12月, 2016 | 平和フォーラム

2016年12月30日

平和軍縮時評2016年12月号 日米地位協定の抜本的改定を―国内法の適用の拡大を!  湯浅一郎

 

16年12月13日夜、沖縄県名護市安部(あぶ)沖の浅瀬でオスプレイが着水し、大破する事故が発生した。オスプレイ普天間配備から4年強が経ち、遂に懸念していたことが起きてしまった。この事故をめぐって日本側は、事故機の調査に関して全く閉ざされたままである。14日、海上保安庁は航空危険行為処罰法違反容疑での捜査を始め、米軍に対し乗員の尋問を要請したが、今に至るも米軍からの回答はない。2004年8月、沖縄国際大学にCH46ヘリが墜落した事故での米軍の行動を機に、「施設・区域外での合衆国運用航空機事故の関するガイドライン」が作成されたが、これは事故による災害救助などに関わるもので、事故原因を究明する調査を共同で実施するなどに関しては何も盛り込まれていない。地位協定17条により基地外の事故現場の統制が米軍側にゆだねられている状況は依然として変わっていない。
また16年5月19日に沖縄県で起きた米軍属による女性死体遺棄事件は、軍隊・基地が持つ本質的な非人間性を象徴する痛ましい出来事であったが、政府は、再発防止策と運用の改善を求めるだけで、何ら本質的な対処をしようとはしなかった。
これらの問題は、日米安保条約や、その実体としての地位協定には、市民の生活権よりも米軍や米兵の都合を優先させる思想が貫かれていることから発生している。日本国憲法の重要な特徴の一つは国民主権であるが、こと安保や地位協定では、初めから国民主権はどこかに置き去りにされたままである。
地位協定は28条からなり、その正式名称は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(1960年1月19日)で、「施設・区域の使用の在り方や我が国における米軍の地位について定めた国会承認条約」である※1。地位協定の実施に関する協議機関として日米合同委員会があり、2週間に1回の会合を持ち、国内法との調整等が行われてきている。しかし、ここでの議論は、ほとんど非公開である。そこで、地位協定における国内法の適用を拡大させ、抜本的に改定することをめざし、とりあえず地位協定をめぐる問題をおさらいしてみたい。

1.   アメリカの地位協定と学ぶことが多いドイツ協定

米議会調査局報告書※2によると、アメリカが各国と結んでいる駐留軍隊の地位に関する協定は、NATO加盟国、地位協定に関する当局の基本的典拠としての条約(日本、韓国など)など多岐にわたり、以下のように115以上はある。

  1. 北大西洋条約機構:地位協定;25か国(NATO加盟国)。
  2. 北大西洋条約機構:平和計画のための協力;24か国(オーストリア、スイス、アイルランド、フィンランド、ロシア、ウクライナなど)。
  3. 地位協定に関する当局の基本的典拠としての条約;9か国(日本、韓国、アフガニスタン、オーストラリア、フィリピン、イラク、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス)。
  4. 地位協定に関する当局の基本的典拠としての議会決議;3か国(マーシャル諸島、ミクロネシア、パラウ)。
  5. 地位協定を含む基地貸与協定(英国との協定);6か国?(バハマ、バミューダ、デイエゴガルシァなど)。
  6. 特定活動・演習の支援における地位協定;12か国(エチオピア、ガボン、ネパール、ペルーなど)。
  7. 基本となる条約や議会行動に基づかない特定活動・演習の支援における地位協定;48か国(アフガニスタン、バーレーン、ジブチ、イスラエル、ケニア、ソマリア、スーダンなど)。

上記のなかで、市民の人権と生活権を守るという視点から最も優れているのが「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定」(1959年8月、1993年3月改定)※3である。同協定は、緻密性、体系性に優れ、国内法適用原則を項目ごとに具体的に定めており、それにより住民への配慮を確保しようとしている。例えば、

