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ニュースペーパー2016年7月

2016年7月 1日

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明日を決めるのは私たち―6.5全国総がかり大行動
 6月5日に総がかり行動実行委員会と市民連合がよびかけた「明日を決めるのは私たち-6・5全国総がかり大行動」が国会周辺3会場で実施され、4万人が参加。また、全国100カ所以上で同様の集会等が開催されました。市民連合を代表して山口二郎さん(法政大学教授・学者の会)が「戦争する国になるのを食い止めるのは今を生きる私たちの最大の責務だ。参院選挙で改憲勢力の3分の2確保を阻止するばかりでなく与党を過半数割れに追い込み、安倍内閣を退陣させる、そのために力を合わせよう!」と呼びかけました。
 政党からは、民進党の枝野幹事長、共産党の山下副委員長、社民党の吉田党首が挨拶し、参院選の1人区すべてで野党共闘が成立したことに触れながら「市民と野党の力で参院選勝利を!」と、それぞれ訴えました。
 また、湯川れい子さん(音楽評論家)や高野孟さん(ジャーナリスト)、ママの会の星野さなえさん、安保法違憲訴訟の会の古川健三さん(弁護士)、一橋大学名誉教授の田中宏さんが「今度の選挙は安保が第一の争点だ。あらゆる知恵とエネルギーを使って安倍政治の流れを断ち切らなければならい」などとアピールし、参加者は戦争法の廃止と安倍内閣退陣の実現に向けてシュプレヒコールを行いました。(写真は国会前につめかけた市民)

インタビュー・シリーズ: 113
「核廃絶」こそ「謝罪」の証 元広島市長
秋葉 忠利さんに聞く


あきば・ただとし さん
 1942年東京生まれ。マサチューセッツ工科大学で博士号を取得後、ニューヨーク州立大学、タフツ大学等で教鞭をとる。世界のジャーナリストを広島・長崎に招待し、被爆の実相を伝えて貰う「アキバ・プロジェクト」の運営に携わり、その後、広島修道大学教授に。1990年から衆院議員を10年近く務めた後、99年に広島市長就任。市長在職中に平和市長会議(2013年8月に「平和首長会議」に改称)会長を務め、「国家」ではなく「都市」を主軸に世界平和を達成する道を提唱する。著書に『新版報復ではなく和解を』(2015年、岩波書店刊)など。

―5月27日にオバマ大統領が広島を訪問しました。どのように評価されますか。
 オバマさんの広島訪問にあたって、マスコミは「謝罪」という言葉をあたかもキーワードであるかのように扱いましたが、もっと基本的な流れを理解することが必要です。それは被爆体験です。どれほど酷かったかを伝えようとしても伝わらなかった辛い経験を被爆者は持っています。だから、とにかく伝えたい、分って欲しいという強い気持があったのです。それに応えて広島に来た人達からは、人生が変わるほどの感動を受けたという励ましの言葉が発せられるようになりました。苦しい生活の中で被爆体験の意味を探り続けていた被爆者にとって、その意味がだんだんハッキリするようになったということです。それが、米国の大統領にも来てほしいという気持につながりました。まず分って欲しい、そこから次が始まるという考え方です。
 被爆者にとっての「謝罪」は、常識的なそれとはかなり違います。ある被爆者は「あれほどのことに対して口で謝罪と言われてもね」と表現しています。「あれほどのこと」の行き着く先は「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」です。つまり核兵器の廃絶です。ですから被爆者にとっては、まず広島に来て実相を見てほしい、見た上で核兵器をなくすためにみんなで一緒に動いてほしいという点が大切なのです。ですから「謝罪」=「核廃絶」と言っても良いと思います。それを被爆者流の「和解」の気持と表現しています。それは、憎しみや暴力、そして報復の連鎖を断ち切り、考え方が違っても共通点を見つけて平和を創るために協力をしましょうという考え方です。

―そうすると、日本の加害責任について議論することも必要なのではないでしょうか。
 米国人の世界観の基本には真珠湾(パールハーバー)と原爆投下があります。真珠湾(パールハーバー)は国際法違反であり、日本の加害行為の象徴ですが、それに対して日本政府ならびに日本人はあまりにも鈍感です。同時に、それを錦の御旗にして「原爆投下が全てのことを正当化する」という信念で、世界の警察官を自認し力の支配を続けてきたアメリカ社会の固定した歴史観や考え方を変える努力も必要です。オバマ大統領の広島訪問は、そのために大きく貢献することになるでしょう。
 ただ、日本人は米国だけでなく全ての加害責任に対してあまりに鈍感です。日本政府そのものの鈍感さと表裏一体です。それを変える力があるのは主権者なのですが、「国が起こした戦争の犠牲は国民が受忍しろ」と、国からは切り捨てられているにもかかわらず、明治時代以降は「英雄の時代」だという、政府とマスコミが一体になって作り出した物語を国民が信じ込まされ力を奪われてしまっています。そのフィクションの上に立って、昨今は力の支配を国の方針に掲げ、「英雄の時代」に戻ろうという国策を展開しています。この流れの中で、日本国民は真実から遠いところに置き去りにされて日本政府によって作られたフィクションの世界で生きているのではないでしょうか。
 しかしそうした政府を変えるのも、結局は私達です。そのためには歴史を正確に客観的に学ぶことが必要ですし、今の政府の暴政を理解し、行動することが大事です。

