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平和軍縮時評2014年12月号 戦争を好む体質への移行を許すな―武器輸出三原則の放棄と防衛装備戦略の策定  湯浅一郎

2014年12月30日

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   12月14日、安倍政権の自分のための解散・総選挙は、自民党の思惑通りの結果となったかもしれない。これにより、安倍政権は、これから4年間政権を担う権利を確保した。しかし、消費税のアップ等に起因する経済政策の頭打ちが今後継続するしかない見通しの元、支持率が下がらないうちの早い時期に選挙をという、いわば追い込まれた中で撃った賭けである。とはいえ、15年後半は、安倍政権が目論む戦後の平和レジームの破壊と「戦争する国づくり」のための関連法案が一斉に登場する環境が作られた。被爆70周年、NPT(核不拡散条約)再検討会議を迎える年に、日本がどこへ向かうのかが問われている。
   この一連の動きを規定しているのは、13年12月17日、初めて策定された外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」(NSS)である。14年に矢継ぎばやにでてきた動きは、すべてこの中に込められていたものである。「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を基本理念とするが典型的な軍事優先路線である。本コーナー11月号で、塚田が集団的自衛権、ガイドライン見直し問題を論じているので、ここでは武器輸出三原則の放棄と防衛装備戦略につき論じる。

(1)   防衛装備移転三原則――武器輸出は「原則禁止」から「原則解禁」へ

   国家安全保障戦略においては、武器輸出三原則は国際共同開発・生産に加わるべく緩和するとしていたに留まっていた。しかし、政府は、14年4月1日、従来の「武器輸出三原則」(以下、「旧三原則」)に代わるものとして「防衛装備移転三原則」(以下、「新三原則」)を閣議決定した。これは、旧三原則の事実上の廃止であり、極めて重大な方針転換である。

   1) 積み重ねられてきた「例外化措置」
   佐藤内閣が示した旧三原則(67年4月)と三木内閣によるその強化(76年2月)によって、日本は武器輸出を事実上禁じられた国であった。これに対して、旧ガイドライン(1978年)を契機に、まず中曽根内閣において対米武器技術供与の例外化が始まる。その後、ミサイル防衛など、主として米国との共同開発などを口実にさまざまな例外化措置が講じられ、旧三原則は徐々に空洞化してきた。最近の主な例外化措置としては以下がある。

  • 野田内閣による包括的例外化措置(11年12月)。「平和貢献・国際協力」と「国際共同開発・生産」に関して武器移転を解禁。
  • 安倍第二次政権による次期戦闘機F35に関する例外化措置(13年3月)。日本企業が国際共同開発・生産へ参加することを容認。
  • 南スーダンで国際平和維持活動(PKO)参加中の韓国軍に対して、同地でPKO参加中の陸上自衛隊が弾薬1万発を提供(13年12月)。政府は「緊急の必要性、人道性がきわめて高い」として例外的にこれを容認。弾薬はのちに返却される。

   2) 武器輸出要件を大幅緩和
   このように例外に例外を積み重ねる手法が限界を迎えていることは明らかであった。そこで策定されたのが「防衛装備移転三原則」である。これまでの「武器」という用語を「防衛装備」という用語に変更し、ソフトなイメージを打ち出しているが、武器輸出を公然と容認したことに他ならない。新三原則は具体的には次のようなものである。

1   移転が禁止されるケース
   新三原則は、次の3つの場合において、防衛装備の移転を認めないとした。

  1. 日本の締結した条約や国際約束に違反する場合
  2. 国連安保理決議に違反する場合
  3. 紛争当事国(武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国)への移転となる場合

   1.2.のケースでは武器輸出は不可能であり、問題は3.の要件である。政府は当初、旧三原則の第3原則である「国際紛争の当事国またはそのおそれのある国」への禁輸を削除し、紛争当時国への武器輸出を解禁しようとしていた。しかし、これには強い批判があり、同原則を表面上は復活させつつ、「紛争当事国」の定義を狭くすることでその骨抜きを図った。具体的には、「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国」という定義がそれである。しかし、拒否権を持つ五大国やその緊密な同盟国のからんだ国際紛争が安保理の措置対象になることはめったにない。たとえば米国や英国、イスラエルが戦争を行っていたとしても、これらの国々が新三原則で定義されるところの「紛争当事国」とみなされることは現実の国際政治上ありえず、武器輸出が可能になってしまう。

