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ニュースペーパー2010年12月号

2010年12月 1日

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 世界規模の不況と「格差と貧困」の広がりに加えて、口蹄疫問題で深刻な被害を受けながら、その復興に懸命に取り組んでいる宮崎の地で、「韓国併合100年・安保50年、東アジアに新たな平和と友好を─憲法理念の実現をめざす第47回大会」が開催され、全国各地から2,500人が参加ました。宮崎県での開催は初めてですが、全国47都道府県の持ち回りで行われる護憲大会で、47回目という象徴的な回数の大会となりました。詳細な報告はこちらをご覧ください。写真はオープニングでこの大会のためにつくった「この街で」を歌う延岡市出身の双子デュオ"#SOAR"。作詞は、元宮崎県高教組委員長の杉谷昭人さん。

【インタビュー・シリーズ その52】
「第五福竜丸の国」が果たすべき役割とは
マーシャル諸島共和国 駐日大使 ジベ・カブアさんに聞く

【プロフィール】
ハワイ大学卒業後、教育、外務、資源開発、環境部門の役職を歴任。ナモドリック環礁選出の上院議員を経て2008年より現職。カヌーの設計や制作、作曲など多くの趣味を持つ。60歳。今年の3.1ビキニデー集会(静岡市)に出席し、「マーシャル諸島の核被害について」と題する特別報告を行った。冷戦時代に核実験が繰り返されたマーシャル諸島の「ビキニ環礁」は今年、広島の原爆ドームに続き、核兵器の惨禍を伝える「負の遺産」として、世界遺産に登録された。

――ビキニ被災から56年。マーシャル諸島周辺ではまだ健康被害を受けた方は多くいらっしゃいますか。
 被害を受けた人数を、具体的な数字で挙げることはできません。ただ、健康面での異常に苦しむ人々は非常にたくさんいます。若い人が多く被害を受けました。核兵器による放射能被害というのは、ご存じのように、「スロー・デス」(ゆっくりした死)です。いつ、どのような健康障害が出て死に至るのかもわかりません。放射能による被害だと証明することも難しいのです。
 67回も行われた核実験後で、多くの島々が被害を受けました。ビキニ、エニウェトク、ロンゲラップ、ウトリックの4島のみ補償があったのですが、その他の多くの島々も被害を受けています。白血病や甲状腺ガンなど、明白に放射能が原因の病気も多いのです。マーシャルの人々はキリスト教の影響もあり、とても謙虚な人々です。米国政府の言うことをそのまま聞いてしまいます。核実験後の医療についても、言われるがまま、特別な注射を受けていました。後でわかったことですが、放射能の影響を調査する実験台にされていたのです。マーシャルでは、亡くなる人が相次いで、ほとんど何の疑いもなく"治療"を受けました。島の人々は、多くの人が亡くなるのを目の当たりにしてようやく、核実験と自分たちの体の異常を結びつけて考えるようになったのです。
 その後、米国から受け取った補償は十分なものではありませんでした。被害の状況もわからないうちに、非常に少ない金額で合意してしまったのです。合意の後になって、様々な被害が明らかになってきました。汚染された土地の除染などは補償に含まれておらず、農作物を育てることもできませんでした。米国は、私たちの要求を全く聞かないのです。私たちに必要なのは、米国にノーと言える強力な政治的リーダーです。米国との関係を今のような状態ではなく、新しいものに変えなくてはいけません。私たちの島々を取り戻すために、ヒバクシャやその家族の連帯が必要です。
 文化的・社会的にも豊かだった島々の人は、汚染された土地を追われ、環境の違う島に移され、それまでの生活を奪われてしまいました。ビキニ環礁の住民が移住させられたキリ島などは、環礁でない単一の島で、全く生活環境が違います。

――汚染は現在も残っているのですか?
 除染作業のされたところもありますが、全く不十分で、汚染された島の人々は、元の島に戻ることができていません。日本は自然が残っており、豊かな土壌で、いろいろな農作物をつくることができますね。しかし、マーシャルの多くの島では、作物がつくれません。根本的な食べ物の安全保障がないのです。全部輸入された、本来の文化的な背景のないジャンクフードを食べさせられて、多くの人が健康を害しています。与えられた食べ物を受け入れて、弱くなっているのです。

――日本では広島と長崎への原爆投下から65年が経過して歴史の風化も言われています。


オーストラリアとハワイの中間に位置する
マーシャル諸島
 日本はこれまでずっと、核兵器を拒否してきました。ところが現在、武器輸出をしない原則を変えようとしているようです。米国に追随してなのか、日本でも核武装しようという意見を耳にします。悲しいことです。
 ヒバクシャの声をもっと皆さん聞くべきです。政治の世界に信頼というものがなくなっているように思えます。小さな島々の領有をめぐって大国同士が争っている。島や海は誰の所有物でもないはずです。島の人が漁をするのが当たり前ではないでしょうか。魚もみんなで分けて食べればよいのではないでしょうか。鉱物資源も一緒に開発すればいいのではないでしょうか。島の領有問題に私が助言するとすれば、フィフティー・フィフティーです。ノー・モア・ファイト。

――日本はミクロネシアやマーシャルを何十年も占領していました。
 「占領」と言われましたが、私たち島の人間は、力で抵抗したことはありません。常にウェルカムでした。ドイツの人々が島に来て、家の鍵がほしいと言ったので渡しました。その後、日本人がやって来たときも同じでした。そして米国がやってきたわけです。資源を争う大国が問題を持ち込んできたのです。
 しかし、昨年4月のオバマ米大統領によるプラハ演説は、世界の指導者として、巨大な武力を持つ米国の大統領として、初めて勇気を持って核廃絶について発言をしたものだと感じています。