  1. ドイツの主権およびドイツ常駐同盟国軍によるドイツ法の遵守を強化すること。
  2. 同軍の行動条件をドイツ国防軍に適用される条件に組み替えること。
  3. 軍事演習場以外での演習はドイツの有権的当局の許可を要すること。
  4. ドイツの環境法は、軍事基地の使用についても適用されるべきものとすること。
  5. 陸路、水路または空路による軍事的移動、とりわけ危険な貨物輸送には、ドイツの交通法規が厳格に適用されること。

冷戦終結という事態の流れの中で、大幅な改定が実現したものと推定されるが、これが作られた経緯に学ぶべきであろう。関係自治体の機関による駐留外国軍隊の施設区域への立ち入り権も認められている。ただし、ドイツでも、刑事裁判権の拡大に関しては、見るべき前進はなかった。米国の抵抗の大きさが伺える。いずれにせよ国内法の適用を拡大させていく流れをいかに作っていくのかが問われている。

 

2.   自治体の努力とそれとの連携強化を

地位協定の改定については、関係する自治体が独自に政府への要請を継続している。在日米軍基地のある都道府県で構成する渉外関係主要都道府県知事連絡協議会は、継続的に包括的な「基地対策に関する要望書」(別冊)※4を出し、そこには「地位協定の改定に関する15項目の要求」が盛り込まれている。長いが参考になるので紹介する。

  1. 2条、施設・区域の提供など。
  2. 第3条、基地内への立ち入りへの速やかな対応。
  3. 環境条項の新設。-平常時の環境調査。
  4. 基地に起因する事故時における情報提供。
  5. 第4条、基地の返還に伴う原状回復義務の明記。
  6. 第5条、米艦船、航空機の使用時の国内法適用。
  7. 第9条、検疫や保健衛生の規定がない。
  8. 第17条、日本が要求するすべての場合に、被疑者の起訴前の拘禁移転が行えるようにする。
  9. 第17条、基地外における米軍財産につき、日本国当局が捜索、差し押さえなどの権利を行使できる。
  10. 17条、基地外の事故現場の統制は、日本国の当局の主導の下に行われること(沖国大ヘリ事故)。
  11. 18条、公務外の米軍等が起こした事件などでの損害賠償額の日米政府による補てん。
  12. 米軍等の給料を差し押さえできるようにする。
  13. 第25条、日米合同委員会の中に、地域特別委員会を設置。
  14. 日米合同委員会の合意事項の速やかな公表。
  15. 騒音軽減措置や飛行運用の制限に関する規定を設ける(最低安全高度を定める国内法の適用)。

項目10.は、16年12月の沖縄でのオスプレイ事故における統制は、まさにこの項目に該当する。この知事連絡協議会の取組みは重要なのであるが、一向に実現への流れが見えてこない。政府を動かすためには、市民の側から、自治体に働き掛けや情報提供をすることで、この力を強めていくことが求められる。

 

