2016年、ニュースペーパー

2016年09月01日

ニュースペーパー2016年9月









被曝71周年原水爆禁止世界大会
 1945年8月6日、9日の広島・長崎への原爆投下から71年。原爆は、多くの人の命や暮らし、家族や友人、夢や希望を奪いました。もうこれ以上「核」の惨事を繰り返してはならないと、今年も被曝71周年原水爆禁止世界大会が、7月30日の福島大会を皮切りに、8月4~6日に広島大会、7~9日に長崎大会が開催されました。
 大会では、米国の核兵器先制不使用政策に日本政府が反対しないよう求める国際公開書簡に多くの著名人の署名を得て送付し、また国際的に進む「核兵器禁止条約」の動きに対して、極めて消極的な日本政府の姿勢を転換させ、核兵器廃絶への道筋を早急につくりあげることや、被爆者への補償に対する日本政府の姿勢をただし、被爆体験者や在外被爆者、被爆二世・三世の課題の解決に全力で取り組みことも確認しました。
 さらに、いまだに福島原発事故による放射線量が高い被災地へ住民の帰還を強行していることに対し、国家補償による被災者への援護と生活再建、健康保障の充実を求めました。そして、原発再稼働を許さず、脱原発社会への転換を早期に実現するよう取り組むことも決意しました。大会では特に、先の参議院選挙で、安倍政権が3分の2の改憲勢力を確保し、憲法改悪にむけて動き出し、平和主義が戦後最大の危機を迎えているとして、「核も戦争もない21世紀」を実現するために、安倍政権の戦争への道にひた走る動きに断固として反対することが強調されました。(大会の詳細は3面~5面に掲載。写真上は福島大会でのデモ行進、中は広島大会の開会総
会、下は長崎爆心地公園での黙とうの様子)

参議院選挙の結果を受けて
「改憲」に対峙するとりくみを草の根から
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成

歴史認識・思想の矛盾─安倍首相の危うさ
 参議院議員選挙が終わって1ヵ月が過ぎました。民進、共産、社民、生活の4野党共闘によって、32の「1人区」全てにおいて候補者の1本化が図られた画期的な選挙として、政治史の一角に記憶されるに違いありません。選挙結果に関しては、既に多くの立場から様々な評価がなされていますが、当落の数で選挙を評価することなく、選挙協力が単なる足し算に終わった訳ではなく、市民と政党の関係や共闘のあり方、選挙のスタイル、学者の会やシールズなどの新しい動き、新たな支持者の獲得など、多くの付加価値を生んだことを忘れてはなりません。
 安倍晋三首相は、昨年9月に戦争法(安全保障関連法)の成立を強行した後、今年1月の通常国会開会直後から、「いよいよ、どの項目から改正すべきかという現実的な段階に移ってきた」「私の在任中に成し遂げたい」などと、「改憲」について積極的に発言してきました。参議院選挙では争点を隠しながら、改憲勢力が参議院においても3分の2を超えるやいなや、自民党の憲法改正草案をベースに、「どう3分の2を構築していくか。これがまさに政治の技術と言っていい」「今後、憲法審査会できちっと議論し、国民的理解が高まる中で、どの条文(の改正)かということに収斂していくことが期待される」と発言し、自民党総裁任期中(2018年9月まで)の「改憲」にきわめて強い意欲を示しています。
 しかし、安倍首相は「改憲」の対象となる条文、内容、理由を明らかにしていません。「祖父(岸信介)も、父(安倍晋太郎)も達成できなかった課題を達成したい」と述べる安倍首相は、米国によって押しつけられた憲法が「日本人の精神に悪い影響を及ぼしている」と、若手政治家の時代から「改憲」を主張してきました。戦後の日本国憲法が示している平和と民主主義を「戦後レジーム」として糾弾の対象としています。東京裁判や南京虐殺、日本軍「慰安婦」など都合の悪い歴史を否定し、個人が憲法の基本的人権に則ってその権利を主張することを罪悪と考え、国益の優先を主張してきました。「自民党改正草案」は、憲法13条の条文において尊重される主体を「個人」から「人」に置き換えたことに象徴されるように、市民革命以降、近代社会に位置づけられてきた「個人主義」を否定し、「国家主義」「全体主義」へと進もうとするものです。
 安倍首相の危うさは、戦争法を成立させて米軍との軍事同盟を強化し、その世界覇権に協力しながらも、戦後の国際秩序であるポツダム宣言、東京裁判、サンフランシスコ講和条約に抗おうとする主張にあります。米国を中心に第2次世界大戦の戦勝国によって秩序づけられた国際連合に対し、アジア・太平洋戦争を「アジア解放の戦い」と位置づけながら、戦勝国で構成される安全保障常任理事国入りをめざすとする姿勢は、歴史認識の矛盾、思想の矛盾以外の何ものでもありません。


