8月, 2017 | 平和フォーラム

2017年08月31日

世界の核戦力の現状を知ろう―核兵器禁止条約を活かすために― 湯浅一郎

1)核兵器禁止条約の成立
 17年7月7日、核兵器禁止条約を交渉する国連会議は、投票124か国中、賛成122の賛成多数で条約を採択した。被爆者を初め、世界中の市民の悲願であった、非人道大量破壊兵器である核兵器を違法とし、禁止する条約がようやくできたのである。しかし、条約には、核兵器国、及び安全保障を核兵器に依存する国々(NATOや日本など)は参加していない。唯一の戦争被爆国として、核兵器の非人道性を最もよく知るはずの日本は、核保有国と禁止条約推進国との橋渡しの役割を果たすためとして参加していない。ともあれ、この案は9月20日にニューヨーク国連本部で署名開放され、50か国が署名・批准した後90日で発効する。2018年の早い段階で発効することになるであろう。
 しかし、誤解してはならないことは、残念ながら条約の発効は「核のない世界」へ向けての終わりの始まりに過ぎない。むしろ、これから禁止条約を「核兵器のない世界」実現への手がかりにする意志を持った市民の取組みが必須である。
安全保障を核兵器に依存する政策の保持にこだわる核兵器国は、安全保障に関わる国際環境を考慮すると時期尚早と核兵器禁止条約を全く相手にしようとしていない。それどころか、どの国も核戦力の近代化を続けている。本稿では、世界の核戦力の現状を概観する。 「核のない世界」実現のためには、これらとそれに依存する努力をゼロにせねばならないのである。

2)世界の核戦力の現状;概観
 2010年ころから核弾頭について公的な情報が出はじめたとはいえ、まだまだ公開性は不十分である。2015年NPT再検討会議では、核兵器国が不十分ながら統一様式で核兵器政策の報告書を提出した。しかし、核兵器の定量的データは含まれていない。米国政府は10年5月3日、全備蓄核弾頭数の年ごとの変遷を公表し、その後は、ほぼ毎年、それをアップデートしてきた。また、米国は11年3月1日から半年ごとに戦略兵器削減条約(START)交換データにおける運搬手段の内訳と核弾頭総数をすべて公表しているが、ロシアは条約義務で米国に提供している内訳情報を一般公開しないよう米国に求めている。フランス政府は、08年3月21日に核弾頭の総数を300発以下に減らす予定と発表したが、15年2月9日、オランド大統領(当時)は、300弾頭の現状のほか、空中発射巡航ミサイルの総数(54発)を公表した。英国政府は、10年5月26日、議会に対して備蓄核弾頭は将来225発を超えないと発表していたが、15年1月20日、議会で作戦配備弾頭を120発に削減したと発表した。
 15年4月27日の米国防総省ファクトシートは、弾頭の保管状態を「活性状態」と「不活性状態」に大別している。前者はそのまま使用できる弾頭であり、後者は時間が経過すると劣化するトリチウムや電池などを除いて貯蔵している弾頭である。これらの点を含めて、米国で明らかになっている弾頭の分類方法は以下である。
戦配備の弾頭;部隊に配備・貯蔵されている活性状態の弾頭。(ただし、オーバーホール中の原潜の核弾頭は作戦配備に含めない。)
(2)兵站予備の弾頭;ルーチン整備・検査のために確保されている活性状態にあるスペアである。
(3)予備貯蔵の弾頭;活性、不活性を含め、再使用の可能性を想定して貯蔵しているもの。作戦配備から外した核弾頭の中でも情勢の変化によって復活させることを前提として活性状態で貯蔵する迅速対応戦力もこれに含めた。
(4)退役弾頭 運搬手段から外され解体を前提に保管されている核弾頭。
 この分類が、他の国でどこまで通用するかは、必ずしも明らかではないが、ある程度共通性があると考えられる。世界地図と総表に世界の概況を示したが、以下、各国の核戦力を概観する。