―オバマ大統領のプラハ演説から7年、核兵器廃絶のプロセスにおいてどのような影響があったのでしょうか。
 オバマさんはプラハ演説の中で3つの表現を使っています。1つは「核兵器を使った唯一の核保有国」、2つ目が「道義的責任」、3つ目が「私の生きている間に」です。最初の2つは、並べて読むと「原爆投下の道義的責任をとる」と理解しがちな言葉です。でも本当の文脈は違います。米国では原爆投下を正当化してきた人が圧倒的多数であるにも関わらず、敢えて誤解を招くような表現をしたのは、広島・長崎に対する彼の姿勢を示したかったからだと思います。「自分は広島・長崎の問題について道義的責任という観点からも十分理解している。そのことを広島・長崎の人達、そして世界にも理解してほしい」と言いたかったのだと思います。その時点で、彼は被爆地訪問を決めていたはずで、その決意表明の言葉だったのだと思います。
 また、「私が生きている間に」と言うことで、彼は時間枠を設定しました。この時間枠は被爆者や第二次大戦の体験者が生きている間という時間枠と重なります。つまり、彼は「任期中に広島に行く。被爆者の生きているうちに核兵器も廃絶する」と考えていたのではないでしょうか。
 このプラハ演説の影響は大きかった。というのも「原爆投下は正しかった」という米国内の世論は、1945年には大体85~90%でした。それが2009年に67%、15年には56%になりました。1945年から2009年までは10年毎に3%弱くらいしか下がってないのに、2009年から15年の6年間で11%も下がっている。約6倍の速さで世論が変わっています。これはオバマ効果です。
 実は、米国人も心の中では原爆投下について「とんでもないことをしてしまった」くらいの気持は持っています。しかし、退役軍人等を中心に「原爆投下は正しかった」という正当化が社会的に認知されています。そんな中で「原爆投下は間違っていた」とは言えないのです。しかし、大統領が「道義的責任」という言葉を使った。これを聞いた人達の中には「自分の感じていたことは正しかった」と思えるようになった人が出てきた。その結果、世論の大きな変化が起きた。プラハ演説は、広島訪問を実現するための環境を整備したという意味でも大事です。
 また、オバマ大統領は広島訪問を通じて、今後、他の大統領も広島に来られるような環境も作りました。さらに、この1ヵ月で世界中のマスコミが広島について調べて報道してくれました。ヒロシマが世界に伝わったことも大事です。

―秋葉さんは広島市長として「平和市長会議」の運動にも取り組んでこられました。平和確立のためには自治体の役割が重要だと思いますが、具体的にはどのような運動が必要でしょうか。
 国や世界を動かすうえで自治体は大きい力を持っています。そして国と比べて自治体の首長は比較的容易に選び直せます。このように市民の力で自治体を動かし、大きな力につなげていくのは可能だという事実を知ることから始める必要があります。例えば、核戦争が起きたときに各都市が住民を保護するために「国民保護計画」を作りなさいという法律があります。それに対して広島市は、唯一市民を守ることのできる手段は核兵器の廃絶だと書き込んだ保護計画を作りました。これと同じことを全国の自治体が実行すればいいのです。それは、元々の法律に跳ね返りますし、核兵器廃絶を国につきつけることになるのです。
 このように市民が各自治体で問題提起し、地域で行動し、インターネットで広げていく。そして自治体同士で交流して学びあい、国の政策とは違う条例や提言を作り、そこから国を変えていくことは可能です。
 一つの町の議会を説得するのも確かに難しい面はありますが、国会を動かすよりは簡単ですから、積極的に取り組むべきだと思います。顕著な例は、スコットランドの独立運動です。スコットランドの全都市は平和首長会議のメンバーであり、非核都市でもあります。その都市の願いがスコットランド独立運動の主目的になりました。そのスコットランドと沖縄は連携できるでしょう。
 それから、マーシャル諸島共和国は核保有9か国を国際司法裁判所に提訴していますが、それを支持する世界的なうねりも作りましょう。

―いま秋葉さんが努力されていることや皆さんに伝えたいことをお願いいたします。
 いま広島では、「原水禁学校」を作ろうとしています。核兵器廃絶運動を振り返り、若い世代の人たちに志を引き継いで貰うためです。それと合わせて、広島原水禁の常任理事がリレーでエッセイを載せるブログを作りました。ネットワークを広げて層を厚くするのが目的です。「ヒロシマの心を世界に」というタイトルで、ブログのランキングではトップ争いをしています。是非お読み下さい。
(http://kokoro2016.cocolog-nifty.com/blog/)
 伝えたいのは、私たち一人一人が、ほんの一歩ずつ前に進むことです。今までやって来たことにほんの一歩を加えるだけで、大きなエネルギーが生まれます。安倍政権ができて、その一歩を踏み出す人が増えています。その勢いをさらに大きくしましょう。
 新聞やテレビの影響が減っていく一方、ブログやインターネットの重要性は増えていますから、それを使うことでもっと力を発揮できるはずです。オバマさんが広島を訪問した成果の一つに、彼の演説に感動して、今まで全然関心のなかった人達が核の問題に関心を持ち始めています。その人達の気持ちを生かせるメカニズムを作ることも私たちの仕事です。

インタビューを終えて
 お会いする前から少し緊張していました。「報復ではなく、平和・核廃絶・和解を」と原水禁大会で熱く語ってくれたのを覚えています。広島市長として、平和・核兵器廃絶のため、平和市(首)長会議(現在161ヵ国7063自治体で構成)の会長として、世界的規模で奮闘され、今も原水禁広島の共同代表として奮闘されています。今回もオバマの広島訪問を高く評価され、単なる謝罪ではなく、「広島の体験を2度と誰にも体験させてはならない」という被爆者の思いを受け止め、「核兵器廃絶」のためがんばってほしいと語りました。その通りだと思います。熱い語りに圧倒されました。
(福山真劫)

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参院選に向けて 何を選択すべきか
安倍政権の狙いは「憲法改正」にある
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本泰成

経済を前面に押し出す選挙戦略
 中学生の頃、免許のなかった私が、浜辺で先輩のバイクにまたがりました。「カワサキ500SSマッハⅢ」-伝説のバイクと言われ、アクセルを回すとバイクの前輪は持ち上がり、私は放り出され、抜群の加速力を誇ったバイクは横転しました。
 なぜこのようなことを思い出したのかというと、今回の参議院選挙で、自民党の公約の中心に「アベノミクスのエンジンを最大に吹かす」という文言が踊っていたからです。エンジンを突如最大に吹かすと、車は制御を失い危険な状況に突入します。マッハⅢは、その力強い加速力で「止まらない、曲がらないカミナリ・マッパ」と呼ばれる危険なバイクでした。安倍政権の参院選の公約は、そのようなきわめて危険な側面が隠れています。
 第2次安倍内閣の発足時、最大支持率は65%を記録しています。その年の参院選は、安倍首相の持論だった「戦後レジームからの脱却」を封印し、経済政策「アベノミクス」を前面に押し出し「この道しかない」と強く主張し、選挙戦を優位に戦いました。2014年末の衆院総選挙は「消費税増税の先送りの是非を問う」としながら、「アベノミクスで、ここまできています」とその成果のみを強調し、またしても経済を前面に押し出しています。
 しかし、振り返ると選挙と選挙の間の政治的争点は、特定秘密保護法であり、安全保障関連法(戦争法)でした。来る参院選の主張も「消費税増税の更なる先送り」を決定するとともに、アベノミクスを強調するものになっています。しかし、安倍首相の本音はそこにはありません。私たちは、通常国会前半に安倍首相が何度も述べた「憲法改正」と、そのための発議に必要な3分の2の勢力の確保という主張を忘れてはなりません。06年からの第1次安倍政権の時に成立させたのは「改正教育基本法」「防衛省昇格関連法」そして「国民投票法」でした。ここに「特定秘密保護法」と「戦争法」を並べると、安倍政権の意図が明確に見えてきます。


