2019年、ニュースペーパー

2019年05月09日

ニュースペーパー2019年5月



世界の核兵器数の変遷 1945年~2018年
 冷戦終了以降、世界の核兵器は大幅に数を減らしました。現在の数は、解体を待つ「退役核」をふくめて14,485と推定され、その93%は米国とロシアのものです。2017年7月7日には核兵器禁止条約が採択され、批准国が増えていく一方で、米国、ロシア、インド、パキスタンなど核軍拡の動きも強まっています。核兵器の減少スピードも遅くなってしまいました。上の積み上げ棒グラフは、「米国科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセンとロバート・スタン・ノリスの情報などをもとに作成したものです。2018年現在、9,335発の核兵器が軍事配備・備蓄中(退役核を除く)、グラフでは下から米国とロシア、その上にイギリス、フランス、中国、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮の分が積み上がっています。核兵器国の他、日本政府も何故か「安全保障のため」に核兵器が必要との論理をとっていますが、地球上に約1万もの大量の核兵器を保有しなければいけない理由はどこにあるのでしょうか。〈9ページに関連記事〉

インタビュー・シリーズ:144
軍備管理から人道的アプローチへ 核軍縮の現在
NGO「ピースデポ」副代表 高原 孝生さんに聞く

たかはら たかおさんプロフィール
 1954年生まれ。東京大学法学部卒。明治学院大学国際学部教授NGO「ピースデポ」副代表。専門は軍縮を中心とした国際政治学、平和研究。

─中距離核戦力(INF)撤廃条約廃止についてどう思いますか。
 それが世界にもたらす影響について、トランプさんはどこまで考えてくれているのでしょうか。圧倒的な状況形成力を持っている大国の指導者は、相応の責任意識を持ってもらわないと、困ります。INF条約には象徴的な意味があります。それまで未曾有の拡張・拡散を続けてきた核軍備について、初めて実体を伴った軍縮を取り決めた、画期的な条約でした。トランプ政権の新しい核政策は、まさに歴史を逆転させるものです。今後、いま以上に危険な軍拡へと、時代が雪崩を打って突き進んでいくのをおそれています。「いま以上に」と言いましたが、既に世界の核戦力の現実は、何が起きてもおかしくないような状況なのです。核兵器禁止条約成立を推進したのは、まさにこの現実を直視するからこその、危機感の共有でした。そうであるだけに、大きな方向性を見失わず、粘り強い努力を続けることが大事です。そして、すかさず好機をつかむことです。

─目の前に、どんなチャンスの要素があるでしょうか。
 冷戦期につちかわれてきた軍備についての考え方、いわゆる軍備管理論の限界が、はっきりと見えてきています。
 体制のイデオロギーからいって共存ができないような両陣営が、莫大な数の核兵器をお互いの喉元に突きつけ、にらみあっていたのが冷戦でした。核戦争になれば世界が破滅します。核兵器を手放さないまま、お互いの滅亡を避けるために案出されたのが、軍備管理論です。今日の問題は、第一に、これを継承しようとしない勢力が権力を握り、政策を推進していることです。
 すでにブッシュ政権の時代に「ユニラテラリズム」という表現がありましたが、トランプの「アメリカファースト」は、それに輪をかけたものです。合意の積み重ねを一方的にないがしろにし、国際協調、国際組織をハナから馬鹿にしている。まずは、このことから生じる問題があるわけです。同時に、軍備管理論じたいが持っていた限界性も、浮かび上がってきているので、そこに着目すべきだと考えています。

─冷戦期のアメリカでは核戦略論が発達したと聞いています。多くの人がとらわれがちな「抑止論」も、その一種ですね。
 ここでは同列に考えて差し支えありません。それらの基本的な特性は、思考を軍事の世界に限るところにあります。軍事領域でのコミュニケーションを通じて、対立国との関係を安定させようとするのです。冷戦当時には、これに一定の合理性がありました。膨大なエネルギーが注がれたので、それなりの知的なゲーム的魅力もあるため、未だに信奉者が出てきます。が、現実の国家間関係は、むろん軍事レベルだけではありません。冷戦が終わり、かなりの程度に価値観を共有し、相互依存、相互浸透が進んだ今日のような国際社会においては、その発想にとどまっていては、視野が限定され、クリエイティブな思考が妨げられてしまうのです。
 よく仏独が例としてあげられますが、かつて宿敵として互いに戦争を準備していた諸国でさえ、とくに先進諸国同士では、もはや将来の戦争を想定しないような関係に進化しているのが今日の世界です。英独や日米もまた、ことさらに「同盟」と言いつのらなくとも、お互い戦争をするなんて、もはや考えもしないような関係になっていると言って間違いはないでしょう。

─いわゆる「不戦共同体」ですね。
 そうです。歴史和解を含め、そういった平和秩序を東アジアにうちたてることを目指そうではないですか。私たちが持つべきなのは、将来ヴィジョンです。欧州などは戦後、意識的に戦争の克服を追求してきました。仏独の場合もそうでしたが、たいへんな国内の反対論を乗り越えて、政治的なイニシアチブが発揮されてきたのです。次の世代に戦争を繰り返させてはいけないという、国境を越えた政治家たちの連帯が、そこにはありました。日本国憲法の平和主義は、その意味で同じ歴史の方向を向いています。そして、軍事主権への執着を捨てることこそが核時代の現実に沿うことだ、というのは、まさにラッセル=アインシュタイン宣言のメッセージでした。
 ところが、国家は戦争をするものだという古い仕組みが核時代の今日も残っています。軍隊を維持し、兵器産業を支える既得権益の構造が、強固に存在しています。それを正当化する「外敵の脅威」論法も人々の耳目に馴染みやすく、これらが妨げとなって、どんどん新しくなる技術的条件に、社会が追いついていないのが現状だと言えます。