3)国ごとの核戦力
1.米国
 米国の核戦力はもっとも透明性が高い。2010年5月、保有核兵器に関するファクトシートを発表し、2009年9月現在、備蓄核弾頭は5,113発であるとし、その後、2014年からはほぼ毎年、アップデートしている。最新は2017年1月のもので、2016年9月30日現在、4,018発である。7年間で1,095発が削減されたことになる。備蓄核弾頭のうち作戦配備は1,800発で、戦略核弾頭1,650発と非戦略核150発の合計である。この内、非戦略核150発は、欧州のベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコに配備されている。戦略核弾頭は、大陸間弾道ミサイル(ICBM),潜水艦発射弾道ミサイル( SLBM),及び航空基地に配備されている。残りの約2200発が作戦外貯蔵である。備蓄核弾頭は、2016年9月より更に削減が進んで4,000発と見込み、これに退役・解体待ち2,800発を加えた6,800発が米国の核弾頭総数である。
 現在、米国は核兵器体系の一大近代化計画を進めている。保有する7種類の巡航ミサイル弾頭・核爆弾を各1種類に、また2種類のICBM弾頭と3種類のSLBM弾頭を3種類の共用弾頭に作りかえて予備弾頭を大幅に減らす計画である。これらに加えて戦略原潜や戦略爆撃機のリプレイスなどが行われ、2017年から26年会計年度の間に4000億ドルが投入される見込みであり、今後30年間の費用は1兆ドルと見積もられている。
 また米国が昨年実施した弾道ミサイル発射テストは ICBMミニットマンⅢが計3回、SLBMトライデントⅡが計4回である。

2.ロシア
 ロシアの核戦力は米国,フランス,イギリスと異なり,かなり不透明である。さらに米ロ間の新 START条約に基づくデータについてもロシアは米国と異なり,配備/非配備の発射台数の内訳を公表していない。2017年3月1日現在で公表されているロシアの戦略核の配備発射台及び配備弾頭数は、それぞれ523基、1,765発である。また15分以内で発射可能となる警戒態勢(ハイアラート)にあるロシアの弾道ミサイルは約160基,搭載弾頭約900発で,その多くが ICBM と推定される。
 ロシアは旧ソ連時代に配備され旧式となったSS-19,SS-25 の ICBM を新型のSS-27M2で順次置き換えて2020年までに完了させる計画である。戦略原潜及び SLBM も,最新のボレイ型原潜及び新型SLBMブラバですべて置き換える計画である。爆撃機及び巡航ミサイル、さらには非戦略核兵器とその運搬手段についても近代化が進められている。16年にロシアが実施した弾道ミサイルの発射テストは、ICBMが5回、SLBMが4回である。

3.英国
 英国はNPT加盟核兵器国のなかで最も核保有量が少ない。2010年5月26日、英政府は唯一の保有核兵器であるトライデント用備蓄弾頭数は将来225発を超えず、また、作戦に供する核弾頭数は160発以下であると議会に対して発表。2010年10月19日、英国「戦略的防衛及び安全保障の見直し(SDSR)」は225発という上限を再確認するとともに、2020年代中頃までに弾頭数は180以下に削減すると述べた。2015年、議会で作戦に供される核弾頭は120発に削減した(2015年1月20日)と明らかにされた。英国は唯一の保有核兵器を次世代版へと更新する計画を実行中である。次世代戦略ミサイル原潜「ドレッドノート」は2011年に設計段階に入り2030年代に1隻目が就役予定。搭載弾頭の生産を2019年に決定する予定。現在のトライデント運用費用は年間約20億ポンド(約2900億円)、代替原潜の建造費用は310億ポンド(約4.5兆円)と見積もられる。

