、本当の収束はいまだ見えない状況にあります。
   放射性物質汚染地域から長期にわたる現地住民の避難が続いています。その数は16万人とも言われ、生活や就労、そして健康など心身にわたる苦労が2年経ったいまでも続いています。さらに、福島県のみならず広範囲の地域にひろがった放射能汚染の問題のほかにも、除染問題、健康問題、がれき問題などのさまざまな問題が存在しており、それは2年経ってさらに深刻化しつつあります。
   原水禁は原発震災当初から「妊産婦並びに乳幼児・児童・生徒などの避難の実施について(要請)」(2011年3月16日)を打ち出し、放射能の影響を受けやすい立場の側にたって政府をはじめ関係各所への要請を行ってきました。今後もその立場から、安心して避難を「選択」できる環境をつくり出すことがめざしていきます。
   健康問題については、ヒロシマ・ナガサキの被爆者援護の経験を踏まえながら、被災者の健康と健康不安に対応していかなければなりません。とくに健康不安を軽減するための対策のひとつとして、ヒロシマ・ナガサキの被爆者健康手帳と同様な法的位置づけを持つ「健康手帳」の発行が必要です。さらに今後も続く収束へ向けた被曝労働や除染作業に対しても、被曝の低減とともに、安全な労働環境の整備を追求していくことが必要です。
   除染問題では、その効果と放射能の拡散について考える必要があります。現在人々が暮らす地域の放射能の汚染レベルをどこまで下げることができるのか、その結果放射能の拡散はどのようになるのかなど、効果とリスクを常に検討することが重要です。また、従事する労働者への健康の配慮も欠くことができません。
   日本全国で、放射能が含まれるがれきの受け入れが問題となっています。ここには、放射能が拡散すること、そして地域住民が受けるリスクの問題があります。遅々として進まない現地での処理の問題の根源は、国が責任を十分果たしていないことにあります。さらに測定体制の充実と情報の公開は、それらの各課題の前提として常に求めていかなければなりません。
   その上で、現地をはじめ全国各地と協力し、一つひとつ丁寧にとりくまなければなりません。原水禁は現地と協力しながら「フクシマ」の抱える問題を全国の課題としてとりくみを行い、これまで「フクシマ・プロジェクト」などをつうじて議論を深め、そうしたなかで福島での放射能測定室の設置にも協力しました。今後も具体的課題を提起し、政策提言や運動を提起し、福島原発事故のもたらした実相を明らかにしていくことが必要です。

(4)   破綻した原子力政策

   原発は日本各地に現在50基ありますが、大飯原発3・4号機(福井県)以外は全て停止したままになっており、その大飯原発も今年の8月には停止する予定になっています。今年7月には新規制基準が策定されることになっており、それに加え、原発推進の安倍政権に代わったこともあり、再稼動の動きがいっそう加速することが予想されます。脱原発を進める運動にとって、まさに正念場ともいえる年となります。現在改訂が進められている新規制基準に対しては、基準の問題点を追及することと同時に、その厳格な適用を求めることが必要です。活断層問題、防災問題など様々な点で問題点が指摘されています。それらを明らかにすることと同時に、政府や事業者などが問題解決にとりくむよう要請を重ねていくことが求められています。運動の政策能力、交渉能力が問われています。
   同時に現地での闘いも重要さを増しています。再稼働阻止に向けたとりくみの強化とともに、各地の課題を全国化させることも重要です。「中越沖地震5周年 柏崎刈羽集会」(7月22日・柏崎市、400人)、「JCO臨界事故13周年集会」(9月30日・水戸市、500人)や「もんじゅを廃炉へ全国集会」(12月8日・敦賀市、800人)を全国的なとりくみとしてすすめてきました。大飯原発の再稼働では、声明(6月17日、7月5日)を発出し、「大飯原発再稼働に反対する現地集会」(6月3日・福井、500人)にも協力してきました。
   さらに、各地の原発・原子力施設立地県との連携を強化するために「原発・原子力施設立地県連絡会」のとりくみに協力してきました。原水禁大会や「もんじゅ」集会などの全国的な集まりにあわせて立地県会議を開催し、各地の活動について共有化をすすめました。
   また、六ヶ所再処理工場では、高レベルガラス固化体の試験が再開され、今年10月の完工に向けて準備が進められています。深刻な技術的トラブルを抱え、これまで莫大な建設費用を投じながら19回もの完工延期を行ってきた経緯からも計画通りに進むとは到底考えられませんが、プルトニウム利用の見通しが立たない中で再処理施設建設に執着することは、核不拡散の観点からも問題です。原水禁としてもこの間、青森での「反核燃の日」行動や福井での「もんじゅを廃炉へ!全国集会」を行い、核燃料サイクル路線の破綻を明らかにしてきました。また、東京においては「再処理止めたい!首都圏市民のつどい」とともに、2004年12月以来、毎月の国会議員へのニュース配布と経済産業省申し入れ行動、定例デモに協力してきました。私たちの指摘の正しさは現実が証明していますが、いまだその路線は変更されず、引き続き破綻した再処理路線の現実を広く明らかにしていく必要があります。プルトニウム利用においては余剰プルトニウムを持たないことを国際公約と掲げていますが、原発が停止する中にあってはこれ以上の使い道がないことは明らかです。国際的にもこのことを強くアピールしていくことが求められています。
   今年7月には、原子力規制庁が新規制基準を出そうとしています。福島原発事故の解明も途上の中での新基準策定は拙速といえます。様々な問題を抱えながら進められる基準づくりに、パブリックコメントや申し入れなど、意見表明をしていくことが求められています。原水禁としても、1月30日に内閣府や原子力規制庁へ原子力防災での申し入れとパブリックコメントの集中を要請しました。

