2009年、ニュースペーパー

2009年12月01日

ニュースペーパー2009年12月号

【インタビュー・シリーズ その40】
市場原理至上主義から公共の役割の見直しへ
日本都市交通労働組合委員長 阿部 卓弥さんに聞く

【プロフィール】
1951年7月千葉県柏市生まれ。70年都立高卒。71年東京都交通局入局。74年に支部役員就任以来支部会計、副支部長、支部長を経て2005年より東京交通労働組合執行委員(電車部長)。07年7月より日本都市交通労働組合書記長、09年より同中央執行委員長に就任。体質的に酒は苦手だが、避けては通れない数ある宴席も「梅干し入りのお湯」で過ごしている。出張続きで自宅で過ごす時間が少ないが、日々の心の疲れは愛犬との散歩と食後欠かさずのスイーツで癒している。

──東京交通労働組合(東交)のご出身ですね
 1971年に交通局に入ってから都営地下鉄三田線の車掌として勤務してきました。三田線のホームドアを設置した上でのワンマン運転が決まり、車掌のままではその場所にいられなくなるので運転士になりました。運転士としては10年くらい経験しました。その後、都市交の書記長を1期2年務めて、委員長になりましたので、都市交の役員になってからは3年目です。

──組合運動に関わるきっかけは?
 私は「団塊の世代」の最後の方にあたります。職場に入った当時は新聞などで学生運動が騒がしく取り上げられていた時代でした。そういった雰囲気の中で、職場の不満に対しても、「じゃあ、やるか」と。いつの間にか組合運動に関わるようになりました。

──組合運動のなかで印象的な経験は何ですか。
 組合運動でいわゆる「勝った」「負けた」は、あとでわかることもありますが、負けた経験のほうが多いかな(笑)。各職場の乗務員の勤務ダイヤは、本部交渉で運行総本数と、実ハンドル時分(実際に運転する時間)をもとに協定化し、その後、その定数をもとに、各支部段階のダイヤ委員会で、職場実態にあった勤務ダイヤを作成し、最終的に東京都交通局側との交渉で確認するやり方をしています。青年部時代に私の案が採用され、実際に乗務員がそのダイヤに則って働いてもらったことは印象に残っています。その手法・伝統は乗務各職場で現在でも続いています。
 それから組合員の日常生活の相談を解決できた時ですね。1つの例として本人の直接的な責任でない金銭トラブルの相談を受け、弁護士に仲介してもらい、助けられたことですかね。組合なんていらない、なんて言いますけれど、このような日常の相談や、今ある賃金制度や、職場の諸権利は、最初からあったのではなく、先輩たちが闘いとったものです。そして組合組織が「何かあったらやるぞ」という意思表示ができる状態を、常日頃から、その体制を整えているからだと考えています。そういう意味で、都市交の各単組・職場は、がんばっているなと思います。

──国鉄民営化以降、ライフラインのひとつである交通機関が不採算路線として切られる事態が続いています。お年寄りや車を持てない層など弱い部分を考えると、公営交通が果すべき役割は重要です。
 公共交通は、その整備のために、負担を承知で先行的な投資をしなければならず、そして今日的な課題でもある燃料費高騰などから、各企業とも、その経営状況は厳しく、アウトソーシング(外部委託)や分社化という苦肉の策で運営しており、縮小、再編、打ち切りなどで、かなり路線は少なくなっています。
 国民の移動する権利を明示した「交通基本法」は、野党時代、民主党の細川律夫議員に奮闘していただき、継続審議になっていますが、辻元国交副大臣は来年の通常国会の提出をめざしているようです。私たちが今までかなり力を入れてきたものが、ついに日の目を見ることになりそうで、今回の政権交代は非常に大きな意味があると思います。また、6月に成立した「公共サービス基本法」は地域住民の公共サービスをどう担保していくかという基本法です。今後、移動する権利、高齢化社会対策、環境、医療、福祉対策などの具体策をどれだけ盛り込めるかが問われています。
 市場原理至上主義から一転して、公共の役割が見直される流れになるとの期待感を含め、それを足掛かりとしながら、公営という形にどうつなげていくかの課題は、都市交の重要な任務であると考えます。市場万能の弊害が、雇用形態の問題にも現れてきています。現在、路線を守るためには非正規の方々の協力なしにはできません。非正規職員に対するケアが求められていると思います。

──地球温暖化問題などがクローズアップされる中、環境にやさしいという面からも、公共交通の見直しの議論があります。


原子力空母母港化反対を叫ぶ都市交組合員
(09年9月25日・横須賀)

 公営交通から新しいものが導入されていくということがよく言われています。低床バスや天然ガス車両など、非常にお金のかかる部分は公営交通から導入されて、一定の軌道に乗ってから、民間に導入されています。このような手法は行政の施策として行うのですから、補助金は出ているとは言え、公営企業の役割、任務を考えた時、その採算性だけを強く求めることには問題があります。また子どもや孫たちの環境問題を含む将来を考えるならば、「総論賛成、各論反対」だけではなく、各論部分でも賛成するようなことにしなければならないと思います。
 各都市でも都心乗り入れ規制や公共交通の活用が進められています。温室効果ガスの25%削減についても、かなりのインパクトがありますが、私たちが出来ることは何かを模索しながら、その実現に向けて努力していきたいと考えています。