4.フランス
 大枠となる弾頭数について公的情報がある。2008年3月21日、サルコジ大統領(当時)が「300弾頭以下に削減する」と発表したのに続いて、2015年2月19日にはオランド大統領(当時)がその完了を含め現状を確認した。2015年NPT再検討会議に提出した報告書で、弾頭数が300以下であること、潜水艦発射弾道ミサイル数が1隻あたり16基で3隻分あること、空中発射核巡航ミサイル数が54発であることなどを再確認した。フランスは新世代の戦略原子力潜水艦(SSBN)、それに搭載するSLBM、航空機に搭載する新世代巡航ミサイルと、すべての核兵器の近代化を行っている。政府は毎年の核兵器予算は約46億ドルとしている。

5.中国
 中国は、NPT加盟核兵器国の中で唯一、弾頭数を増やしている。しかし、増加の速度は緩やかで、従来の核戦略の延長上にある変化と考えられる。地上配備弾道ミサイルの一部の多弾頭化に起因するところが大きい。多弾頭化はミサイル防衛に対抗する手段とされる。中国は一貫して核兵器の先行不使用政策を取っており、そのために報復核戦力の生き残り可能性を強める兵器近代化に取り組んでいる。量ではない部分で、多弾頭化の進行や戦略原子力潜水艦の抑止パトロールの開始に伴う今後の動向に注目する必要がある。また中国の核兵器に関する透明性の向上が求められる。米本土に届く長距離弾道ミサイルは、約75発である(DF-5A、DF-5B、DF-31A)。

6.インド
 2017年9月現在、インドの保有核弾頭総数は120-130と推定される。インドの核兵器はプルトニウム型と見られ、2014年末現在、兵器級プルトニウムを約590kg保有している。核爆弾1発の製造には(技術レベルなどにも影響されるが)4-6kgのプルトニウムが必要であることから、これは核弾頭およそ95-142発分に相当する。しかし技術力が高ければ、2-4kgのプルトニウムで核爆弾1発の製造が可能とされており、その場合、約590kgの兵器級プルトニウムは核弾頭およそ147-295発に相当する量となる。弾頭は配備されておらず、中央貯蔵施設に置かれていると見られる。

7.パキスタン
 2017年9月現在、パキスタンの保有核弾頭総数は約140と推定される。2014年末現在、パキスタンは約190 kgの兵器級プルトニウムと約3,000 kgの高濃縮ウラン(HEU)を保有している。核爆弾1発の製造には12-18kgのHEUあるいは4-6kgのプルトニウムが必要であることから、パキスタンは204-305発の核爆弾に相当する核分裂性物質を保有していることになる。しかし技術力が高ければ、2-4kgのプルトニウムで核爆弾1発の製造が可能とされており、その場合、パキスタンが保有する核分裂性物質は、核弾頭およそ220-353発に相当する量となる。弾頭は配備されておらず、中央貯蔵施設に置かれているとみられる。

8.イスラエル
 2017年9月現在、イスラエルの保有核弾頭総数は80と推定される。2014年末現在、イスラエルは約300kgの高濃縮ウラン(HEU)と約860 kgの兵器級プルトニウムを保有している。核爆弾一発の製造には控えめに見ても12-18kgのHEUあるいは4-6kgのプルトニウムが必要であることから、イスラエルは159-240発の核爆弾に相当する核分裂性物質を保有していることになる。
 イスラエルは核兵器に関して「曖昧政策」、すなわち核兵器保有について否定も肯定もしない公式政策をとり続けている。1979年9月22日、南アフリカ近海の南インド洋はるか上空で、秘密裡に核実験が行われたとの説がある。イスラエルも核弾頭と地上発射ミサイルを分離して保管していると見られるが、国外に展開する潜水艦においては核弾頭を搭載している可能性がある。

9 北朝鮮(DPRK)
 北朝鮮は積極的な核兵器開発を継続しているが、具体的な保有核弾頭総数についてはさまざまな見方がある。北朝鮮は、2006年10月、2009年5月、2013年2月、2016年1月及び9月、更に2017年9月と、これまでに6回の核実験を実施したが、北朝鮮が核弾頭を作戦配備していることを示す公開情報は存在しない。一方、多くの非政府機関の分析が、北朝鮮は弾頭小型化などの技術段階に達しているとの見方をしている。6度の核実験を行い、弾頭の爆発力の増大や小型化、ミサイルの射程距離の拡大、再突入テストの成功などを宣伝し、核保有国であると主張している。これらの第三者による検証は困難であるが、16年以降、核・ミサイル技術の飛躍的向上が見られ、核搭載をめざしたミサイル技術の向上は共通の認識になってきている。兵器化に関しては情報がない中、核弾頭数は20発以下とした。

