2019年8月アーカイブ

 核不拡散条約(以下、NPT)は、2020年に条約発効50周年、無期限延長から25周年を迎える。前回の2015年再検討会議では、閉幕直前になって中東非大量破壊兵器地帯の扱いをめぐり、核兵器国と非核兵器国の協議が決裂し、ほぼできていた最終文書の採択に至らないまま閉会となった。2020年の大きな節目となる再検討会議まで1年となった2019年4月29日から5月10日、2020年核不拡散条約再検討会議に向けて最後となる第3回準備委員会がニューヨーク国連本部で開かれた。サイード・モハマド・ハスリン・アイディ議長(マレーシア大使)が提案した2020年再検討会議に向けた勧告案を巡り多くの議論がなされたが、核兵器国と非核兵器国の溝は埋まることなく、勧告の合意に至らないまま幕を閉じた。特に、米国は、核軍縮へ向けての安全保障環境を整えることを優先させる新イニシアチブ「核軍縮のための環境を創る」を提案し、議長案に強い拒否の意を示した。議長勧告案を巡る各国の主張を整理し、米国の新しい取り組みについて考察する。

議長の勧告草案をめぐり対立し、合意に至らず
 サイード議長は、5月3日、2020年NPT再検討会議に向けた勧告の草案を各国に提示した。多くの西側諸国が草案を肯定的に評価したのに対し、多くの非同盟諸国は主に軍縮に言及する部分に関しての不満を表明し、その強化を訴えた。特に核軍縮促進に力を入れる新アジェンダ連合(NAC)は「軍縮に関する部分は今までの約束の履行に十分に焦点を当てていない。今までの約束の履行に基づいて前進するよりもむしろ、再解釈あるいは過去の合意からの後退さえも導き得る」とし、軍縮部分についての修正提案をした。さらに、「同条約第6条への締約国の努力と、核兵器を削減し究極的に廃棄するためのさらなる努力を引き受けるという核兵器国の努力を想起」した草案主文第4節について、さらなる緊急性に関する表現を盛り込むことを提案した。
 議長は、各国から寄せられた反応と要求を踏まえ、最終日前日の5月9日、勧告案の改訂版を発表した。改訂版は、主に核兵器の非人道性に関する言及が充実され、核軍縮に関する部分の表現が強化された。この改訂版に対し、多くの非同盟諸国は高く評価をした。またNACは、改訂版が全ての締約国の懸念を聞き入れて修正されたとし、一部の国からの要求にだけ応えるような勧告でない点で、改訂版を肯定的に評価した。さらに、改訂版の文言は、既存の合意された約束と一致しているとも述べた。
 一方で、米国をはじめとする西側諸国は、核軍縮に関する表現が強化され、核軍縮に偏りすぎていることを理由に強く反発した。特に米国のロバート・ウッド軍縮大使は最初の草案に比べ、改訂版は「劇的に悪化」したとし、「全会一致を獲得することは全くありそうもない」と意見表明し、強い反対の意思を示した。さらに、改訂版は「軍縮共同体の分裂と分極化を増加させる」とも述べた。米国と同様の立場をとるフランスは、改訂版は、「集団的ビジョンを発展させることとまったく逆のことを提案している」と述べ、改訂版には「有害な要素」が含まれており、「NPTの存在そのものを脅かす」とまで主張した。英国は、改訂版は「全会一致から遠のく」とし、米国、フランスと同様、反対の意思を述べた。米核兵器依存の非核兵器国であるドイツは改訂前の草案に立ち戻ることを推奨し、改定案に反対の立場を示した。同じ米核兵器依存の非核兵器国である日本、オランダ、ポーランドは、改訂版は草案を巡る協議をバランスの取れた方法で反映していないとし、否定的に評価した。
 この結果、初めの草案から一変して、核兵器国が強く反対し、核兵器依存国も否定的に評価することとなった。議長は、全会一致は見込めない状況となった判断し、5月10日、改訂版の勧告を議長自らのワーキングペーパーとして提出した●1。米国は、即座に議長のワーキングペーパーに対し、「勧告に関する議長のワーキングペーパーを、2020年のNPT再検討会議で議論の土台とすることを、断固として拒否する」と強く非難するワーキングペーパーを出した。NPT第6条に沿って、核兵器を削減していくとの内容が強調された議長勧告は、核軍縮に偏っており、ひとこと言っておかねばならないと考えたのであろう。
 会議は、全会一致の勧告に合意できなかったものの、NPTが、核軍縮・不拡散レジームの要めであることを確認し、2020年再検討会議の議長にアルゼンチンのラファエル・グロッシ大使を決定し、2020年へ向け最低限の準備は整えた形で終了した。

米国、安全保障環境論で軍縮後退を図る
 米国は今回のNPT準備委員会で、「ステップ・バイ・ステップの軍備管理アプローチは限界に達した」とし、新たな多国間枠組みである「核軍縮のための環境づくり」 (以下、CEND)という新たなイニシャチブを提起していた●2。4月26日、米国は、そのためのワーキングペーパーを提出し、4月30日にCENDに関するイベントを国連本部内で開催した。なお、この前身とも言うべき関連するワーキングペーパーは、「核軍縮のための条件づくり」という名で2018年4月18日にも提出されている。
 CENDに関するワーキングペーパー第5項は、「安全保障環境の課題を無視しながら、核兵器の削減や禁止を試みるだけでは、軍縮の課題を解決することはできない」とし、安全保障環境を整えることが最優先であると主張している。また、「世界の安定を維持するために核抑止を必要としてきた根本的な安全保障上の懸念に対処するための対話を求める」(第7項)とし、そもそもの核兵器の生産につながった根本的な安全保障環境に関しての対話が必要であると述べている。
 5月2日、英国はCENDを「歓迎し、今後、議論に参加することを楽しみにしている。」と賛同の意思を表明した。同日、米核兵器依存の非核保有国であるオーストラリアはCENDは「有用なイニシアチブである」と評価した。また、日本は、CENDが、「多くの利害関係者が関与する建設的かつ対話的な任務の機会を提供できることを願っている」と肯定的に評価した。さらに、5月14日、参院外交防衛委員会で日本共産党の井上哲士(さとし)議員がCENDへの日本政府としての評価と対応について質問したのに対し、河野太郎外務大臣は、日本がこのイニシアチブに貢献できるとして、「今後参加を検討していきたい」と積極的な姿勢を表明した。
 米国のワーキングペーパーには「環境づくり作業部会」を作り、その第1回総会を今年の夏にワシントンで開く予定であるとしていた。7月2-3日、米国は、ワシントンで「環境を創る作業部会」(CEWG)の発足総会を主催し、中ロを含む核兵器国、日本、ドイツなどの非核兵器国など約40か国以上が参加した。米国務省のクリストファー・A・フォード国務次官補(国際安全保障・不拡散)は、冒頭の演説でCEWGプロセスが,軍縮を促進するための、より効果的な対策をどう打ち出すか探る場となり、グローバルな核軍縮論議における転換点となることを期待すると表明した。
 しかし、核兵器そのものの非人道性や危険性、核兵器の削減に焦点を当てずに、環境を理由に軍縮の前進を止めてしまうことは許されることではない。このイニシアチブの前提には、冷戦後の核軍縮の時代は終わり、新たな核軍備競争の時代に入ったという時代認識がある。その「新たな核軍備競争」こそが今日の安全保障環境であり、その改善を優先させるべきだと言うのである。しかし、そのような環境を作ったのは当の米国自身であることを忘れるわけにはいかない。ABM条約から離脱し、ミサイル防衛体制の拡充を図り、ここにきてはINF全廃条約から離脱し、条約を失効させ、相互に中距離ミサイルの配備競争を進めようと核軍備競争をあおってきたのは米国である。そのような動きをしておいて、核軍縮よりも、悪化する安全保障環境の改善を優先させようと提案していることは、自作自演としかいいようがない。そう考えると、このイニシアチブは、安全保障環境を理由に軍縮が進まない現状を肯定することになり、核軍縮に関して、長年にわたり国際社会が積み上げてきた努力と成果をないがしろにしかねない危険性をはらんでいる。

 今回の準備委員会では、議長勧告をめぐり、核兵器国および核依存国と非核兵器国の溝が埋まることなく、閉幕した。今後、米国は同盟国を巻き込んでCENDをさらに強化し、来年の再検討会議で、米国がCENDを自国の中心的な提案とすることも想定される。その際に多くの同盟国が賛同を示せば、NPT第6条を根拠に核軍縮を推進していくという道が困難に直面するおそれがある。2020年NPT再検討会議に向け残された時間で、1995年以来、蓄積されてきたNPT合意の履行を求めていく努力の強化が不可欠となっている。とりわけ唯一の戦争被爆国を認ずる日本政府は、核兵器の役割を減じ、核兵器依存政策から脱する道を歩む選択をし、2020年再検討会議に臨むことが強く求められる。


1 2020年再検討会議へ議長が提出したワーキングペーパー(2019年5月10日)
https://undocs.org/NPT/CONF.2020/PC.III/WP.49
2 米国が提出したワーキングペーパー「核軍縮のための環境を創る」(2019年4月26 日)
https://undocs.org/NPT/CONF.2020/PC.III/WP.43
 

 最高裁の朝鮮高校差別を適法とした判断に抗議する

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フォーラム平和・人権・環境

 

共同代表 藤本泰成

 

 「朝鮮高校生を無償化の対象外とした文部科学大臣の判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとはいえず適法」とする東京高裁判決を不服とした東京朝鮮中高級学校卒業生などの上告に対して、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は、827日付けで学校側を敗訴させた一、二審判決を支持し、東京朝鮮中高級学校卒業生らの上告を退ける判断を下した。「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」を組織し、在日コリアンの民族教育の権利を支持・支援してきた平和フォーラムは、判決の不当性に対して強く抗議する。

 民主党政権下において2010年度から「高校授業料無償化制度」が導入された。これにより、1979年に国連の社会権規約を批准して以来、日本政府が継続してきた中等・高等教育漸進的無償化条項に係る規定の留保が解除された。外国人学校も含めて全ての高校生がその対象となることは明らかだった。しかし、朝鮮学校だけは指定審査手続が中断された。2012年の12月に発足した第二次安倍政権は、拉致問題の進展がない、朝鮮総連が朝鮮高校の教育内容、人事、財政に影響を持っているなどとして、2013220日に、朝鮮高校を対象とする規定を、文科省令改正で削除し、朝鮮高校を授業料無償化制度から完全に排除した。

 平和フォーラムは、在日コリアンの歴史的経緯と民族教育の権利から鑑みて、文科省の措置と今回の最高裁判断には、絶対に承服できない。

 2018830日の国連人種差別委員会における日本に対する定期報告書は、第22パラグラフにおいて、「委員会は、コリアンの生徒たちが差別なく平等な教育機会を持つことを確保するために、高校就学支援金制度の支援金支給において「朝鮮学校」が差別されないことを締約国が確保するという前回の勧告を再度表明する」とした。日本政府の、行為が明らかに差別であることを、国際社会は明確にしている。

 東京朝鮮中高級学校「高校無償化」裁判弁護団は、この問題の理解のために連続学習会を開催してきた。その中で鄭栄恒・明治学院大学教授は、「無償化の理論と目的から言えば、負けるはずのない裁判」「在日朝鮮人の民族教育に対する偏見や差別は、長い時間をかけて作られてきているので、そういった日本社会を反省していくことを市民社会に訴えていくことが決定的に大事だと思う」と話した。

 

 グローバル化する世界は、多文化・多民族共生に向かっている。日本は単一民族国家であるとして、教育が日本国民の形成を目的とし外国籍住民を無視し続けてきた日本社会も、現在の状況から逃れることはできない。法が、社会の正常な進化を妨げてはならない。私たちが、偏見と差別を乗り越えて、新しい社会をアジアの各国とともにつくり出していくためには、在日コリアンの権利問題は重要な課題だ。平和フォーラムは、在日コリンアを含め、全ての外国人に対する差別の撤廃と権利の伸長を求め、真の多文化・多民族共生の社会をめざして、今後も全力でとりくむ。

沖縄だよりNO.91(PDF)

8月19日の19日行動報告

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 819日、47回目の「19日行動」が議員会館前で開かれ、各地から1600人が参加しました。