(5)   エネルギー政策の転換を

   野田前政権は、「脱原発依存」をかかげてスタートしました。しかし、具体的なロードマップを明確にしないままの政権交代となりました。安倍政権に代わり、自然エネルギーの買い取り額の引き下げなど、これまでと逆行する動きもすでに出ています。原発以外の電力を伸ばす上でも重要な発送電分離などの課題は、進まぬ状況にあります。さらに原発停止を理由に電力料金の値上げなど、私たちの生活に直結する動きもでています。しかし、原発を延命させることは、さらにムダな投資となり、それが私たちの税金や電力料金に跳ね返っていくことになります。
   ドイツでは自然エネルギーへの転換で、50万ともいわれる大きな雇用を生み出しています(原水禁世界大会でのドイツのゲスト発言より)。原子力に代わる新たな産業構造の転換が、日本においても求められています。さらに国だけでなく地域から再生可能エネルギーの波をつくり出すための「再生可能エネルギー条例」などの条例制定をしていくことも方策のひとつです。地域から、草の根から再生可能エネルギーをつくり上げることも、地域の活性化や雇用の創出に結びついていくはずです。このことをエネルギー政策の転換のチャンスとしてとらえることが重要です。
   3・11以降の新たな状況を踏まえ、さらにエネルギー政策の提言を精査しまとめる必要があります。同時に、各地でとりくまれる自然エネルギーの具体的な展開に協力していくことも重要となっています。そのためにも、国内外の環境・エネルギーの先進地のとりくみから学ぶことも今後の課題となっています。
   エネルギー政策の転換を求めて、原水禁として「eシフト」(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)に参加し、エネルギー基本計画見直しやグリーン政策大綱などへの政策提言、シンポジウム開催、子ども20ミリシーベルト基準撤回署名、パブリックコメント呼びかけに協力してきました。今後も市民・NGOと協力しながら、新しいエネルギー政策のありかたを考えていきます。

《2013年度運動方針》

  1. 「さようなら原発1000万人署名」や「7・16集会」などの「さようなら原発1000万人アクション」のさまざまな行動を積極的に支えます。さらにアクション実行委員会の事務局を担います。
  2. 福島原発事故に関する様々な課題について、フクシマ・プロジェクトを中心に課題を整理し、現地と協力しながら運動を進めます。
  3. プルトニウム利用路線の破綻を明らかにし、再処理工場の建設に反対し、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に反対します。
  4. 原発再稼働の動きに反対し、各地でのとりくみを全国化して運動を展開します。
  5. 大間原発や上関原発、島根原発3号機などの新増設に反対します。
  6. 新安全基準作成に対して、厳格な安全基準を求めていきます。さらに原発震災について問題を広め、原子力防災の問題点を明らかにします。
  7. インド、ベトナム、ヨルダンなどへの原発輸出に反対します。
  8. これまでのエネルギー政策プロジェクトの成果を活かし、国会での議論を進展させます。そのために、関係閣僚への要請、院内集会・学習会などを行います。
  9. 脱原発法全国ネットワークを支え、脱原発法の提出をはかり、国会でのエネルギー政策論争を後押しします。そのためにも国会議員や政府への働きかけを強化します。
  10. 各地の自然エネルギー利用のとりくみに協力します。とくに「再生可能エネルギー促進条例」(仮称)づくりなど、地域から再生可能エネルギーのとりくみをつくり上げることに協力します。
  11. 原発存続のための電力料金の値上げに反対します。

