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平和軍縮時評3月号 オスプレイ配備と運用の現状 ―配備撤回に向けた今後のために  塚田晋一郎

2013年3月30日

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   沖縄の普天間飛行場に米海兵隊MV-22オスプレイ12機が配備されてから、約半年が経過した。今年の夏頃にはさらに12機の普天間配備が計画されており、また来年以降、米空軍特殊部隊仕様のCV-22オスプレイの嘉手納基地への配備の計画がある。
   本稿では、昨年10月のオスプレイ普天間配備の前後から現在までの流れとその問題点を改めてまとめる。

オスプレイ12機の普天間配備
   昨年7月23日に山口県の岩国基地に陸揚げされた12機のオスプレイは、約2か月間の様子見ののち、10月1日から6日にかけて、五月雨式に沖縄県の普天間飛行場に飛行移動した。防衛省の定義によると、その時点では普天間への「移動」であり、「配備」は計画された訓練等が開始され、本来任務を開始した時点を指すようであるが、本稿では一般的に使われているように、普天間に移動した時点をもって「配備」と記すこととしたい。
   普天間配備の直前の9月27日から30日にかけて、普天間飛行場周辺では、オスプレイ配備への市民らによる抗議行動が行われた。昼夜を通して行われた座り込みにより、9月29日には普天間飛行場の全てのゲートの封鎖に至った。「全ゲート封鎖」は、沖縄でも史上初めてのことであったと言われている。
   座り込みには、市民のみならず沖縄選出の国会議員や、地元自治体議員らも参加していた。しかし、9月30日、沖縄県警による強制排除が実施された。ゲート前に停められていた車両はレッカー移動された。こうしてゲート封鎖は、開始から4日間で解除されるに至った。その模様は、インターネットで生中継されたことにより、多くの人々がリアルタイムに「目撃」することとなった。

9・19日米合意―「安全」を宣言
   オスプレイ普天間配備から2週間前の9月19日、日米両政府は合同委員会を開催した。ここで両政府は、オスプレイの安全性は問題ないとし、沖縄や日本でのオスプレイの運用に関する合意を行った。

   防衛省による「日米合同委員会議事録(仮訳)」の冒頭には以下のようにある。

「モロッコにおけるV-22及びフロリダにおけるCV-22の最近の事故に関し,日本国政府は,合衆国政府から提供された調査報告書を主体的に検証し,日本国政府独自の分析評価報告書に基づいて,類似の事故の再発を予防するため,これらの事故から得られた教訓として次の再発防止措置を特定した。」

   そしてこれに続き、日本政府が米政府に再発防止策として、主にパイロットの操縦技術に関する6つの項目を挙げ、これを「要請した」と書かれている。しかし、配備より以前から明らかになってきたことは、日本政府には米政府からオスプレイの機体情報や運用方法等の詳細について、ほとんど何も知らされてこなかったという事実である。
   日本政府が「要請した」とする6項目にある技術的内容は、基本的に米政府の提供情報をそのまま鵜呑みにしただけのものに等しく、日本側として新たに何かを要請したとは言い難く、ただ「要請した」という既成事実を作ることにしかなっていない。モロッコとフロリダにおける米側の事故調査報告書はいずれも、事故原因を「パイロットによる操縦ミス」であるとし、「機体に欠陥は認められない」とした。日本側が「独自に」調査した報告書も、これをそのまま踏襲したものになっている。
   しかし、世界初の実用ティルトローター機であるオスプレイは、従来の航空機と単純比較できない機体構造の複雑さを抱えている。垂直離着陸から転換、そして航空機モードでの飛行に入るまでの間、コンピューターによる自動制御とパイロットによる操縦が複雑に切り替わる。時として、微妙な機体制御を必要とする場合にも、フライトコンピューターがパイロット指示を受け付けない場合もあるという。
   そうしたオスプレイ特有の構造の功罪も含めて検証せねばならないはずであり、「操縦ミス」で結論付け、「オスプレイの機体には問題はない」とする報告書は信用に足る情報を提供しているとは言えない。

   さらに、日米合同委員会議事録によると、日本政府は、

「日本国政府は,MV-22が,既存の場周経路からオートローテーションによって安全に普天間飛行場へ帰還する能力を有することを確認したい。」

   とし、これに対し米政府は、以下のように回答している。

「オートローテーションが必要となる極めて想定し難い事態において,パイロットは飛行場内に安全に帰還するためのあらゆる措置をとる。」

   日本政府はこれまで、「米政府からは、オスプレイはオートローテーション機能を有していると聞いている」、と述べてきた。しかし、この日米合同委員会でのやり取りにおいては、米政府は「オートローテーションを行う」とは言わず、「あらゆる措置をとる」としている。この言い回しは、オスプレイを開発したベル/ボーイングによるオスプレイの普及資料「オスプレイ・ガイドブック」における既述と似通っている。
   ガイドブックでは、「オスプレイがオートローテーションできないというのは『神話』であり、オスプレイが空中で2基のエンジンが同時に停止することはあり得ないが、仮にそうなった場合、航空機モードに転換して滑空することで安全に着陸する」との記述がある。ここでも「オートローテーションを行う」とは言っていないのである(そして仮に「滑空」が可能であった場合にも、ヘリモードからの転換にかかる最短の12秒間で、約488メートルの高度を失うため、「安全に着陸する」ことは到底不可能である)。
   日本国内においては、オスプレイ配備計画が広く知られるようになって以来、その安全性の最たる懸念要素である、「オスプレイはオートローテーションできるのか?」ということが常に議論の中心になってきた。配備推進論者は「できる」と言い、反対派は「できない」とし、いわばその繰り返しの水掛け論のようになっている。
   しかし確かなのは、その能力を示す確証たる情報がないということである。加えて、前述のとおり、オスプレイは、米国内でも日本においても、軍民問わず一般的なヘリコプターには必須要件とされるオートローテーションは「不要」とされている、という事実である。