─技術的条件といえば、ロボット兵器や、サイバー攻撃なども、問題になっていますね。
 AIの時代に、20世紀型の軍事力は、ますます時代錯誤になっていくでしょう。必要なのは、従来の発想を飛び越えたアプローチです。それが逆説的に、トランプのような人から出てくることもあるわけです。大統領に就任するにあたって「核兵器が使えないなら、どうして持ちつづけなくてはいけないのか」と彼は繰り返し問うたそうですが、それ自体は、まっとうな疑問ではないでしょうか。まさしく最近の朝鮮半島情勢の展開は、軍事的対峙のデッドロックから脱却するダイナミズムを示しかけているのですから、日本のような国は、そこをつかまえて、側面援助するのが「国益」にかないます。
 INF条約に話を戻すと、トランプも言っているとおり、中国やインド、パキスタンがこの枠組みに入っていません。だからダメなのだというのなら、逆に、それでは入ってもらいましょう、という話にできるはずです。中距離核の何がいけないのか、なぜ廃絶されなくてはならないと考えられたのか、INF条約が結ばれた根拠をとらえ返しむしろ印パ、中国の心ある人々に納得してもらう方向で、働きかけていくことです。それは、核兵器を持っていないけれども、核戦争になったら確実に被害を受けることになる日本のような国から、堂々と発信されてよいのです。まして被爆国なのですから。

─核情勢では、インド・パキスタンが懸念されますね。
 本当に危ないです。両国の反核派と連帯して、核軍備を推進する人たちを押さえ込んでいかなくてはなりません。とくにパキスタンの反核派は、困難な条件の下でがんばっています。
 印パの「限定的な」核戦争によって起きるシミュレーションは、核兵器禁止条約を強く後押ししました。空中で爆発した広島、長崎の原爆と異なって地上で炸裂する核ミサイルは、すさまじい放射能汚染と気候変動をもたらし、おそるべき「核の飢饉」がおとずれます。
 このことを、いまアメリカで力を増している民主党の若手の人たちに、しっかり認識してもらうとよいと考えています。彼ら、彼女たちは、気候変動に対して、鋭い感覚を持っていますから。

─グリーン・ニューディールを言っているオカシオ・コルテスさんたちですね。
 圧倒的な所得格差だけでなく、女性に対する不当な扱い、マイノリティ差別といった問題に対決する彼女たちには、若者からの広範な支持があります。銃規制も大きな課題として意識されています。
 人間の尊厳を掲げた開明的な勢力による民主主義の再生が各国で課題となっているのですが、国際政治、外交の世界をどう民主化していくのかという前世紀からの問題が必ずしも十分に意識化されていません。
 今の核兵器の危険を直視することは、その一つの手がかりになるでしょう。戦争は最大の環境破壊であり、核戦争は気候変動に直結するのですから。今、大統領選挙に向けて名乗りを上げている多くの候補は、核兵器禁止条約の「人道的アプローチ」に共感してくれる素地を持っています。広島・長崎からの訴えを、この人たちにインプットするチャンスです。

─世界の核廃絶への動きはどうですか。英仏、核実験地はどうですか。
 来年のNPT再検討会議に向けて、中東の情勢から目を離せません。前回は、中東の問題で、土壇場で合意文書を採択できなかったのです。イラン核合意を維持できるかどうか、湾岸諸国への原発の導入が核拡散につながるおそれがないか、今回のイスラエル総選挙で極右政権が存続することになったのは痛恨事でした。
 イギリスが最初に核兵器国として、核の放棄に進んでくれないかと願っています。下院で数十議席を占めて存在感を増すスコットランド国民党は、反核ですね。フランスの中でも核兵器自体に批判的な国会議員が出てきており、新しい動向です。今年の欧州議会議員の選挙に注目しています。
 マーシャル諸島をはじめ、核実験の被害に遭った人たちのことが、核兵器禁止条約でも言及されています。こうした被害者の存在抜きに、核兵器の発達はなかったのです。核兵器国はこの問題に十分に向き合うことができていません。
 広島・長崎の被爆の人間的悲惨は、まだまだ世界の人たちに十分知られているとは言えないのです。これを伝えること、そして、第五福竜丸展示館がリニューアルオープンしましたが、同時にビキニ事件を知ってもらうことも、私たちの課題です。戦後、2000回以上の核実験が地球を汚染してきた歴史を再認識することが、非常に重要です。それは少数者を抑圧し周辺化してきた核時代を反省することでもあります。核兵器は、被爆者、被害者の視点で考えないと間違う。この10年の人道的アプローチが拓いてきた道は正しいし、拡げるための条件はあります。そこは、今後も原水禁運動に期待しています。

インタビューを終えて
 INF条約がなくなり、印パ対立など核軍拡、核戦争の危機が進む一方、アメリカで民主主義再生をめざす新たな勢力の胎動、人道的アプローチによる核廃絶への動きがあり、核被害者の視点からの運動を作り上げることが課題です。
(藤本泰成)

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安倍さんにていねいに説明してもらいたい
辺野古に関するいくつかのことがら

 安倍政権は繰り返し「普天間の危険性の除去」のため、その米海兵隊・普天間基地の代替地として「辺野古が唯一」であると述べています。では、なぜ沖縄県内移設なのか。防衛省は「海兵隊の運用では、日常的な活動をともにする組織の近くに位置」(『防衛白書』平成30年版290頁)することが必要だとして、辺野古の新基地建設を押し進める理由を説明しています。しかし、この説明だけでは、とても「県民のみなさまにていねいな説明を行い、ご理解を得ていく」ことにはなっていません。
 ここでは、海兵隊の運用と抑止力の問題や環境にかかわる問題について、周知のことも含めて改めて取り上げていきます。

抑止力はユクシ?
 沖縄の海兵隊について、ジャーナリストの屋良朝博さんは、次のように指摘します。(『辺野古問題をどう解決するか』岩波書店より。()内は筆者加筆)
 「米軍再編で海兵隊は大幅削減が決まっており、(沖縄に残る部隊も)遠征隊だけになる。沖縄滞在は1年のうち半年にも満たない」。
 そして海兵隊がアジア太平洋での展開について重要視しているのは、人道支援・災害救援の点であり、海兵隊の存在は「中国、インドを国際訓練に巻き込むことで、日本政府が言うような対中抑止力というよりは、軍事外交を通した宥和政策に取り組む安保維持装置としての位置づけ」と述べています。
 つまり、米国の戦略にとって「辺野古が唯一」ではまったくなく、「軍事には軍事を」という安倍政権の冷戦思考が、かえって地域の安全保障環境を微妙なものにしている姿が浮かび上がります。