9.   ヒバクシャの権利確立のとりくみ

(1)   被爆者の課題解決にむけて

   ヒロシマ・ナガサキの被爆者の高齢化はいっそう進み、その子どもである被爆二世も高齢の域に入りつつあります。被爆者の残された課題を解決する時間も限られ、援護対策の充実と国家の責任を求めることが急務となっています。
   被爆者の援護施策の充実を求める課題として、これまで原爆症認定問題が裁判闘争を中心にとりくまれてきました。その結果、被爆者団体と政府は解決にむけた合意がなされ、「基金」の創設や日本原水爆被害者団体協議会(被団協)などとの「定期協議」などが確認され原爆症認定の課題は前進しましたが、一方で、改定した「新しい審査委の方針」に従って展開されている審査制度の中で、多くの審査滞留や認定却下が生み出されているなど、改善を要する課題も山積しています。引き続き被団協が進める運動に協力を深めていくことが求められています。
   在外被爆者の課題は、日本の戦争責任・戦後責任の問題と重なります。高齢化の進む在外被爆者の課題解決も重要です。在外被爆者の援護は国内の被爆者との援護との間に内容に差があります。国籍条項のない被爆者援護法の趣旨からも「被爆者はどこにいても被爆者」であり、差別のない援護の実現に向けてさらに運動を強化していかなければなりません。現在、各国の在外被爆者が、政府の401号通達によって権利を侵害されたとする訴訟を提訴しています。国は提訴されれば和解に応じますが、あくまで提訴があった場合のみで、自ら積極的に在外被爆者へ補償する動きはありません。
   在朝被爆者に対しては、これまで一切の被爆者援護も実施していません。国交がないことを理由にしていますが、あたかも被爆者が亡くなるのを待っているかのようです。昨年原水禁として訪朝し確認したところ、これまで確認されていた384人の被爆者はさらに減少しており、現在人数の確認作業に入っているとのことで、高齢化する在朝被爆者への援護が急がれています。しかし、安倍政権の登場によって在朝被爆者の援護・連帯の行方をより厳しいものにしていますが、日本の戦争責任・戦後補償が問われる問題でもあり、とりくみをいっそう強化する必要があります。
   被爆体験者裁判は、昨年6月の一審での敗訴を受け、現在控訴をして争っています。引き続き裁判支援を行いながら、政府・政党への働きかけをさらに強化していかなければなりません。特に裁判で強く主張された内部被曝を過小に評価することは、今後の福島原発事故の被曝被害の過小評価にもつながるものです。昨年、第二次被爆体験者の提訴も行われ、この問題を第一次と合わせて追及しています。このことの問題性を広く訴えることが重要となっています。これまで原水禁としては、裁判闘争の支援とともに全国被爆体験者協議会と連携して、署名のとりくみ、厚生労働省交渉や国会議員への働きかけを積み重ねてきました。また原水禁大会などでの分科会・ひろばでこの課題をとりあげてきました。引き続き裁判支援とともに課題解決に向けたとりくみを強化していかなければなりません。広島・長崎の「黒い雨」地域の課題も近年明らかになってきましたので、そうした事実に即した被爆地拡大、被害の実態に見合った援護の強化を訴える必要があります。
   これらヒロシマ・ナガサキの被爆者課題に対して、これまで原水禁・連合・核禁会議の3団体で2011年2月8日に厚生労働副大臣との意見交換を持つなどのとりくみを行ってきました。さらに3団体でとりくみの強化を行っていくことが重要です。
   また、被爆者援護法の枠外に置かれている被爆二世・三世は、原爆被爆による「健康不安」の状態に置かれています。この健康不安解消のために、全国被爆二世団体協議会とともに「二世健康診断」のこれまでの単年度措置から恒常的な処置への移行を求めて、法制度に組み入れることを要求してきました。さらに健康診断内容に「がん検診」などを加えることも要求してきました。2月16~17日の「被爆二世全国交流会」にも参加・協力してきました。
   しかし国による被爆者援護に対する消極的姿勢は、国が「原爆の被害を過小に見せたいがため」にあり、原爆被害を根本から補償しようという立場にないことにあります。そのことは、今後起こるであろう福島原発事故による被曝者への補償にもつながるものです。ヒロシマ・ナガサキの被爆者に対してきっちり補償させることは、今回の福島に対しても補償をさせることにつながるものと捉え、一つひとつ解決していけなければなりません。

(2)   世界の核被害者との連帯

   ヒロシマ・ナガサキの原爆被害にとどまらず、あらゆる核開発の過程で生み出される核被害者への連帯や援護のとりくみは原水禁運動の重要な柱です。多くのヒバクシャをいまだ生み出している原発事故、軍事機密のなかで行なわれた核実験によるヒバクシャの実態などを明らかにしていくことが必要です。
   海外の核被害者(団体)との連携では、昨年はチェルノブイリ原発事故の被害者を原水禁世界大会に招き、事故の実態を紹介しました。福島原発事故による被害が拡がる中で、チェルノブイリ原発事故から学ぶべきものはたくさんありました。
   「核と人類は共存できない」ことは明確です。核被害者の連帯は、そのことをあらためて告発することでもあります。核の「軍事利用」、「商業利用」を問わず核被害者との連携を強化することは、原水禁としての最も重要な課題です。