──都市交は、若い人を中心に、沖縄平和行進や原水禁大会に多くの参加をいただいている印象がありますが、若い人の組合参加の状況はどうですか。
 現在、新規採用数が減る一方で、非正規職員が多くなる状況にありますが、今でも職場には家庭のことも含めて関わっていくような「ゆりかごから墓場まで」の雰囲気が残っているのが都市交の伝統であり、組合員にとって組合の存在は身近なものとなっていると思います。ほぼ100%の組織率は、そんなところからきているのではないでしょうか。そういう職場の雰囲気は維持していきながら、苦労するときは,皆で苦労するといった中で、職場の合理化などの問題、政治の課題、そして平和の課題への取り組みの強化につなげていけるようにしたいと思っています。
 組合運動も平和運動も、若い世代への継承が重要です。広島・長崎の原水禁の取り組みも、単組や支部ごとにいろいろ苦労していると思います。しかし都市交には、中央からあれこれ指示しなくても、方針に「反戦・平和」と書いておけば各単組が地域でしっかり取り組んでくれる、自主性が脈々と根付いています。いい意味で「勝手に」やってくれるのです。昨年の横須賀原子力空母母港化反対の集会でも、東交は電車を借り切って家族ぐるみで参加しました。

──平和フォーラムに一言お願いします。
 「平和」ということが当たり前のことになっていますが、戦闘行為になってしまえば当然命に関わることです。いきなりそういう事態になるわけではなく、戦争はじわじわとやってくるということを、どう伝えていくべきかを、平和ボケにならず、私たちも考えていかなければなりません。とりわけ交通機関は、国家の末端機関として、否が応でも戦争に引き込まれ、有事になれば軍事物資などを運ぶ道具として使われる。また、前面にたって攻撃対象にされるということも、伝えていかなくてはなりません。
 第二次世界大戦のときも、そこまで行くとは誰もが思わない中で、いつの間にか抜き差しならないところまで国全体が行ってしまったということを考えると、日常の中で、どう警鐘を鳴らすか、どのような活動をやっていかなくてはならないかを真剣に考え、実践していかなければなりません。これからも都市交としてしっかり取り組んでいきたいと思います。

〈インタビューを終えて〉
 阿部委員長の物静かな物言いが、その人柄を感じさせました。言葉の端々から、組合が組合員を守る、組合員の生活に寄り添って組合があるという本当に当たり前のことが大切だという思いを感じました。戦争においては否が応でも国家の末端として戦争に引きずり込まれるのが交通労働者だ、平和という言葉も、労働者としての生活の中から生まれてくる、この言葉も説得力を持って聞こえてきました。
(藤本 泰成)

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憲法理念の実現をめざす第46回大会の論議から
命と個人の尊厳を大切にする新しい社会創出を

世界規模での大転換期の中の大会


2,800人が参加した開会総会

 20年間続いてきた新自由主義的な経済施策や、ブッシュ政権で極端化した単独行動主義とイラク・アフガニスタンへの戦争政策など米国による世界の一極支配が大きく破たんし、オバマ新政権が国際協調による平和の確立を語り、「核兵器のない世界をめざす」と決意表明しました。また、日本でも主権者の選択によって鳩山新政権が誕生するという世界規模での大転換期を迎えた中、第46回護憲大会は、「対話と協調の世界を求め、市民政治の新時代に 憲法理念の実現をめざす第46回大会」を正式名称に、長野県長野市のホクト文化ホールをメイン会場として、 11月1日から3日までの日程で開催されました。


民主党平岡議員、社民党福島党首によるシンポジウム

 初日の開会総会は、ホクト文化大ホールおよび中ホールに2,800人の参加者のもと行われました。「善光寺木遣り保存会」の木遣り唄のオープニングの後、開会。江橋崇実行委員長の主催者あいさつをはじめ、中山喜重長野県実行委員長、山本幸司連合副事務局長、福島みずほ社会民主党党首(内閣府特命担当大臣)、平岡秀夫民主党衆議院議員のあいさつなどを受けて、藤本泰成事務局長が基調提起を行いました。
 江橋実行委員長は、政権交代により「政治の中で憲法理念を実現していく可能性が開かれてきた」とした上で、「平和の問題でいえば沖縄の基地問題はけっして譲ることができない」とするとともに、人権侵害救済制度の確立や非核化の実現などが今後1年間の運動課題としました。
 福島党首は、改憲手続法が来年5月に施行されることに触れ、「社民党が連立政権の一員である限り憲法審査会は動かさない」とし、平岡議員は「政権交代したが官僚や自民党の抵抗の中で平和や人権の実現はまだ多くの困難さがあり、国民の不断の努力が重要」とあいさつしました。
 また、基調報告では「時代は世界的な転換期」にあるとして、憲法を空洞化し続けてきた歴代自民党内閣に代わって、「憲法が保障する命と個人の尊厳を大切にする新しい社会を創出するため、積極的な議論と取り組みを進めよう」と提起しました。

