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ニュースペーパー2016年5月

2016年5月 1日

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原発のない未来へ!3.26全国大集会
 福島原発事故から5年が経過し、チェルノブイリ事故から30年を迎える中、安倍政権は原発推進政策を打ちだし、各地で原発再稼働を強行しようとしています。これに対し、「つながろう福島!守ろういのち!」をスローガンに、3月26日、東京・代々木公園で「原発のない未来へ!3.26全国大集会」が開かれ、3万5000人が集まり、憲法や沖縄基地問題などでも民意を無視し暴走する安倍政権にNO!を突き付けました。
 福島原発事故の現地からは「福島原発告訴団」副団長の佐藤和良さんが発言に立ち、「5年経っても原発事故の終わりがまったく見えない。しかし、政府や自治体は、放射能汚染の不安を抱える被災者を強制的に帰還させ、賠償を打ち切ろうとしている。ともに立ち上がってほしい」と呼び掛けました。
 また、焦点となっている沖縄・辺野古新基地建設について、沖縄平和運動センターの山城博治議長は「裁判所の和解勧告で工事は一時的に止まっているが、政府はまだ方針を変えておらず、現地は緊張の中、座り込みを続けている」と訴え、自ら作詞した「いまこそ立ち上がれ」を熱唱すると、壇上の発言者全員がスクラムを組み唱和しました。
 最後に参加者全員が「つながろう福島!」「原発のない未来へ!」と書かれたプラカードを一斉に掲げてアピール(写真上・撮影:今井明)。デモ行進では工夫を凝らしたプラカードや横断幕を手に声をあげました。

私たちの連帯で安倍政権を打倒しよう
参議院選挙に勝利し全国から包囲網を
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 福山 真劫

 安倍政権は、市民や、私たちの「平和・民主主義・脱原発への願いや要求」を無視して、暴走しています。しかし矛盾が随所から噴き出し、安倍政権の崩壊が始まりました。私たちの闘い方次第で、安倍政権を打倒することが可能な情勢が確実に出来上がりつつあります。今度こそ、私たちの手で、安倍政権を打倒しましょう。時代は確実に変わりつつあります。もう一度、「勝手に決めるな」「安倍はやめろ」とのコールを全国に拡大しましょう。

政治的・経済的・社会的危機がさらに進行
 国際情勢は、従来の米国を中心とする秩序が揺れ動き、軍事・政治・経済・社会面など全体的に混乱に拍車がかかっています。国内的に見ても、そうした全体的危機が進行しています。
 安倍政権の悪政をあげればきりがありません。戦争法や辺野古基地建設強行など、憲法を破壊して軍事大国への暴走、アベノミクスの失敗による株の乱高下と貧困と格差社会の深刻化、勤労者の実質賃金の低下、政権中枢の劣化と腐敗などなどです。
 そうした中でも、安倍自公政権は憲法改悪をするため、7月に予定されている参議院選挙において、議席数の3分の2の改憲勢力獲得をめざし、この事態を乗り切ろうとしています。そして、力を増す市民運動・対抗勢力に対して、その勢力を弾圧・分断・懐柔することと合わせて、世論を操作するため、マスコミへの支配を強めています。
 また安倍政権は、「日本を取り戻す」、「戦後レジームからの脱却」というスローガンに代表されているように、右翼反動政権であり、ナチスを見習い右翼的国民運動との連携も強めています。安倍自公政権を継続させれば、日本は軍事大国となり、周辺諸国との軍事的緊張がさらに高まり、国内的にも政治的・経済的・社会的危機がさらに進行し、日本が崩壊しかねません。何としても、安倍政権を打倒しなければなりません。


戦争法廃止!総がかり大集会
(3月19日、日比谷野音)
政権や与党の劣化と堕落が続く
 2016年の闘いは、15年に作り出した「安倍自公政権打倒の可能性」を実現することが目標であり、そのための私たちの戦略の基本は次の3つです。
  1. 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の枠組みをさらに発展させること
  2. 2015年度以上の大衆的な闘いをつくりだすこと
  3. 補欠選挙・参議院選挙・衆議院総選挙など選挙闘争に参加し、勝利すること
 新しい情勢が確実に生まれています。一つは総がかり行動実行委員会の闘いに代表されるように、シールズ、ママの会、学者グループなど多くの闘いが全国で拡大しています。沖縄ではオール沖縄会議に見られるように、県民挙げての闘いが続いています。脱原発運動、反TPP運動なども盛り上がっています。甘利明経済再生担当大臣の辞任や、議員辞職した宮崎謙介前議員に代表されるように、政権や与党の議員の劣化と堕落が続き、「保育所落ちた」に見られる「女たちの怒り」も拡大しています。
 新たな動きの二つめは、戦争法廃止をめざした野党共闘がさらに進んでいることです。とりわけ5野党による「2.19野党合意」は、「戦争法廃止、自公政権打倒、国政選挙でできる限りの協力」をすることが合意され、次の闘いへの新しい局面を作り出しました。この合意は、それぞれの思惑はあったとしても、政党レベルにおいても、共産党および共産党系諸団体との過去の経過はいったん横に置いて、安倍自公政権を打倒するため、すべての野党、勢力が結集しようということです。この野党共闘を、選挙闘争をはじめ、具体的課題での闘いに生かし、さらに進める必要があります。

多数派は安倍政権の政策を支持していない
 三つめは世論の動きです。安倍自公政権の支持率はまだ高いものがありますが、個別の重要政策では支持されていません。安倍自公政権と対決する野党勢力の弱さが安倍の支持率を押し上げているだけであることは明らかです。
 4月4日付けの「読売新聞の世論調査」によれば、「安倍の経済政策を評価する39%、評価しない49%」、「景気回復を実感している18%、していない77%」、「安保法を評価する38%、評価しない49%」、「保育所待機児童への対応は適切17%、不適切73%」です。
 4月8日付けの朝日新聞の18歳~19歳を対象にした世論調査も同様です。「自立しやすい社会だ14%、しにくい社会だ82%」、「格差はよい範囲だ33%、行き過ぎだ59%」、「努力が報われる社会だ37%、報われない社会だ56%」、「原子力発電は直ちにあるいは近い将来ゼロ58%、ゼロにはしない37%」、「安全保障関連法に賛成41%、反対50%」、「憲法9条を変える20%、変えない74%」、「憲法を変える必要がある33%、必要ない57%」となっています。また、「安倍内閣を支持する38%、支持しない43%」となっており、全体の世論調査では「内閣を支持する」の方が高いのに対し、18歳~19歳では逆転しています。このように多数派は安倍政権の政策を支持していないのです。こうした世論に、野党や労働団体、私たちは応えねばなりません。