《2013年度運動方針》

  1. 現地と連帯して福島原発事故による核被害に対する責任や賠償そして被害の軽減化を求めます。とくに健康面での国家による補償を求めます。
  2. 被曝線量の規制強化を求めます。
  3. 原爆症認定制度の改善を求めます。被爆者の実態に則した制度と審査体制の構築に向けて、運動をすすめます。
  4. 在外被爆者の裁判闘争の支援や交流、制度・政策の改善・強化にとりくみます。
  5. 在朝被爆者支援連絡会などと協力し、在朝被爆者問題の解決に向けてとりくみます。
  6. 健康不安の解消として現在実施されている健康診断にガン検診の追加など二世対策の充実をはかり、被爆二世を援護法の対象とするよう法制化に向けたとりくみを強化します。さらに健康診断などを被爆三世へ拡大するよう求めていきます。
  7. 被爆認定地域の拡大と被爆者行政の充実の拡大をめざして、現在すすめられている裁判を支援します。国への働きかけを強化します。
  8. 被団協が進める援護法の改正要求に協力し、被爆者の権利の拡大に向けたとりくみをはかります。
  9. 被爆の実相の継承するとりくみをすすめます。「メッセージ from ヒロシマ」や「高校生1万人署名」、平和大使などの若者による運動のとりくみに協力します。
  10. 原水禁・連合・核禁会議の3団体での被爆者の権利拡大に向けた運動の強化をはかります。
  11. 世界に広がる核被害者への連帯を、国際交流や原水禁世界大会などを通して強化します。
  12. 被曝労働者への援護・連帯を強化します。

10.   環境問題のとりくみ

(1)   福島原発事故による放射能汚染問題のとりくみ

   2011年3月11日に発生した東日本大地震による東京電力福島第一原発の事故により、広範囲に拡散した放射性物質は、大気や水、土壌、河川、海洋など環境に対しても多大な影響を与えました。今後、田畑や森林については、きめ細かな測定や除染が必要であり、膨大なコストと時間を要するものと見られます。さらに、海洋汚染による魚介類などへの深刻な放射能汚染も指摘されています。
   現在、福島県内では高濃度の汚染地域での除染作業が始まっていますが、ホットスポットと言われる地域など、他県においても高濃度の汚染があることから、地域や営農形態を細分化して、検査・判定を頻繁に行い、結果を全面公開することが求められています。また、除染についての問題点も指摘されており、その有効性などの検討が必要です。さらに、出荷制限や価格低下などに対する速やかな補償対策をはじめ、放射性物質の被害が深刻な農地については代替地の確保や土壌の入れ替えなどの対応が必要になっています。
   放射能汚染は食の安全にも多くの影響を与えています。放射性物資が付着した食べ物や水、空気などを体内に取り込んで、細胞の近くから放射能を浴び続ける体内被曝は、微量でもDNAを傷つけ、ガンや突然変異を誘発します。2012年4月から食品などに対する新たな規制値が適用されました(1キログラム当たりの放射性セシウムが一般食品100ベクレル、乳幼児食品50ベクレル、牛乳50ベクレル、飲料水10ベクレル)。厚生労働省によると、4月からの新基準をもとに、1月までに全国で22万8千件近くの検査が行われ、2115件が基準を越えていました。基準を超えているものの半分以上は魚介類で、さらにキノコやシイタケ、野生動物の肉(熊、鹿、猪など)などからも高い値が検出されています。
   こうした事態に対し、平和フォーラムは、「食の安全・監視市民委員会」などの消費者団体や農民団体とともに、厚生労働省や農林水産省に対し、①外部被曝も含めた総被曝線量も考慮し、定期的に基準値を見直して可能な限り低い値に更新すること、②セシウム以外の核種の規制値設定、③検査制度の徹底、④規制強化に伴う生産者への補償の徹底、などを求めてきました(2012年4月14日のシンポなど)。また、食とみどり、水を守る全国集会(2012年11月30日~12月1日・大阪市)でも、中心的なテーマの一つとして多方面からの論議・学習を行いました。
   今後も、放射能汚染の環境に対する影響について、詳細な調査を行うとともに、農産物・水産物などの汚染状況の把握や検査態勢、情報の迅速な公開、予防的視点をもった対処を求めて、厚生労働省や農林水産省など政府関係機関に対する申し入れや集会などを行っていく必要があります。 また、平和フォーラムが協力して、福島県平和フォーラム内に食品や土壌の放射線量の測定所が開設しまました(2012年9月)。今後、これらの実績も活用しながら、対策を求めていく必要があります。
   一方、宮城や岩手なども含め、津波などによる被害農地の復旧、農家の所得補償も必要です。農地におけるガレキの処理などは進んでいるものの、農地や地下水の除塩については今後の課題になっています。平和フォーラムは農民団体とともに、対策について農林水産省への申し入れを行ってきました。また、被災地に支援米を送る運動も一部の県で取り組まれました(青森、岩手、新潟、京都など)。今後の「復旧・復興」の検討にあたっては、被災地域の農民、住民の意向を第一に進めることが重要であり、経済界などが進めようとする、一方的な規模拡大・集約化を進める動きは注視していく必要があります。さらに、国内食料の自給率維持を図るため、全国的に耕作放棄地や不作付地での作付けを進めていくことも課題になっています。

