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平和軍縮時評7月号 日米ガイドライン改定の布石としての集団的自衛権閣議決定  塚田晋一郎

2014年7月30日

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7月11日、日米防衛閣僚会談

   集団的自衛権行使容認の閣議決定(7月1日)直後の同月11日、小野寺五典防衛相は米ワシントンの国防総省でチャック・ヘーゲル国防長官と会談した。両氏は年内に改定する「日米防衛協力のための指針」(日米ガイドライン)に、集団的自衛権の行使を反映させることでも一致した。
   会談後の共同記者会見で、ヘーゲル氏は「この大胆かつ画期的な(閣議)決定ののちに、国会が法整備を行えば、地域及び世界の安全保障に対する役割を増大させることが可能になります」とし、「アメリカ政府は、この安倍内閣の閣議決定を強力に支持」することを表明した。また、「日本政府の決定によって、日米ガイドラインの画期的な形での改定が可能になります」と述べ、「集団的自衛権に関わる改定及び日米ガイドラインの改定により、ミサイル防衛、拡散防止、海賊対処、PKO、そして様々な演習、また海上安保、人道支援、災害救援等において、更に緊密に協力することも可能になります」と説明した。
   7月1日というタイミングで安倍内閣が閣議決定をした背景には、今年末までに予定される日米ガイドラインの改定というスケジュールがある。今回の日米防衛閣僚会談および共同会見によって、日本が集団的自衛権を行使可能であることを前提とした「画期的な形でのガイドライン改定」が目指されていることが改めて明確となった。
   共同会見でヘーゲル国防長官に続いて会見した小野寺防衛相は、以下のように述べた。「日米の防衛協力のためのガイドラインの見直しについては、現在、日米間で協議中であり、具体的な内容を説明できる状況ではありませんが、今回の閣議決定の内容を十分反映させた、画期的なものになるべく、今後作業を進めていきたいと思っております」。ここでも「画期的」という言葉が繰り返されている。

日米ガイドラインとは何か

   日米ガイドラインは、日本が攻撃された際の自衛隊と米軍の役割分担を記した文書であり、冷戦下の1978年、ソ連の日本侵攻に備え、初めて策定された。97年の改定では朝鮮半島有事を想定し、新たに周辺事態対処の枠組みが整備された*1。78年ガイドラインでは日米防衛協力の範囲を、「極東における事態」としていたが、97年ガイドラインでは「日本周辺地域における事態」となり、極東よりもより広いアジア太平洋地域が対象となった。また、97年ガイドラインにおいては、情報共有などの面で平時からの協力枠組みも強化された。さらに、平時における日米の協力を「より安定した国際的な安全保障環境の構築」のための活動(国連PKOや人道支援活動等)にまで拡大した経緯がある 。
   97年ガイドライン成立以降、日本は周辺事態法や武力攻撃事態法を整備した。こうした動きは、いずれも日米が緊密に協力し、軍事行動を行うための環境整備であった。78年ガイドライン策定においては、米国は日本に対してシーレーン防衛への貢献を求め、日本は77年12月にP3-C 対潜哨戒機とF-15戦闘機の導入を決定した。
   97年ガイドラインでは「周辺事態」への対処方針が盛り込まれ、ガイドラインに基づく措置を実施するための根拠法として、99年に周辺事態法が、2000年に船舶検査法が整備された。また、2000年10月の「アーミテージ・ナイレポート」が日本に集団的自衛権の行使解禁を求めたことは日本に波紋を呼んだ。
   現在、日米両政府が準備を進めている、2度目のガイドライン見直しは、主として中国の海洋進出問題に対応するために、民主党の野田政権が検討し、2012年末の政権交代で安倍政権が引き継いだものである。2012年8月には、「日米同盟―アジア安定の礎石」(第3次アーミテージ・ナイレポート)が発表された。そこに提言として書かれた日本への要求は、5月15日の安保法制懇報告書および安倍首相の会見で示された内容と符合している。

今年のガイドライン改定で何が変わるのか

   さらに小野寺防衛相は、新たなガイドライン改定について共同会見で以下のように言及した。「このガイドラインというのは、あくまでも地域の安全保障を確保する意味で行うわけであり、特定の国、特定の事案を想定して策定するわけではありません。いずれにしても、グレーゾーン事態を含む、平素から緊急事態に至るまでの日米両国が迅速に、シームレスに協力すること、これができる内容にしていきたいと思っております。このようなことから私どもとしては、地域の安全、そして地域の安定、それをもたらすための今回のガイドラインと理解をしていただければと思っております。」
   ここで小野寺氏は、「特定の国を想定しているわけではない」ことと、「地域の安全・安定」ということを強調している。一方、現在の日本政府は、「我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で」という言葉を多用している。安保法制懇報告書でも言及され、同日の安倍首相会見でも、この言葉が集団的自衛権行使へと道を拓こうとする根拠として多用された。最新の防衛白書でも冒頭にこのフレーズが登場している。ここでいう、「我が国を取り巻く安全保障環境」とは、つまり、中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発の進展であることは明白である。
   一方、日本政府の閣議決定を受け、ヘーゲル国防長官は、同日7月1日に発表した声明において、「この決定は、日本が地域およびグローバルな平和と安全保障にさらに貢献することを追求する上で重要なステップとなる」と述べた。また、冒頭の共同会見でも同じように繰り返し述べているとおりである。先の小野寺防衛相が「地域」を強調した一方で、米国としては東アジア地域に限らず、日本のグローバルな「活躍」に期待しているのである。このことは、先に述べたアーミテージ・ナイレポートから一貫している。実際に、集団的自衛権は地理的に何ら制約のかかる概念ではない。行使すべきであると時の政権が判断さえすれば、グローバルにどこにでも自衛隊が派遣されることになる。
   さらに、共同会見でも述べられた「シームレス(継ぎ目のない)」という言葉が、今年末のガイドライン改定のキーワードであることは間違いない。<平時>→<武力行使には至らないグレーゾーン事態>→<有事>という一連の軍事的緊張のエスカレーションの中で、間断なく米軍と自衛隊が緊密に連携し、軍事行動を展開することが目途とされている。「シームレス」という言葉自体は目新しいものではないが、日米ガイドライン改定において改めて位置付け直し、日米の共同軍事行動の実態に反映させていくことが目指されている。日本の集団的自衛権行使はそのためには必須の要件なのである。

ガイドライン改定中間報告に注目を

   現在、今年9月末の国連総会に合わせて開催が予定されている、日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に向けて、ガイドライン改定作業の中間報告をまとめ、年内に改定するスケジュールが進んでいる。そこでは、周辺事態の際などの米軍への武器・弾薬提供や戦闘機への空中給油を可能にするといった対米支援活動の拡大が盛り込まれるようである。これらは現状では米軍の武力行使と一体化する恐れがあるためできないとされているものであるが、今般のガイドライン改定で解禁されようとしているものである。
   今のところ、閣議決定を受けて進められようとしている、集団的自衛権行使のために必要な関連法の改正は、様々な政治日程を避ける意味合いで、来年の前半になるようである。再び集団的自衛権行使に関する政治的な動きが目に見えて表面化するのはその直前になるのであろうか。直接的に集団的自衛権という言葉が見えずとも、直結しているガイドライン改定と、それに関連して進行しうる国内法の改正議論等についても、われわれ国民は注目をし続けていく必要があるだろう。

(※本稿は、筆者が参加する「集団的自衛権問題研究会」の活動の中で執筆した原稿を加筆・修正したものである。)

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