2020年2月アーカイブ

 新型コロナ感染が地球規模で広がり、4月下旬から開催予定のNPT再検討会議が延期される公算が強まっている。NPT発効から50年の今、核軍縮への道は険しさを増している。その一端が、ロシアが開発する新型核兵器運搬システムを誇示している姿に示されている。
 ロシアのプーチン大統領は2018年3月と2019年2月の年次教書演説において、米国のミサイル防衛システムを打ち破ることを目指して開発中の複数の核・ミサイル兵器を公表し、ロシアの軍事力を誇示した[注1]。ロシアはこれまでに、6つの新型核兵器運搬システムの開発を明らかにしている。2019年11月、米国の研究機関である核の脅威イニシアチブ(Nuclear Threat Initiative: NTI)は、プーチン大統領が発表したロシアの新型核兵器運搬システムについて分析した初の詳細な報告書を公開した[注2]。報告書はロシアの新型核兵器運搬システムをICBM、極超音速運搬システム、新型戦略兵器運搬システム(原子力推進システム)の3種類に分類している。以下ではNTIの報告書をもとに、ロシアの新型兵器について解説する。

新型ICBM:サルマート
 サルマートは液体燃料型のICBMで、後述するアバンガルドを含め、種類の異なる3~24個の核弾頭・通常弾道を同時に搭載できる。ロシアの従来のICBMは北極経由での米国攻撃を想定していたが、新素材によって軽量化されたサルマートの飛距離は16000km以上とされ、南極経由でも米国や欧州を攻撃できる。米国はこれまで北側からの攻撃を想定してミサイル防衛システム(MD)を整備してきたため、南側からの攻撃には新たな対策が必要となる。サルマートはブースト段階が短い新型エンジンを搭載し、発射の探知が困難とされるが、詳細は分かっていない。

極超音速運搬システム
 極超音速運搬システムはマッハ5(時速6100km)以上の速度で飛行する。従来の弾道ミサイルも極超音速で飛行するが、新型の極超音速運搬システムは低空飛行し、決まった弾道を描かず、飛行中の操作が可能である点に特徴がある。こうした特徴により、極超音速運搬システムはミサイル防衛システムを突破することができる。
 極超音速運搬システムにはICBMなどによって発射されグライダーのように滑空するタイプと、エンジンを搭載する巡航ミサイルタイプがある。極超音速兵器の使用するラムジェットエンジンはマッハ4~5の速度で動作するため、最初にロケットエンジン等で加速する必要がある。現在のラムジェットエンジンは数分しか使用できないため、その改良が課題である。また、極超音速での飛行は2000度以上の熱を生むため、それに耐える素材の開発や、高速移動中の通信システムの開発も必要である。

キンジャル
 キンジャルは固体燃料型のミサイルで、迎撃機ミグ31に搭載して空中発射され、マッハ5~10の極超音速で飛行する。フィンがついており、空力で飛行中の操作が可能である。ミグ31の片道飛行距離も含めると射程は2000kmであり、通常弾頭と核弾頭の両方を搭載できる。キンジャルは敵のミサイル防衛施設や空母などの破壊を目的としており、19年に試験配備が完了している。

アバンガルド
 極超音速滑空体のアバンガルドはICBMによって打ち上げられた後、上空で切り離され、マッハ20以上の速度でグライダーのように滑空する。また翼をもち、飛行中に方向を変えることができるとされる。アバンガルドは新型ICBMのサルマートにも搭載されることになっている。アバンガルドの開発は1980年代にさかのぼるとされており、2014年以降に加速した。ロシアは2018年12月にアバンガルドの発射実験に成功したとしているが、極超音速飛行に伴う高熱に耐える素材の開発や通信システムの構築が課題となっている。核兵器・通常兵器の搭載が可能で、ミサイル防衛システムや高価値ターゲットの破壊を目的としている。

ツィルコン
 ツィルコンは艦船や潜水艦から発射される極超音速巡航ミサイルで、マッハ5~6の速度で飛行し、射程は500kmとされる。固体燃料ロケットで発射され、加速後にスクラムジェットエンジンで極超音速飛行する。スクラムジェットエンジンの燃焼時間の延長や、高速に耐える機体の開発が課題とされている。ツィルコンは敵の空母や、沿岸部のミサイル防衛施設、指令センターなどの攻撃を想定している。

新型戦略兵器運搬システム(原子力推進システム)
 新型戦略兵器運搬システムは小型原子炉を動力として利用することで、これまでにない長距離の移動を可能とした核兵器であり、他国には存在しないシステムである。小型原子炉の開発は過去10年間に急速に進展し、ロシアは海上プラットフォーム、北極での石油採掘、そして新型兵器への小型原子炉利用を目指してきた。
 19年8月にロシア北西部の軍事施設で発生した放射性物質の拡散を伴う爆発事故は、新型戦略兵器運搬システムに利用する小型原子炉の開発に関係するものと考えられている。 

ポセイドン
 原子力推進核魚雷のポセイドンは核弾頭を積み、時速100~200kmの速度で、既存のどの潜水艦や魚雷よりも深い1000mの水深を進むことができる。小型原子炉を動力源とし、射程は1万kmに及ぶ。ポセイドンは潜水艦や艦船から魚雷のように発射される。ポセイドンの大きさは直径1.6m、全長24mで通常の魚雷の30倍であり、ロシアはポセイドン搭載用の潜水艦を開発している。ポセイドンは長距離の高速移動で大きなノイズを生むため探知は容易だが、深い水深を高速移動するため迎撃は困難と見られている。ポセイドンは核爆発や津波によって敵の空母や沿岸のインフラを破壊することを目的としている。