――そのプラハ演説に対する評価についてもう少し聞かせてください。
 演説で「核なき世界」を語ったこと。そのことについては尊敬しますが、決して十分というわけではありません。演説は演説に過ぎませんから。それに続いて軍事面、政治面の現実が追いつかなければいけません。イラクやアフガニスタンでの戦闘が終わらなければなりません。
戦争、テロリストというものを生み出す背景には、貧困や病気、豊かな国がますます豊かになり、他の国から資源を奪っていく、過剰などん欲さに支配されていることがあると思います。どん欲で巨大な企業が、世界の金融システムの中で世界の人々から豊かさを奪っていくシステムが進んでいます。生物の多様性の維持もそうですが、富を分かち合うということが大切です。先住民の利用してきた生物の遺伝子情報、たとえばマーシャルでしか見つからない珊瑚のある種の生物から、ガンの治療に役立つ薬品が見つかったのですが、先住民には何の権利も認められていません。

――核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドが日本との原子力協力をめざしています。
 NPTには、核拡散に関して国際的に議論ができるという存在意義があると思います。これを言うのは気が引けるのですが、日本には、オバマ米大統領のプラハ演説に見られるような、勇気を持った政治家がなかなかいないようです。しかし、日本には世界に向けて果たすべき大事な役割があるのではないでしょうか。立ち上がって発言するべきだと思います。世界に対して、武器の生産、持ち込み、使用をやめるように。日本に、米国の軍事基地はいらないと主張することです。

──日本は憲法第9条がありますが、米国による抑止力に依存するとしています。
 これは法律家や政治家のやるゲームです。抑止力というのは一つの神話ではないでしょうか。これが必要だ、米国に依存しなければならない、というのは法律家や政治家によって人々の思考にすり込まれた考え方でしかないと思います。その結果、米国に対して、武器を持参して日本に来てほしいと言っているのですから。今日は、マーシャル諸島の状況を知っていただきたいのと、核兵器の問題についてメッセージを届けたいと思い、インタビューをお引き受けしました。マーシャル諸島の核実験では第五福竜丸をはじめ、日本人も被害を受けました。マーシャル共和国と日本の友好で、核兵器のない世界をめざしましょう。

〈インタビューを終えて〉
 成田からグアム経由で約9時間。サンゴが堆積し南洋群島に浮かぶ島国、マーシャル共和国は南太平洋の真珠の首飾りとも呼ばれている。約三千年前、火山島の周りに溜まったサンゴ(リーフ)が小さな島を形成した。しかし、1946年以降、米国によって67回の核実験が繰り返され、2010年には、負の遺産として世界遺産に登録された。核実験による被害は現在も続き、汚染された島では作物もつくれない。日本が核兵器廃絶と米軍基地はいらないというメッセージを発信するよう期待したいと語るカブア大使とマーシャル共和国になんとしても応えていきたい。
(藤岡 一昭)

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時代錯誤! 新安防懇報告
必要なことはアジアでの「共通の安全保障」

専守防衛に徹してきた防衛計画大綱
 新政権が発足した昨年、民主党は次期の防衛計画大綱の策定を先延ばしし、そのための首相諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新安防懇)を立ち上げました。防衛計画大綱は、1976年の自民党三木武夫内閣のときに、初めて策定されました。第二次世界大戦終了後、30年を経て東西冷戦も緊張緩和(デタント)の時代にあって、第1次防衛力整備計画以降第4次まで、倍々ゲームで増加してきた防衛費への大きな批判がありました。そのため、防衛計画大綱は、防衛費を極力抑えるために「脅威に直接対抗せず自らが不安定要因にならないよう必要最低限度の防衛力を持つ」とする「基盤的防衛力」の整備を基本に、専守防衛に徹するものとされてきました。防衛費のGNP(国民総生産)1%枠という考えも同時につくられました。以降、防衛計画大綱は三度策定されましたが、どの大綱も「基盤的防衛力」「専守防衛」の基本原則に変更を加えるものではありませんでした。
 民主党も、その基本政策の中で、「専守防衛に徹し、集団的自衛権を行使しないこと、非核三原則を守ること、海外における武力行使を行わないこと、文民統制を維持することなど戦後の防衛政策の諸原則を今後も遵守する」との考えを示しています。

核の抑止力や自衛隊の重要性を強調


町中を走行する自衛隊車両(自衛隊HPから)
 8月27日に、菅直人首相に提出された新安防懇の報告は、「基盤的防衛力」をもはや有効ではないとし、1)自衛隊の戦力の近代化と増強、2)国境の枠を超えた高度な防衛力、3)米国と共同の実効的対処などを通じて、自衛隊を動的抑止力として位置付けようとするものです。冷戦構造が崩壊し、北方における旧ソ連の脅威が融解した今日、南方の中国の脅威をことさらに強調し、南西諸島における離島防衛の必要性を説き、米軍の抑止力や自衛隊の重要性を訴えるものとなっています。
 この新安防懇報告は、集団的自衛権の行使に踏み込むとともに専守防衛を否定するなど、民主党の基本政策や従来の日本の防衛政策の基本をも否定するものです。また、中国を脅威と認定することで日米安保への国民的回帰を促すものであり、民主党の基本政策と相容れないものと言わざるを得ません。
 普天間問題で揺れた日米安保は、沖縄県民の「安保離れ」を確実にしています。県民は、この間の名護市長および市議会選挙の結果を通じて、基地や基地に伴う振興策および米軍基地の存在に対してノーの声を突きつけ、日本国内においても米軍基地受け入れが困難な状況となっています。安保条約を盾に、多額の費用を支払わされ続ける日本。そして、安保の枠を超えてイラク・アフガニスタンへと展開する在日米軍、今や米軍の世界展開は、米国内でさえ否定的な意見が出始めています(バーニー・フランク下院歳出委員長の発言など)。

