憲法審査会レポート、2023年

2023年05月19日

憲法審査会レポート No.18

2023年5月17日(水)第211回国会(常会)
第5回 参議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7454

【会議録】

※公開され次第追加します(おおむね2週間後になります)

【マスコミ報道から】

「合区解消」は改憲の理由になるのか? 自民は検討加速を訴え、立民は法改正で対応可能と主張 参院憲法審【詳報あり】
https://www.tokyo-np.co.jp/article/250594
“参院憲法審査会が17日に開かれ、参院選で隣接県を一つの選挙区にする「合区」をテーマに討議した。自民党は改憲による合区解消を求めつつ、2025年の参院選に間に合わせるため、当面は法改正で実現すべきだとの見解を示した。立憲民主党は法改正で対応できるとの認識を繰り返した。”

自民 “法改正による「合区」解消も選択肢の1つ”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/k10014070301000.html
“この中で、自民党は、「合区」を解消して、都道府県単位の選挙区を維持すべきだと主張したうえで、最終的には憲法改正が必要だとしながらも、法改正による「合区」解消も選択肢の1つだという考えを示しました。”

自民、合区解消に法改正も=25年選挙目指し―参院憲法審査会
https://sp.m.jiji.com/article/show/2945861
“自民の中西祐介氏は25年の参院選までに合区を解消するため、「参院改革協議会の下で超党派での法律改正による合区の解消を目指す」との見解を示した。投票価値の平等など憲法についての議論を憲法審で深めていくことも提案した。”

参院選の隣接県「合区」解消へ改憲、自民は前向き 立民は慎重姿勢を堅持
https://www.sankei.com/article/20230517-GW36QIPPSRKAHBTHAKUXGN5MTM/
“自民党は憲法改正による合区解消に前向きな意向を示したが、立憲民主党は慎重姿勢を堅持するなど各党の見解の違いが際立った。”

【傍聴者の感想】

参議院憲法審査会が17日に開かれ、参院選で隣接県をひとつの選挙区にする「合区」をテーマに討議が展開されました。

自民党が「合区によって投票率の低下と民主主義の衰退を招いているから、憲法を変えて合区問題を解消しよう」と主張する中で、片山さつき議員の「党が掲げる改憲による実現のほか、法改正による合区解消についても議論を進めるのはあり得る」という発言は注目すべきと思いました。

立憲民主党の杉尾秀哉議員は「国会法と公選法の改正で都道府県単位の議員選出は可能になる」と主張しました。

また、れいわ新選組の山本太郎議員は「合区が必要だと旗を振ってきたものが、合区の解消に憲法改正を主張するのはおかしい」と発言しました。

なんでも改憲にこじつけて建設的な議論ができない与党に対抗するためにも、世論喚起が必要だと感じました。

【国会議員から】杉尾秀哉さん(立憲民主党・参議院議員/憲法審査会筆頭幹事)

今年4月、思いがけなく参議院憲法審査会の筆頭幹事を拝命し、はや1か月半が過ぎました。
この間、参院憲法審査会では、憲法54条で規定されている「参議院緊急集会」を主なテーマに自由討論を重ねて来ましたが、もう一つの参議院らしい課題。それが、「合区解消問題」です。

一票の格差を是正するため、2016年に憲政史上初めて導入された2つの合区(「鳥取・島根」「徳島・高知」)は、投票率の低下や、無投票率の上昇、それに「地方の声が届きにくくなる」など、民主主義の根幹にもかかわる深刻な問題を生じさせています。

そこで、合区対象4県の知事と副知事を先月26日参考人招致し、意見聴取をした上で、今月18日の憲法審査会で意見交換を行いました。

そもそも自民党は、合区解消策としての「憲法改正」を改憲 項目の一つに挙げていますが、これに対して私は、何より当該4県の知事・副知事が、現実的な方策による一刻も早い合区解消を望んでいること。また、憲法改正による合区解消は、「投票価値の平等」を定めた憲法14条や、国会議員を「全国民の代表」と定めた憲法43条との関係から、別の憲法上の問題を生じさせかねないことなどを挙げ、「究極の解決策とはならない」と指摘。その上で、「参議院が独自の役割や機能を果たすためには、各都道府県単位で選出された議員が必要不可欠であり、合区の廃止は憲法改正によらずとも、国会法及び公選法の改正や、地方独自の問題を扱う新たな委員会設置などの国会改革で対応できる」と主張しました。

こうした議論の中で、これまで憲法改正による合区解消を主張してきた自民党の委員も、「憲法改正は時間を要する」として、改憲より法改正による合区解消実現を優先する考えを相次いで表明し、事実上の軌道修正を行いました。

審査会終了後、私は記者団に「一定の共通認識ができた」と歓迎の意向を表明しましたが、これで改憲による合区解消は「喫緊の課題」ではないことが明確になり、自民党の改憲4項目の一つが後景に退いたのは明らかでしょう。

このように、立法事実を厳密に検証する共に、精緻な憲法・法律論を展開すれば、拙速な改憲論に歯止めを掛けることが出来る事を今回改めて痛感しました。

2023年5月18日(木) 第211回国会(常会)
第11回 衆議院憲法審査会

【アーカイブ動画】

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=54618
※「はじめから再生」をクリックしてください

【会議録】

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025021120230518011.htm

【マスコミ報道から】

※NHKは報道記事がありませんでした

衆院憲法審査会で参院緊急集会巡り参考人質疑 長谷部恭男氏は「本末転倒の議論の疑いもあり得る」と指摘
https://www.tokyo-np.co.jp/article/250838
“衆院憲法審査会は18日、憲法が衆院解散時に国会の権能を代行する制度と定める参院の緊急集会を巡り、憲法学者の大石真・京都大名誉教授と長谷部恭男・早稲田大大学院教授を招いて参考人質疑を行った。”

