2018年、ニュースペーパー

2018年04月01日

ニュースペーパー2018年4月






 夏を思わせる日差しが照りつける城岳公園(那覇市)に、燃えたぎる怒りを突き上げるこぶしと歌声が響き渡った。3月14日に那覇地裁が山城博治沖縄平和運動センター議長らに下した不当判決は、運動の圧殺をねらった国家の暴力を認めたものにすぎない。再び沖縄を戦場にすることは許されない、辺野古に米軍の新基地建設はいらないとする県民の民意に、あらゆる手段でたちはだかってきた国家の暴力に対する、市民らのささやかな抵抗が罪とされたのだ。
 山城議長が声をあげた。「問われるべきは誰だ!」問われるべきは、民意を押し殺そうとする国家のありようそのものではないか。山城議長は力強く締めくくった。「県民は負けない!」(上写真3月14日・那覇市)
 権力に抵抗をする人びとを黙らせようとする安倍政権の強行政治を私たちは断じて許してはならない。
 この沖縄で挙げたこぶしと声は、全国を貫き、国会前で安倍政権に抗議する人びととも合流していった。森友学園問題にかかわる決裁文書の改ざん、このありえない国家の犯罪に人びとの怒りは渦巻いている。(下写真3月15日・国会前行動)
 私たちは、決して黙りはしない。あきらめはしない。

インタビュー・シリーズ:131
貧困の中の子ども ―希望って何ですか―
下野新聞社 真岡総局長 山崎一洋さんに聞く

やまざき かずひろさん プロフィール
 1969年栃木県生まれ。92年下野新聞社入社。社会部デスク時の2013年から3人の記者とともに「子どもの貧困」について取材し、14年1月から6月にかけ下野新聞紙上で60回にわたって連載。15年3月、ポプラ新書より「貧困の中の子ども希望って何ですか」を発行。17年4月より真岡総局長。

─下野新聞で「希望って何ですか?貧困の中の子ども」の連載をされましたが、そのきっかけはなんですか。
 毎年、一つくらい、社会問題を掘り下げてテーマを設けて連載記事を企画しているんですが、2014年の夏ごろ児童養護施設の子どもたちを取材していて、「子どもの貧困」にぶつかりました。また、議員立法で「子どもの貧困対策推進法」が成立して14年1月施行になったこともあり、ならば、この子どもの貧困問題を、もっと多くの人に知ってもらおうと、このテーマを決めました。

―取材した中でこれは深刻だと感じられた事例をご紹介ください。
 栃木県内を中心に他県も含めて、全体でだいたい100くらい取材したのではないでしょうか。その中で印象に残っているのは、小学生になってもおむつが取れていない家庭のケースですね。トイレで用を足すことは、特別な努力をしないとできないとは通常思いませんね、ですから、最初、「おむつが取れていない」というその意味がよく分からなかったんです。でも、衣食住がきちんとそろっていない等、育つ環境が整わないと、人間は成長できない、それが身につかないものなんだと思いました。
 また、その子の兄は中学生ですけど、特別支援学級に通級していた。特に発達の遅れがあるわけでなく、普通に力がある子だけれど、小さいころからずっと衣食住が足りない環境で育っていくと、そうなってしまうのかと思えました。強烈で厳しい事例でしたね。
 子どもの貧困がなぜ増えているんだろう?と考えていたんですが、小泉構造改革以降、非正規が大幅に増え、しかも女性が多い。離婚する人も増え、子どもは母親が引き取ることが多い。母親の多くは非正規になってしまうので、当然、子どもが貧困状態になるというのは必然ですよね。何でこんなことに気付かないんだろうって思いました。

―「衣食住が整っていないと人間の成長に妨げが生じる」ということですが、貧困は子どもの成長にどう影響するのでしょうか。
 先ほどのおむつが取れていない子どもの家庭の例で言うと、その家庭は母子家庭で生活保護家庭です。生活保護は最低限の生活ができるものを支給されているはずです。しかし、ご飯が作れない、部屋を片付けられない等、生活力がない。その母親も小さいころから生活保護世帯であって、ずっと後ろめたい気持ち、負い目を持ち続けて生きてきたのでしょう。「貧困の連鎖」ですね。光熱費が払えないと催促されることが重なる。すると人と接触したくなくなる。だから、人に相談できない、そして閉じこもってしまう、これが連鎖していく。お金をすぐ他に使ってしまい、光熱費が払えない。すると水道が止まる。水道が止まるとトイレが使えない。すると、子どももトイレを使わなくなる。だから、おむつが取れないなどと、悪循環に陥るってことではないでしょうか。
 あるNPO法人の代表が言っていたことですが「経済的困窮は母親を精神的に追い込み、家事や子育ての意欲を失わせるかもしれない。SOSを出すことができず、内側にこもりがちの母親を責めてもどうにもならない」のです。

―現在の生活保護の課題や問題はどこにあるのでしょうか。
 お金を給付するだけではダメってことでしょうか。もちろん、生活保護によって最低の生活費は支給され、生活保護制度は、一定の効果・役割を果たしてはいます。経済的困窮が要因で不登校や虐待、育児放棄ネグレクトに陥るケースは少なくないです。だから、必要とされる支援はいろいろあって、お金だけではない。お金以外の違う手の差し伸べ方が必要なケースは多いと思います。
 また、ワーキングプアと呼ばれる層が存在し、生活保護以下の生活を余儀なくされている。生活保護と違って、ほとんど支援は無いと言ってよい。こちらの問題の方が大きいですね。

―英国にも取材に行かれたそうですが、あちらは子どもの貧困対策が進んでいるようですね。
 英国では1990年代後半、子どもの貧困率が26%と最悪に陥りました。労働党のブレア首相(当時)が1999年に「子どもの貧困撲滅」を宣言し、本格的に対策が動き出しました。英国の貧困対策の特徴は、役人任せではなく、政治家が決断したことです。これが一番大きい。その対策は、所得保障・親の就労支援・子育て支援の3本柱でしたが、16歳未満の子ども全員の児童手当を引き上げたり、低所得者向けの現金給付を拡充しました。また、「子どもの貧困対策は未来への投資」「教育は貧困の連鎖を断ち切る」として、戦後最大の財政赤字を抱えながらも、教育予算も減らしませんでした。
 この結果、2011年までに子どもの貧国率が26%から17%に改善、約110万人が貧困から抜け出すこととなりました。しかし、2007年、労働党は総選挙に負け、保守党と自由民主党の連立政権へと政権交代、その後の貧困対策は紆余曲折を経ています。
【注:貧困率=相対的貧困率は、英国の場合、標準的所得額の60%未満に属する割合をいうが、日本の貧国率は標準的所得額の50%未満。英国の子どもの貧困率17%は日本の基準で計算すると9%となる。なお、日本の子どもの貧困率は16,7%(2012年)】

