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2015年09月01日

「ジコチュー」な政治

中学校用教科書採択の結果の公表が進んでいる。前回、育鵬社版の教科書を採択した横浜市は、教育委員会では3対3に割れたが、教育長の判断で歴史・公民とも育鵬社版に決定した。大阪市も歴史・公民とも育鵬社版に決定した。8月17日時点で、全国で特別支援学校を除いて406校(うち大阪市128校、横浜市149校)で育鵬社版教科書が使用される。

育鵬社の教科書を使うことは、どう考えても「政治的」と言える。安倍晋三首相に近い議員で構成する「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、「より良い教科書を子どもたちに届けるために」というパンフレットを作成、「国旗・国歌」「領土」「自衛隊」「拉致問題」「南京事件」「慰安婦」などの記述を比較し、育鵬社の教科書を暗に推奨している。このパンフを持って地方議会での圧力を強める狙いなのだろう。

一方、来夏の参議院選挙から選挙権が18歳以上に拡大されることから、自民党は「主権者教育に関する提言」の中で、教員の政治的中立の強化と政治的行為の制限違反に罰則を科す法改正を求めている。提言はまた「高校生の政治的活動は学校内外において基本的に抑制的であるべきだ」と主張している。子どもたちに政治への関心を求めることは主権者教育の基本ではないのか。自民党は、教員を法律で脅し、自分たちに都合の良い政治的に無関心な子どもたちをつくろうとしている。国連の「子どもの権利条約」でも保障される自己決定権も否定する内容だ。

自らは、教科書採択などに政治的介入を行い、一方で教育現場への徹底した政治的中立を求める自民党の姿勢は、あまりにも「自己中心的」だ。安保関連法案に反対する学生に対して、「『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく」と言った武藤貴也自民党衆議院議員は、詐欺疑惑で離党した。若手の勉強会では、沖縄の新聞を「懲らしめる」との発言があったと問題になった。自民党議員の相次ぐ問題発言には、安倍首相の政治姿勢を反映して「気に入らない意見は排除する」とする傲慢な発想が見える。そのことが、教育をゆがめ、ひいては日本政治の劣化をもたらしていく。

(藤本泰成)

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