衆院憲法審査会・発言の要旨(2023年5月18日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/250851

憲法学者、任期延長を批判 緊急集会巡り意見聴取
https://nordot.app/1031770568072758081
“長谷部恭男早稲田大大学院教授は憲法への新設を主張する緊急事態条項の国会議員任期延長を巡る自民党などの議論を批判した。大石真京大名誉教授は、緊急集会の開催について最大70日間だと指摘し、期間が限定されるとの認識を示した。”

緊急集会、任期満了時も可能 衆院憲法審で参考人が見解
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023051800802&g=pol
“大石真京大名誉教授は「限定された期間における衆院の不在という意味で類似性を持つ」と唱え、衆院解散時だけではなく任期満了時も緊急集会は可能だとした。長谷部恭男早大院法務研究科教授も「任期満了による総選挙の場合も、憲法の規定を類推して考えることが適切だ」と述べた。”

参議院の緊急集会 参考人2人「任期満了でも可」 衆議院憲法審査会
https://mainichi.jp/articles/20230518/k00/00m/010/297000c
“両氏とも、緊急集会の開催を衆院解散時に限定している憲法54条の規定を議員任期満了による衆院不在時にも適用できるとした点で一致。同条を厳格に適用し、任期満了時にも緊急集会の開催を可能とするよう憲法改正すべきだとする自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党の主張とは異なった。”

【傍聴者の感想】

衆議院憲法審査会が18日に開催されました。憲法が衆院解散時に国会の権能を代行する制度と定める参院の緊急集会を巡り、憲法学者の大石真京都大学名誉教授と長谷部恭男早稲田大学大学院教授の参考人質疑が行われました。

大石教授は「70日の縛りは合理的」と、改憲勢力の意見を支持しましたが、これに対して長谷部教授は、平常時と非常時の明確な区分が必要であるということ、70日の制限は信任を失った従前の政権がそのまま居座り続けることを阻止するためのものであることを、繰り返し指摘しました。さらに衆院議員の任期を延長して、総選挙を経ることなく立法などすべての権能を与えることは「本末転倒の議論ではないかとの疑いもある」と強調しました。

今回の傍聴で、投票をどうするかということより、自分たちの任期の延長を執着しているように感じました。改憲勢力は「変えろ変えろ」と主張していますが、なぜ変えなくてはいけないのかという疑念とともに、現行の憲法は無駄なところがなくてほんとうにすばらしいと、改めて思いました。

【国会議員から】階猛さん(立憲民主党・衆議院議員/憲法審査会幹事)

19日から主要7か国首脳会議(G7サミット)が広島で開催されています。前回、日本でサミットが開かれたのは7年前のことでした。その際、今は亡き安倍首相は専門家も首を傾げるような統計を持ち出して、「世界経済はリーマン・ショックの前に似ている」と自説を述べ、その数日後に10%への消費増税につき、再度先送りを決めました。

2014年11月に1回目の増税先送りを発表した際、安倍首相は、「再び延期することはない、(景気次第で先送りできる)景気判断条項を削除して確実に実施する」と断言しましたが、その後の国会では「リーマン・ショックのような事態が起きれば先送りできる」旨答弁していました。安倍首相本人は「新しい判断だ」と開き直っていましたが、内外からサミットの場を利用したと見られています。その年の7月には参院選が予定されていたため、政権の延命を図るための増税先送りだったと言わざるを得ません。

一方、今回の広島サミットの陰で、サミットどころか、憲法までも「政権延命装置」にしてしまいかねない動きがあります。

衆議院の憲法審査会では、現在、自民・公明の与党と、維新・国民民主など野党の一部会派が、大災害や有事などの緊急事態で、国会議員の任期を延長して選挙を先送りできるようにする「憲法改正」を盛んに主張しています。「選挙直前に緊急事態が起きた場合でも、国会を開催し、国政に民意を反映できるようにするため」としますが、安倍首相のように無理やり「緊急事態」が起きたことにすれば、「政権延命装置」として悪用もできるのです。

そもそも今の憲法でも、解散で衆議院議員が不在の間に緊急事態が起きた場合に備え、参議院の「緊急集会」の定めがあります。「憲法改正」をせずとも十分に対応できそうです。しかし、「憲法改正」を主張する党派は、「緊急集会は、憲法が定める、解散によって衆議院議員が不在となってから総選挙を経て次の国会が開かれるまでの期間、すなわち最長でも70日しか活動できないので、緊急集会だけでは緊急事態に対応できない」とします。

この問題について、18日の憲法審査会では、憲法学者を招いて質疑を行いました。立憲民主党を代表し、私が「解散による衆議院議員不在の期間が国難で長引くときは、緊急集会の活動期間も当然延長されると考えていいのではないか」と、早稲田大大学院の長谷部教授に質問。すると、「70日の日数の限定は、解散後いつまでも総選挙や国会を行わず、民意を反映しない政権が居座ることを防ぐためにある。これを理由に緊急集会の活動期間を限定し、衆議院議員の任期を延長して従来の政権の居座りを認めることは、本来の目的に反する」と明快な答えが返ってきました。憲法は、政権の延命のためではなく、国民の命を守るためにあることを忘れてはなりません。

「許されない『政権延命装置』-選挙先送りのための憲法改正」
https://shina.jp/a/activity/15905/

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