(2)   水・森林・化学物質・地球温暖化問題などのとりくみ

   家庭から出される有害化学物質の最大のものが合成洗剤です。「合成洗剤追放全国連絡会」は、合成洗剤を追放し、人と環境にやさしい石けん使用の推進に向け、合成洗剤などへのGHS絵表示制度の早期実施、化学物質の移動・排出届け制度(PRTR)の推進、「化学物質政策基本法」の制定などを求めてきました。また、下水道設備が整っていない震災地では石けんを使用することを呼びかける運動や、福島原発事故による放射能汚染、津波による有害化学物質が大量に流出している問題などについても、関係団体とともに取り組みを進めてきました。
   とくに、平和フォーラムは「合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、第32回合成洗剤追放全国集会(2012年10月6~7日・函館市)の開催やニュースの発行、関係省などへの申し入れに協力してきました。また、各地で水源地域の保全活動や水質検査活動などが進められてきました。2014年が合成洗剤追放連絡会の結成40周年になることから、その記念事業も含め、とりくみを強めて行く必要があります。
   一方、「化学物質政策基本法」については、民主党内での論議が進まないまま、政権の交替によって、その制定が困難になっています。今後も、合成洗剤の規制など化学物質の総合的な管理・規制にむけた法制度や、GHS制度の適用などを求めて運動を展開していく必要があります。
   また、健全な水循環を構築するとともに、水の公共性を守るため、森林、河川、海岸などの水に関連する法体系を統合した「水循環基本法」の制定への運動も強めていく必要があります。そのため、食とみどり、水を守る全国集会(2012年11月30日~12月1日・大阪市)でも論議・学習が行われました。しかし同法は、国会への提出直前に衆議院解散・総選挙が行われたため、現在まだ提出されていません。早期の制定に向けてとりくみを強化することが必要です。
   森林は環境や農山漁村を守るうえで重要な役割を果たしています。先の大震災では、津波などに対する森林の防災面での多面的機能が改めて見直されました。その公益的機能に対する学習活動として、各地域で森林視察や林業体験などがとりくまれてきました。また、食とみどり、水を守る全国集会でも森林の多面的機能などを学びました。今後も「森林・林業再生プラン」および「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、木質バイオマスの推進など、森林・林業・農山村の再生、木材産業の活性化などを図り、温暖化防止の目標達成を実現する必要があります。
   地球温暖化問題は、温暖化の主要原因である温室効果ガスの削減に向けたとりくみが必要です。2012年11月26日~12月8日にカタールの首都ドーハで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP18)が開催され、京都議定書を改正し第2約束期間の下で法的拘束力ある排出削減の枠組みを維持することや、2015年までに新議定書(法的文書)を採択するための交渉の計画が決まりました。しかし、日本政府は「京都議定書第2約束期間に不参加」という姿勢に終始しました。これは、国際社会の中での信頼低下、国内の低炭素化と持続可能な社会への転換の遅れを招くものです。そのため、こうした方針を見直し、先進国の責任としてより高い削減目標を掲げ、それを実現する国内法と政策措置を備えることが求められています。今後とも、温室効果ガスの削減をめざす「地球温暖化対策基本法案」について、事業所に排出上限枠を設けるなどの施策、環境税の導入、森林吸収源対策の着実な実施など、実効性のある内容で制定させることが必要です。引き続き、「気候ネットワーク」など、環境団体などのとりくみに協力していきます。また、福島第一原発事故を機に、これまで温暖化対策のためとして進められてきた原発推進政策の根本的な転換を求めていくことが一層重要になっています。
   一方、自然エネルギーを推進する法制度については、「再生エネルギー促進法」に伴い、昨年7月から、再生エネルギーの全量買い取り制度がスタートしました。身近な地域資源を活用したバイオ燃料や風車、太陽光発電など地域分散型のエネルギーの利用を一層推進するため、市民・農民団体などとともにとりくみをすすめていきます。
   人体や環境に影響を与える恐れがあるフッ素問題では、フッ素問題全国集会(2012年11月18日)に協力しましたが、今後も、学校などでの集団フッ素洗口・塗布に反対する運動などを強めていく必要があります。