「改憲発議を必ず止めよう」「戦争法の発動とめよう」などのコールの後、主催者を代表して共同代表の高田健さんが挨拶に立ちました。「先の参議院選挙では勝利した。改憲勢力の3分の2を割らせた」「自衛隊のホルムズ海峡への派遣では平和は生まれない」と訴え、次の衆議院議員選挙に向けて、市民の闘いを強め、安倍政権を倒そう」と訴えました。

 国会議員からは、立憲民主党の佐々木隆博さん(衆議院議員)、共産党の山下芳生さん(参議院議員)が挨拶に立ました。佐々木さんは、「815日の安部首相の言葉には、アジア近隣諸国に対して反省の弁が全く無かった」として、米・トランプ政権に追随するだけで、アジアをリードしていこうとする姿勢がないと、安倍政権の姿勢を批判しました。山下さんはからは、野党共闘を引き続き強化していこうと呼びかけられました。

市民団体からは、安保法制違憲訴訟から長尾晴人さん、「韓国は敵か、声明運動」の和田春樹さん、ジャーナリストの志葉玲さん、「市民連合めぐせた」の清水繁子さん、そして法律家6団体の大森典子さんがそれぞれ発言に立ちました。

その中で、和田さんは、声明に賛同する署名が、726日現在で8400人に増え、さらに拡がっていることが報告されました。安倍政権の韓国敵視政策は、戦争への道につながる、と政権の危うさを痛烈に批判しました。志葉さんからは、トランプが進める有志連合は、国連安保理決議に違反し、イラン包囲網は、中東全体を不安定なものし、民間船舶のリスクを高めるだけであると、中東情勢が報告されました。

今後の行動提起と国会へ向かってのコールをあげ、この日の行動を終了しました。

第二次世界大戦の敗戦、1945年から74年目の8月15日、「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」を、東京都千代田区の「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」で開催しました。無名戦役者の遺骨を納めた納骨場所(六角堂)の前で、アジア・太平洋の人びととの和解と共生をめざして、非戦の誓いを新たにするためです。

正午に約300人の参加者全員で黙とうをした後、平和フォーラムの福山真劫共同代表は誓いの言葉として、栗原貞子さんの詩「ヒロシマというとき」を引用し「『ヒロシマといえば、ああヒロシマとやさしくは返ってこない、アジアの国々の死者たちや無告の民がいっせいに犯されたものの怒りを噴き出すのだ』とあります。いま『正しい歴史認識を欠落させた安倍政権』は、唯一国交のない朝鮮民主主義人民共和国から相手にされず、日朝国交正常化への展望はありません。日韓関係は、日本軍慰安婦課題や徴用工課題で、戦後最悪といわれる事態を引き起こしています。」、「市民運動、労働運動も、日韓・日朝連帯、9条空洞化・条文改悪阻止、沖縄新基地建設阻止、貧困・格差なくせの闘いに取り組みましょう。」と語りました。

各政党・団体の代表からは、立憲民主党の近藤昭一衆議院議員が、枝野幸男・立憲民主党代表の談話「74回目の終戦の日にあたって」を代読。吉田忠智・社会民主党参議院議員は「敗戦74年にあたって」の声明を、阿部知子・立憲フォーラム副代表(衆議院議員)は「慰霊と誓いのことば」を述べました。戦争をさせない1000人委員会事務局長の内田雅敏弁護士が「戦後74年8月15日」の言葉を語られた後、主催者、参加団体の代表、参加者が献花を行いました。



誓いの言葉

今年も暑い8月がやってきました。6日の広島、9日の長崎から始まり、15日、千鳥が淵国立戦没者墓苑、平和を誓う集会と続きます。大変つらく、申し訳ないのですが、今年もまたお詫びの言葉から始めなければなりません。「お前たちは一体何をしているのだ」という皆様の怒りと悲しみが胸に迫ってきます。広島の慰霊碑には、「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」と刻んであります。安倍は、戦後レジームからの脱却・9条改悪などに見られるように「この過ち」を繰り返そうとしています。戦争による唯一の被爆国でありながら、「核兵器禁止条約」に反対し、批准もしていません。沖縄辺野古には県民あげての反対運動を暴力で押しつぶしながら、米軍の新基地建設を強行しています。またヒロシマの被爆詩人栗原貞子さんの詩「ヒロシマというとき」に「ヒロシマといえば、ああヒロシマとやさしくは返ってこない、アジアの国々の死者たちや無告の民がいっせいに犯されたものの怒りを噴き出すのだ」とあります。いま「正しい歴史認識を欠落させた安倍政権」は、唯一国交のない朝鮮民主主義人民共和国から相手にされず、日朝国交正常化への展望はありません。日韓関係は、日本軍慰安婦課題や徴用工課題で、戦後最悪といわれる事態を引き起こしています。また米国大統領トランプは、INF条約を失効させ、「イラン核合意」からの離脱し、「使える核兵器の開発をめざす」「核態勢の見直し」と人類破滅への道・核戦争への危険な道へまた一歩踏み出そうとしています。世界終末時計は2分前です。もちろんこうした事態を引き起こしている責任は、安倍自公政権にあり、トランプ米国大統領にあります。しかしそれを許してしまっている私たちの責任も重大です。

しかし悲観的な事ばかりでは、ありません。参議院選挙では、私たちは改憲勢力の3分の2割れを勝ち取ると同時に自民党の単独過半数割れも勝ち取りました。さらにイージスアショアの秋田、辺野古新基地建設の沖縄、忖度の新潟、安倍の側近候補の大分などの選挙区で、立憲野党候補が勝ちました。

安倍政権の外交政策も内政政策も八方ふさがりで、いたるところから矛盾が噴き出し、大きく揺れています。森友・加計に代表されるウソの政治、辺野古新基地建設の強行、イージスアショアの配備、貧困格差の深刻化、年金と社会保障、日韓関係の泥沼化、有志連合への参加、トランプの牛肉など農産物の関税引き下げの強要、消費税のアップなどなどです。もうこれ以上安倍政権を続けさせるわけには、いきません。この秋の臨時国会では、野党共闘で安倍政権打倒めざしての奮闘に世論、市民の期待が高まっています。

市民運動、労働運動も、日韓・日朝連帯、9条空洞化・条文改悪阻止、沖縄新基地建設阻止、貧困・格差なくせの闘いに取り組みましょう。連帯の輪を拡大して、闘えば必ず勝てます。そして来年こそ、「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」と報告させていただきます。

2019年8月15日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 福山 真劫

2019年8月15日

【代表談話】74回目の終戦の日にあたって

立憲民主党
代表 枝野幸男

本日、74回目の終戦の日を迎えました。先の戦争で犠牲となられた内外すべての人々に思いを致し、国民の皆さまとともに衷心より哀悼の誠を捧げます。

先の大戦では、国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私たちは、この反省を痛切に胸に刻み、再び戦争の惨禍が繰り返されることがないよう、未来への教訓としなければなりません。

しかしながら今日のわが国は、時代の大きな岐路に立たされています。集団的自衛権の行使容認と安保法制の成立を強行した安倍政権は、いま、ホルムズ海峡における有志連合への参加を求められ、後戻りのできない立場へと追い込まれようとしています。

また、専守防衛に関する従来の政府答弁から逸脱するおそれのある護衛艦「いずも」の事実上の空母化や、他の歳出項目と比し突出して伸び続ける防衛予算等、この数年における安倍政権の安全保障政策は、完全にその抑制を失っています。

さらにいま、安倍政権は、立憲主義、平和主義を無視した憲法の改悪に向けて突き進もうとしています。戦後、日本人が育てあげ、守り続けてきた「立憲主義」と「平和主義」が、大きな危機にさらされています。

戦後の日本は、憲法の平和主義のもと、焦土と化した国の復興に全力を傾注し、自由で平和で豊かな民主主義国家をつくり上げました。同時に、経済協力、人道支援、PKOなど諸外国の繁栄・発展、国際社会の平和と安定につながる日本独自の貢献を行ってきました。

わたしたち立憲民主党は、これら歴史の教訓を胸に刻みつつ、戦後日本が培ってきた外交・安全保障の基本姿勢である国際協調と専守防衛を貫き、国際社会の平和と繁栄に貢献していく決意をここに表明します。

2019年8月15日

敗戦74年にあたって(声明)

社会民主党

  1. 第二次世界大戦の終結から74年目の8月15日を迎えました。戦争の犠牲となって斃れ、傷つき、苦しめられた国内外のすべての人々に、心から哀悼の誠を捧げるとともに、遺族の皆さまにお見舞い申し上げます。悲惨な戦争体験による深い傷は、74年を経てもなお消えることはありません。わたしたちは、大戦の反省から得た「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにする」決意と、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」ことを前文に謳う平和憲法の意義と価値をあらためて胸に刻み、「恒久平和」の実現をめざします。
  2. 今、日本の「平和国家」としての歩みは、安倍政権によって閉ざされようとしています。「戦争法」の成立を強行した安倍政権は、南スーダンPKO部隊への駆けつけ警護や自衛隊による米軍の武器等防護、弾道ミサイル警戒にあたる米イージス艦への洋上給油、シナイ半島の「多国籍軍・監視団」への派遣など、「戦争法」に基づく自衛隊の任務拡大を進めています。また、防衛費は7年連続増額で過去最高を更新するとともに、長距離巡行ミサイルやイージス・アショアの導入、攻撃型空母や次期主力戦闘機F35、オスプレイの購入、電子攻撃機の導入検討など武器を「爆買い」し、「専守防衛」を大きく逸脱する軍拡に踏み込んでいます。さらに中東ホルムズ海峡などを航行する民間船舶を警備する有志連合への参加が検討されており、自衛隊が海外派兵され、アメリカとともに戦争する危険性が増しています。「戦争法」の既成事実をつくり、米国との軍事一体化を加速する安倍政権に、一人の命も預けるわけにいきません。平和を希求する多くの人々とともにたたかい、「戦争法」を廃止に追い込んでいきます。
  3. 日本の侵略戦争と植民地支配が引き起こした太平洋戦争は、多くの国々に多大な苦痛と損害を与え、日本も存亡の危機に陥れました。戦後の爪痕は、現在も人々の暮らしを脅かしています。沖縄では、本土「復帰」から47年経った今もなお、日米安保条約や日米地位協定が優先する「反憲法」下の日常を強いられ、日米軍事一体化の最前線に置かれています。日米両政府は、「辺野古新基地建設」の賛否を問う県民投票で明確に示された民意を真摯に受け止め、移設計画を断念すべきです。安倍首相は、今年の平和祈念式典でも、「核兵器禁止条約」の批准に言及しませんでした。国際社会の潮流が核廃絶に向かっているなかで、原爆の悲劇を体験した日本こそが「核なき世界」の主導的役割を果たすべきであり、戦争による唯一の被爆国として、長崎・広島の思いにしっかり応えなければなりません。また、第二次世界大戦の空襲で被害にあった民間人の補償や援護は放置されたままです。戦争被害の責任を認め、差別することなく救済を急ぐよう強く求めます。
  4. 南北首脳会談や米朝首脳会談が行われ、世界情勢も大きな変化を迎えようとしています。社民党は、東アジアに残された冷戦構造を終結させるためにも、2005年の6か国共同声明に立ち戻り、粘り強い外交努力による米朝間の平和協定の実現、そして2002年の日朝平壌宣言に基づく日朝間の緊張緩和と関係改善に取り組むよう政府に求めていきます。また、日韓関係は最悪と言われるまでになっています。その背景には、安倍首相の誤った歴史認識と、人権問題である徴用工問題を韓国への輸出規制や「ホワイト国」除外で封殺しようとする姿勢があります。本当の意味でアジア諸国との和解を果たしていかなければなりません。
  5. 今夏の参院選は、アベ政治の暴走を止め、改憲発議を阻止する極めて重要な選挙でした。与党に過半数を許したものの、野党共闘によって改憲勢力を3分の2割れに追い込むことができました。しかし、安倍政権は憲法9条を軸にした「明文改憲」をあきらめてはいません。選挙戦を通して、社民党に「平和憲法だけは守り抜いてほしい」との多くの声が寄せられました。「戦争で領土を奪還」する妄言を発した国会議員がいましたが、政治の最大の役割は絶対に戦争をしないことです。社民党は、憲法の平和主義こそが他国との信頼の礎であり、日本を守る「抑止力」となってきたことを確信する多くの人々とともに、憲法改悪を断固阻止します。8月15日にあたり、戦争犠牲者の想いを偲び、平和の尊さに深く思いを致し、「戦争する国」にさせないために努力し続けることを誓います。