地域で「戦争させない1000人委員会」を作る
「戦争をさせない1000人委員会」は、総がかり行動実行委員会の基本を支える組織です。県、市町村、地域で1000人委員会の組織を発足させ、運動と組織を強化することが必要です。この取り組みがないと総がかり運動は足が地につきません。長野や東京で大きく拡大していますが、全国での取り組みはまだまだアンバランスです。東京の総がかり行動実行委員会に類似する組織を全国で作るために努力する必要があります。
 総がかり行動実行委員会は、共産党系の組織も含む共闘組織であり、戦争法案廃止・辺野古新基地建設阻止・参議院選挙勝利へ向け、様々な運動の調整だけではなく、それらをまとめて運動を作りあげる組織です(総がかり行動実行委員会の中間総括を参照)。2015年の闘いの中心であり、広範な運動の高揚をつくりだした中核的組織です。7月の参議院選挙も含めて、戦争法廃止・発動阻止、辺野古新基地建設反対、憲法擁護の方針を基本として、全力で取り組みます。

総がかり運動の爆発的高揚を
 総がかり行動実行委員会は、大衆運動の爆発的高揚をめざしています。その取り組みは、(1)戦争法廃止を求める2000万署名運動、(2)毎月19日の行動、(3)毎月第3火曜の全国街宣行動、(4)5月3日の憲法集会、(5)6月5日の国会包囲大集会、(6)違憲訴訟の支援、(7)沖縄辺野古新基地建設反対の取り組み等が柱です。各県でも独自の取り組みを計画し、全国から安倍自公政権の包囲網を作りあげましょう。
 とりわけ、5月3日の憲法集会は、今年は東京では、有明防災公園で開催予定です。昨年は4万人近くを結集しました。今年は5万人集会をめざして取り組みを進めます。全国でも連動して、憲法集会などが行われます。さらに6月5日は国会前で大集会を予定しています。参議院選挙を前にして、文字通り総がかりで「安倍自公政権の暴走を許さない」の大集会を実現しましょう。そして闘えば、自公政権に勝てるという情勢をつくりだしましょう。


沖縄・辺野古新基地建設反対の座り込み
(3月24日・キャンプシュワブ基地前)
戦争法の発動を阻止しよう
 参議院選挙が7月に予定され、衆議院と同日選挙の動きもあります。参議院選挙での安倍自公政権の狙いは、特定秘密保護法、戦争法強行採決の勢いで、改憲勢力で議席の3分の2以上を獲得し、改憲へ突き進むことです。それゆえ、私たちの獲得目標は、最低でも改憲勢力に3分の2を取らせず、野党で過半数を取ることをめざすことです。そして戦争法の発動を阻止することです。
 平和フォーラムの構成団体の自治労、日教組、私鉄総連などは組織内の比例区候補を擁立し、その当選のために全力で取り組んでいます。また連合も12名の比例区候補の当選のために全力で闘っています。安倍政権を打倒するための中心的役割を果たす必要があります。
 また野党が勝利をするためには、それぞれの奮闘を前提として、1人区での野党共闘の実現は当たり前のことです。そのうえに総がかり行動実行委員会に結集した勢力、労働団体のナショナルセンターである連合、脱原発団体、市民連合、シールズ、ママの会、学者、みなせん(みんなで選挙)やオールジャパン平和と共生、安倍の暴走を許さない市民・若者・学生、全国の色々な組織の総結集が必要です。そうすれば自民・公明党に勝てるのです。
 私たちは、2015年の高揚した力を参議院選挙闘争につなぐことをめざし、昨年12月に、総がかり行動実行委と学者の会、シールズ、ママの会、立憲デモクラシーの5団体で「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)を結成しました。そして、市民連合と協定を結んだ候補の当選、野党の勝利をめざして活動を開始しています。当面は参議院選挙、補欠選挙を視野に入れていますが、衆議院総選挙にも取り組みます。

市民連合とともに選挙闘争への参加を
 2月19日の野党党首の合意は画期的なことです。しかし部分的に候補者の調整ができつつありますが、まだまだ不十分であり、運動の連携は今からつくりださなくてはいきません。市民連合は全国で野党共闘をつくりだすための役割をぜひ果たし、全国で市民連合や類似の組織を発足させ、勝手連的にでもその役割を担う必要があります。市民連合は、総がかり行動実行委員会と連携して、野党共闘でがんばれば、自民党・公明党に勝てるという時代の風を作り出す決意です。
 日本の平和・民主主義・脱原発に責任を持とうとしている勢力は、時代に対応するため自己改革を求められています。自己改革できない組織は舞台から降りるしかありません。ともにがんばりましょう!
(ふくやましんごう)

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工事中断を機に辺野古新基地建設反対運動の再構築を
本土での世論を喚起し、あらゆる手段で阻止へ

 「普天間飛行場の全面返還のためには、辺野古への移設が唯一の選択肢である、との国の考え方に、何ら変わりはありません」。国と沖縄県が和解したにも関わらず、直後の記者会見で安倍晋三首相は、相も変わらず「強い意欲」を表明しました。成立した和解条項を読むと、「埋立て工事は直ちに中止する」「円満解決に向けた協議を行う」とした他は、国が沖縄県知事に対して「是正の指示」をすることから始まり、地方自治法に基づく適法な手続きを踏むことを求めたものにすぎないものです。安倍首相の腹の中は、しばらく工事は中断するけれども、法律に基づいて筋をつければ裁判では勝つ、そうなれば再び着工はできると踏んでいるのでしょう。