4)おわりに
 以上、NPT非加盟の核兵器保有国であるインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を含めると、地球上には今なお14,930発を超える核弾頭があり、オーバーキル状態は変わらない。米ロの合計13,800発は、全体の約93%を占める。NPT上の5核兵器国とNPT外の4か国で、それぞれ事情は異なっているとはいえ、「核兵器のない世界」をつくっていくためには、深刻で複雑な状況が続いている。CTBT(包括的核実験禁止条約)の発効、FMCT兵器用核分裂性物質生産禁止条約の交渉開始すらめどが立っていない。こうした状況を動かしていくためにも、核兵器禁止条約をつくった国際的世論の力で、核保有国を包囲していくような構図をいかに強めていくかが問われている。その際、「唯一の戦争被爆国」としての日本の姿勢は極めて重要な位置を占めていることを肝に銘じねばならない。

*出典は詳細には書かなかったが、「ニュークリア・ノートブック」(『ブレチン・オブ・ジ・アトミック・サイエンチスツ』に連載)を基本にした。より詳細は、『核兵器・核実験モニター』526-7号(2017年9月1日)参照。

2017年08月31日

沖縄だよりNO.37(PDF)

http://www.peace-forum.com/okinawa-branch/okinawa_No37.pdf

2017年08月30日

朝鮮民主主義人民共和国によるミサイル発射に対する声明

 朝鮮民主主義人民共和国によるミサイル発射に対する声明

フォーラム平和・人権・環境
代表 藤本泰成
 
 8月29日午前5時57分頃、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、首都平壌の近郊から、「火星(ファソン)12」と見られる中距離弾道ミサイル1発を発射した。ミサイルは、日本海から渡島半島・襟裳岬上空を通過する軌道を約14分間飛翔した後、襟裳岬東方沖約1180キロの太平洋上(日本の排他的経済水域外)に落下したとされる。今年に入ってから北朝鮮によるミサイル発射はこれで13回目、そして日本上空を通過したのは2016年2月以来5回目となる。
 東アジアの平和に大きな脅威を与える度重なる行為に、平和フォーラムは北朝鮮政府に対し強く抗議するとともに、今後の北朝鮮政府の自制を厳しく求める。同時に、米国および韓国政府に対して、米韓合同軍事演習(乙支フリーダム・ガーディアン)の即時中止を求めるとともに、即時の米朝対話、南北対話の開始を求める。
 今回の発射行為に対して、菅義偉官房長官は「ミサイル発射は断じて容認できない」「国際社会と連携し、さらなる圧力の強化を強く国連の場で求めていく」と述べている。平和フォーラムは、制裁措置の強化に反対する。
 1937年7月7日の盧溝橋事件から日本は対中全面戦争に突入した。翌年から国際社会は日本に対する一部の経済制裁を始め、1941年7月から8月にかけて、米国が対日経済制裁に参加し、対日資産凍結や石油の全面禁輸などからなるABCD包囲網が完成した。しかしこの制裁措置を受けながらも、日本が12月8日に真珠湾を攻撃し、無謀な対米戦争に突入したことは誰もが知っている事実であり、経済制裁のエスカレーションが平和に結びつかないことは、私たちの歴史が証明している。
