2008年、ニュースペーパー

2008年09月01日

ニュースペーパー2008年9月号

【インタビュー・シリーズ その26】
持続可能な共生社会の水政策を求めています
全日本水道労働組合書記長 久保田 和尊さんに聞く

 

インタビューに答える久保田さん 【プロフィール】
1951年横浜市生まれ。75年、横浜市水道局に入局。92年から横浜水道労組の執行委員などを歴任。2002年から全水道本部中央執行委員、06年に同書記長就任。若い頃から麻雀を好んできたが、最近は一緒にやる人が少なくなり、「絶滅危惧ゲームと言われている」と嘆いている。

──久保田さんが労働運動にはいるきっかけは。
 大学卒業後、生まれ育った横浜市の市役所に入り、配属されたのが水道局でした。全職場に組織されている斑長(分会長)になったのが労働組合の最初の関わりでした。財政計画の策定を担当する部署で悩みもしましたが、組合のあり方について先輩などと議論したり、職場の合理化に反対する運動をやっているうちに、はまったという感じですね(笑)。

──特に思い出に残っている運動や先輩はいますか。
 横浜市の水源地に山梨県の道志村があります。バブル期の1990年頃、そこにゴルフ場を作る計画が持ち上がり、「水源地を守れ!」と反対運動をやりました。運動の責任者はゴルフがとても上手な副委員長でしたが、それを機にゴルフをきっぱり止めました。その姿勢は立派だと思います。ゴルフ場計画はつぶれましたが、それを機会に、水源地の意味や上流と下流の関係を問い直し、事業のなかに水源林の役割を再確立することができました。
 私はストライキを通学や学校など生活の中で実感した世代です。組合に入ったばかりの1975年に「スト権スト」がありました。個別の利害だけでなく、労働者全体の権利確立の闘いの中にいると実感したことを覚えています。いま、貧困や格差が社会問題になっていますが、労働組合は社会的な問題にもっと積極的に関わるべきだと思います。

──全水道の取り組み課題を見ると、「公共財としての水を守る」ことを掲げています。
 人間にとって水は1日も欠かすことが出来ないものです。世界では、安全な水を得ることができない人が5人に1人以上います。国連は2015年までにそうした人々を半減させるという目標を掲げています。一方、フランスなどの国際水資本はアジアやアフリカの国や地域に水道や下水道を普及させるとして、国際機関を利用して進出してきました。命の水は公共財です。安全な水の供給という基本的人権を保障するのか、ビジネスチャンスとするのか、瀬戸際なのです。

──水の民営化はどんな問題を起こしていますか。
 
水は潤沢にあるように思われますが、人間が使える量は限りがあり、偏在しています。最近は温暖化でますます偏在化が激しくなっています。また、都市化・工業化が進むと、ますます水が必要になります。中国などでは農業用水と都市での水の奪い合いが深刻化しています。世界銀行の総裁は、「20世紀は石油が原因で紛争が起きたが、21世紀は水が原因で紛争が起こる」と言っています。水の支配と管理が重要な国家戦略となっています。
 企業の行動原理は利潤の追求と株主への還元です。参入の自由は撤退の自由をも保障しなければなりません。ここに水道事業の民営化・私企業化の問題の本質があります。水の商品化は、安全な水を持続的に入手できるという基本的人権と根本のところで衝突します。
 水道が民営化されると、料金が上がって貧しい人が利用できなくなります。利益は企業が奪い、再投資されません。マニラのように採算が合わないと撤退した例もあります。また住民の抵抗で撤退した例も多く、世界的には民営化は決してうまくいっていません。「本国」のパリでも民営化されていた水道が2010年までに公共の手に戻ることとなりました。

──日本では水道の民営化などの問題はありますか。


連合などが主催した水問題シンポジウム(07年12月・別府市)