東京・有楽町での街頭宣伝行動(2016年6月19日)
社会の格差と貧困に向き合わない
 「戦争法」が成立した後、安倍首相が主張したのは「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」からなる、全く内実の伴うことのない「新3本の矢」でした。その後は「1億総活躍社会」「女性が輝く日本」という美辞麗句をあげ、保育士・介護士の待遇の改善や同一労働同一賃金、最低賃金1000円といった民進党など野党が主張してきた政策を、あたかも新たな政策のように国民に披露しています。
 無理を重ねた株高や円安、正規から非正規への移行を通じた有効求人倍率の上昇など、国民生活を潤すことの無い数字を積極的に評価し、実質賃金の低下や非正規労働者の増加、物価上昇、社会保障政策の切り捨てなど、国民生活に直結する問題には口をつぐむ。これが安倍政権の本質ではないでしょうか。経済政策を主張して選挙を戦い、勝利した後には「戦後レジームからの脱却」のための法律を強行成立させる。憲法の平和主義を空洞化させ「戦争をする国づくり」のための政策を強行する。安倍政権が、参議院選挙勝利の先にもくろんでいるのが「憲法改正」であることは明白です。
 非正規労働者の割合は4割を超え、正規労働者との所得格差は歴然です。特に女性の非正規労働者の平均年収は181万円ほどで、8割を占めるシングルマザーの家庭の6割が相対的貧困にあると言われています。アベノミクスのエンジンを最大に吹かして、これら日本社会の格差と貧困がどれほど解消されるのでしょうか。私たちはここに大きな疑問を持たなくてはなりません。
 「賃上げを要求する」とした安倍政権下で、毎年実質賃金が低下しているという事実と、その中で、圧倒的な女性差別が存在しています。「女性が輝く日本」という安倍政権の主張がどれほど虚実かがわかります。
 問題となった「保育園落ちた日本死ね」とのブログは、子育ての問題だけでは無く、日本社会の質(クオリティー)を象徴しています。戦争法を成立させ、米国との共同軍事行動を基本にした軍事同盟強化をもくろみ、2016年度予算において防衛費は過去最高の5兆円超になりました。横須賀港には巨大なヘリ空母が浮かんでいます。1機110億円という米国から購入するオスプレイはいったい何に使うのでしょうか。世界覇権に力点を置く米軍との協力は、いったいどれくらいの費用がかかるのでしょか。そのような中で、生活保護基準は3年連続で切り下げられてきました。
 私たちは、資本主義の行き詰まりの中で、国民生活を、政治のあり方を、財政支出の方向を、私たち自身の足下から見つめ直さなくてはなりません。
(ふじもとやすなり)

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5兆円を超えた日本の軍事費をどうするのか(2)
硬直した日本の軍事費原因はふくらむ「後年度負担」
ピースデポ代表田巻一彦

軍事費の8割が「固定費」
 本誌4月号に引き続き、日本の軍事費を考えたい。
 2016年度の日本の軍事費は5兆541億円で、第2次安倍内閣の発足以来、4年連続の増額である。この5兆円余の中には沖縄の「SACO関連経費」や「米軍再編経費」の一部が含まれる。これらは厳密には防衛費の枠外なので、本稿ではそれらを除き、軍事費<4兆8607億円>で議論することをお許しいただきたい。
 軍事費は、次の3分類で構成される。
①人件・糧食費(2兆1473億円):自衛隊員の給与、退職金、営内での食費など。
②歳出化経費(1兆7187億円):2015年度以前の契約にもとづき16年度に支払われる経費。
③一般物件費(活動経費)(9948億円):2016年度の契約に基づき、同年度に支払われる経費。
 「3分類」のうち、1と2は「固定費」であり、政府の裁量の及ぶ範囲は極めて狭い。「人件・糧食費」を大幅に削減しようと思えば、自衛隊員を大幅に削減しなければならない。筆者は、自衛隊員を他の非軍事的任務(災害救助専門組織)に異動したりすることで、「人件・糧食費」の削減は可能だと思うのだが、そのためには国民レベルでの議論と選挙を通した政策転換(政権交代)が必要なので、無念ながら当座は「固定費」としておく。「歳出化経費」もしかりである。これが本稿の主題である「後年度負担」につながる。
 つまり、日本の軍事費4兆8607億円のうち、実に79%の3兆8660億円が、政府の裁量が基本的に及ばない予算なのだ。しかしその中でさえ、政府は次のような新しい装備(武器)導入などをするという。これらは先の「3分類」でいえば「一般物件費」にあたる。
①島嶼(とうしょ)防衛:垂直離着陸輸送機V22オスプレイ4機(447億円)、機動戦闘車36両(252億円)。鹿児島・奄美大島と沖縄・宮古島に部隊を配備(195億円)。
②対中国航空優勢確保:F35戦闘機6機(1084億円)、空中給油機1機(231億円)、無人偵察機「グローバルホーク」(146億円)、新型早期警戒機1機(260億円)、新型潜水艦1隻(636億円)。
③弾道ミサイル防衛:最新鋭イージスシステム搭載護衛艦(1734億円)。
④在日米軍関係経費:普天間飛行場の辺野古移設を含む在日米軍再編事業(1766億円)、在日米軍駐留経費の日本側負担(1920億円)。

後年度負担:軍事費を少なく見せるカラクリ
 なぜ、こんなに買い物ができるのだろうか?。答えは一般家庭や個人と変わらない。「買い物」をツケ(ローン)払いにすることだ。これを「後年度負担」という。憲法86条は「単年度予算主義」を定めているが、「財政法」は「5年までの分割はしてよい」という特例を設けてきた。防衛省、自衛隊はこの特例を最大限に活用してきた。100億円の飛行機を買う場合、初年度は10億円だけ払い、以後最大5年をかけて全額を支払うというやり方だ。しかし、昨今の兵器の値上がりや財政逼迫で「5年分割」でも済まされなくなってきた。そこで政府は、2015年の国会に新たな特別措置法案を提出、あっという間に通してしまったのである。「防衛調達長期契約法」と略称されるこの法律が成立した結果、分割払い期間は10年まで許されることになった。安保法制と同時に、政府はここでも憲法に反する立法措置をとったのである。


