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ニュースペーパー2015年11月

2015年11月 1日

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さようなら原発 さようなら戦争全国集会
 9月23日、東京・代々木公園で「さようなら原発さようなら戦争全国集会」が開かれ、2万5千人が全国各地から集まりました。この集会は、作家の大江健三郎さんや澤地久枝さんらの「さようなら原発」一千万署名市民の会が呼びかけ、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の協力のもとで開かれました。会場には、安倍自公政権の戦争法案強行採決やフクシマの切り捨て、原発再稼働などの原発推進政策、沖縄・辺野古への新基地建設など、民意と憲法を無視する権力の暴走に対して大きな「怒り」が満ちていました。集会では、安倍自公政権を鋭く批判し、作家の落合恵子さんは「原発再稼働を阻止し、民意を無視する現政権を打倒しよう」と訴え、社会学者の上野千鶴子さんは「反原発・反安保・反基地が大合流してきた。この国の民主主義は、今や国会の外にある」と指摘しました。大江健三郎さんは「戦後70年間平和と民主主義的な憲法下で生きてきた。日本は今、危険な転換期を迎えている。若者の新しい声に未来を託したい」と若者たちを激励しました。集会後、参加者はプラカードや横断幕などを手にアピールしながらデモ行進をしました。(写真は代々木公園に集まった参加者)

インタビュー・シリーズ:106
暮らしの現場から憲法、戦争法案、TPPをとらえなおす
日本消費者連盟共同代表/農業ジャーナリスト大野和興さんに聞く

おおの かずおきさん
おおの かずおきさんのプロフィール
 1940年愛媛県生まれ。四国山地のまっただ中で育ち、日本農業新聞記者を経て、フリージャーナリストに。主に農業・食糧問題を取材・執筆している。村歩きを仕事として日本とアジアを歩き、村の視座からの発信を心掛けてきた。著書に『農と食の政治経済学』(緑風出版)、『百姓の義─ムラを守る・ムラを超える』(社会評論社)、『日本の農業を考える』(岩波書店)、『食大乱の時代』【七つ森書館】ほか多数。現在、日本消費者連盟共同代表、日刊ベリタ編集長、季刊『変革のアソシエ』編集長、国際有機農業映画祭代表。アジア農民交流センター世話人、「TPPに反対する人々の運動」世話人も務めている。

─大野さんは、ノーベル賞作家の大江健三郎さんと同じ愛媛の出身ですね。
 大江さんのお生まれになった所は、私の所の川下にあたります。よく大江さんの本では山の中で育ったように書かれていますが、私から見たら街中です(笑)。私の所は耕地は狭く、田んぼは自分で食べる分くらいしか作れません。そばを作ったり、山の炭焼きなどで現金収入を得ていました。

─大学を出られてから「日本農業新聞」に入られましたね。
 大学は県立島根農科大(現島根大学農学部)という極小大学でしたが、60年安保の真っ最中で、あまり勉強もせず、就職先もない状態でした。それでコネで日本農業新聞という農協が出している新聞社を受けたら通ったのです。10年ほどは記者をしていましたが、当時の新聞社の労働条件は悪く、残業代は出ないし、印刷所の衛生環境も極めて悪かったです。そこで、20歳代で労働組合の書記長になって、3日間、輪転機を止めてストをしたりして、労働条件を改善させました。その後、フリーのジャーナリストになりましたが、村歩きをしながら、現場の視点でモノを書いてきました。

─61年に農業基本法ができて、農業が大きく変わってきました。その農政をどう見ていますか。
 私はまさに農業の「近代化」と呼ばれる時代を生きてきました。60年安保を経て、池田勇人内閣が所得倍増計画を掲げ、それとともに農業基本法が出来て、大規模化、機械化、化学化が進んできました。農村の安い労働力を使って、工業化、経済成長を進めるためです。
 しかし、農業は近代化・大規模化するにつれて、借金も増え、北海道などでは夜逃げをする農家も多くなってきました。光の部分のように見えた所も、どんどん潰れていったわけです。農民の声が反映されて来なかった自民党の農業政策を問わなければなりません。
 確かに、70年代くらいまでは自民党は農村に基盤を持っていました。社会党も農村とつながっていました。55年体制の中で、両党は政治的にはぶつかり合っても、落としどころがあった。しかし、その後、自民党は地域から離れていった。そのあげくが現在の戦争法案(安保関連法案)ではないでしょうか。国民の意思とは関係なくめちゃくちゃになっています。野党も根っこが弱くなっていて、政党政治がおかしくなっていると思います。

─安倍政権は農業を成長産業にすると言っています。
 自然条件や土地に規定され、資本の回転率が工業とは比較にならない農業は基本的には儲からないものです。それをビジネス化するという前提が間違っている。儲からないことを前提に、そこそこの稼ぎで心豊かに生きていこうと思ったときの農業が一番強い。風土や自然、土地や人的資源と切り離したら、農業の永続性という強さが無くなってしまいます。
 確かに、夕張のメロンとか栃木のイチゴ、群馬の高原キャベツなど、特産品を産地化している所も出ています。しかし、そういう所の労働力の多くは外国からの実習生制度を使って、安く働かせているのです。そんな状態の中でやってきて、いま、TPP(環太平洋経済連携協定)の問題が出ているのです。

─そのTPP交渉の合意などもとりざたされていますが、問題点はどこにあると思いますか。
 TPPは2010年に菅直人首相(当時)が言い出したときには、もっぱら農業の問題とされました。しかし、私は最初から安保や日米同盟に通じる問題であると主張していました。いま、まさにそうした総合的な視点でTPPを考えることが必要だというのが持論です。
 TPPはアメリカのアジアに対するリバランス、アジアを重視しながら、中国と対峙し、軍事と経済による中国の包囲網の陣形を作ろうとしていると思います。まさに、軍事と経済の中にTPPがあるわけで、運動もそこを考えていくべきです。安倍政権はこれらの全部をつなげて総合的にやってくるわけですから、我々もシングルイシューの運動だけでは負けてしまうと思います。そういう意味では戦争法案に対する「総がかり行動」はとても良い運動だったと思います。

