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平和軍縮時評9月号 オスプレイ:米国内では訓練の延期・中止相次ぐ ―問われる米国のダブルスタンダードと日本の姿勢  塚田晋一郎

2012年9月30日

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普天間ゲート封鎖とオスプレイ配備強行
   9月27~30日、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場周辺では、米海兵隊垂直離着陸輸送機オスプレイの配備に対する、市民らによる抗議行動が行われた。昼夜を通して行われた座り込みにより、9月29日には普天間飛行場の全てのゲートの封鎖に至った。「全ゲート封鎖」は、沖縄でも史上初めてのことであったと言われている。
   座り込みには、市民のみならず沖縄選出の国会議員や、地元自治体議員らも参加していた。しかし、9月30日、沖縄県警による強制排除が実施された。ゲート前に停められていた車両はレッカー移動された。こうしてゲート封鎖は、開始から4日間で解除されるに至った。その模様は、インターネットで生中継されたことにより、多くの人々がリアルタイムに「目撃」することとなった。

            (動画:共同通信IWJ(インディペンデント・ウェブ・ジャーナル)
             参考:宮城康博、屋良朝博 『普天間を封鎖した4日間』高文研、12月3日発売)

   4日間で解除されたとはいえ、普天間の主要ゲートである第1(大山)、第2(佐真下)、第3(野嵩)の3か所が封鎖されたことにより、米軍関係車両等の基地への出入りが不可能な状況が発生した。このことの意味は、恐らく米側にとっては決して小さくない。基地機能が一部停止状態に陥ったという事実は、米軍や国防総省から見れば、オスプレイ配備や、延いては普天間飛行場の存在そのものを、地域住民が「歓迎していない」ことが明確に示されたことを意味するからである。「地元に歓迎されない所には基地は置きたくない」(ラムズフェルド元国防長官)という考え方に立てば、今回のゲート封鎖という形で沖縄の民意が可視化されたことは、米軍内部において、「過小評価すべきではない」ものと捉えられているのではないだろうか。

   また、再三にわたってオスプレイ配備の中止を申し入れていた、仲井眞弘多沖縄県知事や佐喜眞淳宜野湾市長をはじめ、県内全41市町村も抗議決議・意見書を採択し、オスプレイ配備反対の意志を示し続けた。しかし、日米両政府は、普天間配備計画を強行している。

(補足:10月1日から6日にかけて、米海兵隊は7月23日の陸揚げ以来、岩国飛行場に駐機させていたオスプレイ12機を、普天間飛行場に飛行「移動」させた。やや細かな言葉の定義になるが、防衛省は現段階ではまだ「配備」という言葉を用いて、それが「完了した」とは述べていない。日本全土での低空飛行訓練を含む、計画されている訓練の本格実施体制に入った段階で、正式に「配備」という表現が用いられるようである。)

   一方、米国内ではこの間、沖縄とはまったく異なる状況が生じている。地域住民の反対意見や環境影響への懸念を配慮し、ニューメキシコ州ではオスプレイの低空飛行訓練計画が延期され、ハワイでは2か所での運用計画が中止されている。

ハワイ:2空港でオスプレイの運用を中止
   米海兵隊は、ハワイのカネオヘベイ基地へのオスプレイの配備・運用計画実施にあたり、6月5日に「最終環境影響評価書」(FEIS)を公表し、それを受け、計画の「決定書」(ROD)を8月6日に公表した。このことにより、国家環境政策法(NEPA)に基づき実施していた環境影響評価プロセスが終了し、配備計画は実施段階に入った。米海兵隊は、2018年までにオスプレイ24機をカネオヘベイ基地に配備する予定である。

   海兵隊は、最終環境影響評価書と決定書において、「考古学的資源への影響を懸念」し、カラウパパ空港(モロカイ島)とウポル空港(ハワイ島)での訓練を計画から「除外」した。これは、騒音や安全性への地元住民の懸念と、生態系への影響に配慮した結果であるとされている。具体的な理由としては、オスプレイの離着陸時に発生する下降気流(ダウンウォッシュ)が環境に与える影響が示され、ウポル空港に関しては、初代国王のカメハメハ1世生誕地の近く(1.6km)にあることが計画変更の理由とされた。

   また、平和軍縮時評6月号でも触れたように、ニューメキシコ州キャノン空軍基地でも、6月に、オスプレイ低空飛行訓練計画が延期された。こちらも国家環境政策法による「環境評価書案」(DEA)が作成されたが、その後の住民説明会やパブリックコメント期間において、地域住民からの計画への懸念があり、そのことを理由に、米空軍は、計画の延期を発表するに至っている。米空軍は、「2013年の早い時期」に、計画の再検討をした結果を出すとしている。恐らく、環境評価書(EA)よりもより詳細なアセスメント方式である、環境影響評価書(EIS)に「格上げ」され、プロセスが再開されるであろう。その意味で、キャノン空軍基地の場合は「計画の中止」ではない。しかし、住民意見に政府及び軍が耳を傾け、計画を変更しているという事実は、日本の私たちにとっては重要であろう。