3.   地位協定無視の政府を地位協定で縛る

地位協定をめぐる問題で、もう一つ重要なことは、政府が地位協定を無視している場合、それを地位協定で縛る取組みである。具体的に米軍機による低空飛行訓練を例に考えてみよう。
日本列島には米軍機が低空飛行訓練を行う航法訓練ルートが8本あると言われる。これは、奈良県十津川での林業用ケーブル切断事故や高知県早明浦ダムでの米空母艦載機墜落事故など過去のいくつかの事故報告書から明らかになってきたもので、普天間配備オスプレイに関する米海兵隊作成の「環境レビュー」(2012年6月)で初めて地図上で示された。言うまでもなく、このルートは基地の提供施設や訓練場でない一般空域で、地域住民の生活する場であり、スキー場やハイキングコースとも重なっている。このような一般空域で、何故米軍の訓練が可能なのか?そもそも地位協定にそれに該当する条文があるのかが問題になる。実は、政府も地位協定には該当条項がないことを認めているのだが、1980年代後半からの長い経過がある。
外務省機密文書「地位協定の考え方」初版(1973年)は、「通常の軍隊としての活動(例えば演習)を施設・区域外で行うことは、協定の想定していないところであると考えられる」としている。
しかし、その増補版(1983年)になると、「米軍の軍隊としての機能に属する活動はいかなるものであっても施設・区域外において行い得ないかといえば、例外的に認められるものがあり得ないわけではないと考えられ、個々の活動の目的・態様等の具体的な実態に即し、同協定に照らし合理的に判断されるべきことと考えられる」と大きく変化する。
更に1988年12月23日付、政府答弁書は、「日米安保条約が米軍の日本駐留を認めていることは、低空飛行訓練を含む軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としており、米軍は個々の飛行訓練の内容等について、我が国に連絡する必要はない。」、「米軍による実弾射撃等を伴わない通常の飛行訓練について日米地位協定は施設・区域の上空に限ることを想定しているわけではなく、施設・区域の上空外で行われることは認められる。」となった。
何と安保条約そのものが、施設・区域外での訓練をも保証しているとしたのである。ここには、低空飛行訓練に伴う事故が繰り返される中で、政府は、住民の生命と安全をより確保する道ではなく、返って米軍の低空飛行訓練を正当化する方向に解釈を切り替え、居直った様子が見てとれる。
このような経過を踏まえると、低空飛行訓練も「地位協定に照らし合理的なものと判断できるのか」と問うていくことが重要であろう。
合わせて、米軍機には、最低安全高度を定めた航空法第81条の規定の適用を米軍機には除外するという航空特例法が適用されている。この正式名称は、「地位協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」である。つまり「地位協定の実施」という縛りがかかっている。しかし地位協定の条文には「施設・区域外の訓練」に関する記述は全く存在しないのである。地位協定に根拠がない中で、「地位協定の実施に伴う特例」がどう適用されるのかを追求していくことが必要である。それを通じて、特例法を廃止し、米軍機にも航空法を適用すべきであるとの声を集中すべきである。

4.   改定すべき日本ジプチ交換公文

最後に日米地位協定のあり方を考える上で、忘れてならない「ジプチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本・ジブチとの交換公文」(2009年4月3日)にふれておきたい。同公文第8項目は、公務中、公務外に関わりなく「日本国の権限のある当局は、ジブチ共和国の領域内において、ジブチ共和国の権限のある当局と協力して、日本国の法令によって与えられたすべての刑事裁判権及び懲戒上の権限をすべての要因について行使する権利を有する。」としている。これは、日米の差別的な関係性をそのまま、日本ジプチの関係に持ち込んだものといってもいい。このような協定を結んでいる日本に、日米地位協定を抜本的に改定せよと求めていく正当性はない。我々は、ジプチとの差別的な交換公文の改定をも求めていかねばならない。

本稿で見た渉外関係主要都道府県知事連絡協議会の継続的、包括的な取り組みは重要なものだが、その具体化には壁がある。そうした中では、具体的な課題を取り上げ、自治体、市民が認識を共有して協力しながら追及していくことが重要であろう。
沖縄で起きたオスプレイ事故を機に、自治体の多くも、オスプレイの安全性に対する不安や懸念が再度、関心事となっている。オスプレイの配備と飛行について「周辺住民の安全性への懸念、不安が解消されていない」ことにこだわることで、自治体と市民が問題意識を共有することができる。今回の事故は、比較的安全とみられる固定翼モードにおいて、プロペラが損傷することから発生しており、オスプレイの慢性的な揚力不足という構造的な問題が見えてきている。
今後、日本では横田配備のCV22空軍オスプレイをはじめ、約53機のオスプレイ配備が計画されており、その多くが低空飛行訓練を行う公算が強く、日本列島のどこで事故が起きてもおかしくない状態が出現する。特に17年に横田に配備が予定される空軍仕様CV22オスプレイは特殊作戦部隊の輸送任務を有しており、夜間低空飛行訓練の実施が予想される。CV22の訓練空域は、三沢、キャンプ富士、ホテルエリア※5、沖縄の4か所が想定されており、訓練空域への行帰りに7本の低空飛行訓練ルートを使用し低空飛行を含めた訓練が行われるであろう。従来からの戦闘機や輸送機による低空飛行訓練に加えて、オスプレイの低空飛行が始まるのである。
従来から低空飛行問題では、中国地方知事会をはじめ、訓練ルート下の多くの自治体が訓練の中止や住民の安全への配慮を求め続けている。訓練空域、低空飛行訓練ルート下の自治体を含め、幅広く総合的な自治体のネットワークを作り、連携して声をあげて行く必要がある。それを突破口に地位協定に穴をあけていく道筋が見えてくるはずである。