―下野新聞は、貧困の中にいる子どもや親、支援者、識者らに事態改善のための方策を「五つの提言」としてまとめられています。その提言内容を教えてください。
【提言1―見えにくい「子どもの貧困」、その存在の認識を―子どもの貧困に目を向けて子どもが健やかに育つ権利を社会全体で守ろう】
 先ほど触れたように、子どもの貧困は内側にこもってSOSが出しにくく、外から見えにくい現状です。まず、気づかなければ何も始まらない。ですから、子どもの貧困について、まず認識からと言いたいですね。あるNPOの方がおっしゃったことですが、まさに「子どもの貧困の放置は社会のネグレクトであり、虐待だ」ということです。
【提言2―発見、支援の最前線の充実を図れ―各市町は「虐待」だけでなく「貧困」も目線を持ち、早期発見・対応を】
 内側にこもって問題が見えにくい状況を何とかするには、子どもが一番過ごすところである学校などが、貧困状態に置かれた子どもを発見する機能を強くできないか、その上で支援することを充実できないかと指摘したいですね。ある自治体のNPOでは、虐待があるのではないかという視点だけでなく、「貧困」ではないかという視点を持って子どもに接し、支援が効果的になっている。この点が大事だと思います。
【提言3―教育の負担を軽減し、学ぶ意欲を支えよう―希望するすべての子どもが高校に進学できるよう、全市町で学習支援を行うとともに経済的支援の拡充を】
 高校授業料無償化が実現して、生活保護世帯の高校への進学率も上昇してきましたが、新聞連載当時は、栃木県内の高校の進学率は全世帯で98%を超えていたのに対し、生活保護世帯では84%に落ち込んでいました。その差を縮小し、希望するすべての子どもが高校に進学できるよう経済的支援の重要さを提言しました。
【注:厚生労働省によれば全世帯の高校進学率97.8%に対し生活保護世帯の進学率は93.3%(2016年)、なお、大学進学率は全世帯73.2%に対して生活保護世帯は33.1%(2016年)】
【提言4―現金給付の拡充による所得保障は急務―ワーキングプア世帯への支援を重視し、所得再配分後の貧困率「逆転現象」を解消せよ】
 生活保護水準以下で生活する人たちが本当にいっぱいいて、生活保護の枠外にあります。厚生労働省も、生活保護を利用できると思われる世帯の7割は受給していないと推計しています。このワーキングプア世帯への支援を重視すべきです。母子家庭の5割が貧困家庭です。現金給付を拡充して「給付付き税額控除」、児童扶養手当の拡充等の制度導入を視野に入れるべきです。
【提言5―政治や自治体のリーダーシップ発揮をー「民」の潜在力を引き出し、官民一体の支援体制に向けてリーダーシップの発揮が鍵―】
 住民の中には何かお手伝いしたいという方々がたくさんいます。しかし、その受け皿がなく、生かせない状態です。行政の側がそれを引っ張りあげ、民間の力を巻き込んでいって、その人たちに活躍してもらう。縦割り行政の弊害をなくして官民一体の支援体制を作る。そのためには自治体側のリーダーシップが不可欠だと思います。

─読者の反応や訴えたいことは何ですか。
 読者からは共感や疑問や批判など70件ほどメールや手紙がありました。地方新聞としては多い方だと思います。「自分も貧しかったが、がんばった。甘えている」等のバッシングもありましたが、「そんな子どもがいる家庭に贈って」とお金やお米を送ってきた方もいて、多くは共感の声だったと思います。
 みなさんに訴えたいことは、「貧困に苦しむ人があなたの隣に必ずいる」ことを忘れないでということです。自分とは違う側において批判するのは簡単で楽かもしれませんが、そうではなく、今深刻な問題が起きていることを意識することではないでしょうか。【注書きは編集部】

インタビューを終えて
 日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。”子どもの貧困”は、憲法違反であり、人権問題である。”子どもの貧困”は、子どもの不安を増幅さえ、さまざまな意欲を奪うことにつながる。本来得られるはずの人とのつながりや機会、文化的活動が損なわれ、進学や就職の選択が制約され、子どもの可能性を奪う。”子どもの貧困”は親のせいではなく、ましてや子どものせいでもない。”子どもの貧困”を放置すれば、将来の国のコストがかさむ。一方、子どもへの公的支出は長い目で見るとリターンがある。”子どもの貧困”対策は、一人一人が幸せに成長することが主目的だが、社会、経済の担い手を生み出すことでもある。
 2018年度は生活保護受給額が減額されるなど、国・地方自治体の施策は逆行していると言わざるを得ません。各家庭のせいにする自己責任論では”子どもの貧困”は解決しません。社会全体でいっしょに解決していきませんか。
(北村智之)

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辺野古新基地建設の工事は政府の思惑通りに進んでいない
沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック 共同代表 木村 辰彦

八方塞がりの埋め立て工事 知事の承認必要
 2017年4月25日に沖縄防衛局は大浦湾側でK9護岸工事を強行しました。この工事は県からの「岩礁破砕許可」が必要なのですが、無許可の違法工事でした。この工事は全長316メートルの予定ですが、100メートルで止まっています。その先に希少種のサンゴがあるからです。この護岸は石材の海上輸送のための台船の桟橋として使われています。昨年の11月から辺野古側と辺野古崎側にK1護岸(全長217メートル)とN5護岸(全長273メートル)の工事を強行しました。この工事は浅瀬部分なので工事の進行は早く、ほぼ完了しています。
 昨年の12月23日には、K4護岸(全長1029メートル)の工事を強行しました。この護岸は、K1護岸、N5護岸と繋がり、海を囲い込む護岸になります。報道では、6月頃に、囲われた海域に本格的な埋め立てとなる土砂を投入するとのことです。しかし、K4護岸は全長1029メートルもあるので、防衛局の工程表でも15ヵ月かかるとされており、本年中の完成はありえないと言われています。
 このように、護岸工事は強行されても、県民の闘いで大きく遅れており、進捗率は約4%でしかありません。
 防衛局の報告書で建設予定海域に活断層の可能性と海底地質の軟弱が明記されています。情報公開請求で入手した防衛省の地質調査書で、大浦湾側の埋め立て予定海域の断層について活断層の可能性を指摘していることが明らかになりました。政府はこれまで活断層の存在を全面的に否定していました。今回の調査で基地建設の場所としての適地性が無くなりました。米カリフォルニア州では、断層上への公共施設の建設を禁止しています。
 さらに、海底の地質についても「非常に緩い、柔らかい堆積物」とし「構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須と考える」と明記。埋め立て工事で投下するケーソンの重さに耐えきれるように、海底地盤の強化の改良工事が必要になります。しかし海底30メートルでの工事は非常に難しいとのことです。この工事のためには、知事への設計概要変更申請が必要で、知事が承認しないと工事は出来ません。
 また、3月9日に翁長雄志県知事は知事の権限を行使し、辺野古の埋め立て海域で見つかった希少サンゴの防衛局からの移植申請を不許可にしました。防衛局は県の許可がなければ、サンゴの移植・移築が出来ません。これによっても一定期間の工事が止まります。


