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平和軍縮時評11月号 沖縄周辺での米海軍の新たな動きと中国海軍-米海軍の掃海艦と原潜活動の活発化   湯浅一郎

2010年11月30日

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1. 佐世保の掃海艦の倍増と先島諸島への寄港

 米海軍の戦闘艦が海外に配備されているのは、日本の横須賀と佐世保だけであると言って差し支えない。その一つ、佐世保の米海軍基地には、強襲揚陸艦「エセックス」やLCAC(エアクッション型強襲上陸用舟艇)を搭載するドック型揚陸艦など4隻の揚陸艦が配備されており、強襲揚陸艦部隊の海外で唯一の拠点となっている。1996年、そこに「ガーデイアン」「パトリオット」という2隻の掃海艦が配備された。米海軍で最も手薄の部隊が、機雷の設置や撤去を任務とする掃海部隊であると言われるが、その後、佐世保に配備された両艦は、海上自衛隊の掃海艇との共同演習をくり返してきた。例えば、毎年2月中旬に行われる瀬戸内海の周防灘での日米共同掃海演習には必ず参加し、演習の前後に呉の海上自衛隊桟橋に自衛隊の掃海艇とともに寄港することが恒例のごとくなっている。
 その佐世保で、2009年12月、掃海艦が更に2隻(「アベンジャー」、「ディフェンダー」)、追加配備され、計4隻に倍増した。米海軍は、14隻の掃海艦を有するが、そのうち4隻が佐世保に配備されたことになる。言うまでもなく海外に米掃海艦が配備されているのも佐世保だけである。これにともなって、第一掃海群の司令部が第七掃海群司令部に名称変更し、佐世保に移駐した。これは注目すべき動きである。このことから、近年、東シナ海や黄海における掃海活動が、米軍の戦略において極めて重視されてきていることが示唆される。
 そうした動きと連動して、沖縄本島から更に南に位置する先島諸島への米艦船、それも佐世保配備の掃海艦の寄港が始まった。まず2007年6月24~26日、佐世保の掃海艦「ガーデイアン」「パトリオット」の2隻が与那国島に寄港した。先島諸島に米艦船が寄港するのは戦後初めてのことで、地元からは強い反対の声が上がった。その後、09年4月3~5日、石垣島に前年と同じ2隻が、さらに2010年9月21~24日には宮古島に09年、佐世保に配備されたばかりの「ディフェンダー」が相次いで寄港している。どれも「友好親善」「乗員の休養」が表向きの目的であるが、掃海艦ばかりが寄港している所に何らかの軍事的な意図が示されていると考えざるをえない。佐世保を出航した掃海艦は、沖縄南方の先島諸島への寄港の前後に、通過する東シナ海周辺で重要な任務を遂行していると見るべきであろう。

2. 急増する沖縄ホワイトビーチへの米原潜の寄港

米攻撃型原潜の日本への寄港状況(1990年から~)

 米掃海艦の先島諸島への寄港が始まったのと軌を一にして、沖縄東海岸の中部にあるホワイトビーチへの米国攻撃型原子力潜水艦(以下、原潜)の寄港が急増している。図に1990年からの米原潜の日本への寄港状況の変遷を示した。米原潜の日本への寄港地は、横須賀、佐世保、そしてホワイトビーチの3カ所に限られる。横須賀、佐世保での寄港が最近は減少傾向にあるのと対照的に、07年以降、沖縄が急増していることが目につく。ホワイトビーチでは、06年までは年間寄港回数が17回以下であったが、07年に24回、08年は41回に跳ね上がり、09年も32回と、そのまま高水準で推移している。
 もともと、沖縄への寄港は10分から50分という短時間の沖合停泊の形をとった寄港が多いことが特徴である。05年は16回中の11回(69%)、06年は16回中の12回(75%)、07年は24回中の17回(71%)、08年は41回中の34回(83%)、09年は32回中の28回(88%)が短時間の沖合停泊である。沖合停泊の比率は、最近数年、ますます高くなっている。
 例えば08年、沖縄で41回を記録した原潜寄港の中身を分析すると、14隻の原潜による繰り返し入港であることがわかる。入港を5回にわたり繰り返した原潜が4隻いる。つまり、4隻で寄港の約半分を占めている。また、5回のうち4回が沖合停泊で用を足している。他の寄港地を含めると、08年の合計61回の寄港は、同じ14隻によって行われている。しかし、他の港では沖縄のような繰り返し入港は見られない。5回の繰り返し入港に関わった4隻のうち3隻(パサデナ、アッシュビル、ハンプトン)は改良ロサンゼルス級で、1隻(ヘレナ)はロサンゼルス級である。改良ロサンゼルス級は機雷敷設能力を備えている。
 一般に日本に寄港する米原潜には日本近海での任務遂行中のものとインド洋、ペルシャ湾における任務遂行の往路あるいは復路に寄港するものがあると考えられる。短時間の、しかも繰り返し寄港は、前者に属するものと考えられる。このような寄港の実態は、これらの原潜が沖縄の近隣海域で任務を行っていること、その任務は、通信には適さない大容量のデータの授受など、短時間でも頻繁な寄港を必要とするものであることを示唆している。

3. 中国海軍の近代化への対応か?