注(※)

  1. 外務省HP。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/
  2. 米議会調査局(CRS)報告書(2012年3月15日)。
    Status of Forces Agreement (SOFA):What Is It, and How Has It Been Utilized?
    R. Chuck Mason Legislative Attorney  March 15, 2012
    http://fas.org/sgp/crs/natsec/RL34531.pdf
  3. 「ドイツ駐留NATO軍地位補足協定に関する若干の考察―在日米軍地位協定をめぐる諸問題を考えるための手がかりとして―」本間浩(国立国会図書館『外国の立法』221(2004.8))。http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/221/022101.pdf
  4. 渉外関係主要都道府県知事連絡協議会;「基地対策に関する要望書(別冊)(日米地位協定関係)」、16年7月。
    http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/837041.pdf
  5. 群馬県を中心に長野県、新潟県、福島県、栃木県にまたがる一般住民が生活している空域。従来から空母艦載機の低空飛行訓練が問題になっている。

2016年12月28日

ともに闘う 2017ファーストアクション 1.7新宿西口大演説会に集まろう!

安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合と戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は下記の通り、新春街頭演説会を開催しますので、ご紹介します。

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ともに闘う 2017ファーストアクション 1.7新宿西口大演説会
日時:1月7日(土)13時30分~14時30分
場所:新宿駅西口
内容:立憲野党各党代表、市民連合から ほか
主催:安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合/戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

 

2016年12月21日

辺野古違法確認訴訟最高裁上告審での棄却決定に対する抗議声明

辺野古違法確認訴訟上告審での棄却決定に対する抗議声明

フォーラム平和・人権・環境

共同代表 藤本泰成

   12月20日15時、「主文、本件上告を棄却する」最高裁第二小法廷鬼丸かおる裁判長の声が響いた。一言も聞き漏らさないと真剣に耳を傾けていた40人くらいの傍聴者から、一斉に抗議の声が上がった。最高裁は、翁長雄志沖縄県知事の主張や沖縄県民の声に耳を傾けたのだろうか。傍聴者の期待は裏切られ、判決の言い渡しは数秒で終わった。国になり代わって、「辺野古が唯一」と論じた福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)の判断については、最高裁で言及されなかったものの、辺野古新基地建設のために埋め立てを認めた仲井眞前知事の判断に違法性はないとした高裁判決を追認した。平和フォーラムは、憲法に規定された地方自治の本旨に反し、沖縄県民の多数の民意を顧みることなく、地域住民の自己決定権を認めない司法の不当な判断に、沖縄県民とともに大きな怒りを持って抗議する。

   判決は、沖縄県に集中し市民生活の安全と命を脅かす米軍基地、沖縄の経済発展の阻害要因としての米軍基地についてまったく顧慮していない。さらに、「国と地方は対等な関係」とする、1999年の地方自治法改正の流れにも逆行するものである。国と地方の紛争での初の裁判であり、本来であれば地方自治法に照らした判断をすべきであったにもかかわらず、福岡高裁の不当性に言及せず、多くの点で判断を回避している。国地方係争処理委員会の役割についても軽んじた判断をしていることも問題だ。判決は、結果的に、地方が国に従属するかつての国と地方の関係をいまだに残していると言わざるを得ない。翁長知事は、福岡高裁那覇支部の判決に対して「地方自治は死に、日本の未来に禍根を残す」と訴えていた。まさに、その通りの結果を引き起こすに違いない。