─私たちも、今年の5月3日の憲法集会では、戦争・原発・貧困・差別など、あらゆる課題をつないで集会を組みました。ところで、大野さんは安保法制廃案を要求する「敗戦70年目の百姓宣言」という運動も提唱されていますね。
 いろいろな団体が戦争法案に反対する声明を出す中で、百姓も出すべきではないかと考えました。かつて、岩手の村々から戦争にとられた農民兵士が戦地から実家に送った手紙をまとめた『戦没農民兵士の手紙』という岩波新書が1959年に出されています。検閲もあったでしょうが、戦地で倒れた百姓青年たちの手紙は、お母さんのこと、農事のこと、家族のことで埋まっていました。戦場に真っ先にかり出されて、最前線に立たされ、戦死したり、飢餓で多くの農民兵士が亡くなっていきました。
 このように、百姓も戦争と深く関わりがあることや、最近、農村のおばあさんから「戦争法案を何とかしなくては」という手紙をもらったりして、とにかくやろうということで、7月から賛同を呼び掛けました。短期間だったこともあり、最初の目標の8月15日には500人ほどしか集まりませんでしたが、内閣に届けました。多くは70代前後の方で、若い百姓が少ないことが残念です。今後も続けて、12月8日の太平洋戦争の開戦の日には1万人を集めて出すつもりです。


日本消費者連盟が開いた憲法を考える集会
(6月20日・大田区)
─消費者運動でも、日本消費者連盟の共同代表を担われ、また「消費者・生活者9条の会」も立ち上げておられます。
 消費者運動は60年代末あたりから盛んになってきました。かつては、食の安全や公害問題など、個別の運動として出てきました。そうした告発型の運動を経て、グローバルな時代を迎え、格差の拡大や相対的貧困と絶対的貧困が共存する新たな貧困の時代に、消費者運動は何をすべきかを問い直すべきだと思います。それがはっきりしないと組織はじり貧になって、社会的な意義がなくなってしまいます。
 私はいろいろと考え、それは憲法ではないかと思いました。平和的に生存する権利を憲法から見直す必要があると思い、「消費者・生活者9条の会」を作り呼びかけました。戦争法案に反対する集会を開いたりしながら、暮らしの現場で戦争法案ができたらどうなるのかを議論して来ました。防衛費の増大は社会保障などの民生費の削減につながります。その意味からも、憲法9条と25条の基本的生存権はセットであると訴えていきたいと思います。

─TPPや農業問題も含めて、これからのアジアの人々との連帯のあり方をどう考えていますか。
 私は、国家の枠を超えて、地域レベルでの国際民衆連帯をどう作るかが大切だと思います。実は、韓国やタイ、中国など、東南アジアの百姓の生産規模はほぼ同じなのです。だいたい1~2ヘクタールくらいが平均規模で、兼業も多い。経済発展や歴史、自然条件もそれほど変わらない。うまく食べものを調整しあって生きていける仕組みを作るべきです。
 特に東アジアの中国・韓国・北朝鮮、そして日本は共通してどこも食料自給率が低い潜在的な飢餓地域なのです。こういうところで戦争をしてどうするんだと言いたい。そういう視点で軍事的安保を乗り越えるものが出て来るんじゃないかと思います。

─当面、どういう運動をしていくべきでしょうか。
 来年夏には参議院議員選挙があります。私は、野党は選挙協力をして、1人区で勝たなければならないと思います。2009年の政権交代の前年に参議院選挙があり、1人区で勝ちました。その時は小沢一郎が農家の「戸別所得補償制度」を打ち出して、農村部で勝ったからです。今なら、戦争法案とTPP、米価の低落問題を出して、選挙協力が出来るならば、農村部で勝てるのではないかと思います。それには、政党同士に任せていてはまとまりません。市民レベルでの突き上げが必要です。そのためにも、平和フォーラムの運動に期待しています。

インタビューを終えて
 「美しい国日本をめざして」と、フェイスブックのトップページに載せている安倍晋三首相。その国土を、ブルドーザーでかき回してきたのは、あなたの属する政党の政策ではなかったのでしょうか。大野さんは戦後の農政を「近代化・大規模化が農業を潰したのでは」と述べています。「日本人よ、故郷をなくしてどこへいくのですか」─全国町村会の出した新聞広告の言葉です。四国の山に育ち、村の視点から日本を見てきた大野さん。北海道の辺鄙な農村で育った私も同じ思いです。
(藤本泰成)

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平和フォーラム・1000人委員会・総がかり行動の闘い
戦争法廃止・平和・民主主義の再確立をめざして
フォーラム平和・人権・環境 共同代表  福山 真劫 

 9月19日未明、安倍自公政権は、民主主義のルールを破壊して、「戦争法」を成立させました。平和フォーラムは、「戦争をさせない1000人委員会」(1000人委)、「戦争させない・9条壊すな総がかり行動実行委員会」(総がかり行動実行委)に結集して、全力で闘ってきました。総がかり行動実行委は非共産党系、共産党系、中立系の3潮流をまとめ上げての組織です。そして、この組織の闘いは、60年安保闘争以来といわれる広範な大衆運動を作り上げました。
 法案の廃案を勝ち取ることはできませんでしたが、戦争法廃止、平和と民主主義を確立するための希望と可能性を確実につくりだしました。一方、廃案に追い込むことができなかった原因、私たちの運動課題と方向も明らかになってきました。


国会前で戦争法案反対を訴える人々(8月30日)
自衛隊が海外で戦争・武力行使・威嚇可能に
 この法の本質は、米国の軍事戦略の下で、自衛隊が海外で武力による威嚇・行使、戦争を行うための法です。アメリカの「アミテージ・ナイレポート」でそのことが明確にされています。そして戦争法に先行して、4月27日、日米ガイドラインを改定・合意し、29日、安倍首相が「戦後初めての大改革です。この夏までに成就させます」と米国議会で演説しました。戦争法は「国際平和支援法」と「平和安全法制整備法」で一括している10の改正法からなっています。
 法案のポイントは、(1)「集団的自衛権行使」を合憲化すること。これは「武力攻撃事態対処法」の改正であり、存立危機事態の場合、他国への攻撃であっても自衛隊が武力行使可能にすることです。武力攻撃事態対処法・自衛隊法の改正を行います。
 (2)他国軍に対する後方支援を拡大すること。他国軍の武力攻撃との一体化、兵站を担う武器・弾薬、発進準備中の航空機への給油も可能とすることです。「周辺事態法」を「重要影響事態法」と改正をおこない、「周辺事態法」にあった地理的制約を撤廃し、「重要影響事態」では米軍を中心に他国軍も支援する。「国際平和支援法」で恒久法化し、国際社会の平和・安全ために活動する他国軍を支援することです。「非戦闘地域」の概念を廃止し、「現に戦争を行っている現場」以外にまで自衛隊の後方支援地域を拡大することです。
 (3)国際的平和維持・人道支援を改正すること。PKO法・自衛隊法の改正を行い、国連指揮下以外、他国軍の支援を可能にし、地域の安全確保の治安維持活動、駆けつけ警護、武器使用の基準緩和をする等です。
 また国会審議が不十分な中で強行採決されているため、未解明の部分が多く残されています。いずれにしても、自衛隊が海外で戦争・武力行使・威嚇をすることが可能となる法律です。これは、歴代政府が確認してきた「集団的自衛権行使は違憲」という政府解釈を一方的に安倍内閣がひっくり返し「合憲」としたため、政府によるクーデーターだとの指摘もあるほどです。

