第46回護憲大会 閉会総会 大会のまとめ      2009年11月03日
                                    大会事務局長   藤 本 泰 成
   平和フォーラム事務局長の藤本です。
 本大会にご参集のみなさまの、3日間にわたる真摯な議論に敬意を表します。事務局としてのまとめを、雑ぱくではありますが行いたいと思います。
 「戦後政治の総決算」と標榜した中曽根内閣に始まり、「戦後レジームからの脱却」を叫んで沈没した安倍内閣、政権に1年あまりもしがみついた麻生内閣の解散まで、日本の保守勢力は、狭隘なナショナリズムを掲げ、反動的政治を繰り広げました。
 経済成長がストップしたなかで、地方への公共事業のばらまきによる権力集中の機能を失いつつあった自民党政権は、教育基本法の改悪に象徴される、戦前の日本民族優位の思想とそれによる狭隘なナショナリズムを基本にした「公」の精神を利用した国民統合・権力集中の機能を作ろうしました。新自由主義・新保守主義を中心に据えた政治は、東アジアに立脚する日本の行く末に、何らの展望も開けず、自壊しました。
 このことは何を意味するでしょうか。実は、戦後政治とか戦後レジームとかいうものが、自民党政権が嫌悪し続けてきた「日本国憲法」や、その理念である平和主義や人権尊重主義・民主主義であったわけではない、ということではないでしょうか。それは、「日米安全保障条約を基本とした米国追随の経済政策」と、その結果としての高度経済成長策にあったのだと思います。安倍晋三がいう「美しい国 日本」は、列島改造論などに象徴される「ブルドーザー行政」による「開発」の名のもとに、失われていったのです。
 その間の政治は、経済成長一辺倒であり、「四大公害」などの象徴される人間軽視の姿勢に終始してきました。そのことは、自民党政権の本質であったのです。
 46回目を迎える「憲法理念の実現をめざす大会・護憲大会」は、このような保守勢力・自民党政権の破綻のなかで迎えました。そして、新しい民主・社民・国民新党の三党連立政権成立のなかで迎えました。
 江橋代表は冒頭の開会あいさつのなかで「連立政権成立のなかで、憲法理念を実現する可能性が生まれた」と話されました。今大会の議論は、その可能性もあって、多くの場で建設的であったと思います。しかし、私たちの議論をどのように政治のなかに実現していくのかと考えると、政権交代のなかで混乱している状況もあります。
 大会開会後直後のシンポジウムでは、江橋代表のコーディネートのなかで、社民党福島党首、民主党平岡議員が、活発に、これからの政治のあり方について議論されました。これまでの官僚政治と財界との癒着から脱し、市民主体の政治確立への努力が伺えました。そのなかで、江橋代表は、市民の現場の声をどのように立法化していくのか、市民運動として政府に要求していくシステムが必要である、「市民が市民のままで関われる政治」の確立が求められるとしました。
 平岡さんは、政権組織は試行錯誤の状況にあるとし、福島さんもできるところから理念の実現にアプローチしていくとしました。そのようななかで、私たちに求められることが、政府に対する「提言と運動」を作ることであるということが確認されたのではないかと思います。
 平和の課題では、沖縄の「辺野古新基地建設」が喫緊の課題となっています。強硬姿勢を続ける米政府への対応で政府は揺れているように感じられますが、このことは連立政権協議のなかでも問題となった課題であり、鳩山首相の所信表明のなかでも触れられた課題です。
 沖縄県民の歴史と思いをもって、米国政府としっかりと話し合いを行っていくことが重要であり、米国と対等なーパートナーシップを掲げる鳩山内閣の姿勢が問われます。私たちは、早急な結論を求めていません。この課題に対しては、私たちは不退転の決意を持って当たります。鳩山政権が容認へ舵を切る場合は、総力を挙げたとりくみが要請されます。
 一方でこの問題は、単に沖縄・辺野古の問題ではなく、これまでの日米安保を基本にした防衛のあり方、安全保障のあり方が問われています。
 「地球環境」「エネルギー」「食料」「水」など「世界ぐるみの安全」が問題となっている。安保同盟や核抑止力などでは語れない「安全保障」のあり方が重要になっている」との指摘が、軍事評論家の前田哲夫さんからありました。「全世界の国民が等しく恐怖と欠乏からまぬがれ」という、日本国憲法前文の理念と合致するものである、いま「日本国憲法の理念が世界標準となった」という指摘は、今後の防衛・安全保障のあり方に大きな示唆を与えるものと思います。
 東アジア共同体の構想が提唱されるなかで、北朝鮮との国交回復、そして東北アジアの非核化へのとりくみはますます重要です。そのためにも、日朝平壌宣言を基本に、拉致問題に拘泥することなく総合的な交渉・協議が重要であり、鳩山内閣の明確な姿勢が問われます。日朝国交正常化連絡会のとりくみはますます重要になっています。
 この間活発な活動を繰り返してきた、「新しい教科書をつくる会」編纂の教科書が、横浜市で大量に採用されることとなりました。公立学校での採択率は1.85%、私立学校では3.48%となっています。この歴史観は、政府の公式見解である村山談話を否定するもので、検定を合格することさえ許されないものです。新学習指導要領に基づく次回採択へ向けたとりくみは、全国的な規模で要請されています。