市民主体の政治を確立しよう─シンポジウム


情勢と運動について語り合った分科会

 「対話と協調の世界を求め、市民政治の新時代に」を主題としたシンポジウムでは、パネリストに福島党首と平岡議員、江橋代表をコーディネータ役としてこれからの政治のあり方について、これまでの官僚政治と財界との癒着から脱し、市民主体の政治を確立するか討論しました。
 江橋代表は、市民の現場の声をどのように立法化していくのか、市民運動として政府に要求していくシステムが必要であるとして、「市民が市民のままで関われる政治」の確立が求められるとしました。
 平岡議員は、民主党が掲げる「政策決定の政府一元化」を説明し、市民団体などの運動は「政策決定の上で大変重要。政権組織は試行錯誤中だが、新しい仕組みの中でしっかり受け止めていく」と述べました。
 福島党首は、「できるところから理念の実現にアプローチしていく」とし、労働者派遣法の抜本改正や在日米軍基地再編の見直しなど、民主、社民、国民新の与党3党合意を実現していくには「現場の運動と国会の政治をどうつなげていくかだ。現場の力を高め、国民の力で政策を転換させよう」と呼びかけました。
 シンポジウムを通じて、求められているのは政府に対する「提言と運動」をつくることであると確認されました。

沖縄基地問題などで熱心な討議─分科会
 第2日は、「非核・平和・安全保障」「教育と子どもの権利」「歴史認識と戦後補償」「人権確立」「地球環境」「地方主権・市民政治」「憲法-議会制民主主義の再生をめざして」の7つの分科会、「松代大本営地下壕見学と真田城下町の歴史散策ツアー」「信州上田・人権と不戦の誓いツアー」の2フィールドワークのほか、午後には「男性も女性も生きやすい新しい男女共同参画社会を~ジェンダー平等社会へ」「信州から沖縄問題を考える」「映画『花はどこへ行った』上映」 の3つの「ひろば」、全国基地問題ネットワーク学習交流集会、特別分科会「運動交流」 が行われました。
 この中で「非核・平和」分科会では、軍事評論家の前田哲男さんが、「全世界の国民が等しく恐怖と欠乏からまぬがれ」との「日本国憲法の理念が世界標準となった」と指摘するとともに、自民党が穴を開けてきた憲法の新政権による復元を提起しました。
 喫緊課題の「米軍普天間飛行場の辺野古移設計画」について、照屋寛徳社民党衆議院議員も一般参加し、「新政権が移設を強行すれば、沖縄県民の激しい怒りは収まらない」と指摘。沖縄基地問題については、同分科会の他、「憲法」・「運動交流」・「沖縄問題」・基地ネットでも「移設反対」を改めて確認しました。
 「教育と子どもの権利」分科会は、「子どもを戦争に行かせない、貧困から救う」という平和をまもるために保障されてきたことを認識し、子どもの権利の保障をすすめるため、これまでの成果を確認・共有していくことの重要性が確認されました。
 「歴史認識と戦後補償」分科会では、新政権で戦後補償の可能性は広がったが、教科書問題や、定住外国人参政権、「靖国代替施設」など多角的な取り組みとともに進めることが提起、討論されました。
 「人権確立」分科会は、「人権侵害救済法制定」と「女性差別撤廃条約の実行と選択議定書批准」について討論。同分科会や「男女共同参画」では、千葉法相や福島担当相の積極姿勢を具体化する展望を開こうと確認しました。
 「地球環境」分科会では、藤井石根明治大名誉教授が、温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比25%削減するとの鳩山首相の方針に触れ「これまでは経済第一主義で環境対策に後ろ向きだったが、政権交代を受け、方向が変化」と評価。「戦争は最大の環境破壊」と指摘し、憲法9条に基づく平和国家として国際貢献する必要性を訴えました。また、ソフトエネルギー、自然エネルギーへの転換の重要性が確認されました。
 「地方主権」分科会は、自治体の経営難から民間委託を余儀なくされ、多くの診療科が切り捨てられてきた地方医療の実態が報告され、格差の拡大の不平等、生存を脅かされる社会状況を変えるために、政権交代した今こそ、現場での運動を強めようと確認しました。

生活の場から運動の輪を広げよう─閉会総会
 最終日の閉会総会は、「普天間基地の即時閉鎖と辺野古新基地建設の断念について」山城博治さん(沖縄)、「エネルギー政策の転換を」水上賢治さん(福井)、「女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めて」について東定喜美子さん(I女性会議)、「長野県内の護憲運動」を布目裕喜雄さん(長野県護憲)、「未組織・非正規労働者の労働相談の現場から」については荒井宏行さん(松本地区労) の5人の特別提起を受けました。
 「大会のまとめ」を藤本事務局長が提案。「人の命を尊重する「人間の安全保障」を基調においた大会の議論を持ち帰り、地方から中央へ、中央から地方へ、そして地方から地方へと運動の輪を広げよう」「政治に提言する力は生活の場から生まれてくる。運動の輪を大きく広げていこう」と呼びかけました。
 平和運動に貢献した団体等を表彰する「遠藤三郎賞」が、横須賀ピースフェスティバル実行委員会に贈られた後、「平和主義、国民主権、基本的人権の尊重の憲法3原則遵守を確認し、憲法の保障する諸権利の実現を第一」と3党合意した新政権に対し、「強い決意で実現を求める」とする大会アピールを参加者全体の拍手で採択し3日間の日程を終了しました。
 47都道府県全てから参加があり、長野県内と合わせて2,800人が参加する熱気あふれる大会となりました。護憲大会がその後に続く歴史をつくった1965年の第2回大会に続いて44年ぶりの大会を、長野県実行委員会の周到な準備と参加の取り組みによって、再び歴史に残るものとなりました。改めて感謝を申し上げます。
 なお、詳細な報告は平和フォーラムのホームページをご覧ください。
http://www.peace-forum.com/houkoku/091103.html