慰霊と誓いのことば

戦後74年目の8月15日に、先の苛烈な大戦によってその人生と生命を奪われ、ここ千鳥ヶ淵に眠る無名となった37万余の戦没者の方々と、5,000万人とも8,000万人ともいわれる第二次世界大戦による犠牲者のすべての御霊に、心より哀悼の誠を捧げます。そうした皆様の犠牲の上に築かれた「戦後」という言葉が当たり前に続くと思っていた私たちは、いま新たな戦間期を予感させられるような事態に直面しています。

わが国でも戦争を体験された方々がご高齢となり、その苦難の記憶は十分に語られぬまま、鬼籍に入られる方も増えています。ちょうど2011年の東日本大震災が、78年前の昭和8年の大津波の記憶が消えかけた頃、三陸の地を襲ったように、「二度と軍事力を行使しない」ことを誓ったはずの日本国憲法は、手を変え品を変えて形骸化の攻撃にさらされ、安倍政権にあってはこの憲法を明文改悪することによって正々堂々、軍事力行使を認めていこうとしています。

既に1972年の沖縄返還以降、本土から沖縄への米軍基地移転が進められるとともに、本土の基地もまた、米軍の指令の下一体的に運用されるようになり、ついには戦後74年を経たにもかかわらず沖縄辺野古﨑には「新基地の建設」が着々と進められています。日本全体が新たな出撃拠点となり、さらには遠く中東の地ジブチにも自衛隊拠点が置かれるようになりました。

誰を敵として何と戦うのか、国民には一貫して語られることなく、むしろ最も重要な東アジアの隣国との関係は悪化の一途を辿っています。「武力によらない紛争の解決」の為の外交・交渉力は極めて貧しく、イデオロギーが先行して排外的、敵対的対応がもてはやされる風潮に大きな危機感を覚えます。

京都アニメーション襲撃事件のような無差別の社会的テロが憲法21条の個人の幸福追求権を打ち砕き、芸術・文化に代表される思想信条の自由すら揺らいでいる今日、何よりも国民の知る権利、そして主権者国民の責任ある選択が可能となることこそが重要です。立憲フォーラムでは、まず行政が肥大となり形骸化した国会論戦をしっかりと取り戻すことによって、主権者国民と共に戦後を真に戦後として今後とも定着させていくために全力を挙げていきたいと思います。

以上、慰霊と誓いの言葉といたします。

2019年8月15日
立憲フォーラム副代表
阿部 知子

戦後74年8月15日

今年もまた、8月15日がやって来ました。

2019年8月15日、戦後74回目の8月15日です。

今、世間では、天皇代替わりにより令和元年という云い方もなされています。

しかし、私たちは、2019(戦後74)年8月15日にこだわり、非業・無念の死を強いられた方々の声に耳を傾け、この国の来し方行く末を考えてゆきたいと思っております。

74年前の敗戦を経て、私たちは、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」、主権在民、戦争の放棄、基本的人権の尊重を原理とする日本国憲法を制定し、戦後の再出発をしました。この日本国憲法は未完の憲法であると言われています。

未完とは、戦後、私たちが担ってきた護憲、平和運動が、戦争責任の追及・植民地支配の清算、米軍基地の重圧に呻吟する沖縄について十分に向き合わず、今日に至るまでこれらの問題が解決されないまま放置されてきたことを云います。

私たちは、この二つの問題に取り組み、解決を図ることによって未完の日本国憲法を補完しなければなりません。

皆様方も憂慮されていることと思いますが、今、隣国韓国との関係は、元徴用工問題に関する韓国大法院判決を巡って悪化の一途をたどっています。

安倍政権は、韓国について、国家間の合意を反故にした、ちゃぶ台返しだと、口を極めて非難していますが、1965年の日韓請求権協定では日本側の拒否によって植民地支配の清算問題は封印され、その意味では、そもそも、ちゃぶ台に載っておりませんでした。この事実を直視すれば、元徴用工問題について、安倍政権の云う、国家間の合意とは別な解決もあり得るのではないでしょうか。

元徴用工問題は、加害者としての私たち日本が、慎みと節度を持って植民地支配の問題に向きあい、誠意を以って解決する以外ありません。同質の中国人強制連行・強制労働問題では、数社ではありますが、被害者と加害者との間で和解が成立しており、この事例を参考にすれば、韓国人元徴用工問題についても、同様な解決を為すことが可能であると思います。

安倍政権は沖縄県民の反対を無視し、辺野古米軍新基地建設を強行しています。ここでもまた国家間の合意が強調されています。しかし、辺野古米軍新基地建設についても、「日米は合意しても沖縄は合意していない」のです。数度に亘って表明された「辺野古米軍新基地建設ノー」の沖縄県民の意思がそのことを明らかにしています。「土地に杭は打たれても心に杭は打たれない」。かつて、砂川闘争で語られた言葉です。その砂川闘争に米軍基地に呻吟する沖縄県民の代表団の姿もありました。

土砂によって沖縄県民の米軍新基地建設反対の声を埋め立てることは出来ません。

憲法破壊をし、米軍と一体となって、再び日本を戦争出来る国にしようとする安倍政権に対する闘いは、三つの共闘です。一つは非業無念の死を強いられた皆様方、そして戦後の護憲平和運動を担いながら、亡くなっていった方々の声に耳を傾けながらの死者達との共闘、二つ目は戦争をしない国を私たちの子供、孫、まだ生まれて来ていない子供達に伝えるための、未来との共闘、そして三つ目が、各地で強権政治に抗しているアジアの人々との共闘です。

平和運動は、例えて見ればゴールのない駅伝のようなものです。各々がその託された期間を走り続け、次の世代に平和のタスキを手渡す、ゴールにたどり着ける人は稀、いやゴールそのもののない永久の連続運動だと思います。私たちは皆様方死者から託された平和のタスキを次の世代に手渡すまで走り続けます。

2019(戦後74)年8月15日
戦争をさせない1000人委員会事務局長
内田雅敏

沖縄だよりNO.90(PDF)

 猛暑の中を全国各地から原水禁世界大会広島大会に足を運んでいただきました皆さまに、心から感謝を申し上げます。若干の時間をいただき、原水禁世界大会の基調提案を行わせていただきます。

 原爆投下から、広島は74年目の夏を迎えようとしています。被爆者の願いであった「核兵器禁止条約」が122カ国の賛成によって採択されてから2年がたちました。すでに70カ国が署名し、8月2日現在24カ国が批准を済ませています。遠からず条約は発効します。

 日本政府は、条約が米国の核抑止力を否定するとして、署名・批准には後ろ向きです。外務省は、「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核抑止のあり方を変えていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。

 原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。

 「ストックホルム国際平和研究所」が発表した推計によれば、2019年1月時点の米露英仏中の5カ国とインド、パキスタン、イスラエル、朝鮮を加えた計9カ国が持つ世界の核弾頭数は1万3865発で、米露による削減の結果前年度比で600発の減となっています。
新START、新戦略兵器削減条約は、確実に核弾頭数を減らしています。しかし、一方で同研究所は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘しています。

 トランプ政権は、この間、「アメリカ・ファースト」「力による平和」を標榜して、一方的、挑戦的な強硬姿勢を貫き、これまで国際社会が作りあげてきた、核軍縮の枠組みを破壊しています。2018年には、イランとの核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開しました。混迷をますイラン情勢は、ペルシャ湾・ホルムズ海峡での緊張を生み出し、自ら有志国連合を呼びかけることとなっています。

 今年2月には、ロシアとの中距離核戦力全廃条約からも、ロシアの中距離核開発と条約の制約を受けない中国の中距離核開発を理由に離脱を表明し、8月2日に条約は失効しました。米露間では、今後中距離核開発をめぐって軍拡競争へ突入していく危険性も懸念されます。ヨーロッパ地域や東アジア地域の安全保障にとって、重大な事態を招いています。米国からは、同盟国日本への中距離核の配備要請の声も聞こえ、国是である非核三原則に抵触し、その空洞化すら懸念されます。米露両国は、重要な新STRATの継続の協議も含めて、核保有国の責任として、新たな核兵器削減・廃絶の枠組みの構築に努力しなくてはなりません。

 米トランプ大統領との親密な関係を強調し、日米同盟の深化を提唱する安倍政権は、核搭載可能なF35ステルス戦闘機105機、総額で1兆4000億円もの購入を決定し、ヘリ搭載の護衛艦「いずも」をF35B戦闘機を搭載しての空母への改修、敵基地攻撃を目途にした巡航ミサイルなどの導入を決定しています。

 昨年9月には、海上自衛隊は最大級のヘリ空母「かが」を含む護衛艦3隻と潜水艦「くろしお」を南シナ海に派遣し、対潜水艦訓練を目的とした演習を実施しました。ヘリ空母「いずも」と護衛艦「むらさめ」は、今年5月に、米海軍、インド海軍、フィリピン海軍との4カ国共同訓練を南シナ海で実施し、6月には、同じ南シナ海海域で、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中心とする空母部隊との共同訓練を実施しています。米国や英国も駆逐艦などを派遣し「航行の自由作戦」を展開し中国と対立するきわめて緊迫した海域での訓練は、極めて異例です。

 安倍政権は、一帯一路政策を推進する中国を仮想敵として、インド太平洋構想を提唱し、米軍と一体となった軍事行動を展開しています。米国は、第2次大戦後も「世界の警察」を自任しながら、自らの覇権かけて、世界各地で地域紛争に介入しつつ、自ら戦争をひき起こしてきました。安倍政権の「日米同盟基軸」の姿勢と「積極的平和主義」の考えは、日米一体となった「日米統合軍」をつくり出し、自ら積極的に米国の覇権に協力することを確実にしています。

 このような情勢を受けて、沖縄県名護市辺野古では、在日米軍海兵隊の新基地の建設が強行されています。県知事選挙、各国政選挙、そして今年2月の辺野古埋立の賛否を問う県民投票、様々な形で示された沖縄県民の辺野古新基地建設反対の意志は、安部政権の建設強行に踏みにじられ、もはや沖縄には民主主義、憲法がないと言うほどの事態を引き起こしています。私たちは、沖縄県民とともに、核のない、基地のない沖縄をめざしてとりくまねばなりません。 

 G20大阪サミット後の6月30日に、韓国を訪問したトランプ米大統領は、軍事境界線上の板門店において、出迎えた金正恩朝鮮国務委員長と約50分間にわたって会談しました。会談の中で、今年2月のハノイでの会議以降途絶えていた朝鮮半島の非核化への実務者協議を、再開することで合意をしています。

 朝鮮半島の非核化に向けての議論は、一朝一夕に進むものではありません。米朝間もしくは中国を加えて、朝鮮戦争の終結、平和協定の締結、さらには東北アジア非核地帯構想の実現に向けて進み出すこと、段階的な非核化へのプロセスとそれに伴う制裁措置の解除、話し合いの進展のために連絡事務所の開設など、信頼感を高めながらひとつ一つの課題を克服していく粘り強い努力が必要です。早期の実務者協議の再開が待たれます。

 朝鮮半島情勢が進展する中にあって、制裁の強化に固執してきた安倍首相は、この間、存在感を示すことができないできました。重要課題としてきた拉致問題さえも、米朝首脳会談に託すこととなっています。情勢を打破すべく、安倍首相は突然、朝鮮に対して「無条件の対話」を提起しました。朝鮮政府は、「朝鮮への敵視政策は少したりとも変わっていない」と突き放しています。

 安倍政権は、2002年の「日朝平壌宣言」に立ち返って交渉を開始すべきです。日本国内における、高校無償化からの排除に象徴される在日コリアンへの差別の解消や在朝被爆者への援護開始、国交回復後の拉致問題の解決などを前提としつつ、朝鮮敵視の政策を転換し、まずは連絡事務所の相互開設などによって相互信頼の醸成にとりくみ、対話の中で国交の正常化をめざすべきです。朝鮮敵視政策を継続する安倍政権は、21世紀の東アジア社会での自らの立場を誤っています。