5万人が集まった憲法集会
(2016年5月3日・有明防災公園)

民意から大きく離れる改憲賛成派の議員
 参議院選挙の結果を受けて、中国や韓国からは「憲法9条は平和主義の象徴で、安心感を与えてきた」「日本の戦後の平和主義を積極的に評価してきた」としながら、「それを変えるならば周辺国の不安が高まる」などの声が聞こえています。
 参院選後に行われた朝日新聞と東京大学谷口研究室の共同調査では、回答を寄せた参議院議員の66%が「改憲」に賛成としています。「改憲」の項目では、緊急事態条項が51%、自衛隊・国防軍の保持が50%、環境権の新設が48%などとなっています。毎日新聞が今年4月末に実施した東日本大震災の被災3県の自治体への調査では、緊急事態条項が必要と答えた自治体は1町のみとなっています(回答は42自治体中37)。
 国の最高法規である憲法の「改正」に対して、その必要性を真剣に議論している賛成派の議員が存在するのでしょうか。「気に入らない」から、「変えたことがないから」変えるという、幼稚な議論がまかり通っています。
 加憲を標榜する公明党や大阪維新の会も、9条「改憲」には消極的とされます。「改憲」は、最終的に国民投票に付されるものであり、安倍首相は、決して失敗は許されないものとの認識から、民進党の賛意も必要との考えに立っていると言われています。「改憲」は、参議院選挙後の最重要課題であると考えなくてはなりません。
 今後、国民投票を意識しつつ、あらゆる場面で安倍政権の「改憲」の意図を明らかにしなくてはなりません。職場で働く者たちの中から、大学で学ぶ学生の間から、公園のママさんたちから「戦争をさせない」「一人ひとりの命を大切にする」「憲法理念の実現を求める」と、安倍政権に対峙する草の根の声を上げていかなくてはなりません。じっくり、しかし確実に「改憲」に抗する取り組みを、平和フォーラムや「戦争をさせない1000人委員会」が担っていかなくてはなりません。
(ふじもとやすなり)

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被爆71周年原水爆禁止世界大会が開催される
核兵器廃絶と脱原発、憲法破壊を許さない流れを作ろう

原発事故被災者の切り捨てを許さない福島大会
 東日本大震災・福島原発事故から5年が過ぎ、いまだに復興や賠償、事故の収束など多くの課題が残されている一方、被災者の切り捨てが行われようとしている中で、7月30日に福島大会が開催されました。全国から750名が参加し、屋内集会と市内デモを行いました。
 集会では、川野浩一・大会実行委員長(原水禁議長)から、改憲勢力が3分の2を超える国会情勢を踏まえ運動の強化が訴えられ、福島県平和フォーラムの角田政志代表からは、国による避難者に対する補償の打ち切りや、強制的ともいえる帰還事業がなされようとしているとして、あらためて避難者に寄り添うことの重要性が訴えられました。
 クラウディア・ロート・ドイツ連邦議会副議長からは、ドイツの脱原発政策の中で、再生可能エネルギーが電力の36%にも達し大きな雇用を作り出したことが紹介され、自然環境に恵まれた日本でも再生可能エネルギー拡大の可能性が高いことを指摘、いまだ原子力に頼る安倍政権は時代遅れであると批判しました。
 県内の様々な団体の取り組みとして、きらり健康生協からは原発事故後の医療状況、フクシマ原発労働者相談センターからは廃炉作業や除染作業に当たる労働者の実態や問題点について報告がありました。福島県の第19代高校生平和大使は、原発事故被災者を含め「すべての核被害者の声に耳を傾けてほしい」と訴えました。
 翌日は、飯舘村や南相馬市など放射線量が高い地域へのフィールドワークが行われ、除染作業の現状や無人の街並みを視察し、事故の深刻さを受け止めました。8月1日には、東京電力福島復興本社へ大会実行委員会として申し入れを行いました。