(3)   TPPなど貿易自由化に対するとりくみ

   昨年、アメリカの穀倉地帯は記録的な干ばつに見舞われ、トウモロコシや大豆の国際価格は最高水準を記録するなど、世界の食料は高騰し不安定さを増しています。国連世界食糧農業機関(FAO)などの推計では、慢性的な食料不足に苦しむ人々は8億7000万人もいるとされ、依然として深刻な状況が続いています。地球規模での食料問題を解決するためには、自由貿易の拡大ではなく、各国が生産資源を最大限活用して自給率を高めながら、共生・共存できる「新たな貿易ルール」が必要です。
   こうした問題があるにも関わらず、世界貿易機関(WTO)や二国間・多国間自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)により、貿易自由化をめざす交渉が進められてきました。特に、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加をめぐって、昨年1月以降、TPP交渉に参加している9カ国との事前協議を進めてきました。特に米国との協議では、牛海綿状脳症に伴う牛肉の輸入制限撤廃や米国産自動車の輸入拡大、郵政などの保険市場問題が求められてきました。この事前協議で日本は大幅に米国に譲歩をし、3月15日に安倍首相は正式にTPP交渉への参加を表明しました。
   昨年の衆議院議員総選挙で自民党は「聖域なき関税撤廃が前提である限りTPP参加に反対する」「食の安全・安心の基準を守る」「ISD条項(投資家による国の訴訟権)は合意しない」「政府調達・金融サービス等はわが国の特性を踏まえる」などを公約としてきました。しかし、今後、日本が正式にTPP参加が認められたとしても、既存の参加国間で既に合意した事項はすべて受け入れを求められることになります。そのため、こうした公約が守られる保障はありません。
   TPPは国内の農業・食料、食の安全へ打撃を与えるだけでなく、医療や公共サービス、労働、金融、特許や著作権等の知的所有権など、広範な影響が予想され、各国の経済・社会システムを根本から変える恐れがあります。また、中国など東アジア諸国との関係への影響、世界のブロック経済化なども懸念されています。しかし、この間、TPP交渉に関する情報開示がなされず、国民的議論がほとんど行われてきませんでした。
   こうしたことから平和フォーラムは交渉参加に慎重な対応を求めてきました。農民・市民団体とともに「STOP TPP!!1万人キャンドル集会」(2012年4月25日・日比谷野音)を開催したのをはじめ、政府との意見交換会の開催(2012年5月22日・文京シビックセンター)、ニュージーランドの大学教授を招いての講演会(2012年6月21日・日比谷図書文化館)などを開催しました。また、連続講座(2012年7月23日、9月3日、10月2日、11月5日、11月19日・連合会館)の開催などを進めてきました。
   さらに、安倍首相が性急にTPP交渉への参加表明を行ったことに対し、平和フォーラムは強く抗議し、その撤回を求める声明を発出しました(3月15日)。また、農民団体や消費者・市民団体とともに「性急すぎるTPP交渉参加の撤回を求める生産者・消費者行動」(3月28日・参議院議員会館)を行いました。
   今後も、消費者・市民団体、農民団体などと連携を強め、TPP協議における徹底した情報公開を求めることや、市民参加の意見交換会を行うなどを求めて、TPPの問題点を明らかにしながら、東アジア諸国をはじめとして、各国の農業や産業が共存できる公平な貿易ルールを求め、活動を進めていく必要があります。

(4)   第一次産業の転換や農林業政策のとりくみ

   TPPなど自由化の動きに呼応するとともに、農業就業人口の減少や高齢化、農業所得の大幅減、耕作放棄地の増加などの面からも、国内の農業政策の転換が求められています。現在、地域農業の中心的な担い手に農地の集積を進める「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)」を市町村が中心となって作成が進められています。そのため、農地を貸し出す地権者に対する農地集積協力金や、将来の中心経営体になる新規就農者への青年就農給付金制度が創設されました。一方、民主党政権の政策の柱であった「農家の戸別所得補償制度」は、多くの農家が加入するなど、定着化が図られてきました。
   これらの政策に対しては、地域の実情を合わせた「多様な担い手の役割発揮」「地域の特色ある産地づくり」を進めることなどを求めて、農民団体などとともに農林水産省への要請を行ってきました。
   しかし、政権交代が行われたことにより、政策の見直しがどのように行われるかが課題になっています。「農家の戸別所得補償制度」は、名称を「経営所得安定対策」に変更されたものの、現場の混乱を避けるためとして、2013年度についてはこれまでの制度や支払い金額は従来通りとされています。政府・与党は、経営所得安定対策の抜本的な見直しを2014年度から実施する方針を示しています。特に、選挙公約に盛り込んだ「多面的機能を評価した日本型直接支払い制度」「担い手総合支援新法制定」などの検討が行われる見通しになっています。自民党はかつて、一定規模以上の農家への支援に限る選別政策を導入し、農業者から反発を招いたこともあることから、今後の政策の動きが注目されます。また、民主党政権の時につくられた「食料・農業・農村基本計画」では、2020年までの食料自給率50%への向上などが謳われましたが、同計画の見直しも今後の焦点になっています。
   これらの課題については、食とみどり、水を守る全国集会(2012年11月30日~12月1日・大阪市)でも論議・学習が行われましたが、今後も農民・消費者団体と協力し、食料・木材自給率引き上げや所得補償制度の拡充、食品の安全性向上など、展望のある食料・農林業・農村政策に向けた法・制度確立と着実な実施を求めていく必要があります。また、各地域でも、子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動(38都道県からカンボジアとアフリカ・マリへ約37トン送付)や森林・林業の視察会などを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくってきましたが、こうした活動をさらに拡大し、食の安全や農林水産業の振興に向けた条例作りや計画の着実な実施が必要です。

(5)   食とみどり、水を守る全国集会の開催

   「食の安全」、「食料・農業政策」、「森林・水を中心とした環境問題」を中心とした食とみどり、水・環境に関わる課題について、情勢と運動課題の確認、各地の活動交流のために、大阪市で「第44回食とみどり、水を守る全国集会」を開きました(2012年11月30日~12月1日、850人参加)。また、事前に学習用のパンフを発行しました(2012年10月)。集会後に、講演・報告やシンポジウムを収録した記録集も発行しました(2013年2月)。 第45回全国集会は11月29日(金)~30日(土)に宮城県・仙台市で開催するよう準備します。そのため、関係団体や地域組織に呼びかけて実行委員会をつくります。

