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ニュースペーパー2018年3月

2018年3月 1日

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 2月10日「憲法と『建国記念の日』を考える2.10集会」が東京・連合会館で開催され、約250名が参加。原武史・放送大学教授が「『明治150年』と天皇の代替わり」というテーマで講演されました。昭和天皇の即位に際して、大正天皇の存在を忘却させ「大帝」と呼ばれた明治天皇の再来としてたたえるキャンペーンが行われたことにふれて、「安倍政権は『明治150年』をあおり、11月3日の『文化の日』を『明治の日』に改称させることで、政権に対して批判的だった平成天皇のイメージを忘却させるのに利用するのではないか」と指摘、こうした天皇の代替わりと憲法改正を連動させるかもしれないと警告しました。
 また韓国の市民運動団体「アジアの平和と歴史教育連帯」のカン・ヘジョン国際協力部長(写真)が「日本の歴史認識と韓国」というテーマで報告し、日韓の信頼・友好関係を構築するためには、なによりもかつての植民地支配・侵略戦争に対して日本社会一般がしっかりと認識することが必要だと語りました。(写真撮影:鄭恩珠)

インタビュー・シリーズ:130
教育と仕事と家族のあり方をみなおすことから
東京大学大学院教授 本田由紀さんに聞く


ほんだ ゆきさん プロフィール
 1964年徳島市生まれ。東京大学大学院教育学研究科教授。教育社会学。教育と仕事と家族の相互関係やその変化をデータに基づいて研究。著書に『社会を結びなおす』、『国家がなぜ家族に干渉するのか』(編著)、『教育の職業的意義』、『軋む社会』、『「家庭教育」の隘路』、『若者と仕事』、『多元化する「能力」と日本社会』、『学校の「空気」』など。

─グローバル化の中で、従来からの長期雇用慣行が崩壊しています。この時代の働き方をどういうふうに考えたらいいでしょうか。
 バブル経済の崩壊前は、教育と仕事と家族との間に資源の循環システムが成立していて、政府はもっぱら雇用政策を通じて関与してきました。この循環を当てにしていたので、政府は教育や家族に関する財政支出を非常に節約することができました。これが成り立たなくなったのは1990年代以降です。きわめて緊密に結ばれていた循環は、1つの要素が変わるとバタバタと変わります。最初に変わったのは仕事の世界で、非正規雇用が増加しました。このことによって、教育と仕事と家族の間で資源がうまく回らない事象が現れてきました。教育を終えても安定的な仕事につけない若者や、仕事から家庭を維持するに十分な賃金を持ち帰れないような層、子どもの教育に対して費用や配慮を割けない層がはっきりと生まれ始めました。
 この壊れてしまった循環からぼろぼろとこぼれ落ちる人々が、何らの支援もないまま捨て置かれている事態が、いま起きています。しかし政府は高齢化で社会保障費がかさむことを口実に、これまでも不十分だったセーフティーネットを、よりいっそう縮小していこうとしているのです。

─今回も生活保護の水準が引き下げられました。貧困・格差に対してまともな施策が行われない状態が続くと、今後どういう社会になっていくのでしょうか。
 これがもっと進行していくと、孤立死、それも家族ぐるみで孤立して死んでいくような状態になります。例えば高齢の親とひきこもりの子の家庭や、子が高齢の親を介護している家庭で、どちらかが病気になって世話ができなくなれば共倒れします。しかし、誰かに助けを求めること自体を恥じて、あるいはバッシングされることを恐れて、生活保護などの支援を受けることなく、閉じこもって亡くなっていくようなことが最近はよく報道されています。
 一方、他者に対する増悪や軽蔑が膨らんできていて、抹殺する行動にまで及ぶような事件まで発生しています。全体の富が増えない中で分断が進み、それぞれに抱えている苦しさのかたちが自分とは違うことを理解できず、他の人が何かいい目を見ているように認識するわけです。有利な立場からの苦しい人たちに対する増悪の方が目立って見えることが最近多くなっています。有利な立場の人のほうが発言力もあって、色々な言葉を吐き出せる場も持っているからです。苦しい人たちは、こんなに自分がつらいのは自分のせいだというふうに、苦しみを抱え込んで自己否定してしまい、自分を押し殺していく傾向があります。
 そして今、人手や資金の不足によって社会のいろんな機能が維持できなくなりつつあります。地域によっては橋や道路といったインフラとして維持されることが当然だったものにすら手が回らなくなり、ライフラインがぼろぼろ砕けていくようなことが起きています。

─安倍首相は「再チャレンジ」を掲げてはいますが、再チャレンジするためのシステムがきちんと存在しないのではないですか。
 企業が労働者を抱え込んで長期雇用し、職務などが限定されないメンバーシップ型雇用こそが、日本の強みだという発想を持っている経営者がすごく多いのです。今、政府は「人づくり革命」だと言っていますが、まずこうした労働市場の構造に手をつけていないという点で、いくらリカレント教育(生涯を通じて労働と教育を交互に行なうシステム)を推進しても、例えば社会人大学で学んでも、学んだ結果を企業が評価しない現状では無駄になります。企業側の体制に手をつけることを同時並行でやらないと、なんの意味ありません。

─社会のモデルがどんどん崩れる根本的な問題があるにもかかわらず、逆に、今の安倍政権は家庭や教育に手をつけるという方向を強めています。
 政府は、家庭教育支援法案であったり、親子断絶防止法案であったり、憲法24条であったり、家族をいじって自分たちが望むような理想の家族に変えていこうとしています。家族と教育という「女・子ども」の世界を掌握し、自分たちにとって都合の良い方向に変えることによって、社会全域を掌握しようとする姿勢をはっきり示しています。例えば、ケアの役割を相変わらず家族に担わせようとしています。政府の言う「子育てを家族で支え合える三世代同居・近居がしやすい環境づくり」は、高齢者と子どものケアを今までどおり「家族で担え」ということを意味しており、それはすなわち「女性が担え」ということです。そのうえ「女性活躍推進」だと言うのは、女性はさらに外でも働けという要求に他なりません。これは女性を、面倒なことは何でもやってくれるドラえもん扱いするのと同じです。

