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平和軍縮時評1月号 米海軍、横須賀の空母交代を発表―「原子力空母の母港」を再度問う契機に  塚田晋一郎

2014年1月30日

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はじめに

   米海軍は、2015年夏に、横須賀基地を母港として配備している米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が整備に入ることに伴い、現在米本国を母港とする「セオドア・ルーズベルト」と交代させる予定である。本稿では、米海軍等による空母交代の発表や、米議会調査局(CRS)の報告書等から、2012年以来「アジア太平洋重視」を打ち出しているオバマ政権の海軍力に関する戦略との関係性にも触れたい。
   現在米国が保有し、運用している空母は10隻で、そのすべてが空母「ニミッツ」を1番艦とするニミッツ級である。ニミッツ級空母は、2つの原子炉から動力を得る原子力空母だ。つまり、現在米国が保有している現役空母は、そのすべてが原子力空母ということになる。現在、世界に存在する原子力空母は、米軍の10隻と、フランス軍の「シャルル・ド・ゴール」1隻の計11隻である。空母を保有する国自体が10カ国程度しかないことを考えても、米国の軍事力が、海軍力のみでもいかに突出しているかがわかる。
   また、米空母10隻のうち、「前方展開部隊」として、海外を母港として配備しているのは、横須賀のみである。この事実は、沖縄や岩国に「前方展開」している海兵隊と併せて、国際的な客観性の視座から見るとき、「日米同盟」の異常さを改めて問うものともなる。
   さらに、本稿では深追いしないが、「中国の海洋進出」という言葉自体が、さも「悪行」であるかのように報じられ、受け入れられているとみられる日本の現在の社会的空気は、冷静な議論の上に注意深く検証されなければならないことは言うまでもない。

米海軍、横須賀の空母交代を発表

   2014年1月14日、米海軍太平洋艦隊(第7艦隊)は、横須賀基地を母港とする空母「ジョージ・ワシントン」を、「ロナルド・レーガン」に交代させることを発表した。

「合衆国海軍は本日、空母USSロナルド・レーガン(CVN76)が日本のUSSジョージ・ワシントン(CVN73)と交代し、日本の横須賀の第7艦隊前方展開海軍部隊(FDNF)の一員となることを発表した。太平洋艦隊の海軍プレゼンスを高めるリバランス戦略の一環として、USSセオドア・ルーズベルト(CVN71)はバージニア州ノーフォークから、サンディエゴへ移動する。」(米太平洋艦隊広報局)

※訳注:CVNは原子力空母を指す記号(" Carrier Vessel, Nuclear"の略)。test

   「ジョージ・ワシントン」は、2008年9月に、最後の通常動力空母「キティー・ホーク」との交代で、横須賀を母港として配備された。ニミッツ級原子力空母の退役寿命は約50年であり、就役から約25年で1度のみ核燃料の交換を行う。今回、「ジョージ・ワシントン」は核燃料交換のために、バージニア州・ニューポートニューズ造船所へ移動する。
   米海軍は、現在カリフォルニア州・サンディエゴ(太平洋側)を母港とする「ロナルド・レーガン」が横須賀に転出することに伴い、「セオドア・ルーズベルト」が、バージニア州・ノーフォーク(大西洋側)から、サンディエゴに移動する計画も発表した。そしてそれは「リバランス」戦略の一環であるとしている。同日付の「星条旗新聞」によれば、これらの交代時期は15年夏を予定しているという。

「リバランス」戦略と空母の配備状況

   2012年1月の「国防戦略指針」によって、オバマ政権は「アジア太平洋重視」を打ち出した。(「核兵器・核実験モニター」第394号、12年2月15日)
   さらに同年6月、パネッタ国防長官(当時)が「アジア安全保障会議」(シャングリ・ラ対話)において、戦力の再調整(リバランス)によるアジア太平洋へのシフトを再確認し、海軍力の6割をアジア太平洋地域に振り分ける方針を示した。(「核兵器・核実験モニター」第404号、12年7月15日)
   表のとおり、米海軍や、それぞれの空母ごとにあるウェブサイトを見る限り、現在の態勢は太平洋側に5隻、大西洋側に5隻だが、整備中の3隻を除くと4対3であり、太平洋の方がすでに多くなっていることがわかる。15年夏に「セオドア・ルーズベルト」が大西洋から太平洋に移った後は、配備中と整備中を合わせた空母の隻数で見ると太平洋に6、大西洋に4となり、「アジア太平洋に6割」の方針とも符合する。
   また、表の下に注記したとおり、米政府はさらに3隻の新型「フォード級」原子力空母の建造計画を進めている。16年にはその1番艦となる「ジェラルド・R・フォード」が就役予定である。これによって、現在の一時的な10隻態勢から、元の11隻態勢への復帰が計画されている。

