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平和軍縮時評2015年4月号 グアム建設予算、議会が支出凍結解除-米国は2つの基地を手に入れるのか?  田巻一彦

2015年4月30日

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   2014年10月17日の知事選で、沖縄県民は海兵隊普天間飛行場の県外移設、辺野古への代替施設建設反対を訴える翁長雄志氏を選出した。この民意に背を向けて政府は代替施設建設海域の埋め立てを強行しようとしている。沖縄には新基地建設反対の声が一層高まりをみせているが、政府は埋め立てを既定方針どおりに「粛々と」前に進めると繰り返し言明している。
   実は、米議会では辺野古への代替施設建設にとどまらず、沖縄とグアムに二つの大規模基地を建設することに途を開く重要な決定が昨年12月になされていた。やや旧聞に属するが沖縄と海兵隊をめぐる米国内の政治構造と日本政府の意図的な不作為を如実に物語る事実なので、紹介しておきたい。

5年にわたった予算支出凍結を解除

   14年12月2日に成立し12月19日に発効された2015会計年国防認可法(2015NDAA)の「両院合同説明文書」には、09年以来5年以上続いてきたグアムへの海兵隊移転のための建設予算の支出凍結を解除する、次のような条項を含まれていた。米議会では、上院と下院で相反する法律が採択された場合、両院の有力議員からなる「両院協議会」で再審議を行って妥協策を得る。「合同説明文書」とは、妥協にいたる経過と最終的な法の内容を説明したものである。

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第2821節 アジア太平洋地域における海兵隊の再編
   下院が採択した法案は、2014会計年軍事建設歳出法(公法113-6 6・B)を修正し、日本の沖縄からグアムへの海兵隊部隊の移駐に関する予算支出凍結を解除するというものであった。
   上院の法案は、特定の条件が充足されない限り沖縄からグアムへの海兵隊部隊の移駐を実施するための建設プロジェクトへの予算支出凍結を継続するというものであった。
   両院協議会の合意は、上院法案の沖縄からグアムへの海兵隊部隊移駐を実行するための建設予算支出の凍結を解除し、それに代わるものとして、2014年のグアム・マスタープランとインフレ率及び法修正の内容を考慮して、これら建設費総額の上眼額87億2500万ドルを設定するというものである。
   同条項はまた、グアムの公共インフラに関しては、補助金、移管措置、グアム移転に関する日米協力協定もしくは公共インフラ整備のための補足的原資が法によって承認され、2014会計年国防認可法2831節が規定する経済調整委員会の報告書に記載された事業計画に使用される場合を除いて、支出凍結を継続することとした。(後略)(訳:ピースデポ)
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上院の反対で、紛糾続いたグアム予算

   国防総省が本格的な予算要求を開始した09 年以来、同予算は議会における論争の的となっていた。論争の構造は、大きくは次のようなものであった。軍と国防総省の方針を支持する共和党多数の下院は、予算の早期支出を求めた。一方、民主党が多数を占める上院は、軍と国防総省による基本計画(マスタープラン)の不在、軍態勢全体との整合性に関する検討不足、グアムの貧弱な社会インフラの改善策が不明確であることなどを理由に反対ないし慎重な姿勢をとってきたのである。
   加えて、オバマ政権が打ち出した軍態勢の「リバランス」路線によって、06年「ロードマップ」の「海兵隊グアム移転」の前提の見直しも余儀なくされたことがある。そして言うまでもなく、米経済の不況が続く中で軍事予算も長期的な減額圧力から自由ではありえないという事情があった。
   例えば、2011年国防認可法(2010年10月~11年9月の予算の大枠を定める)で、上院が採択した法は「財政緊縮が厳しく求められ、さらに沖縄における政治的・大衆的反対の高まりに直面している今、沖縄とグアムの両方に大規模な軍事施設を建設するという課題を達成することは、現実的時間枠の中では不可能」との認識の下に、代替施設の県内建設を中止し、機能の嘉手納空軍基地への統合によって普天間飛行場の早期返還が可能ではないかと、国防総省に研究を促すと同時に、グアムにおける建設予算の支出凍結することを求めるものであった。両院協議会で「嘉手納統合案」は削除されたものの、グアム建設予算の支出凍結は最終的な法でも継続された。
   こうして議会による支出凍結は、2014会計年(13年10月~14年9月まで)まで続くことになったのである。
   昨年12月議会でも、上院と下院との見解のギャップは埋まることがなかったが、最終的には上院側が支出凍結条項を取り下げ、その代わりに建設予算総額に上限額(87億2500万ドル、「グアム協定」に基づく日本の負担31億ドル余を含む)を設定することによって妥協が成立したのである。

軍は沖縄とグアムの両方を手に入れる?

   この妥協の理由については詳らかにされていない。だが、次のような力学が働いたであろうことは想像がつく:

  1. 8月に国防総省から議会にマスタープランが提出されたこと。
  2. 11月の中間選挙で上下院ともに野党共和党が多数派になったこと。
  3. 日米同盟強化に熱心で(沖縄を除いては)支持率の高い安倍内閣の在任中にできるだけ状況全体を進めておきたいと軍支持派の議員たちが考えたこと、である。

   また上院軍事委員長を務め、舌鋒鋭く軍と国防総省の説明不足を指摘してきた長老・カール・レビン元議員が引退を決め、民主党側の求心力が衰えたことも無関係ではなかろう。レビン議員はたんに予算や安全保障上の合理性だけでなく、普天間代替施設を巡る沖縄の苦難を見て「沖縄とグアムに二つの大規模基地を作ること」に疑問を投げかけてきた人であった。「嘉手納統合案」の是非はともかくとしても(筆者は断固「非」だ)、レビン議員には軍の好き勝手はゆるさないとう矜持があった。
   一方、両院今回支出凍結が解除されたのは軍事建設予算、つまり基地の「フェンスの中の」整備予算のみであり、「フェンス外」のプロジェクトについては支出凍結が継続される。すなわち、11年の政府説明責任局(GAO)報告書「グアムにおける軍増強:建設タイムラインを充足するためのコストと課題」(11年6月27日、GAO-11-459R)が指摘した、次のような事情は解決の糸口が見えない。「グアムの基地増強に伴う施設外で必要とされるインフラ計画の資金の調達におけるグアム州政府の責任は大きい。それには、基地外道路、ユティリティの整備が含まれ、約32億ドルが必要と推計されている。」
   肝心なことは、日本政府はこのような米国内の重大な不一致―それは沖縄海兵隊再編の根幹にかかわる問題である―に見て見ぬふりをして、ひたすら対米追従(上記の経過を見れば、それは「国防総省・軍追従」というべきだが!)路線をとってきたことである。まさに「外交の不在」そのものである。
   2014年までに海兵隊9000人と家族はグアムに移駐するとの06年「ロードマップ」の誓約は基地負担に苦しむ沖縄県民に決して小さからぬ期待を抱かせた。しかし12年4月の日米合意で、普天間代替施設とグアム移転の「パッケージ」が解消された上、移転する海兵隊員数は5000人に縮小された。移駐時期も「14年以降のできるだけ早い時期」に先送りされた。この合意は米国に「沖縄の負担軽減」という命題に束縛されることなく、グアムの基地建設を進めるフリーハンドを与えるという側面を持つものであった。今回の議会の決定によって、それに予算上の裏付けが与えられたのである。
   このままではレビン氏が指摘したように、米軍はグアムと普天間に2つの大規模基地を手に入れることになる。このような米軍と国防総省のご都合主義が、沖縄とグアムの人々の主権と生存権を脅かしながら実現されていくことを許してはならない。

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