─女性の賃金水準は男性から大きく離されています。
 父・母・子という、ジェンダーと世代に応じた役割分担を前提とする社会構造から、いまなお抜け出ていません。正社員中心の企業別労働組合は、自分たちの長期雇用とわずかな賃上げを最大の目的にしていて、非正規の人たちを包摂しようとはしてきませんでした。また、男女間の平等も無きに等しいような状態が続いてきました。最近パート労働者の組織率がちょっと上がってきていますが、実態はただ囲い込んでいるだけということも多いです。たとえば日本のシングルマザーの多くは働いていますが、労働市場は男性優位の場であって、彼女たちはずっと差別され続けてきました。子育てもしなくてはいけないわけで、男性と同じようなフルの長時間労働や残業ができるわけがないとなると、そういう扱いになってしまうのです。

─子どもの貧困率も非常に高くなってきます。今回の憲 法改正で、教育・保育の無償化を憲法に書き込もうなどという話もありますが、どう考えますか。
 保育に関しても、あるいは教育に関しても、無償化することよりも、まずは機会の確保が先決の問題です。待機児童問題にまず取り組むべきだろうという声がいっぱい上がってきているのに、政府は方向性をなかなか変えようとしていません。待機児童がいるなかで無償化しても、あまり意味がありません。これまで応能負担で払ってきたのを払わなくて済むようにしても、単に収入が高い人の方が得をするような施策になるわけです。資源が限られているのであれば、政策を実施する順番や資源投入の優先順位が重要になるはずですが、与党は選挙対策として無償化を口に出してしまったので、実際求められるものとは順番が逆であるにもかかわらず、無償化を言い続けているのです。

─社会の分断や格差の問題にメスを入れるためにはどういう政策が必要でしょうか。
 壊れてしまった構造を結びなおすためには、これまで一方向的に循環していたシステムから、教育と仕事と家族の間でうまく分担し連携し合うような双方向の関係へと変えてゆくことが必要です。そのような関係を支えるためには「アクティベーション」と「セーフティーネット」という二つの「布団」を二重に敷いておくことが必要です。苦しい状態の人々を、まずセーフティーネットで受け止めて安心してもらい、その上でアクティベーション(活性化)によってもう一回元気を出してもらうという二重構造です。いま政府がやっている生活困窮者自立支援と生活保護というのは、布団を別々に並べて敷いているようなものなので、機能しません。
 加えて大事なのは、従来のメンバーシップ型よりも負担や要請が軽く、かつ安定性は保障されている「限定型」の働き方を増やすことです。限定型の働き方には「時間限定」や「地域限定」などがありますが、一番重要なのは職務の限定、つまりジョブ型の正社員です。限定された範囲で仕事をちゃんとやれば、無期雇用で生活を成り立たたせていけるようなジョブ型正社員制度と、そのジョブに対して有用な教育を拡充することが必要です。勤務時間も限定されると、男性も女性も、家族と仕事を両立しやすくなります。また、子どもが家族の間の資源格差によって人生を左右されずに育つことができるように、保育や教育の領域によって彼らの将来をちゃんと保障するようにしていくべきです。

─新しいモデルに転換していくにあたって、私たちが果たすべき役割は何でしょうか。
 「きちんと」力をつけて「きちんと」それが発揮できるジョブについて「きちんと」正当な報酬を得られるようにする。3つの「きちんと」の組み合わせをつくるうえで、労働組合はできることがたくさんあると思います。たとえば「これだけの教育訓練を受けて、仕事でこれだけの役割を果たしているのであれば、賃金はいくら増しにしろ」と企業に求めていくこともその1つです。スキルと報酬の間の標準を創り上げていくべきだと思います。それは組合に入っていない、とくに最近増加しているフリーランスにとってもすごく重要です。請負などのケースでどんどん買いたたかれないためにも、そういう正当な相場を自分たち自身で提示していくべきです。そして、長時間労働規制や「命を守ろう」のキャンペーンなどにも着手してもらいたいと思っています。労働組合には、労働者全体、社会全体からそういう役割が求められているのではないでしょうか。

インタビューを終えて
 安上がりな社会福祉政策は、女性を家事労働の担い手として、育児・子育て、介護などすべてを任せていくことだ。「すべての女性が輝く社会づくり」とは何なのだろうか?男性の終身雇用のあり方が崩れる中で、政治の何という無策!本田さんの怒りの声を聞いた。
(藤本泰成)

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2018年度予算案を斬る
くらしといのちを犠牲にして軍事費の突出は許されない
フォーラム平和・人権・環境 共同代表 藤本 泰成

低下する賃金、貧困な社会保障政策
 2018年度の防衛予算は5兆1911億円で、安倍政権になってから6年連続増加し、過去最高額となっています。防衛省は「格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、一層の効率化・合理化を徹底した」としていますが、何をどう勘案したかは見えてきません。
 2017年末の時点で「国の借金」の総額は、過去最大の1085兆7537億円となり、国民1人あたりにすると850万円を超えています。安倍政権は、「2017骨太方針」(2017年6月9日閣議決定)で、2020年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するとしています。国際公約とも言える方針ですが、2018年度予算案においても、一般会計歳出97.7兆円のうち33.7兆円は国債発行によって賄われ、政府方針が達成される見通しは立ちません。借金が単年度税収の10倍を大きく超える状況は正常とは言えません。
 一方で、格差と貧困が社会問題化しています。安倍政権は、アベノミクスの成果を様々に宣伝しますが、そのまま受け取ることはできません。例えば、2012年の民主党政権下と2016年を比較して、完全失業率の低下と有効求人倍率の伸びを主張していますが、雇用のほとんどが低賃金の非正規で、その比率は4割に達しています。実質賃金指数は、2012年の99.2(2010年を100)から2016年には95.3まで下がっています。一人親の相対的貧困率は54%で、OECD加盟国中最下位です。そのような中で、わずかな年金や低賃金で生活する「生活保護寸前層」とも呼ばれる実質貧困層が増大しています。政府は最も低い所得層(10%)の実態と比較・均衡させるとして、5年ごとに生活保護基準の見直しを行っています。低所得層の実態は平均年収116万円(2人以上の家庭は193万円)で、消費支出は10年間で1.3万円減少しています。生活保護基準が高いとする批判に対して、政府は2018年10月から全受給世帯の67%で最大5%引き下げ、3年をかけて予算総額を160億円減額するとしました。前回の引き下げでは、全国89の市区町村で生活保護基準の引き下げに合わせて、就学援助の基準が引き下げられ、生活保護を受けない低所得世帯に大きな影響が出ました。貧困世帯の増加が生活保護基準を引き下げ、その結果、貧困世帯への援助が引き下げられる負のスパイラルが生まれています。