核兵器廃絶と脱原発の課題をトータルに捉える
 広島大会(8月4~6日/3000人・開会総会)、長崎大会(同7~9日/2000人・閉会総会)、国際会議(同5日/60人)がそれぞれ開催されました。
 国際会議では、日本のプルトニウム利用政策は、韓国を刺激し、北朝鮮、中国の脅威を言い訳に再処理競争を招き、東北アジアを不安定化させると専門家から指摘されました。特に約48トンものプルトニウムを保有し、さらに再処理を進めることは、周辺国からも脅威と感じられ、核兵器の転用も懸念されていることから、日本の原子力政策を核拡散の面からも問題にしなければならないことが明らかになりました(4面に内容報告)。
 分科会討議でも、昨年の核不拡散条約(NPT)再検討会議での核保有国の頑なな姿勢が核軍縮の流れを停滞させていること、それに対して非核保有国を中心に「核兵器禁止条約」などの新たな動きが胎動していることが報告されました。さらに安倍政権の進める安保法制、沖縄新基地建設など、平和を脅かし、戦争のできる国への動きに対しても、軍事評論家の前田哲男さん、ピースデポの湯浅一郎さんなどから分析と対抗の必要性が指摘されました。
 私たちの足元から核問題や平和問題をとらえることの重要性が分科会や国際会議を通じて繰り返し提起され、今後の日本政府の動向、発言には注視していかなければならないと確認されました。

地震と原発再稼働、核燃料サイクルの破綻
 脱原発の課題では、再稼働問題と新規制基準や地震・火山の問題、防災・避難計画の不十分性などを地震学者・京都大学名誉教授の竹本修三さんや原子力資料情報室の山口幸夫さんらが指摘しました。
 また、再稼働反対の知事が誕生した鹿児島や、司法で高浜原発の稼働差し止めが認められた福井、大会直後に伊方原発の再稼働(8月12日に実施)が予定される愛媛などからの現地報告もありました。
 さらに、原子力資料情報室の西尾漠さんらは、もんじゅ開発や六ヶ所再処理工場建設などの核燃料サイクル政策の破たんを明らかにし、日本の原子力政策そのものが大きな行き詰まりを示していることが報告されました。また、原発に代わる再生可能エネルギーの可能性について、明治大学名誉教授の藤井石根さんやドイツのクラウディア・ロートさんからも指摘されました。

あらゆるヒバクシャの援護連帯を訴え
 被爆から71年を迎え被爆者の平均年齢も80歳を超えていることから、残された課題(国家補償や在外被爆者、被爆体験者、被爆二世・三世問題など)の解決が一刻も早く求められていることが多くの分科会を通じて訴えられました。
 在外被爆者の課題では、韓国から郭貴勲さんら2名の被爆者を招き、戦後補償も含め在外被爆者の実相を学びました。中国人の強制連行と被爆をテーマにしたフィールドワーク(広島)なども行われ、日本の加害の歴史も含め認識を深めました。
 さらに、世界に拡がる核被害者の実態をフォトジャーリストの豊崎博光さんや医師の振津かつみさんが提起した他、今年はチェルノブイリ原発事故から30年目に当たり、ロシアのエカテリーナ・ブィコフさんから事故被害者の現状報告を聞きました(5面に発言を掲載)。
 大会全体を通じて、改めて「核と人類は共存できない」ことが明らかになり、核廃絶、脱原発への取り組みを確認しました。
(井上年弘)