2   移転容認のケース
   次に、移転が容認されるケースとして、以下の4つが挙げられている。

  1. 平和貢献・国際協力の場合
  2. 日本との間で安全保障面での協力関係がある諸国との国際共同開発・生産
  3. 日本との間で安全保障面での協力関係がある諸国との安全保障・防衛分野の協力
  4. 自衛隊の活動および邦人の安全確保の観点から必要な場合

   「平和貢献・国際協力」「安全保障面で協力関係がある諸国」など明確に定義されていない内容がきわめて多い。

   3) 目的外使用・第三国移転が原則可能に
   さらに問題なのは、野田政権時の包括的例外化措置では禁じていた、移転した武器の目的外使用・第三国移転が、一定の要件の下で容認されたことである。
   新三原則は、これらの場合における日本側の「事前同意」を表面上は原則としている。しかし、1.平和貢献・国際協力の積極的な推進のため適切と判断される場合、2.部品等を融通し合う国際的なシステムに参加する場合、3.部品等をライセンス元に納入する場合などでは、「仕向先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保することも可能とする」と述べている。要するに管理体制が適切であると日本政府がみなせば、目的外使用・第三国移転を容認するということである。
   この方針の最大の問題は、移転が認められるかどうかの基準を、移転された武器の「管理体制」という組織・制度上の問題に限定してしまい、武器が実際にどのような形で使用されるかを不問に付している点であろう。これだと、たとえばテロリストによる奪取を防止するなどの「適切な管理」がなされてさえいれば、移転先あるいは第三国の政府が民衆弾圧のために当該武器を使用したとしても、新三原則上は問題がないことになってしまう。

(2)   『防衛生産・技術基盤戦略』の策定―国産化方針から国際共同開発・生産重視へ―

   防衛省は6月19日、「防衛生産・技術基盤戦略-防衛力と積極的平和主義を支える基盤の強化に向けて-」(以下、「基盤戦略」)を発表した注1。防衛装備品の調達に関して、1970年に当時の防衛庁が出した「国産化方針」を修正し、国際共同開発・生産を大きく認める方向へと舵を切った。「国家安全保障戦略」と「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」(いずれも13年12月17日閣議決定)、さらにはそれを受けて策定された「防衛装備移転三原則」(4月1日閣議決定)の定めた方向性が、より具体的な形をとって現れた。
   自衛隊による防衛装備品の調達額は必ずしも大きくなく、海外への輸出も現在はできないことから日本の防衛産業の地盤は低下している。しかしこれを放置すれば、安全保障の主体性は確保できず、諸外国への交渉力も劣ったままとなる。そこで国際共同開発・生産に積極的に関与することによって、生産基盤の強化を図る。――これが、「基盤戦略」の考える日本の防衛産業強化の道筋である。「基盤戦略」の主な項目は、以下のとおりである。

   1) 「基盤戦略」の内容
   「基盤戦略」の主な内容は、以下のようにまとめられる。

●防衛生産・技術基盤を取り巻く環境変化

  1. 生産・技術基盤の脆弱化
       防衛装備品が高度化・複雑化することで単価が上昇し、経費が増加している。これが調達数量の減少を招き、防衛産業が縮小している。
  2. 欧米企業の再編と国際共同開発・生産の進展
  3. 防衛装備移転三原則の策定

●日本が独自の防衛生産・技術基盤を維持・強化することの目標・意義

  1. 安全保障の主体性の確保
  2. 抑止力向上への寄与、バーゲニング・パワー(交渉力)の維持

   日本が独自の防衛生産・技術基盤を確保することで、仮に防衛装備品を輸入に依存したり国際共同開発・生産に関わったりする場合でも、価格等の面で有利な条件で交渉を進めることができる。

   2) 先端技術による国内産業高度化への寄与

●防衛装備品の取得方法
   国内開発、国際共同開発・生産、ライセンス国産、民生品活用、輸入の組み合わせによる。国際共同開発・生産のメリットは、「1.他の参加国が保有する先端技術へのアクセスを通じ、その技術を取り込むことで、国内の技術の向上が図れること、2.参加国間の相互依存が高まることによって同盟・友好関係が強化され、防衛装備品の相互運用性の向上が期待されること、3.参加国間で開発・生産コストの低減と開発に係るリスク負担が期待できること」が挙げられている。