   9・19日米合同委員会合意のいわば「本体」とも呼ぶべきである、「覚書」には、沖縄および日本でのオスプレイ運用に対する安全規制に関し、以下のように書かれている。
   「できる限り人口密集地上空を避ける」、「可能な限り水上を飛行する」、「夜間訓練飛行は、必要な最小限に制限される」、「運用上必要な場合を除き、米軍の施設及び区域内においてのみ垂直離着陸モードで飛行し、転換モードで飛行する時間をできる限り限定する」、「低空飛行訓練は地上から500フィート(約150m)以上の高度で飛行する。ただし運用の安全性を確保するために、その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」。
   下線で示したように、ほぼすべての規制項目に、遵守義務を回避する「抜け道」が書き込まれている。この合意は、米軍の行動を制限するという意味においては、残念ながら「無意味」に等しい。たとえ米側がどのような運用をしようとも、「訓練上やむを得ない場合を除き、合意を順守している」と言い逃れることができ、また日本側としては、「合意を遵守するよう、米側に働きかけ続ける」と、これまで通りに言えば、この合意は「遵守」されたことになってしまう。こうした合意を結んだ日米合同委員会のあり方は、まず問われる必要がある。
   しかし、実際にオスプレイに頭上を飛ばれる沖縄や、全国の「低空飛行訓練ルート」下の住民にとっては、言うまでもなくオスプレイの安全性は死活問題である。住民・市民の生命と安全を守る自治体としては、この日米合意の「抜け道規定」にとらわれることなく、「合意を遵守せよ」との要請を、日米政府に対して行う必要性が出てくる。

沖縄県による調査―2か月で318件の「合意違反」
   2012年12月25日、仲井真弘多沖縄県知事は「オスプレイに関する確認について」と題する要請書、を沖縄防衛局および外務省特命全権大使(沖縄担当)宛てに送った。同文書の添付資料に「オスプレイ飛行実態の目視調査結果(集計表)」がある。これは、普天間飛行場にオスプレイが配備された2012年10月1日から、11月30日までの期間の県内におけるオスプレイの飛行目視情報を、沖縄県としてまとめたものである。
   沖縄県のこの調査結果により、上述の日米合同委員会合意で定められた運用に、少なくとも318件の違反があったことがわかった。市街地上空でのモード転換や、学校、養護施設、上空での飛行、「環境レビュー」で使用されないとされた滑走路でのタッチアンドゴー、基準値を超える騒音など、多くの被害が確認されている。
   これに対しても、米側は「最大限配慮して運用しており、合意を遵守している」との反応に終始し、日本政府も実質的な改善要求をしていない。前述したような9・19合意の弊害が、昨年10月の配備直後からすでに現れているのである。

開始された日本本土での低空飛行訓練
   3月6日から8日にかけて、「環境レビュー」に明記されていた日本各地に米側が設定した「低空飛行訓練ルート」での訓練が初めて実施された。海兵隊による当初の発表は、九州の「イエロールート」を用いるとのことであったが、福岡県の陸上自衛隊日出生台(ひじうだい)演習場で陸自が射撃訓練を行うことを理由に、前日の3月6日に急遽、紀伊半島~四国にまたがる「オレンジルート」が使用されることとなった。2つのルートの自治体は、オスプレイが頭上に飛来するということで、対応に追われた。
   3日間にわたる初の低空飛行訓練は、岩国基地を拠点として、夜間訓練も含めて実施された。「環境レビュー」のとおりであれば、今後毎月のように、日本全国のいずれかのルートで低空飛行訓練が実施されることになる。オスプレイ配備以前に、これらのルートでは米軍機による低空飛行訓練が日常的に行われており、1994年の高知県・早明浦ダムでの墜落事故をはじめ、騒音被害や衝撃による建物の倒壊等、これまでに多くの実害が出ている。

   オスプレイの低空飛行訓練は、こうした日本全国で日常的に行われてきた米軍機による低空飛行訓練を改めて問題化し、問うていく契機にもなる。そしてこの契機を、沖縄からのオスプレイ撤退や、延いては沖縄に基地が集中する現状を変えていくための糸口としたい。ピースデポでは、昨年10月から今年2月にかけて、全国226の自治体に対し、「オスプレイ配備に伴う米軍機低空飛行訓練に関するアンケート」を実施した。この調査により、全国における最近の米軍機の飛行実態や、自治体のオスプレイに対する姿勢が明らかになってきた。今後、日本全国的な取り組みが、自治体との連携もできうる範囲で模索しながら、展開されてゆくことに期待したい。
   冒頭に述べたように、これまで述べたオスプレイに関する現状は、まだ「入り口」でしかない。この夏にはさらに12機のMV-22が普天間に配備され、さらに来年以降、嘉手納に空軍特殊作戦部隊のCV-22が10機程度配備されることが計画されている。一連の計画日程では、これらの「配備パッケージ」が完結するのは、2016年頃になることが見込まれる。今後とも、この問題を注視し続けていきたい。

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