法治国家は放置国家?
 沖縄防衛局が「私人」に成りすまして、国土交通大臣に審査請求した行政不服審査。結局、石井啓一国交大臣は、沖縄県の埋め立て承認撤回を取り消す処分を下しました(2019年4月5日)。「国民」を救済する制度である行政不服審査制度を悪用・濫用した政府の行為については、すでに多くの行政法学者並びに法学者から批判の声が上がっています。
 その他、台風の被害で土砂積み込みができない本部の塩川港に代わり民間の琉球セメントの港から搬出した、県への届け出をしない目的外利用の問題をはじめ、埋め立てに使用している土砂も、県と事前協議することなく土砂に含まれる細かい粒径の「細粒分」の割合を勝手に変えて投入するなど、行政手続きを無視した国の蛮行が繰り返されています。
 政府は県に対しては、法や制度をねじ曲げてでも厳しく当たっていますが、米国に対しては極めて甘いです。
 米軍は基地の設計をする上で統一基準を定めています。基地周辺の一定以上の高さの建造物があるところには基地を造らないようにしているのです。しかし予定される辺野古基地周辺には、この基準を上回る建造物(学校や郵便局などの公共施設もある)が多数あるのです。しかし、政府は「統一基準には適用除外の規定がある」として高さ制限を超える建物があっても問題ないとうそぶいています。しかし、規則というものは、当然に適用除外の範囲や条件など決めているものですが、米軍と日本政府は、そこを一切明らかにしていません。

外来種も入り混じった生物多様性?
 大浦湾の軟弱地盤の地盤改良のため、政府は認めていないものの、報道では砂杭を約7万7千本打ち込み、それに必要な砂は東京ドーム5.5杯分に当たる約650万立方メートルにものぼると指摘しています。これだけの大量の砂は、とても沖縄県内ではまかないきれず、県外の砂、それも海砂が持ち込まれることになります。
 海砂の採取は、底性の動植物とともに海底の砂を根こそぎ掬い取る方法がとられます。そうすると、採取地においては、底性生物を食する生物に影響を与え、食物連鎖にかかわる生態系のピラミッドが崩れていきます。
 この海砂を沖縄の海に持ち込むことはどうなのか。当然に温帯に属する生物が亜熱帯の沖縄に持ち込まれるわけで、これも沖縄の海の生態系のバランスを崩します。
 さらに、予定されている地盤改良にための工法は2種類あり、1つの工法では砂ではなく、砕石や鉄鋼スラグ、コンクリート廃材などを使用する可能性もあります。この場合も、沖縄県外にいる特定外来生物の持ち込みだけでなく、スラグ、廃材に含まれる有毒物質の溶出によって沖縄の自然に多大な影響を与える懸念があります。
 長年、瀬戸内海で調査を続けてきた湯浅一郎さん(ピースデポ共同代表・海洋物理学)はこれらの点を問題視し、海の自然環境の破壊と漁業の衰退に警鐘を鳴らしています。また、1992年の地球サミットを契機に生物多様性条約が国連で採決され、日本政府もこれに賛同して、生物多様性基本法、生物多様性国家戦略をつくってきたことを指摘しています。
 まっとうな政府ならば自ら率先して、生態系や自然環境の保全に努めなくてはならないはずです。しかし県外の土砂の搬入を含め、今後新たに可能性として出てきた、海砂やスラグなどの搬出、地盤改良工事は、明らかに同条約並びに法律、国の定めた方針に反することでしょう。
 砂の採取地でも搬出先の沖縄でも環境への多大な影響があるこの辺野古新基地建設は断念すべきなのです。
 政府はどうこたえるのでしょうか。
(近藤賢)

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新たな危険性問題が浮上したオスプレイ
星野 潔(オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会・作業委員)

普天間配備から6年半以上が経過したオスプレイ
 2012年10月に普天間基地にMV-22オスプレイが12機配備されてから、今年の春でほぼ6年半が経過した。普天間には2013年9月に12機が追加配備され、2018年にはCV-22オスプレイ5機が横田基地に配備された。さらに、2024年頃までに残り5機のCV-22を配備する予定だという。
 陸上自衛隊もオスプレイ導入を進めている。2013年12月閣議決定の中期防衛力整備計画に、14年度から18年度までの間に「ティルトローター機」、すなわちオスプレイを17機取得することが明記され、15年度から18年度にかけて政府予算に購入費が計17機分計上された。福島みずほ参院議員が2018年12月に防衛省に尋ねたところ、このオスプレイ17機分、2836億円は既に支払い済みという。ただし、今のところ国内での具体的な配備場所が決まらず、カネは払ったものの完成した機体も引き渡されず米国に置かれている状態だ。

払拭されない安全性への疑問
 多くの反対の声を無視して配備され、既成事実化が進められてきたオスプレイだが、その安全性は確認されていない。
 2016年12月、沖縄県名護市沖へのMV-22墜落事故は記憶に新しい。2017年1月にはイエメンで「ハードランディング」事故を起こし、同年8月には普天間基地所属のMV-22がオーストラリア沖で着艦に失敗し墜落した。同年9月にも、シリアでMV-22が「ハードランディング」事故を起こした。
 詳細は不明だが、米空軍安全センターHPによれば米2018会計年度にCV-22が2件、クラスA事故を起こしている。オスプレイの緊急着陸を報道などで耳にする機会も多い。
 事故の多発にもかかわらず、日本政府は2012年の普天間配備の際に安全性は確認済みだと頑なに主張し続けている。普天間配備以降に起きた事故について独自に分析して対応するのではなく、米軍の「説明」をそのまま受け入れているのだ。
 とは言え、不安の声を無視できなくなったのか、2018年12月に「オスプレイの安全性について」という新たな文書がひっそりと防衛省HPに掲載された。そこには、「米側の調査報告書や事故への対応を鑑みれば、オスプレイの機体の安全性について問題はない」との認識と、以下の5点が安全評価の根拠として挙げられている。

