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平和軍縮時評2014年11月号 解散総選挙の前に、安倍政権の安保政策を問う―集団的自衛権、日米ガイドライン、新「宇宙基本計画」  塚田晋一郎

2014年11月30日

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年末の解散総選挙へ

   11月21日、衆議院が解散され、12月2日公示、14日投開票で解散総選挙が行われることとなった。安倍首相による解散の「大義」が問われている。しかし、その目的は、「勝てるうち」に解散総選挙に打って出て、「改めて国民の信を得た政権」となり、任期を延長することであろう。大義などあろうはずもない。

   首相は消費税10%への引き上げ延期の判断と、「アベノミクス」への評価を問うとしているが、消費増税については法律の中に引き上げ判断に関する「景気条項」が当初から盛り込まれており、それに従っただけである。いま消費税を上げることに賛成している政党は存在せず、そもそも争点にはなっていない。また、「アベノミクス」については、仮に安倍首相が言うようにうまくいっており、まさにこれからなのだとしたら、いま必要なのは解散ではなく、その路線を軌道に乗せることではないのか。

   つまりは、今後、国民の多くが反対する政策を進めていこうとしている中で、改めて「国民の白紙委任状」を得ようという算段である。集団的自衛権行使容認の閣議決定に法的根拠を持たせるための関連法改正、日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)の改定、辺野古基地建設の推進、特定秘密保護法の運用、原発再稼働、TPP交渉など、政権運営にとっては厳しい状況が続いていくことは容易に想像できる。それらに加え、来年4月の統一地方選を盤石でたたかうためという政治日程も加わる。「消費税率引き上げ延期判断」と、「アベノミクスへの信を問う」は、政権の延命を狙った解散の口実に過ぎず、まったく理解しがたい説明である。実際に、複数の世論調査において、国民の6割以上は今回の解散に納得していないという結果が出ている。

   本稿では、最近の安倍政権の安保政策を改めて押さえておくために、集団的自衛権行使、日米ガイドライン、新「宇宙基本計画」の策定について取り上げる。

日米ガイドライン中間報告

   10月8日夕、日米両政府は、「日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)の見直しに関する中間報告」を発表した。当初9月に予定されていた中間報告の発表が遅れたのは、7月1日の安倍政権による集団的自衛権行使容認の閣議決定を受け、関連法制備へ向けた与党と政府内部の議論が難航していることが主要因とみられている。

   中間報告の「概要」は以下のとおりである(下線筆者)。

  • 切れ目のない、実効的な、政府全体にわたる同盟内の調整。
  • 日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとること。
  • より平和で安定した国際的な安全保障環境を醸成するための日米協力の強化。
  • 同盟の文脈での宇宙及びサイバー空間における協力。
  • 適時かつ実効的な相互支援。

   また、「指針及び日米防衛協力の目的」には以下の項目が列記された(下線筆者)。

  • 切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応。
  • 日米同盟のグローバルな性質。
  • 地域の他のパートナーとの協力。
  • 日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果。
  • 政府一体となっての同盟としての取組。

   中間報告は全文で5ページにも満たない短い文書であるが、「切れ目のない」と「グローバル」というフレーズが頻出する。また、10月8日の中間報告発表の記者会見の際にも、江渡聡徳防衛大臣は、ポイントは「日本の平和と安全の切れ目のない確保」にあると述べた。

   今回の中間報告には、現行ガイドライン(97年改定)の中心概念である「周辺事態」という言葉は登場しない。周辺事態とは、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(周辺事態法第1条)である。また、99年4月28日、参議院本会議において、小渕恵三首相(当時)は、「周辺事態が生起する地域にはおのずと限界があり、例えば中東やインド洋で生起することは現実の問題として想定されない」と述べた。
   中間報告は、平時から有事に至るまで、「切れ目のない」日米共同軍事行動を行うことを両政府の方針として示した。そして「グローバル」と示された日米防衛協力が、実質的にどのような地域を対象とするのかは明らかでない。