「後年度負担」のカラクリ :2016年度予算
今年度予算の「軍拡の意志」は3兆円超に!
 2016年度予算の中身に戻ろう。装備の購入などに使える<一般物件費>は9948億円である。しかし、政府の予算説明資料を注意深く読むと、これ以外に「新規<後年度負担額>が2兆800億円ある」と書かれている。これが、2016年度に契約するが、代金は最長10年で払えばよい、というものだ。つまり、後年度負担まで含めれば、2016年度予算には<3兆748億円>の「軍拡の意志」が反映されているのである。
 この傾向は、今後も続くだろう。軍事費削減には思いきった政策転換の意志と構想、そして「胆力」が必要なのである。
(たまきかずひこ)

お詫びと訂正
本誌2016年4月号(No.815)の筆者の原稿に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
4頁左段17行目「約58兆ドルの米国」→「約5810億ドルの米国」
19行目「中国(13兆ドル)」→「中国(1290億ドル)」
19行~20行目「45兆ドル以上(5分の1強)」→「4500億ドル以上(22%)」
25行目「7兆ドルと米国」→「700億ドルと米国」

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健康食品で病気になる?
機能性表示食品施行から1年の課題
科学ジャーナリスト 食の安全・監視市民委員会運営委員 植田 武智

 安倍晋三首相が「めざすは世界並みではなく世界最先端。世界で一番企業が活躍しやすい国の実現をめざす」と宣言して実施された「アベノミクス」の食品分野での最大事業ともいえる機能性表示食品制度。開始から1年以上が経過しました。6月9日段階で届出された商品は314件に上ります。
 機能性表示食品とは、企業の責任で健康食品の機能性を表示できるという制度です。企業が証拠として届け出た臨床試験論文などのデータは、消費者庁のホームページで公開されます。当初、消費者庁は「誰もが証拠をチェックできる、世界的にも類のない画期的な制度だ」と自負していました。しかし、誰もがチェックできるという事は、誰もチェックしないという事でした。本当に安全なのか、効果はあるのかについて第三者の検証がされないままに、市場には「○○○に効く」「○○○が気になる方のために」といった機能性を表示した健康食品が増え続けています。

チェック体制不備で届出したもの勝ち
 従来の特定保健用食品(トクホ)は、一応、消費者庁が、企業が提出してきた証拠書類を専門家も入った会議で審査して許可するという制度でした。一方、機能性表示食品は、書類の体裁が整っていれば原則すべて受理されて、その中身が本当なのかどうかは、我々消費者が書類を読んで判断してくれよという制度なのです。
 ただ消費者庁も、全く事後検証をしませんと言っているわけではなく、消費者庁の中で食品表示違反を取り締まる表示対策課の食品表示対策室では「外部からの疑義情報の提供は受けており、また独自に届け出された証拠の検証事業も実施している」と言っています。しかし今のところ検証の結果、機能性表示を改めさせたケースは一例もありません。
 「食の安全・監視市民委員会」では、制度が始まった昨年5月に、最初に届出された21商品中10商品に問題を認めて、疑義情報を消費者庁に提出しました。しかしながら消費者庁からは何の返答もありませんでした。
 その後に見つかった一番ひどいものが、肝臓に良いという「クルクミン」を使ったサプリメント「セラクルミン」という商品です(届出番号A172=受理はされたがまだ販売はされていません)。一番の問題は、機能性の試験がいい加減な事です。19人のボランティアにクルクミンを1ヵ月間毎日飲ませて、飲ませる前と後で血液検査の肝機能の値が改善したから「効果あり」と判定しています。
 これは「三た論法」という「投与した、治った、だから効いた」というもので、一見もっともらしいのですが、医薬品の世界では1970年代に否定された考え方です。飲まなくて治ったかもしれない可能性を排除するためには、プラセボ(偽薬)といって関与成分の入っていない飲料を飲ませたグループと比較しなければいけません。それが現在の臨床試験のスタンダードなのですが、届出書類の体裁しかチェックしない体制では見落とされてしまうわけです。まさに届出したもの勝ちの状態です。


(出典「『人間ドックの現況』日本人間ドック学会」)
抗酸化成分の摂りすぎの有害影響を懸念
 効かなくても有害でなければまだよいのですが、筆者が一番懸念しているのが、抗酸化作用をうたった成分の摂りすぎによる有害影響です。一般にビタミンAやE、動植物の天然色素であるカロチノイドやポリフェノールなどの抗酸化物質は、健康維持や老化防止、がん予防に効果があると言われ、サプリメントや健康食品の素材としても多く使われています。しかし、喫煙者にがん予防のため抗酸化物質のβカロチンを与えたら肺がんの発症率が増えたという研究結果など、抗酸化物質は条件によっては有害な影響が出る場合があるという事は、一部研究者の間ではよく知られているのです。
 そうした抗酸化作用をうたった成分が、機能性表示食品にも多くみられます。その一例が、機能性表示食品のヒット商品として有名なファンケルの「えんきん」にも使われているアスタキサンチンです。ビタミンEの500倍~1000倍の抗酸化力などと宣伝されていますが、EUでは高用量を食べさせたラットの実験で肝臓に異常が出たことを重視し、1日摂取許容量(ADI)を設定しており、「えんきん」の1日摂取目安量はEUのADIの2倍になっています。
 日本人間ドック学会の「人間ドックの現況」では肝機能異常が近年増加傾向にあり、様々な生活習慣病の中で一番多くなっています(下グラフ参照)。アスタキサンチンだけでなく、上記のクルクミンや、茶カテキンなど、肝臓への有害影響が指摘されている成分が使われている健康食品が増えています。健康食品で病気になるという事が現実に起きているのではないかと懸念されます。
(うえだたけのり)

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被爆71周年原水爆禁止世界大会開催にむけて
「いのちと人権」が尊重される世界をめざして