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日本のプルトニウム利用政策と核拡散 原水禁大会の国際会議で議論
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸


左から伴、ソク、クレメンツさん(8月5日・広島市)

 今年の原水禁世界大会の国際会議は、原発から取り出したプルトニウムも核兵器の材料となることから、この利用にこだわる日本政府の政策転換を求めることが狙いでした。米国のトム・クレメンツさんは、23年前にあかつき丸が1.5トンのプルトニウムをフランスから日本へ運んだ時、この反対キャンペーンに関わり、30年にわたってプルトニウム問題を追いかけています。現在、米国の軍事用原子力施設であるサバンナ・リバー・サイト(SRS)の監視活動を行っています。東海村から今年4月に輸送された331㎏のプルトニウムの行き先はこのSRSでした。彼は米国の解体核兵器から取り出された余剰プルトニウムの処理に関する失敗例を報告しました。日本の余剰プルトニウムを考える時に大変参考になる話でした。
 韓国のソク・クァンフンさんは梨花女子大学の非常勤教授をしながら「エネルギー市民連帯」の常任政策委員として活躍しています。2000年代中ごろに2年間、韓国核不拡散管理機構の組織外理事の経験もあり、日本の再処理政策が核拡散を助長するとの意見には重いものがありました。以上の海外ゲストと伴の3名で、田窪雅文さんの進行のもとで充実した会議となりました。

余剰プルトニウムの処理に失敗したアメリカ
 SRSは米国の核兵器用プルトニウムの生産に携わってきました。5つの原子炉と2つの再処理施設があります。今はプルトニウムの生産は行っていませんが、これまでに36.1トンのプルトニウムを抽出しました。現在は解体核兵器のプルトニウム34トンの処理・処分の研究開発を行っています。処理方法としてプルサーマル燃料に加工して普通の原発で利用することが計画され、2007年から燃料加工工場の建設が始まりました。工事は50%ほど進みましたが、ここにきて設計上の問題などから建設費が膨大になってしまったこと、燃料に加工してもこれを使う電力会社がないことから、17年度予算は大幅にカットされることになっており、事実上の撤退となります。この方法はエネルギーとして利用する観点からではなく、使用済の燃料にすることで、プルトニウムにアクセスできないようにするためです。
 代替方法として、プルトニウムを特殊な物質で希釈して再利用できないようにして処分する「希釈・処分」方法が研究されることになりました。米国では軍事施設から出る長半減期の放射性廃棄物(TRU廃棄物)は核廃棄物隔離試験施設(WIPP)で処分されているので、ここに処分する方向にシフトしつつあります。問題がないわけではありませんが、この方がコストは4分の1程度で済み、実証性もあるとのことでした。

プルトニウム利用に固執する日本
 日本のプルトニウム政策について筆者が報告しました。93年に本格的な着工に入った六ヶ所再処理工場はいまだ本格稼働していません。ここで抽出されたプルトニウムは隣接する加工工場で燃料に加工される予定ですが、建設工事は始まったばかりです。どちらも新規制基準に対する適合性を審査している状態です。
 審査上の問題よりも国内に約11トン、海外に約37トンあるプルトニウムをどうするのかが問われるべきで、これをそのままにしておいては、余剰プルトニウムを持たないという国際公約に反します。しかし、福島原発事故後、東京電力や中部電力ではプルサーマル計画が白紙になっており、予定通りに進むとはとても考えられません。そんな中で六ヶ所再処理工場が稼働すれば、さらにプルトニウムが増え続けることになります。
 コストの面でもプルサーマル利用は高くつき、六ヶ所の再処理を今やめても経済的に有利であることが明白なのですが、政府は従来の政策に固執しています。そこで、電力の自由化が進む中では日本原燃の経営が破綻に至ることを認めた上で、これを救済する制度(法律)を作ったのでした。この法に基づいて使用済燃料再処理機構がこの10月にも設立されることになっています。しかし、制度がうまく機能するとはとても思えません。こんな状況で六ヶ所再処理工場の竣工は認められません。再処理を止め、余剰プルトニウムは米国の事例を参考に希釈・処分する方法を追及するべきです。