 日本では、コスト削減を理由に業務の民間委託の拡大が進められています。また、指定管理者制度を水道事業に適用する動きがありますが、これは実質的な民営化を意味します。自民党や政府は水を国家戦略の中に位置づけ、他国の水資本に遅れるなとばかりに護送船団的に海外進出を進めようとしています。これは同時に国内の水の市場化をもたらします。
 業務委託は大切な技術の伝承を奪います。価格競争で受託する民間業者にも技術力は育ちません。水道の技術を習得するには10年はかかると言われ、地道な努力が必要なのに、それが壊れつつあります。いま大きな問題となっているのが東京都の経営形態問題です。今年の春闘ではこの問題でストライキもやりました。2003年に佐賀市では指定管理者制度が導入されそうになり、市民とともに水問題を考える集会を開いて撤回させました。
 全水道は「持続可能な共生社会の水政策の指針」として「水は共有財産であり、地域を水共同域として水環境の広域的な管理を確立する」との理念で水基本法の制定運動を進めています。

──全水道は、平和運動についても熱心な活動をしていますね。
 
賃金や労働条件と同じように、安心できる生活を営むためには、平和が無くてはなりません。特別なことではなく、日常的な活動の中で、平和問題を捉えていこうということです。そうしたことから、全水道の各地の組合では、それぞれ、地域の基地問題や原発反対などにも、組合として当然のこととして取り組んでいます。「反戦・平和運動は、肌身の感覚」になっていると思います。7月19日の横須賀の原子力空母母港化反対集会でも、全国から参加すべきだという声が高まって、全国動員で参加しました。

──これから平和フォーラムも、さらにがんばっていかなければならないと思っていますが、平和フォーラムに期待することはどんなことですか。
 
平和・人権・環境は、人間が生きていく上で欠くことができません。だからこそ、新自由主義など支配の側からの攻撃が強まってくるだろうと思います。状況は厳しいけれども、メッセージをきちんと発していかなければなりません。特に、憲法9条改憲は間違いであることは、はっきり言うべきです。今度の衆議院選挙後の政権がどうなるのか、様々な動きが出てくるだろうと思いますが、根本を間違えずに、多数派形成をめざして大胆に打ち出していくべきだと思います。平和フォーラムの役割はますます大きくなっています。

──連合も来年、結成20周年を迎えますが、連合運動についてはどうですか。
 
「ストップ!ザ・格差社会キャンペーン」など、社会的な問題を連合が取り上げていくことは大切だと思います。正社員だけでなく、非正規の人も含めて、ナショナルセンターとしての役割を果たすべきです。社会連帯のための活動費の拠出も問われてきます。全水道も水政策や公務・公共サービスの充実に向けてがんばるつもりです。格差社会でダメージを負っている人がいるのですから、そうした人にも信頼されるように、運動の範囲を広げるべきです。

──全水道は、自治労や都市交との組織統一という課題もあります。
 
2010年秋に、3単産の統一をめざすことにしています。全水道はかねてより、水関連労働者の統一組織を作ることが目標でした。自治労に組織されている水関連労働者と一体となった組織(部門)を作り運動を進めることが大切だと思っています。地域での公務・公共サービスを担う組織体として運動を進め、労働者の権利や労働条件を確立していくことが必要です。多くの部門の運動で新しい組織全体が活性化すると思います。3つの産別の単なる連合体ではなく、新しい組織体を作り出していこうとしています。

〈インタビュ─を終えて〉
 全水道は、「ごりっ」とした組合。パレードではなく、デモです。いつも組織された労働者の力強さを見せてくれます。「平和について」、「非正規労働者の組織化と権利確立について」など労組の社会的役割を語るたびに力が入ります。時代が流動化し、労働組合の役割が見えにくくなっている今、掲げるべき旗指物を明確にする必要があります。久保田さんの奮闘に期待が集まります。
(福山真劫) 

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被爆63周年原水禁世界大会を開催
核兵器廃絶、脱原発、ヒバクシャの援護・連帯へ

 広島・長崎を一瞬の惨状と化した原爆投下から63年目の今年、原水爆禁止世界大会は、8月2日から9日にかけて、横須賀・広島・長崎の3都市で開催されました。今年も核兵器廃絶、脱原発、ヒバクシャの援護・連帯の3つの柱を中心に、学習・報告・討論・フィールドワークなどが展開されました。