日米安保回帰の外交政策を許さない
 折しも、尖閣諸島沖において中国漁船の巡視船衝突事件が起きました。中国政府の反発や反日運動を日本国民の反中感情の扇情に利用し、尖閣諸島を領土問題としてナショナリズムをかき立てています。そのことが「安保回帰」に利用されているのです。新安防懇報告とこの事件は、きれいに符合して私たちの前に、中国は危ない国、米軍の抑止力は重要、日本も中国の軍拡に備えなくてはならないとの主張を展開するものとなっています。
 しかし、現在重要なのは、もはや日本経済が米国よりも中国をはじめ、アジア諸国との結びつきを強固にしているということです。今年、平和フォーラムは、責任者会議(9/13~14・熱海)、日米安保と東アジアの平和を問うシンポジウム(10/16・社文会館)、憲法理念の実現をめざす第47回大会(護憲大会、11/6~8・宮崎)を通じて、日本が率先して、アジアにおける「共通の安全保障」の構築に、リーダーシップを発揮すべきことを明らかにしてきました。その意味で、民主党のアジア重視の姿勢は重要なもので、決して日米安保を軸とした外交政策に戻してはなりません。

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今こそアジアの平和と友好に貢献すべきとき
朝鮮民主主義人民共和国を訪問して
日朝国交正常化連絡会共同代表 清水 澄子

 9月29日に日朝国交正常化連絡会(連絡会)の代表団として、朝鮮民主主義人民共和国を訪問しました。メンバーは連絡会顧問の和田春樹さん(東大名誉教授)、福山真劫・共同代表(平和フォーラム代表)、同じく清水澄子(訪朝団団長)、鈴井孝雄(静岡平和・国民運動センター事務局長)の4名です。目的は、3年前に「韓国併合100年」に向けて朝鮮侵略の歴史を認識し、日朝国交正常化の徹底的前進を図ろうと結成し運動を続けてきた連絡会として、意見交換を行うためでした。

コンピューター化が進む工場や農園


広大なリンゴ園にもICの先端技術が及ぶ
(左端が清水団長)
 折しも前日の28日には世界が注目するところの朝鮮労働党の代表者会議が開かれました。機内で配布された「労働新聞」には、金正日さんが労働党総書記に推戴されたことと、三男の金正恩さんが党中央軍事委員会副委員長に就任したことが報じられていました。
 平壌到着の夜は対外文化交流協会の洪善玉(ホン・ソノク)副委員長と黄虎男(ファン・ホナム)局長の歓迎を受け、翌日、金日成総合大学電子図書館と水泳プールを視察。1階のホールの正面には「自分の地に足をつけて目は世界を見よ。崇高な精神と豊富な知識を兼備した先軍革命の信頼される幹部になれ!」と金正日総書記の言葉が掲げられています。この精神が金日成首席生誕100年を迎える2012年に「強盛大国の大門を開く」という朝鮮人民の大目標なのです。
 5階建てで1万5千ヘクタールの図書館は、会議室、講義室の全てがコンピューター化され米大手のパソコンが並んでいました。蔵書200万冊のうち15万冊がスキャンされ電子化を完了したということです。ICの先端技術による情報産業化を進めているのです。後に案内された平壌紡績工場や大同江(テドンガン)ビール工場もすべてコンュータ操作が行われていました。
 また、平壌の大城山(テソンカン)の先にある大同江果樹園の600ヘクタールに及ぶ広大なリンゴ園もIC管理でした。イタリアの技術指導を受け、世界各地からの50種類もの苗を平壌の気候に合わせて改良したのだそうです。10万世帯の住宅建設も真っ最中でした。朝鮮人民はいま2012年を前に「人民生活の決定的転機に向けて」励んでいます。だからいたるところで「いまわれわれが必要なのは平和な環境である」という言葉を何回も耳にしました。