   安倍晋三首相は2013年、サンフランシスコ講和条約発効の4月28日を「主権回復の日」として祝賀式典を強行した。沖縄県民はこの日を、日本から沖縄を切り捨てた「屈辱の日」として記憶している。日本の主権の及ばない米軍基地の多数を沖縄県に押しつけられ、事故率の高い危険な米海兵隊MV-22オスプレイが、沖縄のすべての自治体と県民の反対を押し切って強行配備された。高江のヘリパット建設では抗議する市民を、日本政府が機動隊の手によって暴力的に排除している。12月13日に、沖縄の北部海岸にオスプレイが墜落し大破した。しかし事故原因の究明も不十分のまま6日後には、米軍は沖縄県民の頭上でオスプレイの飛行を開始した。主権の及ばない米軍基地があるがゆえに引き起こされてきたレイプや殺人事件、米軍機墜落事故など、これまでも抜本的な対策が立てられることなく、なおざりにしてきた。米軍の思うがままに、あまっさえそれに手を貸す安倍政権のあり方は、「主権回復」とは到底いいがたい。

   平和フォーラムは、「辺野古の問題は沖縄県だけでなく、民主主義の根幹に関わる問題」とする翁長知事の主張にしっかりと応えたいと思う。日本の民主主義のために、平和と人権のために、沖縄県民と連帯して全国で辺野古新基地建設阻止の闘いをすすめていくことを改めて確認する。

2016年12月15日

オスプレイ墜落事故で 防衛省に申入れ

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フォーラム平和・人権・環境とオスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会(代表世話人 湯浅一郎)は1215日、13日夜に発生した米軍オスプレイの名護市東岸沖での墜落事故および普天間基地での胴体着陸事故に対して、防衛省に緊急の申しいれを行いました。申し入れには、沖縄等米軍基地問題議員懇談会で新しく事務局長に就任した石橋通宏参議院議員も同席しました。

 東日本連絡会の湯浅代表が、オスプレイの墜落事故の真相究明、事故率の上昇についての説明、普天間配備のオスプレイの撤去や今後予定されている横田基地や木更津基地での配備計画を中止することを訴えました。これに対し防衛省は、米国に対して「安全性が確認されるまで飛行停止すること」を求めたところ、米国から「(オスプレイの)飛行を一時停止」する回答があったと述べました。しかしながら、そのほかの要請に対する防衛省の回答は、これまで4回にわたって東日本連絡会が防衛省、外務省と積み重ねてきた交渉時の回答の域を出るものではありませんでした。深刻な事故が立てつづけて起きてしまったことの重大さの認識が、極めて薄いと言わざるを得ません。

 

 平和フォーラムと東日本連絡会は、年明けにも防衛省、外務省と5回目となる要請交渉を行い、危険なオスプレイの撤回と配備計画の中止を求めた交渉を重ねていくことにしています。

緊急申入書はこちら

2016年12月10日

12・10高江・辺野古新基地建設を許さない 全国アクション

国が沖縄県を訴えた「不作為の違法確認訴訟」で、9月16日の福岡高裁那覇支部で下された不当判決に抗議し、最高裁で破棄、差し戻しを求める集会が全国各地で開催されました。また、高江ヘリパッド建設をめぐって、違法な行為を行ってまで工事を強行する安倍政権の姿勢や、山城博治・沖縄平和運動センター議長らの長期にわたる勾留とセンター事務所をはじめヘリ基地反対協議会事務所などへの強制捜査など、度重なる権力の弾圧に抗議の声をあげられました。

 