国際会議で原子力空母母港化反対の緊急決議


熱心な議論があった分科会(8月5日・広島市)

 米原子力空母ジョージ・ワシントンの母港化が予定されている横須賀で、「東北アジアの非核化をめざして─転機にあるアジアの核と平和」と題し横須賀母港化阻止の世論喚起も含めて国際会議を開催しました。会議の当日、米原子力潜水艦ヒューストンが、横須賀や佐世保、沖縄寄港時に放射能漏れを起こしていたことが報道で明らかになりました。これまで原子力艦船での事故はなく、安全であるとたびたび米軍当局は繰り返し、日本政府もそれを追認してきましたが、今年6月のジョージ・ワシントンの火災に引き続く事故報告であり、安全神話そのものが虚構であることがあらためて明らかになりました。
 国際会議では、原子力艦船の安全性に関する発言も相次ぎ、原子力空母の横須賀母港化により、原子炉事故の危険性の拡大とともに基地機能の強化と東北アジアや世界の平和と安定を脅かす存在となることが指摘されました。会議では、原子力潜水艦の放射能漏れ事故と原子力空母の横須賀母港化に対する緊急決議を採択しました。(国際会議の内容は5ページ参照)

運動と結びついた課題を討議


長崎爆心地公園に展示された核廃絶の壁(木のブロック)

 8月4日から9日まで広島大会と長崎大会が開催されました。開会式にあたる原水禁・連合・核禁会議の3団体による「核兵器廃絶2008平和ヒロシマ大会」(4日)には6400人、「同ナガサキ大会」(7日)には4200人が参加しました。
 今年は、分科会やひろばなどを例年よりも増やし、テーマも現在直面している課題に重点を置きました。核軍縮・平和課題では、米軍再編成、原子力空母の横須賀母港化、東北アジア非核地帯化、米印原子力協定などの課題を取り上げ、議論しました。
 ヒバクシャ課題では、広島・長崎の原爆被害によってもたらされた被爆の実相を伝えるとともに、原爆症認定訴訟、在外被爆者、被爆二世・三世問題、被爆体験の継承などの残された課題の解決にむけた報告や討論が行われました。さらに、国際ゲストから旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の現状、フランスの核実験によるアルジェリアの実情など、世界に広がる核被害の実相が報告されました。
 脱原発の課題では、特にプルトニウム利用政策転換に向けて、再処理・もんじゅ・プルサーマルの問題点や、昨年7月の新潟県中越沖地震に象徴される原発と地震の問題、地球温暖化防止の切り札とされている原発推進の虚構性を明らかにしました。さらに「メッセージfromヒロシマ」や「ピース・ブリッジ2008」などの子どもや若者の取り組みも、韓国・フィリピンの仲間とともに行われました。
 今後、9月25日とも言われている原子力空母の横須賀母港化や、来年2月以降に再稼動が目論まれている福井県敦賀市の「もんじゅ」、11月以降の青森県六ヶ所再処理工場の本格稼動など、大会で提起された課題が目前に控えています。それへの対応に向けた取り組みが、大会以降の大きな課題となっています。

