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ニュースペーパー2017年3月

2017年3月 1日

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真摯に歴史と向き合い、アジアとの友好関係を築こう
「憲法と『建国記念の日』を考える2.11集会」

 2月11日、東京・連合会館で「憲法と『建国記念の日』を考える2.11集会」が開催され、約250名が参加しました。開会あいさつで藤本泰成・平和フォーラム共同代表は、歴史を捻じ曲げようとする安倍政権の姿勢を批判し「常に真実は何か、歴史とは何かを見つめ、騙されない市民として生き、人間として恥じない歴史を積み上げていかなければならない」と参加者に呼びかけました。
 講演では、韓国・ハンギョレ新聞のキル・ユンヒョン東京支局長が「朴政権の危機と韓日関係」と題し、2015年12月の「日韓合意」について、朴政権が中国寄りの政策を進めることに危機感を感じた安倍政権が、日米韓の軍事同盟を強化するために日韓関係の最大の「障害物」となっている日本軍「慰安婦」問題を封じ込めようとしたのではないかと分析。国家の責任を認めない安倍政権について批判する一方で、日韓両国の市民はいま一度1998年の日韓共同宣言「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」に立ち返らなければならないと訴えました。(写真は講演をするキル・ユンヒョン支局長)
 続いて、広島県の元教員の廣田克枝さんが、自身の教育実践に触れながら、「アジアの友好のためには侵略と抵抗の歴史について教えなければならない」と報告しました。

特別インタビュー
「無償化裁判」に勝ってよりよい社会を作っていきたい
朝鮮高級学校卒業生に聞く

 朝鮮学校に対する差別が深刻さを増しています。朝鮮高校のみが「高校無償化」制度から排除されて5年もの歳月が過ぎてしまいました。さらに安倍政権は各地方自治体にプレッシャーをかけ、朝鮮学校への補助金をカットさせようとしています。それでも朝鮮大学校の学生たちは差別に屈することなく、文部科学省前での抗議行動(通称「金曜行動」)を続けてきました。全国5か所(東京・愛知・大阪・広島・福岡)で行われている「高校無償化」裁判がいよいよ結審・判決を迎えようとしているいま、改めて学生たちに胸の内を語っていただきました。
出席者(写真左から許さん、李さん、崔さん)李星来(リ・ソンネ):大阪朝鮮高級学校卒、現在は朝鮮大学校政治経済学部法律学科2年生、権利闘争協議会所属。
崔哲碩(チェ・チョルソク):茨城朝鮮高級学校卒、現在は朝鮮大学校政治経済学部法律学科3年生、権利闘争協議会所属。
許貴美(ホ・ギミ):愛知朝鮮高級学校卒、現在は朝鮮大学校文学歴史学部3年生、学生委員会・国際統一部部長。
(聞き手=藤本泰成・平和フォーラム共同代表)


藤本泰成:まず自己紹介をお願いします。
李星来:政治経済学部法律学科2年です。僕は金曜行動を主催している権利闘争協議会で活動しています。
崔哲碩:政治経済学部法律学科3年です。僕も権利闘争協議会で活動しています。
許貴美:文学歴史学部の3年生で、学生委員会国際統一部という学生の交流にとりくむところで部長を務めています。それでこのインタビューに同席させてもらうことになりました。「高校無償化」や金曜行動に関する質問は2人に任せて、わたしは横にいるだけということでお願いします(笑)。

藤本:普段はどのような学生生活を過ごしていますか。
許:わたしは大学からテコンドーを習い始めました。空手の朝鮮バージョンみたいな武道ですね。他にも朝鮮舞踊を踊ったり、その他カヤグムやソヘグムといった民族楽器を演奏する部活動も多くの学生が参加し盛んです。
崔:音楽もよく聞きます。J-POPやK-POPも聞きますが、最近学生の間で人気なのはD-POP(DPRK=朝鮮民主主義人民共和国のポップミュージック)です。YOUTUBEで簡単に見ることができるので、みんなで踊りを真似したりして遊んでいます。

藤本:日本の大学生と変わりない学生生活を過ごしているんですね。ところが、朝鮮学校の学生だけが不当な差別を受けています。民主党政権時に「高校授業料無償化」が実現しましたが、朝鮮学校への適用は見送られ、さらに安倍政権になってからは省令が改正され完全に対象から外されてしまいました。そのときはどう思われましたか。
李:正直、複雑な法律なので、高校生には一体何が起こったのか全然わかりませんでした。ただ日本政府によって朝鮮学校が排除されたという事実だけは認識できたのですが、なにも知らない高校生からしたら「なんで?」というのが正直な気持ちでした。

藤本:多くの日本人がこの問題に無関心だと思うのですが、排外主義が高まる中で、「京都朝鮮学校襲撃事件」や「徳島教組襲撃事件」といったヘイトクライムが起きました。「ネット右翼」と呼ばれる人たちを見てどう思いますか。
李:僕が中学一年生の時に京都朝鮮学校襲撃事件があり、すごい衝撃を受けました。その後「ヘイトスピーチ」という言葉が流行語になりましたが、実際には日本政府による在日朝鮮人への弾圧は100年以上前から続いてきたわけです。上からの排外主義が下からの排外主義を生み出し、いまの状況があるのではないかと思います。
許:京都朝鮮学校襲撃事件に関していえば、被害にあった小学生たちは「なんで僕たちがそんなこと言われないといけないの?」と思ったのではないでしょうか。大学生だったらある程度知識があるので「この人たちはおかしい」と判断できる。でも、アイデンティティーを形成していく途中の小学生の段階であのようなことが行われてしまえば、朝鮮人というだけですごい劣等感を感じてしまう。それが自分にとって本当に心が痛むことですし、子どもたちがあまりにもかわいそうです。

藤本:このように差別が深刻化する中、朝鮮大学校の学生たちは金曜行動を行い抗議の声を上げ続けてきました。毎回毎回みんなが行動するのは大変ではないですか。
許:学部ごとに担当を割り振っています。「この日は何学部、次は何学部が文科省前に行く」という形です。
李:大学生なので、本来は自分の勉強が忙しい。それに文科省までの交通費だって馬鹿になりません。それでも自分たちで始めたことなので、みんなで分担しようということになりました。それに今は担当でなくても「私は今日行けるから行く」といって積極的に参加する学生もいます。みんなで助け合ってやっています。