●基盤の維持・強化のための諸施策

  1. 契約制度の改善;随意契約の活用、調達年度の長期化など。
  2. 研究開発;民生先進技術の活用、大学等との連携強化など。
  3. 防衛装備・技術協力;国際共同開発・生産などの協力を諸国と進める。そのための秘密保全を図る。
  4. 防衛産業組織;強靭なサプライチェーンの維持など。
  5. 防衛省の体制強化;装備取得関連部門を統合した外局の設置を視野に入れる。

   なお、「基盤戦略」は、防衛大綱と同じく、およそ10年程度の期間を念頭に置いて、適宜見直すこととされている。

(3)   進む二国間協力と武器輸出

   防衛装備移転三原則と「基盤戦略」の策定を受けて、すでに多くの二国間共同開発や輸出の事例が出てきている。

   1) 日米
   7月17日、国家安全保障会議(NSC)が、迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC2)に搭載する高性能センサーを米国に輸出することを容認。元々は三菱重工業が米「レイセオン」社からライセンスを受けて生産していたが、レイセオンが生産をやめ、三菱からの輸入に切り替えることにしたため。防衛装備移転三原則の上では、部品等をライセンス元に納入する場合は、目的外使用・第三国移転への事前同意は必要ない。レイセオンはPAC2をカタールに輸出する見通しで、これまでにイスラエルに輸出した実績もある。

   2) 日英
   NSCは、上記と同日、戦闘機に搭載するミサイル「ミーティア」の共同研究を英国と進める案件も承認している。「ミーティア」は英国が欧州各国と共同開発中。命中精度に難があるため、日本企業が持つセンサー技術に英国などが関心を寄せていた。航空自衛隊の次期主力戦闘機F35に、将来的に搭載することを想定している注2

   3) 日仏
   訪仏した安倍晋三首相がフランスのオランド大統領とともに、防衛装備品の共同開発を進めるための政府間協定締結に向け、両国間の交渉を開始することで合意(5月5日)注3。日仏両政府は海中の機雷を破壊する無人潜水機などを想定している。

   4) 日豪
   安倍首相がオーストラリアを訪問し、防衛装備品・技術移転協定に署名(7月8日)注4。両国合意では単に「船舶の流体力学の共同研究」とされているが、実際には、潜水艦技術を両国で共同開発する見通し。豪州のアボット首相は、11月16日に行われた米豪日首脳会談で、共同開発の枠組みを米国も含めた3国に拡大するよう提案。
   このほかにも、海外への武器輸出交渉ですでに表面化しているものだけでも、以下のような動きがある。

  • インドに対する水陸両用救難飛行艇US-2の輸出計画。
  • 三菱重工業とトルコ企業が合弁会社を設立し、戦車用エンジンを共同開発する計画。
  • 防衛省が、英国国防省と化学防護服の共同研究着手に合意(13年7月23日)。

   新三原則の下では、こうした国際交渉を堂々と進めることが可能となり、「防衛生産・技術基盤」強化の名の下、グローバルな防衛産業界への関与が進められようとしている。(3)で見たように実際、二国間の共同開発や輸出が堰を切ったように始まっている。国が、積極的に防衛装備の輸出を推進していけば、今後、大・中企業は軍需産業への展開を模索するであろう。日本の防衛産業は、従来、自衛隊に年間約2兆円規模の兵器を納入するだけで、日本の製造業全体の1パーセント未満であったものが、10年、20年後には5%、10パーセントへと拡大していくことが懸念される。これは、日本の産業や経済が戦争を好む体質にじわじわと、人々が気づかぬうちに変質していくことを意味する。そのとき、現在は、過半数を超える市民が憲法9条は保持すべきだとしている世論が、少しづつ変質していくかもしれない。日本の平和主義を実質化していた武器輸出三原則をかなぐり捨てて、武器輸出国へと転落することは許されない。

<注>

  1. http://www.mod.go.jp/j/approach/others/equipment/pdf/2606_honbun.pdf
  2. 『毎日新聞』、14年7月17日。
  3. http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000037579.pdf
  4. 協定文http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000044421.pdf
    日豪共同声明http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000044775.pdf

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