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食品に製造年月日表示の復活を求めよう
横行する期限表示の不正な改ざん

 平和フォーラムも参加している「食の安全・監視市民委員会」(代表・神山美智子弁護士)は、先に「食品表示法」の制定の提言を行っています(本誌09年5月号記事)。その中で「製造年月日を導入すること」も提起しています。
 現在、多くの食品には「品質が保持できる」賞味期限が表示されていますが、これは、事業者が任意に設定できるので、虚偽の取り締まりが困難です。一方、製造年月日表示は検証が容易であり、虚偽表示は直ちに法律違反とすることができます。
 現在、期限表示の改ざんが横行しています。しかも法律で取り締まれず、野放し状態です。「消費者庁」が発足し、食品表示制度の抜本的な改革が求められる中、改めて期限表示のあり方を考える必要があります。

法律で取り締まれない表示の改ざん
 賞味期限表示は1995年、海外からの規制緩和要求などによって、多くの消費者団体が反対したにもかかわらず、従来の製造年月日表示に代わって導入されたものです。消費者は、製造年月日を廃止することなく、期限表示は消費者の選択に役立てるためのサービス表示とすべきだと主張してきました。
 それ以後、最近の不二屋やミートホープ、赤福など、期限表示の改ざんは枚挙にいとまがありません。02年には日本ハムが、同じ日に製造したものに別々の期限表示をしたにもかかわらず「製品の品質が保たれる期間で問題はない」と説明しています。
 最近でもヤオハン立野店で、賞味期限切れの魚を刺身にして売ったことが問題になりましたが、管轄する浜松市保健所は「不適切だが明確な法律違反は見つからない」と判断しています(09年10月6日)。

期限表示は業者が任意に設定


賞味期限だけが表示されている食品

 食品衛生法で虚偽表示を禁止するのは「人の健康を損なうおそれがある場合」です。期限表示の改ざんが「人の健康を損なう」か実証することができるかどうかが問題となってきます。
 05年に出された厚生労働省・農林水産省の食品期限表示の設定のためのガイドラインによれば、微生物試験や理化学試験および官能検査の結果等に基づき、業者が安全係数を掛けて任意に期限表示が設定されることになっています。そのため、表示された期限を超えた食品が「人の健康を損なう」かどうか、科学的裏づけは困難です。
 また、試験結果と表示が適正かどうかの検証・監視がされているのかも不明です。期限表示の改ざん事件は全て内部告発であったことがそれを証明しています。

検証の方法について規定されていない
 このように、期限表示は科学的な検証が困難なものを法律で義務づけたことに問題があります。これに比べて、製造年月日表示は、裁量の余地のない客観的な事実であり、行政当局が検証することも容易であり、虚偽表示は直ちに法律違反とすることができます。
 期限表示をサービス表示とするとしても、その設定の裏づけが実証できることを前提とすべきです。特に弁当など「衛生上の危害が生じる恐れのない期間を年月日で表示」した消費期限については、安全性が重要であり、大腸菌など微生物については行政による抜き取り検査等の監視を実施し、情報の開示を義務づけておく必要があります。
 ガイドラインでは、業者からの情報提供にあたっては「消費者から求められた時は情報を提供するように努めるべきである」としていますが、「努める」は不十分であり根拠となる情報は全て提供すべきです。
 同監視市民委員会は、消費者及び食品安全担当大臣、消費者庁長官、厚生労働大臣に、こうした点をただした「期限表示の見直しについての要望」を提出。さらに法・制度の改善を求めて、主婦連など他団体とともに働きかけを行っていくことにしています。

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10.3「NO NUKES FESTA 2009」を機に
いまこそ原子力政策の転換の実現へ

エネルギー政策の転換を求めて全国から7,000人
 8月の総選挙で登場した鳩山政権に対して、エネルギー政策の転換を求める「NO NUKES FESTA 2009」が10月3日、東京・明治公園で開かれ、全国から7,000人が参加しました。集会では、1)プルトニウム利用の中止、2)原子力政策大綱の抜本的見直し、3)原発の新増設の中止と再生可能なエネルギーへの転換、4)安全規制体制の抜本的見直しを確認しました。さらに集会前日には「エネルギー政策の転換を求める署名」約57万筆、「上関原発の建設中止を求める署名」約61万筆が政府へ提出され、併せて高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開に反対する要請行動も取り組まれました。
 これらの取り組みは、政権交代を機に、エネルギー政策、中でも原子力政策の転換を実現しようと取り組まれたものです。特に六ヶ所再処理工場や福井のもんじゅ、各地のプルサーマルといったプルトニウム利用政策が行き詰まりを見せており、根本的解決が見えない中で、それでも強引に政策を推進しようとする流れを転換させることを強く求めるものでした。

新政権は原子力政策にどう取り組むか


NO NUKES FESTA 2009のパレード(09年10月3日)