 次に、原子力エネルギーをめぐる現状と福島の今について提起したいと思います。

 雑誌「世界」の2019年7月号、「原子力産業の終焉」と題した特集において、原子力アナリストのマイケル・シュナイダーさんは、原子力発電所の現状について、世界の商業用電力ミックスにおける原子力の割合は、1996年以来17.5%から10%に低下し、様々な要因から原発はもう市場での競争力を失っていると指摘しています。

 安倍政権がアベノミクスの重要な柱に位置づけてきた、日本の原発輸出政策は、インド、ベトナム、トルコ、イギリス、ヨルダンで、全てが頓挫・失敗・撤退しています。安全対策などによる原発建設コストの増大は、原発を市場経済から閉め出す方向に動いています。
 東芝、日立製作所、三菱重工の日本を代表する原発メーカーが、政府方針とともに原発建設に拘泥するならば、企業の将来にも、日本経済にも暗雲をもたらすでしょう。原発輸出を基本政策としてきた安部政権の責任は重大です。

 原水禁は、原子力の商業利用にも、一貫して反対してきました。福島第一原発事故に際しては、大江健三郎さん、瀬戸内寂聴さんなどの9人の呼びかけ人と、様々な市民の皆さんの協力を得て、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を展開し、「脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」の声を上げ続けてきました。私たちの知る限り、脱原発の世論は圧倒的多数を示しています。これほど世論と政治の乖離が大きい政策はありません。

 事故を起こした福島第一原発の現状は、極めてきびしいものがあります。事故収束までの費用を経産省は21兆5千億円と見積もっていますが、70兆円などとの試算も出ており、今後の見通しは全く立たずにいます。

 高線量の放射能に阻まれて、溶融した核燃料は手つかずのまま、冷却を続けるしかない状態で、汚染水はたまり続けています。作業の長期化は避けられません。福島県内には、汚染水のみならず、瓦礫、伐採木、防護服などの焼却灰、そして除染によって出された汚染土など、様々な放射性物質に汚染されたものが、未だに住環境のすぐ側に積み上げられています。事故収束作業や様々な場面で労働者がヒバクする事態は避けるべきであり、何よりも暮らし続ける市民の環境をこれ以上汚染することは許されません。

 福島県は「県民健康調査」において、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった子どもたちに甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2019年 3月末現在、2018年末より 6人増えて218人が甲状腺がんまたはがんの疑いとされ、174人が手術を受けています。甲状腺評価部会は「現時点で、放射線被ばくとの関連は認められない」としていますが、甲状腺がんを始めとする健康リスクは、原発事故がなければなかったのです。

 国は事故の責任を認め、被爆した人々の医療支援や精神的ケアに全力を尽くすべきです。浪江町や飯舘村では「健康手帳」のとりくみがすすめられています。広島・長崎の被爆者、そして原水禁運動が、長い闘いの中で勝ち取った、原爆被爆者健康手帳と同様の法整備を、国の責任として進めなくてはならないと考えます。

 被災地福島では、8年余経った今も県内に1万1,084人、県外に3万 1,608人、避難先不明者も含めて合計4万2,705人が、長期の避難生活を余儀なくされています。
 政府は、法律で定められている年間被ばく限度1mSvに従わず、国際放射線防護委員会が定めた、重大事故時の被ばく基準を勝手に適用し、法の定めの20倍もの被ばく量を、避難指示を解除した地域の住民に押しつけています。

 避難指示解除に合わせて、住宅支援、精神的賠償などの支援を次々に打ち切り、被災者が帰らざる得ない状況を作り出しています。避難指示解除区域では、医療や介護、日常生活に必要な各種インフラやサービスは全く不十分なままで、居住率は25%程度、高齢化率は、事故前の27.3%から44.3%に上昇しています。

 国は、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、福島事故では放射線の被ばくによる健康影響は今後もなく、福島は復興しつつあるとし、事故被害者を切り捨て、原発再稼働を推し進めようとしています。

 復興庁作成の「放射線のホント」や文科省が全国の小中高校に配布した「放射線副読本」などは、放射線のリスクを矮小化し、誤った知識を持って原発の稼働を許そうとするものです。将来のエネルギー政策を選択する権利を持つ者に対して一方的な意見を押しつけることが許されるわけがありません。風評払拭と言う言葉を利用して、フクシマを亡きこととし、原発推進をすすめる環境づくりを許してはなりません

 政府は、電力会社は、目先の利益のみを追求し、膨大な投資を行い、原発の再稼働をすすめようとしています。経団連は、原発を基本とした将来のエネルギー政策を提言し、国の第5次エネルギー基本計画には入れることができなかった原発の新設も、要求しています。中国電力は、地元広島に近い上関原発の埋め立て申請許可の延長を求めるなど、原発新設に前のめりの姿勢を見せています。フクシマの現状を見たとき、第一原発の前に立ったとき、なぜ、原発を将来のエネルギーとして選択できるのか、理解できません。全ての状況が、全ての数字が、「脱原発」を選択していることは明らかです。

 死を目前にする兵士の心情を描いた「桜島」で著名な小説家、梅崎春生は、「どのみち死なねばならぬなら、 私は、なっとくして死にたいのだ」と述べています。1945年8月6日、瞬時に奪われた命は、何を思うのでしょうか。「納得」と言うならば、納得すべき何ものもなく死に見舞われた者は、何を思うのでしょうか。

 広島大会に先立つ福島大会で、多くの原発事故被災者に「ふるさとの喪失感」が伴うとの話を聞きました。故郷を奪われたことを、どう自らに納得させるのか、その困難が、喪失感を生んでいくのでしょうか。

 命と命に付随する人間の全てを、私たちは決して「納得」せずには奪われない。その権利を持っていることを、改めて確認したいと思います。そして、そのことを原水禁の基本に据えて、更なる運動の展開をめざそうではありませんか。

 その決意を申し添えて、被ばく74周年原水禁世界大会の基調提案といたします。

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 「核も戦争もない平和な21世紀に!」―被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会が8月4~6日の日程で始まりました。
 毎年、最初の行動は「折鶴平和行進」。全国を回った「非核平和行進」を受けて、平和公園原爆資料館前に集まった全国の参加者は、横断幕を先頭に、のぼり旗などを持ちながら広島市内を行進。子ども連れの参加者も目立ち、「核兵器を廃絶しよう!」「原発の再稼働は許さない!」「被爆者の支援を!」などと、炎天下にもかかわらず、コールを繰り返しながら、県立総合体育館まで元気に歩きました。

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トランプ・安倍政権へ厳しい批判
 県立総合体育館で行われた開会総会には1900人が参加。原爆犠牲者への黙とうに続き、主催者あいさつに立った川野浩一・大会実行委員長(上顔写真左・原水禁国民会議議長)は「地球上に存在してはならない核兵器がいまだ1万4千発もあり、さらにトランプ米大統領はイランとの核合意やロシアとの中距離核戦略(INF)からの離脱を表明。8月2日にINFは失効した。来年の核拡散防止条約(NPT)の再検討会議も成果が期待できない」と、厳しい情勢を指摘。「特に2017年に国連で採択された核兵器禁止条約に安倍政権は反対し、国内世論も盛り上がっていない。今こそ私たちの運動の真価が問われるときだ」と訴えました。
 松井一寛・広島市長(代理出席)、湯崎英彦・県知事(メッセージ)からの来賓あいさつの後、大会に参加した多数の海外ゲストが紹介され、代表して米国ピースアクションのスージー・アリゾン・リットンさん(上顔写真右)が「核兵器は気候変動と並び世界の人々を恐怖に陥れている」とトランプ政権を批判し、「しかし力による安全保障は真の安全につながらない。全ての人たちの幸せのために連帯して運動を続けよう」と呼びかけました。

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被爆者の実相を伝えよう
 被爆者の訴えを、広島県被団協・被爆を語り継ぐ会の高品健二さん(上顔写真左)が行いました。高品さんは8歳の時に爆心地から2.5キロの所で被爆。「外で遊んでいて青白い光を見たと思ったら、10メートルほど飛ばされていた。父はすでに満州で戦死しており、母も放射線を浴びて1週間後に白血病で亡くなった。残された自分も被爆したことで辛い思いを続けてきた」と経験を語り、最後に「こうした犠牲は私たちを最後にしてほしい。そのため命のある限り語り継ぎ、思いを世界の人たちに届けたい」と述べました。
 毎年、全国の高校生がジュネーブの国連欧州本部を訪れ、核兵器廃絶を訴えている高校生平和大使は、今年は第22代を迎え、広島県内から選出された牟田悠一郞さん、北畑希美さん、松田小春さんが登壇し、代表して牟田さんが「私の祖父が原爆を経験したことから、若い世代がこれからもっと学び、伝えていかなければならない」と決意を述べました(上写真右)。
 2011年3月の福島第1原発事故の問題で運動を続ける福島県平和フォーラムの瓶子高裕事務局次長が、7月27日に開かれた原水禁福島大会を報告するとともに、「福島第2原発の廃炉が決定し、県内全ての原発が無くなるが、廃炉までの長い工程や廃棄物問題、さらに被災者の健康と生活再建など課題は山積している」と、さらなる支援を呼びかけました。
 大会の基調を藤本泰成・大会事務局長が行い、核兵器をめぐる世界の状況、核の商業利用(原子力エネルギー)の現状、ヒバクシャ・核被害者への援護と連帯について当面する課題を提起し、「命の尊厳を基本に闘いを前進させよう」と訴えました。大会の基調はこちら
 大会は「原爆を許すまじ」を全員で合唱し、金子哲夫・広島県原水禁代表委員が「被爆の実相という原水禁の原点を学び運動する大会にしよう」と閉会あいさつを行いました。
 

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廃墟からの声を聞け ─軍艦島に立って

 息子と二人、軍艦島(長崎県端島)に行こうという話になった。なんでそうなったかは覚えていないが、一度は行っておきたい場所だと思った。南北約480m、東西160m、周囲1.2kmに過ぎない小さな島に、1950年代後半のピークには、約5300人が住んでいたという。

 水もない小さな島に、石炭は多くの人を呼び込んだ。日本初の高層住宅、日本唯一の7階建て小中学校校舎、海底電気ケーブル、海底送水管、神社とお祭り、パチンコ屋、社交場、テレビの普及率は全国一、映画館は封切館。時代を先取りした生活が紹介される。日本産業の勃興期の底を支えた石炭産業の重要性が説かれる。だからこそ世界遺産なのだと。

 しかし、その評価にあらがう場所がある。坑道に降りる第二竪坑の入口、気温40°湿度90%以上の立つこともままならない危険な切り羽に、働く現場に降りていく場所。この竪坑を降りて、しかし再び昇ってこなかった人は、経営者三菱の記録では215人、いやもっといただろう。日本人だけじゃなくいろんな人々がいただろう。「ここには、様々な理由で、様々な思いを持って人が来た。廃墟の中で最後に残るのはこの階段だ。この石炭の粉塵で黒光りする階段が、地獄の入口の階段が、最後まで残る。なぜなら仲間たちの執念がここに残っているから」と、ここで働いた人が言う。

 世界遺産の意義を否定するわけではないが、廃坑の坑口に立って、かつてここで働いていた者たちが何を思うか、その視点がなくては、遺産は歴史の中で意義を持たない。そこに生きて、死んでいった人々の声を聞けなくては、遺産としての価値はない。

 軍艦島でも、朝鮮半島からの強制連行者約600人が働き、122人が亡くなったと言われている。彼らは、軍艦島を地獄島と呼んだ。戦前の日本の炭坑のほとんどに、そのような強制連行者が存在した。世界遺産に申請されたときの、韓国などからの批判は、そのことに目を向けない日本政府の姿勢にあった。植民地時代の徴用工問題で、韓国と日本の対立は深刻だ。世論調査では56%が韓国への輸出規制が妥当だとし、妥当ではないの21%を大きく上回る。是非一度、日本人は、世界遺産登録した軍艦島に立って欲しい。そこに木霊する働く者の声を聞いて欲しい。植民地から連行され過酷な労働を強いられた人々の声を聞いて欲しい。明治日本の勃興が、どの様な形で、どの様な人々によって築かれたかを知って欲しい。そのことを知らずして、韓国やアジア諸国と新しい歴史は築けない。
(藤本泰成)

ニュースペーパー2019年8月


参議院で護憲派3分の1超! 当面の憲法「改正」発議は阻止!
しかし、憲法を守るたたかいは続きます!

