2009年、ニュースペーパー

2009年01月01日

ニュースペーパー2009年1月号

【インタビュー・シリーズ その30】
インタビューシリーズ 衆議院総選挙で政権交代を勝ちとろう
座談会 民主党・社民党の衆議院議員に聞く

本日は、民主党・衆議院議員の平岡秀夫さんと川内博史さん、社民党・衆議院議員の阿部知子さんと日森文尋さんに集まっていただきました。4人のみなさんから09年の日本の政治についてお話をうかがいます。
司会=福山真劫(平和フォーラム事務局長)

国民の信を得ていない麻生内閣──平岡
――最初に、麻生政権をどう見るか聞かせてください。

川内博史(民主党・衆議院議員)
 今世界中が金融危機。経済的な危機の中、どういう政策運営をしていくか本当に問われますが、麻生自公政権が存続することこそが「みぞうゆう」(笑)の危機であると思います。どういう国にしていきたいのかビジョンそのものがまったくない中で、ただ霞ヶ関の官僚政治、官僚のうえに乗っかって、あるいは他党・公明党に言われた政策をそのまま思いつきのように発表し、中身を詰めていないから、もう今の時点でぼろぼろにされる。結局2次補正も出せないという状況ですから。麻生政権そのものに、本当に一刻も早く交代してもらわなければならないと思います。

日森文尋(社民党・衆議院議員)
 日本経済は全治3年だと言ったけれど、全治した後どういう社会になるのかというビジョンを、麻生首相は示さない。そんな中で色々ものを言っても国民は支持することも出来ないわけで、支持率が低下することも当然だと思う。
 基本的には、ブッシュ米大統領の新自由主義的な構造改革路線路を、無原則に「踏襲」してきた結果が今の状況。しかしその反省が全然ない。構造改革のまずいところはちょっと直しましょうというぐらいの話です。日本経済、日本の社会全体を大転換しないと、経済の持続可能性もなく、国民生活の改善も出来ない。構造改革路線から決別することが求められていますが、自公政権では出来ない。だから、政治を大胆に変えていくために、政権交代が必要となってくる。
 大事なことは、小泉純一郎元首相が壊してしまった社会保障制度を再構築することだと思います。安定した雇用、実質賃金の引き上げ、待遇の引き上げで可処分所得を増やしていくことなどで内需を拡大する。それをめざした新しい政権が必要です。

阿部知子(社民党・衆議院議員)
 麻生政権は限界政権ですね。政権としての体をなしていない、機能していない。そしてそれが1日長引けば長引くほど、逆に国民にとってはフラストレーションの元です。子どもが無保険で医療保険がなくなったり、妊婦さんがたらい回しにされたり、後期高齢者は平成姥捨山に行けと言われたり、どう考えても生活者の視点なんてこれっぽっちもありゃしない。そういう政権が、実は選挙のための看板として誕生したに過ぎないから、任命されている各大臣も本気でやる気があるのかどうか。
 麻生首相は何がやりたいのか。少なくとも外交・経済政策で、あるいは社会保障で何をやりたいのか明確に言ったらいいのでは。麻生さんは、小沢一郎民主党代表には喧嘩ふっかける。あんたどうするのですかって。意識において与野党逆転しているのですね。だから国民をこれ以上疲弊させない、気持ちをなえさせないためには、1日も早い解散総選挙しかないのです。

平岡秀夫(民主党・衆議院議員)

 自民党政権としては小泉首相以降、安倍首相、福田首相、麻生首相と、国民の信を総選挙という形で得ていない内閣が誕生している。その内閣がそれぞれ政策の一貫性がない。まるで日替わりメニューのように自分たちの政策をコロコロ変えていて、この国をどう導いていくのかという、自民党・与党としての一貫性がない。もともと麻生さんは福田さんが辞めた時、選挙をやるための内閣として登場しました。私たちも短期的なものかと思っていましたが、ここまで解散をせずにずるずるひっぱっていくということになれば、国民生活に大きな影響を与えてきます。早く解散・総選挙をすべきだと思います。

 私は今年4月の補欠選挙で当選しました。その補選での自民党の選挙戦略というのは、常に利益誘導型選挙です。地元にこういう利益を持ってくるから、この候補者に投票すべしと。それと同じようなことが、総選挙の際には全国的に行われるでしょう。有権者の皆様方はそういうことに目を奪われないで、日本の行き先というものを一体どっちに託すことが出来るのだということで、しっかり判断してもらいたいと思います。

命の危機にさらされている人が増加──川内
──日本社会の現状について、野党の側からの提言をお願いしたいと思います。

 川内 格差社会、格差の拡大というのは非常に短い言葉だけれども、格差にはさまざまな態様があるし、本当にひどい状況が進行しつつあります。私の選挙区である鹿児島県三島村の硫黄島に住んでいる93歳のおばあちゃんがいます。若い頃は子育てに忙しくて、年金保険料を納めなかった。今は月3万円しか年金をもらっていない。そのおばあちゃんが私に語った言葉というのが、月3万円の年金では生きるに生きられない、死ぬに死ねない。私はそういう人生だと。
 ところが、もっとひどい状況の人たちがいらっしゃる。一人暮らしの高齢者の方々で、お医者さんも看護師さんもヘルパーさんも来ないようなところで、体が動かないし、必然的に寝ていることが多いわけです。不衛生な中で寝ている。人間寝ると口が開きますから、口の中にハエが卵を産んで、口や鼻の穴からうじがわくのですよ。そういう人たちが現実に、ものすごい勢いで増えているのです。あるいは、畳に生えたカビが体に移って、お腹のあたりがカビだらけになったり。
 これを具体的な1つ1つの政策によってどう救っていくのか、手当てをしていくのか、が緊急にすべき課題です。私たちが与党のつもりで次々に政策を発表して、麻生政権の手柄になってしまったとしても、次々にいろんなことをやっていかないと、本当に命そのものの危機にさらされている人たちが増えているのじゃないかなと。そういう実態を選挙区で見ますね。