藤本:金曜行動でいつも歌っている歌がありますよね。あれは自分たちで作詞・作曲したのですか。また、金曜行動を行っていて、もどかしさを感じることはありませんか。
許:歌詞は学生たちが考えました。それに朝鮮大学の音楽を専攻している学生が教授とともに曲をつけたんです。みんなが覚えやすいようにポップな曲調に作られています。
崔:正直言って「僕たちの声が文科省の人たちに届いていないのではないか」と感じますね。小さな民主主義の実践がすごい力になるので、行動自体は意義あることだと思います。ただ自分たちの努力やコストに見合う対価が見込まれるのかというと、不安もあります。


雨の中の文科省前金曜行動(2016年10月28日)
藤本:同じ日本社会に生きているのに、在日朝鮮人が差別されるというのはおかしいですよね。
李:  ただ僕自身は、朝鮮学校の学生と日本学校の学生とは本質的に異なると思っています。なぜかというと、在日朝鮮人という存在が生まれた背景には日本の朝鮮植民地支配があり、さらに70年以上にわたって日本政府が同化政策を行ってきたっていう歴史があります。つまり僕たちの存在自体が歴史的なもので、そういう意味では違いを意識します。僕自身は日本国籍に変えたり、日本名に変えたり、日本学校に通ったり、そして日本の人と結婚するのは、悪いことではないと思っているんです。それにも関わらずなぜ朝鮮学校や国籍を大事にするのかというと、同化政策にからめとられようとしていることに抵抗する意味があるからです。そういう意味ではナショナリズムとはかけ離れたものではないかなと思います。
 ちなみに朝鮮学校には、朝鮮の言葉や文化、歴史など、植民地の時に奪われた民族性を養うという存在意義があります。そうした教育内容は、いまの日本政府が進めようとしている政策とは相いれないし、だからこそ差別され弾圧されるのかもしれません。
藤本:そんな朝鮮学校と学生たちへの差別を許せないという日本の市民運動も活発に行われています。そして最近では韓国でも支援の輪が広がっていますね。
李:高校の時から韓国の支援者と接する機会がありました。会って話したりするとやっぱりすごくうれしいですよね。いま裁判を闘っていますが、裁判官もやはり人なので、世論や社会の雰囲気に左右されると思うんです。さらに言えば、人の団結力や社会運動こそが社会を変えると思っているんで、だから日本や韓国の支援運動の高まりは大きな力になります。その連帯の輪が在日朝鮮人社会だけでなく日本社会や韓国に広がっているというのは、これ以上ない世論だと思います。だからうれしいです。

藤本:全国各地で行われている「高校無償化」裁判がこれから結審・判決を迎えます(広島は3月8日、東京は4月11日結審。大阪は7月28日に判決言い渡し)。いまからでも裁判官に訴えておきたいことはありますか。
李:言いたいことは山ほどありますけど、とりあえずは「司法を司るものとして公平に判断してくれ」と伝えたいです。裁判の結果がどうなるかはわかりません。ただ、京都朝鮮学校襲撃事件や徳島教組襲撃事件など、ヘイトスピーチ関連の裁判では必ず勝利してきました。「高校無償化」に関しても国連から多くの勧告が出されていることを考えたら、この裁判だって必ず勝てると信じています。

藤本:最後に将来の夢・目標についてお話しください。
崔:僕と同じようなアイデンティティーを持った後輩たちのためにがんばっていきたいと思います。僕たちにも、後輩のために尽力してくださった先輩たちがいました。僕も同じような境遇で生活している在日朝鮮人4世、5世のためにも、僕たちと心をともにする日本の方々とともに手を取りながらよりよい社会を作っていく、在日朝鮮人の輪をもっと広げていけるような活動をしていく人になりたいと思っています。
李:僕たちの世代というのは、中学・高校・大学時代に「高校無償化」からの排除や補助金のカットという形で直接差別を受けてきた世代ですし、そうした差別に抗う過程で自分たちのアイデンティティーを形成していったという世代でもあります。ただ、思春期のアイデンティティーというのは本来こうやって形成するものではない。自分でもアイデンティティーの形成過程がネガティブだったなと思うんです。だから、これから10年後、20年後には、自分たちの後輩や子ども、孫の世代には、日本人と在日朝鮮人の方々、そしていろんな国の人たちとともに共存して、積極的に自分たちのアイデンティティーを形成していける、そういう社会を作っていきたいと思っています。今はほど遠い地点にいますが、最終的にはそういうプロセスで社会を変えていきたいっていうのがありますね。ちょっと大きい話ですけど(笑)。

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原点に戻り、辺野古新基地は造らせない─埋立承認の撤回に向けて
元愛媛大学教授(行政法) 本田 博利

県民の怒りの"マグマ"は噴出直前
 仲井真弘多・前沖縄県知事が、2013年12月27日に安倍晋三政権と結託して県民無視の辺野古沖の埋立承認を行ってから、奇しくもちょうど3年目の昨年12日26日、翁長雄志知事は15年10月13日に行った承認取消しを12月20日の最高裁「違法確認訴訟」判決を踏まえて取り消し、承認が復活した。
 翁長知事は取消しにあたり、引き続き辺野古に新基地を造らせないという「原点」に戻り、新たなスタートに立つ決意を表明した。一方、国は、同月13日のオスプレイ墜落の記憶も生々しい、取消し翌日の27日に工事再開に着手した。歴代知事がヤマト政府に警告してきた県民の怒りの"マグマ"は噴出直前である。
 最高裁判決は、国の主張に「満額回答」した9月16日福岡高裁那覇支部判決の「辺野古移設が唯一の選択肢」などの「言い過ぎ」は抑えたが、これまた国策追従判決であった。唯一の救いは、公有水面埋立法の解釈として、国に対する埋立「承認」には広範な裁量権が認められると明快に判断したことである。
 知事は、県民から良好な海の管理を信託された新たな「承認権者」として、国(沖縄防衛局)が行う埋立工事に対し、埋立法に基づき環境への配慮を第一として監視・チェックを行い、違法な行為に対しては「取消し」(講学上、つまり行政法理論上の「撤回」)を含む広範な監督権限を行使できる。
 最高裁判決への対応には法的に2つの選択肢があった。違法確認訴訟の判決には「執行力」(強制力)はないので、司法が公正な審理を尽くすという使命を果たさない場合にまで、判決に従う法的義務はない。判決に従う、従わないはあくまで自治体の「任意」であるので、従わない場合、国は再度の代執行訴訟に進むしかない。知事がそれでも取消しを行ったのは、行政が司法の最終判断を尊重するのは当然であるという一般論に加え、新たな承認権者としての強力な権限を背景に、"次の一手"に着手したものととらえたい。
 承認が復活したとはいえ、知事の「新基地建設をあらゆる手法で阻止する」という固い決意のもとでの行政権限の活用方策は、稲嶺進名護市長の権限も含め、(1)次の2つのタイプの承認の「撤回」をはじめ、(2)変更申請の不承認、(3)岩礁破砕許可の更新拒否など多数ある。