ブレベストニク
 原子力推進核巡航ミサイルのブレベストニクは、核弾頭を積み、亜音速で低空を飛行する。ブレベストニクには動力として小型原子炉が搭載され、固形燃料ロケットで発射・加速後、ラムジェットエンジンが吸入する空気を原子炉が1400~1600℃に暖めることで推進力を得る。射程距離は25000kmとされ、しばしば「無限」と形容される。
 原子力推進のミサイルや航空機のコンセプトは核時代の初期から各国が追及してきたが、迎撃された際や飛行中の故障による放射性物質の飛散といったリスクが高く、実現されることはなかった。ブレベストニクの実用化も困難が予想され、配備の予想時期は6種の新兵器の中で最も遅い2030年以降となっている。

<表>ロシアの新型核兵器運搬システム一覧

名称 兵器の種類と弾頭 最大速度・射程 配備時期
サルマート 液体燃料、多弾頭ICBM。
アバンガルドを含む異なる種類の核弾頭を搭載可
マッハ20以上
射程16000km
2022~2027年
キンジャル 極超音速空中発射弾道弾。
イスカンデルMの改良版。
核・非核両用
マッハ5~10
射程2000km(搭載航空機の片道飛行距離を含む)
2019年試験配備
アバンガルド 極超音速滑空体。
核・非核両用
マッハ20以上
射程6000km
2022年以降
ツィルコン 液極超音速巡航ミサイル
核・非核両用
マッハ5~6
射程500km
2025~2030年
ポセイドン 原子力推進核魚雷
核弾頭
時速100~200km
射程10000km
2027年以降
ブレベストニク 原子力推進核巡航ミサイル
核弾頭
亜音速
射程25000㎞以上
2030年以降

ジル・フラビー『ロシアの新型核兵器運搬システム:公開資料に基づく技術的分析』(核脅威イニシャチブ、2019年11月)より筆者作成。

重要性を増す新START(戦略兵器削減条約)延長と新たな核軍縮への枠組み作り
 ロシアが以上のような新型兵器の開発を公にするようになった意図として指摘されているのは、大統領選挙を控えるプーチン大統領がロシアの強さを国民にアピールしようとした説や、米国やNATOに対してロシアの軍事技術の発展を誇示しようとした説である。
 ロシアは西側諸国に配備されたMDによって自国の核兵器が無効化され、「相互確証破壊」による核抑止力が機能しなくなることを恐れてきた。新型兵器は極超音速、低空飛行、飛行中の方向操作、長大な飛行距離といった特徴により、従来のMDを突破することを目指している。また、2019年8月のIMF全廃条約失効を受け、ロシアは米国による中距離核戦力の配備を懸念しており、新型兵器には米国を牽制する意図があると考えられる。
 ただし、新型兵器はいずれも実用化に向けた技術的ハードルが高く、開発スケジュールは大幅に遅れている。2019年4月にサルマートの工場で発生した火災や同年8月の核事故は、開発を急ぐロシアが安全性を犠牲にしていることを示唆する。極超音速兵器は米中も開発に取り組んでおり、軍拡競争の激化や、開発や配備中の事故リスク増大の恐れがある。
 INF全廃条約が失効した現在、米露の核兵器数を制限する唯一の枠組みとなるのは米露間での新STARTである。だが新STARTは2021年が期限であり、放置すれば失効する。同条約には、両政府が合意すれば5年延長できるとの条項があるので、せめて米露が歩み寄って、新STARTの2026年までの延長に合意できるかどうかが問われている。新STARTの延長は、2026年までに配備予定のサルマートとアバンガルドを制限対象に加えることを可能にする。
 他方で、ポセイドンなどロシアが発表した新型兵器のいくつかは、新STARTや他の既存条約の対象にならない新たな概念の兵器であり、それらを制限する新たな枠組みの構築も必要である。極超音速兵器の開発には米中も取り組んでおり、このままでは新たな軍拡を招きかねない。国際社会は技術的に制御の難しい危険な原子力利用兵器の開発を監視し、軍拡競争を防ぐ努力をしなければならない


1 「核兵器・核実験モニター」541号(18年4月1日)、564号(19年3月15日)に要約と関連記事。『核軍縮・平和2019』(ピースデポ刊)に18年演説の要約。
2 Hruby, Jill [2019] "Russia's New Newclear Weapon Delivery Systems: An Open-Source Technical Review.