なぜ止められなかったのか─草の根からの取り組みを
 私たちは、闘いの中で多くの成果を得ることができました。そして野党と連携して、安倍自公政権をゆさぶり、追い詰めることができました。最終的な山場の9月14日からの週は、連日、万を超える市民が国会を包囲しました。そして闘いの輪も、学生を中心とするシールズ、学者の会、日弁連、ママたちの会、立憲デモクラシーなど多様な形で拡大しました。また世論の支援もあり、カンパ額も約1億円となりました。新聞広告、会場借り上げ・音響設備などに使用させていただきました。
 しかし、60年安保闘争以来といわれる闘いの高揚をつくりながら、戦争法案を廃案に追い込むことはできませんでした。その原因はどこにあったのか列挙してみます。それぞれの立場で、ぜひ検討してください。
(1)世論の多数派は戦争法案反対であり、通常国会で決めることは反対でした。私たちの闘いは、8月30日には国会周辺に12万人の市民で埋め尽くし、全国1000か所で反対の集会を行いました。しかし60%の反対世論を闘いの場に巻き込むことはできませんでした。
(2)アベノミクス路線のなかで、非常勤の労働者が38%となり、年収200万以下の勤労者が1200万人を超え、貧困と格差社会がさらに進行しました。私たちの運動にこうした非正規労働者や年収200万以下の人々が参加し、共感を得たのかは不明です。働きかけが確実に弱かったと思われます。
(3)8月30日には、全国1000か所以上で集会がもたれ、大阪3万人、その他主要な都市でも集会や街頭行動が持たれましたが、全国展開という意味では、市町村、地域レベル、職場レベルでの取り組みはまだまだ不十分です。総がかり行動実行委は、全国への展開力があるわけですから、東京の結集と合わせて、自分の町、職場での取り組みが求められています。
(4)総がかり行動実行委には多くの労働組合も結集しています。その労働組合の単組や職場に「1000人委員会」をつくること、地域と交流することなど、草の根の取り組みがどうだったのかも問われています。
(5)労働組合の組織率も低下し、組合員数は987万人、組織率は17.7%となっています。60年安保闘争は労働組合、特に当時の「総評」を中心として運動が組み立てられました。しかし今回は結果として、労働運動全体が弱体化し、60年当時とは比較になりません。またナショナルセンターの連合との連携不足も指摘せざるを得ません。労働組合への組織化と「平和・民主主義」に責任を持つ労働運動の強化が求められています。
(6)衆参両院での与党と野党との議席数の大きな差が、野党が可能な戦術を駆使して奮闘したにも関わらず、強行採決を許してしまいました。当面なんとしても来年の参議院選挙での与野党逆転を勝ち取ることが必要です。


辺野古新基地建設に反対する国会包囲(9月12日)
新基地建設阻止、原発再稼働反対でも連携
 安倍首相は10月7日、第3次安倍自公政権を誕生させ「一億総活躍時代をつくる」として、「GDP600兆円、出生率1.8の達成、介護離職ゼロ」の「新3本の矢政策」を打ち出し、高揚した大衆運動の分断・鎮静化をめざしています。
 しかし安倍政権の前には、戦争法案だけでなく、(1)沖縄辺野古への新基地建設反対運動、(2)原発再稼働反対運動、(3)人間の安全保障確立、非正規労働者40%、年間所得200万円以下の勤労者数1200万人の生活権確立運動、(4)TPP反対運動、(5)消費税値上げ反対運動等が立ちはだかっています。
 そして、当面の焦点は、安倍内閣退陣を視野に「戦争法廃止、沖縄辺野古基地建設阻止、原発再稼働反対・脱原発、人間の安全保障、参議院選挙の取り組み」となります。その基本方針は以下です。
(1)「総がかり行動実行委員会」を継続強化します。
 この委員会は、「1000人委員会」「解釈で9条を壊すな!実行委員会」「憲法を守り・いかす共同センター」など、市民団体を含む3団体を中心に19団体で構成されています。この運動が中心になって、多様な形で、自律的運動が拡大し、それぞれがささえ合って、大きな運動を作り上げました。引き続きこの枠組みを基本として、運動を組み立てていきます。
(2)戦争法廃止、発動阻止の闘いへ
 戦争法は違憲の法です。立憲主義を崩すような違憲法の存在と発動は許されません。そして、世論は廃止を求めています。施行日は来年春とされ、発動への準備は始まっています。発動を絶対させない取り組みを全力で取り組みます。
(3)辺野古新基地建設阻止・再稼働阻止・人間の安全保障の闘い
 安倍の暴走は戦争法だけではありません。沖縄での新基地建設強行、原発再稼働、貧困と格差社会の路線が続いています。いずれも人間の尊厳をないがしろにする政治です。絶対に許せません。私たちの運動の出発のときから、沖縄や原発、人間の安全保障は視野に入っていましたが、それぞれの課題は、多くの団体が取り組んできた経過もあります。総がかり行動実行委は、そうした市民・団体と連携して取り組みます。
(4)参議院選挙へ向けての共闘の実現
 今回の闘いでは、民主党、社民党、共産党、生活の党の野党各党と、平和フォーラム・1000人委・総がかり行動実行委や市民団体等との連携が進み、院内外の共闘が大きく前進しました。そうした中で、野党は選挙で連携して闘えとの流れが大きくなりました。日本の選挙の実情から、自民党を公明党が支援、野党はバラバラに選挙戦を闘っています。これでは自民党の一強体制を崩すことはできません。何としても野党の選挙共闘を作り上げる必要があります。
 選挙共闘のあり方は、連立政権構想に基づくもの、一定の政策を確認しての参議院比例区での統一名簿による選挙、一定の政策協定を基本に地方区、とりわけ1人区での選挙協力などいろんなレベルがあります。沖縄では、オール沖縄の闘いが組み立てられています。ぜひ選挙共闘の実現へ支援の取り組みを強化します。