核廃絶へのさらなる努力を
 敗戦・被爆から70年が過ぎた今でも、世界各地でテロや紛争が繰り返され、人権が蹂躙され、多くの市民が傷つき、亡くなっています。「平和と安定」に向けたさらなる努力が私たちに強く求められています。
 その暴力の頂点ともいえる「核兵器」の廃絶への道のりは、いまだ厳しいものがあります。昨年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、共同宣言すら出せずに終わり、核軍縮の動きは大きく停滞してしまいました。その核兵器は、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI・スウェーデン)によると、1万5395個(2016年1月時点)が存在していると言われています。
 核大国の米ロは、昨年に比べ455個の減となっていますが、いまだ全体の9割近くを両国が持っていることになっており、両国の責任は大きいものがあります。一方、アジア地域では、インドとパキスタンが、昨年に比べそれぞれ10個増、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)も10個(昨年は6~8個)と増加傾向にあります。その北朝鮮は、今年1月6日には4回目の核実験を行うなど、ますます周辺地域を不安定化させています。他方、今年5月27日、アメリカのオバマ大統領がはじめて広島を訪れ、広島の惨状を知り、被爆者と対話をし、「核廃絶」の演説をしたことは大きな意義がありました。しかし、核廃絶に向けた具体的行動が何一つ語られなかったことは、核大国の核軍縮への壁がいまだ高いことを物語っています。だからこそ、被爆国日本の原水禁運動の果たす役割がますます重要となっています。

安倍政権の危険な暴走を止めよう
 一方、安倍政権は、戦争法の制定、辺野古新基地建設の強行、歴史認識の修正を狙う「安倍談話」の公表、原発再稼働と核燃料サイクルの推進など、民意や歴史を無視した横暴な強権政治を進めています。さらに、憲法改悪に向けた動きを一段と加速させ、「戦争のできる国」にしようとしています。まさにいま戦後の平和と民主主義の最大の危機にあります。「あらゆる国のあらゆる核実験に反対」「反核・平和」「脱原発」など、核と平和の問題を訴え続けてきた原水禁運動の、「核廃絶」や「平和と民主主義」の内実そのものが厳しく問われています。私たちの奮闘がまさに求められている重要な段階です。

原子力政策の破綻を訴える
 また、今年は、福島原発事故から5年、チェルノブイリ原発事故から30年の節目の年にもあたります。核の「商業利用」がもたらした問題を明らかにし、事故の風化に抗し、被災者への連帯が求められています。核の軍事利用や商業利用を問わず、「核社会」そのものを問う視点と運動が必要です。
 安倍政権が進める「エネルギ一基本計画」=原発推進政策に対して、原水禁世界大会でも一貫して主張してきた「脱原発」をめざしていくことの必要性・重要性を改めて確認することが必要です。
 大会では特に原発再稼働問題や地震と原発、福島原発事故について取り上げます。福島原発事故以降、日本の原子力政策は混迷し、その全体像が描ききれていない中で、再稼働の強行や核燃料サイクルの推進が進められていますが、それらの矛盾と政策的破たんを明らかにするともに、原発に依存しない工ネルギ一社会の展望を考えます。また、核燃料サイクル・プルトニウム利用政策そのものが、核拡散に結びつくことも強く訴えていきます。

被災者・ヒバクシャへの援護・連帯を
 さらに、事故の収束の目処もたたない福島原発事故の現状と課題を考えます。事故の風化と無関心が広がろうとする中で、被災者への補償の打ち切り、帰還の強要、労働者の被曝限度線量の大幅引き上げなど、「いのちや人権」を蔑ろにする動きに抗し、被災者や労働者への連帯のあり方を考えます。
 また、ヒロシマ・ナガサキの被爆者の課題の解決も急がれています。高齢化する被爆者に残された時間は少なく、「国家補償」や「原爆症認定」、「被爆体験者」、「在外被爆者」、「被爆二世・三世」など、残された課題の解決を図らなければなりません。さらに世界に広がる核被害者への援護・連帯も重要な課題で、今年は、チェルノブイリ原発事故の海外ゲストを招き、交流を進めます。
 このように、平和と民主主義を守り、核兵器廃絶、脱原発、ヒバクシャへの援護・連帯に向け、「いのちと人権」が尊重される世界をめざし、被爆71周年原水爆禁止世界大会を開催します。ぜひ多くの皆さんに結集していただき、安倍政権の強権政治の流れに抗し、「核と戦争もない21世紀」をともにつくり上げましょう。
(井上年弘)

●福島大会 7月30日(土)屋内集会(福島県教育会館)、デモ行進
●広島大会
8月4日(木)折鶴平和行進、開会総会(県立体育館)
8月5日(金)分科会、ひろば、フィールドワーク
8月6日(土)広島まとめ集会(県民文化センター)
●長崎大会
8月7日(日)開会総会(長崎ブリックホール)
8月8日(月)分科会ひろば、フィールドワークなど
8月9日(火)閉会集会(県立体育館)、平和行進
【大会詳細は原水禁ホームページをご覧下さい】

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熊本地震が示す規制基準の欠陥
地震と火山の列島と原発は共存できない
原発反対刈羽村を守る会 武本 和幸


中越沖地震で配管にズレが生じた柏崎刈羽原発(2007年)
連続地震を考慮しない規制基準の誤り
 4月14日からの熊本地震では、最初の地震で避難した人達が壊れかけた自宅に戻って寝ている中で本震が起こり、前震で壊れかけた住宅が破壊されて、下敷きとなって亡くなられた方が多くいました。建物や施設は、地震による地盤の揺れに伴い揺れます。揺れが小さいと被害もないが、大きな揺れでは大きな被害となります。全壊に至らなくても、ひび割れや筋交いが外れる等の部分的被害で耐力が低下します。修理もしないうちに新たな揺れが襲えば、地震前の耐力を失った建物は倒壊することになります。断層上の施設や建物は、断層の変位に耐えられず破損します。
 原子力施設の地震に対する規制基準は、最大の揺れに対応することと、施設の支持地盤にズレが生じないこととされています。最大の揺れは、震源を特定する地震と特定しない地震で想定することになっています。震源を特定する地震では、活断層から地震規模を算定します。活断層は地下の震源断層が地表に現れたもので、地震前でも調査で把握可能ですが、震源断層は地震が起こるまで把握できません。地震前は活断層から震源断層を推定するしかありません。
 建物や施設は、地震に耐えられるよう耐震設計をして造ります。耐震設計とは、揺れを想定し、その揺れに耐えられるようにすることです。想定する揺れは1回のみで大きな揺れが何回も繰り返すことは想定していません。
 原子力施設の耐震基準の基準地震動には、SsとSdがあります。敷地で起こる最大の揺れを基準地震動Ssとし、工学的判断に基づきSsに係数を乗じて、弾性設計用地震動Sdを策定します。施設は設計用の揺れSdで変形せず、Ssでも一部変形・破損しても機能を維持することが求められています。
 Ssが適切に決められていないことや、工学的判断でSsを半分程度に値切ってSdとしていることも問題ですが、短時間に大きな地震が連続することを全く考慮しない規制基準の誤りを熊本地震は示しています。
 原発を襲った史上初の地震が2007年の新潟県中越沖地震ですが、幸にして本震のみで大きな余震がなかったため大事故は回避できました。気象庁は、日本列島のM6.5規模の内陸地震で、後に本震が起こった例がないので、熊本地震はこれまでの経験則に外れると弁明しますが、繰り返し大きな地震が起こった例は無数にあります。(石橋克彦「科学」6月号)。
 原子力規制委員会は、地震の拡大連続発生で川内原発の運転停止を求める世論に、観測した揺れは設計で想定した揺れに比べ小さいので直ちに停止する必要はないとしています。規制委が検討すべきは、原子力施設の直近で熊本地震が起こったらどうなるのかに答えることです。規制委は、熊本県益城町に原発があったら、現在の規制基準では対処できないことを認めねばならないのです。