沖縄だよりNO.101(PDF)

2.19国会議員会館前行動

プレコンサートから始まり、1,800人が集まった2月の19日行動ですが、冒頭のシュプレヒコールで、安倍政権に関する数えきれないほどの疑惑に対する声が上がりました。

自由法曹団の泉澤さんは、「いったいどこまで違法行為をすれば気が済むのか」の新型コロナウイルスへの感染の恐怖以上に、安倍政権の横暴に対する恐怖を主催者あいさつとして述べました。

連帯のあいさつとして、駆けつけてくれた立憲民主党の近藤昭一衆議院議員は、沖縄の簡易調査から軟弱地盤と出ているなら、きちんと調べるべきであると主張し、「絶対にあきらめずに頑張らなくてはならない」と力強く発言しました。

同じく、日本共産党の山添拓参議院議員は、「安倍首相とANAホテルが言っていること、どちらが信じられますか」と問いかけ、「予算審議に耐えたれない総理なら、やめてもらおうじゃないですか」と予算員会における総理の態度を批判しました。

再びシュプレヒコールの後、司会者から「頑張り時だと思っているのは、私たちだけではありません。自民党の動きに対抗する必要があります」と訴えがありました。

改憲問題対策法律家6団体連絡会を代表し、森孝博弁護士からは黒川検事長の定年延長問題について、「政権に確実に忖度出来る人物をあてがおうとしているのではないか」と安倍政権の腐敗した実態を指摘しました。

安保法制違憲訴訟の会・共同代表の杉浦ひとみ弁護士からは、ジェンダー指数などの具体的な数字を示しながら、稲田朋美衆議院議員の憲法14条の改憲論に対し、「稲田朋美議員の改憲に対する動向をしっかりと見張っていく」と発言しました。

「羽田増便による低空飛行ルートに反対する品川区民の会」の秋田操さんは、「羽田増便は日常に関わる問題、生活に関わる問題」だとして、羽田低空ルート増便の問題点を広く訴えました。

このほか、立憲民主党会派の柚木道義衆議院議員、日本共産党のはたの君枝衆議院議員も駆けつけてくれました。

最後に行動提起があり、「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」のほか、安倍政権の退陣に向けた数多くの行動予定が告知されました。

 

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 全日本建設運輸連帯労働組合の構成団体である関西地区生コン支部に対する警察権力の異常な弾圧が繰り返されるなか、検証シンポジウム「関西生コン事件」を考える集会が2月15日、東京・田町交通ビルで開催されました。関西生コンを支援する会が主催して、平和フォーラムの勝島一博事務局長の司会の下、鎌田慧さん(ルポライター)のあいさつ、弁護団の報告、弾圧の社会的背景などに関してパネリストによるシンポジウムが行われました。

 主催者あいさつに立った鎌田慧さんは、労働組合活動は民主主義の基盤であることをまず強調し、とりわけ労働条件が劣悪である生コン業界の中で、職場の安全確認闘争や労働安全点検は労働者のいのちを守るうえで必須であると話しました。弾圧の背景は、物を言う労働組合に対して、安倍政権の意向を汲む警察権力による労働組合弾圧だとして、民主主義を再生していくために、市民と労働組合の連帯をつくりあげていくことが重要だと述べました。
 つづいて、弁護団を代表して小田幸児さん(弁護士)が、大手セメントメーカーとゼネコンの中に挟まれ、業者間の過当競争に巻き込まれざるを得ない中小生コン業界の特徴について解説したうえで、過当競争を制限する闘いが、労働者の雇用と安全を守ることにつながることであり、労働組合の争議行為、コンプライアンス活動が重要であることを強調しました。また、関西生コンに対するこれまでの弾圧の実態や、滋賀、大阪、京都、和歌山で進行している裁判に関して説明がありました。また、小川隆太郎弁護士は東京でも弁護団が結成され、不当逮捕された組合員の過酷な保釈条件や警察による組合脱退工作などの課題で国賠訴訟を今後提起していくこと、度重なる異常な身体拘束の実態に関する調査を国連の機関に求めていくとりくみについて報告しました。
 集会委の第二部では、弁護士の海渡雄一さんがコーディネーターとなり、毛塚勝利さん(労働法学研究者・元中央大学教授)、申惠丰(シン・ヘボン、青山学院大学教授)、安田浩一さん(ジャーナリスト)をまじえパネルディスカッションをおこないました。
 まず、パネラーからそれぞれ専門領域からの課題が提起されました。毛塚さんは、労働組合活動に対して刑事訴追なされたこと自体が異常であるとし、検察は労働組合運動の意義を理解していないのではないかと疑義を投げかけました。そして、生コン労組のような職業別労組の意義について語り、労働市場をコントロールする自治的な規制が、労働条件の維持・改善となる点について解説したほか、法学の立場から労働基本権の侵害、恣意的拘禁の問題について提起されました。申さんは国際人権法の観点からこの事件に迫り、労働基本権の侵害が社会権規約や自由権規約に対する重大な侵犯であること、恣意的拘禁も自由権規約に反するとして、問題提起しました。つづいて安田さんは今回の事件以前から関西生コン支部を取材してきた経緯を述べたうえで、国家権力は関西生コンを「リトマス試験紙」として使っていると指摘し、弾圧に対する市民社会の反応によって波及していく問題について警鐘を鳴らしました。
 また、シンポジウムでは、国鉄分割民営化の時代にさかのぼって、反国労キャンペーンを張ったメディアの役割について言及があったほか、人権にかかわる事柄への無理解が社会に蔓延しつつある状況について議論が交わされました。(写真は今井明さん提供)
 

沖縄だよりNO.100(PDF)