   注目されていた「集団的自衛権」の文言は、中間報告には盛り込まれなかった。しかし、ガイドライン改定にあわせ、日本政府が集団的自衛権の行使容認へと転じていることは明らかである。対米行政協定の改定のために、実質的な憲法解釈の変更を行うという倒錯が起きている。
   国権の最高機関である国会における関連法案審議が始まってもいない段階にも関わらず、ガイドライン改定作業が進行し、このような内容の中間報告が出されること自体に問題がある。さらに言えば、そもそも日米ガイドラインは、2国間において法的拘束力を有しない行政協定の性質の文書である。日米安保条約第4条及び6条の「極東条項」を超える内容を規定し、国会の承認もなされないこの文書は、法的根拠が曖昧である。

「リバランス」と「積極的平和主義」

   改めておさえておきたいのは、7月1日の閣議決定の正式名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」であり、日米ガイドライン改定とコインの裏表の関係にあるという事実である。中間報告の「序文」には、以下の記述がある(下線筆者)。

「指針の見直しは、日米両国の戦略的な目標及び利益と完全に一致し、アジア太平洋及びこれを越えた地域の利益となる。米国にとって、指針の見直しは、米国政府全体としてのアジア太平洋地域へのリバランスと整合する。日本にとって、指針の見直しは、その領域と国民を守るための取組及び国際協調主義に基づく「積極的平和主義」に対応する」

   今回のガイドライン改定は、米側にとっては、軍事費削減を行いながらも世界におけるアジアへの展開を重視する「アジア太平洋へのリバランス」戦略に整合し、日本側にとっては安倍政権が掲げている「積極的平和主義」に対応するとのことである。
   米軍のリバランス戦略は、財政赤字に端を発する、同盟国日本への物理的及び財政的な負担の分担の拡大を迫る側面を持っている。他方、安倍政権の掲げる「積極的平和主義」とは、日本はこれまでのような「受け身」ではなく、より積極的に海外に展開していくという方針である。しかしその具体的中身が何を意味するのかは判然とせず、「我が国を取り巻く安全保障環境の悪化」という「受け身」のフレーズを多用することによって成立させている方針である。
   安倍首相が再三にわたり「イラクのような状況で戦地に自衛隊が派遣されることはない」と説明しても、両国のこのような政策に対応させることを目的に行われようとしているガイドライン改定に対し、国民が懸念を抱かずにいる方が困難ではなかろうか。

新「宇宙基本計画」

   もう一つ取り上げたいのが、安倍政権による新「宇宙基本計画」の策定である。このことは報道も比較的少なく、広く国民に周知されているとは言えない。
   安倍政権(内閣府)は、2015年度からの10年間で宇宙機器産業の事業規模を官民合わせて5兆円に拡大させることを目指した新たな宇宙基本計画素案をまとめた。11月8-21日に、新「宇宙基本計画」(素案)への、22-28日には同計画の工程表(素案)へのパブリックコメント(意見募集)が実施された。
   そして、年内に宇宙開発戦略本部(本部長=安倍首相)において、計画を決定することが目指されている。しかし、11月21日に衆議院が解散され、12月14日に衆議院解散総選挙が実施されることとなった現在、実際に年内に計画の決定がなされるかは不明である。
   計画(素案)の「前文」には以下の記述がある。

「平成20年5月には宇宙基本法が制定され、我が国の宇宙政策は、これまでの「科学技術・研究開発」主導を脱し、「科学技術」「産業振興」「安全保障」の三本柱から成る総合的国家戦略へと局面展開を遂げた。」

   08年5月21日に参議院本会議において可決・成立した宇宙基本法は、与党の自民党・公明党に加え、最大野党の民主党が共同提案した。当時、大きな論争もなく、法案提出から2週間にも満たない短期間での成立となったものである。宇宙基本法は、日本がそれまで堅持していた「宇宙の非軍事利用」を捨て去り、軍事利用へと進出する道を開くものであった。この背景には、日米ミサイル防衛(MD)をビジネスチャンスととらえる政財界の要請があった。
   今回の新「宇宙基本計画」は、昨年1月策定の「宇宙基本計画」を改定するものである。「前文」には以下の認識が示されている。