基地ゲート前に集まった全国の代表
(3月14日・名護市辺野古)

沖縄県民は屈しない 全国から連帯した闘いを
 政府は、当初の大浦湾側からの工事計画を変更して、浅い場所での工事を進めることで「工事は着々と進行している。もう後戻りはできない」と宣伝し、県民を諦めさせようとしています。しかし現状は防衛局の方が多くの課題に直面して窮地に追い込まれています。県民は名護市長選挙に負けましたが、ここで諦めたら政府の思うつぼだと、決意を新たにしてゲート前での抗議行動を強化しています。かつて軍事植民地下において、闘いで本土復帰を実現させたように、県民はやわではありません。
 翁長県知事は、工事の変更許可、サンゴの移植許可などの権限を有します。県民は、現場での闘いを強化し、翁長知事が県民の支えのもとで毅然と権限を行使し、全国の仲間と力をあわせれば、必ず新基地建設を阻止することが出来ると確信しています。
 今、全国各地で仲間が立ち上がっています。全国港湾労働組合連合会は、辺野古の工事は違法であり加担できないとして、各事業者に土砂搬出作業を行わないように要請し、労使協定の締結を求めています。さらに、新基地建設の土砂の8割が西日本各地から持ち出されることから、各地の住民は「故郷の一粒の土砂も、辺野古の埋め立てには使わせない」として、辺野古土砂搬出反対全国連絡会議を立ち上げて闘っています。
 平和フォーラムがこの間取り組んだ沖縄連帯の闘いは、県民を大きく励ましています。名護市への現地事務所の設置、全国各地から辺野古現地闘争への参加、山城博治・沖縄平和運動センター議長の裁判にあわせたブロックごとの現地闘争への参加、そして2016年から17年にかけて市民団体が取り組んだ国会包囲行動や、沖縄での集会に連帯した全国での同時行動の開催などです。さらに、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委」と国会包囲実行委が呼びかけた「沖縄県民の民意尊重と、基地押しつけ撤回を求める全国統一署名」は約160万筆集まり、提出されました。
 この6月に日本政府は辺野古の埋め立ての土砂を投入しようとしています。辺野古の闘いは重大な局面に入ります。今こそ、全国から沖縄に連帯した闘いを強化して、基地建設を止めましょう。
(きむらたつひこ)

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「イージス・アショア」の配備を許さない!
山口県平和運動フォーラム 議長 桝本 康仁


電磁波の影響について講演する荻野晃也さん
(1月27日・山口市)

地元に説明なしに配備が具体化
 昨年11月中旬、政府が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を2基導入し、山口県、秋田県にそれぞれ配備するという衝撃的な報道が行われたことを受けて、山口県平和運動フォーラムは県に事実確認を行った。県は「そういう事実は確認していないし、国からの連絡も受けていない」という返答に終始した。そこで、県の11月定例議会において、関係議員から、この問題に関わる一般質問も行ったが、県当局の答弁は「国から正式な連絡は受けていないが、防衛省に事実関係の確認を行ったところ、『現在、イージス・アショアを中心に必要な検討を行っているが、どこに配置するかについては、何ら決定していない』との説明を受けたところです」にとどまった。
 12月5日には、中央の平和フォーラムや秋田県平和センターと連携して、防衛省に対して、配備計画の撤回を求める申し入れを行ったが、出席した防衛省職員は「現時点では、どの新規防衛装備品を購入し、どこに配備するかは決定していない」との回答に終始した。その2週間後の12月19日、政府は、「イージス・アショアを2基導入し、陸上自衛隊において保持する」ことを閣議決定した。報道では、山口県萩市の陸上自衛隊むつみ演習場への建設が有力視されている。
 地元では「子どもがいるので目に見えない電磁波は怖い。地元に説明がないのに、とんとんと話が決まっているようで心配」と政府方針への批判の声や、一方で「候補地として報道がされ、最初は驚いたが、北朝鮮への抑止力につながる。定住する自衛隊員が増えれば地域への消費も増える。国からの交付金で地元が住みやすくなれば」と期待する声もある。
 山口県平和運動フォーラムは、この配備計画の問題点を次のように考えている。
 まず、イージス・アショアの運用は2023年度以降とされており、現在の緊迫する東北アジアの情勢が運用時にどのように変化しているのかが見通せない中での配備計画は理解できない。東北アジア情勢の改善にむけて、現時点の最優先課題は、アメリカ・中国・韓国と連携した対話を基本とした政策であるべきだ。あわせて、厳しい国家予算において、国民の暮らしに直結する社会保障費などが切り下げられる中、1基当たり1000億円とも言われている配備費用を投入することは断じて許すことができない。
 2点目として、イージス・アショアの性能の信頼性への疑問がある。昨年から実施されている「SM3ブロック2A」の発射実験が失敗をくり返していることから、イージスシステムおよび迎撃ミサイルによる標的ミサイルの追尾・破壊にいたる性能には信頼性の高い技術があるとは思えない。

懸念される電磁波による人体への影響
 第3に、イージス・アショアの運用で発生するとされている強力な電磁波の問題がある。イージス艦での運用の際には、乗組員は甲板上に出ることが禁止されているほどの電磁波が発生すると言われており、地元住民や環境への影響が強く懸念される。
 電磁波の影響についての学習を深めるため、山口県平和運動フォーラムは、地元の「『イージス・アショア』配備計画の撤回を求める住民の会」との共催で、1月27日、電磁波環境研究所所長の荻野晃也さんを講師に「健康を脅かす電磁波とは何か」というテーマで講演会を開催した。
 講演会では「電磁波は放射線の仲間なので、被爆国である日本が『まじめに取り組んでいる』と思われるかもしれないが、世界で電磁波問題を一番軽視しているのが日本だ」と指摘がなされた。また、イージス・アショアの最初の施設として設置された米国ボストン郊外のコッド岬の「ペーブポーズレーダー基地」の環境影響に触れて、現地では『エウィング類(柔らかい組織)の小児がん』がケープ・コッド郡で3.84倍に増加していることや、小児リンパ腫も異常な増加を示していることが紹介された。地元の住民の多くは、今なお不安を持って暮らしており、現在も反対運動を継続している。
 さらに、候補地となっているむつみ演習場については「演習場周辺は高い山に囲まれている。レーダーは、日本海の洋上を監視することができない。これは、日本の防衛のためというより、アメリカを守るための盾と言わざるを得ない」と言及した。
 今回の講演会で、イージス・アショアの建設は、強力な電磁波が地元住民にどのような影響を及ぼすのかという人体実験のスタートとなることや、配備予定候補地はレーダー基地としては疑問があることを学んだ。今後も、配備に関わる問題点等の学習を深めつつ、山口県・秋田県はもとより、国内のどの地域にも配備されないよう闘争を展開していく決意である。
(ますもとやすひと)