◎原水禁世界大会記録集9月下旬発行予定 予価:1,500円

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原水禁世界大会の国際会議
米軍再編の中心、横須賀で開催

原子力空母の母港化反対と東北アジアの非核化
 
8月2日、神奈川県横須賀市で被爆63周年原水禁世界大会の国際会議が、「東北アジアの非核化をめざして─転機にあるアジアの核と平和」を主要議題として開催されました。
 横須賀市では7月19日に全国から1万5千人を集めて、米軍再編に基づく原子力空母「ジョージ・ワシントン」母港化反対集会が開催されたばかりで、1)日本における米軍再編反対の運動を国際的にも広げること。2)6ヵ国協議で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核計画書を中国に提出したことを受け、米・ブッシュ大統領が「テロ支援国家」指定解除を議会に通告し、状況が大きく動こうとしているなかで、東北アジア非核地帯化をどう進めるか。3)2010年の核不拡散条約(NPT)再検討会議を前に、核兵器廃絶への国際的な運動の構築をどう図るかをテーマとして、原水禁世界大会の最初の会議として熱い討論が交わされました。
 冒頭に大会事務局長の福山真劫さんがキーノート・スピーチで基本的な考えをのべたあと、米・ピースアクションのウィスコンシン州プログラムディレクターを務めるジョージ・マーティンさん、韓国・参与連帯の平和軍縮センター運営委員のソー・ボヒョクさん、中国・平和軍縮協会アジア太平洋局長である文徳盛さん、日本からピース・デポ特別顧問の梅林宏道さん、非核市民宣言運動ヨコスカの新倉裕史さんがそれぞれ問題提起を行いました。コーディネーターには日本キリスト教協議会平和・核問題委員会委員長の小笠原公子さん、ピース・デポ事務局長の中村桂子さんの二人があたりました。

状況変化に対応した国際運動と連帯強化を


100人が参加した国際会議(8月2日・横須賀市)

 米国のジョージ・マーティンさんは、米原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀母港化に反対する運動が日本で起こっていることを、国際会議に参加して初めて知ったと語り、日本の運動に強い共感と連帯を示しました。マーティンさんはピースアクションを代表するとともに、9・11同時多発テロ以降結成された「平和と正義のための連合」(UFPJ=1400以上の団体が参加)の共同代表として、2004年にイラクの実情調査に参加していて、米国のイラク侵略戦争に強く反対しています。ピースアクションとしても米国の軍事予算拡大に反対し、核兵器関連予算の削減を実現してきました。また米国では平和市長会に110をこえる市長が名を連ねており、2020年までに核兵器を廃絶しようという「2020ビジョン」実現のために、広島・長崎の両市や原水禁と運動を進めていこうと訴えました。
 韓国のソー・ボヒョクさんも横須賀の原子力空母母港化反対の運動に強い連帯を示すとともに、6ヵ国協議が大きく前進していることを評価しました。これは6ヵ国協議が相互に約束事を履行する同時行動の原則を遵守し、粘り強く対話を続けてきた結果であり、ブッシュ政権の任期満了前に北朝鮮の「テロ支援国家指定」解除が実現し、核廃棄段階へ進むのであれば、米朝関係は質的に変化するだろう。しかし、朝鮮半島の非核化進行にともなって、朝鮮半島での制度変革に関する政治的協議が行われることになっており、この際に韓国政府が新しい状況に対応できず、孤立する恐れがあるとも語りました。
 中国・平和軍縮協会代表の文徳盛さんは昨年の国際会議に続いての参加で、横須賀の米原子力空母母港化反対の闘いは中国・新華社通信で大きく報道されていると話しました。また6ヵ国協議の進展によって、平和・共生の東北アジアが生まれようとしており、中国・平和軍縮協会は原水禁と連帯して運動を進めたいと訴えました。
 ピース・デポの梅林宏道さんは、6ヵ国協議は検証問題で行き詰まっており、今後の展開はまだ予断を許さず、新しい状況を切り開いていくためにも東北アジア非核地帯化の運動を広げていきたいと語りました。
 また横須賀市で運動を進めている新倉裕史さんは、アフガニスタンやイラク侵略戦争のためにまず横須賀米軍基地から軍艦が出航していることなど、横須賀基地が米軍のなかで重要な位置を占めている実態を述べ、原子力空母の母港化に反対し続け、また横須賀から米軍基地を撤去させることが、世界の平和につながる、と訴えました。

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【集中連載】STOP!原子力空母の横須賀母港化(4)
米原子力空母の火災事故、潜水艦の放射漏れ相次ぐ
9月のジョージ・ワシントンの横須賀配備を阻止しよう 