 米掃海艦の佐世保配備の倍増と先島諸島への寄港、そして、沖縄における原潜寄港回数の増加は、上記のような特徴と沖縄の地理的な位置を考えると、中国海軍の近代化に米海軍が対抗しようとしている姿の表れとみることができる。
 近年、中国海軍の近代化に関する米軍の警戒心は極めて高い。それは、表面化している現実への警戒と同時に、情報不足、あるいは米国流に言えば「透明性の欠如」に起因する警戒心がある。それを伺わせるいくつかの文書がある。第1は、2010年2月1日に公表された最新の「4年毎の国防見直し」(以下、QDR=Quadrennial Defense Review)である。QDRの全体像については、別の機会に紹介するが、中国軍の近代化、特に海軍力強化の意図に多くの懸念と疑問を呈している。QDRから中国を意識した部分を引用してみる。
 「中国は、軍近代化計画の速度、規模、及び最終的目標についてごく限られた情報しか公表しておらず、長期的な意図に関して多くの正当な疑問があがっている。」
 また、地域における「協力関係の強化」の太平洋に関する記述において、「出現しつつあるアクセス禁止/立ち入り拒否の能力に対応して、米国、同盟国及び協力国の資産と権益を保護し、確保するために、我々は、この地域における米軍部隊と施設の弾力性を向上させる」としている。
 中国は、継続する経済成長に伴い、08年には世界第2位の軍事費を持つに至っている。核兵器数が増えているのは中国だけである。そして、とりわけ海軍力の沿岸から沖合への進出、原潜の行動の活発化、空母の建造計画など海軍力の強化が進んでいる。その中で、特に東シナ海、台湾海峡において「アクセス禁止/立ち入り拒否」戦略を取ろうとしている。米QDRは、名指しこそしていないが、この点を強く意識していることがわかる。
 このことから東シナ海の出入り口に近い先島諸島への米掃海艦の相次ぐ寄港は、「アクセス禁止/立ち入り拒否」戦略への対抗措置としてとらえることができる。「米国が恐れているのは、東シナ海や台湾海峡で、この地域における米軍の戦力投射の中心を担うべき原子力空母や対空防衛・ミサイル防衛艦が近づくことができないよう、中国軍によって聖域にされることである」(沖縄タイムズ、2010年9月22日、識者評論―梅林宏道)。その際、最も厄介なのが潜水艦と機雷である。こうした情勢を受けて、米掃海艦が東シナ海周辺における活動を活発化させ、先島諸島への寄港が増えていると考えられる。
 もう一つ重要な文献が、09年8月に米海軍諜報局が公表した「中国的特徴をもった近代的海軍」と題する中国海軍に関する報告書である。これは、日本周辺における米軍の行動を理解する手掛かりを与えてくれる。
 米海軍の主要な関心の一つに中国の潜水艦戦力の近代化がある。中国の潜水艦戦力は台湾海峡における米軍のプレゼンスを脅かす重要な脅威になると考えているからである。同報告書によると、中国は現在3隻の弾道ミサイル発射戦略原潜、6隻の攻撃型原潜、53隻の攻撃型ディーゼル潜水艦を保有しているが、この潜水艦の活動が活発化している。そこで米海軍は中国海軍の実態把握に相当なエネルギーを投入し、とりわけ中国の潜水艦の動向把握に対して、隠密行動のできる原潜を投入していると考えられる。
 報告書から、米海軍は、中国潜水艦に対する音響測定や追跡任務を行い、中国潜水艦の活動地域や騒音レベルに関する情報を分析していることがわかる。とりわけ、潜水艦の型式ごとの騒音レベルが、技術提供を受けてきたロシアの潜水艦とも比較しながら示されている。このようなデータ収集は、日本を拠点に行われているはずである。これが、とりわけ沖縄への短時間の米原潜の寄港が急増している理由であろうと考えられる。以上より、本報告書に提示されているデータの存在は、米原潜の沖縄への寄港目的を示す傍証となっている。

4. 新たな冷戦を作り出してはならない

 沖縄周辺における米海軍の原潜や掃海艦の新たな動向は、共に中国の海軍力の強化と、その不透明性に対抗する米軍戦略の表れと見ることができる。日本政府が、海上自衛隊の潜水艦増強や先島諸島への陸上自衛隊の配備計画を打ち出している背景には、こうした米軍戦略があることは明らかである。
 しかし、このような軍事的な対立構造の強化は、相互に軍拡を導き、軍事緊張を高めることしか結果しないであろう。軍事力により安全保障を担保するという思想に縛られている限り、安全保障ジレンマの悪循環を無限に繰り返すことにしかならない。その先に見えるのは、悪循環の回路から抜け出せない未来だけである。マスコミを含め、いたずらに中国の脅威をくりかえし強調することは、北東アジアの平和と安定にとっては、マイナス要因を作ることにしかならない。新たな冷戦構造を生み出さないためにも、多国間の対話と協調による信頼醸成を作り出し、共通の安全保障の枠組みを形成するための冷静で粘り強い外交努力を始めることが急務である。
 なお本稿は、ピースデポの情報誌「核兵器・核実験モニター」第319~20号、第346号(梅林宏道著)を参考に再構成したものである。

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