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 辺野古新基地建設にかかわり、大浦湾の軟弱地盤対策について防衛省は昨年末12月25日、第3回技術検討委員会に、大幅な工事変更の概要を示しました。当初の計画では完成までに8年、総工費3,500億円以上とされていましたが、今回の報告では完成までに12年、総工費は9,300億円に膨らんでいます。この問題で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は2月12日、防衛省に対して公開ヒアリングを実施するとともに、院内集会を開催しました。
 公開ヒアリングには、平日午後にもかかわらず、多くの市民が参加し、沖縄等米軍基地問題議員懇談会の近藤昭一会長(衆院議員)、石橋通宏事務局長(参院議員)ら10名を超える国会議員とともに、防衛省に対するヒアリングに臨みました。
 北上田毅さん(沖縄平和市民連絡会・元土木技術者)が中心となって、技術的な問題点を50項目以上に渡って質問をし、また海面から90メートルまで軟弱地盤が広がっている課題について緊急の追加質問も行い、防衛省を質しました。問題となったB27のボーリング調査については、「民間業者が自主的に行ったもの」として、防衛省はデータを重視する姿勢は一切見せず、評価も含めて言及を避けることに終始しました。
 公開ヒアリングの後院内集会を開催し、北上田毅さんより、前例のない軟弱地盤の工事は、技術的にも不可能のであること、大幅な工事変更で、沖縄の自然環境が壊滅的に破壊されることなど、詳しいデータを例示しながら説明しました。

憲法と建国の日を考える集会(2020)

日本と韓国の今

徴用工裁判に端を発するかに見える日韓の対立は、植民地支配の歴史に向き合えず、個人請求権の存在を認めてきた従来の見解をも無視する日本政府の頑なな姿勢が原因です。民主化を市民が勝ち取ってきた韓国とは対象的に、日本は安倍政権の権力私物化、歴史修正主義の横行、天皇の代替わりの式典で「天皇陛下万歳」が48回も繰り返されるなどの異様な空気が支配しています。戦前の紀元節をルーツとする建国記念の日の2月11日、新憲法の中での天皇制の位置づけをしっかりと考えてこなかった反省も含め、日韓の将来を見据え、若い世代も交えて議論する場を持ちました。会場の日本教育会館の会議室では、満員で立ち見の出る160人以上が参加しました。以下に大まかな内容をまとめました。(文責・編集部)

第1部 シンポジウム─日韓に壁はあるか 交流の現場から考える

憲法と建国の日を考える集会

藤本 平和フォーラム代表
日本では戦前の紀元節を建国記念の日として、恣意的に2月11日を祝日にし、天皇制が無自覚に維持されていますが、韓国では3.1独立運動を記念する日やパリボクァンボク(?)8月15日など歴史的に意味のある日を記念日にしています。日韓の現在の関係悪化を招いた背景には、戦前から続くアジア蔑視、復古主義があるのでは無いでしょうか?
安倍政権の中枢にいる「こども」に見える人々の考えで、単純に気にいらないから韓国制裁をやっているように見えます。韓国では日本のビール不買によって、今は中国のビールがシェアを取っている状況、韓国から日本への観光客25%減など含めて、65年以降最悪の二国間関係になっています。もともと日本は朝鮮半島を通して多くの文化を吸収してきた歴史があり、これからの日韓を見通すような議論をしたい。

矢野秀喜さん

朝鮮人強制労働被害者補償立法を目指す日韓共同行動事務局長 矢野秀喜さん

徴用工の裁判などを通して、朝鮮人強制労働被害者の問題をどう解決をしていくかという立場。今の日韓関係は1965年の国交正常化以来、最悪の状況にある。日本の国の中に、過去の植民地支配を整理しきれていない、熾火のようにあったものが吹き上がってきたようだ。
壁はあるか?という問いには、そうでもないと言える。
韓国大法院の判決の出た日本製鉄に名前を変えた新日鉄住金の他にも、三菱や名古屋に動員されていた女子勤労挺身隊でも判決がでている。
歴史的に画期的な判決がでたが、被害者の権利は解決していない。どう履行していくのかが問題。1939年から45年の間に、80万人の強制労働被害者がいる。その中で、自分の親、おじなどが強制連行されたと申告して認定された数は14万人、権利回復はごくわずかしかない。
この判決を契機に具体化を望んでも、安倍政権のもとでは難しいのが現実。
一方、大学の授業などで話すと、理解が広がる手応えもある。昨年9月21日に日韓学生の討論集会を開催した。韓国からこのために来日した方が3名、留学生やハン・ヒスさんも参加した。そこでの話を聞くと希望はある。政府間の対立はあっても若い方が乗り越えていってくれるのではないか。
ある日本の学生の発言を紹介すると、韓国に滞在していた際、8月15日は、日本人は危ないと言われて一時帰国をしていた体験がある。討論中には「国が同意したものを、必要以上に掘り返すのは良くない」と発言、討論の終わったあとには、「徴用工問題は、解決策が必要だと思った」と発言、考えが変わったことは評価できるのではないか。その他の方の発言では、「なぜ被害者家族が裁判を起こしたのか、理解できた、日本の報道ではわからない」といったものや「今、海外から働きに来ている多くの人の扱いが酷い、昔の徴用工と通底している、歴史から学ぶ必要があるのでは?移住労働者拡大政策をとる安倍政権で必要だと思う」など。若い世代には、安倍政権の支持者多いと言われるが、人権意識は定着しているのではないか。
一方、1年3カ月ぶりに実現した中国・成都でのムン・ジェイン、安倍会談に関して、世論調査で「譲歩してまで改善急ぐな」とするものが64%もあるのが現実。