普天間移設「最低でも県外」と官僚の抵抗
 沖縄県が実施した2015年度の「地域安全保障に関する県民意識調査」結果が3月末に公表され、普天間基地を辺野古に移設する政府方針に反対する割合が58.1%と、賛成25.5%の倍以上でした。これまでの地元新聞社の世論調査でも7割を超える県民が反対しており、県内のゆるぎない民意が示されています。しかし一方、1月末に共同通信が行った全国世論調査では、政府方針に賛成が47.8%と、反対の43.0%を上回っています。
 普天間基地の成り立ちをめぐる「百田尚樹発言」は論外としても、2017年度から使用される高校教科書の『新現代社会』(帝国書院)の沖縄に関する記述で「県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」「政府も事実上は基地の存続とひきかえに、ばくだいな振興資金を沖縄県に支出」しているなどと、事実とは異なる記述がなされていることも問題です(4月4日に同社から訂正申請があり、文科省は11日に承認した。しかし訂正後の記述も、沖縄だけが特別に振興資金を受け取っている印象を与えるものとなっており、問題が残っている)。
 こうした言説が教科書に登場してしまうことこそ、本土における一般的な沖縄に対する理解の水準が象徴的に示されており、先に見た沖縄県と共同通信による全国世論調査の結果の差となる要因のひとつではないかと考えられます。
 常に本土の犠牲のもとにおかれてきた沖縄の現代史を踏まえて、事実に即した沖縄の現状を世論に訴え続けていくことは、情報の少なさから無関心になる人々へのよびかけとして大切なことです。
 2009年7月、鳩山由紀夫・民主党代表(当時)が普天間基地移設に関して「最低でも県外」と沖縄県内で発言しました。しかし、この発言は、外務省官僚の大きな反発にあいました。米国内で柔軟な対応を模索する動きもあったにも関わらず、その後首相となった鳩山さんを差し置いて、日本の官僚が辺野古案を押し進めるべく暗躍していたのです。
 1972年にも、米海兵隊を沖縄から撤退させる案を米国防省が検討していたところ、アジアにおける安全保障体制にアメリカが関与している一つの形として残しておきたいとして、日本の防衛官僚の引き留めがあったことも明らかになっています。政権が変わっても、米国の顔色をうかがいながら行動する官僚の姿勢が変わらないという問題は、辺野古新基地建設を阻むうえで大きな障害となっています。

米国内に沖縄の声をいかに伝えるか
 「工事がどれくらい遅れるのか。その場合、現在の普天間がどのような形で使えるのか」。3月末に訪米した安倍首相に対してオバマ米大統領が問いただし、「大きな支障がないようにしてほしい」と和解による工事中断に懸念を表明しました。2014年4月にオバマ大統領が訪日した際、安倍首相が辺野古移設を進めていく意欲を示したのに対して、具体的な言及をオバマ大統領はしませんでした。今回の発言は明らかに安倍政権の「辺野古が唯一」に対する米政府内の懸念や疑念が表れたものと言えそうです。
 辺野古での建設に疑念が生じ始める以前から、リチャード・アーミテージ元国務副長官やジョセフ・ナイ元国防次官補など日本に影響を持つ元政府高官らが、辺野古移設の再検討をすべきであるとの見解を表明し、カリフォルニア州バークレー市議会やマサチューセッツ州ケンブリッジ市議会では、新基地建設に反対する決議が採択されています。米政府中枢が抱く懸念を「辺野古断念」にまで追い込むために、米国内の「辺野古再検討」の声を組織化していくロビー活動などに今まで以上の体制で反対運動の側がとりくむ重要性も増してきています。米国の変化は、頑迷な日本の官僚の姿勢の変化にもつながります。
 辺野古の海に約2100万m3の土砂を投入する埋め立て工事は、主に西日本の採石場から土砂を運びだす計画となっています。採石場では採石や保管ですでに環境破壊が進んでいます。生物多様性に優れた辺野古の海を死の海にしてはなりません。国が定めた生物多様性基本法では、地域の生物多様性の保全、生物多様性に配慮した事業活動の促進などを基本的な施策とし、「将来にわたって享受できる自然と共生する社会を実現」することを目的としています。土砂搬出を阻止するための具体的とりくみの検討を平和フォーラムや関係各県でも行っていますが、この闘いは自然環境の保全のうえでも重要な課題となります。
(近藤賢)

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《特別寄稿》
心と生態系の豊かさを取り戻す国に
辺野古基金共同代表・農業生産法人役員  菅原 文子

 沖縄への米軍新基地建設などに反対してきた俳優の菅原文太さんのお連れ合いの菅原文子さんから本誌に寄稿していただきました(編集部)。

 恐いもの知らずというのか、軽率というべきか、夫は74歳の時に「農業をやろう」と言い出した。東京暮らしに何の未練もない私も大賛成で農業を始めた。親しい友人たちと協力して農業生産法人を立ち上げた。もちろん無農薬・有機農業である。理由はシンプル、そのほうが美味しい滋養豊かな野菜が食べられるからだ。皆を笑顔で幸せにする野菜を作りたいではないか。作っている私たちも農薬の害を心配しないで働ける。作る人も幸せだ。ところが有機農業の割合は、日本は欧米や中国に比べてもたいへん低い。理由は、自民党の票田の農協を優遇し、アメリカから言われるままに農薬を買ってきた長い歴史があるからだ。そのような事情は新聞記事程度には知っていたが、取り組んでみると、見えてきたことが幾つかある。経験7年目、まだまだ新入りなので、独断と偏見が混じることを承知で読んで頂けるとありがたい。

食の安定供給は政治の大事な役割
 まず、就農者が約200万人で年々減少しているのはなぜか。人口減少と高齢化に悩む日本にとって、これは職種を問わず共通の課題だが、農業に端的に現れている。農業技術を含めて農地が世襲の財産で、家業を受け継ぐことが戦前までは概ね社会的慣習だった。しかし敗戦後、国家ぐるみで工業社会に切り替わると、危険な汚れ仕事より、都市に出て給料取りになる人が増え、親が経済的にも無理をし、子どもの能力にも無理をさせても大学に行かせるようになった。
 その後、若い働き手が欲しくなると、中国から大勢の研修生という名目の労働者を呼び寄せて、労働力不足を埋め合わせてきた。しかしここ何年か、日中間の関係悪化で中国人研修生が極端に減少した。いよいよ労働力不足の日本農業だが、ここで顔を出すのがTPP(環太平洋経済連携協定)。「輸入すれば良い。作らなくても買えば良い」、それが自民党と農水省、何より同盟国アメリカの意向だ。
 日本が島国で、いざ海上封鎖されたら容易に食料輸入ができないことなど考えていない。「大丈夫だ」と政治家が胸を叩いても誰も信用しないが、それでもスーパーにモノがあふれているので消費者には危機感がまだ薄い。バターが品薄になったが、酪農家は生乳の販売を生産者団体(農協)に任せている。生産者団体が飲用で売るか加工用に売るかを決める。飲用で売る方が価格が高いから、当然バターに回す生乳は少なくなる。食品の安定的供給は、政治の大事な役割。これが出来ない国のグランドデザインは変えたほうが良い。