キャンプ・シュワブゲート(辺野古)前で抗議行動
(2016年5月13日)
協議未了のまま工事着手は明白な違反行為
 当面実現可能なのは、【タイプ1:留意事項違反に対する承認の撤回(取消し)】、すなわち事前協議の義務づけ違反へのペナルティとしての承認の取消し(講学上の「撤回」)である。ここで「取消し」と「撤回」の異同について具体的に説明すると、翁長知事が行った承認「取消し」は、仲井真前知事が行った承認には第三者検証委員会の報告などを踏まえ、当初から瑕疵(キズ。埋立法違反)があったと判断して取り消したものであるが、承認復活後の「撤回」は、承認自体は適法であり、承認を受けた相手方に落ち度=法令違反があるとして、聴聞(不利益処分のため)を経て撤回(法上は取消し)するものである。
 復活した承認書には、「留意事項」5項目が添付されている。「留意事項1工事の施工について」は「工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと。」と定める。この留意事項は私人(民間)への免許「条件」(法34条1項1号の私人に対する実施設計の認可が例)と同じ法的性質を持つ。このことは、国が行う埋立ての優位・特権を否定し、私人と同等の法的地位に立つとした2013年の岩国「海の裁判」広島高裁判決、さらにはこのたびの最高裁判決からも明らかである。したがって、事前協議と実施設計が未了のままでの工事強行は留意事項違反となり、免許条件違反と同様に承認の取消事由(原因)となる。
 2月6日に国は協議未了のまま海上での本格工事に着手し、翌7日には総数228個に及ぶ大型コンクリートブロックの投下を始めた。あわせて大型掘削調査船による未実施の箇所の海底ボーリング調査を再開した。これは明白に留意事項に違反する行為であり、承認を撤回する要件、タイミングともに、機は十分熟していると考えられるので、知事の速やかな決断が待たれるところである。
 次に県民の期待感が高まっているのが、【タイプ2:県民投票に基づく承認の撤回】である。これは、承認が適法であることを前提として、その後に生じた新たな「公益」=「県民益」を理由として承認の法的効力を将来に向けて廃止、すなわち無くするものである。「撤回」は究極の手法であり、辺野古新基地建設の是非を問う「県民投票」の実施を条例で定めて実施し、県民の反対の総意=「県民益」が明らかであることが確認されたうえで、知事の政治的な判断と責任で撤回することになる。ただし、県民投票の実施については、条例の制度設計・実施などで時間がかかるなどの検討課題があることに留意すべきであろう。
(ほんだひろとし)

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「明治の日」制定を許すな-時代を捉える目を!
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成


反貧困・格差集会(日比谷野外音楽堂・2月19日)
侵略戦争と植民地支配に明け暮れた歴史
 11月3日の「文化の日」を「明治の日」に変えようという議論が起きています。元民社党の塚本三郎委員長(当時)が会長になっている「明治の日推進協議会」(協賛団体:日本会議、新しい歴史教科書をつくる会、日本教育再生機構など)は、「日本国が近代化するにあたり、わが民族が示した力強い歩みを後世に伝え、明治天皇と一体となり国つくりを進めた、明治の時代を追憶するための祝日(明治の日)」に、明治天皇の誕生日(明治節)にあたる現在の文化の日を置き換えようとしています。彼らの集会で稲田朋美防衛大臣は「神武天皇の偉業に立ちもどり、日本の良き伝統を守りながら改革を進めるのが明治維新の精神だった。その精神を取り戻すべく、心を一つにがんばりたい」と述べています。
 アジアの東、日(ひ)出づるところ/ひじりの君の、あらはれまして/古きあめつち、とざせるきりを/大御光(おほみひかり)に、くまなくはらひ/教(をしへ)あまねく、道(みち)明(あき)らけく/治めたまへる、御代(みよ)たふと
 これは、戦前の明治節に歌わせられた「祝日大祭日唱歌」の歌詞です。11月3日は、元々明治天皇の誕生日(天長節)であり、明治天皇をしのびその偉業を讃える日とされていたのです。
 明治維新以降、日本は、明治憲法と天皇制の政治体制の下で、富国強兵・殖産興業を旗印に、軍事と経済の双方で、強力で性急な近代化路線をとり続けました。臣民と呼ばれた民衆は、日清戦争と台湾併合、日露戦争と朝鮮併合、対華21箇条要求、そして満州事変からの15年戦争、1945年8月15日の敗戦まで、侵略戦争と植民地支配の時代を過ごしました。
 民衆は教育勅語の下で、ひとりの人間として処遇されていなかったのです。「明るい明治」を描こうとした作家・司馬遼太郎は、日露戦争を「民族的共同主観のなかでは、あきらかに祖国防衛戦争だった」と書き、日露戦争を境にして「明治」と「それ以降」を別物として扱っています。しかし、日清戦争による遼東半島の領有と三国干渉、また、義和団の乱から北清事変での日本政府の姿勢、朝鮮半島での閔妃暗殺から日韓議定書、そして日露戦争後の韓国併合などを見れば、日露戦争を単に「祖国防衛戦争」と捉えることはできません。
 明治の近代化は、そのまま日本の侵略と膨張の歴史なのです。その中で、日本の民衆は、財閥や大企業の搾取と、侵略戦争遂行のための多大な税負担、四民平等と言いながら残される小作制度や部落差別、そして天皇と爵位に象徴される貴族制度など、多くの社会矛盾に苦しめられてきました。谷川健一や宮本常一が著した「日本残酷物語」や、横山源之助の「日本の下層社会」、河上肇の「貧乏物語」、細井和喜蔵の「女工哀史」など、明治の絶望的貧困の世界を描いた書物はあげればきりがありません。
 今年2月11日の朝日新聞の社説は、明治の日の問題を取り上げて「歴史の光の部分のみを見て、影から目を背けるのはごまかしであり、知的退廃に他ならない」とまで述べています。