  1. 民航機も採用している確立された技術を導入し、操縦士の負荷が適切に軽減された操縦性能
  2. 十分な運用実績を有し、安全性が確認されているエンジン
  3. 十分な整備が可能であり、高い信頼性が確認されている「ナセル」
  4. 飛行に重要な各種機能は補完性が幾重にも確保されており、万が一の際もバックアップ可能
  5. 高度にシステム化されて、人的ミスが起きる可能性を局限している機体整備

 しかし、これらは説得力に欠ける。一つ一つ詳しく論じるスペースは無いが、これまで事故が起きるたび「人的ミス」が原因とされてきたこと、エンジントラブルも起きていること、名護市沖の墜落事故では片方のプロペラ破損のバックアップが可能でなかったことなど、疑問点だらけだ。機体の構造的問題を無視している点も問題だ。

浮上した放射性物質問題
 現在木更津でスバルがオスプレイの整備業務を行っているが、米軍は別の場所で同様の業務を行う企業をもう一社公募するための説明会を2019年2月に厚木基地で行った。その際、オスプレイ整備業務には放射性物質管理が必要であることが明らかになった(リムピースHP及び琉球新報3月14日を参照)。
 さらに琉球新報は3月22日に、オスプレイの機体に放射性物質の劣化ウランとトリチウムが「バランスを取る重りとして」使われていることを報じた。
 「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」では、3月26日の外務省・防衛省交渉で、「記事の内容は事実か。放射性物質とはどのようなもので、どこに使われているのか。整備業務に当たる労働者への危険性についてどのように認識し、対策をとっているのか。また、(中略)事故の際に市民及び環境に放射性物質特有の被害が生じる危険性があるが、それについてどのように認識し、対策をとっているか」と質問した。
 しかし、その席での防衛省の回答は疑問に答えるものではなかった。「航空機のエンジン点火装置に放射性物質が使用されていることは一般的」だ。それ以外の使用は「我々としては承知して」いない。使用部位について「すでに問い合わせたか、あるいは今後問い合わせるかについては今この場では」差し控える。「整備に従事する事業者は(中略)法令の規定に基づいて原子力規制委員会に必要な届出を行うなど適正な管理をしている」、と言うだけだった。
 機体に構造的欠陥を抱えたオスプレイが放射性物質を使用しているのであれば、危険はさらに大きなものとなる。日本政府は日本社会に暮らす人びとの安全を守るためのものではないのか。米軍の危険行為を規制するための取り組みを粘り強く続けていこう。
(ほしのきよし)

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効かない健康食品 危険な健康食品の見分け方
科学ジャーナリスト 植田武智

 機能性表示食品とは2015年4月から新たに導入された制度で、企業が自己責任で食品の機能性を表示できるという制度です。その代わりにその科学的根拠となる情報を消費者庁に届け出する必要があります。届出された情報は一般に公開されます。
 ただ機能性表示食品はあくまで企業の自己申告。消費者は情報をうのみにせず、注意深く届出情報を吟味する必要があります。なかなか情報を読み込むのは大変ですが、特に現段階で手を出さない方が良いものの見分け方が一つあります。
 企業が自社の最終製品で検証せず、既存の論文を検索することによる評価(システマティックレビュー)で届出ているもの。特にレビューの対象とした論文が1~3件程度と極端に少ないものが要注意だと言えます。
 特に問題だと思われるのは、原材料の企業がレビューのデータセットをそろえている場合です。その例としてキユーピーの「ヒアルロン酸」があります。ヒアルロン酸の肌の保水効果をうたった商品が10件届出されていますが、証拠のデータはすべてキユーピーが提出したものと同じもの。トクホの様に申請ごとに臨床試験を求める場合には商品数が増えるごとに、検証されることになります。しかし今回のヒアルロン酸のケースでは証拠データは1種類の使い回しなので、新たな検証がされず商品数だけが増えていくだけです。本来システマティックレビューとは、すでに多くの研究結果が示されている成分について、総合的に判断するもの。申請企業だけの研究が数件しかない場合に使うべきものではありません。自画自賛的システマティックレビューの商品には要注意です。

頻発している健康食品による肝障害
 効かないだけならまだよいのですが、中には逆に健康を害する健康食品もあります。2017年8月3日に独立行政法人国民生活センターは「健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります」という注意喚起を発表しました。ドクターメール箱という医師がセンターへ直接通報する制度で、9件の「健康食品の摂取による薬物性肝障害」が報告されています。
 消費者へのアドバイスとして、「健康食品の摂取により、まれに薬物性肝障害を発症することがあります。『倦怠感』『食欲不振』『発熱』『黄疸』『発疹』「吐き気・嘔吐」『かゆみ』などの症状が見られ、症状が持続する場合は、摂取を止めて速やかに医療機関を受診しましょう」と呼びかけています。
 薬物性肝障害とは、文字通り薬物が原因で肝臓の機能が障害を受けること。肝機能障害の原因としては従来、肝炎ウイルスや、アルコールが指摘されてきましたが、最近の全国調査では薬物性肝障害は急性肝不全の約15%を占めていると指摘されています。
 医薬品が原因で発症するケースが多いのですが、1997年~2006年の10年間の調査では、健康食品が原因の薬物性肝障害が全体の10%を占めるようになっています。
 特に、健康食品が原因となる薬物性肝障害の場合、発見が遅れがちになります。処方薬が原因の場合、医師がこまめに血液検査をするため発見されやすいわけですが、健康食品の場合、よほどの症状が出てからでないと病院に行かないので、1年一回の定期健診か他の病気での検査で偶然見つかるしかありません。
 通常は原因となった薬や健康食品を止めれば回復しますが、劇症肝炎や急性肝不全など重症化し、最悪死に至るケースもあります。また急性症状が出ないため、発見が遅れ、健康食品を漫然と摂り続けた結果、慢性肝炎から肝硬変となって見つかる例もあります。