一大署名運動も展開
 具体的取り組みでは、(1)全国で毎月19日に行動を組む、(2)一大署名運動の取り組み、(3)沖縄に連帯しての取り組み、(4)参議院選挙の取り組み、(6)職場、地域での組織化と運動などに全力で取り組みます。
 とりわけ署名運動では、(1)戦争法廃止、(2)立憲主義・9条擁護の請願で統一した一大行動を展開します。呼びかけ人は「総がかり行動実行委と賛同支援団体」です。これだけの規模で署名運動を取り組むのは、2000年代で初めてだと思います。平和フォーラム・1000人委・総がかり行動実行委の存在意義が問われます。参議院選挙での与野党逆転をめざしてがんばりましょう。
(ふくやましんごう)

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問題だらけのTPPの「大筋合意」
巨大企業の利益のためのルール押し付け

 日本やアメリカ、オーストラリアなど12ヵ国で行われてきた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、10月5日に「大筋合意」を発表しました。しかし、その内容や今後に多くの問題を残しています。

米議会がカギ握る「最終合意」、日本は「一人負け」
 今回の合意は「大筋合意」であって「最終合意」ではありません。今後、各国間で最終的な合意に向けた協定案が作成され、各国政府が署名をおこない、さらに議会での承認(批准)が行われて、はじめて発効となるものです。その期間は最大2年程度が見込まれ、2年後には参加国全てが承認しなくても一定数(6ヵ国以上でGDP比で85%以上)の承認があれば発効とされています。
 その間の各国での承認には困難が予想されています。特にアメリカは、年明けになれば次期大統領選挙に向けて選挙戦が活発化します。また、大統領選挙の有力候補の多くがTPP反対を言明しています。TPPは大企業を利するだけで、安い労賃の外国に職を奪われるという労働組合の主張や、さらなる市場開放を他国に押しつけようとする業界の圧力も高まっているためです。大統領選と同時に議会選挙も行われるため、議員の反対も多くなると見られています。その他の国でも反対の運動が起こっており、発効するかどうかも不透明なままです。
 そうした中で、日本が「合意」とされるものを公表し、さらに次年度の予算措置まで早々と行う事は異常な事態です。今回の閣僚会合で日本は、アメリカと他国との間の調整に徹し、実際の日本の立場での交渉をほとんど行っていませんでした。農産物の市場開放などの結果を見ても、日本の交渉姿勢を追及する必要があります。
 2013年4月に、日本の交渉参加にあたって衆参農林水産委員会で行われた決議で「重要農産品は再生産可能となるよう除外または再協議の対象とする」とされていたにも関わらず、日米協議で譲歩を重ね、コメの輸入枠設定や牛・豚肉の関税大幅引き下げなどを受け入れました。また、これまで関税を撤廃したことがない農林水産品の約半数を撤廃するとしています。さらに、輸入が急増した場合に関税を一時的に引き上げるセーフガード措置も骨抜きにされ、「国会決議」違反は明白です。
 一方、日本の「国益」と言われた自動車は、TPP参加域内からの部品調達率が55%以上でないと関税優遇の対象とならないとする原産地規則を受け入れました。域外の中国やタイなどでの部品調達が多い日本車はこの条件のクリアが難しくなっています。また、2.5%の米国の自動車関税は25年後にようやく撤廃されるなど、自動車で得られる利益はほとんどなく、日本の「一人負け」と言われています。


TPP閣僚会合直前の反対行動(9月29日・国会前)
最大の獲得は「日米同盟」の強化、交渉内容の公開を
 農産物などの市場開放が注目されていますが、TPPの本命は関税以外のルール作りにあります。今回の交渉でも最後まで難航した医薬品のデータ保護期間では、医薬品メーカーの圧力を受けたアメリカが押し切り、それを日本が後押ししました。「人の命よりも巨大企業の利益を増やすためのルールを押し付ける」TPPの本質が露呈しています。書籍などの著作権も期間が70年に延長され、これもアメリカの意向に沿ったものです。
 さらに、投資企業が相手国を訴えて政策の変更を迫ることが出来るISDs条項(投資家対国家間の紛争解決条項)も導入されました。この制度を利用して、環境や安全などの国内規制が外国企業に訴えられ、緩和・撤廃させられる危険性があるなど、国の主権を損なうことが指摘されています。これまでもメキシコやカナダ政府などが訴えられ、莫大な賠償と政策変更を余儀なくされています。これで懸念されるのは、日本の医療制度や薬価基準に対し、外国企業が参入・関与を求めてくることです。また、遺伝子組み換え食品に対する表示義務も、アメリカはこれまでも異議を唱えており、ISDs条項を盾にした訴訟もありえます。
 これら多くの問題に対し、これまでの交渉経過は保秘義務があるとして、内容は4年間も秘密にされることになっています。こうした交渉内容を全面的に明らかにさせ、問題点を指摘することが求められています。
 また、日本にとって今回の「合意」の最大の獲得は「日米同盟」の強化と言えます。安倍首相は「アジア・太平洋地域に自由、民主主義、基本的人権といった基本的価値を共有する国々と開かれた経済システム」と標榜しています。これは明らかに中国の囲い込みであり、戦争法案とともに、対中関係の緊張を増すことにつながります。
 こうしたことから、拙速な協定調印・批准に反対して運動を進める必要があります。そのため、交渉内容の徹底した情報公開や、市民との意見交換を求めていく必要があります。
(市村忠文)

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六ヶ所再処理は即時廃止するべきだ
新制度でも経営破綻は必至 ツケは国民に
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸

青森県と安倍政権による生き残り策
 青森県が六ヶ所再処理工場の受け入れを決めたのが1985年4月9日、そして建設が始まったのが93年。2006年から実際の使用済み燃料を使ったアクティブ試験に入ったが、ガラス固化処理工程のトラブルで08年以降停止している。建設開始から22年後の現在も営業運転に入れないでいる。
 現在は東京電力福島原発事故を契機に設立された原子力規制委員会の新規制基準に対する適合性審査の途上にある。日本原燃(株)は竣工の時期を16年3月としているが、基準地震動さえ定まっていない状況だ。また、今年8月に発生した落雷による計器類の故障では、追加の安全対策工事が原子力規制委員会から要求されるはずだ。適合性審査に加え、稼働に必要な工事認可や保安規定認可、さらには追加安全対策などを考えれば、本格運転は相当先になるだろう。
 通常の民間会社ならとうの昔に撤退しているはずだ。原子力委員会が行った核燃料サイクルの総合的な評価(2004年、2012年)では経済性の面から核燃料サイクルが成立しないことを明らかにしていた。にもかかわらず再処理の継続が政策として採用された表向きの理由は青森県の主張であった。再処理から撤退すれば、使用済み燃料の貯蔵拒否(各原発で引き取ること)、むつ中間貯蔵施設の稼働不同意、英国から返還されるガラス固化体の引き取り拒否(船の接岸許可を与えない)などを民主党政権に突きつけていた。
 安倍政権は国民世論を無視して原発再稼働および再処理政策の継続を打ち出した(第4次エネルギー基本計画)。他方で、電力の自由化を断行する。小売りの自由化や発送電分離が法制化された。これによって悪名高い総括原価方式(規制料金と言っている)は2020年には排除されることが決まった。


毎月定例で行われている再処理止めようデモ(東京)
経済産業省の支援策、将来は必ず資金不足に
 この状況に対して経済産業省は再処理を継続するための支援策を打ち出した。これは、現行の再処理積立金を拠出金という位置づけに法改正し、さらに認可法人を設立して日本原燃を傘下に置いて維持するというものである。裏を返せば、電力の自由化によって日本原燃が確実に経営破たんすることを、経産省が認めているということである。
 現行の積立金制度は05年に導入された。電力各社が再処理等に必要な費用の一部を経産省の指示によって発電時点で経費として落とし、原子力発電環境整備促進・資金管理センターに積み立てている。電力各社がこれを引き出すには経産大臣の許可が必要で、かつ再処理に使用したことを証明しなければならない。再処理を継続するための方策として導入されたのだった。
 しかし、経産省は「その資金は各事業者に帰属しており、事業者が破たんするような事態が生じた場合、積み立てた資金が日本原燃に渡らないおそれがある」という。そこでこれを再処理の実施主体に拠出することを義務付ける制度(「拠出金制度」)に改める。
 ところで日本原燃が再処理を予定している総量は32,000トンで、これが積立金の対象であった。そして、福島原発事故がなければ2020年ごろには発生する使用済み燃料はこの量に達する見込みであった。そこで、六ヶ所再処理工場の稼働年数は40年と想定されていることを念頭に、05年以降に発生する使用済み燃料は半数が六ヶ所で再処理され、残りは将来建設される再処理工場で処理すると位置付け、積立金の対象から外した。次期再処理工場の建設費などの費用算定が困難というのが表向きの理由だが、電力の負担を軽減するための妥協策であった。そして、今回はすべての使用済み燃料を対象にするという。
 認可法人の設立については、「民間主導で設立される一方で、国が必要な関与を行うことができる『認可法人』とする」とされた。再処理事業の国営化という意見も出たが、財務省の拒否が明白だから、「不適切」とされている。また、日本原燃自体を認可法人にする意見も出たが、全ての使用済み燃料を扱うためには別法人が必要ということだろう。認可法人とすることで、経営判断によって自由に解散ができない状態になる(解散には経産大臣の許可が必要)。
 仮に新規制基準に合格しても48トンもある日本のプルトニウム余剰に対する国際的な圧力から再処理できない恐れがある。さらに、稼働しても、再処理が計画通りにできなければ単価が跳ね上がる、加工したMOX燃料の需要が少なければ経営破綻は避けられない。制度変更で当面の資金問題は解決するかもしれないが、将来は必ず資金不足に陥ることになる。このツケが私たちに押し付けられるのはごめんだ。撤退は今しかない。
(ばんひでゆき)

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COP21に向け世界中でアクション
脱化石燃料と脱原発めざし市民の連携を!
気候ネットワーク東京事務所長 桃井貴子

 今年9月上旬、関東から東北の広範囲にわたる豪雨で鬼怒川流域では防波堤の決壊によって大規模な洪水被害が起き、恐怖に震えた人も多いでしょう。また近年、「スーパー台風」や「ゲリラ豪雨」「爆弾低気圧」といった新しい気象用語を頻繁に耳にするようになりました。全国各地で過去数十年にわたって起きなかったような極端な気象が発生し、一昔前とは違う天気の変化を肌で感じている人も多いのではないでしょうか。
 こうした異常気象は、日本だけではなく世界各地で発生しており、深刻な大干ばつや大洪水が人々の生存に甚大な影響を及ぼすことが少なくありません。そして、気候変動問題が深刻になるほど、こうしたリスクはますます高まっていきます。人類の生存そのものを脅かす甚大なリスクという意味では、原子力の問題と同様に、人類が直面する重要な課題だと言えます。

気温上昇を産業革命前に比べて2度以内に
 気候変動の主原因であるとされる二酸化炭素(CO2)は、その大気中の濃度が産業革命以前には280ppmだったのに対し、今では400ppmを超えました。そしてこの間の地球の平均気温は約0.8℃上昇したと報告されています。たった0.8℃と思われるかもしれませんが、この間に起きている北極海氷の激減や氷河の崩壊、異常な高温や熱波、世界各地で頻発する干ばつ・大洪水を伴う異常気象などを見れば、約1℃の上昇による環境へのインパクトの大きさは理解に難くないでしょう。
 今後、これまでに排出してきたCO2によって確実に気温は上昇し、リスクが高まっていくことは残念ながら避けることができません。人類にとって危険な気候変動を回避するためには、この気温上昇を産業革命前に比べて「2℃未満」に抑えることが必要だとされ、主要国の間で合意された目標となっています(気候に脆弱な国などは「1.5℃未満」を主張)。CO2の排出がこのまま続き、気候変動の対策をうたなければ、最大で4.8℃も上昇するというのが現在の科学的知見です。
 一方、「2℃目標」を実現するには、世界全体のCO2の排出量を2010年比で40~70%削減し、2100年には排出をゼロもしくはそれ以下にしなければなりません。世界全体でのCO2排出量が増え続けている中で、この目標は非常に険しい道程ですが、この先に人類が生き残っていくためにはCO2の主要因である化石燃料から脱却する社会に大転換するしか残された道はないと言って過言ではありません。
 今年12月にパリで行われる気候変動交渉(COP21)は、「2℃目標」のために温室効果ガス排出削減の国際合意をつくる最後のチャンスだと位置づけられる非常に重要な会議です。世界は今、このCOP21を必ず成功させなければならないという機運で高まっています。