普天間基地に駐機するオスプレイ
拡大する米国製武器購入、税金の使途を注視
 2018年度の防衛予算には、輸送機オスプレイの購入予算457億円(導入予定17機の内4機分)が計上されました。オスプレイは事故率が高く、安全性に問題があります。米軍の普天間基地配備で大きな反対があった沖縄では、2016年12月に墜落事故を起こしています。陸上自衛隊が購入する17機は、佐賀空港に配備の予定でしたが、地元漁協などの反対で困難な状況です。生活保護基準の引き下げ分160億円はオスプレイ2機分にもなりません。政府が、米国の言い値で買わざるを得ない有償軍事援助は、2008年度から2012年度までの民主党政権下では合計で3647億円、2013年度から2017年度までの安倍政権下では、4.5倍の1兆6244億円に達しています。しかも、中期防衛力整備計画にはない地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム(イージス・アショア)や、長距離巡航ミサイルの購入も昨年度中に決定しています。イージス・アショアは当初の800億円が1000億円超となり、使用するレーダーシステムは開発中で、今後の負担増は見通しがつきません。長距離巡航ミサイルは射程が900キロで専守防衛の枠を超えるものとして憲法9条にも反するものです。
 昨年11月に訪日したトランプ米大統領は「大切だと思うのは米国から大量の兵器を購入することだ。それは米国に雇用を生み出し、日本には安全をもたらす」と発言しています。安倍首相は「アジア太平洋地域の安全保障環境が厳しくなる中において、日本の防衛力を質的・量的に拡充していかなくてはならない」として、米国からのさらなる兵器購入を約束しています。
 安倍政権は、朝鮮民主主義人民共和国を脅威として喧伝し、大量の兵器購入を進めています。兵器購入の是非はもちろん、現下の社会情勢の中で税の使い方にも私たちは目を向けなくてはなりません。政府は日立製作所の海外における原発建設の債務保証まで国費を投入しようとしています。原発推進にも、税金としてどれだけの額が使われてきたのでしょうか。廃炉が確定した高速増殖炉もんじゅは、その維持費に毎月5500万円がつぎ込まれ、建設費は当初見積もりの倍の1兆円を超えています。その向こうで毎日の生活に汲々とする市民や、学ぼうとしてもその機会さえ与えられない子どもたちがどれだけいるのでしょうか。そのことに思いをはせない政治家は必要ありません。
(ふじもとやすなり)

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トランプ大統領の国家安全保障戦略
これが当り前であるとは恐ろしいことである
アメリカ・ピースアクション 事務局長 ジョン・レインウォーター

 少なくとも2人のトランプ大統領がいる。この真実がおそらく将来の米外交政策形成について理解させるだろう。1人は虚勢と本能に支配され、北朝鮮を「炎と怒り」のツイートで威嚇するトランプで、米メディアを独占している。もうひとりは、公式の場で重要な政策原稿を読み上げたり文章で発表するトランプである。この2人がしばしば重なり合い、スタイルの違いが具体的内容の同一性を覆い隠し、事態を複雑にしている。


ジョン・レインウォーターさん
「強さによる平和」を柱に脅威を膨張
 2017年12月の演説で明らかにされたトランプの国家安全保障戦略(NationalSecurityStrategy=NSS)は、2人のトランプがいかに交差するかを示す格好の例である。NSSはトランプの同盟者に「当り前」なものとして、歴代の大統領の戦略の「継続」であると売り込まれている。
 NSSの「当り前」の側面の例は、この文書の組み立て方である。新たなアメリカの安保戦略として次の「4本の柱」をあげている。(1)アメリカ人・国土・「アメリカ的生活様式」の保護、(2)アメリカの繁栄の促進(たとえば強い経済力をアメリカの安全保障の中心とみる)、(3)強さによって平和を維持する、(4)アメリカの影響力を拡大する。
 こうした柱とNSSの詳細は、トランプの排外主義「アメリカファースト」のレトリックを和らげ、中道的なトーンに近づけている。しかしNSSをじっくり見てみると、(3)がこの文書のもっとも悪質さの核心であることが明らかになる。「強さによる平和」は無数の脅威を詳細に述べ、紛争と軍事的強さを国際関係の基軸であると見なしている。この競争し互いに強めあう攻撃性が、2人のトランプをつないでいるのである。
 NSSの「強さによる平和」の章は、「歴史は権力に向かっての競争である」という記述から始まっている。これはトランプが敵わない相手であるオバマ前大統領が、しばしば引用する「歴史の道のりは長く、紆余曲折がある。しかしそれは正義に向かって弧を描いている」という、キング牧師の有名な思想へのシニカルな当てこすりである。
 NSSは「アメリカの自由な政治経済システムが自動的に勝つことを確実にするような、歴史の弧は存在しない」とあてつけがましく警告している。ところでNSSの目を通してみるとアメリカは、その富と力、遠方に拡散している軍事基地、2位以下の8カ国を合わせた以上の軍隊により、永続的、永久的に存在する脅威となってしまう。何と驚くべき、脅威を膨らましてみせる芸当ではないか!