 朝鮮戦争の休戦協定を平和協定へと訴える朝鮮半島の人々の声に、国際社会は耳を傾けるべきだ。植民地支配を行い、現在に至る朝鮮半島の分断の歴史に責任がある日本は、脅威を煽ることに力を注ぐべきではなく、国際社会、とりわけ米国と北朝鮮との仲立ちへの努力に、力を注ぐべきである。
 安倍首相は「発射からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢をとってきた」と述べ、今回は破壊措置を実施しなかったとした。あたかも、ミサイル攻撃を軍事的側面から排除できるとする日本政府の主張に、私たちは騙されてはならない。日本には、イージス艦搭載のSM3と陸上配備のPAC3が配備されているが、専門家の多くが迎撃できる可能性は低いとしている。8月17日にワシントンで開催された日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、小野寺防衛大臣は、迎撃ミサイル「SM3」を地上配備する米国製「イージス・アショア」を新たに購入する方針を伝えている。800億円とも言われる新規購入が、国民の安全のためではないことは明らかだ。
 平和フォーラムは、米朝対立が軍事力で解決できるとは考えない。米国や日本政府は、北朝鮮の核兵器放棄を対話開始の条件としているが、まずは対話を開始するべきだ。世界最大の核保有国とその核の抑止力に頼む日本政府の一方的な姿勢は、全く説得力に欠けている。核兵器禁止条約にさえ同意しようとしない米国および日本政府自身の立場がいま、厳しく問われている。また、私たちは日本政府のプルトニウム利用計画(高速炉開発と核燃料再処理工場の建設)の放棄を一貫して求めつつ、北東アジアの非核地帯構想の実現へのプロセスを構想してきた。日本政府が政策転換を国際社会に表明することが、北東アジアの対話への道を開き、ひいては日本の安全保障に繋がることを確信する。
 北朝鮮のミサイル発射に際して、12道県に全国瞬時警報システム(「Jアラート」)が発信された。これまで、各自治体や鉄道各社などが、ミサイル発射に伴って過剰な反応を繰り返してきた。教育現場においても効果の疑われる避難訓練を実施している。過剰な反応を煽り立てることは直ちに止めるべきだ。同時に、歴史的経過の中で、日本社会で生活してきた在日朝鮮人への謂われない差別が懸念される。日本国憲法の示す平和と民主主義、基本的人権を土台として、多くの人々が努力してきた多文化・多民族共生の理想に照らし、私たちは冷静に対応していかなくてはならない。
 平和フォーラムは、理解と信頼に基づいた対話による平和への努力へ、世界各国が相互不信を乗り越えて踏み出すよう、そしてそのために何をすべきかを真摯に議論することを、心から要請する。
 
以 上

2017年08月24日

沖縄だよりNO.36(PDF)

http://www.peace-forum.com/okinawa-branch/okinawa_No36.pdf

2017年08月21日

沖縄だよりNO.35(PDF)

http://www.peace-forum.com/okinawa-branch/okinawa_No35.pdf

2017年08月15日

戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会 誓いの言葉(平和フォーラム・福山真劫共同代表)