12月10日には、沖縄県高江のN1ゲート前(700人)、東京・日比谷野外音楽堂(3900人)をはじめ、北海道、茨城、長野、富山、福井、愛知(東海ブロック、600人)、大阪(4000人)、兵庫、奈良、岡山の全国12か所で同時全国アクションが行われ、12月中旬までに、全国39か所で街頭行動、署名活動などが取り組まれます。

(写真は12月10日、東京・日比谷野外音楽堂 撮影 今井明)

 

全国アクションへの基地の県内移設に反対する県民会議からのメッセージ

 

全国アクションメッセージ

 

全国各地での集会参加の皆さん、大変ご苦労様です。

東村高江のゲート前では、多くの県民がオスプレイパッド建設に反対し、座り込み行動をするなか、大型ダンプによる砂利の搬入が続いています。政府が年内にオスプレイパッドを完成させ、返還式典を行うと強引に打ち出し、それによる無謀な工期短縮のなか、杜撰な工事が続いています。未だに多くの砂利を搬入する状況から、完成にはまだまだ時間を要する工事です。しかし、政府はそんなことなどお構いなしに、沖縄の基地の負担軽減を全国にアピールし、反対運動を委縮させる姑息な画策を実行しようとしています。

ご承知のとおり、返還予定の北部訓練場の過半は、実質、米軍がほとんど運用していない区域であり、過半の返還に名を借りた沖縄への米軍基地の機能強化にほかなりません。新たなオスプレイパッドは、高江集落に隣接し、住民を標的にした訓練に使用されるものであり、墜落の危険性や爆音により生存権までもが脅かし続けられます。政府が標榜する口先だけの「基地の整理縮小」「沖縄の負担軽減」「危険性の除去」は、すべてが現実とかけ離れ、逆に「沖縄への基地押し付け」「日米軍事同盟の強化・優先」を推し進めています。県民の総意を無視し、米国追従と民主主義を否定する政府の傲慢な沖縄弾圧は許せません。

他方、辺野古の新基地建設をめぐっては、最高裁判所において審理が進められているなか、沖縄防衛局が、「陸上部の隊舎工事は新基地建設に関連がない」とし、12月中に工事を再開するとしています。沖縄県もそのことを確認したとして陸上部の工事を了承していますが、私たちは、その工事が、新基地建設に繋がらないよう警戒を強め、引き続き辺野古新基地建設阻止の行動を強化していかなければなりません。そして本格的な工事再開を許さず、政府が辺野古新基地建設を断念するまで粘り強く行動を進めていく決意です。

全国から動員された500人の警察機動隊、県警の暴力が止みません。警察による異常な規制と警備は、憲法や警察法を明らかに逸脱した権力の乱用そのものです。不当に多くの仲間を逮捕し起訴するということは、県民の運動に対する弾圧であり,到底許すことはできません。さらに沖縄県警は、11月29日、名護市辺野古の新基地建設をめぐり、既に逮捕、拘留されている沖縄平和運動センター議長を不当に再逮捕し、沖縄平和運動センターなどの事務所を家宅捜索しました。今回の逮捕、捜索は今年1月28日の辺野古キャンプシュワブゲート前の抗議行動についてのものであり、10か月も経った今の時期に敢行することは、明らかに政治弾圧であり、違法な権力の横暴です。

私たちは、このような非道な弾圧には決して屈しません。全国の皆さんのご支援を引き続きお願いするとともに、安倍政治に終止符を打ち、真の民主主義を勝ち取るまで連帯を強めていきましょう。大変ありがとうございました。

 

2016年12月10日 

 

基地の県内移設に反対する県民会議

 