 民主党、社民党、国民新党の連立政権での3党連立政権合意書の中には、原子力政策に対する言及はありません。合意書では「調整が必要な政策は、3党党首クラスによる基本政策閣僚委員会において議論し、その結果を閣議に諮る」としており、今後原子力政策は、この流れの中で確認されていくことになるはずです。
 もともと民主党は原子力推進が基本的立場となっています。8月の総選挙のマニュフェストでは、「安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む」としています。さらに政策集では、再処理や放射性廃棄物処分について、国が技術の確立と事業の最終責任を負い、安全と透明性を前提にして技術の確立を図るとしています。
 一方、社民党は10.3集会でも福島みずほ党首が発言しているように「脱原発」をかかげています。政策的には隔たりがありますが、連立を組む中で原子力政策については上記の中で調整が図られると思われます。しかし、民主党内の原子力に関連する経済産業省関係や文部科学省関係の議員には原子力推進派も多く、こうした動向を注視する必要があります。
 さらに「経産省幹部は『進めている13基の原発新増設にブレーキがかかるような事態になれば、とてもCO2の25%削減は及びもつかず、体を張ってでも阻止する』と語り、原子力新増設を計画通り進める意向を示した」(週刊「エネルギーと環境」11月5日号)と報道されているように、官僚の強い抵抗も予想されます。しかし、この壁を突破していかなければなりません。

ムダの追及から政策転換へ
 現在、鳩山政権は、来年度予算の概算要求の見直しを進めています。「高速増殖炉サイクル研究開発」や「高レベル廃棄物処分技術開発」「電源立地地域対策交付金」などの原子力関係予算は、大きな削減の余地があるものばかりです。
 例えば、成果の見込めない事業である高速増殖炉原型炉「もんじゅ」に前年度予算を40億円上回る243億円が要求されています。もんじゅの運転再開に開発意義のないことは明らかで、メンツのためだけに運転を再開しようとするのは「ムダ遣い」以外のなにものでもありません。
 さらに、高速増殖炉自体の開発が40年先の「2050年ころに実用化」とされ、それとても実現性が疑問視されているというのに、高速炉使用済み燃料の再処理で回収されるウランの除染という不急な技術開発に5億円の予算が要求されています。また、商業工場である六ヶ所再処理工場で使用されるガラス溶融炉の開発に20億円が「使用済燃料再処理事業高度化補助金」として要求されています。本来、民間で行うべき事業に予算が要求されるなど、ムダな要求があります。このようなムダを追及しながら、原子力政策そのものの見直しにつなげることが重要となっています。

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ICNNDは核廃絶への有効な一歩となるか
後退が目立つ日本側委員の姿勢に批判高まる

広島会合と外務省の逆行する動き


原爆ドーム前のNUCLEAR FREE NOWキャンドル・ナイト
(10月17日)

 日本とオーストラリア両国政府のイニシアティブによる「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の広島会合が10月18日から開催されるのにあわせ、同17日に「ICNNDと市民社会の対話」が開かれ、広島の原爆ドーム前では”NUCLEAR FREE NOWキャンドル・ナイト”を繰り広げました。また、18日には300人が参加して「核兵器のない世界へ─今こそ飛躍を!」と題する国際市民シンポジウムを広島の世界平和記念聖堂で開催、ICNNDおよび日本政府に対する決議を採択しました。
 広島会合の直前には、長崎を訪れた川口順子共同議長(元外相)が先制不使用宣言の意味を否定するような発言をするなど、ICNNDに対する市民社会の期待を裏切る事実が明らかにされました。
 中でも、米国が「核態勢の見直し(NPR)」で、今後数年間の核政策を定めようとしている時期に、核の役割を核攻撃の抑止にのみ限定する、実質的な核先制不使用への動きを止めようとする勢力に加担する発言は、核廃絶への潮流に逆行する許し難いものです。
 当初、ワシントン会合などで積極的に先制不使用宣言を求めていたICNNDが、姿勢を後退させた背後には、日本の現・旧外務省官僚の動きがありました。諮問委員に、先制不使用に強硬に反対してきた佐藤行雄元国連大使や阿部信泰国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長を入れているのは、歴代自民党政権の、核の傘を核以外の軍事力に対しても求める立場を踏襲するものです。また、現役の外務官僚は、ほとんど廃棄の決まっていた核搭載トマホークミサイルの復活配備を同盟国として米国に要求し、その成果を上げようとしています。これは、戦術核の削減・廃棄を訴えた東京フォーラム報告書(1997年)にも反します。
 もう一人のICNND共同議長のエバンズ元豪外相でさえ、前回5月の来日時に、「(日本が)核廃絶を唱える一方で核兵器が大好きだと言っていたのでは、世界からまともに相手にしてもらえない。核兵器以外の兵器─生物・化学兵器、それに通常兵器─による攻撃に対しても核兵器で守って欲しいと米国に望む政策をとりながら、核廃絶を唱えるというのは根本的に矛盾している」と指摘するほどです。

核の「先制不使用」政策の支持を
 一方、岡田外相が核の先制不使用について発言し、また、核兵器廃絶を訴えたオバマ米国大統領がノーベル平和賞を受賞するなど、今後に期待の持てる面もあります。「ICNNDと市民社会の対話」では、多くの委員がヒバクシャをはじめとする市民の核廃絶への思いに共感を表明しました。委員会のスケジュールに入っていなかった、キャンドル・ナイトにエバンズ共同議長をはじめとする委員が急遽参加し、核廃絶への心情を訴えるなど、感動的なシーンも見られました。
 18日のシンポジウムでは、日本政府に対する次のような5点の要請を含む決議をあげました。

