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平和軍縮時評2016年1月号 横田CV22オスプレイ「環境レビュー」の欺瞞性-最も怖い夜間、低空戦闘訓練などに言及なし  湯浅一郎

2016年1月30日

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「環境影響なし」の結論ありき

   2015年9月14日、防衛省は、米空軍特殊作戦コマンド(以下、AFSOC)作成の「CV-22の横田飛行場配備に関する環境レビュー」(以下、「横田ER」)を公表した※1。同年5月11日に、CV22オスプレイ横田配備の接受国通知を受けてから、ほぼ4か月が経っている。ERは、米大統領指令12114号「連邦政府による主要な行動による海外での環境への影響」などに従い、日本環境管理基準(JEG)も考慮して作成されたとされる。
   米国内では、国家環境政策法(NEPA)に基づく環境影響評価プロセスにおいては、「提案した措置を取らない」(No Action)の選択肢を含めて検討なければならない。例えば本誌でしばしばとりあげた米キャノン空軍基地(ニューメキシコ州)のCV-22による低空飛行訓練の簡易環境評価(EA)において、空軍は「特段の重大な影響なし」としていたが、自治体や先住民を含む飛行コース周辺住民からの強い反発に会い、より厳密な環境影響評価(EIS)を行わざるをえなくなり、計画が大幅に遅延しているとの報道がある※2。これに対し、横田ERはあくまでも米軍が自発的に作成した文書であり、米軍の行動そのものには何らの影響を与えるものではなく、日本の自治体や住民が関与する機会はない。日本政府は二重規準を承知の上で「環境レビュー」を受け入れたのである。
   横田ERは本体130ページで、付録はなし、という簡素な形式である。12年6月の海兵隊仕様のMV22オスプレイ普天間配備のER(12年6月。以下「普天間ER」)※3の本体288ページ、付録(A~D)755ページと比べて大幅に簡素化されている。普天間ERは、沖縄での訓練を始め、日本列島での低空飛行訓練などを詳細に述べていたが、横田ERには、これらの記載はない。対象を横田基地周辺の問題に絞り、環境への「特段の重大な影響はない」とした、初めに結論ありきの文書となっている。
   横田ERは、1.措置をとる目的及び必要性、2.提案されている措置と代替案、3.影響をうける環境、4.環境への影響、5.累積的影響、6.管理所要の6章で構成される。「AFSOCが太平洋地域においてより強化された能力を獲得するため」横田にCV-22を配備するとし、施設整備事業、航空機配備とそれに伴う430名の増員を行うとされる。基地内の施設整備はフェーズⅠ、Ⅱで構成され、これらによる環境への影響を、空域、騒音、大気質、安全性、公共設備、危険物質/危険廃棄物及び固形廃棄物、水源、生物資源、文化資源、交通について検討し、「重大な影響はない」と結論づける。横田ER掲載の表によれば、横田基地においてはCV-22暫定駐機場、シミュレーター、弾薬・装備保管施設建設など準備工程であるフェーズⅠが既に「2015米会計年度」予算により配備を前提とした工事が始まっている。この事実は、配備そのものは既に決まっていることを示している。

横田ERに書かれない特殊作戦コマンドの任務

   最大の問題は訓練内容に関してほとんど言及がされていないことである。ここではキャノン空軍基地のCV-22低空飛行訓練の環境影響評価書(EA)案※4と対比しながら横田ERの問題点を列挙する。
   まずCV22が関与する特殊作戦部隊(以下、SOF)の任務の説明がない。横田ERは、「特殊作戦コマンドの任務は、地域軍司令官、米国大使及び配下の大使館員等及び米国の国家指揮権限に対し、平時及び有事の特殊作戦支援を行う」とし、AFSOCなど4つの軍種別コマンドを有すといった組織上の説明しかなされていない。これでは、中身が全く分からない。これに対しキャノンEAには、AFSOCの任務が以下のように具体的に記述されている。

「2.1.2  空軍特殊作戦コマンドの任務;
   空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)は、フロリダ州ハールバートを司令部として1990年5月22日設立された。AFSOCは、フロリダ州マクディール空軍基地に配置された統合コマンドである。合衆国特殊作戦コマンド(USSOCOM)の上級コマンドであり空軍コンポーネントである。AFSOCは、USSOCOMに対して、特殊作戦部隊(SOF)の世界的展開のための即応体制に責任を持つ。AFSOCは、高度な訓練を受け、緊急展開能力を持つ、高度に専門的な航空機に乗務するパイロットによって構成される。AFSOCはSOFを、世界中の地域統合コマンドに展開・配備する。中核的任務は、4つの任務分野に分類されてきた。すなわち前進配備と交戦、情報作戦、精密作戦と攻撃、およびSOFの移動である。SOFは、火器の精密使用からSOFの作戦要素である潜入、離脱、補給、および給油に至る特殊作戦任務を実行世界中で実行する能力を米国に提供する。AFSOCのユニークな機能には、他国政府の国内的能力を開発のために軍事専門知識を提供する航空戦闘への助言は言うまでもなく、心理作戦のための機上からのラジオ・テレビ放送が含まれる。」