健康食品の制度

トクホや機能性表示食品でも被害が
 健康食品には、大きく分けて国が認めたものと認めていないもの2種類があります。国が認めたものとは、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3種類です。
 それ以外のサプリメントや健康食品は、行政用語で「いわゆる健康食品」と言われ、そもそも健康への特別な効果は表示してはいけないものなのです。ただ実際には、サプリメントなど錠剤やカプセル状の商品を、この味や触感がたまらないと言って食べている人はおらず、普通は何らかの効能効果を期待させているから摂取しているわけで、もともと違法な食品群なのです。
 それら「いわゆる健康食品」は速やかに販売禁止にするべきです。しかし現実には健康食品事業者の多くは、一部の商品でトクホや機能性表示食品として販売しながら、後残りの多くの商品を、違法な健康食品として販売し続けています。この異常な状態を抜本的に改善しない限り、健康食品による健康被害はなくなりません。
 一方今回の国民生活センターの注意喚起の中には、特定保健用食品の粉末青汁での肝機能障害の事例も報告されています。また目のピント調節をうたう機能性表示食品を摂取して肝機能障害が起きた事例も重大事故として消費者庁が発表した事例もあります。つまり国が認めた健康食品でも健康被害は起きているということになります。
(うえだたけのり)

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「県民の意見で決めたい!」
女川原発2号機の再稼働の是非を問う県民投票条例直接請求運動
宮城県護憲平和センター 事務局長 菅原 晃悦

民意を直接反映出来る「県民投票」条例
 地元新聞の河北新報社が行った世論調査によれば、女川原発2号機の再稼働については、県内の有権者の約7割が「反対」でしたが、東北電力は女川原発2号機の再稼働の準備を進め、規制委員会が早ければ2018年8月にも事実上の「合格証」を出し、11月議会で知事の同意の流れが予想されており、民意を無視した原発再稼働に至る心配がありました。
 私たち県民は、全てが東京電力福島第一原発事故による放射能漏洩の被害者です。生活圏への放射能の漏洩により理不尽かつ不幸な事態を経験してきました。特に、子どもたちの「長期的健康影響」の心配が消えることはなく、未来のこどもたちに対し、安全対策を強化し原子力エネルギー継続の道を選ぶのか、放射能リスクを回避し再生可能エネルギーに切り替えていく道を選ぶのか、責任を持った選択が求められていると考えてきました。
 そこで原発再稼働に関しては反対でも賛成でも、「県民の意見で決めたい」ということで、2018年1月、県護憲平和センターも参加して「女川原発再稼働の是非をみんなで決める県民投票を実現する会(略称:みんなで決める会)」を立ち上げました。

直接請求の法的制限を乗り越えて
 直接請求を行うためには、有権者の2%以上の有効署名が必要になりますが、署名収集には以下の多くの制限があり、当初は労働組合で取り組むことは困難に思われました。
 (1)署名の収集は請求代表者、若しくは、請求代表者に委任された受任者に限定。(2)署名は、代筆や回覧・郵送が禁止。(3)受任者の署名収集は、自らと同一選管内の方に限定。(4)署名は、氏名などの他、生年月日の記入が必要など、労働組合の躊躇が予想されました。
 しかし、「再稼働の是非をみんなで決める」運動に参加できる方法を検討し、県選管と「事前運動の制限がない」、「冊数制限がない」、「1冊の署名簿に署名欄6筆分(家族対象)でも形式が整っていれば有効」を確認し、取り組みに参加してきました。


2019年2月8日の本請求

法的制限と組織的な課題
 県護憲平和センターの取り組みの基本を、(1)組合員に受任者を引き受けて頂く。(2)受任者は、個人情報を考慮し家族を対象に署名を集めて頂く。(3)国家公務員については、家族に受任者を引き受けて頂く。(4)事前運動期間を最大限活用し、県護憲へ受任者の事前登録を最大限行っていく。
 以上の方針に基づき、筆数的には限定的となりましたが、「家族とだけでも原発について話をする」ことを内部的な獲得課題として、県内10ブロック二周、三周に渡る説明会の開催、労組や退職者会などの説明会の開催などこれまでにない取り組みとなりました。もちろん取り組みには濃淡がありましたが、原発再稼働への意志を表明しにくい労組でも「原発に賛成・反対ではない」ということで取り組んで頂いたり、退職者の自宅を一軒一軒回って署名収集を頂いた退職者組合、また、個別には「居住地自体の異なる家族や友人に対して受任者を引き受けて頂いて署名を収集した」など多くの財産が出来たと思います。

「原発反対」から「みんなで決めよう」へ
 取り組みに参加した市民団体・個人は、原発に反対する皆さんがほとんどです。そのため、「賛成でも反対でもみんなで決めよう」と確認しても、「原発反対」の思いがにじみ出てしまうことから、運動の広がりをくり返し確認する中で、「県民の意志を議会に届けよう」、「宮城の民主主義を成熟させよう」という取り組みにつながったと思います。
 こうした市民運動の皆さんの力は、連日の街頭署名や戸別訪問など、労働組合とは比較にならない程の取り組みが行われ、提出要件の2%を大きく上回る、有効署名筆数11万1,743筆(有権者の5.75%)を達成し、県議会へ2月8日に条例の本請求となりました。

直接請求運動の成果を実感
 10月2日から二か月間で協力をいただいた11万人を超える県民の署名の力は、議会に「ていねいな審査」、「重く受け止める」との判断を促し、43年ぶりに連合審査会での条例案審議となりましたが、残念ながら委員会採決、本会議での採決は、自公が多数を占める議会構成を覆すことが出来ませんでした。
 しかしながら、「原発事故がもたらした被害」については県議会の中であらためて確認され、「安易な再稼働の合意」に歯止めをかけられたと実感しています。加えて、一人ひとりの思いを政治に届ける大切さを、拡げることが出来たのも大きな成果と感じています。
(すがわらこうえつ)

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マーシャル諸島 終わりなき核被害のなかで
竹峰誠一郎(明星大学教員)