阿部 長崎県で知人の医師が在宅死を看取っているのですけれども、在宅死というより孤独死です。在宅死というと往診して治療していると思われるけれども、そうではなくて、死んでしまって、警察から通報があって鑑定に行くのです。行ってみると、畳がかびていたり、体にうじがわいていたりします。その数がもう膨大に増えている。
 とにかく全員をこの社会の構成員だと見る哲学ですよね。今この視点がないと、この時代は乗り切れないように思います。というのも、ここからぼろぼろこぼれているのが子どもたちだったり、高齢者だったり、あるいはこの国で暮らす在日外国人であったり、障害者だったりするんです。それは少数者だから排除しておこうということ自体が、社会の根幹を揺るがしていると。そういう視野も含めて取り込んでいかないと、一緒にやっていかないと変えられない。

平岡 政治というものがもう一度、お金をどこにどう使うのかしっかり選択肢を示して、国民の意志に基づいた議論をしていかなければいけない。予算・財源をどこにどう使うのが国民の皆さんが望むことなのかというところをよく議論した上で制度設計、この国の社会を設計していかなくてはならないという時期に来ているのではないかと思います。特定財源というのは基本的にはやはり好ましくない。本当に使いたいところにお金を使えない。もう1つは縦割り行政のなかで既得権益化して、大胆な見直しをしようと思ってもできないという状況ですよね。官僚依存型の財政制度から政治主導型、政治は国民と直結していますから、つまり国民主導型の財政制度。そこに持っていくのは、今の時期じゃないかと思いますね。

日米同盟が世界規模に増大する危険──阿部
──平和の課題ということで、それぞれの地元の関係を含めて、今後に向けてのご意見を。

 阿部 横須賀に原子力空母が来ると、安全性の上で問題です。地元議員として嫌ですよ。平和フォーラムの皆さんとご一緒にアメリカに行かせていただいたのがもう2年前になるでしょうか。あの時は、原子力空母の配備には反対、キティホークやジョン・F・ケネディなど通常艦の退役延長で対応しろ、安全の問題もあると言うために行ったわけです。国防総省も国務省も幹部が会ってくれました。でもそこで返ってきた答えに衝撃を受けました。簡単に言えば、これは俺たちが決めることだ。日本の安全や災害にもいいし、速力もあるし能力もあると言う。
 そう言った背景には、アメリカの世界軍事戦略が原子力空母を必要としているという意味であり、日本は拒否できないということだと思うのです。アメリカが、イラク戦争やあるいは北朝鮮問題など各地の問題を抱える中で、日米同盟も世界規模に拡大していくのだという意思の表明です。日本の政治の中にその意識や、受けとめるだけの能力が果たしてあったかどうか。そこに日本の政治が問われているのだと思います。
 政治の過程では、これからの21世紀の国際的な平和戦略を日本がどんなふうに打ち立てていくかという論議がなされていないのです。思考停止です。日米はお友達で、あとをついていくしかないという理論です。ここの政治の空白。その空白を作っているものは、とにかくイラク戦争に支援しなきゃ、アフガンに後方支援しなきゃという形の論議しかないわけです。
 アメリカ議会の安全保障委員会では、何年も同じメンバーで強固に戦略を練り上げているのです。それに比べて日本の国会では、委員会のメンバーも、大臣も頻繁に変わりますから、骨太な論議はない。また、外交や防衛は票にならないと言われて、本腰の論議がない。それで、思考停止というパターンじゃないですか。

平岡 神奈川の厚木から山口県岩国への空母艦載機の移駐問題を取り出してみたら、米軍再編という大きな枠組みの中で本当にその必要性があるのかというのは、ものすごく疑問ですよね。多分、守屋前事務次官が雑誌にも書いていたように、厚木だと住民がたくさんいて負担が大きいから、海がたくさんある岩国に持っていけば国民全体としての負担が小さくなるから、そっちのほうがいいんだと。多分それが正しい説明なのだろうと思うのです。だけど、一切そういう説明はしませんよね。あくまでも米軍再編の中で必要なことなのだと。もうアメリカ・ブッシュのやり方で、地元に押し付けていくやり方ですよ。ごまかしの論理で情報を隠して、由らしむべし知らしむべからずという防衛政策に、根本的に問われなければならない問題があると思っています。
 本当の危機というのはどういうところにあるのかということを、我々は知らされてないのじゃないか。「危機がある、危機がある」といって煽られて、そのたびに、こういうような軍備を配備して、基地をこうしてとなる。では実際、北朝鮮や中国の危機というのは具体的にどんなもので、それに対応するためには何が必要なのかというちゃんとした情報は、市民の皆さんは持っていないと思います。やっぱり日本国民が日本国民の目で耳で、しっかりと確認して取り組んでいかなければなりません。岩国が引き受けるのか厚木が引き受けるのか、沖縄が引き受けるのかといったような議論だけをしていたのでは、それぞれの地域が抱えた問題は解決できないのではないかと思っております。