平和国家における「文化の日」 戦前回帰を許すな
 「明治節」は、戦後「自由と平和を愛し、文化をすすめる日(文化の日)」に変わりました。国会で説明された「文化の日」の制定理由は、日本国憲法が公布され「戦争放棄を宣言した重大な日」だからということでした。
 安倍晋三首相は、昨年6月23日の「沖縄慰霊の日」に「平和の礎に刻まれた方々の無念、残された人々の底知れぬ悲しみ、沖縄が負った癒えることのない深い傷を想うとき、ただただ、頭を垂れるほか、なす術がありません。過去と謙虚に向き合い、平和な世界の実現に向けて不断の努力を続けていく、その誓いを新たにする日であります」と、沖縄の地で発言しました。
 しかし、「戦争の放棄を宣言した重大な日」である文化の日を、安倍政権内から「明治の日」に変えようという動きが出始めています。菅義偉官房長官は「明治150年は、我が国にとって一つの大きな節目、明治の精神に学ぶ、日本の強みを再認識することはきわめて重要だ」と語り、記念事業にとりくむことを宣言しています。安倍首相も地元山口県で「明治維新から50年が寺内正毅内閣、100年が佐藤栄作内閣、いずれも山口県出身。2018年までがんばれば150年は安倍晋三となる」と、その個人的野心を語っています。
 紀元節復活(1966年)、元号法制化(1979年)、国旗国歌法制定(1999年)、教育基本法改悪(2006年)と続いてきた、日本会議とそこに属する団体の「戦前回帰」の企みと、安倍晋三の個人的野心を私たちは許してはなりません。日本国憲法の下で、平和と民主主義、基本的人権の尊重を実現し、差別や貧困格差、戦争のない社会をめざしてきた私たちは、歴史をしっかりと見つめ、対抗していかなくてはなりません。
(ふじもとやすなり)

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ポストTPPへ これからどうなる貿易交渉(1)
日米2国間FTAの動きを注視

 昨年12月の臨時国会で、日本は環太平洋経済連携(TPP)協定を批准しました。しかし、1月23日のトランプ米大統領の「TPPからの永久離脱」の大統領令により、TPPは当面、発効のめどが立っていません。これからTPPやそれ以外の様々な貿易交渉はどうなるのでしょうか?2回に分けて検討します。

死んではいないTPP 米国抜きはありうるか
 トランプの大統領令によって、TPP協定はすでに無効になったとの見方があるが、そうではありません。協定の発効・参加・脱退に関する規定によれば、「全ての原署名国が国内手続きを終え」あるいは「署名後2年以内に前項の条件が整わなかった場合は、原署名国全体の国民総生産(GDP)の85%以上を占める、6ヶ国以上が、国内手続きを終え」た時に効力を生じるとされています。これには期限はないことから、TPPは発効の条件がそろうまで何年間でも存在できるのです。
 一方、今回の米国のような発効前の離脱については何ら規定されていません。国際法学者の間では「(離脱を宣言しても)米国はあくまで原署名国としては協定上存在しており、米国抜きに残る11ヶ国でこの協定を有効化も、無効化も、修正も出来ない。新しい協定として11ヶ国の合意署名・国内手続き・発効手続きを採らなければ、"米国抜きのTPP"は成立しないだろう」と言われています。逆に言えば、もしもトランプ大統領が考えを変えるか、新たな大統領がTPP参加を検討すれば、いつでも発効できる可能性があるわけです。
 もうひとつの可能性として言われる米国抜きの11ヶ国による新たなTPPはあり得るのでしょうか。2月に入り、ニュージーランドのマックレイ貿易相が豪州、日本、シンガポール、メキシコを訪問し、"米国抜き"でのTPP発効案、あるいは南米・アジアの国を含むアジア太平洋の新たな協定など、様々な代替案を含め、米国離脱後の途について協議をしています。
 一方、チリはTPP参加国に加えて、中国・韓国・コロンビアなどにも呼び掛けて、アジア太平洋地域の経済連携協定の可能性について協議しようと計画しています。しかし、カナダは当面、北米自由貿易協定(NAFTA)についての米国との再交渉を優先しています。メキシコはNAFTAの見直し交渉に加え、TPP参加国とは2国間協定を締結するという方針を明確にしています。
 「TPPに反対する人々の運動」世話人の近藤康男さんは「米国の市場を求めてTPP交渉で譲歩に踏み切った、あるいは、本旨としないが米国の強い圧力で厳しいル-ルも受け入れた国も、特に途上国には多い筈だ。従って、米国抜きの疑似TPP代替案には、意外と利害が輻輳し、交渉に移るのは思ったより大変かもしれない」と分析しています。TPPはまだまだ死んではいないのです。


安倍首相訪米に対するTPP反対アクション
(2月9日・首相官邸前)
経済と軍事が一体化する日米関係
 ワシントンで2月10日(現地時間)、安倍晋三首相はトランプ米大統領と首脳会談を行い、日米同盟や経済関係の強化のため、安全保障とともに、貿易や投資分野などを幅広く協議する「経済対話」を新たに立ち上げることで合意しました。直接的な日米自由貿易協定(FTA)の交渉入りには言及していないものの、TPPの合意水準をベースに、農畜産物の全面的な市場開放や自動車での摩擦解消、食の安全などの規制緩和を迫られることが想定されます。
 一方、日米両政府にとって重要なことはTPPの地政学的な意味付けです。東アジアの安定と成長するアジア経済の取り込みの主導権を中国に取られないためには、日米軍事同盟とTPPは欠かせない両輪として、これまで交渉を続けて来たのです。いまだに安倍首相はTPPにこだわり続け「アジア太平洋地域での自由な貿易や投資の拡大」を主張するのはそのためです。日本政府は2国間のFTAではなく、個別要求での2国間協議に止めたいと考えているようです。しかし、安倍首相はトランプ大統領に押し込まれ、経済的にも軍事的にもすでに譲歩しているのではないかと懸念されています。
 今回の首脳会談では表向きになっていないものの、軍事面での米国の要求は日本の防衛予算の大幅増額と役割強化です。米軍駐留経費負担をさらに増やせば、日本はまさに米軍の傭兵化に等しくなります。そこまでなくても、日本の防衛予算のGDP1%枠超えを要求されることは想定されます。これは、安倍首相にとっても実現したい課題であり、稲田朋美防衛相もマティス国防長官との会談で踏み込んだ発言をしています。
 こうした状況から、軍事と貿易交渉面で、米国との関係が大きな課題になってきます。今後はTPPを発効させない運動とともに、2国間FTAの動きを注視していかなければなりません。
(市村忠文)

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福島第一原発事故、6年目の現実
原子力資料情報室 澤井 正子

 2011年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から6年が経過しようとしている。「明るい未来のエネルギー」として人々に「夢」を振りまいてきた原子力発電。実際、人間には制御不可能な「未熟な技術」だったことが、福島第一原発事故によって証明された。
 あの3月11日午後7時に発令された「原子力緊急事態宣言」は、まだ発令中だ。事故はいまだに続いている。