韓国は日本を見て、再処理の権利を要求するだろう
 2018年には日米原子力協力協定の期限が来ます。日本に再処理と濃縮を例外的に認めている現行の協定が延長されれば、韓国政府は「日本で再処理ができて、我々はなぜできないのか」と主張することになるとソクさんは分析。米韓原子力協定では日本のような再処理は認められていませんので、韓国政府は実用化されていない乾式再処理の研究開発を米国に認めさせました。
 いま東北アジアにおいて「プルトニウム再処理競争」が始まろうとしており、納税者として再処理反対の声をあげていこうとまとめられました。
(ばんひでゆき)

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「チェルノブイリの十字架」を繰り返してはならない
「チェルノブイリ情報センター」職員 エカテリーナ・ブィコワ


エカテリーナさん

 30年前の1986年4月26日、旧ソビエト連邦のウクライナ共和国にあったチェルノブイリ原子力発電所4号機で、非常用の電力供給試験を実施した際に、突然原子炉が暴走し、爆発・炎上しました。飛散した放射性物質は広島原爆の800個分とも言われ、ウクライナをはじめヨーロッパ全土に大きな被害を与えました。旧ソ連が事故を認めたのは、事故から2日たった28日でした。その間、多くの住民が高い放射線を浴びて被曝しました。
 今年の原水禁世界大会に、被災地出身のエカテリーナ・ブィコワさん(現在、NGO「ラディミチ」の「チェルノブイリ情報センター」職員)を招き、次のような報告をしていただきました。

子どもたちが健康な生活を送るために活動
 私はロシアの西のはずれブリャンスク州から来ました。住民の多くが、チェルノブイリ原発事故による汚染の被害に今も苦しんでおり、私もその一人です。もともと私はウクライナ出身で、家族も、幼なじみの友人たちも皆ウクライナにいます。ウクライナ東部ドネツクやルガンスクでの紛争の影響で、みな苦しんでいます。そして現在、NGO団体「ラディミチチェルノブイリの子どもたちへ」のメンバーとして活動しています。
 私は25年間、ロシア・ブリャンスク州のノボズィプコフという町に住んでいます。この町はチェルノブイリ原発から180㎞離れていますが、ロシアで最も高いレベルの汚染を受けた地域です。町とその周辺地区には、比較的汚染度の低い地域もあれば、人が住めないほど汚染された所もあります。
 でも、絶望したり、ここで生きていくことはできないと嘆いたりしてばかりはいられません、私たちから未来と美しい自然を奪った政府や、原子力に怒りを感じるのは当然です。でも怒っている間にも、私たちの汚染地域での生活は続き、子どもたちは生まれ、ここで育っていくのです。政府が何かしてくれるのを待つだけでなく、私たちは自らこの押し付けられたリスクを最小限に抑える取り組みをしてきました。
 私たちの団体では、住民、特に子どもたちが汚染の影響から身を守り、健康な生活を送れるよう、いくつもの長期プロジェクトを実施しています。主なものでは、(1)甲状腺診断室、(2)健康な生活習慣を教える青少年センター、(3)知的障がい児、身体障がい児のための教室、(4)汚染地域の子どもたちを受け入れ、20日間のサマーキャンプを実施する保養施設「ノボキャンプ」、(5)コンピューター講習クラブ、(6)原子力被害の実態や放射線の影響についての情報教育に取り組むチェルノブイリ情報センターなどです。また、住民を対象に汚染の影響から身を守って生きていく方法についての講習会や教育プログラムを実施しています。