昨年のグローバルアクションの様子
(2014年9月21日・ニューヨーク)
エネルギーのあり方を根本から見直す
 ここで言っておかなければならないのは、「脱化石燃料」を実現することは、決して「脱原発」と天秤にかけることではないということです。むしろ、環境NGOを中心に、市民社会では、今あるエネルギーのあり方を根本から見直し、これまでとは全く違うエネルギーの使い方や、再生可能なエネルギーシステムへの転換を目指し、脱原発と脱化石燃料を両立させていくことこそ必要だと訴えています。
 昨年9月、国連事務総長の主催で行われたニューヨークの気候サミットでは、COP21の成功に向けて各国のリーダーたちが招かれ、気候変動への対応を求められました。サミット開催直前の日曜日は、グローバルアクションデーと位置づけられ、世界2600ヶ所以上で大規模なデモが行われています。ニューヨークでは40万人の市民が集結し、気候変動問題の解決を世界のリーダーたちに求めて気候マーチが行われました。そこでは脱原発のグループが「原子力は温暖化対策の解決策にならない」と掲げてともにパレードを盛り上げています。
 今、人類の未来を決める重要な会議COP21を目前に控え、毎週のように世界各地で気候変動の解決を求めるアクションが行われています。そして、最も盛り上がるのが11月28日~29日のCOP21直前に行われるグローバルアクションデーです。開催地パリをはじめ、世界の主要都市で行われます。日本では、28日に東京、29日に京都でアースパレードを行います。主催となるClimateActionNow!キャンペーン実行委員会には、さよなら原発1000万人アクションの呼びかけ人の鎌田慧さんもメンバーに加わっていただいています。ぜひ、世界の数千万人の市民社会が連帯してつくりあげていくグローバルアクションに参加して、脱原発と気候変動の解決を訴えていきましょう。
詳しくはキャンペーンのホームページwww.climate-action-now.jpで。
(ももいたかこ)

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米大統領補佐官、日本の再処理に懸念表明
北東アジアでの安全保障への脅威を警告する米国の声

 日米科学技術協力協定関連会議出席のため来日したジョン・ホルドレン米大統領補佐官(科学技術担当)が、六ヶ所再処理工場の運転開始計画に関し、「日本にはすでに相当量のプルトニウムの備蓄があり、これ以上増えないことが望ましい」と述べました。そして、「分離済みプルトニウムは核兵器に使うことができ、我々の基本的考え方は世界における再処理は多いよりは少ない方が良いというものだ」との考えを強調しました(10月12日朝日新聞、英文は13日)。核兵器6000発分に相当する約50トンものプルトニウムを保有しながら、年間8トンの分離能力を持つ六ヶ所再処理工場を動かしてさらにこの核兵器利用可能物質を取り出そうとする日本の計画に対する強い懸念が米国の政権中枢にあることを示す一つの例です。最近の米国の新聞記事も同様の懸念が米政府内外にあることを伝えていますが、このような事実が日米関係を重んじるはずの政治家に影響を与えられないまま、再処理工場の運転が始まろうとしています。

日中韓のプルトニウム生産競争の悪夢
 10月7日付けのAPの記事は、日中韓3カ国の再処理政策に関する米国の政策が東アジアでのプルトニウムの急増を招く恐れがあると指摘する声を紹介しています。記事の背景にあるのは、中韓両国と米国の間の原子力協力協定改訂問題と、来年3月に完成、その後早急に運転開始という六ヶ所再処理工場の計画です。
 オバマ政権は、中韓両国との改訂協定(案)をそれぞれ、4月と6月に議会に送っています。これらは議会が反対しなければ近いうちに発効することになります。焦点の一つは、米国が提供した核燃料や米国製の原子炉で使われた使用済み燃料の再処理を米国が認めるかどうかです。米中改訂協定は、日米協定にあるのと同じような一括して事前に承認する包括同意を中国に与えています(中国の軍事用プルトニウム保有量は1.8トン)。米韓改訂協定は、韓国が開発をめざしている乾式再処理の全工程の内、軽水炉の酸化物燃料を金属形態にする電解還元まで認めるが、プルトニウムを分離する工程については将来米国が合意することが必要という内容となっています。米韓協定は再処理を認めていないとも、再処理を将来認める可能性を残したとも言えます。
 記事によると、民主党のエド・マーキー上院議員は、「我々は、我が国のパートナーが核兵器の構成要素として使われうる物質を生産するために米国の技術を使う可能性を残してはならない」と議会で発言しています。また、上院外交委員会のロバート・コーカー委員長(共和党)は、米韓協定の内容は、ソウルを「再処理に向けて導いている」ようなものだと述べ、協定は核不拡散という米国の政策目標の土台を損ねると指摘しました。また、このような協定だと将来「もし米国が再処理を許さなければ、韓国は(日本ほど)厚遇されていないということになってしまう」ではないかと懸念を表明しています(同委員長は、以前から、すでにウラン濃縮・再処理技術を持っていない国にはこれを認めるべきではないと主張)。また、ロバート・ガルーチ元国務次官補・北朝鮮核問題担当大使は、米政府は「増え続けるプルトニウムの津波」の持つ脅威に賢明に対処していないと批判しています。
 同元国務次官補は、『ナショナル・インタレスト』誌(7月8日)掲載の論文で中国に対する包括合意提供について次のように述べています。「中国は核兵器を持っているから、これについては気にしない人々もいる。しかし、核セキュリティーや核テロのリスクの増大について懸念している人々は、余りにも多くのプルトニウムが毎年使用済み燃料から分離されること、そして、これが北東アジアの他の国々に対する前例となることについて心配している」。