カン・ヘジョンさん

アジアの平和と歴史教育連帯 国際協力委員長 カン・ヘジョンさん

歴史認識、歴史教科書の捻じ曲げを韓国の側から取り上げ、日韓市民の間では理解を広げてきたつもりが、この対立の事態になってしまった。この100年の歴史の流れで見ると、2、3度の変換があった。
日清、日露の戦争で、朝鮮半島を舞台に戦争が行われたこと、1945年の植民地解放までは支配した側とされた側の関係が続いた。サンフランシスコ条約で日本は、戦争をした責任を一定程度、「ここまで」認めることでケリを付けた形だが、植民地支配された側は会談のテーブルにも付けずにおわった。植民地支配の問題は、米国の関心ではなかった。
戦後の歴史の中で、日本は、植民地支配の問題を国際社会から一度も問われていない。日韓政府も不問にしてきた。
このまま放っておくだけではいけないと言う認識。65年体制を補完する形となったのが、95、97年体制と言われる、村山富市内閣や金大中大統領の頃。日韓の間では、2トラックで、歴史と、経済・政治は別に扱ってきた。去年7月にこれが崩れた。
日本政府は、歴史認識が気に入らない、これを経済で制裁する。

日本の世論は、韓国にも伝わっている。韓国から見た疑問は、日本は、本当に「まるごと安倍」なのか?というもの。
時々パラパラと矢野さんや藤本さんがニュースに登場することで、そうではないということが分かる程度。
韓国社会の市民が、政府をどう作っていったかという歴史、司法・立法・行政、すべて立て直した。市民がどうアップグレードしたのかが、日本に伝わっていない。ろうそく革命のことも。
政府にそそのかされて市民が煽られているというのが、日本の報道だ。
韓国では、被害者を慰め、権利を回復してきた歴史がある。
韓国の市民からは、安倍政権が理不尽なことをしている、植民地に対するようなやり方に反対している、という意思表示だ。市民が集って数になれば伝わるということを経験してきた。それが、2017年に成果となった。
嫌韓を煽る日本とのギャップが大きい。
韓国では、社会の声が、ろうそくの市民が作った政権であり、市民の声を具現する政権という意味合いがある。
壁はあるか?という問いには、壁がないとは言わないが、なんの前提もなしに、壁が存在しているわけではない。市民の間で壁を乗り越えるための信頼、理解が重要。壁や対立があったほうが社会体制を維持しやすいというものに反対する。

渡辺美奈さん

女たちの戦争と平和資料館<wam>館長 渡辺美奈さん
日本の市民が気づいていないことは、「韓国の市民がアップグレード」したこと。
壁はどのようなものかという問いかけに対しては、市民社会に何が必要か考える素材を提供したい。
壁とは、隔てるもの、違いが決定的で乗り越えられないようなもの。
男女の壁や、世代間など、違いはあるが、命や権利を守ろうとする動きの中では、その違いは小さい。
不作為が壁を高くしている
「だったら結婚するな」という国会でのヤジがあったが、これなどは、決定的で乗り越えられないようなものかもしれない。
日韓問題として、メディアにすり替えられているものがある。反安倍を言っているのに、「反日」と報道される。これは、ヨーロッパなどでの「反トランプ」は反米ではなくそのままほうどうされるのに、韓国では反日として、日韓問題としてメディアによって空気が作られている。
人間の命が国家より大事だという認識でつながることで、これを断ち切る事ができるのでは。
メディアに対しては、いつも私の語ったことそそのまま伝えてくれるのかという疑問を持ちながらも対応している。
世論を動かす力を持っていることをジャーナリストとして認識していないのではないか。
アジア蔑視と、歴史を学ばないことが車の両輪のように働いている。市民社会も実態を知らないで、65年で解決積みとしている。
何が大切なのか。第一に、「まず聞く」ということ。会場で配られた、wam 第16回特別展チラシのタイトルにも朝鮮人「慰安婦」の声を聞く、とあるように、声を聞くこと。これが基本のキ。
朝日の折々のことばで紹介されていた「何を言っているかではなく、その人間が何を聞き取る人間であるのかを注視していれば間違う確率は少ない。」という言葉のように、「聞き取る」能力、意志が重要。市民が言葉の使い方に気をつける。SNSでも。メディアがやらないのであれば市民個人がやる。
2015年の日韓合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」については、国家間で約束された基金を解体、終止符を打つのは大きな力が必要だった。
次に、「終わらないことをひきうける」こと。
かんたんな「解決」ではない。ポーランドでドイツ大統領が演説しポーランド国民に許しを求めたり、メルケル首相がアウシュヴィッツ強制収容所跡を訪問して演説し「責任に終わりはない」と語ったり、歴史の中で何をしてしまったのか、を繰り返し語ることが、ドイツの中でネオナチが台頭しているような状況で、たいせつなことだ。一つの時点を区切りにしながら、終わらないことをひきうけることが大事。