地震想定規模は過小評価になっている
 地震が起こるたびに、想定外だったと釈明されます。1995年1月の阪神淡路大震災は「関西の内陸では大地震は起きない」と根拠のない認識がある中で起きました。2007年7月の中越沖地震は、東京電力柏崎刈羽原発を直撃し、緊急停止はしたものの、建屋は設計時の想定を超える揺れに襲われました。地割れや変圧器火災が起き、さらには地下の消火配管が壊れ、建屋地下に大量の水が流れ込む事故も起きました。地震による異常は3000ヵ所を超えました。東電が活断層の規模を小さく見積もっていたのが原因でした。2011年3月の東日本大震災・福島原発事故は、10メートル超の大津波が東京電力福島第一原発を襲う可能性が指摘されていましたが、東電は対策を講じませんでした。それが最悪レベルの原発事故の原因とされていますが、地震の揺れの影響は建屋内の調査ができず不明です。
 地震学者の島崎邦彦・前原子力規制委員長代理は、規制委を退いた昨年から学会等で「原発の基準地震動を策定する基になる地震規模は、現在の規制基準では過小評価になる」と警告してきました。島崎氏は、「熊本地震で観測結果が得られて、規制基準は地震の過小評価になることが裏付けられた」「規制基準で昇進した大飯原発、高浜原発、玄海原発の基準地震動も過小評価になっている」と主張しています。規制委もこの指摘を無視出来ず、島崎氏に話を聞くことになりました。注目したいことです。
 いまだに熊本地震が続いています。地震や火山は地球科学の問題で、まだまだ未解明な領域が多いのです。熊本の不幸な経験を礎に、地震と火山の列島と原発は共存できないことを世論に訴えましょう。(本稿は「はんげんぱつ新聞」6月号の反原発講座(5月末脱稿)に島崎氏の指摘を追加したものです)
(たけもとかずゆき)

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増やす夢から減らす夢へ

 使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理は、元々、プルトニウムを燃やしながら使った以上のプルトニウムを生み出す夢の「高速増殖炉」に初期装荷燃料を提供するために構想されました。夢は実現しないまま、日本の保有するプルトニウムは、2014年末現在で約48トンに達しています。国際原子力機関(IAEA)の計算方法で核兵器約6000発分です。再処理計画継続の正当化のために、政府はプルトニウムなどのウランより重い元素──超ウラン元素(TRU)──の有害度を強調し、再処理でこれらの長寿命の物質をすべて取り出して「核変換」すべきだと主張しています。中性子を当てて核分裂させ、異なる元素にするということです。

素晴らしい新たな夢
 使用済み燃料を直接処分するとそこに含まれる放射能が燃料の製造に使われた天然ウランのレベルにまで下がるのに10万年かかるが、六ヶ所でやろうとしている再処理ならこの期間を8000年に、さらに、高速炉/高速増殖炉サイクルを使えば300年にできる。つまり、それぞれ、12分の1(10万年÷8000年)、330分の1(10万年÷300年)の有害度の低減が達成できる。そして、高レベル廃棄物の量は、それぞれ、4分1、7分の1に減容できる。これが再処理・核変換による減容・有害度低減という新たな夢です。新たな夢の第1段階は、現在の再処理とMOX利用ですが、これには限界があります。プルトニウムとウランを取り出す現在の再処理では、地層処分場に送られるガラス固化体の中にプルトニウム以外のTRU(アメリシウム、ネプツニウム、キュリウムなど)が含まれています。TRUはアクチニド(またはアクチノイド)と呼ばれるグループに属しています。TRUの中でプルトニウムは特別扱いでメジャー・アクチニド、その他の元素はマイナー・アクチニド(MA)と呼ばれます。いろいろな元素群を仕分けして取り出す「群分離」方式の新しい再処理システムを開発してMAも取り出し、これも燃やそうというのが新たな夢の第2段階です。第2段階の焼却システムの一つが高速炉。高速「増殖」炉のプルトニウム増殖の役目を担う「ブランケット」という部分を外し、プルトニウムその他の超ウラン元素を燃やす高速炉として活用するという話です。もんじゅもこの新たな夢の実現のために必要だと言います。