調査ロボットを残置するほどの超高線量
 福島第一原発の現状を象徴するような映像が、2月に初公開された。それは福島第一原発2号機の原子炉底部に投入された遠隔カメラの映像で、原子炉外側の格納容器内の放射線量は推定で最大毎時650シーベルト(マイクロやミリの単位ではない)に達しているという。これは人が近づけるような値ではない。この後に投入された「サソリ」という調査ロボットは、あまりの超高線量と堆積物のために壊れてしまった。東京電力は電気ケーブルで引きずり戻す回収もできず、ケーブルを切断しロボットをそのまま放棄した。東電はこれを「残置」と説明し、失敗でないと言い張っている。
 福島第一原発事故の過酷さは、このようなニュースが事故から"6年後"に公表されているという事実に尽きる。いまだに融けた核燃料がどこにあるのかさえ誰にも分からない。東電は6年間、どこにあるかわからない核燃料に向かって冷却水を注入し、回収した汚染水から放射能を除去し、汚染水をタンクに溜めるという作業を続けてきた。水素爆発した各建屋には近づくこともでず、高線量に対応する機器を開発した。しかしあまりの高線量のため、カメラやロボットさえ予想より早く壊れてしまうことが明らかになった。廃炉作業は30~40年とされているが、調査が進むほど逆にその困難性が明らかとなり、計画の見直しは必至だ。

ひどい強制帰還の方針 公的支援打ち切り
 事故直後、県内外に避難した人は全体で約16.5万人、現在は約8万人である。避難勧告による避難(20キロ圏の警戒区域と計画的避難区域)や、自主避難したのは、被ばくを避けるためだ。
 ところが政府は、2015年6月の閣議決定により、復興・帰還政策を加速させる。避難勧告解除の要件として、推定年間積算線量が20ミリシーベルト以下を導入した。すでに一部避難指示が解除された田村市、川内村、楢葉町、葛尾村、南相馬市をはじめ、今年の3月末に川俣町山木屋地区、さらに飯舘村などで、帰宅困難区域(年間積算線量50ミリシーベルト以上)以外が解除される予定である。
 この帰還方針の「年間20ミリシーベルト」はひどいものだ。故郷へ帰ると、一般人の線量限度(年間1ミリシーベルト)の20年分を1年間で被ばくするのだ。生活インフラの整備や除染も計画より遅れている。さらに、例えば飯舘村だけで、除染によって発生したフレコンパック約240万個(2016年末)が家々の前に野積みされている。実際の帰還者は10%台にとどまり、高齢者が多く、帰還は当然進んでいない。
 避難勧告解除により、住宅手当や精神的慰謝料等が数年後には削減される(自主避難者の無償住宅手当は2017年3月で打ち切り予定)。これは避難者への経済的な支援を断ち、帰還を望まない人々に対し強制的な帰還を迫るものだ。
 被ばくの問題は個人の考え方によるが、当然これを受入れないという権利もある。避難者の「家に戻る」、「仮設での生活を続ける」、「別のところに移住する」など、人々の選択を尊重し補償しつづける責任が、事故を起こした東京電力や原発を推進した日本政府にはある。最低限の責任を果たすべきである。

未だに誰も罰せられていない 刑事訴訟で明らかに
 避難者は6年もの長期にわたって仮設住宅や借り上げ住宅で不便な生活を強いられてきた。大きな問題は、自らの生活が不透明で見通せず、将来に希望を持つこともできないという、まさに「閉塞」と言えるような状況に置かれていることだ。そのような状態で多くの人が、様々な病気、鬱などを発症させ、自死や孤独死に至る悲惨なケースも伝えられている。また、子どもの甲状腺がんは、確実に増加傾向にある。
 一民間企業がこれだけの大事故を起こし、環境や人的被害も明らかなのに、未だに誰も罰せられていない。しかしやっと福島原発告訴団の告訴を端緒として、検察審査会の「起訴議決」による起訴が実現した。指定弁護士が2016年2月、東京電力の勝俣恒久元会長、武藤栄、武黒一郎の両元副社長について、業務上過失致死傷の罪で東京地裁に強制起訴した。今後開かれるこの裁判によって、この事故が東京電力という企業が安全性を蔑ろにした結果おきた"人災"であることが明らかになるだろう。
(さわいまさこ)

「いのちを守れ! フクシマを忘れない さようなら原発全国集会」
 福島原発事故からまもなく6年。原子力政策の根本的転換を迫り、フクシマの被災者との連帯を強化するため、毎年開催している「さようなら原発全国集会」が3月20日(春分の日)に東京・代々木公園(JR「原宿駅」、地下鉄「明治神宮前駅」「代々木公園駅」)で開かれます。
11:00~ブース開店/さようなら原発ライブ
13:30~集会主催者あいさつ/フクシマ関連の報告/核燃料サイクル関連の報告ほか
15:00~デモ行進(2コース)

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福島原発事故のもたらした被ばく労働─廃炉のためにも働く者の権利を守ろう
ヒバク反対キャンペーン 共同代表 建部 暹

高い放射線量レベルの現場に12万人が従事
 福島第一原発の「緊急時作業」の労働者は、2016年3月までに総数4万7千人に膨れ上がっています。また、東北・関東の104市町村にわたる放射能汚染地域の除染作業に2015年12月までに6万6千人が従事しています。除染作業と合わせて、原発事故による被ばく労働従事者は既に12万人を超えています。
 労働現場はこれまでの原発被ばく労働に比べ桁違いに放射線量レベルが高く、短時間で被ばく線量が増加します。原子炉建屋周辺は特に線量が高く、2016年12月現在でもほとんどの地点が毎時数十~数百マイクロシーベルト(自然放射線の100~1000倍)のオーダーで、毎時2.6mSvといったホットスポットも残っています。建屋内もレベルが桁違いに高い危険な環境です。
 事故発生とともに緊急時作業に指定され、さらに被ばく限度が法定の100mSvから250mSvに引き上げられ、事故発生直後は東電社員が現場で高線量被ばくをする状況になりました。2011年3月だけで、東電社員6名が250mSvを超え、最大670mSvも被ばくしています。100mSv超えは東電社員87名、下請け21名、50mSv超は東電社員327名、下請け147名、5mSv超えは東電社員1590名、下請け1350名です。
 緊急時作業が解除された2011年12月までに、約900人が単年度線量限度の50mSvを超える被ばくを、約1万人が白血病労災認定基準の年間5mSvを超える被ばくをしています。