川内 僕は、米軍が日本の国内に駐留することを所与のように考える政権はもう変えなきゃいけないと思っています。だからこそ私たちが政権をとって、日米安保条約には、一年前に通告すれば米軍に出て行ってくださいねと言えるようにする。そしたら米軍が出て行きますと書いてあるわけですから。この条約に忠実に、米軍というものは果たして本当に必要なのかということを考えていかないといけないと思います。
 この前、僕は鹿児島の小宝島の小学校に行きました。文化祭を見て校庭に出たのですが、超低空で米軍の戦闘機が2機、ものすごい爆音で、高度1万mを飛ぶようなスピードで、150mぐらいの所を飛ぶわけです。それは恐ろしい、この世のものとは思えない光景でした。外務省や防衛省に、どういうことかと聞いたら、「確かに飛行はしていました、しかし超低空ではありません」と答えた。150mの高度を飛ぶことを低空飛行と言わないというのは、この人たちは異常だと思いました。訓練をすると通告されてもいないし、指定もされていないところを勝手に飛ばれているにもかかわらず、米軍を擁護するこの国の官僚というのは一体何なのだと。

自衛隊の文民統制はずたずたに──日森
──田母神論文について、どういう方向でこの問題に決着をつけるべきかをお聞かせ下さい。

 日森 これはもう田母神さん個人の問題ではなくて、自衛隊全体の中で、教育のあり方そのものが非常に問題視されなければいけないと。ちょっと改善しましょうみたいな話になっているけれども、もう少し全貌を明らかにするよう、政治の現場でも追及していかないといけない。お茶を濁していると、かなり危ない話になる。
 文民統制というのは、砂上の楼閣と言われていますけど、本当の意味で、ずたずたになっているのじゃないかと思います。自衛隊は実力部隊ですから、警察なんてものじゃないですからね。実力部隊の内部で何が起こっているのか。それを文民として明らかにし正すべき今の政府与党が、擁護するようなことまである。こんな危うい状況は、徹底して追及していかなければならない。懲戒免職もできないということはとんでもない話です。

平岡 「懲戒処分のための手段の時間が足りなくて、懲戒免職できない。あと残り1ヵ月間ないから定年退職なのだ」という話があったじゃないですか。「定年10ヵ月前に不祥事が発覚して、定年まであと10ヵ月ないから懲戒処分しようとしてもできないと言って、懲戒処分しなかった例は過去10年間でどれくらいあるのか」と質問主意書を出したら、「詳細を明らかにするためには調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である」という答えしか返ってこない。そんな人事管理も出来ていない、そういう組織なのか。この問題について、しっかりと防衛省としての態度をはっきりさせない限りは、うやむやなままにしているだけではダメですよね。防衛省の姿勢も、今ものすごくおかしいと思います。

川内 田母神さんの問題というのは、法的には彼は全く処分されてないわけです。空幕長を更迭したって言うけれど、更迭なんて行政用語でも法律用語でもありません。単なる人事異動だから。それで定年退職になって、退職金をもらって、円満退社していただきましたってことでしょ。これから自衛隊の人たちは、定年間際に言いたい放題を言っていいですよってことですからね。

阿部 自衛隊の江田島の術科学校の集団暴行事件もそうですよね。レイプを起こした浜松の術科学校もそうだけど、教育の本拠地で死亡事件は起こるわ、レイプは起こるわ。あんなとんでもない人も元学校長だったわけでしょ。そうなると、自衛隊の教育全体を見直すのと同時に最もチェックしなきゃいけないのは、人権教育ですよ。イデオロギーの問題以上に、人間の存在、人権、侵してはならない存在があるっていうことを自衛隊員に徹底してくれないと、私たちは武器を持った実力部隊の前に虫けらになってしまいます。反抗する悪い奴らはテロリストとか何とか言われて。
 もう一つのフォーカスは、自衛隊員の人権です。人としての存在を守られていない。いろんなことを洗脳されてというか命令され、論文も書かされ。それを書かなきゃ認められないということは、この社会の中で自衛隊員は基本的人権、精神の自由すらないのです。訓練やだなぁ、やめたいなぁと思ったら、集団暴行を受けて倒されて、瀕死なのに運ばれるまで2時間も放置されて。死ぬべくして殺されたのだと思います。
 社民党は、自衛隊を監視するためのオンブズマン組織を創設することを提案しています。例えば「こんな教育おかしかった」とか「俺はいじめられた」とか、横須賀であったエアガンで撃たれた隊員の自殺事件とか、こういう問題の解決につながると思います。

格差の是正、生活の向上へ
──最後に、政権交代に向けて決意をお願いします。
 

日森 今がこの国の腐りきった政治を変えるチャンスということで、国民の暮らしを基礎においた政治の大転換を、野党共同してがんばりたい。

平岡 今いろいろな所からお呼びがかかって、選挙の応援や講演に行ったりしています。そうしたら、今の与党はここまで国民の声を聞かない姿勢なら、一旦やめてもらっていいのじゃないかと。そういう声が全国的に広がっていることをすごく感じました。
 ここで政権交代できる可能性が非常に高いし、それを望んでいる国民の声もたくさんあると思います。ここらでいっぺん違う人の目でこの日本の社会を見直していく、という時期が来ているのじゃないかと、そんな気がしますね。ぜひがんばっていきたいと思っています。