 米国の核実験場とされた中部太平洋のマーシャル諸島では、水爆「ブラボー」が爆発した3月1日は、核被害を思い起こし追悼するための国の公休日に指定されている。水爆「ブラボー」実験だけでなく、米国がマーシャル諸島で実施した67回におよんだすべての核実験を思い起こす日となっている。
 「最後の被爆地」と言われる長崎への米原爆投下から、1年にも満たない1946年7月には、マーシャル諸島では核実験が開始された。1958年8月にかけて、ビキニとエニウェトク両環礁で米核実験は実施された。マーシャル諸島の米核実験の延べの爆発威力は、広島型原爆の7200発分にもおよぶ。
 米核実験によって生じた「慰めることができない深い悲しみ、恐怖、怒り、それらは時が解決し得るものではない。適切な補償がなされず、残留放射能の汚染除去の問題に米国が対応する意思を示さないこと、そして、われわれの生命、海、土地に対する米核実験による終わりなき影響に真摯に向き合わない米国の姿勢は、問題をより深刻化させている」。2017年3月1日、首都マジュロで開催された記念式典でマーシャル諸島共和国の女性大統領ヒルダ・ハイネが挨拶に立ち述べた言葉である。

「決着済み」と追加補償に応じない米国
 マーシャル諸島は、30年におよぶ日本統治のなかで、太平洋戦争の戦場となり、その後、米国が施政権を握り、核実験が実施された。1982年に米国との間で自由連合協定が締結され、マーシャル諸島は米施政権下から脱した。
 自由連合協定は1986年には発効し、米国はマーシャル諸島に核実験被害補償として1億5千万ドルを支払った。しかし、同時に米核実験補償問題は「完全決着」と規定された。マーシャル諸島政府は、2000年から核実験補償の追加措置を繰り返し求めてきた。だが補償問題は「決着済み」であると、現在に至るまで何らの進展を見せてはいない。
 毎年3月には、ビキニの人びとの移住先の島で「ビキニデー」が開催される。ビキニの人びとが核実験により自らの土地から立ち去ることを余儀なくされた、1946年3月を起点に、その前の日本統治のことにも触れながら、核実験で移住を強いられ、今なお故郷に戻れない自らの歩みが想起される。さらに未来に向けて、ビキニ選出の国会議員エルドン・ノートは、移住先の「私たちの島は沈むかもしれない」と、2017年3月のビキニデーで述べた。ビキニの人びとの移住先となっている島にも、海面上昇の問題が迫っている。
 ビキニとともに核実験場となったエニウェトク環礁には、直径約111メートル、高さ約8メートルの「ルニット・ドーム」と呼ばれる巨大なコンクリート製のドームがある。そこには、エニウェトク環礁の除染で集められた汚染土壌が格納されている。1979年建造コンクリートドームであり、老朽化に海面上昇が重なり、ルニット・ドームの浸水や破壊が憂慮されている。
 「ルニット・ドームに汚染物質は流し込まれたが、その底に遮蔽する物は何も敷かれなかった。汚染物質はすでに漏れ出している。米国立リバモア研究所さえも認めている」と、エニウェトク環礁選出国会議員のジャック・アーディングは憤る。エニウェトク環礁には帰還した住民がおり、そのまま居住し続けていいのか、米政府と独立した日本などからの科学者による調査を、同国会議員は求めている。米国が核被害を認めているビキニ、エニウェトク、ロンゲラップ、ウトリックの四つの地域ですら、継続する核実験被害に対する補償措置がとられないなか、米国が核被害を認定していない地域は、ますます不可視の存在となっている。

求められる核被害に対する正義と公正
 筆者が繰り返し訪れているブラボー実験の爆心地から東南525キロ離れたアイルック環礁も、米国が核被害を認めていない地域である。だが機密解除された米公文書上には、同地も被曝し、米国側が、当時住民の避難を検討し、のちに健康管理措置を検討していたことが確認できる。「ポイズン(毒)」の影響は今もアイルックにはあり続けていることが、住民の口からは語られる。
 核被災は時が解決してくれるものではないのである。核災害の永続性ともに、その後も付加される被害、さらに未だに顧みられない問題のなか、どう未来を切り拓いていけばいいのだろうか。国レベルでは、「マーシャル諸島核委員会」(NNC)が、大統領府のもと立ち上がった。2017年には「核の遺産」をテーマにした国際会議が、マーシャル諸島政府主催で開催された。市民レベルでは、マーシャル諸島の米核実験の歴史と現状を自らが学びつつ、未来世代の子どもたちに伝え、さらに国境を超え、米国をはじめ、世界にも伝え分かちあっていこうとするNGO「リーチミー」も立ち上がっている。「復興」や「再生」という言葉はマーシャル諸島では聞かれない。核実験は、気候変動の問題とともに、米国にさらに国際社会に「正義/公正」(Justice)を求める問題なのだと、ヒルダ・ハイネ大統領は語る。
(たけみねせいいちろう)
【参考文献】『マーシャル諸島終わりなき核被害を生きる』竹峰誠一郎新泉社、2015年

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世界の核状況―米ロの核軍拡競争へ?

 4月29日から5月10日までニューヨークの国連ビルで「核不拡散条約(NPT)」2020年再検討会議準備委員会が開かれます。以下、その参考のために、世界的に定評のある「米国科学者連合(FAS)」の『世界の核戦力の状況』(2018年11月更新)のデータを見ておきましょう。ハンス・クリステンセンとロバート・スタン・ノリスが米国核専門誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(BAS)』の連載記事「ニュークリア・ノートブック」や「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」の年鑑で提供したデータを整理し、適宜更新しているものです(ノリスは、昨年10月、「自然資源防護協議会(NRDC)」時代以来31年間かかわってきたBAS誌連載記事共著者としての活動に終止符を打ちました)。
 FASは、世界の核弾頭の総数を約1万4485発と推定しています。この93%が米ロのものです(右図参照)。1986年のピーク、約7万300発と比べると減っていますが、まだ非常に高いレベルにあると言えます。政府関係者は大幅削減だと強調するが、削減の圧倒的な部分は1990年代に起きているとFASは指摘しています。旧ソ連崩壊前後のブッシュ大統領(父)の核削減イニシアチブによるものです。
 下の表にあるように総数のうち、実際に配備されているもののほか予備などを含む「軍用保有核」が約9335発、残りは退役して解体待ちのものです。解体待ちの状態の退役核は、米国が約2650発、ロシアが約2500発です。(米国は他に、核弾頭の芯の部分(プルトニウム・ピット)2万個以上、水爆部分のセット約4000発分をそれぞれテキサス州パンテックス工場とテネシー州Y-12工場に保管しています。)世界の「軍用保有核」のうち、約3750発が運用状態にある「配備核」です。このうち米、ロ、英、仏の合計約1800発が短時間で発射可能な「高い警戒態勢」(ハイ・アラート)状態に置かれています。大半は米ロのものです。米国の配備非戦略核(戦術核)というのは、欧州5ヵ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコ)の6基地に配備されているB61型核爆弾(約150発)を指します。