人を信頼する大らかさが消えた
 逆ピラミッドの人口構成で医療費や福祉にカネがかかり、若い人たちから高齢者が白い目で見られがちで、長生きしているのも肩身が狭い昨今だが、戦後、どれだけ今の高齢者世代が働き通したか、「誰のおかげ」で日本が経済大国になったのか、高齢者は自信をもって良いが、同時にこんな時代になった責任がある。あとは死ぬばかりの老人たちは、戦争をしない国、国民に安全な食を保証する国になるように最後の力(笑)を振り絞って、この国を建て直しましょう。
 農業の労働力不足を解決するために、若い人の参入を進めるような施策はあるが、問題は彼らが独立して農業を始める時に農地を借りるのが容易ではないことだ。各地の農業委員会が、その土地の農業のお目付け役だが、委員の多くは農協のおエライさん達の天下り先なので、土地の気風によっては大らかな土地柄もあるが、保守的、杓子定規な農業委員会もないわけではない。
 都会からやって来たコミュニケーション下手の若者には、ハードルが高すぎる。約73%が中山間地域の日本で、悪戦苦闘して先祖が開いた農地となれば、見知らぬ者に簡単に貸したくないのは分かるが、耕作放棄地にして、ゴミを捨てられるくらいなら、人間を信用し、農業指導も含めて彼らを受け入れる方が世のためではないのか。今はやりのシェアハウスならぬ、シェア農場である。貸借人の若い人たちは、買い物や医者の送り迎えぐらいは頼めばしてくれる。彼らと話すことで話題も広くなり、認知症予防にも良いかと思う。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」と昔の人は言っていた。社会と国から、人を信頼する大らかさが消えた。管理し過ぎては、若い人の農業参入はおぼつかない。
 安倍政権になってから、大型農業推進で企業誘致に躍起の自治体ばかりだが、有機農業を志す個人経営者を育てなければ、この国は利益優先、農薬・化学肥料漬けの農業か、水耕栽培野菜ばかりが店頭に並ぶことになる。医療費を減らし、福祉負担を減らすことを真剣に考えるなら、いのちを大事にする無農薬生産を増やすべきだ。それは小規模農家にしかできない。心の豊かさと生態系の豊かさを取り戻す国にこそ住みたいものだ。
 無農薬農業を始めて3年ほど経ってから、家の軒先にはツバメが毎年巣を作るようになった。夫はこのツバメの訪れを楽しみにしていたが、主なき農園にも今年もツバメは変わりなく訪れ、子孫を増やし、遠い南の故郷に帰ってくれるだろう。
(すがわらふみこ)

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TPP国会審議の焦点
徹底した情報開示で批准をさせない

 後半国会の焦点の一つと言われている環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案(11法案)の審議が4月から始まりました。しかし、政府の情報開示や西川公也委員長の議事運営の問題から、1週間にわたって国会が空転をする事態となりました。今国会は6月1日が会期末であることから、承認を見送ることも想定されています。そのTPPの国会審議の焦点をさぐってみます。

「丁寧に説明をする」≠「黒塗り答弁書」
 TPPは昨年10月に交渉が大筋合意し、今年2月の署名式で正式合意しました。署名後2年以内に12ヵ国全てが国内手続きを終えれば60日後に発効しますが、2年以内に終わらない場合は、12ヵ国の国内総生産(GDP)の合計の85%以上を占める6ヵ国以上が手続きを終えれば発効することになっています。逆に言えば、日本かアメリカのどちらかが国内手続きを終えなければTPPは発効しないことになります。
 そのアメリカでは審議のめどはまったく立っていません。オバマ政権は5月にも法案を提出する意向ですが、議会は11月の大統領選挙後に先送りをする方針です。また、有力な大統領候補はこぞってTPPに反対を明言しており、合意内容の見直しを求めることも予想されます。カナダも首相は承認時期を明らかにしていません。オーストラリアは今夏に選挙を控え、それ以外の国の多くも慎重な姿勢を取り続けています。このため、TPPが発効するにしても、早くても来年以降と見られています。
 こうしたことからも、日本は承認を急ぐ必要はなく、熟議が求められています。しかし、安倍晋三首相は「丁寧に説明をする」と言いながら、説明責任を果たそうとしていません。2013年に日本がTPP交渉に参加する際の国会決議では「情報を速やかに国会に報告し、国民への情報提供を行い、幅広い国民的論議を行うこと」としたにも関わらず、大筋合意後に一般市民を対象にした説明会は東京で1回開かれただけです。
 そうした姿勢は国会審議にも表れ、民進党が日米閣僚協議に関する資料の開示を求めたところ、「のり弁当」と揶揄されるような、表題以外は全て黒塗りの答弁書が出されました。これは、TPP交渉の経過などを明らかにしないという「守秘義務契約」を結んだためです。政府は「交渉は妥結した結果が全てだ」(安倍首相)とし、交渉過程を明らかにせず、これらの文書はTPPの発効後も4年間は秘密扱いにされます。日本がこれまで結んだ自由貿易協定や世界貿易機関(WTO)の交渉でも、これほどのことはありませんでした。TPPの異常さが際立っています。
 合意内容を検証するためには、どのような判断で交渉が行われたかが重要です。金銭授受問題で閣僚を辞任した甘利明前TPP担当大臣は各国の閣僚と個別に交渉を行ってきました。しかし、「病気」を理由に国会で証言を行おうとしません。官僚でも中心となっていた鶴岡公二TPP首席交渉官は駐英大使となりました。交渉の核心部分を知る人物が不在では、情報開示が表層的なものに留まることが懸念されます。


TPP審議の報告会で黒塗り答弁書を示す福島伸享衆院議員
(4月13日・参議院議員会館)
「農業への影響はない」≠「1兆円以上の打撃」
 こうした情報開示だけでも多くの問題を抱えていますが、すでに本誌3月号でも指摘をしたように、その内容も様々な課題があります。最大の焦点となった農産物では、国内農業への影響や重要農産物は関税を撤廃しないとした国会決議との整合性が問われています。
 政府が行った農業への影響試算では、農林水産物の生産額が価格の低下によって約1300~2100億円減少するものの、国内対策によって農家所得や生産量は維持されるとしています。生産現場からは、これはあまりに過小であると指摘されています。TPP問題に詳しい東京大学の鈴木宣弘教授は「生産量と所得に影響が全くないというのは無理がある」として、国内対策を打たない場合に農産物で1兆2614億円、林水産物を入れると1兆5594億円の減少になると試算しています。
 一方、政府はTPPにより国内総生産(GDP)は約14兆円増加し、80万人の雇用創出になるとしていますが、その根拠や時期は明確になっていません。米マサチューセッツ州タフツ大学の世界開発環境研究所が行ったTPPの影響分析では、発効後10年間で、日本の国内総生産は0.12%落ち込み、7万4000人の雇用が喪失するとしています。雇用はTPPに参加する12ヵ国すべてで減少し、労働分配率が低下して格差がさらに拡大するとも指摘しています。これは、アメリカが結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)から20年経った結果を参考に試算したものです。政府試算の妥当性が問われています。
 平和フォーラムは、関係団体とともに、今通常国会では批准させずに、今夏の参議院議員選挙で争点化し、最終的にTPPの白紙撤回を求めていくことにしています。
(市村忠文)