  1. 日本政府は、核の「先制不使用」政策への支持を公式に宣言し、米国に対しても核の「先制不使用」政策を採択するよう求めるべきである。
  2. 国連総会およびNPT再検討会議において、日本政府は潘基文国連事務総長の核軍縮提案および核兵器禁止条約の交渉開始への支持を表明すべきである。
  3. 日本政府は、北東アジア非核地帯をめざすという政治宣言を発し、六者協議などの場を通じてこの目標の実現に向けて行動すべきである。政府はそのための交渉を行い、平和憲法の理念をいかして、核兵器に依存しない安全保障政策へと移行すべきである。
  4. 日本政府は、東アジアおよび北東アジアの緊張緩和の障害となっているミサイル防衛計画をただちに見直すべきである。
  5. プルトニウムおよび高濃縮ウランの利用は、核拡散の危険をもたらす。日本が真に核不拡散に貢献するためには、日本政府は核燃料サイクル政策を見直すべきである。(詳細は原水禁ウェブサイトを参照)

 今後、委員会は世界情勢の変化を踏まえて年明けに報告書を発表する予定で、まだ多少の修正の可能性はありますが、10月20日に発表された概要は、落胆せざるを得ないものです。報告書の内容が日本外交旧来の核の傘依存政策を是認するようなものであれば、新政権はこれに左右される事なく、核兵器のない世界への実質的な政策を進めることが期待されます。

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北朝鮮の核問題進展への期待
核絶対否定を再確認しよう

動き出すのか北朝鮮核問題
 なかなか進展が見えなかった朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題に、ようやく新たな動きが見え始めました。12月初旬に米政府はボズワース北朝鮮政策特別代表の訪朝を発表したのです。ただし、北朝鮮側が米朝間の一層の進展=国交正常化への道筋が見えることを求めているのに対し、米国のオバマ大統領、クリントン国務長官、ボズワース特別代表らが「交渉ではなく、北朝鮮を6者協議のプロセスに復帰させる道を開く場だ」などと語っていて、オバマ政権初の米朝直接協議が、どこまで進展するのか、現時点(11/13)では見通せない状況にあります。
 しかし、米朝間で対話が進展しない状況が続くと、北朝鮮も核開発計画を放棄する時機を逸してしまうのではないかと心配されます。北朝鮮は依然、米国の軍事的脅威を感じているでしょうし、2013年に再び共和党から大統領が誕生し、北朝鮮に威圧的政策をとる可能性も含めて、いろいろ考えていることは予測されます。だからまず米朝会談であり、米朝の敵対関係が後戻りしない保証として、平和条約締結や国交正常化、大使館設置などを求めているのです。
 オバマ米大統領が来日し、鳩山首相との会談後の記者会見で、北朝鮮核問題にしっかり取り組む姿勢を表明しており、私たちも大きな期待を寄せるのですが、一方で東欧のミサイル防衛問題を見ていると、オバマ大統領もクリントン国務長官も、絶えず軍事的緊張を求め、場合によれば戦争さえ画策する軍産複合体から自由になっていないのではないかとの危惧の念を抱くのです※。

核抑止論を拒否しよう


座り込みをする原水禁初代代表委員の森滝市郎さん(1988年)

 原水爆禁止の運動は1960年代、米・英・ソ連が一時停止(モラトリアム)をしていた核実験を、まずソ連が再開したとき、「いかなる国の核実験にも反対するか」どうかをめぐって論争と混乱が起こり、結局、私たちは原水爆禁止日本国民会議(原水禁)を結成しました。このとき、核実験に反対して始まった原水禁運動でありながら、なぜソ連の核実験には反対しないのかという疑問とともに、核抑止論を否定する運動でありながら、ソ連の核実験を支持することによって、核抑止論を肯定したことが問われたのです。
 そしていま北朝鮮もまた、核抑止論に立っており、この道に入り込むと、さらなる核軍事力強化以外に選択肢がなくなり、経済的負担が増大するという、ソ連崩壊への引き金ともなった轍を踏むことになると考えるのです。1983年に、旧ソ連のアメリカ・カナダ研究所のゲオルギー・アルバトフ所長は「(戦争抑止の)考え方自体が軍拡競争の内燃機関のような働きをする」と語っていますが、結局、ソ連は核兵器開発競争の結果、経済的困窮に陥り、崩壊を早めたのです。
 日本は歴史的にも朝鮮半島と強い関係にあり、さらには日本の植民地として、さまざまな暴虐を行ってきたにもかかわらず、いまだ正式な謝罪・補償はしていません。私たちの周りにも多くの韓国・朝鮮籍の人たち、友人がいて、とりわけ朝鮮籍の人たちの祖国が米国の軍事的圧力を受けている中で、北朝鮮が核武装することを心情的に容認したいと考えてしまいます。しかし、それは結局、核抑止論を肯定する論理で、北朝鮮の一層の困窮への道となるのです。