ロシア、中国、イラン、北朝鮮を敵対者と名指し
 NSSの「強さによる平和」を柱にする文脈において、地球のすべてで深刻な脅威が存在する。NSSは、新たな軍拡競争を含むロシアと中国との大国間競争の新時代を吹聴する。繰り返しロシアを批判し、ヨーロッパとともに「一体となってロシアの転覆、破壊活動と拡張主義に反撃する」と言明している。
 NSSが描く脅威は、中国とロシアに留まらない。大国間対立に主役を奪い返されたが、ジハード主義者はいまだ軍事力によって解決すべき脅威とみなされている。同時にイランと北朝鮮が、反撃を必要とする危険な敵対者として名指しされている。今年、最新の一般教書でイランとともに、特に北朝鮮の脅威に焦点が当てられている。トランプは北朝鮮の抑圧体制を取り上げることで、戦争の正当化をはかり始めたようである。NSSでも同じやり方がされている。NSSでの多様な脅威が「抑圧的な体制を支持するものと自由社会を支持するものの対決」という枠組みにはめ込まれている。
 時に過去を振り返ることで、歴史が明快に見えることがある。現在は過去をどのように見るべきか知らせてくれる。実際、トランプの演説が「当り前」になるのは恐ろしいことである。トランプはレーガン(元大統領)から「強さによる平和」というスローガンを借りてきた。イランと北朝鮮を「ならず者国家」とするのは、ブッシュ(元大統領)の「悪の枢軸」にさかのぼる。今は忘れられたが、ブッシュとレーガンは、軍事冒険主義とともに、物笑いの種であると見なされていた。トランプが当選した理由は、こうしたブッシュのマンガ的模倣である攻撃的な虚勢に依ってである。そのブッシュはレーガンのマンガ化された姿であった。カール・マルクスの格言を借りれば「歴史は繰り返す、最初は悲劇として、二番目は喜劇として、その次はさらなる茶番にすぎない」。
 これは災難へ導く歴史的レシピではないか。ツイッターでのトランプの不安定な本能と、公式のトランプの「当り前」の軍事主義の結合がNSSに体現されている。アクティビストと冷静な政治家はともに、不安定で危険な大統領執務室にいる行動予測不可能な人物によって、アメリカが過去の過ちを繰り返すのを防がなければならない。
(翻訳:菊地敬嗣)

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TPP11が最終決着 来年発効か
拙速な交渉によって国内農業へ大きな打撃

 昨年1月にアメリカが環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱したことを受けて、アメリカ抜きの11ヵ国による交渉(TPP11)が続けられてきましたが、今年1月23日に東京で開かれた首席交渉官会合で最終的な決着をしたと発表されました。従来の合意内容のうち、新たな医薬品のデータ保護期間や、本や映画等の著作権保護期間など、アメリカの多国籍企業の利益が著しく、他国にとっては負担となっていた22項目については、アメリカがTPPに復帰するまで凍結されることになりました。新たな協定の署名式は3月8日にチリで行われる予定で、署名後、各国は発効に向けた国内手続きに入ります。日本は他国に率先して、今の通常国会に協定承認案と関連法案を提出する方針です。TPP11協定は6ヶ国が国内手続きを終えれば発効することから、早ければ来年にも発効する見通しとなってきました。


市民など80人以上が参加した院内集会
(2月7日・国会議員会館内)
日本だけTPP協定からさらに後退
 こうした状況に対し、幅広い団体で作る「TPPプラスを許さない!全国共同行動」(平和フォーラム等が共同事務局)は、昨年7月以来、「TPPプラス交渉をただす!院内集会」を開催し、交渉内容を検討するとともに、外務省、農水省、内閣官房の担当者を呼んで説明を受け、問題点をただしてきました。「TPPプラス交渉」とは、TPP11をはじめ、日本とヨーロッパ連合との経済連携協定(日欧EPA)、東南アジア諸国連合(ASEAN)10ヵ国と日中韓印豪NZの6カ国による広域的な東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、そして、日本とアメリカとの二国間の自由貿易協定(FTA)交渉につながる「日米経済対話」など、TPPを規範とする重要な通商協定の交渉のことです。
 2月7日に行われた同集会では、農業分野に関わる新協定の問題点や、政府が出した農業への影響について追求が行われました。
 今回のTPP11の合意は「日本の農業にTPP12を上回る影響を与えるのではないか」と指摘されています。前述のように、多くの国は20余の"凍結項目"を獲得したのに対して、日本は唯一、TPP協定からさらに後退させられました。TPP12の協定では、「牛乳・乳製品」に関して、低関税で輸入できる割当てが生乳換算で7万トンとされましたが、国別の枠はありません。この輸入枠をニュージーランドなどの国が占有する可能性が高いのです。そうなると、アメリカがTPPに復帰した時にはさらに追加で輸入枠を求められることになります。復帰しないで日米二国間交渉になっても同じことです。
 これに対して政府は、「そのような場合には協定の改正を求めて、見直しを行うことができる」と説明しています。しかし、各国が協議には応じても、実際に見直しを認める保証はありません。反対に輸入拡大を求める提案ができる余地さえ与えているのです。
 今回の決着は、農産物市場開放の"米国枠"というべきものをそのまま残し、さらに米国に対しては、復帰に際して追加要求のフリーハンドを与えたものと言わざるを得ません。これは、日本が交渉をまとめるために、拙速に行ったことであり、大きな禍根を残しました。

ごまかしの農業生産への 「影響試算」
 さらに、農業生産への「影響試算」も大きな問題となりました。政府は、TPP11で農林水産物の生産額が900~1,500億円、同様に日欧EPAで600~1,100億円減少するという「影響試算」を出しました。合わせると国内総産出額の1.63~2.83%に相当します。この試算の一方で、「国内生産の体質強化対策や経営所得安定対策の適切な実施により生産や所得が確保される」としています。理屈では、生産額が減少しても生産コストもそれだけ下がることから、輸入は増えず、農家所得も変わらないということなのです。
 しかし、生産額の減少に見合う補てんが行われるわけではなく、価格競争の中で変化がないと考えることは無理があります。それは、1993年の全世界的な通商交渉である「ガット・ウルグアイラウンド」の決着の時に「国内生産に影響を与えないよう万全の対策を取る」としながら、その後、急激に国内農業生産と所得が落ち込んだことをみても明白です。
 また、試算では食料自給率への影響についても、カロリーベース(現在38%)、生産額ベース(同68%)とも変化がないとしていますが、これも机上の空論と言うべきです。さらに、政府が公約している2025年までの食料自給率45%の政策目標とも整合しないものです。オーストラリア産の米や麦、牛肉をはじめとして、中南米のかんきつ類、マレーシア等のパインアップルや合板類、南米からの水産物など、各国はアメリカの代わりに日本への輸出拡大を狙っています。今後、国会でのTPP11協定の審議に注目しなければなりません。
(市村忠文)

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長崎・被爆体験者に最高裁不当判決
国の姿勢を追認し「原爆」に向き合わない司法
被爆体験者訴訟を支える会 事務局 平野 伸人