 平和フォーラムは、今回の第25回参議院選挙を、改憲阻止のたたかいと位置付け、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会および安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合に結集し、取り組みを進めてきました。13項目にわたる政策合意を基本に野党共闘を推進する市民連合の中心的役割を担い、公示前日の7月3日と選挙戦終盤の同月15日、どちらも新宿駅西口での街宣行動にも参加しました。
 7月21日の投開票の結果、護憲派(立憲民主・国民民主・共産・社民・野党統一等)は、84議席(獲得議席43・非改選41)となり、参議院定数245議席の3分の1を超えました。改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。
 しかし、安倍首相は、残り2年余の自民党総裁の任期の中で「残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたい」と主張するとともに、野党の一部の取り込みにも意欲を示しており、引き続き、平和憲法を守り憲法理念実現をめざすたたかいの強化と立憲野党との連携強化が求められています。
 平和フォーラムは、安倍政権の暴走を阻止しその退陣を求めるとともに、立憲主義の回復と憲法理念の実現をめざすたたかいの先頭に立つことをお誓いします。(写真は7月3日、新宿西口での市民連合街宣行動)

インタビュー・シリーズ:147
言葉だけではなく、他者とのつながりに喜びを感じながら歴史を伝えていく
映画監督 大川史織さんに聞く


おおかわ しおりさんプロフィール
 神奈川県で生まれる。高校3年生の時に第9代高校生平和大使。2011年慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、マーシャル諸島に移住。日系企業で働きながら、マーシャルの人びとの歴史や文化を記録する作業を進める。2015年、アジア・太平洋戦争中にマーシャル諸島で餓死した日本軍兵士を父に持つ遺族の慰霊の旅に同行し、映画『タリナイ』(2018年)を初監督作品として発表。同映画と書籍(姉妹編)『マーシャル、父の戦場―ある日本兵の日記をめぐる歴史実践』(みずき書林、2018)は2019年5月「第6回山本美香記念国際ジャーナリスト賞・奨励賞」を受賞。

─大川史織さんは第9代高校生平和大使でもあったわけですけれども、応募した理由を聞かせてもらえますか。
 高校1年生の時に参加した「愛・地球博」市民プロジェクトで、「高校生1万人署名活動」を知りました。長崎の高校生が核兵器廃絶のために行っている署名活動を日本全国へ広げようと、オープニングイベントで活動を紹介しました。その後、「愛・地球博」で出会った友達と成城学園前駅や三鷹駅前で街頭署名活動をしました。通っていた高校が自主性を重んじる自由な校風だったのと、部活動を1年生の冬に辞めてからは帰宅部で、学校の枠を越えて関心があることに取り組むことができました。そうした環境も味方となって、高校3年生で高校生平和大使に応募しました。街頭署名活動に参加したり、集めた署名を届けたりと、平和大使になる前に2度ほど長崎を訪れていました。

─大川さんが平和大使であったときには、アウシュビッツへも訪問したと聞きましたが、その時の感想などは。
 欧州訪問は、集めた署名を国連に自分たちの手で届けるという貴重な体験をさせてもらいましたが、私にとって最も大きかったことは、アウシュビッツで唯一の日本人公式ガイド中谷剛さんに出会えたことです。訪問前は、アウシュビッツで起きたことは過去の出来事と思っていました。しかし、別の形であれ、未来にも起こり得てしまうかもしれない、とガイドを通して感じました。アウシュビッツと日々の暮らしが切り離されたものではなく、地続きであると感じられたことで、自分が体験していない時代の歴史や記憶を継承するときに、体験者でない人がどのように語るのか。歴史を語るときの伝え方について、学びを深めた旅であったと振り返って思います。

─その後マーシャルに行くわけですが、そのきっかけは。
 大学入学前の春休みに、大阪にあったNGO団体が企画したスタディーツアーで初めてマーシャルに行きました。
 高校生として署名活動をする中で、さまざまな疑問も同時に抱いていました。例えば、よく見聞きする「唯一の被爆国、日本」と言うフレーズがあります。メディアも核や戦争の話題は夏の風物詩のように報道しますが、長崎の高校生たちは、夏に関係なく、日常的に署名活動をしているし、ヒバクシャの方たちにとっては、夏だけ苦しい思いをしているわけじゃない。そこのところを発信する側はもっと意識して、考えていかないと感じていました。核廃絶という目標に向かうときに、内向きに向かう語りから、一つの語りではなく複数の語りによって、ミクロとマクロの視点でとらえていく姿勢の重要性は、実際に発信する側に立ったことで意識をするようになったと思います。
 そんなことを考えながら、もっとマクロな視点で考えてみようとネット検索で、核兵器の「核」と「環境」と「開発」、これらのキーワードを入れたら、マーシャル諸島スタディーツアーの募集案内があったんですね。
 マーシャルは日本と密接につながりのある時代があったにもかかわらず、全く知らずにいて、そのことがものすごくショックでした。教科書では第五福竜丸事件については書いてあるけれども、かつて日本の統治下にあったということまでは書いていない。私の祖父はマーシャル群島を知っていても、母は知らなかった。孫世代の私はもっと知らなくて。知らなかったからこそ、行ってみようと思いました。

─スタディーツアーに参加しマーシャル諸島を知り、今回映画監督として島にかかわる映画を撮られるようになったわけですね
 大学卒業後、大学院に進学してフィールドワークという形でマーシャルに通い続けてもいいかなと最初は考えていたのですが、間に合わないなと思ったんです。幼少期に日本語教育を受けた人や、戦争体験がある人がどんどん亡くなっていく。現地の人にも、もう遅いよとすら言われました。
 でも、まだわずかでも語れる人はいたので、現地で就職先を見つけて、まずは生活者に近い状態に自分を置いて、マーシャル語と文化を学ぶことが先だと思いました。結局カメラを回すのは2年目からだったんですけれども。


戦時下で残された日記
「最後カナ」が絶筆となった
─映画『タリナイ』では、マーシャル諸島で飢えのために亡くなった日本兵の一人、佐藤冨五郎さんの日記を手掛かりに、息子の勉さんが父の足跡を追う映画となっています。
 佐藤勉さんのお父さま、佐藤冨五郎さんと日記については、私が2011年から3年間マーシャルに滞在していた時、当時のマーシャル日本大使館の安細大使が教えてくれたんです。飢えで亡くなった日本兵が日記を残していて、日記は遺族がお持ちだという話を聞いたとき、とても衝撃を受けました。日記を読めるなら読みたい、遺族の方にも話を聞きたいと思いましたが、とても興味本位では聞けない。ところが、帰国後に安細大使が佐藤勉さんをご紹介くださって、メールのやり取りをするようになりました。
 勉さんは、それまで3回政府主催のツアーでマーシャルへ慰霊の旅に行っていました。でも、勉さんがお父様の島に滞在できる時間は毎回20分ほど。あわただしく祭壇を作って、お祈りをして、片付けたら次の島へ、という状態だったようです。
 過去3回の慰霊の旅ではまだ悔いが残っている。出来れば1週間ぐらいお父さんが亡くなった島に滞在したい。それには、長くその地に住んでいた人と一緒に行けたらうれしいという依頼を受けました。勉さんに直接お会いしたことはなかったのですが、メールの文面から切実な思いが伝わり、一緒に行くことにしました。

─映画が完成して、大川さんが訴えたかったことが表現できましたか?
 何かを訴えたくて作ったわけではなくて、マーシャルの話がしたいのに、話ができる基盤がない。まずはマーシャルがどういうところかを知り、行ってみたくなるような映画を作ることで、マーシャルとつながっていきたいと思う人を増やしたいという思いが根底にあります。映画を完成させた達成感というよりも、やっと、その入口に立てたという感じです。
 今年の夏、マーシャルで上映会を開催します。核家族化が進むマーシャルで、昔はあたりまえのようにおばあちゃんやおじいちゃんから聞くことができた話を、今は知らない若者が増えています。

─3年間の滞在中や、映画撮影でマーシャルに訪れて、日本とのつながりを感じられることもあったと思いますが、逆にマーシャルの人びとは、どのようにとらえているとお考えですか。
 日本人との思い出を楽しそうに話してくれているように見えても、マーシャルの人びとの心のうちはとても複雑です。ただ、私が3年間暮らし、今も私がマーシャルにかかわり続けていたいと思うことができるのは、マーシャルの人が敵意やネガティブな感情を直接的に表すことなく、いつも穏やかに温かく向き合ってくれる姿勢があるからです。
 寛容であるとかやさしさという言葉では表現しきれないし、的確ではない。あてはまる言葉を探し中ですが、マーシャルの人たちが私たちと会う出会い方に、他者とつながるときのヒントが隠されていると思います。

─今日、日本と隣国との関係が非常に悪い。若者文化では音楽やドラマなどを通して文化的な交流はできている。しかし政治のレベルになると関係が悪化している。そういう他者とつながろうとする態度がなぜ政治の世界で出てこないのだろうと思いますね。最後に、今後大川さんがやりたい仕事は。
 今年の3月、AAS(アジア国際学会)で『タリナイ』が上映されました。開催地の米国コロラド州デンバーには約200人のマーシャル人が暮らしていました。でもデンバーで生まれ育った子どもたちは、マーシャルのことをよく知りませんでした。今、マーシャルでは毎日100人パスポートの申請をしているほど、若い人たちがどんどん外に出てしまっている。こうした現実の中で、今公開されている映画『トゥレップ-「海獣の子供」を探して-』のマーシャルパート・ラインプロデューサーとして、マーシャルの神話や伝承を映像に残せたことは貴重であったと思っています。
 また、映画と同時に新たな本づくりも進めています。言葉で表現できないことと、言葉でしか表現できないこと。両方の表現方法を磨くことで、心を通わせ合ったり、つながりを感じる喜びを抱ける仕事をしていきたいです。

<映画『タリナイ』上映予定>
8/10長崎西海市
8/10-16横浜シネマリン
8/17.18鹿児島ガーデンズシネマ
8/17-30名古屋シネマスコーレ
8/24対馬市
8/31-9/3京都シネマ
9/8神奈川県大和市
9/14上智大
9/29明治学院大
※詳細はhttps://www.tarinae.com/

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どこにもいらないオスプレイ!
関東上空は危険地帯!木更津基地への陸自オスプレイ暫定配備で
原田義康護憲・原水禁君津、木更津地区実行委員会


木更津基地に着陸したオスプレイ
(前方はCH-47 2018年10月18日)
 自衛隊が導入するオスプレイ17機について防衛省は、5月24日に千葉県木更津市に、6月6日には千葉県に対し、陸上自衛隊木更津駐屯地(以下木更津基地という)に暫定的に配備したいと説明してきた。これは、配備を予定している佐賀空港が、佐賀県は着陸料100億円をもらうことで同意したものの、漁協等が強硬に反対しているため、配備の見通しがまったく立たないため、木更津基地に暫定的に配備をしたいというものだ。

はじめから木更津ありきの暫定配備
 2017年・2018年とマスコミで「防衛省はオスプレイを木更津基地に暫定配備で最終調整」というニュースが大々的に流されたこともあり、今回の説明の際にも木更津市や千葉県は、防衛省が情報を意図的にリークし、現地の反応を見たのではないかという疑念を示した。これに対し防衛省は、そのような意図は全くなく、マスコミに流されたことは遺憾だと答えたという。私たちが「オスプレイと飛行訓練に反対する東日本連絡会」の防衛・外務省交渉の際、何度かマスコミ報道の真偽を問うたが、防衛省はその度に「決定した事実はない。あらゆる選択肢で検討している」と答えてきた。しかし田中紀子木更津市議(きさらづ市民ネット)は、今回の市議会基地政策特別委員会での防衛省の説明では「民間空港を除いた陸、海、空の46基地の中で、1500メートル以上の滑走路を持ち、大きな施設整備をせずに17機を収容でき、佐世保に給油なしで行ける基地」で選択したと言っており、調べてみるとマッチするのは木更津基地だけであり、はじめから木更津基地ありきであったのではないかと指摘する。