森滝市郎さんとヒバク・核絶対否定
 原水禁が1965年に発足したとき、被爆者であり、広島大学で哲学を教えていた森滝市郎先生が代表委員に就任されました。そして数年後には「核絶対否定」を、94年1月、92歳で亡くなられるまで訴え続けました。森滝先生はウラン採掘地域の米先住民や太平洋の核実験被害者との交流の中で、どのような核開発にもヒバクが存在することを実感し、「核絶対否定」の思想を深めていかれました。
 私たちもまた核開発とヒバクは切り離せないことを再確認しなければなりません。「核絶対否定」の立場は原水禁の原点といえます。

 ※オバマ大統領は東欧のミサイル防衛配備を取りやめると発表しましたが、それは米本土配備と同じGBIミサイルの配備を止めただけで、海上配備のSM3・2Aを、陸上配備型に改造して配備するというのです。GBIミサイル、SM3・2Aについては次号で解説します。

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【本の紹介】
ドキュメント高校中退
いま、貧困が生まれる場所
青砥 恭 著


筑摩書房09年10月刊

 年間10万人にもおよぶ高校中退者。本書は、その現状と当事者への取材や調査をまとめたものです。長年、高校中退は本人の問題とされてきました。しかし、中退者の多くは貧困家庭にあって経済的、文化的資本に乏しいという、本人の努力だけではどうしようもないハンディキャップを抱えています。その親たちも似た環境を生きてきて、その貧困がまた引き継がれていくのです。本書に登場する高校中退者たちの声は本当に悲惨なもので、満足な仕事もなく社会からも孤立した希望を持てない人々であることが書かれています。
 私は13年前、定時制高校を卒業しました。在学中に父を亡くし、病気の母と妹の3人での生活は大変でした。4年生になる直前、私は生活苦や無気力状態から、中退したいと担任に申し出ました。彼は「勝手にすればいい」といった態度だったのですが、進級後の次期担任に内定していた教師から「俺は今回で定年だ。俺の最後に付き合え!」などとユーモアを交えて説得され、嫌々ながら卒業し、今となっては感謝しています。
 私には、偶然この教師との出会いがあったのですが、子どもの将来を大きく左右する事柄が、こんな神頼みのようなことであってよいはずがありません。
 著者は本書の中で、中退と子どもの貧困を克服するための提言として、高校の義務教育化、高校教育を職業教育中心に転換させること、貧困層への経済的支援などを挙げています。全国学力テストなるものに、60億円ものお金を注ぎ込みながら、定時制・通信制高校への1,500万円の補助制度は打ち切る感覚。家庭環境でその後の人生が定められてしまう実質的な階層化社会。子どもを大切にしない国の未来が明るいものだとはとても思えません。痛々しい高校中退者たちの現実に、後味の悪さが残る一冊でした。
 (阿部 浩一)

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【映画評】
グエムル 漢江の怪物
(06年/韓国/ボン・ジュノ監督)

 韓国映画「グエムル」の主人公のカンドゥ(ソン・ガンホ)は、ソウル市を流れる漢江(ハンガン)の川沿いで商店主をしています。少し抜けていて奥さんは逃げてしまったけれど、一人娘のナムジュを溺愛しています。
 ところがある日、漢江から怪物が現れて人々を襲い、ナムジュは怪物に連れ去られてしまうのです。そこで娘を救うため、カンドゥとカンドゥの父、妹、弟の4人が、怪物に戦いを挑むというストーリーです。怪物と戦う話は、エイリアンやプレデターにも似ていますが、そこは韓国映画。ホロリとする家族愛や、コミカルなシーンがあちこちに挿入されています。
 ところでこの映画、実は在韓米軍基地撤去運動の立役者なのです。米国の安全保障専門家、ケント・カルダーの著書『米軍再編の政治学』はこの映画について次のように書いています。「〈グエムル 漢江の怪物〉は封切りから11日で韓国の人口の8分の1にあたる600万人の観客を動員した」、「米軍基地が不用意に流した有害廃棄物の発する毒ガスから生まれた怪物が、ソウルの漢江から現れて女の子をさらうという設定」、「映画は事実の裏づけが貧弱で、それも扇情的に大きく事実を歪曲している」、「怪物など生まれていない」――などです。
 韓国の市民団体・緑色連合は、ソウル市の米軍龍山基地から劇薬のホルムアルデヒドが大量投棄され、漢江を汚染していると発表しました。映画はこの事件をヒントにしています。ストーリーがフィクションで、反米的なメッセージなどないことは、映画を見ればわかります。しかし米国の専門家は、この映画が、在韓米軍の存在を危うくしたと警告しているのです。米軍を追い詰めるチャンスは、意外なところにあるようです。私たちも見習わなければなりません。
 ところでカンドゥの弟は、大学では民主化運動の闘士で、いまはフリーターという設定。ラストで火炎瓶を手に怪物に立ち向かうのですが、「おっ! 韓国では火炎瓶はああつくって、ああ投げるのか」と思わず納得するシーンもあります。まだ見ていない方は、DVDで是非ご覧ください。
  (八木 隆次)

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投稿コーナー
瀬戸内の豊かな自然を守れ!
上関原発の着工を許さない
長島の自然を守る会代表 高島 美登里