2016年12月09日

TPP協定・関連法案の採決強行に抗議する声明

TPP協定・関連法案の採決強行に抗議する
 

フォーラム平和・人権・環境 事務局長  勝島 一博

 本日(12月9日)、参議院において、環太平洋経済連携協定(TPP)の批准と関連法案(11法案)の採決が強行・成立しました。圧倒的多数の国民が今国会での批准に反対している中で、十分な審議を尽くさないまま、採決を強行したことに断固抗議するものです。
 TPP協定は、農業や食の安全をはじめ、医療・医薬品、サ-ビス貿易、投資、政府調達、国有企業、地域経済・中小企業への影響など多くの分野におよぶものです。そして、農産物の自由化など国会決議に明らかに違反するものです。しかし、政府は交渉内容や経過についての情報を十分に開示しないまま審議を打ち切りました。TPPが人々のいのちや暮らし、地域、主権を脅かし、多国籍企業の利益を追求するためのものという懸念がますます強まっています。
 そのうえ、ドナルド・トランプ次期米国大統領は、1月の大統領就任と同時に「TPPからの離脱」を宣言しており、TPPが発効する見通しは全くない中で、採決が強行されたことはまったくの暴挙です。しかも、トランプ次期大統領は、「日米二国間の自由貿易協定(FTA)」を提唱しています。今回のTPP批准は、日米FTAを進める事態になった時に、交渉のベースとなることを認めるものであり、米国からはさらに過酷な条件が提示される危険性が出てきました。そのために、改めて、TPP協定の経過や問題点を明らかにさせる必要があります。
 平和フォーラムはこの間、TPPに反対する関係団体とともに「TPPを批准させない!全国共同行動」を立ち上げ、事務局団体のひとつを担ってきました。通常国会および臨時国会開会中には、中央集会・行動のほか、毎週水曜日に国会議員から報告を受けながら市民と意見交換を行う院内集会や議員会館前での抗議行動、国会内の審議のヤマ場などに連続的な座り込み行動などを行い多くの市民も参加しました。また、「TPP協定を今国会で批准しないことを求める緊急署名」を70万筆以上集約し国会に提出した他、各地での集会や国会議員対策を進めてきました。
 私たちは、今回の安倍政権の暴挙を許さず、今後も国内外の団体と連携をとりながら、今後予想される日米二国間協議や様々な貿易交渉に対し、いのちと暮らし、地域を守るために運動を続けていきます。
 

2016年12月02日

高江・辺野古新基地建設反対行動に対する警察・司法当局の不当弾圧に抗議する声明

 2016122

 

  高江ヘリパッド建設・辺野古新基地建設への弾圧を許さず、

不当な逮捕者全員の即時釈放を求める声明

 

フォーラム平和・人権・環境

共同代表 福山真劫

藤本泰成

 

 いつまで拘束するつもりだ。沖縄平和運動センターの山城博治議長ら高江や辺野古における基地建設に反対し行動する人たちが、傷害・公務執行妨害・器物破損などの取るに足らない微罪をでっち上げ、不当にも長期にわたって拘束されている。沖縄県民の願いである辺野古新基地建設反対の運動を萎縮させ、抗議行動と一般県民の分断を図ろうとするものであり、かつ、沖縄県と国が法律に則った裁判で争う基地建設に、国の立場に立って警察・司法が荷担するという憲法理念にも反する暴挙だと言わざるを得ない。

 さらに1129日には、キャンプシュワブ入口においてブロックを積み上げたとする「威力業務妨害」という新たな罪状をでっち上げ、山城議長の再逮捕を含め4人を逮捕し、沖縄平和運動センターや辺野古の市民テントなどを強制捜査した。そもそもブロックの積み上げは、警察の監視下、警備態勢を敷かれたなかで、行われた行為であり、しかも、その後直ちに警察がブロックの撤去を行なっている。威力業務妨害罪の適用の要件を満たしているとは考えられない。10か月を経過した後の関係者の逮捕には、再開がもくろまれている辺野古新基地建設工事を、迅速かつスムーズに行おうとする計画的な意図があるとしか思われない。