重なるフクシマとチェルノブイリ
 私たちの経験が福島第一原発事故の被災地の方々に役立つのではないかと願い、伝えたいと思います。私たちそれぞれが、住み慣れた場所で生きる権利、汚染のない自然環境、健康で安全な生活、平和の中で子どもを産み育てる権利を持っています。そしてその子たちの未来を守る義務があります。
 チェルノブイリと福島の被災者、そして世界中のヒバクシャにとって、悲劇が起こる前と、その後の人生は切り裂かれてしまいました。悲劇が起こる以前の生活は、どれだけの光に満ち溢れていたことでしょう。今になると特に強くそれを思います。時間がたつとともに、より多くのことがわかってきます。
 チェルノブイリ原発の悲劇は、私たちから明るい未来を永久に奪いました。搾りたてのミルクを飲むことはできなくなりました。基準値を超えて汚染されたミルクが多いからです。野生のキノコやキイチゴ、野生動物や野鳥の肉、湖の魚、自然の恵みに支えられた地域の昔からの食生活ができなくなったのです。いつも、どうやって汚染の少ない食品を買うか考えています。川や森に行くと、汚染の影響が心配になります。健康診断を受けるとき、医師からの死刑宣告でも待つかのようにおびえてしまいます。私の国では、こんな状況があと何十年も続くのです。この気の滅入るような運命が、私たちの背負った「十字架」、「チェルノブイリの十字架」なのです。
 先日、福島県の旧避難指示区域、津波の被害を受けた地域を訪問しました。学校の先生方が自信を無くした姿、だれも住んでいない家などを見て、チェルノブイリ被災地の風景と重なりました。広島の平和記念資料館を訪問した時の強く重い印象が、いまも頭から離れません。世界中のヒバクシャ、そして福島第一原発事故による被害者の悲しみは、私自身の悲しみでもあります。
 私たちは、チェルノブイリも、フクシマも、核によるどんな被害も、二度と繰り返されることのないよう、できることはすべてやりましょう。そして、どこであれ次の核災害が起こるようなことを許してはなりません。

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進まないTPPをめぐる各国の動き
後悔先に立たずとさせてはならない!
TPPに反対する人々の運動 世話人 近藤 康男


各国のTPPの審議見通し
(日本、アメリカ、ペルー、チリ以外)

急いでいるのは日米両政府だけ
 安倍晋三首相の口癖は「再交渉には応じないためにも早期批准が必要だ」。また、海外のTPP関係筋からも「日本が率先して他国の批准の流れを主導し、米国に圧力をかけるべきだ」との声も出ている。
 しかし、米大統領選のトランプ候補は受諾演説で「TPPには署名しない」と述べ、民主党も公約で「雇用や賃金増に繋がらない貿易協定に反対」とし、クリントンも実質的にTPP反対発言を強めている。
 それを意識してか、各国での批准、国内法整備に向けた動きは遅々とした歩みを続けている。カナダ・ニュージーランド(NZ)・オーストラリア(豪州)は公聴会などの手続きを先行させ、NZと豪州は年内承認をめざしている。マレ-シア・ベトナムなどはTPP基準に追い付いていない国内法や体制整備に力を注いでおり、多くは来年半ばの承認を見ている。急いでいるのは日米両政府だけと言える。
 そして、英国のEU離脱による混乱は、TPPと並んで新たな世界基準をめざすものとしての米・EU間の環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)、また、日・EU間の経済連携協定(EPA)の年内妥結の予定を大きく遅らせるだろう。これは、間接的にTPPの米国内手続きにも大きく影響するはずだ。
 米国政府は、「再交渉はTPPを漂流させかねない。協定の運用で果実を取り、将来の自由貿易協定での条文化を実現する」という方針で議会の説得に努めている。『将来』にはTTIP、サ-ビス貿易の一般協定(TISA)、そしてTPPと東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)が含まれる。
 しかし、新大統領が就任後に前言を翻すだろうか?クリントンなら、前政権の顔を立てつつ、運用面での果実を自らの手柄にすることもあり得よう。しかし、11ヵ国相手の交渉は時間と混乱とを覚悟せざるを得ず、内容次第では国内手続きのやり直しも必要になる。日本政府は各国の状況を慎重に見極め、国会審議と市民への説明に時間をかけるべきだろう。新大統領の就任は1月20日で、時間はある。