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破綻した核燃料サイクルの弥縫策
問題だらけの「再処理実施法」
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸


再処理工場前での抗議集会
(4月10日・青森県六ヶ所村)
 使用済み核燃料の再処理をなにがなんでも継続させようとする法律改正案が国会で審議されている。成立すれば「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」(再処理実施法)となる。旧法では六ヶ所再処理に必要な費用と輸送費用を積み立てる法律であったが、新法ではこれに加えて、MOX燃料加工と将来の再処理(第二再処理工場)に必要な費用も取り立てることになっている。しかも、旧法は積立金であるのに対して、新法では拠出金となる。
 この時期に改正案が出てくる背景には、電力が自由化されて競争環境が激化すれば、電力会社で再処理から撤退するところも出てくるかもしれない。あるいは、電力会社が破たんする場合もある。それに連動して日本原燃が破産することを避けるためだと説明している。再処理は競争環境下では事業として成立しないから、維持する法律を作ろうというわけだ。そこまで再処理にこだわるのは、2018年に日米原子力協力協定が期限切れを迎え、再処理の権利を確実に維持するために法的に裏付ける政治的な狙いがある。

実態は「再処理義務付け法」
 法は原発設置者が「再処理等の責任を負う」(4条)とし、さらに再処理機構は経済産業大臣から認可された「実施計画に従い、当該拠出金に係わる使用済燃料の再処理等を行わなければならない」(9条)としている。まさに、再処理の義務付けと言っていいだろう。資源エネルギー庁は、原子力規制委員会から再処理することで許可を得た原子炉設置者だけが対象なのであって義務付けはしていないと弁解している。確かに法にはそう書いてあるのだが、では再処理しないことで許可が得られるのかといえば、国の原子力政策と整合することが求められていたので、再処理しないなど書けるはずもなかった。既設炉に関しては再処理することで許可を得ているのだから義務といえる。もっとも再処理しないとの変更申請を行う選択肢もあるが、少なくとも使用済燃料の直接処分の道が開けるまでは、閉ざされた選択肢であろう。
 再処理実施法では、新たに経産大臣の認可法人として「再処理機構」を設立するとしている。同機構は、事業計画、中期事業計画など再処理の実施に係わる計画や拠出金額などについて経産大臣の許可を受けることになっており(第16条)、「再処理等の実施の業務を行う」(第10条)。「業務を行う」と書くことで、再処理事業を行うわけではないので、原子力規制委員会の規制対象とならないと強弁している。しかし、再処理に責任を持つのは機構であり、規制法上の事業指定を受けるのが本来のあり方ではないか。これを省略したいのは手早く機構を設立することが狙いだと考えられる。

拠出金の決定方法は? 将来の不確実性への対応は?
 14年度末の積立金の残高(2兆3800億円)は、機構に引き継がれることになっている。今後の拠出金は使用済み燃料発生量に単価を掛けて積み立てることになっている。拠出金単価の決め方は政令によるとされており、現時点ではこの政令はない。ただ、拠出金には六ヶ所での再処理等の金額、MOX加工等に係わる金額、そして六ヶ所では再処理されない使用済み燃料の将来の再処理等に関わる金額が含まれると推察される。
 単価算定では、2004年に示された核燃料サイクル関係の費用(六ヶ所再処理とMOX燃料加工に関するものを併せて13.4兆円)の現時点での再評価がベースになると考えられる。ただし、第二再処理は40年以上も先のことであり、仮に割引率2%を考えれば、内部留保されている金額は現時点での想定の半分以下になる。これらを拠出するのだが、電力としては、再処理の実施主体は再処理機構であるので、拠出さえすれば後は機構の責任で処理されていく、いわば「手切れ金」のようなものである。
 エネルギー基本計画は再処理の継続を言いつつ、将来の不確実性への対応を求めて、経産省は使用済燃料の直接処分の研究を進めている。しかし、法案はあくまでも再処理を継続することを求めて、原発設置者が拠出金を納付した時には実施計画に従い、拠出金に関わる再処理等をおこなわなければならないと規定している(第9条)。しかし、日本原燃がトラブルなど技術的な問題、あるいは余剰プルトニウムなど対外的な問題で再処理が実施計画通りにできなくなった場合にはどうなるのか?
 日本原燃の破たんを避けるためには資金提供し続けることが避けられず、それは将来の再処理費用を先取りすることになり、結局は先に行ってから事業破たんすることになるのは必至だ。今だけを凌ぐつじつま合わせの法律と言える。そのような弥縫策をやめ、再処理からの撤退を進める方がはるかに健全である。
(ばんひでゆき)

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G7外相広島宣言──
長年「非人道性」を訴えてきた日本?

 G7外相会合広島宣言を巡る報道の中で、日本が以前から主張してきた「核兵器の非人道性」を核保有国の抵抗で引っ込めたとの説明がしばしば見られます。確かに、日本は1994年以来、毎年国連総会に提出している核軍縮決議案の中に「核兵器のあらゆる使用の悲惨な人道的結末に深い懸念を表明し」という文言を2010年から入れています。しかし、この文言は2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書にある表現から来ています。

物語の始まりは2010年再検討会議最終文書
 2010年再検討会議最終文書は、会議は核兵器が「使用される可能性と、使用がもたらすであろう壊滅的な(非)人道的結果に対して深刻な懸念を表明する」、「会議は、核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念を表明し、すべての加盟国がいかなる時も、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」(ピースデポ訳)としています。
 これを受けた2010年の日本決議には次のようにあります(以後同じ表現を2015年まで継続使用)。「核兵器のあらゆる使用の悲惨な人道的結末に深い懸念を表明し,また,核戦争及び核テロリズムを回避するためにあらゆる努力が払われるべきことを確信しつつ、すべての国が国際人道法を含む適用可能な国際法を常に完全に遵守する必要性を再確認し...」(外務省仮訳)。この日本決議には米国が主要共同提案国となり、英仏ロも賛成票を投じています(中国は棄権)。2012年の日本決議では英国も共同提案国に加わりました。2014年まで英米仏は賛成、ロシアも2013年まで賛成という状況でした。