阿部 私は現在社民党の政策審議会長ですから、この総選挙の中で、自民か民主か、二大政党だという選択肢ではなく、私たち野党が連立して政権を作ったときに何を実現できますかということで、やはりある種の連立政権合意的な選択をきちんと出していきたい。
 私は絶対に政権交代は望むし、合意できるところはあると思います。外交政策で多少の違いはあったとしても、なるべく3党、4党でというふうにしていくことが、投げやりじゃない民主主義のためには大事だと思います。政治にいる側は、本当に政治をどうしたいかということを、今出さなきゃいけないなと思います。

川内 次の総選挙は、何が何でも政権交代をしなければならない。そして、格差を是正する、生活を向上させていく、社会のセーフティネットをしっかりと張り巡らすことが大事です。すべての子どもたちが将来に夢や希望をきちっと持つことのできる社会を創っていく。そのための政権交代にしたいと思っています。
 毎日ホテルのバーで葉巻を吸える人たちが楽しく暮らす世の中ではなくて、どんなところに住んでいても、将来こんなふうになりたい、こんなふうにしたいという夢や希望を子どもたちが抱ける社会にする。そのためにも、格差是正が絶対必要だ。政権交代をしなければ、それはなし得ないということを訴えていきたいと思っています。

福山 それでは今日は大変ありがとうございました。

(2008年11月20日収録)

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世界人権宣言60年、平和なくして人権なし
憲法理念の実現をめざす第45回大会(護憲大会)の課題

 例年、11月3日の「憲法公布の日」を前後する3日間、全国持ち回りで開催してきた「憲法理念の実現をめざす大会」(略称・護憲大会)は、時々の課題をテーマにしながら憲法の平和・人権・民主主義の学習と交流の場として回を重ね、昨年の東京・関東大会で44回を数えるにいたりました。
 45回となる本年は、香川県高松市において「世界人権宣言60年、平和なくして人権なし─憲法理念の実現をめざす第45回大会」(略称・第45回護憲大会)を名称に開催します。当初は、11月開催で準備しましたが、福田首相の突然の辞任と自民党筋から新首相誕生直後の解散・総選挙が報じられたため、2009年の1月31日から2月2日までの日程に変更して行います。

世界人権宣言60年と日本国憲法
 本年は、大会名称の通り、世界人権宣言60周年を踏まえています。63年前、日本は、アジア・太平洋地域に対する植民地支配と侵略戦争により世界の人々に多大な加害と、沖縄の地上戦、ヒロシマ・ナガサキの原爆投下など国内にも多数の犠牲者をもたらしました。
 その反省から、1947年5月3日に、平和主義、基本的人権の尊重、主権在民を三大原則とする日本国憲法が誕生しましたが、1948年12月10日に国連で採択された世界人権宣言も2度の世界大戦の経験から、「平和なくして人権なし、人権なくして平和なし」という理念のもとに誕生しました。その意味で歴史的にも日本国憲法と関わりの深いものです。 世界はこの間、国際人権規約の他、人種差別撤廃や女性、子ども、移住者、障害者、死刑廃止など各分野におよぶ30の国際人権条約が積み上げられ、国連人権理事会も発足しました。

日本の平和や人権の状況はどうか?


大会のポスター

 しかし日本では、歴代自民党内閣のもとで憲法理念は実現できず、憲法第9条は空洞化され続けてきました。いまや日本は世界有数の軍事力を持ち、また、米軍基地とあわせて世界最大・最強の基地群が築かれ、自衛隊の海外派兵が日常化しています。
 他方、日本の戦争・戦後責任の課題は、山積したままです。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化は果たされず、近隣諸国との「過去の清算」も未解決です。安倍内閣が強めた明文改憲の動きは停滞させたものの、その後もなし崩し的な解釈改憲、「戦争する国づくり」がすすんでいます。
 人権もないがしろです。日本が結んだ国際人権条約はわずか12。この春の国連人権理事会の26項目もの勧告、秋の国際人権規約委の34項目にわたる総括所見など、日本に対して様々な分野から指摘がなされました。
 日本政府は、パリ原則に基づく国内人権機関設置や女性差別問題、個人通報制度などでは前進を約したものの、日本軍「慰安婦」問題の解決、在日コリアンに対する差別撤廃、移住者・難民の権利保障、死刑廃止や一時執行停止、えん罪事件の温床である代用監獄制度の改善は受け容れていません。しかも、現在、自公政権の新自由主義路線によってセーフティネットは崩され、非正規雇用の増大や後期高齢者医療制度など市民の生活圏に危機が増大し、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法第25条)が侵されています。これに米国発の世界的な金融経済危機が輪をかけています。
 米国のオバマ大統領誕生など世界的な政権交代期のなかで、6ヵ国協議の前進や中東和平の実現などとともに、平和的生存権を明記した画期的なイラク訴訟名古屋高裁判決なども憲法理念の実現に活かすことができます。東アジアの市民との不戦の交流をはじめ平和環境の醸成にとりくみ、とくに国際人権条約の意義を改めて確認しながら、「人権赤字国」と呼ばれて久しい日本の現状を変えるため、人々の「命」や生活を重視する「人間の安全保障」のとりくみを広げていくことが必要です。
 そうした討議と交流を行う「第45回護憲大会」に、多くのみなさんが参加されるよう呼びかけます。