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検討が進む遺伝子組換え食品の表示制度
消費者庁は市民の意見をきちんと聞け
食の安全・監視市民委員会代表/弁護士 神山 美智子

EUや韓国は日本より厳しい制度に
 2013年に作られた食品表示法にもとづき、消費者庁は、「加工食品の原料原産地表示の拡大」、「遺伝子組換え食品表示」、「添加物表示の見直し」などを予定していました。このうち、原料原産地表示が一段落した後、昨年4月から、遺伝子組換え食品の表示について検討会を設けて検討を重ね、3月14日に最終報告がまとまりました。
 遺伝子組換え食品とは何でしょうか。除草剤を散布しても枯れない大豆などの作物があれば、除草剤を空中散布することができます。また害虫が食べると逆に虫が死ぬようなジャガイモなどを作り出せば、殺虫剤を減らせると言われています。そのために、微生物がもっている除草剤に強い性質を作る遺伝子や、微生物の殺虫毒素を作る遺伝子を植物に組み込んだりします。
 これらの農作物と食品は、食品衛生法に基づき国の安全性審査を受けることになっており、現在、大豆、トウモロコシ、バレイショ、ナタネなど8品目の農作物と、これらを原料とする加工食品33品目が認められています。日本では農作物は作られず、すべて輸入品ですが、世界的に作付面積が広がっています。
 表示基準は内閣府令で定められていますが、組み換えかどうか分別して流通管理(IPハンドリング)されているかで分かれます。されていない場合は「不分別」と表示しなくてはなりません。遺伝子組換えであれば「組換え」と表示します。しかし意図しない混入率が5%以下の作物と加工食品には表示義務がありません。この混入率は、EUでは0.9%、韓国は3%と日本より厳しい制度になっています。
 また加工食品の原材料は、上位3位までで重量が5%以上のものしか表示義務がありません。油や醤油のように、組み込まれた遺伝子が科学的に検出できない加工食品も表示義務がありません。そのためお店で「遺伝子組換え」という表示を見ることはほとんどありません。
 一方、意図しない混入が5%以下の場合、任意に「遺伝子組み換えでない」という表示をすることが認められているので、納豆や豆腐、醤油で「組換えでない」という表示がよく見られます。この混入率は内閣府令ではなく、消費者庁次長通知で決められています。この混入率も、1%以下の国や0%という国もたくさんあります。


豆腐に表示された「遺伝子組換えでない」
も変わる可能性がある

油や醤油などにも表示を義務付けるべき
 今回の検討課題となったのは、まず、科学的に遺伝子が検出できない油や醤油のような加工食品にも表示を義務付けるかどうかです。これはほとんどの消費者団体が拡大を求めているにもかかわらず、検討会は「日本にはトレーサビリティ(流通追跡)制度がないので、社会的な検証もできないため拡大できない」としました。アメリカの加工食品企業グループでさえ、新たな制度を設けるならこうした加工食品も対象にすべきという意見を出しています。日本もトレーサビリティ制度を義務化しないと国際的に取り残されます。
 次に混入率の見直しです。この点も消費団体の要望は無視されました。5%以下にすると、特にトウモロコシの輸入ができなくなるというのです。
 第3は「不分別」表示の見直しです。不分別とされているものも、実態はすべて遺伝子組換えなので廃止すべきというのが消費者団体の意見でしたが、分かりにくいので表現を工夫することにとどまりました。
 第4は「組換えでない」という任意表示の混入率をどうするかです。検討会は、多くの消費者が「組換えでない」と表示されているものは「組換え原材料は使われていない」と誤解しているので、原則0%(検出限界)に限るとしました。この点に対し、せっかく分別管理して輸入しても「遺伝子組換えでない」表示ができないなら、企業は分別管理を止めてしまうのではないかと心配している消費者団体もたくさんあります。
 私は「遺伝子組換えでない」と表示する以上、組換え作物を含んでいてはいけないと考えていますが、それにはまず、遺伝子が検出できない加工食品にも書面などの検証を条件に表示を義務付け、意図しない混入率を5%から1%、あるいは韓国並みの3%に引き下げることが前提です。消費者庁は、消費者の声を勝手につまみ食いしているのです。
 遺伝子組み換え表示制度は重大なので、消費者委員会でも検討し、意見募集(パブリックコメント)も行うべきだと思いますが、消費者庁は次長通知の改正だけなら、消費者委員会の意見も聞かず、パブコメも必要ないと考えているようです。食の安全・監視市民委員会は、消費者委員会の意見を聞き、パブコメも行うべきだという要望書を提出しました。皆さんもぜひ、消費者庁や消費者委員会に意見をぶつけてください。
(かみやまみちこ)

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六ヶ所再処理工場の現状
今すぐやめよう!無駄で危険な再処理工場
原子力資料情報室 澤井正子


六ヶ所再処理工場全景(日本原燃のホームページから)

 事業計画から見れば、事業申請から29年、建設開始から25年、法的には六ヶ所再処理工場は本格操業前の「使用前検査」という状態が12年続いている。本格操業開始はこのまますべてがうまく行っても3年後の2021年、工場はそこから約40年稼働する予定だ。そして最後には工場解体(約40年かかる)が待っている。計画全体としては100年を優に超える。私は元号を使う人間ではないのだが、六ヶ所再処理工場は、計画当初から見れば昭和→平成→○○(2文字という噂である)と、3つ(もしかしたらその次の元号)にまたがる「超巨大プロジェクト!」ということになる。