最終文書を使って始まった人道性キャンペーン
 2010年最終文書の文言に焦点を当て、2013年3月(ノルウェー)、2014年2月(メキシコ)、2014年12月(オーストリア)と国際会議を開き、非人道的な核兵器を早期に廃絶するために核兵器禁止条約を結ぶべきというキャンペーンを展開してきたのは他の国々です。これらの国々は2012年5月2日、「2015年核不拡散条約再検討会議第一回準備委員会」において「核軍縮の人道的側面に関する16か国共同声明」(オーストリア、チリ、コスタリカ、デンマーク、バチカン、エジプト、インドネシア、アイルランド、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、南アフリカ、スイス)を発表。非人道性を強調し「もっとも重要なことは、このような兵器が、いかなる状況の下においても二度と使用されないこと」と述べています。
 日本は、これが核の傘に依存する日本の政策と矛盾するとして参加を拒否しました。日本政府は、生物・化学兵器及び大量の通常兵器による日本への攻撃に対しても、米国が核兵器で報復するオプションを維持することを望むとの立場を表明してきています。核兵器攻撃に対する報復以外の場合には核兵器を使わないとする「核兵器先制不使用」宣言を米国がすると日本の安全保障に責任を持てなくなるというのがこれまでの外務省の説明です。この政策が変わらない限り、共同声明に参加出来ないのは当然とも言えます。日本は、2012年国連総会第一委員会、2013年NPT第二回準備委員会における上記の国々の共同声明にも参加しませんでした。
 ところが、日本は2013年の国連総会第一委員会で出された共同声明(10月21日)には、妙な説明をして参加しました。菅義偉官房長官は22日午前の記者会見で、声明の中に「我々は、核兵器の壊滅的な結末についての意識が、核軍縮に向けたすべてのアプローチ及び努力を支えなければならないことを確信する」とあることに触れ「核軍縮に向けた全てのアプローチを明記することで、拡大抑止政策を含む安全保障政策、日本の今までの考え方と同じ考え方がその中に入っている。この政策の中で、段階的に核軍縮を進める日本のアプローチと、[声明]とが整合的であることが確認できた」と解説しました。[先制使用も含む]核抑止によって自国の安全を保ちながら段階的核軍縮をめざすという日本のアプローチも認められたという意味不明の解釈です。

2014年オーストリア「人道性誓約」と翌年の国連決議
 2014年12月8~9日に開かれた「核兵器の人道上の影響に関するウィーン会議」の主催国及び議長国として、オーストリアは会議の最後に、核兵器の非人道性を強調し、核兵器の禁止・廃棄に向けた行動を起こすことを誓う独自の「誓約」を発表しました。2015年12月7日、これに基づく「核兵器の禁止と廃絶に向けた人道性の誓約」決議が国連総会で投票に付され、賛成139、反対29、棄権17という結果となりました。日本は北大西洋条約機構(NATO)加盟国のほとんどの国々とともに棄権しました。
 一方、2015年日本決議案は、「人道的結末」に関する若干の追加がありましたが、米英までが棄権になったのは、日本案の人道性部分が強くなったからというより、同じ人道性という表現を使う「誓約」決議の煽りを食ったということでしょうか。中国が反対し、韓国が棄権した理由は、「各国指導者や若者らが核兵器使用の被害都市を訪問すること」を奨励した部分が日本を全般的「被害国」と捉える姿勢と取られ反発を招いたことにあるようです。オバマ大統領は、5月のG7伊勢志摩サミットでの訪日の際に広島を訪れるかどうか、微妙な政治的計算をしていると伝えられています。昨年の段階で自分の広島訪問を確約するような文言に賛成するのは困難だったのではないでしょうか。
 オバマ大統領が広島に訪れた際に意味のある発表ができるようにするためにも、日本は少なくとも、米国が核兵器の唯一の役割は核攻撃を抑止することにあるとの宣言をすることに反対をしないと明言すべきです。日本政府の核政策を変えさせることが日本の運動の課題です。
(田窪雅文:「核情報」主宰)

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チェルノブイリ原発事故30年―被災の体験を語る
ジャンナ・フィロメンコさん(ベラルーシ)のお話から

 1986年4月26日に旧ソ連のチェルノブイリ原発事故が起きてから30年、3月27日にさようなら原発1000万人アクション実行委員会の主催で開かれた「講演会さようなら原発―世界から」(東京・星陵会館)で、チェルノブイリ原発事故について、ベラルーシ共和国に住む被災者のジャンナ・フィロメンコさんがこれまでの体験を話されました。(まとめ・編集部)

「平和の核」が生活を破壊した
 私は、チェルノブイリ原発から北西40キロのナローブリア地区に住み、事故当時、夫と幼稚園に通う二人の男の子(2歳半と5歳半)と暮らしていました。小さい頃、学校でヒロシマ・ナガサキの悲劇を学び、佐々木貞子さんのかわいそうな境遇を知り、このような恐ろしい原爆をどこの国でも使用されないように願っていました。しかし、「平和の核」が私の家族、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの多くの人々の生活を破壊しました。
 1986年4月26日にあの恐ろしいチェルノブイリ原発事故が起こりました。当時のソ連政府は、事故のことは一切教えず、住民は普段通りの生活を送っていました。住み慣れた土地が汚染されていたことは全く知りませんでした。5月3日、4日になって子どもたちの一時避難が始まりました。しかし8月の末になって子どもたちがその汚染地の家に帰ってきました。
 私は、事故後、大好きだった春や夏を好きになれませんでした。気候がいい季節なので子どもたちが外へ行きたがったからです。早く雨や雪が降る秋や冬がやってきて、子どもたちが室内にいることを願っていました。幼い子どもたちには、草や木の実、砂などが放射能に汚染されていることが理解できなかったのです。
 当時、正式にはどのような被曝が起こっているかは発表されませんでした。しかし、大人たちは放射能汚染レベルの真実が隠されていると理解しはじめ、そして自分たちで生き残るために移住に向けた闘いを始めました。ソ連時代には禁止されていた集会やデモ行進・「チェルノブイリへの道」などを行いました。
 このような行動の結果、事故後5年目の1991年に「チェルノブイリ法」ができ、それによりナローブリア地区は「移住対象区域」となりました。私たちも91年にやっと非汚染地域への移住が認められました。