飛行訓練は関東全域に及ぶ
 暫定配備の説明では、(1)2019年度末に配備する。(2)17機全てが配備されると年間4500回程度離発着する。(4)配備後は他の自衛隊機同様に訓練を行う、としている。ここで問題になるのは、第一に暫定とはいつまでなのかが全く明らかにされず、恒久配備につながる懸念が大きいということだ。二つ目には木更津基地は滑走路が短く、基地上空で飛行機モードからヘリモードに転換することが困難な上、年間を通じて海側から強い西風が吹く日が多く、強風に弱いオスプレイは内陸からの進入を余儀なくされることも多いのではないか。さらに、木更津基地の訓練場などを明示した「木更津飛行場運用規則」によると、その訓練域は南房総全域、広くは関東地方全域が訓練空域となっており、こと木更津市や千葉県だけの問題では過ぎないということだ。防衛省の説明に対し、木更津市は「市民の声、議会の意見を聞きながら、千葉県とも連携して結論を出したい」としている。しかしマスコミ報道では千葉県は前向きに協議を行いたいとしており、両者のスタンスに差がある。市民、県民の暮らしの安全と安心を守るという、行政の基本をしっかりと堅持した対応を望みたい。また、木更津市と防衛省は6月に木更津基地周辺8地区の住民説明会を行ったが、市会議員さえ日時、場所を知らされないという中で行われた。8月3日には全市民を対象にした説明会も設営されてはいるが、「丁寧な説明を行った」という既成事実を作るためとみるのは穿った見方だろうか。


木更津駅前で暫定配備反対を訴える
(2019年7月3日)
遅れ続ける米軍オスプレイの機体整備
 木更津基地では2017年2月からSUBARUが受注し、普天間基地の米海兵隊オスプレイMV―22の定期整備が行われている。これまで3機が定期整備にやってきて、1機目は当初の説明の8ヶ月で終了するとしていた整備が、延びに延びて25ヶ月たってようやく2019年3月に終了し、2機目も既に1年以上経過するが終わっていない。整備拠点として年に5~10機の整備をすると言っていたものが、2年で1機の整備となれば、「機能不全」にあるといってもよい。防衛省はマニュアルの整備と部品の調達などで時間を要していると説明するが、かなり痛みが激しいということは想像に難くない。そのせいで、普天間基地のオスプレイの定期整備は全く進んでおらず、いわば「車検切れ」のオスプレイが全国を飛び回っている状態にある。
 安倍政権が進める日米軍事一体化の一つの現れと言えるこのオスプレイ配備について、木更津にも沖縄にも佐賀にも、そして橫田にも、「日本の空にオスプレイはいらない」という声と運動を一層強めていかなければならない。
(はらだよしやす)

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緊迫する中東情勢─海外派兵で自衛隊員を死なせてはならない!
戦争をさせない1000人委員会事務局長 弁護士 内田雅敏


戦争法に反対し国会前で大集会
(2015年8月30日)
 2016年8月31日、安倍首相は、ジャーナリストの田原総一郎と面談し、いよいよ憲法改正ですねと水を向けられたところ、「大きな声では言えませんが、改憲する必要はなくなったんです」と答え、日本が「集団的自衛権を行使出来ないから日米同盟がうまくいかない」と米国が不満を示していたが、2015年9月19日集団的自衛権行使容認する安保関連法が成立したことによって「米国は何も言わなくなった。満足したのだ」と解説したという(2018年10月17日付毎日新聞)
 2014年7月1日の閣議決定による集団的自衛権の行使容認、これを受けての翌2015年9月19日未明の安保法制の強行採決という憲法破壊、法の下剋上が2000年10月に発せられた第一次アーミテージリポート以来の米国の改憲要求の延長上にある。安倍首相の田原に対する「安保法制の成立で憲法改正の必要性がなくなった」という述懐は、そのことを裏付け、同時に、安倍首相自身が、集団的自衛権行使容認の閣議決定が憲法上如何なる意味を持つものであるかを十二分に認識していたことを示している。

もっと米国に貢献を!武器を買え!!
 「憲法上、集団的自衛権行使は許されない」とする従来の政府見解が覆る日本の安全保障政策の根幹の変更について、2015年4月23日リチャード・アーミテージ元米・国務副長官は、朝日新聞のインタビューに応じて以下のように満足げに語る。

―安倍政権は集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈を変更し、新たな安全保障法制も整備しました。
 「以前は日本と作戦計画や演習について議論すると『憲法9条があり、自衛隊は制約を受けている』と頻繁に聞かされた。(法整備した)15年以降、そのような発言は聞こえてこなくなった。集団的自衛権行使の禁止を我々は『同盟協力の妨げや障害だ』と指摘はしたが、どうするかは日本の判断だと言ってきた」、「日本の対応は大きな一歩だと評価している。ただ完全ではない。私は日本が敵基地攻撃能力を保有するのに賛成だ。」

―専守防衛の日本は『盾』の役割で、米国が『矛』を提供するとされてきました。
 「私は安保条約改定が好ましいとは思わない。条約改定論が出てくれば、米議会や日本の国会で厄介なことが起きかねない。日本が矛を持つことを懸念する米専門家はいるが、私は賛成。そうすれ日米で二本の矛を持つことになる。周囲には中国や北朝鮮など競争相手が存在している」(2018年4月24日朝日新聞)。

 アーミテージらは、2018年10月の第4次アーミテージリポートで、日本は国内の安全保障法制を改正し、集団的自衛権の行使を可能にし、その安全保障の備えを改善し、より積極的な地球的関与戦略を採用しアメリカと日本の国家指導者たちは緊密な個人的結びつきを享受し、それは両国関係の安定装置として機能していると述べ、日本の防衛政策の根幹の変更を歓迎しつつ、更に、「日本はそれ自身の防衛支出と受け入れ国支援への貢献との両方により、同盟の防衛協力に多大の貢献をしている。以前の推計は日本政府が在日米軍の維持費の約75%を支払っていることを示してきた。今年だけでも、日本政府はとりわけ同盟関係の支出として費用分担に1970億円(17億ドル)、米軍再編に2260億円(20億ドル)、自治体の各種支援に2660億円(24億ドル)の予算を組んだ。この同盟へのこれらの実際に重要な貢献は無視されるべきではない。それにもかかわらず、日本の防衛費を増やし、次の『中期防衛計画』と『防衛計画の大綱』にそれを反映させることが重要であろう。
 中国の能力と野望の増大は、北朝鮮の核とミサイルの脅威とともに、日本が防衛のために国内総生産(GDP)の1%を超えて支出することを必要としよう」と、中国、北朝鮮の脅威を煽り(敵対的依存関係)、軍事費の増大すなわち、今以上に米国からの武器の爆買をせよと迫っている。
 トランプ大統領も米国からの武器爆買をする安倍首相を称え、更に日米安保条約では米国は日本の防衛義務を負うが日本は米国の防衛義務を負っておらず不公平だと不平を鳴らし、今でさえ日本側の負担が重い在日米軍の駐留費についてその全額を負担せよと迫っている。

血を流すことになる自衛隊員
 そして「有志連合」構想である。米国は、中東からの現油輸送の大動脈となっているイラン沖のホルムズ海峡とイエメン沖のバブルマンデル海峡の航行の自由を確保するため多国籍の「有志連合」結成する検討に入ったという。専守防衛の防衛政策をかなぐり捨てた日本は、もはや日米安保条約における「極東の範囲」などという議論は吹っ飛び、「有志連合」への参加を拒むことは出来ない。海外派兵された自衛隊員の死者が出るのは時間の問題である。
(うちだまさとし)

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マイクロプラスチック問題
日本消費者連盟環境部会 栗岡理子


 プラスチックによる海洋汚染が深刻です。米ジョージア大などの研究チームによると、2010年に海に流れ込んだプラスチックは470万~1270万トンです。この数値をもとに計算すると、2050年には海のプラスチック量は魚より多くなるそうです。 

マイクロプラスチックとは
 マイクロプラスチックは5ミリ以下のプラスチックを指し、大きく2種類に分けられます。最初から5ミリ以下に作られたものを一次マイクロプラスチック、大きなプラスチック製品が劣化し、細かくなったものを二次マイクロプラスチックと呼んでいます。
 一次マイクロプラスチックには、レジンペレット(プラスチック原料の小粒)や肥料カプセル(肥料を入れた3ミリ程のカプセル)、マイクロビーズなどがあります。2018年6月、海岸漂着物処理推進法が一部改正され、洗顔剤などに研磨剤として入れられていた水に流すタイプのマイクロビーズは事業者が「使用の抑制に努める」ことになりました。しかし、ビーズソファやクッション、ぬいぐるみなどに入れられているマイクロビーズは規制されていません。海岸で直径1~2ミリ程のビーズが落ちているのを見かけることがあり、おそらくごみとして出されたビーズソファーなどの外側の布が運搬中に破れ、こぼれ出たものと思われます。
 合成繊維の衣類も二次マイクロプラスチックになります。洗濯中に排水と一緒に流れる繊維クズは下水処理施設で処理しきれずに一部が川へ放流され、海へ流出します。衣類乾燥機から大気中に放出される繊維クズも同様で、その多くは雨で洗い流され、やがて海へ流れ込むと考えられます。

マイクロプラスチックの影響
 海にはかつて流したPCB(ポリ塩化ビフェニルの略称。人工的に作られた、主に油状の化学物質のこと。)やDDT(強力な殺虫効果が認められた有機合成殺虫剤。日本では1981年に第一種特定化学物質に指定され、製造・輸入が禁止された。)などの有害物質が溜まっています。プラスチックはそれらの化学物質をスポンジのように吸着します。また、プラスチック自体にも紫外線吸収剤や難燃剤、可塑剤等の化学物質が添加されているため、それらが流れ出すことで、海を汚染します。添加剤の中には環境ホルモンなど有害性が指摘されているものも少なくありません。海の化学物質を吸着したマイクロプラスチックは、食物連鎖に入り込み、魚介類を通して人間にも還ってきます。人間がマイクロプラスチックを食べても大半は便として排出されるので、今のところ健康への影響はないといわれていますが、研究はまだ始まったばかりで、確かなことはわかりません。
 東京湾で捕ったカタクチイワシの8割からマイクロプラスチックが見つかっています。サンゴや動物プランクトンも、マイクロプラスチックを食べることが知られています。

危険なマイクロカプセル
 最近知られるようになったマイクロプラスチックに、柔軟剤などに入れられるマイクロカプセルがあります。目に見えない程小さなカプセルに、香料などが入れられ、カプセルが徐々にはじけて中身が出ることで効果が持続するように作られています。これは「香害」を助長するのみならず、カプセルの被膜剤にウレタン樹脂やメラミン樹脂などが使われていた場合、樹脂から発生する化学物質の影響が懸念されます。例えば、ウレタン樹脂からは強毒のイソシアネートが、メラミン樹脂からはホルムアルデヒドが大気中に放散する危険性が指摘されています。また、はじけたカプセルの破片が0.5マイクロメートル以下になった場合、鼻毛を通過し肺胞に入り込み、血管を通して全身の臓器に入り込む可能性があるそうです*。
※古庄弘枝『マイクロカプセル香害』(ジャパンマシニスト社)より

対策はプラスチックの安易な使用を避けること
 マイクロプラスチックは、北極海の海氷や深海底からも大量に見つかっています。最近では、ピレネー山脈の辺境の山地に毎日1平方メートル当たり平均365個のマイクロプラスチックが降ることが観測されました。
 プラスチックごみの散乱はポイ捨てだけでなく、カラスがごみ集積所を荒らすことでも起きるので、誰もが原因者になり得ます。また、合成繊維やマイクロカプセルを使用した製品など、使用者が気付かないうちに発生させているケースもあります。
 先般、日本が策定した「プラスチック資源循環戦略」には2030年までに使い捨てプラスチックを25%減らすことなどが盛り込まれましたが、海外のとりくみに比べ消極性が際立ちます。
 私達にできることは、使い捨てプラスチック(ペットボトルやストロー、ラップ等)を使わないこと、衣類や寝具、食器洗い用タワシなどもできるだけ自然素材にすること、そして化学物質(柔軟剤や消臭剤、殺虫剤等)の使用を控えることなどが考えられます。
 マイクロプラスチックは化学物質と絡み合い、私たちの暮らしを脅かし始めているのです。
(くりおかりこ)