既に老朽化している工場
 申請書どおり工場が建設されているかをみる「使用前検査」の状態で、計画は足踏みしている。設備の不具合は数々あるが、最大の問題はガラス固化体製造工程だ。ガラスと高レベル放射性廃液がうまい具合に混ざらないため、ガラス固化体が作れない。このプロセスの事故・トラブル・改造等で11年が費やされてきた。その間に、2006年の新耐震指針、2011年3月の福島第一原子力発電所事故を経て、2013年の新規制基準と、規制する法律がどんどん変更された。その都度「申請書」の内容を変更することになり、当初は「バックチェック」でよかったが、「バックフィット(遡及適用)」となり、安全審査が再度行われ、それに合わせた設計変更等が実施されている。どだい「建設中の工場」なのだが、本格稼働前に設計変更が行われ、施設では試験のためにすでに使用済み燃料や濃硝酸が工程に入って20年以上経過している。普通の工場でも20年も経てば様々な補修やメンテナンスが必要だが、酸による腐食や放射能に係わる「老朽化」も始まり、原子力施設特有の事故も発生する状態となっている。
 何とかして安全審査を終了し、本格操業を始めたいとする六ヶ所再処理工場だが、なんと2017年10月11日の原子力規制委員会の定例会合で、事業者の日本原燃自らが「安全審査の中断」を申し出るという前代未聞の事態に立ち至っている。というか、「そう言わざるを得ない状況」となっているというのが今の「現状」である。
 福島第一原子力発電所は、3月11日の地震にともなって発生した津波によって全ての電源を失い、3基の原子炉でメルトダウン事故が発生した。事故の教訓の一つは、非常用電源の確保と言っても過言ではないだろう。だから「新規制基準」は、様々な方法で非常用電源の確保を義務付けている。この規則を六ヶ所再処理工場は、守れない状態となっているのだ。
 さらに問題は、「再処理工場の非常用電源建屋への雨水流入」事故によって、規制委員会から、複数の保安規定違反が指摘されたことだ。「保安規定」とは、原子力施設運転の際、事業者が守るべき検査・保守・管理や安全確保のための基本的事項、事故時の対応方法について定めたものである。事業者は運転開始前に、「保安規定」を作成し、規制委員会の認可を受ける。六ヶ所再処理工場では、この最低限の「規則(お約束)」が守られていないというのだ(六ヶ所再処理工場は正式な運転許可を受けていないが、試験運転用の保安規定が適応されている)。

またもや明らかになったずさんな点検体制
 六ヶ所再処理工場の非常用電源建屋には、ディーゼル発電機2台が設置されている。発電機本体は地上1階に設置されているが、発電機に燃料油を供給するポンプや燃料タンクは地下1階にある。この施設で2017年8月、発電機の燃料油供給配管が収められている地下1階の配管ピットに800リットルの雨水が貯まり、その雨水が建屋側に流入する事故が発生した(福島第一原子力発電所事故と同様、配管が水没し非常用発電機が機能しなくなる可能性があった)。さらに事故の原因調査でとんでもないことが数々明らかになった。(1)配管ピットの点検口を建屋建設以来”14年間”一度も開けておらず、配管の点検を実施していなかった。ところが、(2)定められた「点検日誌」には点検結果を記載し「異常なし」としていた。日本原燃は隣にある「ケーブルピット」を「配管ピット」と間違えて点検していた、と言い訳している(14年間も間違えるか?)。(3)現場調査で雨水の漏えい跡が確認できる写真を撮りながら、問題がない旨の報告を作成していた、等々である。
 原発の再稼働を進めるさすがの原子力規制委員会も、これらの行為は、保安規定に完全に違反する、と断じた。六ヶ所再処理工場の安全性は確保できないというのである。会合に出席した日本原燃の工藤社長は、自らの工場のあまりにもズサンな安全管理体制について陳謝し、「ギブ・アップ」発言せざるを得なかった。事業者が「安全審査」の中断を申し出たのだ。2018年3月中旬現在、審査再開の目処はない。六ヶ所再処理工場の先行きは、ますます不透明となっている。
(さわいまさこ)

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市民の意見を反映させた「原発ゼロ基本法案」の実現を

 「法施行後5年以内にすべての原発の廃止を決定する」ことなどを柱とした「原発ゼロ基本法案」(原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法)が3月9日、立憲民主党、共産党、自由党、社民党の野党4党で衆議院に提出されました。この法案は、立憲民主党がまとめたものを他の野党に呼びかけ、共同提出に結びついたものです。具体的に脱原発にむけた法案が提出されたことで、原子力政策の議論が国会で活発に行われることが期待されます。国会内の数の論理で考えれば、法案成立は厳しい側面がありますが、院外の大衆的な運動の盛り上がりが法案実現の大きな鍵となるはずです。

脱原発に向けた法案制定運動の歴史
 これまで脱原発に向けた法案は様々に取り組まれてきました。
 1986年4月のチェルノブイリ原発事故後、1988年4月に原子力資料情報室の高木仁三郎さんらが「脱原発法制定運動」を提起し、「建設中、計画中の原発については、建設、計画の続行を認めずただちに廃止」、「現在運転中の原発については、法案成立後一定の期間内(たとえば1年)に順次運転を停止させ廃炉とする。危険の少ない廃炉措置のための研究は認める」などを盛り込んだ脱原発法の制定にむけて100万人署名運動が開始され、350万筆の署名が国会に提出されましたが、制定は果たせませんでした。
 そして、2011年の福島原発事故を受けて、2012年8月には、原水禁も加わり新たな脱原発法制定運動がスタートしました。「遅くとも2025年度までのできる限り早い時期」までに脱原発をめざすとする要綱案を発表し、超党派による議員立法をめざしましたが、国会での十分な議論もなく、これも法制定には結びつきませんでした。
 今年1月には、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」(原自連)が「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」の骨子を発表し、各政党に申し入れる動きも出ていました。