米国のダブルスタンダード
   ハワイとニューメキシコの計画実施予定地域は、いずれも人口密集地から離れた場所にある。とくにニューメキシコ(及びコロラド)の計画で設定された「低空飛行訓練エリア」は、ほぼ全域が砂漠・山岳・森林地帯であり、市街地を外すよう、いびつな形でエリアの線が引かれている。
   いうまでもなく、この状況は、「世界一危険な基地」と言われて久しい、普天間飛行場や、沖縄の基地・米軍施設におけるオスプレイ運用計画とはまったく異なっている。冒頭に述べたように、沖縄では普天間のゲート封鎖という、市民らによる非暴力直接行動にまで発展しようとも、計画は粛々と実行に移される。片や、米国内においては、住民意見により、計画は比較的「簡単に」変更されている。米軍が国内と国外で、ダブルスタンダード(二重基準)を用いていることは明らかである。

   そもそも、日本へのオスプレイ配備に関して、米側は、国家環境政策法(NEPA)プロセスのような、環境アセス手順を実施する義務が課せられていないため、国内外における差異は、法的側面から見れば「当然」の結果となってしまう。今後、日本全国で実施されるであろう低空飛行訓練に対しても、日本の航空法が適用除外されている米軍機は、実質的には一切の制限を受けない。オスプレイが配備されずとも、とくに1990年代以降、在日米軍機による低空飛行訓練は騒音や墜落事故等により、実質的に被害を生みながら、実施されてきており、問題の根は深い。

   9月19日、日米合同委員会は、オスプレイの運用に関する合意を行った。合意は以下のような内容であった。 「できる限り人口密集地上空を避ける」、「可能な限り水上を飛行する」、「夜間訓練飛行は、必要な最小限に制限される」、「運用上必要な場合を除き、米軍の施設及び区域内においてのみ垂直離着陸モードで飛行し、転換モードで飛行する時間をできる限り限定する」、「低空飛行訓練は地上から500フィート(約150m)以上の高度で飛行する。ただし運用の安全性を確保するために、その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」。
   下線で示したように、ほぼすべての規制項目に、遵守義務を回避する「抜け道」が書き込まれている。この合意は、米軍の行動を制限するという意味においては、残念ながら「無意味」である。こうした合意を結んだ日米合同委員会のあり方は、まず問われる必要があるが、それと同時に、この「合意」の履行状況を実態と照らしてどのようになっていくか、注視していくことも必要である。

オスプレイの訓練内容とは? ―米空軍「環境評価書案」に手がかり
   普天間に配備されたオスプレイが、実際にどのような訓練を行うのか、公開されている情報は、断片的にしか語っていない。6月に防衛省が公表した、オスプレイ普天間飛行場配備に関する米軍の「環境レビュー」(ER)は、オスプレイの沖縄全域での運用および、日本本土に米軍が一方的に設定している低空飛行ルートでの訓練計画を示したが、その内容も十分と言えるものではない。
   環境レビューでは詳らかにされていないオスプレイの低空飛行訓練の実態を推定する情報として、先に述べた「ニューメキシコ州キャノン空軍基地における低空飛行訓練実施のための環境評価書案」の訓練内容に関連する部分を、文末の囲みに訳出した。

   キャノンEA案は、ニューメキシコ州およびコロラド州において、CV-22オスプレイおよびC-130輸送機が、特殊作戦を目的として夜間も含めて行う低空飛行訓練という「アクション」に関するものである。なお、オスプレイは空軍特殊作戦仕様のCV-22と、海兵隊仕様のMV-22がある。より過酷な作戦任務を想定したCVには、MVが搭載していない地形追随用レーダー等の機器を搭載しているが、機体構造は9割方、共通しているとされている。海兵隊も特殊作戦能力を有していることから、日本での訓練の目的や内容も多くの部分で重なるものと思われる。

   訳出した第1章「アクションの目的と必要性」は、低空飛行訓練と訓練エリアの設置の目的を述べている。基本的な作戦パターンの一つは、敵地に深く進入し、減速または空中停止(ホバリング)して人員・物資を投下もしくは回収、そして再脱出・帰投するというものである。その際、敵からの警戒・攻撃を回避するため、谷間に機体を潜めて姿を隠したり、尾根を越えたりする「地形追随飛行」が頻繁に行われる。

   日本本土でも、最も低い場合で「地上15~60メートル」の低空を地形追随するとされている(ER本体・2-13ページ「表2-4」)ことから、類似した訓練が実施されると見てよいだろう。また、ERには、「MV-22は、地上500フィート(150メートル)以上の高度で、飛行モードにより異なるが、120~250ノットの速度で飛行する」(本体2-40ページ「航法ルート」、強調は筆者)との記述もある。これは低空飛行が航空機・転換・ヘリのいずれのモードでも行われることを示唆するものである(空中停止(ホバリング)のためには、航空機モード-ヘリモード間の転換が必要である)。これまでのオスプレイ墜落事故の多くは、機体の重心バランスが不安定にならざるを得ない転換モードやヘリモード時に起きている。沖縄及び日本全域で計画されている低空飛行訓練は特別な墜落リスクを伴う可能性が高い。

問われる日本の姿勢
   このまま計画が進めば、沖縄および日本全国で、今後、本格的な飛行訓練が実行に移されていくだろう。オスプレイの訓練内容をより明らかにし、具体的な危険性をより深く知ることが、いまわ問われていることは疑いがない。
   しかし、それ以上に、米国の国内外の運用の在り方のダブルスタンダードや、それを無批判に受け入れ、あくまでも沖縄県民、日本国民に「受忍」させようとする日本政府の姿勢は、強く批判に晒されなければならない。
   そのなかで、私たち市民も、今後の低空飛行訓練計画の実施により、部分的にでも「日本全国が沖縄化」する事実を今一度認識し、全国的に取り組んでいくための方途を模索することが求められるだろう。

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