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第40回食とみどり、水を守る全国集会の討議から
「食と農の危機」に立ち向かい、地域からの再生を

 平和フォーラムが農民団体や消費者団体とともに開催している、「食とみどり、水を守る全国集会」は、第40回を迎え、11月27日~28日に青森市で開催しました。今年は特に、世界的な農産物の需給ひっ迫や食料価格の高騰、食の安全への不安、さらに国内農林漁業は、生産資材などのコスト増加と価格の低迷などで、その維持が困難になっていることを踏まえ、「食と農の危機に立ち向かおう」をメーンテーマにしました。
 集会では、食の安全・安定、農林水産業の再生、持続可能な循環型社会への転換をめざし、政府や自治体などへの要求とともに、具体的な対案をもって、地域での取り組みを進めることを確認しました。「食の安全」「食料・農業政策」を中心に課題をまとめました。

農の時代が来ても農家はいない


全都道府県から600人が参加した集会(青森市)

 世界的な食料価格は、最近は下落傾向にあるとはいえ、依然として高い水準が続いています。今後も、中国等の需要増大、バイオ燃料への穀物の需要増大などから、食料需給のひっ迫は続くものとみられています。そうした中で、食料自給率の向上が求められていますが、依然としてその展望は見えません。加えて、燃料や飼料、肥料等の生産コスト上昇の反面、農産物価格は低迷を続け、経営が立ち行かなくなっています。これらは新自由主義による市場経済原理優先政策で引き起こされ、地方の格差拡大が追いうちをかけています。
 農村現場の実態を報告した山形で農業を営む菅野芳秀さんは、「今、日本の農業は危機なんかじゃなく、修復不可能な時代だ。俺たちは絶滅危惧種の朱鷺だ。やがてまた農の時代は来るかもしれないが、そこには農家はいない」と訴えました。
 一方、国際的にみると、WTO(世界貿易機関)やFTA(二国間自由貿易協定)を中心とする自由貿易の推進が謳われています。特に、世界的な金融危機が深刻化するなかで、WTO交渉の早期合意が叫ばれています。これについて、東京大学の鈴木宣弘教授は、WTO体制を押しすすめる米国が自国の農業を手厚く保護する実態を指摘しながら、「投機マネーの暴走など異常な穀物価格の高騰の中で、海外依存率の高い日本が今後も食料の確保が維持できるかどうか」とし、過保護と言われる日本農業が、実は米国やEU諸国と比べて貧弱な政策でしかないことを明らかにしました。
 討論の中では、WTO交渉に対して目先の利益にとらわれることなく、食料自給率の向上など、日本農業をどのように再構築していくのかの議論が行われました。参加者からは、「国内だけでなく、韓国などアジアを中心に、国際連帯を進めるべきだ」「一部の輸出国に食料を依存する危険性を指摘し、生物多様性という視点からの運動を」などの意見も出されました。

消費者と生産者の顔をつなぐ運動を
 今回の集会では、消費者の役割も大きいことが強調されました。前述の鈴木教授は、「消費者が生産者の努力に対する評価が低いのではないか」と述べました。これに対して、首都圏で活動を展開するパルシステム生活協同組合の野村和夫産直事業部長は、コメの産直や、輸入飼料をやめて米を飼料とする養豚など、消費者と生産者が一体になった運動を報告。こうした消費者と生産者をつなぐ取り組みにより、安定した農業生産を生み出していく重要性が改めて提起されました。
 これは食の安全とも関わり、討議では「学校給食などでの食育や学校教育での本物に触れる体験学習を通して、食べ方を変えていくことが重要」「消費者の理解のもとで有機農業を推進して自給率を上げ、安全な食料を確保する運動が大切」などの意見が出されました。
 こうした地域での取り組みの一例として、前述の菅野さんが住む山形県長井市では、市民の家庭の生ゴミから堆肥を作り、それを田畑に戻して有機作物を育て、消費者が消費するという「レインボープラン」を市民主導で作り上げました。消費者と生産者をつなぐ試みは、「田畑のある田舎の暮らしが私たちの誇り」(菅野さん)というように、農業を中心とした地域社会の再構築として大きな意味を持っています。
 この他、エネルギーの地域循環、地産地消運動なども報告され、地域からの再生の可能性が語られました。

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上関原発建設のための公有水面埋め立て許可を許さない
瀬戸内海で最後に残された自然の宝庫を壊すな
長島の自然を守る会 代表 高島 美登里

国・県・事業者が一体となった建設推進
 10月22日に二井関成山口県知事は中国電力に対して上関周辺の公有水面埋め立て許可を出しました。10月16日に上関周辺や全国から寄せられた埋め立て許可を出さないよう要請する8万筆あまりの署名を提出し、地元の反原発3団体が申入れを行った矢先のことです。
 さらに10月31日には、最高裁が漁業補償契約をめぐる裁判で計画に反対する祝島の漁業者の上告を棄却しました。この裁判は祝島の旧漁協と組合員の代表3人が、原発計画に伴い中国電力と関係8漁協でつくる管理委員会などが締結した漁業補償契約は効力がないと訴えていたもので、一審の山口地裁は一部訴えを認めましたが、二審の広島高裁は訴えを全面的に退けたため漁業者側が上告していたものです。
 最高裁は、憲法違反などの上告理由がないとして棄却し、二審の高裁判決が確定することになりました。まさに国・県・事業者が一体となった「埋め立てありき・建設ありき」のなりふり構わぬ姿勢をさらけ出しています。