さようなら原発、市民アクションと
立憲民主党との意見交換会

再生可能エネルギーを40%にすることも明記
 立憲民主党は、結党に際してエネルギー政策を重要課題としていました。そして今年に入って、「原自連」や「原発ゼロ社会の道2017―脱原子力社会の実現のために」をまとめた「原子力市民委員会」と意見交換会を公開の下で進めてきました。一方、原子力推進の立場の電力総連、基幹労連、電機連合の3労組と電気事業連合会との意見交換も行いましたが、これは非公開となりました。そして2月20日には、「さようなら原発1000万人アクション」(さようなら原発)と意見交換が行われたのです。
 さようなら原発は立憲民主党との意見交換に先立つ2月9日に、「原発ゼロ基本法」策定に関する意見申入書を提出しています。ここでは、「原発の廃炉を、国の事業として行うことに反対するものではありませんが、その際には、核燃料サイクル計画などを含めて、私たちの電気料金や税金がどのように使われてきたかを、明確に市民に説明する必要があると考えます。/各家庭の再生可能エネルギー導入に関し、税制優遇などの導入支援策を強化することが大切と考えます。/新たな脱原発政策のための省庁の設置に際しては、しがらみのない人事配置を心がけ、是非ともこれまで脱原発に取り組んできた民間研究機関やNGO、学者・研究者の登用を実現して欲しいと考えます。/石炭から石油へエネルギー変革がなされたとき以上に、廃炉を迎える原発立地の地域社会には、雇用の確保などを含めて手厚い経済支援がはかられることを望みます。/福島原発被災者に関しては、現在、帰還政策の強要が目立ちます。特に『自主避難者』への住宅提供などの廃止は、被災者の生活を直撃しています。事故と被ばくが存在することが事実であり、現在も事故以前の状況に戻っていないことを基本に、被災者それぞれの選択を基本に支援策の強化を考えて下さい」など、9項目にわたって要望を出していました。
 そのほか、各地でタウンミーティングが開かれ、地方から「原発ゼロ基本法案」に対する意見聴取が行われました。まとめられた法案は、多くの市民の意見が結実したものと言えます。
 法案は、原発ゼロへの道筋について、省エネの推進と再生可能エネルギーの拡大を掲げ、再生エネルギーによる発電割合を40%以上とすることなど具体的数値を条文に明記しています。さらに電力会社も原発ゼロを受け入れやすい環境づくりを国の責務として行うことや、原発立地自治体に対しても「雇用創出や地域経済の発展」につながる措置を講ずるとしています。また、使用済み核燃料については「再処理は行わない」ことをはっきりと打ち出しました。(条文→http://bit.ly/npp0rikken
 この原発ゼロ基本法案を実現させるため、市民の力を結集したさようなら原発1000万人アクションの運動をより強力に進めていきましょう。
(井上年弘)

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「沖縄にカラの核貯蔵庫」案容認?

核削減に不安な日本が「それはいい」と安堵?
 秋葉剛男外務省事務次官が在米日本大使館公使時代の2009年に沖縄での核貯蔵庫建設案を「容認」「肯定」したことが判明、外務省がこれを否定、との報道がありました。これは、前号で紹介したオバマ政権の「核態勢見直し(NPR)」に関連した米議会委員会での日本側の見解説明を巡るものです。見出しだけだと、米国が核兵器の持ち込みを強く要請し、日本側が渋々「容認」「肯定」したという話だとの印象を持ってしまうかもしれません。
 しかし、問題は、米国の核削減の悪影響について日本側が懸念を表明した後でのやり取りという文脈です。心配する日本に対し、それでも持ち込みはダメだと言うのなら、ひとまず空っぽの核貯蔵庫を建設しておくのではどうかと議会委副委員長が聞く。それに対し、秋葉公使が「説得力がある(妥当である)」と答えたらしい。言い換えると「それはいい」と安堵したことを示唆する文書が見つかったということです。以下、箇条書きの形で関連文書と沖縄問題の部分を整理するとともに、その背景を振り返っておきましょう。

関連文書の整理
 舞台はオバマ政権のNPRの際、その参考に供する報告書を作成するためとして議会が設置した「米国戦略態勢議会委員会」(委員長はペリー元国防長官、副委員長はシュレシンジャー元国防長官)。2009年2月25日の同委員会における秋葉公使らの説明に関連した文書は次の三つ。(1)秋葉公使が使用した3ページの文書、(2)同文書に委員会スタッフの手書きメモが入ったバージョン、(3)議会委員会スタッフからモートン・ハルペリン委員に送られた議事要約文書。これらを入手した米「憂慮する科学者同盟(UCS)」のグレゴリー・カラキーが日本のジャーナリストらに提供するとともに、今年2月16日にブログで取りあげたのが報道の発端。(1)は、「日本は米国の拡大抑止に──それが信頼性を持つ限りにおいて──依存する」と述べ、廃棄の決まっていた潜水艦発射巡航核ミサイル(TLAM/N)について、同兵器の重要性を列挙した上で、これが廃棄されるならどのようにしてこれを補うのか説明が欲しいと要請。(3)によると、公使の最初の発言は(1)の文言に忠実に従った。

沖縄問題
 (1)には沖縄は登場しないが、(3)には、公使の説明後「沖縄かグアムに核貯蔵施設を建設することについて日本はどう見るかとのシュレシンジャー博士からの質問に対し、秋葉公使はこのような提案は説得力があると思うと述べた」とある。(2)の関連部分:「【シュレシンジャー】地上核能力に関する日本と[5ヵ国に米核爆弾が配備されている]NATOとの違い。日本はこの政策を調整することに関心はあるか。【秋葉】日本の政治体制は非核三原則を変更することには関心がない。しかし、非核三原則の三つ目[持ち込ませない]の修正について議論している者もいる。しかし、政治的には現実的でない。しかし、我々は脅威を感じている。【シュレシンジャー】沖縄に兵器なしの貯蔵庫?【秋葉】説得力があると思う。」
 河野太郎外務大臣、3月6日の記者会見で秋葉氏がそのようなことはないと答えたと発言。同日「外務省の日米安保課は『出所不明の文書へのコメントは控える』」と返答との報道。3月13日に沖縄県主催シンポジウム(ワシントンDC)で登壇したモートン・ハルペリン氏がインタビューで、メモは本物と答え、(3)が同氏宛のものであることを認める。同氏は、ジョンソン、ニクソン両政権で要職に就き、クリントン政権時代に大統領特別顧問、国家安全保障会議メンバー、国務省政策企画本部長(1998-2001年)を務めた人物。

日本の核武装を心配する米国という文脈
 委員会最終報告書:「我々の作業の中で、米国のアジアの同盟国の一部は巡航核ミサイルの退役について非常に憂慮するだろうということが明らかになった」。
 上記報告書発表の議会公聴会(2009年5月6日)での副委員長の発言:「日本は、米国の核の傘の下にある30ほどの国の中で、自らの核戦力を生み出す可能性の最も高い国であり、現在、日本との緊密な協議が絶対欠かせない。過去においては日本は旧ソ連の脅威についてはそれほど心配していなかった。しかし、最近中国がその能力を高めており、日本の懸念が高まっている。それで日本は我が国との協議を望んでおり、我が国のさらなる確約を求めているのだ」。同公聴会での委員長の発言:「ヨーロッパとアジアの両方において我々の拡大抑止の信頼性についての懸念が存在している。彼らの懸念について注意することが重要だ。我々は抑止が我々の基準において有効かどうか判断するのではなく、彼らの基準も考慮しなければならない。それに失敗すると……これらの国々が、自前の抑止力を持たなければならないと感じてしまう」。(委員長は核削減派として知られる)
 2018年ペリー元委員長インタビュー(赤旗3月5日):「秋葉公使は、『日本政府はTLAM/Nがあれば、感覚の問題として安心感を得られる。TLAM/Nは軍事的・技術的な問題ではなく、政治的な問題だ』と主張した……もし日本政府が必要だと考えるのなら、われわれはそこに注意を払わなければならなかった。なぜなら、日本が自ら核兵器を製造するより、はるかにましだからだ。もし私が大統領で、もし私が日本政府や国民にとって重要だと考えたなら、TLAM/Nを支持しただろう」。[最終的にオバマ政権が不要として廃棄を確定したTLAM/Nに代わる海洋発射巡航核ミサイルの開発をトランプ政権のNPRが決めたことについて]「日本政府がそれを望んでいるのではないかと想像している」。
 米国は日本の反核運動を当てにしていないということです。さあどうする反核運動?
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》
関西生コン業界で協同組合が労組つぶし
ネオナチまで合流 デマをふりまく暴力集団
全日本建設運輸連帯労働組合 書記長 小谷野 毅