何が何でも原子力空母の母港化めざす政府・自治体
 
米海軍は7月31日、5月22日に起きたアメリカの原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の火災原因は、禁煙区域で吸ったたばこの火が、不適切に置かれた潤滑油に引火したことによると発表しました。GWは神奈川県横須賀の母港化をめざしていました。この発表に対して、外務省の西宮伸一北米局長は、「火災と原子炉は関係ない。原子力艦の安全を改めて確信した」と発言。蒲谷亮一横須賀市長は、「火災は事前に防げたはずで言い訳できない。安全対策の徹底を求める」としつつ、「火災防止は米軍にはいつも言っている。改めて徹底を申し入れることはない」と発言しました。
 今回の火災で原子炉に影響はなかったとしても、火災がもっと広がったらどうなったのでしょうか。北米局長の発言は、何の根拠もない無責任な発言といえます。また、横須賀市長の発言も、市民感情を逆撫でするものです。これらの行政の責任者の発言は、「何が何でもGWの横須賀母港化ありき」の表れと言えます。

放射能漏れを放置した管理体制の不備


放射能漏れをおこしたヒューストン(米海軍HPより)

 この発言の翌日の8月2日、アメリカの原子力潜水艦ヒューストンが放射能漏れを起こしていたとの報道がありました。2年1ヵ月間にわたって微量とはいうものの放射能漏れに気づかず放置し、その間、佐世保、横須賀、沖縄・ホワイトビーチの3港に寄港していたというものです。米国側は「きわめて微量で人体に影響を与えるものではない」としています。しかし、このことは、米国側、日本の外務省などがこれまで言ってきた「原子炉の事故は一度も起きていない。放射性物質の異常値が観測されたことは一度もない。十分に訓練を受けた高い能力を有する乗務員の不測の事態に対する迅速な対応がある」ということが、信じるに足るものではないことを証明しています。
 放射性物質については、2006年に横須賀港停泊中の原子力潜水艦「ホノルル」周辺から検出されましたが、このときは「ホノルル」由来とは言い切れないとの主張で片付けられています。しかし、今回の事故によってその主張が信ぴょう性のないものであることが明らかになりました。また、GWの火災事故では、乗務員のモラルの低さを露呈しました。放射能漏れを2年間も気づかず放置した管理体制の不備、自治体への通報が相当期間を有した問題など、どれをとっても市民の不安を増すものでしかありません。
 一方、この事故に対して、長崎県知事や神奈川県知事は、今後のヒューストンの入港については放射能漏れの原因が明確になるまで認めないとしましたが、外務省など政府機関は「日本側のモニタリングの結果では、異常値は測定されず人体に影響を与える量が漏れていたとは考えていない」としています。政府はこれまで事故は起こりえないとしてきました。そして、事故が起きた後は人体に影響がないと主張しています。日本政府はどこを見て政治を行っているのでしょうか。

集会や座り込み、宣伝活動などを展開
 
GWは当初予定の8月19日の入港予定から、9月25日に延期されました。入港阻止のため、9月20日から24日にかけて、平和フォーラムと神奈川県平和運動センターは集会や座り込み、宣伝活動などを展開します。
 去る7月19日には、炎天下の横須賀ヴェルニー公園に、1万5千人を超える人々が集まりました。「原子力空母ジョージ・ワシントンの横須賀母港化を許せない」その一つの思いで全都道府県、神奈川県内、横須賀市内から集まった人々の、デモ行進から湧き上がる声は、3時間にわたって横須賀市の中心街に響き渡りました。
 東北アジアの平和を揺るがし、横須賀を中心に広く首都圏住民の安全を脅かすGWの横須賀母港化を決して許すわけにはいきません。日米政府の意図を打ち破り、平和なアジア・世界の建設のために、粘り強く闘い抜きましょう。

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日朝国交正常化に向け市民の平和国家構想を
各国の市民による活動と対話が重要に
立教大学准教授 石坂 浩一 