新たな夢の現実
 しかし、再処理で取り出したTRU(プルトニウム及びMA)は、そのまま消えてはくれません。TRUは核兵器に使えます。この有害で危険な核兵器利用可能物質が地上で大量に出回ることになります。しかも第1の夢は完結しません。使用済みMOX燃料は六ヶ所では再処理できず、しかも再処理で得られるプルトニウムを普通の原子炉で燃やすのは効率が悪すぎるからです。原子力規制委員会の田中俊一委員長も2014年11月19日の記者会見で「MOXの使用済燃料を再処理するためには新しい再処理工場を造らなくてはいけない......高速炉を動かさない限りは、処理したMOX燃料は使えない」と述べています。つまり、現状では使用済み燃料は処分場に向かうということです。必要な処分場の容積を決めるのはゴミの体積ではなく発熱量です。使用済みMOX燃料は普通の使用済み燃料の3~5倍の発熱量を持っています。これを処分場に入れることになれば、減容したと言っても元の木阿弥。処分場に送られるMOX工場などのTRU廃棄物を無視しても「減容化」は意味をなさなくなります。おまけにプルトニウム含有率は、使用済み低濃縮ウラン燃料の1%に対して、4%ほどになります。つまり、8000年の目標は、MOX使用済み燃料を再処理する特殊な施設と取り出されたプルトニウムを燃焼するための多数の高速炉の建設を前提としているのです。
 また、300年の目標は、TRUを取り出せる特殊な再処理施設と、TRUを燃やす多数の高速炉の建設を前提としています。普通の再処理でのプルトニウム回収率は99.5%なのに対し、新しいシステムのTRU回収率は99.9%という想定です。
 原子力規制委員会の会議(2015年11月2日)で更田豊志委員長代理はこの夢の売り方を次のように批判しています。「もんじゅの利用のアイデアとして、廃棄物の減容であるというような、無毒化というか、核変換のようなことを、これも理屈としてはあり得る話ですけれども、前提として分離をするところもないし、燃料を作るところもないし、ペレット1個作るだけでも大騒ぎの技術ですよね。これをできるかのように、これは10年先、20年先に原理として高速炉で可能なものかもしれないけれども、現状、ペレットを作るようなところも、ペレット1個ですら作るようなところがないわけです。それを、もんじゅが動けばこういった廃棄物問題の解決に貢献するかのように言うのは、少しこれ、民間の感覚でいえば誇大広告と呼ぶべきものではないでしょうか」。
 米国科学アカデミー(NAS)は、1996年の報告書『核廃棄物:群分離と核変換の技術』(約570ページ)で新たな夢には方法論的問題があること指摘しています。ネバダ州のヤッカ・マウンテン処分場に送られることになっている6万2000トンの軽水炉使用済み燃料の再処理・核変換について分析したものです。軽水炉運転が終わった段階で一気に多数の高速炉の運転を開始してTRUを燃やす。そこで生じる使用済み燃料からTRUを取り出し新しい高速炉で燃やすというのを繰り返す。このシナリオで地層処分場に送られるTRUの量を直接処分の場合の約100分の1にするのに200年ほどかかるというものです。ゴミを高速炉1基に放り込めば立ちどころに消えてしまうという話ではありません。報告書は言います。「被曝線量の減少はどれをとってみても、核変換の費用と追加的運転リスクを正当化するような大きさのものではない」。
(田窪雅文:「核情報」主宰)

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《投稿コーナー》
「日本会議」を知り、追いつめよう
立憲フォーラム 事務局 福田 誠之郎

 『週刊朝日』6月24日号のトップは「日本会議と安倍首相」です。また、6月17日からの『朝日新聞』は大きく紙面を割いて「日本会議の研究家族編」を載せています。3回シリーズで、3月の「憲法編」に次ぐ企画記事です。
 立憲フォーラムは2015年2月にパンフ「『日本会議』の実態、そのめざすもの」を、同年11月にパートⅡをつくってきました。それまでステルス(隠密の意)と言われた「日本会議」をきちんと報道する日本のメディアはなく(仏や英は報じていました)、「日本会議」に関する印刷物としては初めてでした。そんなこともあって、パンフⅠとⅡは大変良く読まれました。
 しかしいま、安倍改憲のエンジン役にもかかわらず、その主張も構成も安倍政権との密接な関係も知られていなかった「日本会議」がマスコミに書かれ、広く人々に知られ始めたことを喜びたいと思います。何よりも知ることが力になります。その実態を知って、警戒心を持ち、官邸を中心とした日本会議国会議員懇談会、地方議会での偏向教科書の採択や改憲決議で暗躍する日本会議地方議員連盟の動きに対抗する力を強めなければなりません。安倍改憲勢力の深部を叩かなければなりません。

安倍改憲を支え引っ張る最大の勢力
 2012年12月に発足した第二次安倍政権は、その直後に96条の先行改憲を打ち出し、これに対抗して野党の国会議員の超党派議連「立憲フォーラム」を立上げました。2013年4月のことです。安倍政権は96条の先行改憲は断念したものの、直ぐに特定秘密保護法を強行採決してきました。立憲フォーラムは「日本会議」こそが、安倍改憲を支え、引っ張る最大の勢力だとの認識を持っていました。それで、「日本会議」について話してもらえる人を探したのですが、見つかりません。この時は事務局が「日本会議」の説明をしたのですが、「日本会議」は知られていない、ちゃんと取材をしている人もいない。これは大変だ、まず知ってもらわなくてはと思い、そのためにパンフを作ろうと考えました。
 最初のパンフは上杉聡・日本の戦争責任資料センター事務局長にインタビューし、危険な「日本会議」と"作られた右傾化"がメインでした。女性蔑視のヤジ、ツイッター上での差別表現などを行う日本会議の地方議員を報じた『東京新聞』などを資料にしました。
 好評だったため、最近の動きに焦点をあてた第二弾をつくろうと、魚住昭さん(フリージャーナリスト)から、ネット上で「日本会議」を追っている人が良いのではと教えてもらって、菅野完さん(著述家)に連絡をしました。パンフⅡは菅野完さんの「日本会議」の影響力の淵源がメインで、大学の先生に訳してもらったフランスの週刊誌『Lobs』(2015年5月21日号)の「アベ・シンゾウの隠れた顔」を資料につけました。
 同記事は「これは広く見落とされているが国際政治の主要な事実である。世界第三位の経済大国日本は、数カ月前から、首相の安倍晋三も含め閣僚の4分の3が日本会議と称する歴史修正主義かつ権威主義の極右団体に属する政府に率いられている。これは目立たないが影響力のある団体である」と書き出しています。

大手メディアのタブー パンフ・ブックレットで
 当時は『日刊ゲンダイ』など限られたメディアしか「日本会議」をとりあげませんでした。官邸のメディアへの圧力、政権批判や政権に物申すキャスターや現場へのかってない暴力的な支配がなされる中、官邸そのものともいえる「日本会議」をとりあげる勇気が大手メディアにはなかったのです。
 それが変わっていったのは、昨年の戦争法に反対する運動の盛り上がりだったと思います。市民の掲げるプラカードに「日本会議の民主党議員はいらない」という書き込みを見つけました。「日本会議」に参加している国会議員のところに有権者が行って詰め寄るシーンもあったと聞きます。
 こうして、それまで大手メディアのタブーだった「日本会議」を取り上げる新聞、雑誌が出てきました。この間でも先にあげた『週刊朝日』以外で『週刊ポスト』が2回、『週刊金曜日』が1回とりあげ、そして、菅野完さんの『日本会議の研究』(扶桑社新書・800円)が大ベストセラーになっています。上杉聡さんのブックレット『日本会議とは何か「憲法改正」に突き進むカルト集団』(合同出版・1000円)も増刷です。
 この稿では「日本会議」の内容については書きませんでした。ぜひ「『日本会議』の実態、そのめざすものⅠ・Ⅱ」をお読みください(頒価100円)。「戦争をさせない1000人委員会」(電03-3526-2920FAX03-35262921)で扱っています。それで物足りなかったら、上記の本をお読みください。値段もお手頃です。
 最後に、「日本会議」の安倍政権での代弁者は稲田朋美自民党政調会長です。彼女の発言にはご注意ください。
(ふくだせいしろう)

