イラク情勢Watch vol.17 05年11月7日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲

       毎週更新(予定)


Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)イラク人女性、ザルカウィ容疑者に治安部隊からの保護を嘆願?
3)イラク下院議会議長、米軍による女性拘束を批判
4)イラクから脱出するパレスチナ難民達
5)米人権団体、旧政権を裁く特別法廷の警備の甘さを批判



1)週間イラク報道Pick up

【05.11.7 読売】イラクとアル・カーイダ結びつき情報、作り話か

【05.11.7 時事】チャラビ氏、米国務長官らと会談へ=イラク次期首相有力候補に

【05.11.6 時事】サマワの公園で爆発音=負傷者なし、陸自復興施設−イラク

【05.11.5 読売】米・イラク両軍、シリア国境で「鋼のカーテン」作戦

【05.11.2 産経】多国籍軍 イラク駐留延長決議案 米英、安保理理事国に提示



2)イラク人女性、ザルカウィ容疑者に治安部隊からの保護を嘆願?

 11月3日、国際テロリストで、アルカイダ幹部とされるアブムサブ・ザルカウィ容疑者を名乗る人物*1は、パレスチナ系イラク人*2だという女性から家族を刑務所から救出することと、女性達を「キリスト教徒」や「シーア派」から護ることを嘆願された、
との声明を発表した。

 イスラム原理主義系サイトで発表された声明によると、この女性は、「バドル軍団やゼエブ軍団が、自分とその姉妹に不名誉かつ冒涜する行為を行った」「奴らは毎日、我々を脅かし、夫達を刑務所に連れて行く」として治安部隊に加わるシーア派
民兵組織を批難。ザルカウィ容疑者やイスラム戦士達に「異教徒や裏切り者、諜報員を捕らえる」よう要求したという。 

*1 本当にアブムサブ・ザルカウィ容疑者がイラクにいるかについては、現地では懐疑的な意見も少なくなく、既に死亡したとする説もある。
 
*2イラクにはパレスチナ地方へのイスラエルによる軍事侵攻・占領から避難して来た難民達がいる。



3)イラク下院議会議長、米軍による女性拘束を批判

 先月23日、イラク国民議会下院のハジム・エル・ハサニ議長は、米軍がイラク人女性を拘束することを止めるよう要求、これらの行為が続けば、イラク人を怒らせ、治安状況がさらに不安定になると警告した。現地通信社「イラクの声」が伝えた。

 「イラクの声」の報道によると、先月8日、米軍はバグダッド南部ドーラ地区の住人で、Rafedeen 銀行に勤めるRaghad Laith Mohammedさんを拘束した。Raghadさんの父親の家を襲撃した後のことだった*。 

 さらに記事が書かれた前の週に、ファルージャでも、Sara Taha Khalaf el-Jomaily さんが彼女の幼い子どもと年老いた母親と共に拘束されたという。やはり、Saraさんの父親の家が襲撃された後の拘束だった。米軍は、子どもと母親は解放したものの、Saraさんを拘束し続けた。

 その後、ハサニ議長と米軍の協議が続けられ、結局Saraさんは解放されたという。
 
*記事原文には書かれていないが、標的の人物を拘束できなかった場合に身内の女性や子どもを連れ去る「人質作戦」であるように思われる。


            
         米軍がイラク人女性を拘束・虐待していることに対する抗議のオブジェ



4)イラクから脱出するパレスチナ難民達

 1948年のイスラエル建国以来、軍事侵攻・占領で、約397万人もの(02年国連統計)パレスチナ人が故郷を追われ、パレスチナ自治区内の他の地域や周辺国へ避難していった。イラクにも、2万3000人程のパレスチナ難民がいるとされているが、親パレスチナ政策をとっていたサダム・フセイン政権が崩壊した後、パレスチナ難民への差別や弾圧が見られるようになった。

 湾岸戦争後からイラクで活動する平和団体CPT(クリスチャン・ピース・チーム)のウェブサイトには、イラクの状況に絶望し国外脱出しようとするパレスチナ人家族のエピソードが掲載されている。

 CPTのスタッフ達は、10月4日から17日までバグダッドからシリア国境まで、国外脱出しようとするパレスチナ人家族達19人に同行した。シリア政府はイラクのパレスチナ人たちの入国を禁じているが、パレスチナ人家族は国境上にある国連の難民キャンプに留まり、入国許可を待っているのだ。

 何故、パレスチナ難民達はイラクから脱出しようとしているのか。まず第一にイラク移行政権下の治安部隊が、パレスチナ難民に対して、嫌がらせや令状なしの逮捕、そしてやってもない罪を自白させるための拷問を繰り返し、多くの人々が殺されたことが大きい。

 第二に、イラクでは一般市民もカラシニコフ銃などの銃器を所有していることが少なくないが、パレスチナ難民は銃を携帯することを許されていない。サダム政権崩壊以来、武装した犯罪者による強盗や誘拐などが増加し、人々の生活を脅かしている中、銃を持てないというのは、あまりに無防備なのである。

 第三、第四の理由は、彼らが2万3000人というイラクの中でのマイノリティーであり、政治的な力を持たないということ。

 第五の理由は、サダム・フセインがアラブ諸国の中で名声を得るため、パレスチナ難民を利用したこと。フセイン政権時代、パレスチナ難民は住宅への助成金を受けていたが、これが他のイラク人達の怒りを買う原因となった。フセイン政権後、多くのパレスチナ難民がアパートから追い出された。

 国境では、ひっきりなしに車の往来があるにも関わらず、パレスチナ難民の家族達は、彼らが久々に安眠できたとCPTスタッフ達に語った。イラクでは夜中でも銃声や治安部隊による家宅捜索に怯えなくてはいけなかったからだ。そして「もし、シリア当局が入国を認めず、イラクへ帰れと言ってきたらどうする?」とCPTスタッフ達の問いに、パレスチナ難民達は、「イラクには二度と帰らない」と答えたと言う。



5)米人権団体、旧政権を裁く特別法廷の警備の甘さを批判

 
著名な米人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)は、先月23日の声明の中で、サダム・フセイン政権幹部の弁護士であるサドゥーン・ジャナビ氏が、武装集団に拉致・殺害された事件に関して、強く批判する声明を発表した。

 フセイン元大統領ら旧政権幹部の戦争犯罪を裁く特別法廷の初公判である20日、ジャナビ氏はバグダッド市内の事務所にいたところを覆面をかぶった男達に拉致され、数時間後に射殺されているのが発見された。

 HRWは犯行によって公判が阻害されることを懸念。犯行グループだけでなく、充分な警備をジャナビ弁護士につけなかったイラク当局の対応も厳しく批判した。HRWは同月19日の声明の中で、特別法廷がフセイン元大統領ら被告らに不平等なかた
ちで進められることを懸念していたが、主な問題点の一つとして、「起訴側が厳重な警備体制を保障されているに対して、被告側のそれが充分でない」という点にも言及していた。


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