原発のない未来へ!
全国集会で話すフィロメンコさん
(3月26日・代々木公園 )
移住、慣れない生活、言われなき差別
 私たち家族はミンスク郊外の新興住宅地区マリノフカ地区の高層アパートへ移住の権利を得て、91年に移住しました。その際4ヵ月分の給料の前払いや引っ越しの車代などを得ましたが、移住先での仕事の斡旋もなく、健康被害の補償も受けられませんでした。慣れない都会での生活はまさに「ゼロからスタート」でした。
 原発事故のような大きな事故で一番被害を受けるのが農業です。移住者の多くは農業従事者で、新しい土地で自分の専門の職(農業)につくことはできませんでした。また、移住者の子どもも新しい土地になじむことはできませんでした。子どもたちは「チェルノブイリのハリネズミ」と呼ばれたり、隣に座ることを嫌がられたりしました。そのようなことで心理的なトラウマを受ける子どもたちがいました。特に思春期の子どもたちは傷つきました。それは今も多くの子どもたちに残っています。こうした移住者のことが理解されるまで長い時間がかかりました。
 しかし、人々を移住させた政府は責任を放棄しました。被曝したことは家族の問題とさせられました。マリノフカ地区には約1万人が移住しましたが、同じような境遇の住民が次第に連絡を取り合うようになり、「移住者の会」がつくられました。私はその会の代表を20年務めました。
 私は、移住までの5年間、30キロ圏内で軍や警察など事故処理作業者への給食管理業務に従事していたことから、私自身も「事故処理作業者(リクビダート)」に認定されました。夫は移住後2年で心臓発作を起こし急死してしました。長男は事故後、41度の高熱を出した後遺症で知的障がいが残り、「チェルノブイリの障がい者」に認定されました。

「原発をやめる」という選択を
 そして、「平和の核」が私を再び襲いました。2011年のフクシマ原発事故です。原発が故郷の大地に黒い傷跡を残し、自分たちの住みなれた場所を捨てることがどんなにつらいことか、そして避難した先にどんなに長い時間住み続けるかわからないことは不安を掻き立てます。
 放射能には国境はありません。大陸も関係ありません。人間は核を安全にコントロールでききないことが分かっているのだからこそ、「原発をやめる」という選択を取らなければなりません。そして、核被害者の声を聞かなければなりません。被害者の権利を守らなければなりません。そして被害者のことを忘れてはなりません。過ちを再び繰り返さないでください。

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《投稿コーナー》被爆体験者に一筋の光が!長崎地裁が判決
指定地域外で初の被爆を認定
被爆体験者訴訟原告団相談役 平野 伸人

年間被ばく線量25ミリシーベルトで線引き
 1945年8月9日の長崎原爆投下時に、国が定めた被爆地域外にいたために被爆者と認められない「被爆体験者」が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めた被爆体験者訴訟第2陣161人について、長崎地方裁判所は今年2月22日、年間被ばく線量が25ミリシーベルトを超えると推測される地域の原告10人に対して、被爆者健康手帳の交付を命じる判決を下しました。
 10人の原告は原爆投下時に爆心地の東にある旧長崎県西彼杵郡矢上村や旧長崎県北髙杵郡戸石村にいた人たちで、アメリカのマンハッタン原爆調査団の放射線測量データを基に、長崎県保険医協会の本田孝也会長が解析・推定した外部被ばく線量が25ミリシーベルトを超えるとされた人でした。この場合は、福島原発事故において、当初、計画的避難区域に指定され、その後、居住制限区域に指定された地域と同程度ないしそれを超える年間被ばく線量の被ばくをする状況ということができます。
 判決では「自然放射線による年間積算線量の世界平均2.4ミリシーベルトの10倍を超える場合には健康被害が生じる可能性がある」とした上で、「放射性降下物による外部被ばくに加え、放射性降下物を呼吸や飲食などで摂取し、それによって内部被ばくが生じる可能性がある」として、該当する10人について、身体に原爆放射線の影響を受けるような事情の下にあったことを要件とする3号被爆者と認め、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を命じました。
 今回の判決では、被爆地の範囲を広げた点では評価されるものの、25ミリシーベルトで線引きしたことについては根拠が不明確です。自然界の約10倍の放射線被ばくは健康被害の可能性があるという判決でしたが、その根拠はあまりにも不合理です。しかも、161人の原告中10人だけが認められ、そのほかの151人の訴えは認められませんでした。しかし、わずか10人とはいえ、被爆体験者を被爆者と認める初めての司法判断が下されたことで、被爆体験者の問題に大きな風穴を開けることが出来た判決とも言え、評価が分かれる結果となりました。


原爆被爆地域図
長崎原爆の被爆地は、
南北に長い長崎市の行政区域で指定されているため、
爆心地からの距離で見ると、
より近い地域であっても被曝地域となっていない。
国のいいなりの県知事・長崎市長に憤りと失望
 原告団は、長崎県知事と長崎市長にして、訴えが認められた10人について直ちに被爆者健康手帳を発行するよう求めるとともに、敗訴した151人については控訴して闘いを続けることとなりました。
 完全解決とは言えませんが、高齢化し病苦に苦しむ「被爆体験者」の救済の一歩が始まったとの期待が高まりました。県知事と市長は、認められた10人に対して「被爆者健康手帳」を直ちに発行するべきでした。ところが県知事と市長は「国の強い要請があった」として、10人について福岡高裁に控訴しました。このように、国の言いなりになり、高齢化している「被爆体験者」のかすかな希望を踏みにじる暴挙は許されるものではありません。
 長崎原爆の被爆地は、旧長崎市という行政区域を基本に定められたために、南北にいびつな形になっています。南北は爆心地から12.3㎞までが被爆地なのに、東西は爆心地から7.5㎞の地点さえ被爆地として認められずにいるのです。
 被爆後71年間も放置され、そのため、被爆者と認められない「被爆体験者」には被爆者援護法による救済はおこなわれていません。被爆者なのに被爆者と認められない不条理は許されません。

当事者を救済する政治的な解決を
 第1陣の控訴審判決が来る5月23日に福岡高等裁判所で下されます。原告は388人ですが、すでに1割以上の64人(第2陣の10人を含む)が亡くなっています。第1陣の提訴から9年目でようやく控訴審判決です。第2陣も提訴から5年が経過して地裁段階の判決です。被爆71年目を迎えるというのに、未だに救済されない被爆者がいるのです。司法での解決を待つばかりでなく、当事者の救済の立場に立った政治的な解決も待たれます。5月23日の福岡高等裁判所の判決では、2月の長崎地裁判決以上の判決が下されるのではないかという期待が高まっています。
(ひらののぶと)