藤本 中国に対しては、対戦国であったために、強制連行問題で和解が成立した部分もある。植民地支配の日本の感覚はどういうものか。

矢野 日本は総力戦を戦っていた、中国に710万人の兵力を送っていて、これが人口の1割ほど。国内の労働人口が足りないので、強制動員にむすびついた。
東京裁判が有名だが、極東国際軍事裁判のひとつ、横浜法廷で強制連行が取り上げられている。外務省が報告書を作り、135企業が関与、中国人労働者4万人弱を認めている。強制連行の事実は否定できない、鹿島、西松建設、三菱マテリアル(三菱鉱山)事実を認めて謝罪、償いの証とした賠償金。記憶する事業として記念碑などが各地に作られている。
中国と大きな違いが朝鮮ではある。動員計画、労務動員の名簿作っていたが、敗戦後廃棄、事実を隠蔽してきた。これが訴訟を困難にしている。

藤本 この違いをどうのりこえるか

カン 植民地主義の克服に関しては、韓国大法院の判決がくだされたことが引き金になり、去年の状況が強く影響している。中国人に対しては日本の法廷が勧告している。
日本の「気に入らない」を紐解くと、65年体制で、戦争に関しては責任を果たしたという認識なのだろう。
植民地支配に関しては、韓国の憲法の前文にも3・1独立運動が明記されている。一方の日本では、植民地主義は克服されていない、教育の中でも知らされない。多くの国民が知らない。そこでもたらされるのが、相手が下なんだという感覚。去年の安倍政権の対応、にそれが現れている。自国に損害が及ぶのもかまわずに制裁する。
市民だけでも交流、理解を深めるべきとやって来ているが、ある人の言葉に衝撃を受けた。オリンピック以来、30年ぶりに韓国を訪れて、「随分変わりましたね、民主化されましたか」と発言。誰の声を聞き取るか、言葉を重視すること。日常の中の植民地主義がある。

渡辺 日本ではこんなに教員がコントロールされている状況で、民主化が本当に必要だ。カンさんの以前の発言「今度は韓国市民が日本の民主化をたすける」というのが印象的。
植民地主義にかんしては、90年代からの運動の中で、主なテーマだったのが、戦後補償問題、「戦争」から「植民地主義」が見えてきたのはこの10年くらいではないか。植民地支配「向き合う」とはよく言われるが、必要なのは、植民地支配責任を果たすこと。果たすために何ができるのか、植民地主義について、日本では私達、知らないことだらけというのが実感。知るための素材必要だ。

コロニアリズムは継続している。今の朝鮮学校の問題はまさに現在進行形だ。「日本の民主化」は重い言葉、いまや検察まで。自由が奪われるシステムが作られつつあるという危機感。ここ数年の民主化を闘いとった韓国から学べるというのがひとつの好機。

藤本 植民地主義について知らないということが、日本の中での人権を低めている。植民地主義の認識が国内の人権をたかめるのでは。
政権や、メディアが市民がつながることを分断している状況。つながるために何ができるのか。

渡辺 これは、日韓問題ではない。日本の問題。植民地主義に向き合えない日本。
今すでに、つながっているものを大事に。

カン つながりをつくるのは時間かかるが、壊れるのは一瞬だ。いつも誠実に向き合うこと。
信頼関係、つながりはたくさんある。国の関係を乗り越えていく手がかりを、たくさん作ってきた。
絵に描いた餅ではなく、顔を合わせて、問題を率直に言い合える関係、声を一緒に記録する、伝える実績。
憎しみ、無関心、暴力への傍聴、に対抗する。
協力の実績をつくることが大事。
新しい認識をつくることへの努力、日中韓共通の歴史書を作っている。今年の終わりごろ、3段目の歴史書ができる予定。

中高生の歴史体験キャンプ、日中韓もちまわりで開催、台湾、北朝鮮ふくめて東アジアで行っている。去年も東京で開催。韓国の親たちの心配の声があったが、こういう時だからこそ、歴史体験ができるということで開催した。
参加した感想文でそれぞれが、認識のあまりの違いに、びっくり、お互いに知らなかった事に、また知ってから、それを認識できるということに。一緒に学ぶ可能性がある。協力と連帯の実践。記憶の継承が課題。

矢野 3・1独立運動100年で、独立宣言の読み直しをした。間違った政治を行っている日本を正しい道に導こうとしている。不安を解消するためのもので、東アジアの未来を開くものだ。
韓国併合から9年目の1919年にそのような運動を作れたということに驚き。民主共和国、民が主人公。ムン・ジェイン大統領の昨年の演説にも、「共和国の民としての歩みをはじめた」とある。令和の代替わりで大騒ぎをしている日本では、韓国との落差が激しい。
権利の回復というだけでない、尊敬できる、連帯すべき運動だ。韓国の運動でよく歌われていたのが、憲法第1条の歌。

若い世代も参加して

ハン・ヒスさん 2年間、日本語を勉強した。聖公会大学にもうすぐ復学する予定。

相原由奈さん 第15代高校生平和大使。東京外国語大学の大学院生

藤本 今日のシンポジウムは理解できましたか?