「併合100年」何一つ日本は解決しなかった
 私たちは短い日程の中で、軍縮平和研究所、経済研究所、歴史研究所の責任者に会い、日朝交渉大使の宋日昊(ソン・イルホ)さん、被爆者とその協会の書記長と意見を交わしました。
 宋日昊さんは日朝関係について、福田政権時代の08年8月の瀋陽での最後の交渉をこう語りました。「日本政府は共和国が拉致問題の再調査をすると発表すれば、日本は部分的に制裁を解除すると通告してきた。われわれは再調査を行うと発表したが、日本は約束を実行しなかった。その後再協議しようと提起してきたが、その基本目的は関係改善の雰囲気づくりにあるのだと言った。また、拉致問題についての閣僚や公人が雰囲気づくりに反する言行を慎むとも約束した。だが麻生内閣は全てその約束を反故にした」「日本はたとえ歳月が過ぎても朝鮮を侵略した過去の歴史の清算を逃れることはできない。日本が真に日朝関係を改善するのならば原則的な立場に立って朝鮮政策を樹立しなければならない」と述べました。
 反核平和のための朝鮮被爆者協会との交渉では、岡山市で生まれ広島市で被爆した金明愛(キム・ミョンエ)さんが、自分も病気がちで発熱のある状態を嘆きながら被爆二世の悲しみを語り、「戦争を知らない娘が34歳で死亡した。日本政府は補償すべきだ」と訴えました。同協会書記長の桂成訓(ケイ・ソンヒョン)さんも「日本政府は共和国の被爆者に対する責任の解決方針を示すべきだ」と主張しました。
「併合100年」。共和国との関係は何一つ解決していません。いま私たちに課せられている課題、それは菅政権に日朝国交正常化の扉を開けろと迫ることでしょう。今回の訪朝で朝鮮と中国が世紀を継いで政治的、経済的、技術的協力の新たな絆で結ばれたことを実感しました。東アジアは大きく変化しつつあります。日本は朝鮮政策を転換し東北アジアの冷戦を終結するために今こそアジアの平和と友好に貢献すべきです。

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古くて新しい合成洗剤の問題
「化学物質」には消費者向けのわかりやすい表示が必要!
きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会 事務局長 永井 雅師

あいまいな表示をやめさせる運動を展開
 私たちの身近にあり、その有害性がいつも問題になっている古くて新しい化学物質「合成洗剤」。高度経済成長と言われ、公害が社会問題となった1960年代、多摩川など都市河川がその泡だらけになり、湖沼の富栄養化、手荒れ、おむつかぶれ等の被害が続発する中、草の根の消費者運動、環境保護グループ、労働組合等が結集して1974年に結成されたのが「きれいな水といのちを守る合成洗剤追放全国連絡会」(全国連)です。
 結成当時、一般消費者が有害な合成洗剤をやめて石けんを選択しようとしても、合成洗剤と石けんの表示はあいまいで、3%まで合成洗剤が混在しても「粉石けん」の表示が許されていました。80年代に全国連の中に「明快な表示を求める実行委員会」をつくり、通産省・経済企画庁(当時)にわかりやすい表示と品質表示法の改正を求めました。その結果、混入は認められなくなりましたが、「複合石けん」など紛らわしい名称の合成洗剤が出現してきました。
 その後、「朝シャン」の流行などでシャンプー、リンスといった人体に直接被害を与える恐れのある合成洗剤が急増しましたが、これらは厚生省(当時)所管の薬事法で規定されており、石けんか合成洗剤かが明確にわかる表示ではありません。そこで90年代に日本消費者連盟などとも協力し2回目の表示実行委員会運動を呼びかけ、「全成分表示」と「石けんか合成洗剤かわかりやすい表示」を求めて運動しました。

経産省と厚労省の縦割り行政の弊害


合成洗剤につけられるべき
「水生環境有害性」の絵表示
 現在、消費者にとっては同じ洗剤・洗浄剤なのに、消費者庁所管(経済産業省から移管)の品質表示法では石けんか合成洗剤かの区別はつくものの、全成分表示にはなっていません。一方、厚生労働省所管の薬事法では原則的に全成分表示にはなったものの、物質名の羅列でとてもわかりやすい表示とは言えません。また、石けんか合成洗剤かの区別も困難です。このように、縦割り行政の壁は厚く、消費者のための表示はなかなか実現しません。
 しかし、化学物質による地球規模での健康被害、環境汚染が明確になる中で、世界共通の化学物質規制の動きが強まってきました。一般市民・消費者も参加できる仕組みの一つが、化学物質排出・移動量届出制度「PRTR」と製品安全データシート「MSDS」を柱とする「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法=PRTR法)という長い名前の法律です。規制の対象は「人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質」で、環境中に広く継続的に存在する「第1種指定化学物質」として、LASやAEなど9種類の合成洗剤成分が指定されています。
 毎年国が公表するPRTRデータによれば01年から08年まで毎年、全国の家庭から排出される有害物質の50%以上が合成洗剤です。日本の法律で合成洗剤の有害性を明記したのはPRTR法が初めてです。ところが、消費者がPRTR法で規制されている合成洗剤を避けようとしても、品質表示法や薬事法で規定された製品の表示名とは異なり、判断が難しいという問題があります。

まやかしの日本石鹸洗剤工業会のGHS絵表示
 さらに、国連が決めた化学物質の危険性を表す世界共通の絵表示として、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(GHS・図)があります。これを大手合成洗剤企業の業界団体である「日本石鹸洗剤工業会」が来年から先行実施すると発表しました。しかし、内容は合成洗剤についての表示を巧妙に避けており、「有害」なものでも、表示がないことで逆に「環境にやさしい」と誤った認識をさせる恐れがあります。
 合成洗剤など身近な化学物質の成分表示は多くの問題点を抱えています。これらの問題解決のため、全国連は関係省や団体と話し合いを続けています。

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エネルギー・プロジェクトの提言まとまる
「持続可能で平和な社会を」をめざして
原水禁副議長 原子力資料情報室共同代表 西尾 漠