アメリカの先行きは見えない
 民主党は党綱領起草委員会で、サンダ-スの「TPP承認の採決阻止」という提案を否決、オバマ大統領にとっては、かろうじて議会承認の可能性を残した形となった。
 共和党では、マコネル上院院内総務、ライアン下院議長、ハッチ上院財政委員長などは、業界を背景に協定の修正を要求している。これら議会の主要メンバ-が反対しているのは、生物製剤の新薬データ保護期間の12年が確保されていないこと、金融分野の電子データ保管場所の自由が確保されていないことの他、通貨操作、タバコ表示に対するISDS適用除外、原産地規則、乳製品・豚肉貿易などだ。オバマ大統領などは説得に動いているが、了解を得るには至っていない。
 米国通商代表部(USTR)は、5月に国際貿易委員会の「TPP影響評価報告書」、6月に「各国のTPP実行体制の状況報告」を公表し議会に提出、さらに7月には協定と協定実施法案の議会審議開始のために「TPP協定の正文写し」、「協定実施のために政府がすべき事項についての声明」、「TPP実施・発効のための計画」に加えて、上院財政委員会と下院歳入委員会に対して、米国の雇用に与える影響、米国及び協定参加国の労働者の権利や環境に与える影響などを詳細に説明する3種類の報告を提出した。しかし、議会での審議のめどはまったく立っていない。


TPPを批准させない!全国共同行動の集会
(8月20日、明治大学)

批准阻止の闘いを強めよう
 日本では、今春以降、TPPに反対する人々の運動や平和フォーラムも参加する大きなネットワ-クとして「TPP批准阻止!アクション実行委員会」が、国会内外での闘いを呼び掛けてきた。臨時国会でTPPの審議が始まる10月から様々な取り組みを予定している。
 海外でも豪州、米国、NZをはじめ、各国で市民・農民が秋に向けての運動に取り組んでいる。各国で批准が先送りとなれば、TPPの漂流、破綻もあり得る状況だ。日本でも秋からの闘いに負ける訳にはいかない。
(こんどうやすお)

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《投稿コーナー》
成立した刑訴法改正案の問題点と今後の課題
弁護士 海渡 雄一

刑事訴訟法改正案が通常国会で成立
 私は1981年に弁護士登録以来、代用監獄廃止と刑務所改革のために活動を続けてきた。そして、99年の盗聴法の成立に反対し、成立後も廃止運動を取り組み、さらに、共謀罪、秘密保護法の反対にも取り組んできた。
 今年の通常国会で刑事訴訟法の改正案が成立した。話は2009年にさかのぼる。再審無罪が確定した足利事件と布川事件、厚生労働省の村木厚子局長事件と、これに引き続く検察官による証拠改ざん事件などの深刻なえん罪の続発は、日本における刑事司法のもとで、えん罪が防げないのではという市民の危惧を高めた。
 日本では逮捕された被疑者は、裁判官の勾留決定後も起訴まで、時には起訴後まで警察留置場に置かれ、朝から深夜までの取り調べがなされることも珍しくない。このような制度を代用監獄制度という。世界標準では、被疑者が警察のもとに置かれるのは、24~48時間が限度である。これ以上警察に拘禁し取り調べの圧力をかけ続ければ、捜査官による暴行や脅迫がなくても、うその自白をしてしまうことは避けられないからだ。近年は、この取り調べに、日数的な制限だけでなく、時間的な制限がないこと、弁護人の立ち会いがないこと、録音録画がされていないことなども指摘されてきた。