   つまり、AFSOCは「特殊作戦部隊(SOF)の世界的展開のための即応体制に責任を持つ」とし、主要任務は「前進配備と交戦、情報作戦、精密作戦と攻撃、およびSOFの移動」であるとする。そしてSOFは「潜入、離脱、補給、および給油に至る特殊作戦任務を世界中で実行する能力を米国に提供する」。つまり、忍者部隊を隠密裏に輸送することが主要な任務と言うことになる。こうしてASFOCの主要航空機であるCV-22は、地形追随装置、赤外線センサー、レーダー探知機能など新たな海兵隊仕様機(MV22)には備えられていない機能を駆使してSOFの「足」としての任務を担うのである。
   横田ERはCV22の訓練区域として、東富士演習場、ホテル地区、三沢対地射爆撃場、沖縄の訓練場、アンダーセン空軍基地、及び韓国烏山空軍基地周辺のピルサン・レンジの6つをあげるが、訓練内容は示されていない。ホテル地区は群馬、長野、新潟に渡る演習場ですらない空域で、住宅、田園、山間部が広がるエリアである。特にここでの訓練内容は市民にとり生存に関わる重大時であるが、これに関する記述は一切ない。さらに15年12月28日、共同通信の配信記事※5によると、「防衛省が、米空軍による環境影響評価の報告書を基に、訓練が実施される可能性がある地域を調べ、10都県に通知した」ことが分かったとされ、その中には、これまで想定されてなかった栃木県、福島県も含まれている。具体的には福島県で檜枝岐村、栃木県では佐野市、日光市が含まれる。

肝心な夜間低空飛行訓練等にも言及なし

   5月12日の記者会見※6で、中谷元防衛大臣は、CV-22の横田配備に関し、「各種事態の米特殊作戦部隊の迅速な長距離輸送という任務を達成する」ため「低空飛行訓練、または夜間飛行訓練」を実施すると明言した。しかし横田ERは低空飛行訓練に全く触れていない。
   キャノン空軍基地でのCV-22の低空飛行訓練計画は、「乗員は、日没後の低空飛行のための訓練エリア全体にわたる任務と計画を受け取る。戦闘における任務計画には、投下帯(DZ)での人員や装備の空中投下、様々な着陸帯(LZ)での夜間着陸、または空中給油のための結合、もしくは給油のような多様な活動が含まれる。」としている。さらに、「各訓練ミッションは、敵地への潜入や、地上部隊の投入、補給、または回収のための夜間低空飛行ミッションの熟度を構築するために計画される」とされ、「敵対的環境下での空中投下、着陸、および給油任務のために訓練を行う」とある。その詳細を示した「訓練の作戦上の選定基準の概要」※7には、「乗員は、概して薄暮に飛び立ち、日没後に任務を行う。そしてほとんどの任務において、暗視ゴーグル及び地形追跡レーダーを使用する」こと、「地上高300フィート以下を含む低高度」での低空飛行などが必須の訓練項目として列挙されている。
   キャノンEAが示すものこそが、CV-22に必要な日常的訓練であり、横田配備のCV-22も同様の訓練を行なうであろう。横田ERに明記された6訓練区域では弾薬使用も含めた上記の諸々の訓練が行われる可能性が高い。のみならず、普天間ERで示された本州から沖縄までの低空飛行訓練ルートでの訓練を含めキャノンで想定されたような総合的訓練が構想されているのではないかと思われる。例えば、三沢射爆撃場での訓練であれば、群馬、長野、新潟にまたがるブルー、東北地方のグリーン、ピンクルートを利用して低空飛行訓練をしながら三沢まで往復する。そして三沢爆撃場では、弾薬使用も含め、侵入、離脱、空中投下、空中給油などの訓練が実施されるであろう。沖縄の訓練場の場合も岩国を経由して沖縄を往来する間に、四国のオレンジ、中国のブラウン、九州のイエロー、そして鹿児島から沖縄までのパープルの各ルートを使った低空飛行訓練が可能である。SOFの任務に対応したCV-22の夜間低空飛行を中心に据えたこれらの訓練は、人口密集地が多く存在する日本においては極めて重大な危険性をもたらすことが懸念される。
   その他、従来から言われている騒音被害、飛行モード転換に伴う危険性、オートローテーション機能の欠如、下降気流、高温排気熱による火災発生の懸念、CV22がMV-22と比べて事故率が高いこと、更にはMV22事故率は、運用時間が増えるごとに上昇していることなどにも、横田ERは言及していない。日本政府は、本ERで評価対象外とされた夜間低空飛行訓練をはじめとする多くの問題に関する情報開示と環境影響評価、さらには米本国との基準の違いを含めた評価のあり方のについて抜本的な見直しを米国に求めるべきである。
   2016年1月27日、「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」は、平和フォーラムと連名で、MV22オスプレイ普天間配備の撤回、CV22オスプレイの横田配備計画と木更津駐屯地へのオスプレイ整備上計画の中止を求めて、防衛・外務省への要請行動を行った。席上、主にCV22横田配備の環境レビューを巡って約2時間にわたりやり取りした。日本政府は、関係自治体や従海の理解を得るべく丁寧に努力すると言いつつ、一貫して米国の作成した環境レビューにコメントはできないとの一点張りで無責任きわまる対応に終始した。この場での問題点や矛盾については、後日整理して改めて紹介したい。

注;
※1   2015年2月24日、防衛省ウェブサイトから文書名で検索。
※2   「フォー・コーナーズ・フリー・プレス」(2012年7月1日)。http://fourcornersfreepress.com/?p=786
※3   「MV-22の海兵隊普天間飛行場配備及び日本における運用に関する最終環境レビュー」。防衛省ウェブサイトから文書名で検索。
※4   www.nmlegis.gov/lcs/handouts/MVAC%20Environmental%20Assessment%20LATA%20Cannon%20AFD-110909-039.pdf
※5   「佐賀新聞」15年12月28日。
※6   中谷元防衛大臣記者会見(2015年5月12日)。
※7   「核兵器・核実験モニター」406-7号(12年9月1日)11ページに抜粋訳。

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