米ロの核戦力制限の条約消滅?
 米国は2月2日、米ロによる射程500~5500㎞の地上発射弾道・巡航ミサイルの開発・配備を禁じた1987年「中距離核戦力(INF)」全廃条約の破棄をロシアに通告しました。ロシアの地上発射巡航ミサイル「9M729」が条約に違反しているからというのが米国の説明です。ロシアも同日破棄の意向を表明しており、同条約は規定に従い6か月後の8月に失効と見られています。
 また、配備戦略核を制限した新「戦略兵器削減条約(START)」(2011年発効)が21年2月に失効します(上限:運搬手段700基、弾頭1550発)。5年間の延長が可能ですが、残された期間は2年足らずです。その間に同条約のような相互査察などの検証措置を定めた新たな条約が締結できる見込みは乏しく、条約延長もできないとなると両国間の核戦力に関する法的拘束力を持つ制限がない状態になると懸念されています。そうなれば、1972年以来のことです。米国は条約延長に積極的な態度を示してなかったのですが、ポンペオ米国務長官が4月10日、上院の公聴会でロシアと延長のための予備協議を始めたと述べており、協議の行方が注目されます。


(「核情報」主宰 田窪 雅文)

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《投稿コーナー》警察権力による組合つぶし
全日建関西生コン支部への不当弾圧を許さない!
関生支部弾圧事件弁護人 太田 健義

止まらない再逮捕と追起訴
 関生支部に対する刑事弾圧については、すでに3月号で、全日本建設運輸連帯労働組合の小谷野書記長が投稿されていますが、その後にも弾圧は続いています。投稿記事では、2019年2月5日の逮捕者まで記載してもらっていますが、その後さらに、湖東生コン協組事件で、2月18日に組合の執行委員が逮捕され、そのまま恐喝未遂罪で起訴されています。
 さらに驚くべきことに、4月11日、執行委員長と副執行委員長が新たに滋賀県警に逮捕されました。2人は、2018年8月に上記の湖東生コン事件で逮捕・起訴されていたのですが、それから8ヶ月も経ってからの滋賀県警による再逮捕ということになります。滋賀県警だけでなく、大阪府警も関生支部役員や組合員に対する逮捕・起訴を繰り返し、滋賀と大阪での関生支部組合員に対する延べ逮捕者は、58名にも上ることになります(関係者も含めれば64名)。
 しかも、大津地裁の裁判では、私が担当している組合員ともう1人の組合員に対しては、検察官が法廷で、4月に3回目の追起訴をすると明言しました。4月12日時点でまだ逮捕はされていませんが、在宅で起訴される可能性は消えていません。さらに、2月5日に逮捕・起訴された組合員についても、追起訴は未定とされており、今後の動きについては予断を許しません。

共謀を理由として認められない保釈
 3月号の権力弾圧事件一覧の内、2018年9月18日と10月9日の事件で起訴された8名は、幸いにも起訴直後に全員が保釈されました。しかし、同事件を主導したとして2018年11月21日に逮捕・起訴された3名は(4名中1名は不起訴)、共謀を理由にして、未だに保釈が認められていません。
 また、2018年8月と2019年2月に湖東生コン協組事件で逮捕・起訴された組合員については、執行委員などの肩書きのある組合員は、保釈が認められない傾向にあります。
 肩書きのある組合員については、事件を主導したとして、それぞれが共謀をするおそれがあることを理由に、保釈が認められないという状況が続いています。

滋賀県警により繰り返される異様な再逮捕
 事件を担当している弁護士も、相次ぐ再逮捕で事件を上手く整理出来ていないのが実情ですが、滋賀での度重なる追起訴は異様というほかありません。
 2018年8月の湖東生コン協組事件での逮捕容疑と2019年2月の同事件での逮捕容疑は、ほぼ全く同じです(厳密には、2019年2月の逮捕容疑では、現場が1箇所増えています)。要は、2018年8月以降に委員長他の役員を逮捕・起訴しながら、半年近くも経ってから、16名もの組合員を新たに逮捕・起訴しているのです。
 これだけでも滋賀県警による再逮捕は異様と言うほかありませんが、上記のとおり、委員長と副委員長が4月11日に再逮捕されましたが、産経新聞によれば、その容疑は今から約4年も前の1000万円の恐喝です。委員長と副委員長は、湖東生コン協組事件で昨年8月に恐喝未遂罪で逮捕・起訴され、順次公判廷で検察側証人の尋問が行われて、ほぼ検察側立証が終了し、保釈の可能性が出てきたところでした。滋賀県警は、そのような段階になって、またもや2人を再逮捕したのです。
 委員長と副委員長の身体拘束を不当に長期化させるためだけの再逮捕と言うほかありません。


大阪府警前での抗議行動

組合員に対する不当な働きかけ
 滋賀県警は、不当な再逮捕を繰り返しているだけでなく、取調べにおいても、組合員に対して組合からの脱退勧奨を行うだけでなく、組合員の家族に対しても不当に接触を試み、家族から脱退を勧めさせようとしてきました。私が担当した組合員については、本人の母親や息子にまで、滋賀県警が接触を試みようとしてきました。今回の滋賀県警の行いは、犯罪捜査などではなく、とにかく組合員を関生支部から脱退させることに主眼を置いているようにしか見えず、まさに組合潰しの動きとしか思えません。

これからについて
 湖東生コン協組事件で2019年2月に逮捕・起訴された組合員については、追起訴は未定とされていますし、委員長と副委員長については、4年も前の事件で今頃になって再逮捕されたことからすれば、今後も関生支部組合員に対する弾圧が続くことが予想されます。しかし、ここで弾圧に対してひるむことは、まさに弾圧に屈することになり、絶対にあってはならないことです。
 弁護団としても、組合員の早期の身体拘束からの解放と最終的な無罪獲得のために、努力を惜しみませんので、皆さんからのご支援もよろしくお願い致します。
(おおたたけよし)