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各地の1000人委員会の活動から
毎週、駅頭で訴え、職場・家庭でも署名活動
戦争をさせない杉並1000人委員会 津和 崇


毎週行っている街頭宣伝行動
(2016年4月19日・杉並区)
 当初、東京西部ブロックでの戦争をさせない1000人委員会の発足を模索しましたが、まずは杉並1000人委員会として発足することとしました。呼びかけ人には、全国の呼びかけ人で杉並在住の樋口恵子さん、新藤榮一さん、熊谷弘子さんなどに加え、杉並市民運動の草分け的存在の石崎あつ子さん、元都議の福士敬子さんなど15名を募り、都議や区議などを含めた賛同人のもとで、2014年11月26日に、約150名が集って発足集会を開きました。発足以来、「戦争をさせない1000人委員会」からの呼びかけに呼応して、火曜日を重点に駅頭での宣伝・署名・チラシ配布をはじめ、中央行動への参加も積み重ねてきました。また、昨年9月19日の戦争法強行可決を受けて、すぐに『杉並1000人委員会声明』を発表し、「参院選における野党共闘の実現」を強く訴えました。杉並の市民団体や共闘組織からも共感をいただき、他団体からも種々の声明が発せられました。
 10月8日の総がかり実行委員会主催の文京シビックホールでの集会で「野党共闘をめざすこと」「2000万統一署名を開始すること」が提起されたことを受けて、私達としてもすぐに次の方針を確認しました。①毎週火曜日の正午から杉並区内の駅を巡回しながら駅頭宣伝を行ない署名を訴える。②地域署名を企画する。③職場署名を要請する。④超党派の区議団(17名)や様々な共闘組織と協力して、区内全駅(17駅)一斉宣伝行動を提案する。⑤中央の行動提起に参加する。
 これらの方針は、強弱はあっても、全て実行されました。特に職場署名では総計2670筆の署名を達成。家族署名に積極的に取り組んだ職場では組合員数を大きく上回る署名が寄せられました。当面、参院選をそれぞれにたたかい抜くとともに、衆院選に向けても、全国の1000人委員会も総がかり実行委員会も一段と運動を強化する必要があることを、杉並1000人委員会として提起することにしています。
 また、従来通り、毎週火曜日行動を中心に運動を継続・強化していくことにしています。戦後の中でも最重要な歴史的局面に差しかかっている今、現代に生きる我々の責任の重さを受け止めなければならないと決意しています。
(つわたかし)

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〔本の紹介〕
「ヒトラー独裁への道」
ハインツ・へーネ著 朝日新聞社 1992年刊

 改憲勢力の中枢・日本会議も安倍政権も憲法改正に緊急事態条項の導入をめざす。また、麻生太郎元首相の「ナチスの手法を学んだらどうか」の発言もよく話題になる。このため、緊急事態条項を利用したナチスの例がよく持ち出される。ではナチス・ヒトラーはどのようにして独裁への道をたどったのか?改めてこのことに目を向けると、現代日本との共通項や今日的な教訓が多々あることに驚かされる。歴史から学ばない者は同じ過ちに加担することになるのだが、学んだことのある方は再度復習を、あまり学んだことのない方はぜひ学習を。そのためにこの著書を紹介してみたい。
 著者はドイツのジャーナリスト、ハインツ・へーネ。訳者のあとがきに、本書は「ドイツの忌まわしい過去から歴史の教訓を見出そうとする強烈な問題意識」をベースにし、「政党間の不毛な抗争と議会の無能ぶり、保守派政治家の陰謀と愚行」を描くと、その特徴を述べる。当時、最高水準と言われたワイマール憲法とそのもとで成立したワイマール共和国。成立は1919年。社会民主党も共産党もかなりの影響力を保持していた。しかし、1930年3月。当時の社会民主党ミュラー内閣が退陣、これ以降、ワイマール共和国崩壊の道が始まる。議会の多数派に依拠しない、大統領の権威と承認だけで成立する「大統領内閣」が続くことに。各政党は右派・保守であれ、社会民主党や共産党であれ、自らの政党利害を優先、国内の諸問題を政争の具としてのみ扱い、政治の混乱が続く。そしてついにナチスを取り込み、利用して自らの勢力の温存・権力維持を図ろうとする保守派政治家が出てくる。それは、1933年1月、ヒンデンブルグ大統領がヒトラーを首相に任命、ヒトラー内閣誕生へと結びつく。そして、ナチス以外のすべての政党は解散を強制され、独裁が完成。その過程がジャーナリストらしく各種資料を提示しながら描かれる。社共の首脳らは国外にちゃっかりと逃亡。残された数千の活動家は執拗な暴力による拷問と虐殺が待つ収容所に送られこととなる。社共の指導者は何をどう誤ったのか?共産党に関する記述が少ないのが残念。
 この著書は、中古本のネット通販を利用すると送料込500円以下で購入できる。参考にされたい。
(富永誠治)

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核のキーワード図鑑


運転延長、危険も延長

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「戦争法の廃止を求める統一署名」1200万筆提出

 昨年の11月より全国各地で取り組まれてきた「戦争法の廃止を求める統一署名」は1200万筆を突破し、総がかり行動実行委員会は、5月19日、衆院議員会館で署名提出集会を開催しました。参加した各団体の代表は野党3党の党首を含めて衆参両院議員32名に署名を手渡し、後日、各議員から衆参の議長あてに提出されました。
 集会では、総がかり行動実行委員会を代表して福山真劫さん(平和フォーラム共同代表)が「1200万筆には平和への願いや想いが込められている。画期的な野党共闘も出来つつある。本気で闘えば、戦争法の廃止、安倍政権の退陣は可能だ。明日を決めるのは安倍ではなく、私たちだ」と訴えました。
 また、署名活動を担った29団体を代表して全国視覚障害者団体協議会、安全保障関連法に反対する学者の会、NGO非戦ネット、さよなら原発1000万人アクションの各代表が発言。中でも全国視覚障害者全国協議会の田中昌治さんは「戦前、障がい者は『ごくつぶし・米くい虫』などと言われ、迫害されつらい思いをした。二度と繰り返されてはならない。戦争法によって福祉は削られ、軍事費が増えていくことを危惧して署名を取り組んだ。この署名には障がい者の戦争反対・平和への思いが詰まっている」と訴えました。

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