希少な生物や生態系を破壊する埋め立て


埋め立て予定地に座り込む祝島島民(06年6月)

 埋め立て許可を出した県知事は3つの点で大きな歴史的禍根を残す過ちを犯しました。まず、原子炉設置許可申請のための詳細調査も終わっておらず、まったく立地のめども立たないのにゴーサインを与えたこと。2点目は、原発予定地から3.5kmしか離れておらず、埋め立て予定海域や周辺で漁業を営む祝島島民を見捨てたこと。3点目は、瀬戸内海で最後に残された宝石のような場所を破壊する許可を与えたことです。
 6月17日に中国電力が提出した埋め立て許可願書は、あらゆる点において欠陥だらけでした。特に環境保全について、希少な生物や生態系についての環境アセスメントの不十分な文面の引き写しです。今年の5月初旬から鳥学会の研究者や長島の自然を守る会が周辺海域で、国の天然記念物で国際保護連合指定の絶滅危惧種であるカンムリウミスズメを確認していたのにもかかわらず、許可願書には記載がありません。
 カンムリウミスズメは日本にしか生息せず、生息数も5,000~10,000羽とごくわずかです。日本鳥学会は9月14日に開催された総会で、「上関原子力発電所建設計画に係る希少鳥類保護に関する要望書」を決議し、「山口県は、カンムリウミスズメに関する環境影響評価と必要な保全措置の計画立案が行われるまで、公有水面の埋め立てを許可しないこと」と要望までしていました。

埋め立て取消を求めて2つの裁判を提訴
 私たちは、知事の不当な判断に対し相次いで2件の提訴を行いました。まず、10月20日に祝島の漁業者74名が埋め立て許可差し止めの提訴を行い、その後、取消訴訟に切り替えて争っています。
 長島の自然を守る会は、公有水面埋め立てにより、不利益をこうむる「人と生き物の権利」としての立場から、12月2日に「上関自然の権利訴訟」を提訴しました。原告は、長島の生態系の素晴らしさを象徴する6種の生物(スナメリ・カンムリミスズメ・ヤシマイシン近似種・ナガシマツボ・ナメクジウオ・スギモク)と、長島の自然を守る会および祝島島民の会の2団体、および個人です。
 裁判の勝負は法廷内でなく、むしろ法廷外にあると思います。提訴を通じて、「埋め立て許可を許さんぞ」という世論を拡げることが、司法の正しい判断を導きだす原動力です。瀬戸内海で最後に残された自然の宝庫を壊滅させ、自然と共生する自立的な暮らしをしてきた祝島の人々の生活基盤を奪い、人類の負の遺産である原子力発電所を建設するための埋め立てを決して許すことは出ません。
 県知事は歴史的・世界的な汚点を残す埋め立てを許可した誤りを認め、即刻、許可を取り消すべきです。私たちは司法の場において、このことを追及し訴えていきます。全国の皆さんのご支援をよろしくお願いいたします。

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オバマ米新大統領への期待と危惧(2)
ロシア、アフガンなど重い課題

ゲーツ国防長官の留任と安全保障政策
 米国オバマ新大統領の閣僚候補が出そろいました。国務長官にヒラリー・クリントン上院議員、国防長官にロバート・ゲーツ現国防長官の留任、主席補佐官にラーム・エマニュエル下院議員、国家安全保障問題担当補佐官にジェームズ・ジョーンズ前NATO軍最高司令官、司法長官にアフリカ系のエリック・ホールダー、国土安全保障長官に女性のジャネット・ナポリターノ・アリゾナ州知事などです。
 しかしゲーツ国防長官の留任は、08年8月の民主党全国党大会で採択した政策綱領、とくに安全保障政策との整合性に疑問を抱かせます。 綱領はまず「核兵器のない世界を追及する」と謳い、具体的な行動として1)冷戦期に製造された核兵器をロシアとともに検証可能な形で削減する、2)新規の核兵器開発を中止する、3)米議会による包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を促進する──などを明記し、国際原子力機関(IAEA)管理下の国際的な核燃料貯蔵構想や核拡散防止に関する国際首脳会議の09年開催を提唱しています(08年8月16日 時事通信、gooニュース)。
 一方、ゲーツ国防長官は10月28日にカーネギー国際平和基金での演説で、ブッシュ政権の「核態勢見直し」構想を再確認し、1)核兵器と通常兵器による攻撃力の増強、2)ミサイル防衛を含む防衛力の増強、3)上記を達成するインフラ整備を強調し、核兵器の近代化とそのための核実験の再開が必要と述べています。
 核実験再開はないと考えられますが、ミサイル防衛(MD)についてオバマ氏は否定していないと伝えられています。そうすると、ブッシュ政権がチェコ、ポーランドへのMD配備を推し進めてきた結果、ロシアは対抗措置として飛び地のカリーニングラード州に最新ミサイル・イスカンデルの配備を発表する一方、イスカンデル配備は東欧へMDが配備された場合に限定されるとしていて、ロシア、米、EU間での安全保障のあり方を見直そうと、オバマ次期大統領に提案しています。この話し合いが不調になれば、ヨーロッパは新たな軍拡の危機を迎えます。
 金融恐慌のなか、ロシアとの話し合いは極めて重要です。ロシアとどう友好関係を築くか、オバマ大統領にとって大きな試金石となるでしょう。