 この間、海上や陸上での抗議行動では、抗議する市民に対する暴力的ともいえる排除が行われてきた。実際に肋骨を折られ、生命の危険を感じるような行為を受けた市民は多数いる。しかし警察官や海上保安官の処罰や謝罪は一切無い。警察権力の行使のはじめから、市民は犯罪者扱いされ敵視されている。

 旧憲法下での警察は、特高警察に象徴されるように、治安維持法などを利用した思想弾圧を行い、市民社会の政府への批判を押さえ込んだ。戦後、基本的人権の尊重と民主主義、国民主権を基本とする日本国憲法の下、民主的な公安委員会制度を確立し、人権と民主主義を守り、犯罪から国民の安全を確保する市民の警察に生まれ変わったのではなかったか。高江や辺野古の政府側に立った警察の行動は、警察法が規定する「公正中立」の原則に反し、市民が政府に向かって物言えぬ戦前の社会を再来させる、立憲主義をも崩壊させる蛮行である。

 沖縄県民は、選挙のたびに辺野古新基地建設に反対の声を上げ続け、そして勝利を重ねてきた。基地建設を強要している政権与党は、国政での沖縄選挙区からは一切排除されている。その意味を、沖縄県警はしっかりと把握し行動しなくてはならない。そして、警察は法の下に常に公正中立でなくてはならない。

 平和フォーラムは、山城博治沖縄平和運動センター議長ほか拘束している全員を、即時釈放することを強く求める。加えて、権力に屈せず沖縄県民とともに基地のない平和な沖縄のために闘い続ける。

2016年12月01日

原水禁/「高速炉開発計画の方針」の撤回を求める声明

(more…)

2016年12月01日

「押しつけられた憲法」という欺瞞

1946年11月3日の日本国憲法の公布から70年が過ぎた。安倍政権が誕生してから「憲法押しつけ論」が横行し、自主憲法制定の声が高まっている。1969年に、安倍首相の祖父の岸信介が「自主憲法制定国民会議」を立ち上げたことを思い起こす。安倍晋三は「祖父や父のできなかった憲法改正をやり遂げたい」と過去に述べていることから、事態がさらに進むことは明らかだ。

11月3日の産経新聞は「GHQ“素人”が米合衆国憲法を『コピペ』で原案押し付け憲法なのに一度も改正せずもう70年」という記事を掲載し、日本国憲法は連合国総司令部(GHQ)にいた憲法の素人が合衆国憲法を切り貼りした「コピペ」と呼ぶしかないものと主張している。また、「『制度疲労』を起こした条項は多岐にわたる」と主張しているが、憲法9条以外に具体的な言及はない。

読売新聞は、同じく3日の社説で「憲法公布70年新時代に即した改正を目指せ」として「時代の変遷に伴い、現実との様々な乖離が生じていることは否定できない」と主張しているが、改正すべき点は、議員のアンケートを基に「自衛のための組織保持」とやはり9条改正をトップに置いている。「国と地方の役割」「環境権」「参院選の合区解消」「緊急事態条項」などを並べてはいるが、それらは一般法の中で解決できる課題であり、説得力に欠ける。

改憲論の多くが、押しつけられた憲法と主張し改正が必要としているが、「何がどのように問題で、憲法改正が必要なのだ」という具体的な話は、憲法9条以外には聞いたことがない。「気に入らないから変える」というような幼稚な議論にしか聞こえない。同時に、この人達は憲法の「平和主義」を目の敵にしている。

日本国憲法は、情けないが自らの手で作ることができなかった。それは事実だ。憲法調査会が出した案は、天皇を元首とした旧態依然としたもので、マッカーサーは、だからこそ「平和主義・象徴天皇・封建制の排除」との憲法作成の指示を出したのだ。しかし、その憲法は、権力に怯えて物言えず戦争に倦いていた日本社会に、圧倒的賛同を持って受け入れられていった。産経新聞が素人が作ったという憲法は、70年もの長きにわたって日本社会を支え続けてきた。そのことから議論を始めるべきだ。
(藤本泰成)

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