憲法9条を活かす運動の構築を
 
7月16日、参与連帯など韓国の市民団体が主催する「再考 憲法と平和国家作り」という国際シンポジウム(於・ソウル)に出席しました。朝鮮半島の解放後、南北に別々の政権ができてから60周年、韓国の憲法は何度か手直しされ、現在は1987年に民主化要求の中で作られた憲法が効力を持っています。その第5条第1項は、「大韓民国は国際平和の維持のために努力し、侵略的戦争を否認する」としていますが、同時に第2項では「国軍は国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とする」と定められています。国家としては軍隊を「神聖な義務」の遂行者と位置づけているのです。
 しかし、その軍隊を持つ国家を、市民の力によって、より平和的な方向に向かわせるための方向性について議論しようとしたのが、「平和国家作り」というタイトルの意図だと私は理解しています。日本も、憲法第9条の価値を再認識する動きが感じられますが、その一方で、戦後の日本は米軍のカサに守られ、自衛隊を抱えて歩み続けてきた現実は重いものがあります。解釈改憲が重ねられ自衛隊の海外派兵がなされる今日、日本に暮らす人びと一人ひとりが憲法第9条の価値を感じ、それをもっと活かそうとする運動を構築していくには、どうすればいいのでしょうか。

東北アジアの平和の枠組みを担おう


日朝国交正常化を求める集会(7月24日・総評会館)

 私は、憲法を守るということを、もっと現実の日朝関係の改善、朝鮮半島の平和構築に生かしていけないだろうかと考えます。「戦争を放棄」するということは、単にじっとしていることではなく、対話と説得を通じて問題を解決するということであろうし、それは現実には外交を通じてということになります。
 これまで、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対して日本の保守層は、「信用できない、付き合うと危険」とし、はたまた打倒すべき相手としか考えてきませんでした。「政権打倒」を露骨にいうわけにはいかないので、「毅然として」などという修飾語をつけてきましたが、北朝鮮は「敵」であり、のんきに戦争の放棄を語ってはいられないと人びとに不安を駆り立て、治安管理を強化する口実とされてきたのでした。
 しかし、朝鮮半島の非核化が進展し、東北アジアの平和の枠組みの一端を日本も担うしかないという局面がはっきりしつつある今日、私たちは平和憲法をもってその枠組みに参加するのだと確認せざるをえません。日朝国交正常化を外交の力をもってなしとげる道筋に、非核化や拉致問題の解決、歴史的責任の清算を位置づけてこそ、日本を平和の名にふさわしい国家に近づけることができるでしょう。

韓国の市民団体ともっと議論を
 
そのために必要なのは、各国の市民による活発な活動と対話に他なりません。たとえば、北朝鮮における人権問題は重要ではありますが、市民としてどのようなアプローチが可能なのか糸口が見つからず、私たちも手をつかねてきたのが現実です。そのため、北朝鮮を圧迫する勢力に充分な対案を提起できませんでした。朝鮮半島の平和定着のプロセスを推進する中で、戦略的に北朝鮮の市民社会形成を促すことができるような展望を、私たちは韓国の市民団体と議論すべきところに来ているのではないかと思います。
 また、市民の平和国家構想は、竹島問題のような厄介な問題に冷静に対処し、着実に市民としての理解に努め、共有すべき価値を広げていく面でも、有効であると考えます。日本政府は、「日本人ならばこうあるべきだ」と求めるでしょうが、日本政府こそが冷戦後の東北アジアの変化の中で政策を変えてきているのではないでしょうか。日朝国交正常化推進に説得力を持たせるためにも、憲法の精神を生かす市民の平和構想を考えていきましょう。

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Peace Day Tokyo 2008
武力で平和はつくれない
ともに生きられる世界へ 

■日時:2008年9月20日(土)12:00~15:00
 パレード出発15:30/ブース出店時間11:00~15:30

■場所:芝公園4号地(JR「浜松町」徒歩12分、地下鉄三田線「御成門」徒歩2分、地下鉄大江戸線「赤羽橋」徒歩2分)

戦争は最大の環境破壊、人権侵害/自衛隊 もどそうイラクから 行かせないアフガンへ/世界の人々が平和に生きるつながりを

  • スピーチ……イラク戦争、アフガン戦争、原子力空母問題、貧困問題、リレートーク
  • 民族音楽(アイヌ、沖縄、韓国、フィリピン、ビルマ)
  • 出店ブース……いろいろなテーマで活動している団体が出店します。
  • ピースパレード

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