エネルギーは人類生存に不可欠な公共財
 原水禁は今年7月、原子力資料情報室とともに原子力政策の転換に向けた提言を作成、「破綻したプルトニウム利用」(緑風出版、本誌10月号で紹介)として刊行しました。それに続いて、より広くエネルギー政策の提言を行うため、「エネルギー・プロジェクト」を組織し、11月に提言書をまとめました。以下に、その骨子を紹介します。
 プロジェクトは、めざすべきエネルギー政策の目的を「持続可能で平和な社会」の構築としました。特に「平和な」という言葉を加えたのは、エネルギーが人類の生存にとって不可欠な、いわば公共財であり、何人も政治的な理由や紛争などによって奪われることなく供給されなければならないと考えたからです。核兵器やその他の兵器への転用が可能なエネルギーの利用を排するだけでなく、平和な暮らしを壊さない、安全で民主的な利用を実現すること。それを含んでの命名であることは言うまでもありません。

消費の縮小が政策の基本


小水力発電機。小川でも発電可能
(長野県辰野町・10年7月撮影)
 「持続可能で平和な社会」の実現には、エネルギー利用の効率化により消費を小さくした上で、平和に反し持続可能でもない原子力や化石燃料の利用から早期に撤退して、再生可能な自然エネルギーを中心とした需給を実現することが必要だと考えました。
目先の経済成長にとらわれず、将来世代にも安定的な雇用やエネルギー供給を保障し、少しでもよい環境を保障するものでなくてはならないのです。
 エネルギー消費を小さくすることが持続可能な政策の基本です。日本のエネルギー構造を見ると、実際に利用されるエネルギーは、投入分の3分の1強でしかなく、3分の2弱は利用されない「損失」となっています。とりわけ発電時の損失(温排水として捨てられているもの)が大きく、損失全体の4割弱、発電量の1.5倍です。
 コンバインドサイクル(複合発電)化や燃焼技術の向上により発電の効率を上げれば、この損失を小さくできます。利用段階での損失も、機器や利用システムの効率を上げることで小さくできます。

2050年に脱原発・脱化石燃料を達成
 自然エネルギーは、消費を小さくすることにつながるエネルギー源です。「スマートグリッド」(情報通信技術を用いた次世代型の電力網)などの考えを上手に取り入れることで、大規模電源より、かえって使い勝手のよいエネルギーとなる可能性を秘めています。自然エネルギーを「基幹エネルギー」として利用できるようにするべく、普及に努めていく必要があります。
 次に、建設・計画中の原発は中止し、既設の原発は順次廃止していくべきです。寿命を定めて段階的に止めていくことを基本とし、大きな事故を起こした原発や、特に地震被災の危険性の高い原発は寿命前でも止めていくという考え方が順当です。
 石炭火力については、出力が小さく効率の悪い老朽設備を廃止、新しい設備はLNGコンバインドサイクル火力(天然ガスを燃焼させることで効率よく発電する)への転換を図ることが望ましいと考えます。将来的には全ての化石燃料からの脱却をめざすべきです。
 一つの例として「2050年エネルギー半減シナリオ」のグラフを作成しました。エネルギー消費量がこれまでの実績の最高値から半減するとしたものです。実際、すでに減り始めています。当面は化石燃料をより効率よく、よりクリーンに活用することから始めて、消費を削減し、脱原発・脱化石燃料を達成することが可能であることが示されています。エネルギー利用計画を改め、このような方向へ舵を切ることが必要です。
 このような考えのもと、政府に求める具体的な施策の提案を行っています。報告書を、近く冊子として発表し、原水禁のホームページにも掲載する予定です。

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新しい国連決議を採択、重要な被害者支援
「劣化ウラン兵器禁止」へさらなる取り組み

反対したのは戦闘で使用した国々
 10月29日、ニューヨークの国連総会第一委員会(軍縮・国際安全保障関連)で、新たな国連決議「劣化ウランを含む兵器・砲弾の使用による影響」が、前回(2008年)を上回る賛成多数で採択されました。同決議は、これまでの2回の決議(07、08年)と同じく「非同盟運動」(NAM)諸国の統一案として、NAMを代表してインドネシアによって提出されました。採決では、賛成136ヵ国(2008年は127ヵ国)、棄権28ヵ国、反対4ヵ国でした。反対したのは前回同様に、劣化ウラン兵器を戦闘で使用したアメリカ、イギリス、そして同兵器を所有しているフランス、イスラエルです。日本は07、08年に引き続き、今回も賛成票を投じました。
 新たな国連決議には、劣化ウラン兵器を戦闘で使用した国に対し、使用地域と使用量をできる限り詳細に、要請があれば、影響を受けた国に報告するように求めるなど、これまでの決議から一歩前進した内容が盛り込まれています(主文第6項)。これまで米軍は、03年のイラク戦争などでの劣化ウラン兵器の使用地域や量を一切明らかにしていません。このような現状の下で、同兵器使用に関する情報を公開させることは、被害調査や被害者支援を進めるためにも重要です。