米空母の現状と将来計画

   現在の米海軍の空母は何隻存在し、それがどのように運用されているのかについて、米政府の一次資料を見ながら押さえておきたい。それらの一端が、13年10月22日付の米議会調査局(CRS)の報告書「海軍フォード(CVN-78)級空母計画:議会のための背景と論点」に整理されている。

「海軍の現在の空母戦力は、1975年から2009年の間に就役した10隻のニミッツ級原子力空母(CVN68-77)から成る。最近までは、海軍の空母戦力は11隻目の空母―1961年に就役した初の原子力空母エンタープライズ(CVN-65)を含んでいた。CVN-65は2012年12月1日に不活性化され、海軍の空母戦力は11隻から10隻に減少した。最近就役した空母、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)(最後のニミッツ級艦)は、2001会計年に調達され、2009年1月10日に就役した。CVN-77は、海軍最後の通常動力空母であるキティ・ホーク(CV-63)と交代した。」

「2012年12月1日にエンタープライズ(CVN-65)が不活性化したことにより、空母は11隻から10隻に減少した。空母戦力は、ジェラルド・R・フォード(CVN-78)が就役し、エンタープライズと交代した時点で11隻に戻る。CVN-78は、当初計画では2015年9月に引き渡しとされていたが、建造が計画より遅れており、海軍は2013年5月、艦の引き渡し日を2016年2月に延期されたことを発表した。」

   このCRSによる報告書には、フォード級の各空母の会計年ごとの予算や建造、就役の見通しも記されている。これらの記述からわかることは、現在配備されている最新艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」(09年就役)の後も、米政府は原子力空母を建造し続けていくというシナリオである。

   海軍が1月に公式発表した「ジョージ・ワシントン」の交代と、米国の保有空母、そして今後の計画を見てきた。そこから読み取れるのは、2012年初頭にオバマ政権が「新国防戦略指針」によって示した「アジア太平洋へのシフト」が具体的に実行に移されているという事実の一端である。また、「福島事態」を経てもなお、「原子力空母は安全」であり、コストパフォーマンスにも優れており、将来にわたって活用し続けるという、旧来と何も変わらない米国の姿である。
   一方で、今後さら米国の財政赤字が膨らみ、もはや「聖域」ではなくなっている軍事費の削減が進めば、空母の保有数を削減する議論も本格化する可能性もなくはない。2013年7月31日、米国防総省は、歳出の強制削減に関する「戦略的選択・管理見直し」と題する報告書を発表した。そこでは、10年間で1兆ドル近い予算削減が予定通り行われれば、米国は空母の保有数削減を検討しなければならず、具体的には、8隻まで減らす可能性があると記されている。
   しかし、仮に空母の数が削減された場合にも、唯一の「前方展開部隊」である横須賀の空母が削減される可能性については、楽観できないものであろう。「米本土防衛」が至上命題であるという考え方に立てば、米本国を母港とする空母を残し、横須賀母港を解消するということも一つのオプションにはなりえるのかもしれない。しかし、「アジア太平洋重視」の指針に立てば、アジアへの「前方展開」は最重要となるだろう。また、日本政府が湯水のように年間約2千億円の「思いやり予算」を米側に提供し続けていることも、米政府が横須賀をはじめとする在日米軍基地を「活用」し続けたいと考える大きな理由になっている。

空母交代を「横須賀母港」を問う契機に

   私たちは今一度、日本の首都圏に位置する横須賀基地に、米海軍の原子力空母が居座り続ける状況を、再度捉え直さねばならない。このままでは、「横須賀母港」は、永続化されかねないからである。
   ニミッツ級原子力空母は、一般的な発電用原子炉よりも圧倒的に濃縮度の高いウラン燃料を使い、ごく短時間で出力を調整可能な原子炉2基を積んでいる。それらの原子炉は、日米地位協定等の取り極めにより、日本の私たちには安全性をチェックしようもない状態に置かれている。そのような原子炉を積んだ空母が、頻繁に演習のために横須賀港を出入りしており、有事の際には戦地へ赴き、そして横須賀に帰ってくるのだ。
   この「東京湾に浮かぶ二つの不安定な原子炉」を、横須賀のみならず、少なくとも首都圏の人々が、自分たちが直面する喫緊の課題であると気付かなければならない。福島のような事態を首都圏に招きかねないのは、原発だけではないのである。来夏の横須賀の原子力空母交代を、日米関係や北東アジアの安全保障という視点、そして、私たち一人ひとりの暮らしとも直結しているという視点、その双方から、改めて問う機会とすべきである。

(参考:原子力空母横須賀母港化を許さない全国連絡会 編(2008)『東京湾の原子力空母』新泉社)

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