  72回目の暑い夏がやってきました。
 私たちは、今年も、みなさまの御霊を追悼し、平和への誓いをもう一度確認するため、ここに集いました。しかし安倍政権に代表される日本の政治は私たちのめざす政治からすれば、危機的状況にありますが、一方、新しい希望も確実に生れつつあります。
 憲法を破壊し、戦争する国・軍事大国への安倍政権の暴走が止まりません。戦争法強行、共謀罪強行、沖縄辺野古への基地建設強行、福島の切り捨てと続き、次は東アジアでの軍事的緊張をつくりだし、それをあおりながら、憲法9条改悪を狙っています。
 また画期的な核兵器禁止条約が国連で採択されましたが、なんと日本政府は賛成せず、交渉会議にも参加していません。被爆者たちに対する裏切りであり、被爆国政府としての責任放棄です。怒りを通り越して、悲しくなります。
 8月12日、沖縄では、「辺野古に新基地をつくらせない県民大会」が開催され、安倍政権の県民無視の基地建設強行に、4万5千人の県民が怒りの声を上げています。沖縄の民主主義を破壊して進められる暴挙に対して、安倍首相の共犯になりかねない本土における私たちの責任を痛感します。
 そうしたことと合わせて、安倍政権の共謀罪の強行採決、森友学園・加計学園に代表される「権力の私物化」と腐敗の露呈、稲田や金田などお友達たちの大臣の無能ぶりを目の当たりにし、多くの市民は、安倍政治の本質とその危険性・でたらめぶりを理解し始めました。そして安倍内閣の支持率は各種世論調査で30%台へと一挙に急落、7月2日都議選での自民党惨敗と続き、一強多弱といわれた安倍政権が大きく揺れだしています。
 8月3日、安倍首相は、第3次内閣改造を行いましたが、そうした小手先の対策では政権の再浮揚・求心力の回復はできるはずがありません。問われているのは、安倍首相とお友達たちの米国追従・戦後レジームからの脱却という本質・路線・体質です。こんな安倍政権をいつまで続けさせるのでしょうか。野党と私たちの責任が問われています。
 私たちも「戦争させない9条壊すな総がかり行動実行委員会」に結集して、安倍の暴走をとめ、平和・民主主義・脱原発の政治を確立するために全力で闘ってきました。そして市民連合、野党共闘を作り上げてきました。そして今、総がかりを超える総がかり運動めざして、取り組みを開始し、運動は大きく拡大しようとしています。
 野党勢力とっても、絶好のチャンスです。立憲野党の奮闘が求められています。
時代は、戦後レジームの脱却・憲法破壊ではなく、平和・民主主義・脱原発・憲法理念の実現へと動き出しています。おもねるのでは無く、安倍政権の政策転換・退陣・打倒を明確にした野党と労働運動、市民運動、市民の連帯した闘いが確実に新しい政治をつくりだします。私たちはその一翼を担うという決意を申し上げて、「誓いの言葉」とさせていただきます。
2017年8月15日

      フォーラム平和・人権・環境  共同代表  福山真劫

2017年08月15日

戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会開く

  8.15集会.JPG

1945年の敗戦から72周年を迎えた8月15日、アジア・太平洋の人びととの和解と共生をめざして、非戦の誓いを新たにするため、東京・千代田区の「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」で、「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8.15集会」を開催しました。
正午の時報に合わせて、全員で黙とうを行った後、誓いの言葉として、平和フォーラムの福山真劫共同代表は「憲法を破壊し、軍事大国への安倍政権の暴走が止まらない。戦争法、共謀罪、辺野古への基地建設の強行や福島の切り捨てに続き、東アジアでの軍事的緊張を作り出し、憲法9条改悪を狙っている」と指摘するとともに、支持率が急落して政権が揺らいでいるとして、「安倍政権の政策転換・打倒に向け野党と労働運動、市民運動が連帯し新しい政治を作り出そう」と呼びかけました。(福山代表の誓いの言葉はこちら
民進党の近藤昭一副代表(衆議院議員)は「植民地支配と侵略によって特にアジア諸国の人々に多大の損害と苦しみを与えた」と述べた上で、「いま、『立憲主義』と『平和主義』が脅かされている。憲法の平和主義の下で立憲主義を尊重し自由と民主主義が保障される国を作り上げていく」と決意を表明しました。
社会民主党の福島みずほ副党首(参議院議員)も「戦争犠牲になったみなさんの尊い命の犠牲の上に手にした憲法9条は、何としても守らなければならない」「主権者である私たちは戦争犠牲者の全ての皆さんとともに9条改悪を止めたい」と声をあげました。
さらに、立憲フォーラムの阿部ともこ副代表(衆議院議員)は「悪化の一途を辿る東アジアの安全保障環境の中で、再び武力によって紛争の解決を図ることのないよう、平和的・外交的努力が必要」とし、「非戦と核廃絶に向けて新たな決意をもって取り組む」ことを訴えました。
最後に、戦争をさせない1000人委員会の内田雅敏事務局長が「紛争の存在を前提とする武器輸出を国家戦略とするような『平和国家』は在り得ない」と述べ、「強権政治に呻吟しているアジアの民衆と連帯して、憲法破壊の安倍政権と闘う」ことを誓いました。
この後、250人の参加者は献花を行い、憲法破壊の安倍政権と闘い、平和への思いを次の世代に伝えるために尽力することを誓い合いました。