スト対策を口実に不当労働行為を乱発
 全日本建設運輸連帯労働組合(全日建)は、いま関西で特異な労働争議を闘っています。「特異な」と形容詞をつけたのは、個別資本による解雇や仕事差別との対決という構図ではなく、業界団体が主体となった労働組合つぶし攻撃であり、また、いわゆるネオナチ集団らを傭兵のように使った攻撃との闘争だからです。
 その特異性を一目瞭然で示すのが右の写真です。前列が業界団体を牛耳る幹部たち、後方がネオナチの一群です。この業界団体は大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組。169社184工場)といい、中小企業の生コン業者が結束して共同受注・共同販売事業をおこない、大手ゼネコンと対等な取引を実現するための業者団体です。かたやネオナチ集団は、ヘイトスピーチで悪名をはせた人物たちで、今年2月に東京の朝鮮総連本部を襲った銃撃犯らとも関係があります。
 この畑違いな二つの集団が結託したきっかけは、昨年12月のストライキです。若者に魅力ある業界をつくるための最低年収600万円を実現するために、必要な生コン運送会社の運賃引き上げ、そして大阪広域協組の民主化、この二つを要求して、12月12~18日、近畿地方一円、車両1500台規模でストライキを決行しました。
 京都、滋賀、奈良、和歌山の協同組合と輸送業者の協同組合は要求を受け入れましたが、大阪広域協組は全面対決方針を打ち出しました。大阪広域協組は2年前に暴力団関係が疑われる一握りの人物らが理事会を乗っ取り、相互扶助を理念とする協同組合であるにもかかわらず、一部の業者が利益を独占するという、不公平かつ恐怖政治を思わせる組織運営を行っていました。スト対策を口実に、これを批判する労働組合つぶしへと舵を切ったのです。
 協組執行部の一握りの人物たちは「もう我慢できない。関西地区生コン支部(注・全日建の近畿地方の支部)との関係に決着をつける」と宣言。元大阪地検刑事部長らを顧問弁護団に担ぎあげ、予算10億円で「威力業務妨害・組織犯罪撲滅対策本部」を設置したと発表しました。労働組合に融和的な姿勢をとってきた業者には、ストに同調したと難癖をつけ、「厳格な処分を下す」として仕事を干し上げたり、組合員が多数を占める運送会社は使うな、契約を解除しろと強要したり、協組が主体となった不当労働行為を乱発しはじめました。


「関西生コン業界で、いまなにがおきているのか」より

いまここで止めねば 危機感を持った闘い続く
 年が明けた1月8日には、ネオナチ集団が大阪梅田のヨドバシカメラ前に登場。「不正な金の流れ」「不正蓄財疑惑」と記したのぼりを立て、「関西地区生コン支部は労働運動の名を借りた、ゆすり・たかりのプロ集団」などと書かれたビラを配布して、誹謗中傷宣伝を開始しました。先頭に立った瀬戸弘幸という人物は、ヒトラーにあやかった「日本国家社会主義同盟」をつくり、ハーケンクロイツを掲げた外国人排斥運動をおこなった経歴をもち、現在は元「在特会」会長の桜井誠の日本第一党の最高顧問となった人物です。異様なことに、この街頭宣伝には大阪広域協組の一部執行部が加わっていました。木村貴洋理事長は協組加盟業者に参加をよびかけ、さらに協同組合のホームページで「感銘を受けた」「今後も全面的に応援していく」と記しました。
 以後、ネオナチ集団は大型宣伝カー2台とマイクロバスを仕立て、連日のように大阪、和歌山、京都など各地を街宣して回り、争議現場にも出没。1月22日には、大阪市内の全日建の組合会館に乱入しようとして組合員に暴行を加え、負傷させました。暴力を振るった渡辺臥龍は、ヘイトスピーチ規制法の立法に尽力した有田芳生参議院議員の暗殺を示唆するブログを書き、脅迫罪で略式起訴された人物です。大阪広域協組の一部執行部は、この乱入・暴行事件にも参加して一体となって行動しました。自らは手を汚さず、離れたところでガムをかみ、笑いながら眺めていたのです。
 こうした事態は、ネトウヨが沖縄差別とデマをふりまいて暴れ回り、高江や辺野古の新基地建設反対闘争の圧殺を企図する安倍晋三内閣の先兵役を果たしてきた構図に酷似していないでしょうか。マイノリティを標的にして社会を分断するかれらの活動は、ヘイトスピーチ規制法の制定でやや下火になるきざしがみえました。しかし、業者団体、暴力団関係者らと野合して息を吹き返すかのようです。ここで止めねばと、私達は危機感を持って闘っています。
 私達は、事態のあらましを描いた動画「関西生コン業界で、いまなにがおきているのか」(約10分)を作りました。ぜひご覧になってください。
(こやのたけし)
https://youtu.be/o5heQXVQsOQ

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加盟団体の活動から(第4回)
港湾労働者も沖縄新基地反対闘争へ
全日本港湾労働組合 書記次長 諸見 力