多い下請け労働者の被ばく 健康管理手帳の交付を
 福島第一原発では、事故後、建設業関連を中心に主として県外からの従事者が増え、協力企業作業員及び東電社員を含めた地元雇用率は約55%という状況が続いています。県内労働者は住民として事故で被ばくし、原発労働でさらに被ばくしています。
 現場ではここ数年、年間を通じて平日で4500~7500人が働いています。高線量下の被ばく労働が長期化し、下請けが被ばく労働を担うという事故前と同じ状況になってきています。2016年3月までの5年間で4万7千人の労働者のうち、20%を超える1万人が20mSv以上を被ばくし、その86%を下請け労働者が占めています。
 また、2016年4月から12月の間に従事した労働者は、東電社員約1600名、下請け労働者約13000名です。下請けの各月の最大被ばく線量が7~14ミリシーベルトと高いレベルが続き、11月で39ミリシーベルトに達した人が出ています。既に1852名の労働者が白血病労災認定基準の年5ミリシーベルトを超える被ばくをしています。
 事故後、福島原発で被ばく労働に従事した11名の労働者が被ばくによる疾病として労災申請し、白血病で2名が、甲状腺がんで1名が労災認定されました。不認定が3件、取り下げが1件で、4件は調査中です。
 政府は緊急時被ばく労働者の長期的健康管理の「指針」を策定し、被ばく線量や健康診断結果をデータベースに登録し、データベース登録証を全員に発行し、各都道府県の窓口で健康相談等に応じています。50mSvを超える被ばくをした約900人に長期健康管理の「手帳」を交付し、国の費用で在職中から白内障検査(対象:50mSv超え)や指針に基づくがん検診(対象:100mSv超え)を行い、離職後も国が費用を支援しています。
 最大の問題点は、手帳交付が緊急作業従事者約2万人中の900人に限定されていることです。白血病で労災認定された2名はこの手帳交付の対象外であり、政府の長期健康管理の欠陥が露呈しました。緊急作業従事者全員に「手帳」を交付させることが必要です。また、福島原発被ばく労働者全体、さらには全国の被ばく労働者に健康管理手帳を交付させることが重要です。在職中からがん検診などを充実させることも当然の権利です。

労働災害の頻発と搾取の横行を許すな
 福島第一原発で、基礎工事の生き埋め、タンク上部からの転落など、2015年8月までに死亡事故4件、休業4日以上の負傷30件が発生しています。原因として、未熟練労働者の増加、防護の重装備で転倒しやすくなっていることなど、原発事故が引き起こしている労働災害と言えます。
 福島労働局が2016年9月までに724事業者の監督指導を行った結果、409事業者に何等かの労基法、労安法違反が認められました(違反率56.5%)。労働条件関係の割増賃金の支払い、賃金台帳の作成、労働条件通知書の交付などで406件の違反、安全衛生関係の線量当量の測定、健康診断の結果報告、線量当量の測定結果の確認など250件(うち電離則に係るもの113件)の違反が認められています。親睦会費や寮費、食費等を労使協定の締結なく賃金から控除したものや、内部被ばく測定した時間に対する賃金を支払わなかったものが増えています。
 さらに、下請け企業が健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの社会保険に加入せず、労働者が必要な給付を受けられないという実態が蔓延していました。国土交通省が加入を義務つけるガイドラインを策定し、4月から実施し、未加入者の排除をめざしていることは評価できますが、労働者の寮費や食事費を一方的に引き上げられ保険費用に充てられるという被害が発生しています。危険手当の不払い、就業前の宿泊費用立て替えで、その後、労働者を縛るといった不当行為も後を絶ちません。
 廃炉作業を進めるうえでも、労働者の権利を守ることが重要となっています。
(たてべのぼる)

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もんじゅがだめなら、アストリッドがある?

 政府は、昨年12月21日の原子力閣僚会議において高速増殖原型炉もんじゅの廃炉を決定した際、高速炉開発の意義は「何ら変わるものではない」と述べ、そして、開発のための「戦略ロードマップ」の検討を2017年初頭から開始し、2018年を目途に策定するとしています。頼みの綱は、フランスで計画中のASTRID(アストリッド)という高速炉。同炉を含む海外炉のデータ等により「もんじゅを再開した場合と同様の知見の獲得を図る」と言います。しかし、原子力委員会の岡芳明委員長は昨年12月22日の会合で「コストが高い高速炉は、競争環境下にある電力会社は使えず、商業化できない」と述べています。

ごみ焼却炉として提唱されたASTRID
 ASTRIDの発端は、1991年「放射性廃棄物管理の研究に関する法律」にあります。同法の中で、地層処分及び長期地上貯蔵と並んで、長寿命放射性核種の「分離・核変換」について研究することが定められました。プルトニウムとウランを取り出す現在の再処理では、地層処分場に送られるガラス固化体の中にプルトニウム以外の超ウラン元素(TRU)が含まれています。「マイナー・アクチニド(MA)」と呼ばれる長寿命元素(アメリシウム、ネプツニウム、キュリウム)です。MAは発熱量も大きく、処分場の容積や廃棄物の毒性を左右するから、プルトニウムと合わせてこれらも取り出して燃やし(中性子を当てて)寿命の短いものに「核変換」するための研究をせよ、遅くとも2006年までに報告せよというのです。
 2006年の「放射性廃棄物等管理計画法」では次の2点が定められました。1)この役割を担う(1)新世代の原子炉と(2)廃棄物核変換専用「加速器駆動炉」の両者の工業的展望について2012年に評価すること、2)2020年12月31日までにプロトタイプ(原型)施設の運転を開始できるようにすること。
 仏原子力庁(CEA)は、「第4世代原子力システムに関する国際フォーラム」の「基準を達成できる可能性を持っている唯一のもの」としてナトリウム冷却高速炉を選びます。このプロトタイプ施設プロジェクトがASTRIDと呼ばれているのです。(名称は工業的実証用改良型ナトリウム技術炉(AdvancedSodiumTechnologicalReactorforIndustrialDemonstration)の頭文字から)。在日フランス大使館のスニル・フェリックス原子力担当参事官は毎日新聞(2016年10月27日)に対し、運転開始は「2033年以降」と答えています。つまり、この10年で開始目標に13年以上の遅延が出ています。

