第47回護憲大会 閉会総会 特別提起        2010年11月08日
「朝鮮学園の高校無償化適用問題について」
                         新潟県平和運動センター事務局長   高 野 秀 男
  <はじめに>
 朝鮮学校の高校無償化問題については、今護憲大会の基調においてもとりあげられ、対象外とされている要因として「日本国民の貧困な人権意識と背後にある差別観―アジア蔑視の思想―」を指摘して、そのことを私たちが乗り越えなければ、私たち自身の人権保障もいきづまると、警鐘を鳴らしています。
 あわせて、「憲法理念の実現」に向けた「多民族・多文化共生社会」の重要課題として「定住外国人の権利確立」をとりあげ、とくに「子どもの問題は深刻である」として「朝鮮学校の一条校並みの対応」を求めています。
 私からは、この基調を全面的に賛同する立場から、新潟における朝鮮学校支援のとりくみととりまく状況などを報告して、「特別提起」に代えたいと思います。

<朝鮮学校をとりまく状況>
 ご承知のことと存じますが、新潟は、1959年から84年にかけて9万3000人の方々が北朝鮮に渡った帰国事業の出港地であり、現在は入港禁止となっている「万景峰号」の発着場であり、また、蓮池さん、曽我さん、横田さんたちが「拉致」された被害現場でもあります。

 新潟の朝鮮学校は初中級学校で、42年前の1978年4月に開校しました。新潟空港の近くにあり、これまでに約400人の卒業生を送り出しましたが、「重い授業料の負担」と「少子化」、それに「帰化者の増加」によって生徒数は年々減少し、今年度の在校生は13人になっています。
 ご存知のとおり、子どもたちの父母は納税の義務をhたしながらも、国から学校への助成は一切ありません。新潟では、新潟市が1992年度から、新潟県が1993年度から助成をはじめました。昨年度の助成金は、新潟県が116万円、新潟市が86万円で、あわせて202万円です。年間運営費の20分の1でしかなく、寄付に大きく依存しており、教員の待遇はきわめて厳しいと聞いています。

<朝鮮学校を支援する新潟県民の会のとりくみ>
 県平和センターが事務局を務める「朝鮮学校を支援する新潟県民の会」は、今から16年前の1994年4月に発足しました。学校の父母が処遇改善と卒業生への差別をなくすことを求めて、新潟県議会、新潟市議会に請願署名をとりくもうとしたことがきっかけで、以来、県民の会は、学校教育法第1条に定められた学校「1条校」に準じた処遇をするよう求めてきました。
 県民の会の主なとりくみは、新潟県・市への補助金の増額要求や、毎年秋に行っている「日朝文化交流市民の集い」・ミレフェスティバルです。ミレフェスタは、平和センターの青年部と朝鮮の若者が一緒になって企画段階から当日の運営、後片付けまでの一切を執り行っています。今年9月28日のミレフェスタも好天に恵まれ、朝鮮学校のグランドに1000人が集まって、日本と朝鮮の子どもたちの合奏や合唱、それにインドネシアの舞踊などを、焼肉を食べながら楽しみました。徐々にですが、朝鮮学校を舞台に多文化共生の輪が広がりつつあります。
 県民の会の成果としては、新潟県弁護士会に人権侵害救済申立てを行い、県教委・市教委に対し、朝鮮学校卒業生の公立高校受験資格を認めさせ、公立高校に通う生徒が誕生したことです。また、2003年から2004年にかけての国公立大学受験資格認定についても文科省に複数回にわたって要請を行い、一定の役割を果たしました。
 しかしながら、もっとも切実な要求である1条校に準じた処遇の改善は一向に進んでいません。県議会では、拉致事件やミサイル発射にからめて、助成金の見直しがたびたびとりあげられています。

<高校無償化に関する県内の動きと県民の会のとりくみ>
 県民の会は今年3月、「朝鮮学校を除外しないことを求める声明」を発表し、政府や県選出国会議員宛に「高校無償化」の朝鮮学校適用を求める打電行動を行いました。また、署名に取り組み、新潟県弁護士会からは「高校無償化の平等な適用を求める会長声明」を出していただきました。
 しかし、こうしたなか、8月に新潟市の「事業仕分け」が行われ、朝鮮学校を含む私立高校の運営補助金が「不要」と判定されました。一部委員は「朝鮮学校への助成は(公金支出の制限を定める)憲法89条に抵触する」「新潟は拉致問題を抱えている」との理由で補助金の見直しを主張しました。
 自治体の補助金見直しは、拉致被害者の家族会から「拉致問題地方議会全国協議会」を通じて全国に出されており、東京・大阪は見直しの方針を出し、神奈川が教育内容の確認を求めていると報じられています。今後、全国に広がることが想定されます。
 また、新潟県議会は10月15日・9月定例会の最終日に、「朝鮮学校を高校授業料無償化の対象とすることに反対する意見書」を自民が提案し、それを民主と公明が賛成して採択しました。反対する理由として、拉致事件と学校を結び付けています。拉致事件が重大な人権侵害であり、一日も早い解決がなされなければならないことは言うまでもありません。しかし、朝鮮学校に通っている生徒やその親が拉致事件の責任を負う立場にはなく、拉致事件を理由にしていることは失当と言わざるをえません。県民の会は意見書を提案・賛成した全県議に「撤回を求める抗議文」を送りました。

<今後のとりくみ>
 朝鮮学校に通う朝鮮・韓国籍の子どもたちのほとんどは、将来にわたって日本国内で生活することが予定されています。いわば日本と朝鮮半島の架け橋になる子どもたちであり、日本の将来を考えるならば、できる限り日本の子どもたちと同等の権利が保障されるべきです。
 朝鮮学校を一条校と同等の扱いをすることについては、日弁連から勧告が出され、社会権規約委員会や子どもの権利委員会など国連の人権関連の条約委員会からも再三、条約違反であると是正勧告が出されています。高校無償化について、今年5月、国連人権高等弁務官は「教育を受ける権利は日本に住むすべての人に広げられなければならない。でなければ差別だ」と強調し、子どもの権利条約の委員も「同条約には少数者の文化を守る権利の保障が含まれている」と指摘し、今回の除外措置は同条約に反する恐れがあることを示唆しています。朝鮮学校除外は、国際レベルからも大きく逸脱していることは明らかで、日本の人権感覚を疑わせるものになっています。
 今護憲大会の前日の5日、高木文科相は、朝鮮高級学校の高校無償適用について8月末に専門家会議が示した基準―授業時間数や施設面積など外形的な項目で判断し、教育内容は判断としない―を、そのまま正式な基準とする旨決定し、公表しました。
 この間の平和フォーラムのとりくみの成果でありますが、完全実施されるよう、引き続き注視する必要があります。
 今年2010年は、朝鮮を植民地にした「日韓併合条約」から100年の年でした。来年2011年は、朝鮮総督府が、天皇に忠良なる日本臣民を養成することを目的に、朝鮮人民から国の言葉と歴史を奪い、朝鮮人を皇国臣民として育成する教育政策をとった「朝鮮教育令」発してから100年の年です。
 「憲法理念の実現」「人間の安全保障」、その個別具体事例の一つとして「朝鮮学校問題」があると認識しています。
 全国の平和・人権運動の情報と運動の発信・集約機能をもつ平和フォーラムの能力を果敢に活かす意味でも、フォーラムと各県平和組織が「朝鮮学校の処遇改善」に向けて、その先頭に立つことを互いに確認・決意しあうことを提起して、特別報告といたします。

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