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加盟団体の活動から(第15回)
憲法擁護を核心的目的とする法律家集団として
社会文化法律センター 弁護士 小川隆太郎

 社会文化法律センター(以下、「社文センター」)は、1976年1月17日に革新的弁護士150名が全国から結集して設立された。その目的は、日本国憲法を擁護し、活かす立場に立って、同様の価値観を有する諸政党と協力し、平和と人権を守るために活動することである。
 設立時の会報誌によれば、発会式にもかかわらず「本センターが抱え込んだ問題」について真剣な討論がなされ、予定時間を1時間もオーバーして終了したという。伊達秋雄理事長(当時。安保条約を違憲とした砂川事件東京地裁判決の裁判長)によれば、「革新団体の動向は極めて複雑であり、それとつながりをもつ弁護団活動も、簡単に割り切ってしまい難い面のあることは否定できない。しかしそれぞれの立場上に多少のニュアンスがあるとしても、法律家であれば憲法とその一貫体系下にあるべき法を擁護するという一点においては、各人は共通性を持ち、共闘体制を組むことができるはずである。」とのことであり、当時の苦労が伺われる。
 社文センターは、設立後、民主・平和的な現行憲法を擁護し、革新的基盤に立つという旗色を鮮明にし、人権問題・護憲運動において積極的役割を果たした。設立から10年後には会員数は400名を超える法律家集団となっていた。無料法律相談を開催して個別の法的紛争に対処しつつ、沖縄等の米軍基地問題、原発問題、労働問題、刑法改悪問題、国家秘密法、外国人問題、司法反動問題、薬害問題などの分野で立法政策にも取り組んでいた。
 設立10年目にあたって伊達理事長は言う、「法律と政治とは、それぞれに固有の性格機能をもち、背離の様相をみせることもありうる。(…)政権を目指すかぎり、現実の民意を汲み、他面、他の政党との連合を図るために、それなりの妥協をしなければならない場合もあるであろう。(…)われわれはそのことに全く理解を示さないほど狭量ではない。政治が最後の決定権をもつことも知っている。それにもかかわらず、われわれは法律家の良心として、法の正しい解釈を大胆に指し示すであろう。それが法律家の使命であり、長い眼でみれば、それが政治を正しい軌道に乗せる所以であろうと思う。」。
 現在、憲法を取り巻く状況は切迫しており、自民党・公明党は改憲に向けて憲法審査会の開催を目指していると言われる。具体的な審査内容は明らかではないものの、9条に自衛隊を明記する「安倍加憲」や緊急事態条項が中心となろう。いずれも現行憲法の原則を揺るがし断固として許すことは出来ない。そうでなくても解釈改憲などによって、憲法は空洞化することになる。我々は、憲法擁護を核心的目的とする法律家集団として現在の社会状況に強い危機感を持ち、改憲を阻止し、平和と人権を守るための諸活動に取り組む。
(おがわりゅうたろう)

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〔本の紹介〕
『82年生まれ、キム・ジヨン』
チョ・ナムジュ 著、斎藤真理子 訳/筑摩書房刊(2018年)

 財務省事務次官によるセクハラや東京医科大学の入試差別など、昨年性差別が大きな問題となった。「女性活躍」をうそぶく安倍政権だが、その実態はあまりに醜い。一方で、こうしたニュースに接したとき多くの男性は他人事のように感じてはいないか。しかし性差別というのは社会に深く根ざしたものであり、わたしたちも気づかないうちに加担してしまっているのだ。そうした現実に気づかせてくれるのが、韓国の小説『82年生まれ、キム・ジヨン』である。
 この小説の主人公は、キム・ジヨンという1982年生まれの女性だ。物語は主人公の半生を中心に進む。キム・ジヨンの人生はいたって平凡なものだ。特別不幸な立場にあるというわけでもなく、家にはそれなりの経済力があり、本人も思春期をIMF経済危機の真っただ中で過ごしたにもかかわらず、ソウルの大学を卒業し中堅企業に就職するなど、むしろ恵まれたほうかもしれない。しかし、淡々と進むストーリーのいたるところに、女性が避けて通れない差別が潜んでいる。男の子が生めないと姑に謝る母親、男子学生から始まる出席番号、言われたわけでもないのに上司や同僚の分もコーヒーをいれる女性社員、そして結婚・出産を機に退職を余儀なくされキャリアを絶たれる。いくら女性の社会進出が進んだとはいえ、性差別がいまだにこの社会に深く根をはっているということに気づかされる。小説とは思えない、まるでルポルタージュのような描写が続くのだが、だからこそリアリティを感じることができる。わたしもこの小説を読みながら、「当たり前」と思われていることがどれだけ女性を生きづらくさせているのか、改めて気づかされた。
 多くの女性の共感を得た本作は韓国で100万部を超えるベストセラーとなり、女性議員が文在寅大統領に献本するなど大きな社会現象となった。映画化や海外での翻訳出版も決まっている。日本でも既に翻訳出版されており、13万部を超える異例のベストセラーとなっている。女性はもちろん、男性にも読んでほしい本だ。そういうわたしも「平和フォーラムの人権担当のくせに読んでないのか?」と連れ合いに言われて、やっとページを開いたのだが。
(パクスンハ)

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核のキーワード図鑑


火山も原発NOの噴火で再稼働に反対を

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復帰47年 5・15平和行進 ピース・アクション2019

日時:5月16日(木)~19日(日)
場所:沖縄県内主催:5・15平和行進実行委員会
協力:フォーラム平和・人権・環境

安倍9条改憲を許さない、 安倍内閣の退陣を要求する5・19行動

日時:5月19日(日)14:00~15:00
場所:衆議院第2議員会館前
主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会
   戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

「示そう 辺野古NO!の民意を」 全国総行動5・25国会包囲

日時:5月25日(土)14:00~15:30
場所:衆議院第2議員会館前
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
  「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委員会
   基地の県内移設に反対する県民会議
※全国各地で連帯行動が取り組まれる予定です。

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