高レベル放射性廃棄物

2020年12月01日

高レベル放射性廃棄物処分場立地調査へのさらなる応募を許さないために

「はんげんぱつ新聞」編集委員 末田 一秀

高レベル放射性廃棄物処分場の候補地については、原子力発電環境整備機構(以下NUMO)が、2002年から公募を行っています。高知県東洋町長が2007年に独断で応募した後に辞任に追い込まれて撤回されたことがきっかけとなり、国による申し入れ方式も併用されることになりました。その後は、2017年に国が有望地を示してテコ入れするとして「科学的特性マップ」が示されましたが、目立った動きはありませんでした。

ところが、ここにきて北海道寿都町長が10月9日に自ら上京してNUMOに応募書類を提出。寿都湾の対岸に位置する神恵内村でも商工会が応募検討を求める請願を提出し、採択の翌日に国が申し入れを行って村長が受諾、10月15日に受諾を伝える文書を発送しています。立地調査の第1段階である文献調査が11月中旬に両町村で始まることになりました。

これまで私たちは文献調査を許さない立場で拒否条例の制定等を呼びかけてきましたから、一歩後退であることは否めません。しかし、実際に文献調査が始まれば、高レベル放射性廃棄物処分場候補地の選定制度がはらむ問題点がより顕在化してくることは確実で、追及の手を緩めずに両町村での調査の撤回も求めていかなければなりません。

また、北海道では両町村の動きに刺激され、滝上町において町議会議員らの呼びかけで、NUMO職員を講師に招いた勉強会が10月17日に開催されるなどの動きが出ています。NHK札幌放送局が行ったアンケート調査に、国から文献調査の「申し入れ」があった場合に乙部町、奥尻町、積丹町、遠軽町、別海町の5町が検討すると回答したことも報じられています。続いて手が挙がるようなことがないよう警戒が必要です。

なぜ候補地調査に手をあげるのか

そのために、なぜ両町村が調査に応募し受諾したのか、分析しておくことも有用です。

もちろんNUMOが行ってきた地域工作が浸透してきたことや、福島事故の「風化」が進んだこともありますが、金で釣る汚い国のやり口の影響が大きいでしょう。文献調査では2年間に最大20億円、仮に次の段階の概要調査に進めば4年間で最大70億円の交付金が出ることになっています。財政難の自治体にとっては魅力でしょう。しかし、これまでの原発立地にともなう交付金では、いわゆる箱物への支出に偏り、立地自治体の振興に役立たなかったばかりか、維持管理費がその後の自治体財政を圧迫していることは広く知られている通りです。ましてや処分場調査の交付金は一時的なあぶく銭に過ぎず、それがどのような効果を生むのか、両町村の結果を注視していきたいと思います。

応募検討を求める請願を出した神恵内村商工会の会長は「欲しいのは金ではなく人と雇用」とも発言しています。人口が8月末現在で823人、直近5年間で100人超減少という過疎化が進む小村の将来像を村民が描けていないことも、原子力村が付け入る大きな要因です。全国的に少子化による自然減の人口減少は避けられませんが、その中にあっても地場産業の振興や移住者の受入れサポートなどに力を入れて社会増につなげている自治体も数多く存在します。そのような努力を放棄して原子力に頼ろうというのでは、地域に魅力は生まれず、人も育たないことから、人口減少に歯止めをかけることはできないでしょう。

候補地調査に手が挙がる要因には、段階的選定というまやかしもあげられます。文献調査、概要調査、精密調査の3段階が法律に定められ、次の段階に進む際に知事と当該市町村長の意見を聞き「尊重」すると規定されていることから、反対であれば次の段階に進まないと説明されてきました。今回、北海道鈴木知事は反対する旨を早くから表明していますから、文献調査を行っても処分場立地とは別という詭弁が成立しています。梶山経産大臣も「知事または市町村長の意見に反して概要調査地区等の選定を行うことはない」とした文書を発出して、応募へのハードルを下げることに腐心しました。結果、国を信じられるかどうかという不毛な議論まで行われました。文献調査時にNUMOは現地事務所を設けて「対話活動」を進めるとされており、後戻りできなくなるおそれをどう理解してもらうのかが課題となっています。

問われる地域の民主主義

特に寿都町のケースでは、当初賛否が拮抗していれば応募しないとしていた町長が「肌感覚で賛成が多い」として応募してしまった独断の問題にも触れざるを得ません。住民投票条例の制定が求める直接請求署名が選管に提出された翌日の応募でした。町議会のあり方も問われます。全員協議会という非公開の場で検討を進め、「町民に伺いを立てて勉強会をするっていったらかえって面倒な話になる」という町長の発言を許していたばかりか、問題が報じられた後でさえ議事録の公開を拒んでいます。情報公開や説明責任が徹底され、民主主義が正しく機能していれば、原子力の立地は進まないはずです。(すえだ かずひで)

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