「平成25年1月の「宇宙基本計画」策定後、我が国の宇宙政策を取り巻く環境は大きく変化している。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増し、我が国の安全保障上の宇宙の重要性が著しく増大している。一方、我が国が自前で宇宙開発利用を行うための宇宙産業基盤は揺らぎつつあり、その回復・強化が我が国にとって喫緊の課題となっている。」(下線筆者)

   ここでも下線で示したフレーズが使用されている。周辺国が軍事力や運用戦略を強化しているのだから、日本はより積極的にそれに対抗していかねばならない、という現状認識である。そして軍事でもそうであるように、宇宙分野においても、米国の考え方にそって日本の宇宙戦略を変更していくということである。そして日米軍事一体化を進める中で、安全保障と宇宙利用の一体化も同時に促進するという方針を打ち出しているのである。

   計画(素案)の「1.我が国の宇宙政策を巡る環境認識」では、「中国やインドを始めとする新興国がその宇宙活動を急速に活発化させている」とし、「このような流れの中、世界最大の宇宙大国である米国は、宇宙政策に関する考え方を変えつつある。(中略)近年は同盟国を始めとする責任ある国々や民間事業者等との連携による抗たん性の確保と、相互補完による効率性を重視する政策へと転換してきた」としている。
   さらに、「日米宇宙協力の新しい時代の到来」の節では、10月8日発表の日米ガイドライン見直しに関する中間報告に関連した言及がある。

「『日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間報告』においても、日米両政府が重要性を認識する事項の一つとして「同盟の文脈での宇宙及びサイバー空間における協力」が挙げられている。我が国としても、これらの分野を中心に、日米同盟強化に向けた取組の一環として、安全保障面での日米宇宙協力を強化していく必要がある。」

   現政権が武器や原発を海外に売り込もうとしている動きにも見られるように、こうした動きの背景には、海外への軍事的な輸出や宇宙利用を拡大したい政財界の思惑がある。それと同時に、米国の要請に従う「同盟国」であることを優先し、これまで非軍事で発展してきた「平和国家」としての日本在り方を根本から変更していく動きの一つであるとも言える。

選挙日に向けて―少なくとも、「戦略的投票」を

   安倍首相自らが「これはアベノミクス解散だ」として衆院を解散し、12月14日に選挙が実施される。しかし、いうまでもなく、有権者はこの2年間で第2次安倍政権が行ってきた政策すべてを吟味し、投票をすべきである。もちろん、景気や経済は私たち一人ひとりの生活に直結した問題であり、重要なことは言うまでもない。
   一方で、とりわけ外交・安全保障分野において、大きくこの国の社会の在り方の転換を図っている現政権が問われる選挙にならなければならない。

   最近、投票行動における考え方として、「戦略的投票」という言葉を見聞きするようになってきた。「戦略的投票」とは、たとえ所属政党や政策、人柄などが気に入らない候補でも、「ワースト(最悪)」の候補よりはまだマシであるとし、「セカンド・ワースト(2番目に最悪)」な候補に、戦略的に投票するというものである。「推したい候補を国会に送り込む」ことよりも、「国会に送り込みたくない候補を当選させない」という考え方である。

   本来は、積極的支持の上で一票を投じたいが、現状ではなかなかそうもいかない現実がある。2012年の衆院選で「第3極」とメディアが呼んだ少数野党の乱立状態が、結局は組織票でたたかう与党を勝たせる結果となった。上記に述べたような安倍政権の政策にブレーキをかけるためには、少しでも投票率を上げるための取り組みとともに、今回は「ベストではないがワーストではない選択」として、小選挙区によっては、「戦略的投票」を行うことが必要である。

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