ハン 理解はできました。

相原 日本人がこんなに勉強して来なかったのかと恥ずかしくなった。
ブラジル被爆者の研究をしています。
釜山や「韓国の広島」と呼ばれるハプチョン(陜川)に行き、韓国の被爆者と日本語で会話ができたのですが、日本語で会話できる、そのわけについても、もやもやしたものを感じざるを得ないでいる。

ハン 独立運動、夏休みのプログラムで、ソデムン刑務所(서대문 형무소)見学など、直接行ってみて感じるものがある。

相原 こういう集会に友達と来れないのが日本の状況。
なぜ率直に話せないかはわからない。感覚を変えるのが必要ではないか。
高校生平和大使をしたことで、家族も関心を持ってくれて、家族内で政治の話もできる様になった。

ハン 政治の話は良くする。重い話とは思っていない。
お正月のような時に、親戚が集まって政治の話もするが、喧嘩になることも。
友達と話せない、という日本の状況はショック。

藤本 ドイツでは、家族つれだってや、子連れで反原発パレードに参加するような事がごく普通。今の日本では家族連れは殆どない状況。

相原 壁はあるのかという問いに対しては、壁はないとおもう。国家間にはあるかもしれないが、韓国料理が好きだったりするのが現実。どの位置に立っているかで、壁はあったり消えたりする。

ハン 日本の報道を見ていると、韓国での取り上げかたとと全く違い、同じニュースとは思えない。
韓国のことばかり繰り返しあつかうワイドショーも多い。

相原 メディアの取り上げ方、疑問に思う

藤本 嫌韓本というものを、どううけとめるのか?

ハン 友達に聞いてみた。反日と嫌韓、違うものだ。

相原 この問題を聞ける友達がいないことが問題。
ニュースで見ることで判断、現場で見ていないのでは。
この問題に触ると危ないのでは、という考えもあって実は、このタイトルのシンポの参加について、一旦はことわった。
反安倍は日本にもいる。

矢野 動員問題の視点、日本各地で、地域の中で、掘り起こし、記憶の継承の試みがされている
35府県に百いくつも記念碑がある、群馬では、右翼の攻撃にも対抗している。
市民だけではなく、行政も関わっている。相模湖ダムでは、県知事が銘文をかいている。
それが、いま反動にさらされている状態。
このことを、人権感覚で、放置してはおかしいと気がつく人もいる。
精算のための歩みとして、中国だけでなく、韓国人の訴訟でも和解がある
新日鉄の交渉担当者のインタビュー記事が朝日に掲載された。「うらみや、怒りが残っていいれば解消に努力をはらうべき」と担当者が語っている。壁を乗り越える道はある。運動を続けていく。

カン 「韓国の市民がアップグレード」の意味は、政治指導者に頼ったりすることでなく、自分が意思表示する人が増えたということ。政治権力や制度をかえるということから、市民のあり方が社会の中で変わってきた。
今、ボイコットをしているのは、反日ではなく、市民の意思表示で社会を変えてきた経験から、この事態を変えるための意思表示をしているということだ。
この事態を理不尽だと思う個人が、自分は旅行しない、といった行動で意思表示している。
メディアの状況、市民がメディアをどう使うかが変わった。
言葉を選んでいく、メディアを選ぶ、巨大メディアが強すぎる状態があるが、今のデジタル時代、一人ひとりが発信できる。
メディアを選ぶことができる。そして、フェイクを見抜く力がついてくる。日本でも、韓国でも多数のメディアに対抗できる時代。理解を作っていくこと。力まないで付き合うことが必要。

渡辺 相原さんの家族が関心をもったという話、おもしろい。
今、家で親がネトウヨという状況がめずらしくない。
学んでない、テレビをよく見るのが原因か。
wamでは、これから若くない人をターゲットにしようと考えている。
慰安婦問題に関しては、誰もわからないかもしれない。兵士としての経験のある人でも人権意識がない。
権利があるということが、教育されていない。
今の歴史教育は、近現代史からはじめないと。自分の経験でも社会に出てから学んだことのほうが多い。
3国の歴史書、それを作るプロセス自体が面白い。歴史の証言、語ったものをそのままどうやって残せるのかを考えている。

第2部 歴史認識と教科書─歴史を遡る様々な動きをめぐって

2020年、中学校教科書採択─より良い教科書を子どもたちに!

相可文代さん

子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会 相可文代さん
作る会系の教科書が登場してから20年、各地で市民の運動が実を結んでいるところもあります。

歴史教科書の問題から、今は道徳教科書が重い問題になってきました。日本会議系が作成した道徳教科書の問題教材や、背後にいる右派団体がどう学校に浸透しているか、小学校の社会科や道徳で日本会議系の教科書が採択された結果の採択率:社会科の3社(2019)

  • 東京書籍 55.3% 安倍政権に迎合的
  • 教育出版 27.7% 平和・人権を重視
  • 日本文教(大阪書籍)17% 維新に迎合的

など具体的な数字も紹介されました。道徳教材の中には、あまりにとんでもない内容に会場から驚きの声やため息が出る場面も。

採択は地域ごとなので、地域の運動が力をもち、名古屋で2017年の教育出版から2019年には光村図書に変更できた例など、市民やメディアの批判が教科書を変えた実績も多くある事、一方では、近現代史を知らない世代が教師になっている現状では、教師が愛国心教材に共感をしめすなど、教育現場の厳しい状況も示されました。

「愛国」と「自己犠牲」を刷り込む教科書の採択を許さないために

桜を見る会問題をはじめとした、数々の政治の私物化、不正疑惑、民主主義を壊し、9条改憲を企む安倍政権をいっきに退陣に追い込む総決起の集会として、「安倍9条改憲No! 全国市民アクション」が主催、王子駅そばの北とぴあ・さくらホールで開催されました。午後6時20分の開場前にエントランスホールが入場を待つ行列でいっぱいになってしまい、開場を早めたほど熱心な参加者が集まりました。