8.15献花.JPG

2017年08月15日

沖縄だよりNO.34(PDF)

http://www.peace-forum.com/okinawa-branch/okinawa_No34.pdf

2017年08月09日

被爆72周年原水爆禁止世界大会・長崎大会まとめ(藤本事務局長)

 被爆72周年原水爆禁止世界大会・長崎大会まとめ

被爆72周年原水爆禁止世界大会実行委員会
原水爆禁止日本国民会議
事務局長   藤本泰成
 被爆72周年原水爆禁止世界大会は、福島大会から始まって、広島大会へ、」そして今日の長崎大会の閉会集会で、幕を閉じます。本大会の運営に携わっていただいた、実行委員会の皆さま、そして遠いところを海外から来ていただいたゲストの皆さま、各分科会でご発言いただきました講師の皆さま、そして全国からご参加いただきました皆さんに、心から感謝を申し上げます。
大会中、様々な議論がありました。全てに言及はできませんが、若干の時間をいただき、私なりにまとめたいと思います。
 福島第一原発の過酷事故から、6年が経ちました。今、原水禁大会では、多くの方から事故原発の現状に触れていただきました。指摘されていたのは、東電の経営陣は遅くとも2008年には津波によるメルトダウンを予想していたが対策を取らなかったと言うことです。
 2016年2月には、勝俣恒久元会長他3人の経営陣が、業務上過失致死傷罪で強制起訴されていますが、第1回の公判が2017年6月30日に開かれました。先立つ3月17日には、前橋地裁において、「東電は巨大津波を予見しており、事故は防ぐことができた」「国は安全規制を怠った」として、東電・国に賠償を命じる判決を下しています。
 事故の責任を明確にしていくことは、日本の将来に重大な意味を持つでしょう。福島では、支援の打ち切りが相次いでいますが、目に見えない放射性物質が復興を妨害し、遅々として進まない現状が報告されています。国の責任による明確な支援を要請したいと思います。
 第1原発の廃炉・事故の処理には、膨大な時間と今後の技術開発が必要なことが、これも様々な方から発言がありました。原子力資料情報室の伴英幸さんからは、地下水や汚染水対策も計画通りにはいかず、貯蔵される汚染水は100万トン、行き場のない放射性廃棄物も含めて、今後の見通しが立たない状況が報告されています。
 2017年3月31日をもって、帰還困難区域を除く地域の避難指示が解除されています。解除の根拠は、年間被ばく量が20mSv 以下と言うことですが、この数値は暫定基準で有り、過酷事故の実態に合わせて基準を緩和したものに過ぎません。現在でも、福島事故で避難指示が出された地域以外の一般公衆の年間被ばく量が1mSvであることを考えると、その意味が分かります。
 伴さんは、福島県の実施している健康調査によると、子どもの甲状腺ガンの確定者が145人に達していることを報告しながら、その他の疾病に関しても統計学的な調査も実施すべきとしました。一般公衆被ばく基準の20倍の放射線量が、身体に影響が無いと言うことを、信用するわけにはいきません。

原子力市民委員会委員で元原子炉格納容器設計技師の後藤政志さんからは、原子力産業の行方と原発の安全性に関して報告がありました。
米国のスキャナ電力は、7月31日にV.C.サマー原発2・3号機の建設断念を発表しました。東芝傘下のウェスティングハウス社が受注していたものですが、後藤さんは、米国の安全規制の強化が工期の延長とコストの上昇を生み、いまや原子力発電所がコスト競争に勝利することはないだろうと発言しています。