 2017年12月18日、最高裁判所第1法廷は、長崎・被爆体験者訴訟の原告388人のうち1人を除いて上告を退ける判決を下しました。「原爆の放射線による急性症状があったと推認することはできない」とした福岡高裁の判断を支持したことになります。


不合理な被爆地域を是正し被爆者手帳交付を
 長崎の被爆地域は「旧長崎市」を基本に定められました。そのため爆心地から遠点12.4㎞、近点8㎞のいびつな地形なのです。そのため、これ以外の地域の人たちは被爆地の是正を求め続けてきました。その結果、2002年度に「健康診断特例地域」にいる「被爆体験者」として認定されましたが、被爆者援護法に基づく「被爆者」とは認められませんでした。そのため、「被爆体験者」は、被爆者援護法に基づく被爆者として認めるよう求める裁判を2007年11月に長崎地裁に提訴したのです。
 この裁判は、被爆体験者に初期症状があったなどの健康被害を争うものではありません。不合理な被爆地域を是正し、被爆体験者に被爆者健康手帳を交付し、被爆者援護法に基づいた援護をおこなうよう求めた裁判なのです。しかし、1審の長崎地裁は多くの期待と予想を裏切った不当な判決を行いました。
 原告団は直ちに控訴。弁護団も「米マンハッタン管区原爆調査団」による放射線量調査の新たな証拠などを提示しながら、闘いを継続しました。しかし、福岡高裁では突然、裁判長が交代し予定された判決が突如2ヵ月も延期されるという異常な事態が発生しました。そして、福岡高裁判決は不吉な予感通り、放射線被害を過少評価する的はずれで不当な判決を下しました。原告団は直ちに上告し、最高裁でのたたかいを続けたのです。
 この間、福島第1原発事故があり、この裁判の行方が大きな関心事になっていました。〔放射線被害の過少評価〕に真っ向から対峙するこの「被爆体験者訴訟」は、原発政策を推し進めようとする現政権の意図に抗するものでもありました。しかし、後発の第二陣では、長崎地裁で一部勝訴という判決を勝ち取る追い風もありました。この間、原告団は70人余りが死亡し、高齢化と体調不調に苦しみながら闘い続けました。
 最高裁で上告が受理された原告1人について、11月30日に口頭弁論が開かれたことから、最高裁判決についての期待がふくらみました。しかし、残りの原告に対しては口頭弁論が開かれずに敗訴が確定し、12月18日に不当な判決を下したのです。
 最高裁も「原爆」に向き合うことはありませんでした。当時の行政区域に沿って線引きされた被爆地域が本当に妥当かどうかという根本的な問いに答えることなく、「科学的知見がない限り被爆地域の拡大を認めない」という国の姿勢を追認したことに憤りを禁じ得ません。原告側は、米マンハッタン調査団が調査したデータに基づく原告1人ひとりの被ばく線量を推定し「全ての原告が原爆の放射線で健康被害があったという科学的根拠がある」と主張しました。しかし、最高裁は、これらの主張には全く言及せず「爆心から5㎞以遠の健康被害はない」とした福岡高裁判決を支持したのです。(写真は最高裁に向う原告団・12月18日)

「被爆体験者は被爆者だ」─新たな訴訟を提起
 今回の最高裁判決に原告らは落胆しています。当事者は高齢化し、平均年齢は80歳を超え、病苦に苦しみ、毎日の病院通いに疲れ切った人たちばかりです。だからこそ、救済の立場に立った根本的な解決が求められています。この間、司法の判断ばかりではなく、政治的な解決を求めて、幾度となく国会要請行動や厚生労働省交渉をおこないました。また、長崎県や長崎市に対しても数え切れないくらいの交渉を重ねてきました。こうした不当な判決に強く抗議します。
 私達は「もうこれ以上の闘いを続けるのは無理だ」とも考えました。しかし、どうしても納得がいかない原告は、新たな訴訟を起こすことになりました。2018年2月13日、新たに原告団が作られ、訴訟の準備が進められています。「被爆体験者は被爆者だ」という当然の主張が通るまで闘いは続きます。
 この間、原水爆禁止日本国民会議はこの裁判を支えてきました。川野浩一・原水禁議長が「被爆体験者訴訟を支える会」の代表として、原告に寄り添いながら毎回の口頭弁論に欠かさず出席してきました。川野議長は昨年夏に面会した安倍晋三首相に対し「あなたはどこの国の首相ですか」と痛烈な一言を投げかけました。「唯一の戦争被爆国」の首相ならば、原爆被害に苦しむ人々を放置することは許されないはずです。
 被爆から73年が経過し、高齢化する被爆体験者の援護は「人類は2度と広島、長崎の惨禍を繰り返してはならない」という証ではないでしょうか。この闘いは「核と人類は共存できない」という理念の具現化の闘いでもあります。
(ひらののぶと)

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米「核態勢の見直し」と日本の核政策

 2月2日にトランプ政権が発表した「核態勢の見直し(NPR)」は、サイバー攻撃も含む核兵器以外の攻撃に対しても核で報復する可能性を強調し、核を使いやすくするために威力の小さな核弾頭の開発計画を打ち出すなど、核のない世界を目指すとしたオバマ政権が発表した2010年4月のものと比べ核廃絶の目標から大幅に後退するものとして注目されています。その反面、オバマ政権下でも核兵器の近代化・改造が続けられていたのも事実です。また、米国及び同盟国に対する敵の核攻撃を抑止すること――そして、必要とあれば報復すること――を米国の核兵器の唯一の目的(役割)とすることを目指すとしながらも、結局「唯一の役割」宣言を出せずに終わりました。以下、両政権の核政策の違いと連続性、そして、両者と日本の核政策の関係について見てみましょう。

世界の核兵器と米国の核兵器概観
 米国科学者連合(FAS)のハンス・クリステンセンと自然資源防護協議会(NRDC)のスタン・ノリスの二人による下の表は、2017年末現在、世界には解体待ちの核弾頭も含め約1万5000発もの核兵器があり、その90%以上を米ロ両国のものが占めていることを示しています。
 下の表も二人のものです。2017年初頭現在、米国は戦略核弾頭を3822発保有しています。大陸間弾道弾(ICBM)、戦略原子力潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機用核爆弾及び空中発射巡航ミサイル(ALCM)の核弾頭を合わせた数字です。非戦略(戦術)核約500発を足した合計数は4480発です。これに解体待ち退役核2300発を合わせると総数6780発。実際に運用配備されている戦略核の数はICBM搭載が400発、SLBM搭載が約890発、戦略爆撃機基地配備のものが約300発です。攻撃原子力潜水艦には核兵器は搭載されていません。非戦略核爆弾のうち実際に配備されているのは欧州5カ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコ)の6基地にある約150発です。配備核合計は1740発となります。