《2013年度運動方針》

  1. 福島原発事故にともなう、環境や農産物などへの放射能汚染に対して、検査体制の拡充、放射性物質の除去対策などの万全な措置を求めてとりくみを進めます。特に、食品に対する検査対策の徹底などの要請を行います。
  2. 放射能汚染の環境に対する影響について、詳細な調査を行うとともに、汚染された汚泥などの適切な処理対策を求めます。
  3. 震災による農漁業の復旧・復興に向けた万全な対策を求めて、関係団体とともに政府要請などのとりくみを進めます。
  4. 「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会」の事務局団体として、活動を推進します。とくに、洗剤などの家庭用製品に対し、その危険性や有害性を表示する国際的な統一ルール(GHS制度)の適用を求めてとりくみます。
  5. 「水循環基本法」の制定に向けたとりくみをすすめます。また、水中や環境中の化学物質に対する規制運動を強めていきます。
  6. 関係団体と協力して、政府の「森林・林業再生プラン」および「森林・林業基本計画」で定めた森林整備の確実な推進、地産地消による国産材の利用拡大、木質バイオマスの推進などにとりくみます。
  7. 温暖化防止の国内対策の推進を求め、企業などへの排出削減の義務づけをはじめ、森林の整備、温暖化対策のための税制(環境税)など、削減効果のある具体的な政策を求めます。
  8. 自然(再生可能)エネルギー普及や省エネルギーのための法・制度の充実を求めていきます。また、温暖化防止を名目とする原発推進に反対します。
  9. TPP問題について幅広い団体との連携を図りながら、政府に対して情報公開や市民参加の意見交換会開催などを求めていきます。また、学習会や集会などを開催し、問題点を指摘していきます。
  10. 農業改革の検討に向けて、食料自給率向上対策、直接所得補償制度の確立、環境保全対策、自然エネルギーを含む地域産業支援策などの政策実現を求めてとりくみます。
  11. 各地域における食料自給率や地産地消のとりくみ目標の設定を要求していきます。さらに、食の安全や有機農業の推進、農林水産業の振興に向けた条例つくりをはじめ、学校給食に地場の農産物を使用する運動、地域資源を活かしたバイオマス運動や間伐材の利用などのとりくみを広げていきます。
  12. 子どもや市民を中心としたアジア・アフリカ支援米作付け運動や森林・林業の視察・体験、農林産品フェスティバルなどを通じ、食料問題や農林水産業の多面的機能を訴える機会をつくっていきます。とくに、支援米運動では小学校の総合学習やイベントなどとの結合、地域連合との共同行動など、地域に広げてとりくみます。
  13. 「第45回食とみどり、水を守る全国集会」(11月29日~30日、宮城県・仙台市)の開催に向けてとりくみます。

11.   食の安全のとりくみ

(1)   食の安全行政に対するとりくみ

   昨年、牛肉(生レバー)や浅漬け野菜などの食中毒による死亡事件が相次ぐなど、食への不安、不信が急激に高まっています。さらに以前から、食品の産地偽装や原料偽装、輸入食品の安全性などの問題が続いてきました。また、テレビや新聞で「健康食品」の効能効果を謳った違法広告や安全が疑われる商品も多数存在しています。これらの問題は、不当に利益を得ようとする業者だけではなく、表示制度の不備、罰則規定や監視体制の不十分性、管轄する省庁が多岐に渡る縦割り行政の弊害などが重なっているものといえます。こうした中で消費者庁は、現行の「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」を統合して、新たな食品表示法案を制定する予定です。平和フォーラムも参加し、消費者団体や生活協同組合などでつくる「食品表示を考える市民ネットワーク」は、政府の法案作成に対して、①法の目的に「消費者の知る権利、選択する権利の確保」の明記、②全ての加工食品の原料原産地表示の義務化、③全ての遺伝子組み換え(GM)食品・飼料表示の義務化。④食品添加物の一括名、簡略名の廃止および原材料と添加物を分けての表示、⑤検討の場には消費者代表などの参加を求めて、集会の開催(2012年8月28日、2013年1月31日・衆院)や消費者庁への要請、各党対策などを行ってきました。引き続き、消費者・市民のための食品表示法を求めて、運動を強めていく必要があります。
   また、食品事故や表示偽装、誇大広告などの問題が相次ぐ中、平和フォーラムも参加する「食の安全・監視市民委員会」では、市民の中から様々な情報や通報などを収集して、問題点を整理して政府や企業に申し入れるための「食の安全・市民ホットライン」を運営してきました。(2012年10月13日シンポジウム・明治大学)。今後も、とりくみの周知を図り、多くの情報を収集して申し入れなどを進める必要があります。
   さらに今後、環太平洋経済連携協定(TPP)問題とも絡み、食品の安全規制も大きな課題となり、アメリカは食品添加物・ポストハーベスト農薬規制の緩和などを求めてくることが予想されます。こうした問題に対して、消費者・市民の立場に立った食の安全確保を求めていく必要があります。