増やす夢のはずがごみ焼却?
 元々、もんじゅは、プルトニウムを燃やしながら使った以上のプルトニウムを生み出す夢の原子炉として喧伝された「高速増殖炉」の原型炉のはずでした。夢は、急速な原子力利用でウランが枯渇するとの想定に基づいたものでした。軽水炉の使用済み燃料の再処理は、夢の原子炉の初期装荷燃料用のプルトニウムを取り出すために計画されました。ところが、ウランは枯渇する気配がない。それで、技術的にも難しくて経済性のない高速増殖炉計画の継続を正当化できなくなると、廃棄物の減容・無毒化のためにもんじゅが使えるような話が出てきました。もんじゅの廃炉が決まると、今度は、もんじゅがなくともASTRIDがあるから大丈夫という話になっています。こちらは最初からごみ焼却炉として構想されたものです。プルトニウムはごみだったということです。
 ASTRIDは基本的には、高速増殖炉からプルトニウム増殖用のブランケットと呼ばれる部分を外したものです。増殖を目指さず、高速中性子でごみを燃やす炉だから高速炉というわけです。初期装荷燃料は、もんじゅと同じく、ウランとプルトニウムを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料。後にMA含有燃料も装荷するという話です。CEAの2012年10月の資料によると、MA含有燃料製造施設の運転開始は、炉心燃料装荷の後です。2013年の春以降の資料だと、MA含有燃料製造施設は消えてしまっていていつMAの燃焼を始める計画なのか定かではありません。

実用化の「死の谷」を無視した誇大広告
 使用済み燃料からプルトニウムだけでなくMAも取り出す再処理や、MAを燃やすための燃料を作る工場建設もすべてうまくいっても、1基ずつで終わるという話ではありません。TRU(プルトニウム及びMA)をMOXの形で燃やす際に生じる使用済み燃料からまたTRUを取り出すために特殊な再処理工場を作り、そのTRUを高速炉で燃やすというのを何世代にもわたって繰り返すことになります。1サイクルで35%ほどしか減らないからです。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長代理は同委臨時会議(2015年11月2日)でこう言っています。「もんじゅの利用のアイデアとして、廃棄物の減容であるというような、無毒化というか、核変換のようなことを、これも理屈としてはあり得る話ですけれども、前提として分離をするところもないし、燃料を作るところもないし、ペレット1個作るだけでも大騒ぎの技術ですよね。...それを、もんじゅが動けばこういった廃棄物問題の解決に貢献するかのように言うのは、少しこれ、民間の感覚でいえば誇大広告と呼ぶべきものではないでしょうか。」
 また、原子力委員会は、1月13日に発表したその見解で高速炉の夢の追及について次のように批判しています。「我が国は、原子力開発の黎明期から高速炉の実現を目指してきたが、その開発にあたっては、研究開発の視点が強調され、商業化というパラメータが重要視されていたとは言い難い面がある。これまでの開発モデルは、必ずしも実用化の"死の谷"を考慮していない。」
 高速(増殖)炉が実用化できないという現実を前に、なぜ六ケ所再処理工場の運転を開始しようというのか。国民的議論をすべき時です。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》
市民的自由を奪う「共謀罪」4度目の法案提出に反対しよう!
神奈川憲法フォーラム 共同代表  中森 圭子

東京オリンピックのテロ対策を理由に
 新年早々、共謀罪法案を通常国会に提出する法案リストに盛込むことが報道された。過去3度も廃案になっているにもかかわらず、「テロ等準備罪」と名を変え亡霊の如く浮上。いくら名を変えようと犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の本質的な危険は変わらない。
 この法案は2003年、「国連越境組織犯罪防止条約」を批准するための法整備として初めて出された。その後、04年、05年と提出されるも、「話し合うことが罪になる」ことが明らかになるにつれ、治安維持法そのものだ、と反対の世論が高まり、いずれも廃案となった。今度は2020年の東京オリンピックのテロ対策を理由にして提出しようとしている。安倍政権や法務省、外務省、国家公安委員会(警察庁)の今国会で何としても成立させようという強い意志がみえる。
 衆参両院で各党代表質問が行なわれたが、野党の鋭い質疑で問題点が次々と浮き彫りになった。安倍晋三首相は追及に窮し「これは共謀罪ではない」とか「新設しなければオリンピックを開催できない」とまで言い始めている。金田勝年法相に至ってはまともに答えられないばかりか「法案提出後に審議するべき」との文書作成を支持していたことが判明。これが議会制民主主義の実態であるとしたら、形骸化だけでなく、民意を無視して数と力で押し通す安倍政権の姿そのものだと思う。

思想・言論・結社の自由を奪う現代版治安維持法
 「共謀罪」の一番の問題は、行為を処罰するのではなく、思想・言論を処罰し、市民的自由が奪われることにつきる。犯罪行為を実際に行なわなくても、「合意(共謀)」しただけで処罰されるということは、既遂・未遂を処罰してきた日本の法体系を否定するだけでなく、やっぱりやめようと犯罪を思いとどまっても、共謀が成立するというのだから、内心・思想・言論・結社の自由を奪った治安維持法の現代版とも言える。
 今回、政府は市民の危惧を払拭し批判をかわそうと、一般の市民には適用しないと言い、構成要件に「準備行為」を加え、対象を「団体」から「組織的犯罪集団」にして厳格にしたと言うが、06年の与党修正試案と同じで新しいものではない。ATMでお金を下ろす行為が武器を買うための「準備行為」と認定されたり、「組織的犯罪集団」にしても「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体」としているが、金田法相は「普通の団体が性質を一変させた場合は対象になる」と答弁している。これらの判断は捜査当局が行なうのだから、恣意的に運用される恐れは十分あり、政府にとって邪魔になるような運動を取り締まることが可能になる。
 さらに法案では対象犯罪を4年以上の刑が定められているものとして、その数は676にもなるという。公職選挙法、窃盗、詐欺など市民生活にかかわるものも対象となる。共謀の段階で処罰するには、盗聴や潜入捜査で立証せざるを得なく、昨年5月に成立した「刑事訴訟法・盗聴法改悪」が活用され、市民を日常的に監視するなど、警察の捜査権限が拡大していくに違いない。公明党が対象犯罪を300まで絞り込む案を出しているが、心の中で考えたり、思ったりしたことを処罰するものであるから危険性が減るわけではない。