米国の軍事用プルトニウム処分と再処理中止
 本誌先月号で紹介したように、9月9日付けのワシントン・ポスト紙の記事が、軍事用余剰プルトニウムを処分するためのプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料製造工場建設の中止を求めるエネルギー省長官宛書簡について大きく報じました。計画はMOX燃料を発電用原子炉に入れて軍事用余剰プルトニウムを処分するというものです。別の処分方法を導入するよう要請する書簡は度重なる遅延と予算超過に見舞われている「米国のMOXプログラムを中止し、それにより、プルトニウムには経済的価値がないと明確に示」せば、日韓中3カ国に再処理の延期を呼びかける上で説得力を持てると強調しています。元エネルギー・国家安全保障関係米政府高官らの書簡には、日米同盟の強化を提唱してきたジョセフ・ナイ元国防次官補も署名しています。
 オバマ大統領は、プラハ演説(2009年4月5日)において、世界の核物資の量の最小化と保安措置強化を重要課題と宣言し、「核セキュリティー(核物質保安)に関する国際サミットを1年以内に開催」すると約束しました。2010年から1年おきにワシントン、ソウル、ハーグで開かれてきた同サミットの大統領にとっての最後の会議が来年3月にワシントンで開かれます。ガルーチ元国務次官補は、上述の論文で核セキュリティー強化を政策の柱に掲げてきたオバマ大統領が、中国に再処理を認めるのは理解できないと批判し、同じ来年3月に六ヶ所再処理工場の完成が予定されていることの皮肉を指摘しています。プルトニウム処分に手を焼く米国、プルトニウムを増やそうとする日本。核セキュリティー・サミットでの米国のMOX計画中止と日中韓の再処理延期の同時発表を提唱する書簡のアイデア実現に向けて日本の反核運動は貢献できるでしょうか。
(田窪雅文:「核情報」主宰)

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《投稿コーナー》
被爆70年の「高校生平和大使」の活動
高校生平和大使派遣委員会  平野 伸人

18年目の国連訪問で核廃絶訴え
 1998年にはじまった高校生平和大使の国連訪問も今年で18年目をむかえた。今年は過去最大規模の全国15都道府県から21人の高校生平和大使が国連欧州本部を訪問した。国連を訪問した高校生も延べ150人を超え、広島や長崎の悲惨な経験を人類が再び経験することのないように、核兵器のない世界を訴えて続けている。
 軍縮会議は日本を含む65カ国が加盟しているが、高校生平和大使はこの軍縮会議への働きかけを目的として訪問を続けている。高校生のスピーチも次第に説得力を増すようになってきたし、高校生1万人署名も今年は164,176筆となり、累計は1,337,598筆になった。このように、地道な18年間の活動で低迷を続ける軍縮会議の進展を望む存在感をアピールしてきた。さらに、ジュネーブ滞在中には、核兵器廃絶に取り組むNGO団体と意見交換も行ってきた。
 今年は被爆70年ということで、国連でも「被爆70年記念事業」が開催され、平和大使も活動報告をおこなった。また、軍縮会議日本政府代表部やメキシコ大使館などを訪れ、大使や外交官たちと貴重な意見交換をおこなったことも大きな成果だった。また、最終日にはベルンでの署名活動をおこない、世界に核兵器廃絶の活動をアピールしていくことができた。
 今回は、多国間の軍縮交渉にあたる唯一の常設機関「ジュネーブ軍縮会議」本会議の中で、平和大使がスピーチに立つことが出来たことは大きな成果だった。加盟国代表以外のスピーチは異例だが、長年の活動の積み重ねに加え、2013年より、外務省から「ユース非核特使」を委嘱されている点も後押しして、実現した。
 代表としてスピーチに立った井上つぐみさんは「被爆者の思いを若い世代が受け継ぎ、代弁するために、私は今日この場に立たせていただきました。私の曾祖父は原爆投下直後に親族を助けるため、広島の街に入り被爆しました。その後40年間、肺がんを患い心臓を悪くして、一生を終えました。しかし、曾祖父は何も語りませんでした。語ると、周囲の人からひどい差別を受けたり、当時のあまりにも残酷な光景がよみがえり再び苦しむことになったりするからです。原子爆弾によって、町は全壊し、1945年12月末までに広島では14万人、長崎では7万人もの尊い命が奪われました。被爆者一人ひとりには、それぞれの未来がありました。熱線に焼かれた人、爆風でガラスが全身に突き刺さった人。放射線は70年たった今でも被爆者の体中を蝕んでいます。私は広島に生まれ被爆者を家族に持つ若者であることに強い責任を感じています。爆者の願いは『戦争を二度と起こさないこと』です。被爆者の方々が必死に原爆の苦難を語られているのは、私たち、そして、私たちの子孫を核兵器から守るためです。その思いを世界のたくさんの人々に発信することは私達の使命です。私たちは高校生平和大使として、力の限り、国際平和をめざして活動を続けます」と述べた。
 スピーチに対して、トルコの大使からは「われわれも支持したい」との声もあった。他方、中国の大使からは「核兵器廃絶という若者の活動は支持するが、南京やアウシュビッツなど、歴史を多角的に見る必要がある」との指摘もあった。われわれは謙虚にその指摘を受け、今後の活動に十分配慮していくことを確認した。


署名を前にした高校生平和大使
(8月・ジュネーブ)
活動を糧に平和の種まきを
 平和大使の一人、長崎東高校2年の内野璃奈さんは次のような感想を寄せている。「第18代高校生平和大使の国連などの訪問を無事に終えることができ、達成感でいっぱいです。今年は被爆70年という節目の年であり、被爆70年記念行事やメキシコ大使館訪問など、例年にはなかった活動をすることができました。訪問した先では多くの方から、『あなたたち若者の活動は素晴らしい、これからも続けていくべきだ。ともにがんばりましょう』という言葉をいただきました。私はこの国連などの訪問で、平和への願いは言葉の壁を超えて共有できる、ということを肌で感じることができました。また、唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶を日本がリードしていく必要があることや、平和は様々な側面があり、日本の被害の面だけでなく加害の面も見ていかなければならない、ということを学びました。国連訪問は終わりましたが、これで平和大使としての活動の終わったわけではありません。これからが私たちの活動のスタートです。それぞれの地元で今回の活動で得たことをいかして平和の種まきをしていかなければなりません。私は長崎の平和大使として、祖父の被爆体験とともに、同世代の人を巻き込みながら平和の種まきを続けていきたいです』。
 全国化・世界化した高校生平和大使の活動には大きな期待が寄せられる。そのためには今後の活動を発展させるための支援体制の強化に努めたい。
(ひらののぶと)

