10年目の福島

2021年01月01日

トリチウム汚染水で海を汚すな!国は加害を繰り返してはいけない

「10年目の福島で、いま」第1回
福島県平和フォーラム 共同代表 山内 覚

2019年7月、東電は福島第二原発の全基廃炉を正式決定しました。このことは私たちが継続してきた運動の成果であり、福島からの脱原発運動は、大きな一歩を踏み出すことができました。同時に、運動も新たな段階に入りました。第二原発廃炉の方針が出されても、被災県民の生活再建や被ばくした事実と健康への懸念を払しょくできるものではありません。過酷事故を起こした東電と国の責任が免除されたわけでもないし、罪が消えたわけでもありません。

そして今度は、「トリチウム汚染水」を海洋放出しようとしています。国も東電も、「福島の復興と廃炉の両立は大原則」と言っていますが、今やろうとしていることは「人々の犠牲の上に廃炉を進める」ということに他なりません。

排出基準値の2万倍も上回る汚染水

福島第一原発では、事故で壊れた原子炉建屋に流入した地下水が、高濃度の放射能汚染水となり、放射性物質の多くは、多核種除去設備(ALPS)で除去されタンクに保管されています。しかし、トリチウムは除去できません。現在約860兆ベクレルのトリチウムを含んだ汚染水が保管されています。しかも事故直後のALPSは性能も低く、大量の汚染水の処理を進めたことで、トリチウム以外にも除去しきれなかったストロンチウムなど62の放射性核種が大量に含まれており、現在タンクに貯められている水の約7割で排出基準を上回っており、最大で基準の2万倍となっています。

国は、新たにタンクを増設しても、2022年内にはタンクの容量も満杯になるとして処分を急いでいます。2019年11月に経産省は、トリチウム汚染水を、海洋放出または大気放出を行った場合の追加被ばく線量は、一般の人の年間被ばく線量よりも低く「影響は十分に小さい」とする見解を出し、2020年2月に小委員会は、「海洋や大気へ放出することが現実的であり、海洋放出の方が確実に実施できる」とする報告書をまとめました。まさに、処分方法は、海洋放出など環境放出ありきで、陸上保管の継続については否定しています。

脱原発福島県民会議は8月、原水爆禁止日本国民会議とともに、原水禁世界大会福島大会の一環として、「トリチウム汚染水の海洋放出学習会」を開催しました。漁師の生の訴えを聞き、海とともに生きてきた人たち、これから海とともに生きていく人たちの生業を切り捨てるものだということを改めて確認しました。また、長沢啓行大阪府立大学名誉教授の講演を受け、トリチウム汚染水の現状や様々な法令違反、国際条約違反の問題など、専門的な観点から「トリチウム汚染水海洋放出反対の根拠」について学びました。

県民の訴えに国は誠意のない説明

私たちは、福島としてのトリチウム汚染水の環境放出に反対する根拠を明確にしてきました。①事故を起こした国と東電が、自らの対応の不備から生じた「トリチウム汚染水」の蓄積に対し、自らの都合の解消のために、再び放射性物質を放出し汚染を拡大させることは、「故意による二次的加害行為」である。②海洋放出は、稼働中の原発でも行われていることから、「海洋放出は安全だ」と言っているが、健康への影響と自然体系への影響等についても、決して安全だとは言い切れない。私たちの求める「安全・安心」は、放射性物質は「外に出さない」ということ。③トリチウム汚染水の放出は生活再建、放射能の低減などによる信頼回復、風評被害の払しょく、故郷の復興など、これまで9年かけてとりくんできた、すべての被災者、農業、漁業、林業、観光業などの従事者、被災自治体などの努力を崩してしまう、実害をともなう大きな問題である。④国と東電は、漁業組合など関係者と「ALPS処理水は海に流さない」とした約束をしている。その約束を破り、国の施策と企業の生き残りを優先させようとしている。⑤国際条約、国内法等に違反する可能性が極めて高い。

「原発のない福島を!県民大集会」実行委員会で取り組んできた「トリチウム汚染水の海洋放出に反対する署名」には、福島県はもとより、全国、さらには海外からも多くの賛同を得て、実行委員会は、8月27日と10月2日に、合わせて42万8,000筆余の署名を経産省に提出し、トリチウム汚染水の環境放出しないよう強く求めてきました。その後届いた署名を合わせると11月末時点で約45万筆集約されています。

12月6日には、脱原発福島県民会議と原水爆禁止日本国民会議は、福島市で市民に対する政府説明会を開催しました。参加者からは、様々な問題の指摘や国のやり方に対する疑問、新たな提案などたくさん出されました。しかし政府の説明は、新たな判断は示さず、従来の説明に終始していました。

これからも、「トリチウム汚染水」を安易に環境放出せず、放射能の自然減衰を待つとともに分離技術の開発がされるまで、陸上保管を継続することを求めていきます。(やまうち さとる)

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