NGOの活動で盛り込まれた「情報公開」


情報公開を求め抗議する
「イギリス劣化ウランネットワーク」
(イギリスの米大使館前・11月12日)
 「ウラン兵器禁止を求める国際連合」(ICBUW)が決議に入れるよう求めた「予防原則に基づく劣化ウラン兵器使用の中止」などは、残念ながら今回の決議には含まれませんでした。しかし同兵器使用に関する「情報公開」が盛り込まれたことは、バルカン諸国への調査団派遣や、イラクのバスラでの疫学調査支援などを行い、「情報公開」の重要性を国内外で訴えてきた私たちNGOの活動の成果です。
 今回の採決では、米英と軍事的同盟関係にある北大西洋条約機構(NATO)諸国でも、オーストリア、ドイツ、フィンランド、アイスランド、イタリア、ノルウェー、オランダが前回同様に賛成票を投じたのに加え、前回08年には棄権したベルギー、ギリシャ、ルクセンブルグ、スロベニアも賛成に転じました。劣化ウラン兵器をめぐる立場の違いによる、NATO加盟諸国間での亀裂がより深まったと言えます。また、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マルタは、2008年には棄権しましたが、今回賛成に転じました。このような欧州諸国での変化の背景には、ベルギー、ドイツ、オランダをはじめとする国々でのICBUWの活動や欧州議会への働きかけなど、この2年間に展開された欧州でのキャンペーンがありました。

日本は被爆国としてリーダーシップを
 日本政府に対し私たちは、原水禁をはじめ全国の皆さんとともに、「国連総会に向けた日本政府への要請」を提出し、外務省への申し入れを行うなどの取り組みを展開してきました。前決議より前進した内容を含む新決議に、日本政府が引き続き賛成票を投じたことを私たちは歓迎します。
 対人地雷やクラスター爆弾と同じく「非人道的無差別殺傷兵器」である劣化ウラン兵器の禁止のために国際社会でリーダーシップを発揮することは、「被爆国」として、また諸国民の「平和的生存権」(憲法前文)を謳う憲法を持つ国としても、当然の国際的責務です。また日本政府は米国に対し、在日米軍基地内の劣化ウラン兵器の貯蔵や、イラク戦争などでの使用の実態を明らかにするよう求め、国民に公表し、在日米軍基地内にある同兵器の速やかな撤去をアメリカに求めるべきです。
 世界の人々の力で「ウラン兵器の禁止」に向けて着実に前進していることを確認し合い、ウラン兵器の危険性、非人道性を広く訴え、さらに運動を強めましょう。

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戦略的互恵は民の犠牲の上には成立しない
非軍事外交が基本のアジア共生を

軍事覇権国家から降りる米国
 11月に日本で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で来日した米・オバマ大統領と菅直人首相は首脳会談を行い、日米同盟の深化を確認しました。
 現在の米国は深刻な経済危機から抜け出すことができず、大幅な防衛予算削減が求められています。11月10日に米国の「財政責任・改革国家委員会」(民主・共和の超党派で構成)は、2015年会計年度までに軍事関連費だけで、1千億ドル(約8兆円)以上を削減する草案を発表しました。
 そこには欧州・アジアに展開する在外米軍15万人の3分の1削減や、開発中の戦闘機などの開発中止・調達削減など、細かく削減案が述べられています。特に注目されるのは在韓米軍2万8千人のうち、1万7千人を削減し、在韓米軍基地整備計画まで見直そうとしていることです。これは第二次世界大戦後、米国が一貫して維持してきた軍事覇権の座から降り始めたと見ることができます。
 このような米国に対し、在日米軍へ思いやり予算を付け、海兵隊のグアム移転費まで負担する日本の存在は、オバマ政権にとっては強い味方といえます。しかし11月の沖縄県知事選では伊波洋一、仲井真弘多両候補とも普天間基地の県外移設を主張していますから、菅首相の思惑に沿った同盟強化には至らないでしょう。

展望が開かれない中国、ロシアとの関係
 APEC期間中、菅首相は胡錦濤・中国国家主席、メドベージェフ・ロシア大統領とも会談しました。日中首脳会談では戦略的互恵関係の重要性は確認しましたが、今後の展望は開けていません。日ロ首脳会談もお互いの立場を表明するだけに終わりました。
 特に日中関係は、当時の前原誠司国交相が尖閣諸島沖で中国漁船船長の逮捕に踏み切った後、外務大臣に就任し、中国を刺激する発言を続ける中で、仙谷由人官房長官が修復に奔走するという状況が続きました。
 さらに中国漁船船長逮捕に至るビデオが、海上保安官によってインターネットの動画サイト・ユーチューブに漏洩するという事件まで発生しています。この中で日本の弱腰外交という言葉、さらにビデオを漏洩した保安官に対して "愛国無罪"という主張まで出てきて、こうした発言を一部マスコミは煽っています。尖閣諸島は日米安保第5条の適用範囲だから、心配ないと考えているならば、実態を知らなすぎると言えます。

13億の民が動き始める中国
 ここで日本や中国で生活する私たちの目線で問題を考えてみましょう。APECを前に、突然TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に日本が参加すべきだとの議論が出てきましたが、その中で日本の農産物は安全だ、日本農業はそれを世界に売り込む、攻めの農業を考えるべきだとの意見が出ています。それは中国の農産物は不安だという認識の裏返しでもあるでしょう。
 しかし尖閣諸島沖問題で出てきたレアメタルは、ウランなどとともに採掘され、周辺に強い環境汚染を作り出しているのです。その汚染された地域で人々は暮らし、農作物をつくり、それを食べているのです。環境汚染を抑えようとするなら、レアメタルの生産は減少し価格も上昇するのは当然です。日本のマスコミはこうした問題をきちんと取り上げませんが、私たちはこうした事実を知るべきです。
 さらに同じ目線で、中国の13億の人々が日本と同じ暮らしを求めることを考えましょう。経済的な豊かさに伴って、食料はもちろん、鉱物資源も大量に必要とします。尖閣諸島沖の石油・ガス資源に中国がこだわるのは、領土拡張主義とは異なる問題があることを理解しなければなりません。尖閣諸島の領有権で争うのではなく、資源を含めてどう共生していくかを考えるべきです。