低威力核爆弾「ギャップ」を埋める新たな開発計画
 今回のNPRは、ロシアが多様な非戦略核を多数有しているうえ、1987年に調印した「中距離核戦力(INF)」全廃条約に違反して陸上発射巡航ミサイルの実験もしていることを強調し、低レベルでの核戦争で優位に立てると考えて攻撃してくるかもれないと述べています。そして「柔軟な核兵器のオプション(低威力のオプションも含む)の拡大は、地域的侵攻に対する信頼性のある抑止を維持するために重要だ」と言います。大威力の核兵器だと使えないだろうと高をくくられてしまうというわけです。
 この「ギャップ」を埋めるために計画されているのが、1)戦略原潜発射ミサイル(SLBM)用の低威力弾頭と2)「攻撃原潜発射巡航ミサイル(SLCM)」の開発です。前者は短期的目標として掲げられていて、現在SLBMに搭載されているW76-1の一部を改造する計画です。敵は海から飛んでくるミサイルが低威力か全面核戦争用のものか区別できず、間違った反応を招く危険が指摘されています。後者は、長期的に新型を開発する計画で、この開発計画により「ロシアがその非戦略核兵器削減について真剣に交渉することになる」かもしれないと言います。
 米国は以前、SLCMを持っていました。核付きトマホーク(TLAM/N)です。ブッシュ大統領(父)が1991年に水上艦及び攻撃原潜の核兵器を撤去するとの一方的措置を実施した際に陸に上げ、その後2010年にオバマ大統領が不要として廃棄を確定したものです。12年に解体が終了しました。クリステンセンは、「SLCMを導入すればロシアがINFを順守するようになるというのは間違い。米国にTLAM/Nがあるときに違反は始まっていた」と指摘しています。そして、「ロシアの非戦略核の規模と構成についての決定をもたらしているのは、米国の通常兵力の優位性だろう」と言います。さらに、ヨーロッパとアジアにおいて「必要な非戦略核地域プレゼンスを提供する」という新しいSLCMの追求はロシアによる非戦略核への依存を逆に強化し、場合によっては中国がこのような能力に対する関心を持つことにつながるかもしれないと警告しています。
 実は現在も米国には低威力の核兵器があります。表2にあるように、非戦略自由落下核爆弾B61-3,-4,-10は威力を調節できるようになっていて、0.3~170キロトンの幅を持ちます。広島・長崎は20キロトン程度です。また、B52戦略爆撃機は5~150キロトンに調節可能の「空中発射巡航ミサイル(ACLM)」を搭載できます。

オバマ政権下の核開発
 オバマ政権の下でも、二つの核兵器の開発が進行中でした。一つは、B61-4に誘導装置を付けて精度を上げるとともに、「地中貫通」能力も付け加えたB61-12です。これも0.3~50キロトンまで調節可能です(2020年3月に生産開始の予定だったが、2年遅れるとの報告がある)。新たな能力の付加はオバマ大統領(当時)の「新しい核兵器を開発しない」との約束に反すると批判されていました。現在配備されている戦略自由落下核爆弾B6111(地中貫通型)はB-2戦略爆撃機にのみ搭載可能ですが、B61-12は核搭載可能なすべての米軍機及びNATO機に搭載できるようになります。(注:地中貫通型と言っても数メートルだけ潜り込むことにより小さな威力でも衝撃で地下施設を破壊することに狙いがある。都市部で1キロトンの貫通型が爆発すれば数万人が死亡との研究がある。)
 もう一つは、敵地から遠く離れ、撃墜されない場所から狙える空中発射「長距離巡航ミサイル(LRSO)」で、2030年までの配備を目指す計画です。ペリー元国防長官は2015年10月、オバマ大統領に交換書簡を送り、ステルス爆撃機B-2Aがあり、新型ステルス機計画もある現状ではLRSO計画は無駄遣いだし、通常兵器型と核搭載型の両方を保有する計画であるため敵の側に混乱を招き危険だと述べています。

オバマ政権核態勢の見直しと日本
 オバマ政権のNPRの際、その参考に供する報告書を作成するために議会が設置した「米国戦略態勢議会委員会」の会合(2009年2月25日)で秋葉剛男公使(当時)らが日本の見解を説明しました。説明に使われた3ページの文書を米国の「憂慮する科学者同盟」が最近入手しました。そこには次のようにあります。「米国の抑止能力は、意図したターゲットだけを区別・選別する能力を持つべきである......付随的ダメージを最小限にとどめるこのような特性は、人道主義的観点からだけでなく、米国の抑止力は効果的で信頼性のあるものものでなければならないという理由からも重要である。米国による攻撃が常に大量の民間人の死傷をともなうとなると、潜在的敵国は、このような攻撃は信頼性(信ぴょう性)がないと考えるかもしれない。......TLAM/Nの詳細については知る立場にはないが、TLAM/Nはオプションの柔軟性を提供すると言われている......米国がTLAM/Nを撤廃すると決定するのなら、この能力の損失がどのように埋め合わされるのかについて十分に前もって我々と協議して欲しい」。文書はまた、サイバー攻撃の抑止も核の任務とする柔軟性を要望しています。また、会議出席者の一人による記録には、日本大使館の「金井正彰氏は、低威力・地中貫通型核兵器は、拡大核抑止の信頼性を強化するだろうと述べた」とあります。
 シュレシンジャー「米国戦略態勢議会委員会」副委員長(元国防長官)は最終報告に関する議会公聴会(2009年5月6日)で、「日本は、米国の核の傘の下にある30ほどの国の中で、自らの核戦力を生み出す可能性の最も高い国であり、現在、日本との緊密な協議が絶対欠かせない」と主張しました。報告書は「我々の作業の中で、アジアの幾つかの米国の同盟国の一部は巡航核ミサイルの退役について非常に憂慮するだろうということが明らかになった」と述べています。背景には、日本に対する核以外の攻撃に対しても、核で報復するオプションを米国が維持することを望むとしてきた日本の政策があります。当時、正確な内容の分からないまま日本側の発言がTLAM/Nの維持のために使われている状況が日本でも報道されました。これを受けて岡田克也外相(当時)が、同年12月24日、米国務・国防両長官に書簡を送り、「我が国外交当局者が......TLAM/Nの退役に反対」したようなことがあったとすれば、それは核軍縮を目指す私の考えとは明らかに異なる」と伝えたこともあり、前述のようにTLAM/Nの廃棄が決まりました。
 オバマ大統領がこの時と退陣直前に先制不使用政策採用を検討しながら、不採用に終わった重要な理由の一つが日本の反対でした。後者の場合、ケリー国務長官が「米国の核の傘のいかなる縮小も日本を不安にさせ、独自核武装に向かわせるかもしれないと主張した」ことが不採用決定の裏にあったとニューヨーク・タイムズ紙(2016年9月5日)が伝えています。ちなみに、秋葉氏は今年1月、外務省事務次官に就任しました。
 今回のNPRについて2010年とは状況が変わっていると擁護する向きがありますが、2017年1月11日、オバマ政権のバイデン副大統領が「我が国の核兵器以外の能力、それに今日の脅威の性格を考えれば、米国による核兵器の先制使用が必要となる......信憑性のあるシナリオを想像するのは難しい」として、「唯一の役割」宣言ができるとの確信を表明していることを想起すべきでしょう。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》もう待ったなし!
空襲被害者救済法案の成立を
全国空襲被害者連絡協議会事務局長 澤田 猛