 東芝が建設した、改良沸騰水型の台湾龍門原発1・2号機は、建設されるも、一度も運転をすることなく廃炉になりました。背景には地震と安全性の問題があります。脱原発を決めた台湾からシュウ・グァンロン台湾大学教授に来ていただきました。韓国脱核情報研究所所長のキム・ポンニョさんからも、脱原発を志向するムン・ジェイン大統領の下、脱原発への議論が進んでいることが報告されました。世界が脱原発に向かっていることは確実です。
 後藤政志さんは、「不確かな対策をいくら多層防護にしても安全ではない。多重防護は、事故に至る確率を下げていくだけである」「だから、規制委員会の田中委員長は、決して安全とは言わない」と述べています。原発の安全性には100%はあり得ない。であれば、そのリスクを許容できるのか、できないのか、できないならば結論は明らかなのです。後藤さんは、再生可能エネルギーが急速に普及している海外の状況と、原子力産業の崩壊を見れば、もはや原発は核兵器と共に凍結されるべきものであり、実際それが十分に可能であると結んでいます。
 本大会開催の約一月前に、国連では「核兵器禁止条約」が締結されました。何度もその評価には言及されているのでここでは控えます。日本政府は、しかし、条約に反対し批准する姿勢を示していません。ピースデポ代表の田巻一彦さんは、2016年の国連総会に日本が提出した「核軍縮決議」にある、「関係する加盟国が、核兵器の役割や重要性の一層の低減のために、軍事・安全保障上の概念、ドクトリン、政策を継続的に見直していくことを求める」の一文をあげて、日本自らが「政策を継続的に見直して」ゆかねばならないが、しかし、その様子は見られないと指摘しています。
 核兵器の非人道性を普遍的な見地として、禁止条約の前文では「核兵器の使用による被害者ならびに核兵器の実験によって影響を受けた人々に引き起こされる受け入れがたい苦痛と危害に留意」との文言が書き入れられました。日本が今、行うべきは、米国の傘の下から脱却し、戦争被爆国としての明確な外交姿勢を確立することではないでしょうか。市民社会が反対する原発の再稼働をすすめ、再処理によって得るプルトニウムを利用する核燃料サイクル政策に、あたかも核兵器保有政策の担保のようにしがみつく姿勢は、被爆者の思いを踏みにじるものです。今こそ、日本政府が核政策の見直しに着手することを強く要求するものです。
 前田哲男さんの報告に、「このままでは『日本は本当に戦争をする国』になってしまう」という、今の日本社会、日本の政治に対する警報とも言える主張があります。自衛隊に対する世論調査の分析から、民意のありかは「はたらく自衛隊」のイメージ、9条改憲を望んではいないとの分析です。安倍首相のめざす「憲法改悪」に対抗するには、民意に沿った対抗構想の提示こそ、私たちに求められていると、まとめられています。
安倍政権は、特定秘密保護法、戦争法、共謀罪、矢継ぎ早に、憲法違反と言える法整備を、数の力を持って強引に進めてきました。彼の言う、戦後レジームからの脱却は、憲法の規定する、主権在民、平和主義、基本的人権の保障という、戦後社会の根幹に関わる理念への挑戦というものです。前田さんは「『秘密保護法』と『共謀罪』の結合がもたらす、物言えぬ社会が到来する」と指摘しています。私たちは、決して負けるわけには行きません。原水禁運動は、60年以上にわたって「核兵器廃絶」「脱原発」を、運動の両輪としてとりくんできました。そこには、被爆の実相がありました。一人ひとりの命への強いこだわりがありました。私たちは、権力の圧力に、臆してはなりません。
 今年いただいた年賀状に、非暴力を貫き、米国での黒人の公民権運動を指導したキング牧師の言葉がありました。
 「この変革の時代において、最も悲劇的であったのは、悪人たちの辛辣な言葉や暴力ではなく、 善人たちの恐ろしいまでの沈黙と無関心であった」
 私たちは、沈黙の仲間であってはなりません。私たちは、声を上げ続けなくてはなりません。そして、私たちは、原水禁運動の、大きな、大きな輪を、広げていこうではありませんか。大きな、大きな声に、していこうではありませんか。
 I have a dream !
私たちには、夢があります。核も戦争もない平和な21世紀を作りましょう。

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