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特定技能の廃炉作業は当面見送り
外国人労働者の除染作業を容認する国の姿勢を許すな!
全統一労働組合 佐々木 史朗


除染作業に従事させられる技能実習生
 入管法の改定によって新たに在留資格「特定技能1号・2号」が制定され、2019年4月から受け入れが始まった。特定技能は、技術移転・国際貢献を建前とする技能実習制度と併行して、人手不足の解消・単純労働受け入れの手段として5年間に34万人もの外国人労働者の受け入れを予定している。

除染労働をあっさり容認
 受け入れ開始の直前、法務省は2019年3月20日に「特定技能運営要領」を公表。あわせて各分野ごとの受入基準が所轄官庁によって示された。そして国土交通省は、「建設分野の受入基準」で、特定技能外国人が除染作業に従事する可能性について、「差し支えない」と明言した。
 技能実習生が除染業務に従事させられた事件が明るみに出され、送り出し国を含んで大きな社会問題となったことから、政府は2018年3月、法務省、厚労省、技能実習機構の連名で、除染は海外で行われるものではなく技術移転に該当しないとして、技能実習生の除染作業を禁止する通達を発した。
 ところが、特定技能では、除染は(なぜか除雪と並べて)建設作業ではないとして、主たる業務としては認められないとしつつ、しかし「同じ特定技能所属機関に雇用され、特定技能外国人と同様の業務に従事する他の技能者が従事している場合」は、「特定技能外国人に同様の範囲内で従事させることは差し支えありません」として、除染労働への従事をあっさりと容認したのである。
 この受入基準を根拠に、東京電力はすぐさま、ゼネコンなど協力企業各社に対して、特定技能外国人を福島第一原発の廃炉作業に投入する方針を明らかにした。東電は建設以外にも、ビルクリーニング、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、自動車整備、外食産業などの職種で、一定の業務遂行能力と日常会話程度の日本語力があれば、原発構内の放射線管理区域で就労させてかまわないと通知したのである。
 東電の外国人投入方針は、4月18日付朝日新聞で報道され、各方面に衝撃が広がった。除染作業や廃炉作業には、電離放射線障害防止規則(電離則)による放射線の基礎知識、被ばくリスク、安全対策、関連法規などの特別教育が必須とされている。外国人の日常会話程度の日本語力では、十分に理解できる内容ではない。実際に、高線量区域で作業指示が明確に伝わるのか。現場では少々のコミュニケーションミスでも重大事故に直結する。

労働者の安全・健康への配慮はどうなっているのか
 原発構内の作業では、5年間で100ミリシーベルトまたは1年間50ミリシーベルトが被ばく限界とされている。では、帰国した後の健康不安について、いったい誰が、どのようにフォローするのか。放射線管理手帳は国境を越えた被ばく線量の記録に対応しておらず、多言語化もされていない。そもそも、日本政府は、送り出し国に事前に説明し、「差し支えない」との了承を得たのか。
 5月16日、国会エネルギー調査会(準備会)は、この問題で集中ヒアリングを行ったが、出席した東電、法務省、国交省、厚労省の実務担当者たちは、これらの質問にまともに答えることができなかった。
 外国人労働者の被ばく労働の強制について不安が高まる中、労働安全に責任を持つ厚労省は、5月21日に東電に対して「東京電力福島第一原子力発電所における外国人労働者に対する労働安全衛生の確保の徹底について」との通達を発し、「日本語や我が国の労働習慣に不慣れな労働者」に対する安全衛生管理体制の確立を求め、「極めて慎重な検討を行う」よう指示した。そして東電は、厚労省通達を受けた翌日、「当面の間、発電所での特定技能外国人の就労は行わない」との声明を発した。
 しかし、「当面見送り」だけでは解決しない。東電は方針を撤回したわけではなく、一時的な留保にすぎないからだ。そもそも、厚労省の通達は福島第一原発についてのものであり、除染作業一般については「差し支えない」とされたままである。
 原発事故から8年を経過した今も、除染により大量に生じた汚染土は中間貯蔵施設に仮置きされたままで、フレコンパックの劣化も深刻だ。除染に伴う被ばく労働はこれからも続く。特定技能労働者を低賃金で雇い、除染作業に従事させ、用済みとなったらさっさと帰国させるような、外国人労働者の使い捨て、人権侵害を許してはならない。
(ささきしろう)

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2020年核不拡散条約再検討会議に向けて
藤本泰成 フォーラム平和・人権・環境共同代表

 2019年6月18日に刊行された、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の年鑑(Yearbook2019)では、核保有国9カ国が持つ2019年1月時点での核弾頭の数は、2018年の発表より600発減って総数1万3865発となりました。新戦略兵器削減条約(新START)による米国とロシアの削減数が大きいものと思われます。一方で年鑑は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘し、核兵器の脅威は新たな段階に進んでいることが懸念されます。米トランプ政権の核態勢の見直し(NPR)などの方向性は、戦術核兵器の小型化や艦船へ搭載可能な核ミサイルの開発、サイバー・宇宙攻撃を想定し、核兵器開発競争を再燃させるものです。これらは、核兵器の限定使用を可能し、核兵器のあり方を根底から覆すものです。
 米トランプ政権は、「米国第一主義」「力による平和」を掲げ、威圧的、挑発的な姿勢に終始し、世界平和の脅威となっています。2018年5月には、イランとの「核合意」から、2019年2月には、ロシアとの「中距離核戦力(INF)全廃条約」から一方的に離脱を表明しました。米国とロシアの間では2021年に期限切れとなる新STARTの延長問題があります。また、米国とイランとの対立は、イスラエルやサウジアラビアなどを含めて、中東情勢の混乱を招くものです。これまでのトランプ政権の来し方は、世界がこれまで作りあげてきた核廃絶への枠組みを崩壊させるものです。現在の核をめぐる情勢は、極めて危機的であり、国連軍縮部門トップの中満泉国連事務次長は、再検討会議準備会合を前にした2019年4月2日、国連本部において「核使用の可能性は高まっている」と発言し、強い懸念を示しています。

核なき社会に背を向ける日本政府
 非核保有国122カ国で採択され、署名・批准が進んでいる「核兵器禁止条約」に対して、米国のロバート・ウッド軍縮大使は、国際情勢を無視した条約は「一つの核兵器も削減できず、重要な問題から目をそらすだけ」「危険な努力だ」と述べ、真っ向から反対しています。日本政府は、(1)日本の安全保障に重要な役割を果たす米国の核抑止を否定する、(2)条約が核保有国と非保有国との対立を生む、との理由から核兵器禁止条約は署名・批准しない方針をとっています。核廃絶NGO連絡会(被団協、ICAN、原水禁、創価学会平和委員会などで構成)との意見交換会では、外務省の担当者は、口をそろえて「日本政府と市民の皆さんとは、核なき世界を目指していくことで一致している」と繰り返し発言しています。辻清人外務大臣政務官は、核兵器禁止条約への日本の立場に言及して、「核保有国が核を手放すようにすすめていくためには、核保有国・非保有国両方の協力が必要だ。そのアプローチの中では、核禁止条約には賛成できない」と主張しています。多くの核兵器非保有国が核兵器禁止条約に署名・批准していく中にあって、核保有国は核兵器禁止条約を核兵器廃絶のプロセスに対する障壁のように利用しているのではないでしょうか。核兵器禁止条約を対立の全面に押し立てることによって、核兵器廃絶へのとりくみを牽制しています。それに対する大きな役割を担っているのが、日本政府のような立場に立つ国々です。米国の核の傘の下に安全保障政策を形成する中で、核兵器廃絶へのアプローチに真剣にとりくむとは考えられません。2020NPT再検討会議の第3回目の準備会合は、米国とロシアの対立、米国とイランの対立、そして核保有国と非保有国の対立の中で、再検討会議の方向性を決める「勧告案」を採択することはできませんでした。2015NPT再検討会議では、最終の合意文書をまとめることができず、2020年も同様の結果では、NPT体制そのものの意義が問われます。NGO連絡会との意見交換会の冒頭、辻政務官は「唯一の被爆国である日本には、核のない世界を作るために、世界をリードしていく責任があります」と述べています。河野太郎外務大臣も、「核軍縮と核不拡散に関するストックホルム会議」後の記者会見で、「各国間の対話の促進と具体的な核軍縮のとりくみの進展に貢献したい」とその意気込みを語っています。対立から対話へ、核兵器の先制不使用宣言、即時警戒体勢の解除、核の透明化、核兵器の削減、新START、CTBTの発効など様々なアプローチの構築は、日本政府の責任と言えます。


核兵器廃絶のために全力を尽くそう
 外務省は、NGO連絡会の問いに「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核保有国を追い詰めていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。
 原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万人署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。
(ふじもとやすなり)

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米ロ核削減条約完全消滅?

 日本において核禁止条約についての関心が高まる一方、世界の核兵器の90%以上を保有する米ロの核戦力に関する条約がピンチです。両国の核兵器について法的拘束力を持つ制限が消滅する可能性が大きくなっています。そうなれば、1972年以来のことです。現在米ロ両国の間にある核削減関連条約は二つです。一つは、1987年「中距離核戦力(INF)」全廃条約。もう一つは、新「戦略兵器削減条約(START)」(2011年発効)です。前者は、2月に米国が破棄の意向をロシアに通告し、義務履行停止を発表、これにロシアも義務履行停止で応じ、6か月後の8月初めに失効予定です。後者は、2021年2月に失効します。5年間の延長が可能ですが、延長交渉は進んでいません。

画期的な役目を果たしたINF条約、失効へ
 旧ソ連が1970年代末に西ヨーロッパを射程に入れた新型中距離弾道ミサイルSS-20を配備したのに対応して、1979年、北大西洋条約機構(NATO)は、米ソに交渉を求めると同時に、米国の地上発射巡航ミサイル「トマホーク」と中距離弾道ミサイル「パーシングII」の配備を1983年末から欧州で開始するとの「2重決定」を行います。緊張が高まるなか、レーガン大統領とゴルバチョフ大統領が1987年末に署名し、翌年発効したのが射程500~5500kmの地上発射弾道・巡航ミサイルの生産・実験・保有を禁じたINF条約です(核弾頭と通常弾頭を区別しない)。それまでの戦略兵器制限交渉(SALT)は、その名の通り、戦略兵器の配備増大の上限を定めるものでした。INF条約は、戦略ミサイルに関するものではありませんが、厳しい査察体制の下で一つの範疇のミサイルを完全に廃棄することを決めたという点で画期的なものでした。これは、1991年の「戦略ミサイル削減条約(START)」の基礎を築くものとなりました。条約により、米ソ合わせて2692基がのミサイルが破棄されました(米側846基、旧ソ連側1846基)。

INFで破棄されたミサイル

出典:Arms Cntrol Association

 米国は2014年以来、ロシアがINF条約に違反していると主張していましたが、2017年11月にこれが、核・通常両用の9M729(SSC-8)地上発射巡航ミサイルの実験・配備のことだと明らかにしました。今年2月の条約破棄通告はこの違反を理由としています。ロシアは米国側の指摘を否定する一方、米国がルーマニアに配備し、ポーランドでも配備を計画しているイージス・アショアの発射装置MK-41が将来、INF違反の巡航ミサイルの発射に使われうるとの懸念を表明しています。また、米国は、中国がINF条約に制限されずに中距離射程のミサイルを保有していることにも不満を表明しています。ロシアも2007年以来、条約を多国化するべきと主張しています。このような中、INF条約は、失効することになりそうです。