公開の場で最後に発言する城森満さん
(2017年12月6日)
「法案成立を見届けて...」の言葉残し
 東京大空襲訴訟(2013年5月上告棄却)で原告団副団長を務め、全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)名誉顧問の城森満さんが昨年12月16日、自宅でひっそりと息を引き取った。享年85歳。戦災孤児として戦後を生き、晩年は大空襲訴訟の裁判や立法化による空襲被害者救済に奔走した日々だった。その城森さんが公開の場で最後に発言したのは昨年12月6日に衆議院議員会館で行われた院内集会「国会議員と被害者の集い」。急逝はその10日後のことだった。
 城森さんは大空襲で両親と末弟を失った。自身は学童疎開先にいて難を逃れたが、待っていたのは引き取り先の親族から受けた「いじめ」だった。夜間高校に通学、苦学し大学を卒業、社会人となったが、大空襲訴訟の提訴(2007年3月)を知り、原告団に加わった。
 「私はもう85歳。法案提出をこれ以上、引き延ばされると、あの世に行ってしまう。議員の先生方に法案を早く成立させていただき、それを見届けてあの世に行きたい」。虫の知らせを予感させるような発言だった。城森さんの死は高齢化した被害者からすれば、法案成立に向けた取り組みがもう待ったなしの状況を、置き去りにされてきた「戦後補償」である空襲被害者救済問題の進まぬ立法化へのいらだちを、象徴的に示す死だったように思えてならない。

1973年から14回も法案を提出
 ところで、全国空襲連という市民団体の存在をご存じだろうか。全国空襲連とは大空襲訴訟が東京地裁で請求棄却の判決を受けた後の2010年8月、原告団を中心に結成された全国組織だ。大阪空襲訴訟(2014年9月上告棄却)、沖縄戦国賠訴訟(2017年11月、福岡高裁那覇支部で原告の請求を棄却する控訴審判決。上告手続き中)、南洋戦・フィリピン戦国賠訴訟(2018年1月、那覇地裁で原告の請求を棄却する判決。福岡高裁那覇支部に控訴)の原告らが、法廷闘争とはまた別の形で被害者救済を旗印に立法化に向け取り組んできた。
 東京大空襲や大阪空襲訴訟などの原告の訴えは軍人・軍属と異なり、「国との雇用関係がなかった」ことなどを理由に棄却されてきた。しかし、法廷では軍人・軍属にこれまで約60兆円の補償措置が講じられながら、民間の空襲被害者には1円の補償も行ってこなかった国に対し、謝罪と補償を求めるものだった。
 全国空襲連の結成に先立ち、その前史に触れておかなければならない。戦時中の名古屋空襲で傷害者となり、民間の戦災者に国家補償を行うことを狙いとした「戦時災害援護法」の制定に力を尽くした杉山千佐子さんが会長を務めた全国戦災傷害者連絡会(全傷連。その後解散)の存在だ。40年余にわたり援護法制定運動に取り組み、この間の1973年以来の17年間に計14回、野党議員から法案が提出されながら、すべて廃案に終わった。全国空襲連は全傷連の取り組んだ運動を継承。現在、全国空襲連の立法化に向けた取り組みが超党派の空襲議員連盟(空襲議連)の手で法案として提出されれば、15回目の法案となる。
 被害者は高齢化し、命の持ち時間はもう長くはない。全国空襲連の名誉顧問だった杉山さんは法案の成立を見ることなく、一昨年9月、101歳でこの世を去った。

後退した中身の骨子素案と私たちの闘い
 昨年4月に行われた空襲議連の総会で了承された「空襲等民間戦災障害者に対する特別給付金の支給等に関する法律」(仮称)は、通常国会に法案として提出されず、今年の通常国会に持ち越された。骨子素案では、戦災障害者に対し特別給付金として一人50万円を支給するとともに、空襲等による被害の実態調査と空襲等の死者に対し、国による追悼施設の設置が定められている。
 しかし、その内容は民主党政権下の2012年6月に発表された援護法案の要綱素案に比べ、大幅に後退した。素案による援護対象は、(1)障害者への給付金、(2)空襲死者への弔意金、(3)戦災孤児への特別給付金などが定められていたが、政権交代でこの素案は立ち消えとなった。
 大阪空襲訴訟原告団の元代表世話人で全国空襲連の安野輝子運営委員長(78歳)は「骨子素案で示された50万円の給付金では障害者の義足代にもならない。私たちが訴えてきた被害者の救済には程遠い。しかし、この法案成立を今後の私たちの闘いのステップとしたい」と話している。
 空襲弁護団の試算によると、素案に基づく支給対象者は5000人から1万人。予算総額は約50億円。わずかな額の要求ですら、一部の議員にしか被害者の訴えが共有されていないのが現状だ。全国空襲連にとってこれまでにない試練の年となる。皆様のご支援、ご協力をお願いしたい。
(さわだたけし)

