イラク情勢Watch vol.23 06年1月20日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲

       毎週更新(予定)


Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)イラク西部で軍事作戦、200家族が避難
3)米フリー記者拘束事件:イラク・イスラム法学者協会等が解放訴え
4)バスラ石油労働者組合、イラク石油事業の民営化に反対する
5)イラク内務省治安部隊の元司令官、スンニ派虐待を証言



1)週間イラク報道Pick up

【06.1.20 毎日】<CIA>声明はビンラディン容疑者 米、停戦提案を一蹴

【06.1.18 共同】「陸自攻撃」と虚偽声明 イラクの武装組織

【06.1.18 読売】米軍再編、3月最終報告を再確認…日米防衛長官会談

【06.1.16 共同】陸自撤退反対は66% サマワ住民調査

【06.1.12 産経】米のイラク統治 ブレマー氏、政権内対立“暴露”「軍増強拒否された」

【06.1.9 共同】「スンニ派8000人虐待」 イラク、元司令官証言


2)
イラク西部で軍事作戦、200家族が避難

 15日イラク西部アンバル州ヒート周辺で、軍事作戦「コア渓谷」が開始された。米海兵隊約1000人とイラク軍が参加、「武装勢力の拘束/殺害」「武器庫の発見」を作戦目標としている。ヒートはバクダッドから西に130キロにある都市で、イラクで殺害された日本人傭兵・斉藤明彦氏が拘束された近くとして知られ、米軍はこの一帯にアルカイダ系テロリストが潜伏していると見ている。

 IRIN(国連統一地域ネットワーク)が19日に報じたところによれば、付近住民200家族がヒートから約40キロ西に避難、イラク赤十字・新月社が支援を計画しているという。住民達は米軍やイラク治安部隊によってひどい扱いを受けたと苦情を申し立てた。「彼らはまるで我々を犯人扱いして尋問し、その間女性たちはバスルームに閉じ込められていました」と住民のアブ・カリーム氏は語る。 
 
 この苦情に対して、イラク内務省は「軍の兵士たちはイラクの安全のために働いているだけだ」と言うにとどまった。


3)米フリー記者拘束事件:イラク・イスラム法学者協会等が解放訴え

 今月7日、米国人女性フリージャーナリストのジル・キャロルさん(28)が
拘束され、17日に犯行グループからとみられるビデオがアルジャジーラで放映された問題で、日本人人質事件でも活躍した、イラク・イスラム法学者協会などイラク・イスラム法学者協会等が救出協力を申し出た。

 犯行グループ「復讐の旅団」はビデオの中で「72時間以内にすべてのイラク人女性を監獄から解放せよ」と要求。受け入れられない場合にはキャロルさんを殺害する、と警告した。

 これに対し、現地スンニ派有力組織で、日本人人質事件の際にも解放の立役者となったイラク・イスラム法学者協会の代表のハーリス・アル=ダリ師が「彼女は占領に批判的なジャーナリストの一人だ。最近はイラク政府の治安部隊による人権問題を熱心に取材していた」とキャロルさん開放を訴えた。

 アルジャジーラ(ウェブ版)が19日付けで伝えるところによれば、米軍はイラク人女性8人を拘束中で、イラクの人権省はそのうち6人を解放するよう勧告したという。同省筋がアルジャジーラに話したところによると、この勧告とキャロルさん拘束事件は無関係とのこと。

 イラクでは、昨年末頃から再び人質事件が頻発。イラクで長く人道支援活動を行ってきた「クリスチャン・ピースメイカー・チームズ」のメンバー4人も昨年11月30日に拘束され、安否が気遣われている。


4)バスラ石油労働者組合、イラク石油事業の民営化に反対する

 イラク南部の大油田地帯バスラの石油業界労組「バスラ石油労働者ゼネラルユニオン」は16日、イラクの石油関連事業の民営化に反対する声明を出し、世界の労働組合に連帯をもとめた。

 声明はサダム後のイラクの石油事業が、米国と多国籍石油企業に支配されていると指摘。「生産共有協定(PSAs)」によって、今後25〜40年、多国籍企業はイラク政府のいかなる介入もなしに自由にイラクでの石油事業を営むことができ、最低でもイラクの石油備蓄の64%が多国籍企業にもたらされるという。さらに、42%?162%の利益率を保障している。

 声明によると、バスラ石油労働者ゼネラルユニオンは、ストライキ活動により、石油関係労働者の賃金引き上げと待遇改善、ハリーバートン(チェイニー副大統領がCEOを勤めたことで有名)の子会社KBRを追い出すことに成功。イラク石油事業の民営化を止めることは、イラクの将来のために最も重要なことの一つと位置づけた。さらに、イギリスへ使節団を派遣するなど、国際的な連帯の強化を図るそうだ。

 バスラ石油労働者組合のサイト(ブログ)はこちら。
http://www.basraoilunion.org/


5)イラク内務省治安部隊の元司令官、スンニ派虐待を証言

 イラク内務省治安部隊の元司令官で、昨年7月にイラク隣国ヨルダンに亡命したムンタザル・サマライ元少将は、今月に入りアル・アラビーヤ放送や共同通信などのメディアのインタビューに応じ、シーア派民兵が主体とされる治安部隊がスンニ派住民を拘束・虐待していた問題について証言した。

 9日付けの共同通信の記事によれば サマライ元少将は治安部隊が「スンニ派住民8000人を虐待した」と証言。

 さらに、カタールの独立系ニュースサイト「イスラムオンライン」の16日付けの記事によれば、サマライ元少将は「治安部隊はバヤーン・ジャブル内務大臣の命令により創設された。数千人のバドル軍団(ジャブル内相が所属するシーア派有力政党SCIRIの民兵組織)のメンバーが治安部隊に編入され、内務省の高官はすべてSCIRI或いは、その他シーア派政党で占められていた。一方、囚人とされたのは全てスンニ派教徒だった」と指摘。「治安部隊は直接、ジャブル内相の命令で動き、法廷の手続きを経ずに人々をランダムに拘束して虐待を加えた」とジャブル内相の責任を強調した。

 スンニ派虐待問題については、イラク移行政権は「調査中」としているが、ザルメイ・カリルザード米大使も、「ジャブル氏は内務大臣として適役ではない」と非難している。ただし、イラク治安機関の設立、訓練には米軍も深く関わっており、米国の責任も追求されることは必至だ。


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