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各地の1000人委員会の活動から
走りぬいた2年間
輪も広がる 1000人委員会・東京南部事務局 石河 康国


400人が参加したJR蒲田駅前宣伝行動(8月29日)
 東京南部(目黒・大田・品川・港の4行政区)の戦争させない1000人委員会の準備は2014年5月に福山真劫さん(平和フォーラム共同代表)を招いた勉強会から始まった。福山さんの熱弁に共感して各方面に働きかけ、6月に山内敏弘一橋大名誉委教授を講師に「1000人委員会・東京南部」発足集会を150人の参加で開催。超党派の区議会議員、弁護士、市民、労組など各方面から参集して決意を固めた。
 そして、首相官邸前行動、主要駅での駅頭宣伝、署名活動にとりくんだ。一つの区だけでは少人数だが、相互に応援に行くとやる気になる。講演会も、14年10月に活動家の高遠菜穂子さん、15年2月には藤本泰成・平和フォーラム事務局長、5月には東京新聞の半田滋さん、8月には内田雅敏弁護士と、勉強と行動をくりかえしてきた。4月の自治体議員選挙も戦争法反対の区会議員を応援しようと、2月に候補者を招いて激励した。
 また、戦争法案を廃案にさせるためには公明党に働きかけるのが大事と考えて、6月には公明党衆参全議員に議員会館での要請行動をおこなった。夏からは総がかり行動実行委員会が駅頭一斉宣伝を始めたので、私達も自主的に地元の駅頭を受け持った。国会前も含め文字通り連日行動だった。
 闘いの輪も大きく広がった。「怒れる女子会」「ママの会」など従来、駅頭でマイクを握ったり署名をとったりしたことのないたくさんの女性が行動に参加してきた。彼女たちが自分の言葉で訴えるのを聞き、旧い活動家の方が感銘し勇気づけられた。
 さらに、大田区では昨年7月から「弁護士9条の会」の呼びかけで「オール大田」という総結集がはじまった。憲法共同センターなどと1000人委員会が協力し共同行動を展開。蒲田駅頭宣伝ではかつてない集まりとなった。『金太郎あめ』ではない新鮮な顔ぶれに元気になり、参加を躊躇していた市民も参加しやすくなり、相乗効果は大きい。「オール大田」は法案強行採決後も、駅頭宣伝を続け、今年の2月21日には蒲田駅頭で野党5党勢ぞろいの参院選をめざした宣伝行動をとりくんだ。
 大きなまとまりができたからこそ、大胆に総がかり的な共闘に踏みこめたのだから、ひき続き1000人委員会南部の独自行動も強めている。第3火曜の全都一斉行動に取り組み、福島みずほ参議院議員も駆けつけ、にぎやかな宣伝・署名行動となった。
(いしこやすくに)

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〔映画の紹介〕
「ヤクザと憲法」
圡方宏史監督(2016年/日本)

 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」。この憲法14条を奇抜な視点から扱ったのが、ドキュメンタリー映画「ヤクザと憲法」です。「ヤクザは追い詰められている」という話を聞いた東海テレビのディレクター・圡方宏史。強面なイメージのヤクザが「実は社会の底辺にいるのかもしれない」と思った圡方は、「謝礼は払わない」「収録テープなどを事前に見せない」「モザイクは原則かけない」の3つを条件にヤクザへの取材を始めます。そして放映されたドキュメンタリー番組が話題を呼び、劇場公開用として本作が再編集されました。
 劇中に出て来るヤクザの日常はあまりにリアル。明らかに薬物の密売や野球賭博を行っているだろうという場面には、「よくぞここまで撮った、よくぞここまで撮らせた」と感心してしまうほど。一方で、権力によって追い詰められていく彼らの姿には同情を禁じ得ません。暴対法や暴力団排除条例はヤクザというだけで彼らを社会から排除しようとするものであり、ごく普通の社会生活を送ることさえも禁じます。銀行口座を作ることは出来ず、子どもも保育園から追い出される。交通事故に巻き込まれ保険会社と交渉しているだけで「恐喝罪」をデッチ上げられ逮捕される。翻弄される彼らの姿は、私たちのイメージするヤクザとは真逆です。疲れ果てた表情の組長に「別の道はないのですか?」と聞くと、「正業も奪われて、どこが受け入れてくれるというねん!」と怒りのこもった言葉が返ってきます。
 作家の宮崎学さんによると、ヤクザの多くが貧困や差別の中でその道を選ばざるを得なくなった人々だと言います。実際に本作にも元ひきこもりや在日と思われる人が出てきます。ヤクザを生み出すような社会の矛盾を変えようともせず、一方的にレッテル張りして排除していく。その果てに待っている社会は本当に安全な社会なのか。逆にヤクザをさらに地下に潜らせ、警察権力を肥え太らせるだけではないのか。
 アウトローの視点から憲法を扱った異色の本作は多くの反響を呼び、全国各地の劇場で公開されています。すべての人々が共に生きるということはどういうことなのかを考えさせてくれる映画です。
(パク・スンハ)

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核のキーワード図鑑


聖火は原子力の火で......

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新規加盟組織の紹介
「いのちを守ること」を主軸に-日本消費者連盟

 日本消費者連盟(日消連)は1969年創立の消費者団体です。創立以来、大切にしている「すこやかないのちを未来につなぐ」という理念の下、「ラーメンから原発まで」をモットーに幅広い運動を展開しています。
 とりわけ力を入れているのが食の問題です。1970年代は発がん性が明らかになった食品添加物AF2の追放運動や、防かび剤使用輸入果物の不買運動を繰り広げました。80年代には農産物輸入自由化反対運動を展開、現在も「食料主権」を掲げて生産者団体とともに活動しています。90年代半ばに遺伝子組み換え食品が食卓に上るようになると、消費者の知る権利・選ぶ権利を担保する表示の必要性を訴え、遺伝子組み換え食品表示制度を全国の消費者団体・市民団体・農業団体等とともに実現させました。
 私たちの運動の主軸は一貫して「いのちを守ること」にあります。平和憲法を高く掲げて運動しているのもそのためです。2014年には「消費者・生活者9条の会」を設立、憲法を踏みにじるものに主権者として声を上げ、すべての人々が穏やかに暮らせる社会をつくり上げていくことを宣言しました。
 草の根民主主義を掲げた50年近い活動の中で、会員による地域グループが立ち上がりましたが、まだまだ力不足です。さまざまな運動団体が結集する平和フォーラムへの参加を機に、消費者による自主的な運動の拠点が各地にできることを期待しています。
(纐纈美千世事務局長)

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