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加盟団体の活動から(第3回)
予防原則に立脚した消費者運動
特定非営利活動法人 日本消費者連盟 事務局長 纐纈 美千世

 1969年の創立からまもなく50年を迎える消費者団体です。企業や国家の利益より人のいのちや健康を優先する社会にしようと活動しています。モットーは「すこやかないのちを未来につなぐ」です。
 創立当初から、大企業や政府に「矢文(公開質問状)」を送って不正や製品の欠陥などを明らかにする、いわゆる「告発型消費者運動」を行ってきました。たとえば、1970年には石油業界がレギュラーガソリンより値段の高いハイオクタンガソリンを売り込むために広めた嘘を矢文で暴きました。
 最も力を入れているのが食の安全問題です。食べものは生きていくために欠かせないものですし、食べた人だけでなく次世代以降にも影響するものだからです。そのため、私たちは「予防原則」の立場で、食品添加物や農薬、遺伝子組み換え食品に反対しています。
 昨年から今年にかけては、遺伝子組み換え食品表示制度の改善を求めて活動しています。消費者庁前でスタンディングを行ったり、消費者庁長官等に「すべての遺伝子組み換え食品に表示を求めます!」と書いたはがきを送るキャンペーンを展開。今年2月には「消費者のための遺伝子組み換え表示検討会」を開催しました。引き続き消費者の権利(知る権利、選ぶ権利など)を保障する表示の拡大を求めていきます。
 食以外では、「香害(こうがい)110番」を昨年夏、期間限定で開設しました(上写真)。香害とは、柔軟剤や芳香剤などの強い香りを伴う製品による健康被害のことです。開設直後から取材が殺到し、新聞や雑誌、ネット上で話題になりました。香害被害者の中には外出できなくなったり、職を失うなど深刻なケースもあります。実態を明らかにするため、3月にブックレット『香害110番』を発行します。香害の社会問題化と併せて、日消連が70年代から取り組む合成洗剤追放運動につなげていくことが今後の課題です。
 食、環境、農業、エネルギーなど消費者問題は多岐にわたります。新たな商品、新たな技術も次々と暮らしに入り込んできます。そんな中で私たちが重視するのは予防原則です。すこやかないのちを未来につなぐため、炭鉱のカナリヤ的な存在でありたいと活動しています。
(こうけつみちよ)

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〔本の紹介〕
故郷忘じがたく候
司馬遼太郎/文春文庫

 司馬遼太郎は好きではない。しかし『故郷忘じがたく候』は日朝文化交流史と読むこともでき興味深かった。
 豊臣秀吉による朝鮮出兵である慶長の役(1597~98年)の際、秀吉の死によって、占領していた全羅北道南なもん原城を撤兵することになった島津勢は、場内にいた朴、金、鄭、李など17氏70人ほどの男女を捕まえ、自国に連れ帰った。拉致された男女の多くは陶磁の職人たちであった。彼らは鹿児島の東シナ海を臨む苗なえしろ代川に集落を構え、生計を立てるために陶磁器を焼き始めた。
 当時、日本の貴族、武将、富商のあいだで茶道が隆盛していた。茶器はとくに渡来物が珍重され、利休などの茶さどう頭の折り紙がつくことによって千金の価を呼んだ。ときに茶器は武功の恩賞としてあたえられ、一国に相当する茶器まであらわれた。島津勢はそういう時代の流行のなかで朝鮮に討ち入っている。宝の山に入ったような思いであったであろうと司馬は書く。
 島津氏は、苗代川に居を構えた韓人たちを士分として遇し、保護してきた。薩摩に「帰化」させられた韓人たちは、代々、作陶を生業とし、彼ら独自の文化を守り、沈寿官氏をはじめ、朴、金、鄭、李氏などの韓国風の姓名を世襲してきた。明治以降、多少の例外もでき、朴家は東郷と言う日本風の姓名に変えた。先の大戦の開戦時と終戦時の外務大臣の東郷茂徳は、この朴家出身であり、「東郷先輩に続け」と村の子どもたちの鑑となっていたという。
 2017年10月、江戸時代の日本と当時の朝鮮王朝との間で200年以上続いた「朝鮮通信使」に関する文献、絵図が世界記憶遺産に登録された。この朝鮮通信使は日朝友好の歴史として語られるが、その詳細を知る人は少ない。中尾宏・京都造形芸術大客員教授の解説に依れば、朝鮮通信使は一部で誤解されているような日本への「朝貢使」ではなく、1607年の最初の通信使の大きな目的は、秀吉の朝鮮出兵によって拉致されて来た朝鮮人(数十万人)を連れ帰るという「戦後処理」であったという。
 徳川家康は、秀吉の朝鮮半島における「蛮行」を認め、「朝鮮通信使」を慣行化することによって朝鮮との国交回復を図った。近・現代史における強制連行と同じ問題が400年前に起きていた。
(内田雅敏)

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核のキーワード図鑑


嘘つきの原発はゼロにするしかない

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戦争させない 東アジアに非核・平和を! 3・6集会

日時:3月6日(火)18:30~ 場所:千代田区一ツ橋「日本教育会館」3階一ツ橋ホール(地下鉄「神保町」下車)
内容:報告1「東アジアの平和への課題」和田春樹(東京大学名誉教授)
   報告2「米朝対抗と日本の軍備増強」前田哲男(軍事評論家)
   報告3「沖縄:辺野古と先島の軍事化と」高里鈴代(基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表)
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

2018原発のない福島を!県民大集会

日時:3月17日(土)12:30~
場所:福島県楢葉町・天神岬スポーツ公園
主催:「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会

さようなら原発全国集会

日時:3月21日(水・休)11:30~
場所:渋谷区「代々木公園B地区」(地下鉄「代々木公園」「明治神宮前」、JR「原宿」、小田急「代々木八幡」下車)
内容:発言とデモ行進
主催:「さようなら原発」一千万署名市民の会
協力:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

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