憲法審査会レポート、2023年

2023年03月17日

憲法審査会レポート No.10

2023年3月16日(木) 第211回国会(常会) 第3回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54436

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【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230316003.htm

【マスコミ報道から】

自民、改正国民投票法成立求める 立民はネット広告規制、憲法審
https://nordot.app/1008935439681372160
“自民党の新藤義孝氏は16日の衆院憲法審査会で、自民や日本維新の会などが昨年提出した国民投票法改正案について「審議をいたずらに延ばすことなく粛々と処理すべきだ」と述べ、早期成立を求めた。立憲民主党の近藤昭一氏は、国民投票時に改憲案の賛否を訴えるテレビCMやインターネット広告を巡り、規制を設けるべきだと主張した。”

自民、投票法改正案「早期成立を」 立民はCM規制を主張―衆院憲法審
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023031600944&g=pol
“自民党の新藤義孝氏は、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案について「早急に審議し結論を出さなければならない」と述べ、早期成立を求めた。改正案は、開票立会人などに関する規定を公職選挙法に合わせるもの。昨年4月に与党と日本維新の会などが共同提出したが、実質審議は行われていない。”

国民投票でのCM規制の在り方など議論 衆院憲法審査会
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230316/k10014010041000.html
“…憲法改正の国民投票が行われる際の、テレビCMやインターネット広告の規制の在り方などをめぐって、議論が行われました。”
“一方、日本維新の会は、大規模災害など緊急事態の対応について憲法への規定を急ぐべきだとして速やかな意見集約を求めました。”

与野党が国民投票法などを議論 衆院憲法審
https://www.sankei.com/article/20230316-6RWQ3I5RYZOWHL3BBS256PPQNM/
“緊急事態条項新設も議論となり、日本維新の会の岩谷良平氏は「立民と共産党を除く党派の立憲主義を守る観点からの積極的な議論により、一致点と相違点が明確になってきた」とさらなる深化を訴えた。”

緊急事態条項めぐり議論 改憲勢力の中でも見解に差 衆院憲法審【詳報あり】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/238467
“緊急事態時に国会議員任期の延長などを可能とする改憲を巡り、自民党が衆参両院の過半数の賛成で「緊急事態」と認定する案を訴えたのに対し、公明党や日本維新の会などは3分の2以上の多数の賛成にする必要があると主張し、改憲勢力の中でも見解が分かれた。”

維新・馬場代表「憲法審、立民抜きでも開催を」
https://www.sankei.com/article/20230316-5ANHMNWWMZMU5MCD5AUA67KUNQ/
“「仮に(立憲民主党が)ボイコットするようなことがあっても、憲法審査会を進めていただきたい。自民党に(開催を)求めたい」”
“国民民主党、衆院会派「有志の会」と共同で検討中の同条項条文案に関して「成案が得られれば、それがベースになっていく。自民にも党内の意思決定を行ってもらい、成案作りを促進したい」と語った。”

【傍聴者の感想】

午前10時開会予定の衆議院憲法審査会は、12分遅れで開会しました。

傍聴初参加だったので、どのような議論になるのか期待感もあったのですが、毎回のように傍聴されている方からは「委員のみなさんそれぞれ意見を主張するだけよ」と聞かされ、斜に構えて傍聴し始めました。

しかし、様子が違いました。緊急事態にかかわる事項や国民投票をめぐるこれまで出されている意見に対する見解や反論など、各委員からそれぞれ発言していました。

高市総務大臣の放送法をめぐる問題をとりあげ自説を展開し、改憲は許されないとする発言もありましたが、それはこの場では「浮く」発言になっていました。

改憲ありきの憲法審査会の開催を許さないという立場からすれば、一方通行のめちゃくちゃな「議論」のほうがまだましという思いがあったにもかかわらず、そうした発言が「浮く」までになっている今の状況は、かなり危ないと感じました。

また、傍聴席の前段は記者席なのですが、数名の記者がいるだけで、席は埋まっていませんでした。「情報発信を強化しなければ」という思いを強くした傍聴となりました。

【憲法学者から】飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)

自民、公明、日本維新の会、国民民主党、有志の会の「改憲5会派」は、「法律」等で対応が可能か、あるいは法律的に対応すべきかの検討も十分にせず、憲法改正しようとしています。

「議員任期延長の改憲論」も、公職選挙法やその改正で対応が可能かどうかの検討も十分にせずに憲法改正を主張しています。改憲手続法(憲法改正国民投票法)も、主権者意志が公正・公平に反映できる制度かどうかの十分な検討もしないで「憲法改正国民投票」が可能と主張しています。国会議員として職責を果たさず、「職務怠慢」です。

改憲手続法については、3月16日の衆議院憲法審査会での近藤昭一議員による緻密な問題提起への法的対応が「国民主権」の観点から必須です。テレビCM、ネットCM、外国にいる日本人や洋上にいる人たちの投票環境の整備もしないで憲法改正国民投票をするのでは、国民(市民)の声を聞く気がないと言わざるを得ません。

2016年のアメリカ大統領選挙には「サイバー9.11」とも呼ばれるような、ロシアがアメリカの大統領選挙に介入した疑惑もあります。外国政府や外国の団体が日本の国民投票に影響を及ぼすことがあれば「国民主権」からも問題です。

立憲民主党の道下大樹議員がとりあげた「放送法」の問題、階猛議員が指摘した「フェイクニュース」への対策も憲法改正国民投票には必須です。

【国会議員から】近藤昭一さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会委員)

3月16日、衆議院憲法審査会で発言しました。テーマは日本国憲法の改正手続に関する法律、いわゆる国民投票法についてで、現行国民投票法が持つ根本的な欠陥と改正法附則第4条について下記の点を指摘しました。

2021年、国民投票法が改正された際、施行後3年を目途に有料広告規制、資金規正、ネット規制などの検討と必要な法制上の措置を講ずるという附則第4条が加えられました。附則は付帯決議とは異なり、法的拘束力があり、これらの措置を講じることは法的義務です。

国民投票法制定から10年以上がたち、グローバル化、ネット化など、大きな変化があり、外国勢力の干渉の恐れもあります。現行の国民投票法では、有料テレビ広告の規制は不十分であり、さらにネット広告の規制は全くない状況で、公平公正な投票が確保されるという憲法上の要請が満たされていません。

投票環境が整備され、公平及び公正な投票が確保されることは、憲法上の要請であり、憲法96条及び附則4条の趣旨に則り、現行国民投票法の重大な欠陥の是正に真摯に取り組まなくてはならないと考えます。改正手続の重大な欠陥を放置したまま改憲発議をすることは絶対にあってはならないという点を強調しました。

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