ムンバイのテロとパキスタンの方向転換
 08年11月26日にインド・ムンバイで発生した同時テロ事件で、インドのシン首相はパキスタン側の犯行だとして、カシミール地方を拠点としているイスラム組織・ラシュカレトイバなどの20人の引き渡しを要求しました(12月2日)。当初インドの要求に拒否の姿勢を見せていたパキスタンのザルダリ政権も、アメリカのライス国務長官の訪問・説得を受け、12月7日、パキスタン軍がカシミールのラシュカレトイバの拠点を急襲し、制圧しました。 しかし、これで印パ両国の緊張が解けたとはいえません。今回のテロにはパキスタン軍部の関与も伝えられる一方、インドの与党・国民会議派とヒンドゥ民族主義政党・人民党との対立など、解明されない部分も多いのです。
 現在アフガニスタンで軍事作戦を展開する米軍やNATO軍へ提供される軍需品の75%はパキスタン経由で行われていて、パキスタンの協力なしには、アフガンでの戦闘も、ましてや米軍の望むアフガンの安定は実現しません。
 ムシャラフ前パキスタン大統領は、米に協力してアフガン国境地域の部族武装勢力への軍事作戦に踏み切るに際して、掃討作戦の主権はパキスタン軍にある、米軍はパキスタン領内に進入しないことを求めました。しかし米軍は今年8月にムシャラフ大統領が辞任した直後から、無人機によるミサイル攻撃をパキスタン領内で頻繁に行うようになった結果、国内で一挙に武装勢力支持・反米の国民感情が広がりました。
 こうしたなか10月初め、軍首脳が上下両院に「武力だけでは永久に勝てない」「対話による政治的解決が必要」と説明します。この説明を受けパキスタン国会は10月22日「アフガン政府が和解を探っているのに、わが国だけが戦闘に固執する必要はない」とし、対テロ戦見直しを求める決議を採択しました(毎日新聞11月23日)。
 米国に協力的だったザルダリ政権も11月22日、中国やEU、サウジアラビアなどに、米軍の越境攻撃を中止するよう働きかけることを発表しました。国際的な金融恐慌はパキスタンをも巻き込み、内戦どころではない国内状況も政策変更の一因といえます。
 一方、パキスタンの反米・武装勢力の動きは、一層活発化しています。12月に入ってから、1日、5日、7日とアフガン国境沿いの軍事物資集積所が相次いで攻撃され、7日にはトラックや装甲車など160台が焼失したとのことです。アフガン問題の解決はオバマ新大統領にとっても重い課題となります。

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【本の紹介】
原発震災―止めるのはわたしたち
反原発運動全国連絡会

 非常に危険な場面に臨む例えに、「薄氷を踏む」という言葉があります。活断層だらけの地震列島と言われながら、原子力発電所を55基も抱えるこの国は、まさに薄氷を踏む状態を続けているといえます。正気の沙汰とは思えません。
 中越沖地震の際、柏崎刈羽原発で「放射性廃棄物」と書かれた黄色いドラム缶が散乱した写真などを目にして、衝撃を受けた方もおられるでしょう。小冊子の体裁を取る本書では、地震問題の基礎知識から中越沖地震の被害について紙面を割きながら、国や電力会社が安全だと言いながら原発を推進し、次々と露呈するウソやデタラメを図表やデータを用いて指摘しています。
 新たなチェックによって、これまで認めてこなかった活断層を認定せざるを得なくなった際の言い訳が、「発電用原子炉施設が『活断層の上』にあることのみをもって立地指針に不適合となるものではない」。敦賀原発、美浜原発。そして、2008年5月に再稼働と言われながら延期された「もんじゅ」の敷地直下に活断層が明らかになったときの国による解釈の変更。あまりに稚拙な言い方に、ならば何のための立地指針なのかと、怒りを通り越して呆れるばかりです。「徹底した調査で活断層の上には原発は立てない」という宣伝は何だったのでしょうか。
 原発震災では、火災や津波、建造物の倒壊による被害に、放射線による被曝が加わります。それは、広島・長崎の惨劇と何ら変わりがないように思えます。
 政策を決定し、それを実行するのは国や電力会社です。しかし、原発震災を防ぐのは市民一人ひとりの力であると本書は訴えます。原発震災を防ぐには、原発を止める以外にありません。そのことを強く認識させられる一冊です。(阿部 浩一)

 購読申込は原子力資料情報室へ(TEL 03-3357-3800)

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【映画評】
いのちの作法─沢内『生命行政』を継ぐ者たち
(08年/日本/小池征人監督)