国の在り方を考える
 菅首相はAPEC首脳会議で、TPP交渉参加国の首脳会議にオブザーバーとして参加することを表明しましたが、農業政策をどうするのかは不透明です。日本の農業を破壊させない、守っていくことは安全保障の基本です。
 日中関係は未だ不透明です。中国の国家主席だった鄧小平は「韜光養晦」(とうこうようかい=能力をひけらかさず、控えめに)という言葉を述べ、この言葉は世界の国々とつきあう際の基本姿勢ともなりました。しかし今や米国に次ぐ軍事力と経済力を誇る中国は、積極的に自己を主張し始めたと言えます。それに対応するのが、米国との一層の軍事協力や対中国戦力強化の方向では、安定的な日中関係はつくれないでしょう。
 日本は憲法9条で、「武力による威嚇、又は武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」と謳っていることを強調し、お互いに領土ナショナリズムを刺激しない外交が求められます。

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【本の紹介】
「松嶋×町山 未公開映画を観る本」
町山智浩・松嶋尚美 共著


2010年・集英社
 アメリカの映画といえばまずは「ハリウッド」。大スターを起用し、CGなどを多用した、有名配給会社による娯楽大作のあれこれが脳裏に浮かびますが、社会性の高い作品もたくさんつくられています。マイケル・ムーアの商業的成功によって、社会派ドキュメンタリー映画への出資も盛んになり、いっそう多くのクリエイターが映画製作をめざす活況を呈しているようですが、如何せん、日本で公開されるものは一握りです。
 本書は、そんな未公開映画の良作、問題作を紹介するテレビ番組(東京近県でのみ放送)をもとに構成されています。お堅い内容と思いきや、映画評論家・町山智浩とお笑いタレント・松嶋尚美が軽妙なやりとりで語り合っていきます。
 ブッシュ政権を中心的に支えてきたキリスト教原理主義勢力の実態を、彼らの行う子ども向けサマーキャンプの様子などから暴いていく『ジーザス・キャンプ』。黒人解放運動の象徴でもあった「アフロ・ヘアー」がどうして消えてしまったのかを追う『ヘアー』。戦争、宗教、巨大資本、環境問題、貧困、人権。アメリカが、そして世界が、いま直面しているあらゆる問題を、様々な視点から描き出しています。
 個人的には、もし南北戦争で南軍が勝利していたら...架空の国家「アメリカ連合国」の歴史を、ドキュメンタリー形式で紹介する映画『CSA』に興味が引かれます。「アメリカ連合国」は奴隷制度を継続し、白人による世界支配を進めていくのですが...解説によると、「南軍が負けて良かった!」ではなく、「自由の国」アメリカ合衆国の実態は、「アメリカ連合国」と一体どれほど違うというのか? という問いかけだそうです。
 いやあ、観たい! でも未公開なんでしょう? ところが、本書と連動したウェブサイトで、これらの作品は全て視聴することができます(有料)。年末年始、「未公開映画」三昧というのもいいかもしれませんね。
(山本 圭介)

ウェブサイトhttp://www.mikoukai.net

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【映画評】
「地球のなおし方」
(2010年/フランス/ジャン=ポール・ジョー監督)

 「私がここに立って話をしているのは、未来に生きる子どもたちのためです。世界中の飢えに苦しむ子どもたちのためです。そして、もう行くところもなく、死に絶えようとしている無数の動物たちのためです」─1992年6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた「環境と開発に関する国連会議」(地球サミット)に集まった世界の指導者たちを前に、12歳の少女、セヴァン・スズキは語り始めました。
この画期的なスピーチから20年近く経った今も、状況は変わりません。環境破壊は拡がり、9億人以上が食料不足に直面し、生物資源は急速に失われています。地球サミットを受けてつくられた「生物多様性条約」と「気候変動枠組み条約」は、今年名古屋とメキシコで締約国会議が開かれました。確実に忍び寄る人類の生存の危機を前に、私たちはもう一度、自らの足元から生活と政治を見つめ直すことが重要になっています。
本作は、あの伝説のスピーチを行ったセヴァンの現在の活動と、日本とフランスで子どもたちの未来を救うために「食」を守り続ける人々を追ったドキュメンタリー。
現在、セヴァンが先住民の夫とともに暮らしているカナダのハイダグアイ島の自然と共存する生活、福岡県で合鴨に水田の除草をさせる農法で有機米をつくる古野隆雄さんの生き方、地域の子どもたちのために161人の農婦が無農薬食材を育てる福井県池田町の暮らし、そして、ジャン=ポール・ジョー監督の前作『未来の食卓』(本誌09年6月号で紹介)の舞台にもなったフランス・バルジャック村の有機食品だけの給食のその後の様子や、ワインの産地として有名なコルシカ島が抱える問題などが映し出されます。
最後にカメラが再びカナダのセヴァンの元に戻ると、彼女は新しい生命を抱きながら、「人々が一番に環境のことを考えるときは、自分の子どもの未来を考えるとき」「今なら変化をもたらすことが可能だ」と訴えかけます。
 来春公開されるこの映画を、市場原理や競争社会が再び横行しようとする中で、人間が生きる意味を捉え直す契機としたいものです。
(市村 忠文)

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投稿コーナー
国家が個人を殺す最大の人権侵害
死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90
深田 卓