えん罪を克服するための改革のはずが
 2011年3月「検察の在り方検討会議」報告がまとめられ、法制審議会に「新時代の刑事司法制度特別部会」が設置された。この改正作業は、えん罪の防止こそが真のアジェンダであったはずなのに、いつの間にか取り調べの可視化と引き替えに「供述に頼らない刑事捜査」という、捜査権限の拡大を含意するアジェンダを忍び込ませることを認めてしまった。
 法制審では警察・法務省は、取り調べの可視化を受け入れる場合、通信傍受の対象犯罪の拡大と事業者の立会い義務削除、司法取引などについて検討を求める意見が表明された。そして、多勢に無勢の法制審における闘いの中で、可視化の一部実現、被疑者国選制度の拡充という成果を認めさせるために、日本弁護士連合会(日弁連)はこのような新たな捜査手法の導入を引き換え条件として認めてしまった。
 また、盗聴の範囲を多くの窃盗、傷害などの一般犯罪にまで一気に拡げようとすることは極めて危険な提案であった。制度の濫用を防ぐためには、対象犯罪を限定し、組織性の要件を厳格なものに修正すべきだった。他人のプライバシーを侵害しうる盗聴行為には、もっと厳格な第三者機関の目が必要である。これは無理な要求ではなく、先進国では人権侵害を防ぐために導入されている制度である。
 しかし、市民のプライバシーにどのような影響をもたらすか、法制審議会部会ではほとんど審議されていない。このまま施行されれば、えん罪の防止どころか、いままで以上にえん罪事件を生み出す可能性がある。

一部録画がえん罪を生み出した可能性がある
 今年の4月、宇都宮地裁で有罪判決がなされた今市事件では、裁判員対象である殺人事件について、全過程の録音録画がなされるはずなのに、そのようにはなっていなかった。そして、判決文によれば「客観的事実のみからは被告人の犯人性を認定することはできない」と明確に判示され、自白がなければ有罪認定ができなかったことが示されている。そして、法廷で上映された部分録画によって「自白は実際に体験しなければ語れない具体性に富んでいる」「殺人について聞かれた時に激しく動揺したり、『気持ちの整理のための時間がほしい』と話したりする様子は、あらぬ疑いをかけられた者にしては極めて不自然だ。処罰の重さに対する恐れから、自白すべきかどうか逡巡、葛藤している様子もうかがえる」などとして、自白供述の信用性が認められ、これが決定的な証拠となって有罪判決がされたのである。
 これは別件逮捕・起訴による本件の自白強要である。起訴後、本件である殺人の取り調べがなされた場合、録画の義務があるかどうかの点について、法務省はこれを否定し、日弁連は義務があると主張した。今市事件における一部録画は、新法の下でも繰り返される危険性があり、それは違法捜査の抑制ではなく、違法捜査の隠ぺいにこそ役だったのである。

あるべき改革の方向性を確認することから
 こうしたことから、新法のもとでも、新たなえん罪の危険性が生じていることを確認し、代用監獄の廃止と弁護人の立ち会い、起訴前の保釈、全面証拠開示などの要求をあげ続けることが必要である。通信傍受が秘密保護法違反や共謀罪にまで拡大されることに対して、明確に反対するポジションを早期に確立することが必要である。
 また、盗聴過程において、人権侵害が生じていないかを独立の立場からチェックできる第三者機関についての制度設計を行い、これを法施行前に法務省に提起し、制度を盛り込ませるべきである。このような、真の刑事司法改革の機運を、正しい事実認識にもとづく冷静な反省と相互討論の回復によって、作り上げていきたい。
(かいどゆういち)

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核のキーワード図鑑


地球から 核よ出ていけ

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「さようなら原発 さようなら戦争」大集会
9月22日 秋分の日に開催

 安倍政権の暴走によって、川内原発、高浜原発に続き、8月12日には伊方原発も再稼働されました。これに対して、さようなら原発1000万人アクションは、「『止めよう!辺野古埋立て』国会包囲行動実行委員会」、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の協力を得て、「さようなら原発さようなら戦争大集会」を開催します。
 原発も戦争法も、沖縄新基地建設も許さない大きな声を首都東京であげます。

会場東京・代々木公園B地区、けやき並木

日程2016年9月22日(木/秋分の日)
 11:00~15:00(デモ出発)
 12:00~第一部トーク(福島の現状と課題)、歌(寿)
 13:30~第二部トーク(呼びかけ人あいさつ鎌田慧、澤地久枝)
  発言アーサー・ビナード(詩人)、木内みどり(俳優)、福島からの報告ほか
 15:00デモ出発(1)原宿・青山方面コース(2)渋谷方面コース

主催「さようなら原発」一千万署名市民の会
連絡先03-5289-8224(原水禁気付)

協力「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲行動実行委員会戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

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