最後の砦、新START条約を救えるか?
 残るは、戦略核兵器の上限を次のように定めた新START条約です。配備運搬手段700基(大陸間弾道弾(ICBM)発射装置、潜水艦発射弾道弾(SLBM)発射装置、それに核兵器搭載可能重爆撃機の合計)。非配備を合わせると800基。配備核弾頭は、1550発。ただし重爆撃機は1基1発との勘定です。期限の2018年2月5日までに、米ロ両国とも、この規定を達成しました。両国が交換した最新データは、2019年3月1日現在、米国が配備発射機656基、核弾頭1365発、ロシアが524基、核弾頭1461発を保有していることを示しています。これは前述の特殊な数え方のため、実際の核弾頭の保有数とは異なります。米科学者連合(FAS)は、米ロの現在の戦略配備核弾頭数をそれぞれ1600発、軍用保有核合計を3800発及び4330発、解体待ちを入れた総数を6185発及び6500発と推定しています。
 ロシアは、米国による戦略運搬手段の非核化が検証できないとし、米国はロシアの型破りの新型核兵器が条約の対象になっていないと不満を表明してきました。トランプ政権は、中国を含めた条約の交渉を呼びかけていますが、保有核兵器数300発ほどと推定される中国はそのような状況にないと参加を拒否しています。米ロだけの交渉でも、残された期間に新START条約のような相互査察などの検証措置を定めた新たな条約が締結できる見込みは乏しく、まずは、上院の承認の必要もない5年間延長を実現したうえで、その後の条約について検討する方が現実的でしょう。
 民主党が多数を占める米下院は、国防予算の大枠を決める国防権限法案(NDAA)を7月12日に採択した際、低威力で、使用される可能性を高める新型核弾頭を戦略原子力潜水艦に配備することを禁じるとともに、核兵器を先に使用しないとの先制不使用策に関する独立の報告書の作成要請に加え、新START条約の延長支持表明の文言を入れています。同法案は、米国の平和運動の焦点を象徴するものともなっています。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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《投稿コーナー》 国連女性差別撤廃条約「選択議定書」を批准しないと始まらない!
中村ひろ子(I女性会議 事務局長)

 女性差別撤廃条約実現アクションは、去る3月6日にキックオフ集会を開き、「国連女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求める請願署名」にとりくみました。5月末時点で5万2184筆を集め、6月初め国会に提出しました。しかし、女性活躍推進と言いながら本気ではない安倍政権は、とりあげることなく、審議未了となりました。
 実現アクションは、I女性会議を初めとする女性の人権問題にとりくんできた46の団体で構成されています。労働問題にとりくんでいるナショナルセンターの3つ、連合総合男女・雇用平等局、全労連女性部、全労協女性委員会が名を連ねていることでお分かりいただけるように、現在の日本では、最高裁まで争っても解決できない男女賃金差別問題が存在し、平等を求める多くの声があるということです。先の署名運動では、ナショナルセンターが力を発揮するには至りませんでしたが、課題であることの共通認識はできていますから、これから盛り上げていけるものと思っています。

選択議定書とは何?
 1979年に成立した国連女性差別撤廃条約は、あらゆる分野で、女性が性にもとづく差別を受けない権利と平等の権利を保障しています。多くの国で批准され、法整備はされましたが、「女らしさ」「男らしさ」といった社会慣習・慣行は一朝一夕にはなくなりません。そこで、1999年、条約の実効性を強化し、1人ひとりの女性が抱える問題を解決するために選択議定書が作られました。
 選択議定書には、2つの制度、個人通報制度と調査制度があります。
<個人通報制度>は、(1)女性差別撤廃条約で保障されている権利が侵害されたとき、女性差別撤廃委員会(CEDAW)に通報することができます。個人でも集団でもできますが、国内救済措置が尽くされていることが条件です。(2)委員会から当該国にこのような通報がありましたがどうなのかと問い合わせがあります。(3)当該国は、反論します。(4)その反論を受けて、委員会は受理するか検討します。(5)受理したら、検討・審査をします。(6)委員会は、見解(勧告)を国と通報者に通報します。(7)当該国は6ヵ月以内に回答書を提出しなければなりません。
<調査制度>は、女性差別撤廃委員会が、女性差別撤廃条約に定める権利の、重大または組織的な侵害があるという信頼できる情報を得た場合に、当該国の協力の下で調査し、国に調査結果を意見・勧告とともに送付する制度です。
 この選択議定書を批准しているのは109ヵ国で、条約批准国189ヵ国の6割弱しかありません。日本も批准していませんが、批准したら、どう変わるのでしょう。
※裁判所(司法)が、女性差別撤廃条約を裁判に適用するようになります。*国会(立法)が、性別に基づく差別的法制度を見直し、差別をなくすための法整備が進みます。*国・地方自治体(行政)が、差別された個人を救済するための方策をとるようになります。*個人やNGOが、ジェンダーに基づく無意識の偏見や差別をなくすために、条約を活用して世論を喚起できます。*ジェンダー平等と女性の権利の国際基準が私たちのものになります。
男女賃金差別事件で、夫婦別姓訴訟で、差別を認定されなかった女性たちが、CEDAWに通報して、救済される道を待ち望んでいます。
一部上場企業の男女賃金差別を提訴したものの認められなかったAさんの例を紹介します。Aさんは、高い営業成績を上げながらも、13年間昇格しませんでした。一方、12歳若い男性が昇格していったので、訴えたわけですが、一審は敗訴。二審は男女賃金格差を認めながら、(1)賃金は男女間で層として明確に分離していると言えない。(2)職能等級制度や人事考課に男性と女性で取り扱いを異にする定めはない。(3)人事考課制度には、考課者研修や本人へのフィードバック等があり公正が担保される。(4)女性は管理職を敬遠する傾向がある、等として、企業の裁量権の範囲としました。最高裁では、「これほど明確な男女間の資格分離は統計学上偶然では起こりえない」との労働経済学者の意見書も提出しましたが、棄却。
日本でたたかう術がなくなったAさんは、早く選択議定書が批准され、個人通報制度でCEDAWに通報し「日本の司法判断はこれでよいのか」問いたいと待ち望んでいます。
 6月に提出された請願署名は審議未了となりました。実現アクションでは、この秋にも署名活動を続け、さらに多くの人の賛同を得て、選択議定書の批准につなげたいと考えています。フォーラムに参集されている皆さまのご協力をお願いします。
(なかむらひろこ)

※選択議定書をわかりやすく解説したリーフ(1部5円)を用意しています。グループでの勉強会にスタッフを派遣することもできます。フォーラムを通じてご連絡下さい。

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加盟団体の活動から(第18回)
女性の視点で社会を変える
I女性会議 池田 万佐代

 私たちが目指すのは"平和と人権が守られ、女性が自分の能力を十分に発揮でき、生きやすい社会"です。女性が生きやすい社会は、男性にとっても人間らしく働き、くらせる社会です。私たちは平和憲法・女性差別撤廃条約・女性に対する暴力撤廃宣言の理念を生かし、ジェンダー平等社会を実現するために活動しています。
■女も男もすべての人が人間らしく働き続けるために
雇用における差別をなくし、男女ともに生活と仕事が両立できる税制や法整備を求めます。現在、女性差別撤廃条約の実効性を高める選択議定書の批准を求める署名に取り組んでいます。
■リプロダクティブヘルス/ライツ
富士見産婦人科事件(1980年)への取り組みは、リプロダクティブヘルス/ライツの運動の出発点。現在はHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)による被害や旧優生保護法による人権侵害を問題とし、医療のあり方、女性の生殖や健康における自己決定権の確立を目指しています。
■あらゆる女性・子どもへの暴力をなくす
復帰前の沖縄に調査団を派遣して以来、軍事基地と女性への暴力、人間の尊厳を守る運動をつづけてきました。子ども買春、DV、そして現在の#MeToo#Withyou運動へとつながっています。
■せっけん運動から環境問題そして脱原発で持続可能な社会へ
加盟団体の活動から(第18回)女性の視点で社会を変えるI女性会議池田万佐代
1970年代から合成洗剤が人体や河川を汚染することを明らかにし、安全な粉せっけんを開発。あらゆる環境破壊や食の安全への活動をひろげてきました。そして今、脱原発政策への転換と、原発事故被災者への避難・保養・健診・治療の保障を求めています。
■日本の侵略戦争の反省に立ちアジアの平和を求めて
侵略戦争、植民地支配の歴史に学び、アジアの人びとの交流・連帯、日本軍慰安婦問題や戦後補償の実現を求めてきました。武力によらない安全保障をめざしています。
■女性の政治参加で社会を変える
以上の運動を政策決定の場に積極的に持ち込み、実現するために、地方議会や国政に女性議員を送り出しています。女性の視点で政治や社会を変えるのがI女性会議の運動です。
(いけだまさよ)

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〔映画の紹介〕
『主戦場』
監督・脚本・撮影・ナレーション ミキ・デザキ

 政権に忖度するような主要メディアには取り上げられませんが、製作、上映する側の覚悟がつたわってくるような映画が上映されています。
 人気俳優の主演する「新聞記者」。参院選の時期にあわせるように、大手のシネコンで全国的に上映しているイオンも、ドキュメンタリー映画「主戦場」配給の東風も、自主上映も含め地味なドキュメンタリーも多く配給するなど活躍しています。
 物議を醸す論争―慰安婦たちは性奴隷だったのか?日本軍による強制連行は本当にあったのか?日本政府の謝罪と法的責任とは...?といった大きな疑問を、35歳の日系アメリカ人のミキ・デザキ監督が、第三者の視点から論理的に、かつテンポよく紐解いていきます。櫻井よしこ、藤岡信勝など、慰安婦問題を否定する人々からは、「従軍慰安婦」を金目的の売春婦だとする主張が語られ、映画の画面の中に客観的な引用として映されます。これに対する丁寧な反証も、客観的映像が映され、「性奴隷」の定義など、論争点が、隙なく明確に論証されて行きます。反論を述べる人々の中には、平和フォーラム関係の催しでもおなじみの面々が登場。中でも中野晃一先生の英語での発信力には感服です。問題はなかったと得々と、無邪気・無恥に発言した人々は、後になって意図に反してインタビューを「商用映画」に悪用されたなどと訴訟を起こしていますが、この映像自体が明らかな証拠として裁判の前から完敗の様相。この論争への挑戦には、相当丹念な事前調査などの準備があったと思われます。デザキ監督は、元朝日新聞記者の植村隆さんが慰安婦問題の記事に関して「ネトウヨ」から誹謗中傷され、家族までもが被害にあっていることを知ったことがきっかけで、日韓での論争を疑問に思い、さらには問題自体を否定しようと、歴史を修正しようとする人々と出会ったことで、なぜこれほどまで歴史を変えようとするのか、という疑問を追求したといいます。そして国際関係学を学ぶ上智大学の修士課程のテーマとして取り組んだという、まさに修士論文のような組み立て。日本政府の中枢がこの「歴史修正主義」に乗っかてしまっている日本の状況に対する、調査報道のお手本のような作品。もう一度見ようと思います。
上映中:http://www.shusenjo.jp/
(金生英道)

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核のキーワード図鑑


原発やめないアベ政権つくる核のゴミの山

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パンフ「2019核も戦争もない21世紀へ 核問題入門」

第74回原水爆禁止世界大会に向けたパンフを発行しました。学習会等での参考資料としてご活用ください。
★核兵器廃絶にむけて
核兵器とは/いま核兵器が使われたらどうなるか/核実験の歴史/世界の核兵器/核不拡散条約(NPT)上の核兵器国の状況/NPT枠外の核保有国の核政策/日本の核政策/核軍縮交渉の現状/非核兵器地帯とは/東北アジア非核兵器地帯とは/広がる「核兵器の非人道性」への認識/核兵器禁止条約が成立/核兵器廃絶に向けた自治体の動き/新たな核軍拡を食い止めるために2020年NPT再検討会議を生かす
★脱原発に向けて原発回帰か脱原発か/なぜ脱原発か?/福島原発事故が教えるもの/「廃炉の時代」へ/破綻する核燃料サイクル/六ヶ所再処理工場を止めよう/放射性廃棄物のゆくえ/原発輸出という失策/やっぱり脱原発
★ヒバクシャの現状と課題ヒバクシャをつくらないために/被爆体験者とは/在外被爆者とは/被爆二世問題とは/原水禁運動の出発点・ビキニ水爆実験/ビキニ水爆実験の影響/大気圏内核実験による被害とは/原発、核兵器製造サイクルが生みだす核被害/原発事故による被害とは/ニュークリア・レイシズム
★表紙イラスト/橋本勝体裁:A5版80ページ発行:原水爆禁止日本国民会議/フォーラム平和・人権・環境原価:500円(送料別)

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