 学生時代の20数年前、政治学ゼミの指導教員が地方自治のあるべき姿として賞賛していたのが、秋田との県境・岩手県の沢内村(現・和賀郡西和賀町)でした。
 この映画のベースとなる「村長ありき」(及川和男著・新潮文庫は絶版。現在は、れんが書房新社刊)という本を紹介されたことを思い出しました。
 旧沢内村は1960年代前半に、日本初の老人医療無料化や、乳児死亡率ゼロを達成したことで知られています。豪雪・貧困・多病多死という三重苦に苦しんでいた村は、「人命の格差は絶対に許さない」「生命尊重」の理念を掲げた当時の深沢晟雄村長に、村民が呼応した結果、2期8年余の在任期間中に日本一の保健の村になりました。(村長は59歳余で惜しまれつつ死去)。
 映画では「老人」や「障がい者」、そして、「虐待を受けた子どもたち」の生命に向き合う姿が記録されています。半世紀を経た現在でも、町の人たちの自発的な活動、住民と行政の工夫と努力で町をあげての福祉社会づくりが進んでいるのです。
 その試みは、それぞれが「楽しく・面白く・心温まる」ものを持っています。たとえば、知的障がい者たちの施設では、休耕田を借りて自分たちの米づくりに取り組んでいます。これだけではなく知的障がい者、高齢者たちを仲間に入れたワークステーション(共同作業所)での活動がたくさん出てきますが、みんなの生き生きした表情は、まさに「助け合い」「共生」の実践だと感じました。
 「少子高齢化」状況のもとで、産科、小児科、救急医療にかかわる困難や、「後期高齢者医療制度」の強行のもと、現在ほど命が軽んじられている時代は、戦時下を除いてなかったほどの状況にある中、「沢内」は私たちに、民主主義とは、福祉社会とは、自治とは何か、「日本のあるべき姿」を問い掛けているのです。
 私にとっては「政治とは何か」を考える原点です。是非「村長ありき」もご一読を。「沢内村奮戦記(あけび書房刊)」という関連書籍もあります。(鈴木 智)

※各地で上映運動が行われています。詳しくは公式ホームページをご覧下さい。
http://inochi-film.main.jp

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【投稿コーナー】
技術的欠陥が明らかになった六ヶ所再処理工場
再処理とめたい首都圏市民のつどい 松丸 健二

15回目の本格稼動の延期


「劣化ウラン弾NO!」を訴える6千人の人文字
「デーリー東北」新聞より

 昨年11月25日、日本原燃(株)は取締役会を開催し、六ヶ所再処理工場の試運転終了時期を3ヵ月延期し、今年2月とする変更を決定し国に届け出ました。延期は再処理工場の事業申請以降15回目、2008年だけで4回の延期です。今回の延期により国の使用前検査も越年するため工場の完成が認められず、六ヶ所村が09年度分として見込んでいた約20億円の固定資産税収入が先延ばしになりました。
 当初1ヵ月と見込んで07年11月に開始した高レベル廃液のガラス固化工程で、核分裂生成物である白金族の堆積や機器の故障がこの間の延期の理由です。ガラス固化する廃液は、1)高レベル廃液、2)アルカリ廃液、3)不溶解残渣(ざんさ)の3種類ありますが、3番目の不溶解残渣は昨年10月末になってはじめて混ぜたことも明らかとなりました。
 原子力安全・保安院は審議会や国会議員からのヒアリングでもこの事実を一言も漏らさず、試験の不十分さをひた隠しにしていたのです。また、ガラスに溶け込んでいないままの放射性廃棄物が混入した欠陥ガラス固化体も大量につくっていたことも明らかになっています。
 今回の延期決定から日もたたぬ12月1日、炉底に堆積した白金族を攪拌(かくはん)するための金属棒がほぼ直角に曲がり、動かせなくなるというトラブルが発生。この原因調査のために最低1ヵ月は要するとみられ、すでに09年2月に延期した完工時期がさらにずれ込むと報じられています。そもそもこの攪拌用の金属棒はアクティブ試験開始後の一昨年春頃に設置されたもので、設計・設置時には付いていなかった器具です。
 経済産業省と日本原燃は折半で、09年から3ヵ年計画で総額140億円の予算で新型のガラス溶融炉とガラス素材を開発し2012年度に現行の溶融炉と交換するため、すでに09年度予算要求を行っています。国も事業者も現行のガラス溶融炉の技術的欠陥を認めていることになります。試験はすべて中止すべきです。

窮状を代弁する読売新聞社説
 読売新聞は昨年11月27日、「完工へ向けた支援が必要だ」とする社説を掲載し、高レベル廃棄物を「液体のまま大量に、長期間保管するのは好ましいことではない」「固化ができないと、原子力発電所から出てくる使用済み核燃料の処理を遅らせるしかない。結果として原発に使用済み核燃料があふれて運転できなくなり、電力供給に支障が出る」と推進側の窮状を代弁して訴えています。高レベル廃液は停電などで冷却ポンプが停止すると、約15時間で沸騰し始めタンクを破壊するとの研究報告があります。
 読売新聞社説ではまた、次善策として運転の目標を切り下げ、「ガラスを溶かす炉は2系統あるが、現在、試験に使っているのは1系統だけだ。残りを柔軟に活用して、工程を円滑に進めるという案も出ている」と、政府と電力会社が「完工に向け積極的な支援」をするべきだとの主張をしています。
 ガラス溶融炉はAとBの2系統あります。日本原燃が国に提出した試験計画では、まずA系統の性能試験で妥当な結果を出してからB系統の性能試験へ移行。B系統でも妥当な結果であれば、次にAとBを同時に試験運転し、廃棄物の発生・放出情況を確認することになっています。読売の主張は、国が行ってきた不十分な安全規制政策を悪化させようというもので看過できません。
 六ヶ所再処理工場では、アクティブ試験の期間に予定していた使用済み燃料のせん断を昨年10月1日にすべて終了しました。徐々にですが、海や空への放射能の放出が少なくなっています。このように技術的な欠陥も明らかになり、地盤の問題も明らかになりつつあります。このまま永久に止まっていてほしいものです。とどめはどのように刺せるのでしょうか。

注:ガラス固化体とは、高レベル放射性廃液をホウケイ酸ガラスといっしょにステンレスの容器(キャニスター)に固め込んだもの。

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