戦争の出来る体制へのインフラ整備
 政府が共謀罪新設はテロ対策の為と強弁しても、新設の根拠となる国連の条約はマフィアなど組織犯罪(暴力団)対策が目的で、日本は「大半の重大犯罪で予備罪や準備罪、ほう助罪があり、共謀共同正犯がある」と言われる。仮にテロ対策としても爆発物取締罰則や破壊活動防止法で対処できるとされている。「テロ等準備罪」では条約批准の主旨に反しており、新設の根拠は失われると考えられる。また、187カ国が批准しており、G7で日本だけが批准していないと言われるが、06年、アメリカは国内事情を理由に共謀罪条項を留保して批准している。さらに批准国で共謀罪を作ったのはノルウェーとブルガリアだけという。こうしたことから日弁連や平岡秀夫元法相は、共謀罪をつくらなくても批准できるという立場だ。
 秘密保護法、戦争法、刑訴法改悪と、民意を慮る事なく強行していく安倍政権では、共謀罪法案を提出されたらあっという間に成立してしまいかねない。10年前の3度目の廃案は小泉純一郎元首相の「国民の一大関心事になっている、強行採決は好ましくない」との判断で裁決が見送られたことが大きな要因だ。4度目の提出をさせないためには大きな反対世論を形成する必要がある。
 特定秘密保護法が成立してから、萎縮や自粛が起きているが、共謀罪が新設されれば、住民の相互監視や萎縮がさらに進み、「何も見ざる、聞かざる、言わざる」の社会になるようで不安が増す。海渡雄一弁護士は、「戦前は、軍機保護法・隣組・治安維持法がセットで市民を戦争に駆り立てていった。現代は、秘密保護法・盗聴法・共謀罪のセットで戦争する国へと邁進している」と話す。共謀罪は戦争法と一体であり、戦争の出来る体制へのインフラとなる。憲法施行70年の今年、何としても市民の力で葬り去りたい。
(なかもりけいこ)

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各地の脱原発の動きから
六ヶ所再処理工場と核燃サイクルを止める
原水爆禁止青森県民会議 事務局次長 日土 潤


第31回反核燃の日全国集会の後
青森市内をデモ行進する参加者
(2016年4月9日)
 昨年のもんじゅ廃炉決定により、日本の核燃料サイクルはサイクルの輪が途切れ、もはや核燃料サイクルを行う必要が無くなりました。しかし、22回も操業延期を重ねてきた青森・六ケ所再処理工場について政府は「着実に進めるように指導していきたい」と推進姿勢を全く変えていません。
 ところが、2016年度10月~12月の保安検査で「(核燃)3施設で4件の保安規定違反があった」と原子力規制委員会は発表しており、昨年12月のやっていない保安検査を「実施した」とする虚偽報告の問題とあわせ、日本原燃の安全意識の欠如が浮き彫りになりました。この間、原子力業界全体に拡がるモラルハザードが核燃施設にも拡がってきています。原子力規制員会は操業について「審査中なので結論に至ってない」と答弁、再処理工場の操業はさらに延期が予想されます。
 核燃料サイクルの破たんが明確になった今、余剰プルトニウムを48トンも持ち、プルサーマル発電も動かない状況では、日本は核兵器を持つために、再処理をやっているのではと疑われてきています。
 1985年4月9日に北村正哉・青森県知事(当時)が核燃サイクルの受け入れを決めましたが、あれから32年目を迎え、未だに再処理工場は操業に至りません。再処理工場は高速増殖炉の燃料を作るために用意されたはずですが、「もんじゅ」が廃炉となり、再処理工場を動かす正当性がなくなりました。電力会社や国は、原子力発電所でのMOX燃料の利用を言い出しましたが、壮大な無駄遣いとなることは明らかです。こんな核燃サイクルは、すぐにもやめさせる必要があります。
 福島原発事故発生の後、多くの国民は原子力施設の抱える問題に気づき、原発反対の声を上げました。ところが電力会社は廃炉費用と再処理費用等を永続的に集金するためのシステムを作ろうとしています。六ヶ所再処理工場と核燃サイクル施設の息の根を止めるために、第32回「4・9反核燃の日全国集会」(今年は4月8日に青森市「青森駅前公園」で開催)に結集しましょう。
(ひづちじゅん)

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〔本の紹介〕
「沸点 ソウル・オン・ザ・ストリート」
チェ・ギュソク著 加藤直樹訳 クォン・ヨンソク監修/ころから刊

 いま、韓国では民衆の巨大な決起によって、あれほど強固に思われたパク・クネ政権が大きく揺らいでいます。昨年来のこの韓国のたたかいに鼓舞される一方、翻って日本の状況は...と、忸怩たる思いがあるのも確かです。
 私たちも2015年の戦争法阻止のたたかいをはじめ、全国各地で奮闘してきました。そのなかで何ができて、何ができなかったのか。これからのたたかいに向け、真摯にとらえ返す必要があります。そのうえで、韓国の人びとのたたかいは、多くの示唆を与えてくれるように思います。
 本書は1980年代の韓国民主化闘争を題材とした「ビジュアルノベル」、漫画作品です。チョン・ドファン独裁政権下で、市民・学生がたたかいに立ち上がっていくのですが、一人ひとりの決起が周辺の友人や家族にも変化をもたらすさまが、重層的に描かれています。
 「主人公」である学生、ヨンホの家族が象徴的です。朝鮮戦争のとき母親を虐殺されてから、政治的なものとのかかわりを避けてきた母。大学では学生運動に共感しつつも、いまはサラリーマンとなった兄。工場で働きながら、劣悪な労働環境を変えようと苦闘する姉。農業と日雇い労働で家族を養ってきた、しかし頑固で保守的な父。ヨンホの逮捕を機に、それぞれが変わっていきます。
 ヨンホが囚われている拘置所へ単身で飛び込み(本当に飛び込みます)、追い返される母は「コンクリートの壁が何だってんだ!せいぜいもっと高くしておけ!いくらでも越えてやっからよ!」と叫びます。そして、ヨンホの独房の隣に収容されているベテランの活動家は「水は100℃になれば沸騰する」「今が99℃だ。そう信じなきゃ」「99℃であきらめてしまったらもったいないじゃないか」と語ります。私たちの心にも、深く突き刺さる言葉ではないでしょうか。
 いまある社会の状況は、連綿と続いてきた、無数の人々の無数のたたかいの積み重ねのなかで形成されています。その意味で私たちのたたかいは過去との連帯であり、そして未来との連帯です。韓国はいちはやく「沸点」を迎えようとしています。私たちも「99℃」のなかにあることを確信しながら、あきらめることなく、さらなる一歩を、ともに踏み出しましょう!
(山本圭介)

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核のキーワード図鑑


ツィートで始まる世界核戦争

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新刊パンフ『一からわかる共謀罪 ─話し合うことが罪になる』

 安倍政権は「共謀罪」を創設するための法改正案を今通常国会に提出しようとしています。共謀罪は犯罪行為があって初めて処罰できるという刑法の大原則に反するだけでなく、思想・表現の自由を著しく抑圧するものです。テロへの不安に便乗した国家権力の暴走を、決して許してはなりません。
 このたび「共謀罪」の問題点をわかりやすく解説したブックレットが発行されました。平和フォーラムも取り扱いをしています。

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