 現在、日本の死刑確定者は109人います。国から矯正不能と断罪され、絞首刑を待つ人たちです。その中には、無実を訴える人、一部無実を訴える部分えん罪の人、重い病に罹っている人、事件を真摯に反省している人なども含まれています。

急増する日本の死刑確定者―世界は廃止に向かう
 日本の死刑確定者数は、1980年代には20人台、90年代には50人台で推移していましたが、2007年には107人に達しました。執行数も80年代は年1~2人、90~92年の執行ゼロの3年4ヵ月を除いて、90年代は2~7人、それが07年9人、08年15人、09年7人と急増しているのです。殺人事件の減少にもかかわらず、厳罰化が進み、10年前なら死刑にならなかった人にも死刑判決が下されているのです。
 1989年12月、第44回国連総会で、国際人権B規約第2選択議定書、いわゆる「死刑廃止国際条約」が採択され、91年7月に発効しました。そこでは、死刑が人間の尊厳を否定するものであって直ちに廃止されなければならないこと、そして死刑の廃止が人の生命を擁護するうえで大きな前進であることを確認し、条約の批准国に対して廃止のためにあらゆる措置を講ずることを義務づけています。さらに国連加盟各国に対しては速やかに死刑を廃止することを求めています。しかし、日本政府は、この条約を批准せず、執行を繰り返しています。世界の趨勢は死刑廃止に向かい、今や執行している「先進国」はアメリカと日本だけです。

厳罰化は憎しみの連鎖しか生まない―DVDを制作


「世界的な死刑廃止デー」でのデモ行進
(10月10日・東京銀座)
 私たちは、日本で一日も早く死刑が廃止されることを願い、全国約4,000人の仲間とともに運動を展開してきました。全国各地での市民集会、国会議員への働きかけ、法相への要請や抗議行動、死刑囚へのアンケート調査、「死刑廃止のための大道寺幸子基金」と共に死刑囚の表現展と再審支援金、死刑に関する情報センター的機能、海外の死刑廃止組織との連携など考えられる限りのことを実施してきました。
 今年は韓国SBSの長編ドキュメンタリー映画「赦し・その遙かなる道」の日本語版DVD(頒価1,000円/送料240円)を、ナレーションを俳優の竹下景子さんにお願いして制作しました。加害者を赦そうとすることで、心の平安を取り戻そうとする殺人事件被害者遺族と、果てしない憎しみの中で生き続ける遺族を対比することで、死刑制度や被害者問題を問うた作品です。被害者と加害者それぞれが理解しあうのは難しい。しかし、起きてしまった悲惨な犯罪から私たちはなぜ事件が起きたかを学び、二度とこんな事件が起きない社会をめざすべきではないでしょうか。厳罰化は憎しみの連鎖しか生まないのです。

「赦し・その遙かなる道」
公式サイトhttp://www11.ocn.ne.jp/~grdragon/temp/forgiveness/index.html  

12月19日に東京・日比谷公会堂で大集会
 今年7月28日、死刑廃止への思いを共有していたはずの千葉景子法相(当時)が2人の死刑を執行しました。死刑を執行し、刑場を公開することで、死刑制度の国民的議論を喚起しようという思いで執行したとすれば、これは倒錯した行為です。そしてこの執行によって、もう誰が法相になっても死刑を執行せざるを得ない局面に入ったことだけは確かです。だから、現在の柳田稔法相も遅かれ早かれ執行命令書にサインすることでしょう。
 国連の死刑廃止条約の批准を求め、死刑廃止の声を顕在化させるべく、20年前の90年12月1日、日比谷公会堂に1,400人を集めて集会を開き、私たち死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90が発足しました。そして今年の12月19日、再び日比谷公会堂で集会を予定しています。(下記参照)。
 戦争と死刑は国家が個人を殺す、最大の人権侵害の制度です。死刑制度を廃止するために共に進みたいと呼びかけます。

死刑のない社会へ「地球が決めて20年」大集会
日時:2010年12月19日(日)14:30開演(予定)
場所:東京・日比谷公会堂 入場料:前売り1,000円、当日1,500円
講演:辺見 庸、コンサート:上々颱風 、講談:神田香織
メッセージ:団藤重光/中山千夏/イーデス・ハンソン/加賀乙彦他
問い合わせ:TEL:03-3585-2331(フォーラム'90)

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12.14「東アジアの平和を築く集会」

 韓国併合100年、改定日米安保調印から50年を迎えた今年、平和フォーラムは、新政権が打ち出した東アジア重視の姿勢、友好関係を具体化させていくための取り組みとして、植民地支配や侵略戦争の加害の責任、歴史認識の共有化と被害に対する補償など「過去の清算」、国立追悼施設の建設、北朝鮮との国交回復交渉開始などを求める「東アジアとの新しい連帯を築くことを求める」署名を行ってきました。
 しかし、最近の尖閣諸島における中国漁船拿捕事件を契機とした偏狭なナショナリズムを煽る動きや、非核三原則や武器輸出三原則の放棄を打ち出した新安防懇報告、日米軍事同盟強化の動きが強められています。
 こうした動きを糺すため、署名を政府に提出するとともに、12月14日に下記の集会を行います。

日時:12月14日(火)18:30~20:30
場所:総評会館2階大会議室
内容:政府要請行動報告/国会情勢報告(国会議員)/講演「東アジアの平和に向けて-日米安保・東アジア共同体構想の行方」(予定)

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