(2)   照射食品など新規食品技術に対するとりくみ

   食品に放射線を照射して殺菌や殺虫、発芽防止などを行う照射食品問題は、政府の原子力推進行政と一体となって、原子力の商業利用拡大のために原子力委員会が強引に進めようとしてきました。これに反対して、平和フォーラムなどは「照射食品反対連絡会」をつくり、政府や各党への働きかけを進めてきました。その結果、厚生労働省は食品への適用を認めない方針を維持してきました。
   しかし、牛肉の生レバーの食用禁止に伴い、生レバーの殺菌に放射線照射を求める動きがあり、食品安全委員会でも研究を進めようとしています。一方、米陸軍が行った実験で、放射線を照射した牛肉やベーコンから自然界にある放射線の2~3倍の放射線(誘導放射能)が出るという研究もあります。
   平和フォーラムも参加する「照射食品反対連絡会」は集会を開催し(2012年12月6日・参院)、こうした問題に対して食品安全委員会や厚生労働省との交渉などを進めてきました。さらに、現在許可されている北海道・士幌町農協から出荷される「照射ジャガイモ」の緊急出荷停止措置を求めてきました。引き続き、関係団体や食品関連業界などに対する働きかけを強めていく必要があります。
   また、TPPとの関連も指摘される中で、牛海綿状脳症(BSE)の発生を受けたアメリカ産牛肉の輸入月齢制限について、アメリカは撤廃を強く求めてきました。食品安全委員会は昨年10月に、BSE対策の国内措置・貿易措置を緩和して、30ヵ月齢以下の牛肉の輸入を認める答申を行いました。これを受け、厚生労働省は今年2月1日からの国内措置、貿易措置の緩和を決めました。
   しかし、アメリカのBSE対策は安心安全を担保できるものではなく、これはTPP参加の条件をつくる政治的意図を持っているのではないかと言われています。平和フォーラムが参加する「食の安全・監視市民委員会」は、集会を開催(2012年11月7日・参院)したほか、食品安全委員会や厚生労働省に対する申し入れなどを行ってきました。今後も引き続き、アメリカ産牛肉輸入の監視強化などを求めていく必要があります。また、国内産牛肉の検査への助成金制度継続や、外食などでの原料原産地表示の義務化などを求めていくことも必要です。
   遺伝子組み換え(GM)食品の表示問題では、現在、表示義務がない食用油や醤油も含めて、GM食品の全面的表示を求める消費者団体の活動に協力してきました。引き続き、表示の改善や国内でのGM農作物の商業的作付けに反対するとりくみを進める必要があります。また、TPP交渉に関連して、アメリカは各国に遺伝子組み換え食品の輸入促進や表示の撤廃などを求めてくることが予想されることから、これに反対する運動が重要になってきます。

(3)   食農教育の推進のとりくみ

   自給率の低下とともに、食のグローバル化が進み、輸入農産物を多用した外食や加工食品が急増してきました。その結果、世界有数の長寿国を形成してきた日本人の食生活が急速に変化し、それによると見られる生活習慣病やガン、アレルギーが急増するなどの弊害が様々に指摘されるなか、学校や地域での子どもたちを中心とした「食農教育」が推進されてきました。
   食とみどり、水を守る全国集会(2012年11月30日~12月1日・大阪市)などで討議するとともに、各地域での支援米作付け運動などを通じた地域・子どもたちへの働きかけなどが進められてきました。今後も、食の背景にある農業まで含めた教育とともに、「食育推進基本計画」に基づき、学校給食に地場農産物や米を使う運動の拡大、栄養職員の教諭化の拡大などが必要です。
   また、子どもだけでなく、地域全体での地産地消運動など、食べ方を変えていく具体的な実践が求められています。そのためには、自治体での食の安全条例制定や有機農業の推進などの施策を求める運動もますます重要となっています。

《2013年度運動方針》

  1. 食品偽装や輸入食品の安全性などに対する対策の徹底、表示の改善を求めていきます。とくに表示制度の一元化、原料・原産地表示の徹底・拡大など、「新食品表示法」の制定に対して、消費者のための法制度を求めて要請や集会などをおこなっていきます。
  2. TPP交渉にともなう、添加物・ポストハーベスト農薬規制の緩和、アメリカ産牛肉の輸入制限の撤廃、遺伝子組み換え食品の輸入促進などの動きに反対して、消費者団体などと運動を進めます。
  3. 照射食品を認めない運動をすすめます。そのため、政府への要請とともに、食品関連業界や消費者へのアピール活動などをすすめます。
  4. アメリカ産の牛肉輸入の監視の徹底や、国内でのBSEの全頭検査の継続などを政府・自治体に要請します。さらに、牛肉およびそのすべての加工品の販売、外食、中食において、原料・原産地表示を義務化することを求めていきます。
  5. 遺伝子組み換え食品については、国内における商業的作付けはしないことを求めるとともに、表示制度の改善を要求していきます。
  6. 健康食品についても、悪質な違法広告に対する規制を求めていきます。
  7. 各地域で食品安全条例や食育(食農教育)推進のための条例づくりなどの具体的施策を求める運動をすすめます。また、学校給食の自校調理方式、栄養教諭制度の推進を求め、学校給食に地場の農産物や米を使う運動や、地域の食材の見直し、地域内の安全な生産物を消費する地産地消運動などをすすめます。

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