中国電力の横暴でついにけが人が
 上関原発予定地の公有水面埋め立てをめぐって、9月10日の埋め立て工事着工以降、現地での攻防はし烈を極めています。中国電力のなりふり構わぬ工事の強行は、11月8日、ついに負傷者を出すまでに至りました。現在、海上保安庁が取調べ中ですが、私たちは人命にかかわる危険な行為は絶対に許せないとして、今後あらゆる方法で糾弾していきます。
 今回の事件に象徴されるように、田名埠頭での灯浮標(埋め立て境界線を示すブイ)の搬出阻止行動により、工事の遅れを取り戻そうと焦る中国電力は、目的のためには手段を選ばぬ横暴さを白日のもとにさらしています。祝島の漁船には「一次産業や二次産業だけでやっていけないでしょう」「祝島の反対運動のリーダーは大嘘つきの独裁者だ」と暴言を吐き、シーカヤック隊には猛スピードで突っ込み、危うく転覆させそうになるなど、上関町長や山口県でさえ厳重注意せざるを得ない行動を取っています。
 10月28日には、田名埠頭ではなく、他の港からブイの中古品を調達し、夜明けを待たず暗闇の中で測量もせずに放り込むという姑息なやり方でブイを設置しました。中国電力のやり方に対して、現地祝島の人たちの身体を張って阻止する姿やシーカヤッカーの勇気ある意思表示は、多くの人々の共感を呼びました。
 田名埠頭には延べ数千人が激励に駆けつけ、色とりどりの激励の布メッセージがたなびき、「未来につながる生命を育てる会」の子どもをつれたお母さんたちや、「上関原発を考える広島20代の会」の若者たちが県庁に申入れるなど、自分たちの問題として立ち上がった新しい力がうねりとなって広がっています。

貴重な自然も破壊しつくす中国電力


埋め立て予定地の田ノ浦(09年11月)

 10月2日に経済産業省に提出した「上関町の『原発建設計画中止!』を求める」署名は短期間にもかかわらず61万人を超え、10月25日の「原発いらんin上関集会!!」には原水禁をはじめ、全国から1,200人もの参加者がありました。また、10月12日から13日にかけて、予定地を視察した近藤正道参議院議員(社民党)が、祝島の27年間の闘いや埋め立て阻止行動部隊の熱い想いに敬服すると同時に、長島の自然の素晴らしさに感動していました。その結果、10月28日に、日本生態学会・日本ベントス学会・日本鳥学会などの専門家や長島の自然を守る会と田島一成環境副大臣の面談が実現し「現地の生態系の重要さや環境アセスメントの問題点は承知しているので、今後具体的に何ができるか早急に検討する」との回答を得ました。
 現在、闘いの場は埋め立て予定地である田ノ浦に移りました。祝島の人たちが網を入れ、ナメクジウオや世界でも希少な貝類が棲み、スギモクという日本海にしか生えない海藻が飛び地的に群落を作る入り江に、無残にもコンクリートブロックが投げ込まれています。瀬戸内海で最後に残されたホットスポットを潰すことは、開発によって奪われた、豊かで美しい瀬戸内海を取り戻す道を永久に失うことに他なりません。
 9月に希少な海鳥の保護について中国電力に申し入れた際、広報担当責任者は国の天然記念物で、世界中で日本にしか生息しないカンムリウミスズメや、世界で初めて内海での繁殖が確認されたオオミズナギドリの保護について「埋め立て予定地で繁殖可能性がないので埋め立てても影響はない」「生態系保護までは1企業が責任を持つ必要はない」「鳥は飛んで逃げるから問題ないでしょう」とまるで邪魔者扱いの回答に終始しました。
 祝島の人々に対して28年間、中国電力が取り続けてきた態度と全く同じです。私企業の利益追求のためには人も生き物も踏み潰し、「邪魔者は消してしまおう!」という中国電力の企業体質が如実にあらわれています。
 私たちは人と生きものの生命(いのち)を断ち切る埋め立ての強行を断じて許すことはできません。祝島の88歳のおじいちゃんは「死んでもええ。いのちをかけて闘う!」と2ヵ月以上にわたる阻止行動をがんばっています。署名活動も来年3月末まで継続して取り組みます。私たちは現地で精一杯がんばります。これからも変わらぬご支援をよろしくお願いします。

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沖縄と本土の連帯で撤去をめざし行動
沖縄に米軍基地はいらない!

 11月13日のオバマ米国大統領の来日に向けて、沖縄の米軍基地問題が大きな課題になりました。沖縄県では9月に「普天間基地の即時閉鎖・辺野古新基地建設反対!県民集会」が開かれ、その決議をもって、10月22日・23日の両日、沖縄県から「基地の県内移設に反対する県民会議」の代表団が上京しました。代表団は内閣官房副長官や外務省・防衛省への要請などを行い、22日の夜、「普天間基地の即時閉鎖と辺野古新基地建設の断念を求める緊急集会」を開催しました。
 集会には450人が参加。「沖縄は64年間、米国の基地を押し付けられてきた。いまこそ、沖縄の米軍基地を大きく動かす絶好の機会だ。11月8日には、沖縄で数万人規模の県民大会を開催して、来日するオバマ大統領に県民の不動の決意を伝えたい」(山城博治同県民会議事務局長・平和運動センター事務局長)などと、沖縄と本土、国会議員・自治体議員と市民・労働者の連帯で、基地撤去をめざす決意を固めました。「沖縄に米軍基地はいらない!」の声をさらに高めていく必要があります(次号で解説します)。

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