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〔本の紹介〕
「核と人類は共存できない」
森瀧市郎著(七ツ森書館 2015年刊)


 被爆・戦後70周年に当たる今年は、「あらゆる国の核実験に反対」と立場を鮮明にして原水禁運動を再出発させてから半世紀にあたります。原水爆禁止日本国民会議(原水禁)結成50年にあたり、長年、理論的・精神的柱でもあった初代議長の森瀧市郎さんのこれまでの発言を改めてまとめ、基本理念を知るための手引となる標記の書籍を刊行しました。
 私は本書の帯に「核時代の扉を開いたヒロシマ・ナガサキ―ビキニ事件・JCO臨界事故そして福島原発事故と5度にわたる核の惨禍に見舞われた。戦後最大の国民的運動の原水爆禁止運動は、核兵器廃絶や被爆者への援護の運動にとどまらず、『核』を取りまくさまざまな課題を問い、平和を求める大きな思想と運動となった。『核』からの脱却が切に求められている、いまこの時にこそ森瀧市郎(初代原水禁議長)の理念『核絶対否定』『核と人類は共存できない』に再び光をあてる」と紹介文を書きました。その歴史的背景とともに、森瀧議長がどのようにしてそれにたどり着いたのか、その思想的営為が記されています。今日の運動にも十分耐えうる思想の先駆性に目を開かれます。
 1975年の被爆30周年原水禁世界大会の基調の中で「私たちは今日まで核の軍事利用を絶対に否定し続けてきましたが、今や核の平和利用とよばれる核分裂エネルギーの利用をも否定しなければならぬ核時代に突入したのであります。所詮核は軍事利用であれ平和利用であれ、地球上の人類の生存を否定するものであると断ぜざるを得ないのであります。結局、核と人類は共存できないのであります」とし、その上で「共存できないということは人間が核を否定するか、核が人間を否定するかより外ないのであります。われわれはあくまでも核を否定して生きのびなければなりません」と訴えています。
 そのことを他のところでは「精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応に勝たねばならぬ」と表現し、核絶対否定の思想として原水禁運動のテーゼとなりました。そして、その理念の正しさは歴史が証明し、今後も運動の基本に据えさらに発展させていかなければなりません。多くの方々に読んでいただき、運動の基本理念を共有していただきたいと思います。
(井上年弘)

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〔映画の紹介〕
「60万回のトライ」
パク・サユ/パク・トンサ監督(2014年/日本)


 イングランドで開催された第8回ラグビーワールドカップにおいて、日本代表は強豪・南アフリカを破るなどの快進撃を見せ世界中のラグビーファンから称賛を浴びました。
 さて、高校ラグビーを代表する強豪チームの一つに、大阪朝鮮高級学校(大阪朝高)があります。今回紹介する『60万回のトライ』は、全国大会制覇をめざして奮闘する大阪朝高フィフティーンの姿と、厳しさを増す在日コリアンへの差別を同時に映し出すドキュメンタリー映画です。
 2010年春の全国高校選抜ラグビー大会で準優勝した大阪朝高。悲願である冬の全国大会制覇も現実味を帯びてきました。大阪朝高ラグビー部にとってラグビーはただの部活動ではありません。自分たちはラグビーを通じて在日コリアン60万人の希望となり、そして日本社会との懸け橋になるのだ。そうした使命を胸に、保護者や学校関係者のバックアップを受けながら、チームは全国制覇をめざし猛練習に明け暮れます。
 しかし、そんな大阪朝高ラグビー部も日本社会の差別とは無縁でありません。全国の朝鮮学校は「高校授業料」無償化の適用から外され、さらに橋下・大阪府知事(当時)は府内の朝鮮学校への補助金カットを決定します。選手や監督は練習の合間を縫って、差別の是正を求める署名を集めるために街頭に立ち続けます。在日コリアンの希望となるべく奮闘する高校生に対し、日本社会は青春を謳歌することすら許そうとしません。
 劇中に何度も出て来る「ノーサイド」とは、試合が終われば敵味方関係なく健闘を称えあおうというラグビー特有の精神を表した言葉です。大阪朝高ラグビー部は、差別に屈することなく、日本社会と在日コリアンとの「ノーサイド」を実現させようと全国大会を勝ち進んでいきます。果たして彼らは「ノーサイド」を成し遂げることができたのか、それは映画を見てのお楽しみです。
 2014年3月に劇場公開が開始され、いまでも全国各地で自主上映会が開催されています。韓国でも静かなブームを巻き起こしました。ラグビーのルールはわからないという人でも、高校生たちの爽やかな姿に絶対にハマること間違いありません。是非一度ご鑑賞ください。
(パク・スンハ)

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核のキーワード図鑑


銃も核も規制できない国、アメリカ

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憲法理念の実現をめざす第52回大会

 「不戦と民主主義─戦後の誓いを忘れない憲法理念の実現をめざす第52回大会」が11月14日(土)13時~16日(月)11時まで青森市内で開催されます。

●11月14日(土)青森市文化会館大ホール
オープニング/開会総会
シンポジウム「戦争法廃止・立憲主義確立・憲法擁護のため私たちは今後どう闘うのか」シンポジスト鎌田慧(ルポライター、戦争をさせない1000人委員会呼びかけ人)/中野晃一(立憲デモクラシーの会、上智大学教授)/清水雅彦(戦争をさせない1000人委員会事務局長代行、日本体育大学教授)/喜多英之(戦争させない1000人委員会・信州事務局、長野県平和・人権・環境労働組合会議事務局長)

●11月15日(日)青森市内など
分科会(1)非核・平和・安全保障、(2)地球環境-脱原発に向けて、(3)歴史認識と戦後補償、(4)教育と子どもの権利、(5)人権確立、(6)地方の自立・市民政治、(7)憲法
フィールドワークや「ひろば」なども開催。

●11月16日(月)青森市文化会館大ホール
閉会総会特別提起/大会のまとめ/遠藤三郎賞・平和運動賞表彰/大会アピール
問合せ:平和フォーラム(03-5289-8222)
現地実行委:青森県平和推進労組会議(017-775-2401)

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