平和行進南部コースで沿道の住民に
手を振る全港湾の組合員

 全港湾は、1946年に全日本港湾労働組合同盟として発足しました。当時は戦時統制令による1港1社制がそのまま残っていたので「○○港運株式会社内労働組合殿」と宛名書きして、全港湾の結成大会に参加するよう呼びかけしたというエピソードがあります。
 結成当初の運動は、戦後の荒廃した社会状況の中でいかにして生活できる労働条件を獲得するかでした。47年3月には、中央労働委員会の調停により、日本港運中央会との間で、完全雇用、労働時間1日拘束8時間、賃金1800円ベースなどの統一労働協約を締結しました。しかし、同年8月の集中排除法により、日本港運中央会が解散させられ、統一労働協約は失効してしまいました。
 GHQの命令で6大港の1港1社制が解体させられ、零細港運業者が乱立するようになり、過当競争による労働条件の引き下げが横行、港の暴力支配が復活してきました。また、結成当初ほとんどの港の労働組合が結集していた全港湾から脱退する組合があり、全港湾は組織的な危機に直面しました。そのため、48年に全日本港湾労動組合と名称を変更し、体制固めをして再度、各地方単位で労働条件向上を闘うこととなりました。
 全港湾は沖縄祖国復帰運動も闘ってきました。72年5月15日に沖縄は日本に復帰しましたが、米軍基地は存続し、基地機能が強化されました。基地を撤去し平和な沖縄を求める沖縄平和行進が75年から行われるようになりました。全港湾は91年以降は本土からも多数参加しています。
 世界で最も危険といわれる米軍普天間基地の撤去と県外移設は、沖縄県民の切なる要求であり、反戦平和、反基地闘争にとって重要な課題です。しかし、日米両政府は、その代替として辺野古に新基地を建設しようしています。この新基地は大浦湾の自然を破壊し巨大軍港を建設するなど、基地の拡大であるとともに、自然破壊、環境汚染が懸念されています。辺野古新基地建設の反対の声は、沖縄県知事を中心とする県民全体の運動となっています。
 全港湾は、平和行進で生まれた活動家を中心として、新基地反対闘争を取り組んでいます。そして現在、全国港湾の中に辺野古新基地建設対策委員会が設立され、港湾産別としての反基地闘争にひろがっています。
(もろみちから)

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〔本の紹介〕
『健康で文化的な最低限度の生活』
柏木ハルコ作/小学館

 多くの人々が貧困に苦しんでいるにもかかわらず、安倍政権は生活保護費の削減を狙っています。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とする憲法25条の崇高な理念が脅かされているいまこそ読みたい漫画が、その名も『健康で文化的な最低限度の生活』です。
 社会的な分断が深刻化するいまの日本社会において、生活保護に対するイメージはポジティブなものとは言えません。労働運動や平和運動に熱心な人の中にも、「生活保護をもらっている人は努力が足りないんだ」「あんな奴らに税金を使う必要はない」などと突き放す人も少なくありません。この漫画の作者も、初めは生活保護は怠け者が受け取るものだと思っていたそうです。ところが取材を進めるうちにそう単純に言い切れる問題ではないという事に気づき、いまではあまりに単純に思えたこのタイトルも気に入ったとのこと。
 主人公は架空の自治体の福祉事務所に勤める新人ケースワーカー。生活保護というものが何かということすらよくわからないまま、日々の激務の中で様々な困難を抱えながら懸命に生きている人々と出会います。高校生の息子が知らずのうちにアルバイトをしていたため生活保護を打ち切られそうになる母親(彼女には付きっきりで介護しなければならない親がいる)、父親の性的暴力から逃げ出してきた成人男性、妻子と別れてアルコール中毒になってしまった元ホストなどなど。受給者を取り巻く環境は個人の努力では到底解決できないものばかり。主人公ら新人ケースワーカーたちは、初めて知る社会のひずみの中で悩みながらも多くの事を学んでいきます。
 この漫画の最も興味深い点は「だからそもそも社会が悪いんだ、生活保護受給者には何の責任もないんだ」などと価値観を押し付けたりしないところです。主人公の同僚の中には自己責任論を主張する者もいたり、受給者が文字を読めないことに気づかず努力が足りないのだと決めつける者もいます。主人公はそうした環境にもまれながら、それでもやはり弱い個々人が支え合っていくためには社会保障が必要なのではないかと優しく問いかけているような気がします。分断を乗り越えるために、お勧めの作品です。
(パク・スンハ)

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核のキーワード図鑑


核のゴミ アベちゃんのアンダーコントロール

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あたりまえの社会を考えるシンポジウム
-貧困・格差の現場から-

 2018年度は、生活保護受給額が減額されるなど、国・地方自治体の施策は、貧困・格差問題の解決に逆行しています。貧困・格差の現場の実態について、さまざまな立場の方にお話を伺います。(参加費無料)

日時:4月20日(金)18:30~20:45
場所:東京・北区「北とぴあ」さくらホール(JR・地下鉄「王子」、都電「王子駅前」下車)
コーディネーター・本田由起さん(東京大教授)
シンポジスト・前川喜平さん(元文部科学省事務次官)/雨宮処凛さん(活動家・作家)/赤石千衣子さん(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)/山崎一洋さん(下野新聞社真岡総局長)
主催:安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
共催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

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〔インターンを終えて〕
私たちが望むものは
チョン・ウンジュ

 2016年7月から2018年3月末までの、私のインターン生活が終わりました。私はこのメッセージを書きながら、私がみなさんと出会ったことの意味をもう一度考えています。韓国に帰る私に残ったものは何か。そして、このメッセージを読んでいるあなたにとって私の存在は何でしょうか。
 この1年9ヶ月間を振り返ると、私は本当に多くの行動に参加しました。7月19日に初めて参加した毎月の19日行動から、8月の広島・長崎の原水禁大会、9月にあった朝鮮学校無償化の集会、11月の北海道の幌延デー、3月のフクシマ連帯キャラバン行動、5月の沖縄平和行進など、すべてを挙げられないほど数多くの行動に参加しました。
 会場の外にも参加者があふれた集会、暑い暑い夏の日の集会、土砂降りの中の集会、雪が降る冬の日の集会もありましたが、私は、時には参加者として、時にはスタッフとしてあなたと一緒にいました。最初は見知らぬ国で初めて会った人たちとただ一緒にいただけの集会に過ぎなかったのですが、私たちはいつの間にか同志になっていました。今、私は、あなたと私の関係を考えてみます。私たちはこれまでお互いについてよく知りませんでした。海の向こうにいるあなたが私の同志だとは思いませんでした。しかし、私たちは出会ったことで狭かった視野を広げ、自らより大きな世界に一歩前進していくようになった気がします。
 日本に来てわかったことは、「東アジアの平和」はただ一人の努力で作れないように、「東アジアの平和」はあなたと私の関係なしでは作れないということでした。私はこれからあなたと私の関係を同志として理解し、日韓平和運動をともにやっていきたいと思います。そして、こういうふうに作られた私たちの関係は、時間がかかるかもしれませんが、きっと「東アジアの平和」の足場になるでしょう。
 私たちはこれから別の国で暮らしていくことになりますが、私たちが望むのは、いつも平和です。私が日本に来る前も、私たちは同じ運動をやってきたからです。今、私たちは出会いましたが、私たちはもっとたくさんの人たちと会って、もっとたくさん運動をやっていくでしょう。平和はそれを望んでいる人がいれば、いつか必ず実現します。私たちの希望通り実現するでしょう。そして、その日がきたとき、私は日本にいる同志、あなたを思い出します。
(チョン・ウンジュさんは平和フォーラムのインターン留学生として来日しました)

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