 この教科書採択を進める勢力は、東アジア蔑視の発言と靖国参拝を繰り返し、先の戦争を解放のための聖戦と位置づけるなど、東アジア諸国とぶつかってきました。このことは「戦後補償」のとりくみを大きく後退させてきました。
 新たな政権のもとでは、戦後補償への考え方も大きく変わるものとなっています。第3分科会で、大阪市立大学の上杉さんが指摘されたように、これまでも国会提出された「定住外国人参政権」「夫婦別姓」「人権擁護法案」「靖国代替施設」などの課題を再度国会で審議し、実現していく、そのためにも私たちの側の運動の拡大が重要となっています。
 このことは、私たちに対しても、新政権に対しても、その力が試されるものだと思います。その上で、「恒久平和調査局設置」「戦時性的被害者問題の解決」などの加害の責任とともに、東京大空襲訴訟で求められている民間補償についても、新政権に対して強く要求していかなくてはならない重要な課題となっています。
 人権問題についても、基調において指摘しましたが、自民党政権下ではまったく進展してきませんでした。本大会では、「人権侵害救済法の制定」について、神奈川大学の山崎さんから詳細な提起がありました。
 また、女性差別に関しても、「男女の区別は差別である」との定義を国内法への明記することや、マイノリティの女性代表の政治参加など国連女性差別撤廃委員会からの勧告、また、選択議定書の批准は98カ国が批准し、100番以内に入るかどうかも微妙になっている現状があり、早急に進めなくてはならない具体の提起が、清水平和フォーラム副代表からありました。
 子どもの権利に関しても、山梨学院大学の荒巻さんから、日本においてその理念が浸透せず、能力を認めようとしない大人の世界が、子どもの発達を阻害する状況が報告されました。子どもの権利条約はまず第一に「命の権利」を規定しています。ここでも、命を、人間を軽視する日本社会のあり方が際立ちます。
 世界的な基準にまったく満たない「人権」状況を打破していくとりくみは、政治と一体にたって進めていくことが可能となってきています。私たちの十分なとりくみが要請されます。
 平和フォーラム、そして原水禁は、この10月3日に、全国から7千人の仲間を結集して、エネルギー政策の転換を求める全国集会を成功させてきました。脱原発、グリーンエネルギー重視への政策転換、そして破綻した核燃料サイクル計画の廃止は、本大会においても、憲法が規定する平和的生存権を脅かす重要な課題です。
 明治大学の藤井さんからは、オバマ米政権が、グリーンニューディール政策を提唱し、経済優先のアメリカで、再生可能なソフトエネルギーへの転換が明確になり、そのことでの雇用創出など政治のあり方が変わってきたとの指摘があり、未来バンクの田中さんからは、EU諸国、とくにドイツやスペインを中心に太陽光や風力発電への依存度を大きく高めている状況が報告されました。環境問題に対して森林整備が重要であることや産業構造の変革が必要であることなども提起されています。
 今回の議論は原子力政策の危険性といったこれまでの主張を超えて、ソフトエネルギーの可能性に言及していただきました。4兆円ともいわれる、「もんじゅ」「六カ所再処理工場」の壮大な無駄遣いをやめさせ、新しいエネルギー政策へ転換を図ることへのとりくみを強化することが重要です。
 自民党政権の自壊は、地方社会の格差拡大、非正規雇用と正規雇用の格差拡大など、不平等な社会状況にも原因があります。人間軽視の政策は、生きづらい社会を将来させました。地方主権・市民政治の分科会では、甲府市議会の山田さんから、指定管理者制度など経営難から民間委託を余儀なくされ、多くの診療科が切り捨てられてきた地方医療の実態も報告されています。人の命が切り捨てられる実態は黙視できません。
 世界の潮流は、「人間の安全保障」へ、大きく舵をとることとなっています。後期高齢者医療制度や国民年金問題、生活保護の母子加算制度の撤廃などが批判される背景には、格差の拡大と不平等、生存を脅かされる国民生活の不安があったに違いありません。
 この三日間の議論のどこを切っても、人の命を尊重する基本的考えがその基調に流れていたと思います。
 私たちのとりくみは、多くの部分で「人間の安全保障」を基本に据えたものでなくてはなりません。そこから問題の本質は見えてくるのだと思います。
 三日間の議論を、持ち帰っていただき、地方から中央へ、中央から地方へ、そして地方から地方へ、運動の輪を広げようではありませんか。
 政治へ提言する力は、生活の場からこそ生まれてくるものです。生活者の、市民の立場から政治への参加と提言を、そして、大衆運動を進めていきましょう。
 新たなステージに立って、責任ある運動を進めていきましょう。
 参加いただきましたみなさまに敬意を表するとともに、長野の地元実行委員会のみなさまのご努力に感謝を申し上げ、
 そして47回目の来年は、暖かなフェニックスの町、宮崎で開催予定であることを報告させていただいて、雑ぱくではありますが「まとめ」とさせていただきます。    

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