最初に主催者を代表して改憲問題対策法律家6団体連絡会事務局長の大江京子さんがあいさつ、改憲を諦めない安倍政権に対して、自民党改憲案の4項目を許さない決意と、日本会議などの改憲勢力の動きなどから、これからが改憲させないための最大の山場だという認識が示されました。

古賀茂明さん

次に「日本を沈没させる安倍政権─なぜ安倍政権にNoと言わなければならないのか」と題して、元内閣審議官・フォーラム4代表の古賀茂明さんが講演。米国が新型小型核を潜水艦に実戦配備したことを発表したばかりの現在、世界の核状況が深刻な場面を迎えているのに、安倍はローマ法王の来日時にも、核廃絶を明言する法王に話を合わせたのか、「唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界の実現に向け国際社会の取組を主導していく」などと心にもない言葉を平然と言う嘘つきぶり、現に「憲法上、原子爆弾だって問題ない、小型であれば、」と以前から発言している。この嘘を堂々とつける能力が安倍の特徴。アベノミクスの成長戦略もダメ、地方創生もダメ、外交も大失敗でそれを取り繕うと習近平にすりよる安倍政治は、今回のコロナウィルスでも明らかになったように、すべて後手に回るのが失敗の本質。対韓関係も日本からの輸出超過額が241億ドル(2018年)と非常に重要なのに徴用工問題の腹いせでダメにしてしまった。このように枚挙にいとまがないほど、経済・政治とも日本を沈没させる安倍政権を指摘されました。そのありかたを自民党4つの大罪としてまとめると、①借金大国日本を作った(1100兆円)②少子高齢化を放置(社会保障基盤を崩壊させた)③日本を成長できない国にさせた④原発神話を作り福島事故を招いた、となります。また、2015年に後藤健二さんを見殺しにしたやり方と、古賀さんが報道ステーションで I am not ABE と書いたボードを掲げた経緯と官邸からの圧力の実態、中村格秘書官(当時、現在は警察庁次長、長官になると言われている─伊藤詩織さんの事件で逮捕をやめさせた人物)の名前も挙げて話されました。結果、テレビ番組を降ろされたわけですが、メディアが政権に抑えられて報道がだめになっている現状では、世界に対して、日本から安倍政権を支持しない意思を発信していかなければいけないと強調され、さらにガンディーの言葉、「あなたがすることのほとんどは、無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」を紹介されました。

小池晃参議院議員 杉尾秀哉参議院議員 福島瑞穂参議院議員

続いて、立憲野党の皆さんからの挨拶として、共産党からは小池晃参議院議員、立憲民主党から杉尾秀哉参議院議員、立憲民主党会派の柚木道義衆院議員、社会民主党から福島瑞穂参議院議員が、それぞれ改憲を諦めない安倍政権に対抗する決意と、現在国会などで進行中の政府の違法行為追求の報告など力強いアピール。


宮子あずささん

看護師の宮子あずささんは、「命を守る看護」という言葉をこれまであまり使ってこなかったけれども、津久井やまゆり園事件をきっかけに考え直し、積極的に使うようになったこと、それは、ヘイトクライムがまるで「世直し」であるかのように行われた衝撃からで、植松被告が事前に「安倍総理にお伝え下さい」と手紙をかいていた事件の経緯からもわかるように、時の権力者の倫理観・姿勢が反映されているからです。安倍首相は障害者への差別が事件の土台になっていることを認めようとしません。「命を守る看護師」の立場から安倍政権を本当に倒さなければいけない、と表明されました。看護師の倫理綱領は、生きていくために本当に大切なことで、医療費の高騰が強調され、肺炎を繰り返す高齢者への延命治療がそれほど積極的になされなくなってきた現実の前で、絶対に守られなければいけない原理原則であり、後輩の看護師たちにも伝えていく、生きる権利を守る闘いを続けていくと話されました。

おしどりマコ・ケンさん

会場を沸かせた、おしどりマコ・ケンさんの弾丸トークは、半径5メートルからおしゃべりで変えていこうという話から始まりましたが、ここに文字でまとめるよりも、ぜひ下記に引用させていただいた、録画をした方のYoutubeなどで御覧ください。(1:30:30ぐらいから)

金光理恵さん

次に各分野からの発言として、武器輸出問題を、安保関連法に反対するママの会@ちばの金光理恵さんが、幕張メッセで開催された武器見本市DSEIは、これまでイギリスなどで開催され、日本企業も10社程度は参加していたが、今回始めて日本で開催され、日本企業は61社も参加、その公式ガイドブックには「近年の日本国憲法の改正により」日本で武器見本市が開催できるようになったとまで記されていること、2021年にもまた幕張メッセで開催予定となっているのは、会場予約を原則1年前からとしているのを例外あつかいにしている、管理責任者の千葉県知事にハガキを送る抗議アクションの紹介、5月14日に県庁前で行う抗議アピールなどをお話されました。

渡辺健樹さん

日韓問題に関して、「3.1朝鮮独立運動」日本ネットワーク世話人の渡辺健樹さんが、今から101年前のソウルで発せられた朝鮮独立宣言、200万人が立ち上がった独立運動を日本が武力弾圧し、7500人もが虐殺され、4万6000人が投獄され1万6000人が負傷した歴史事実が、日本国内では「不逞鮮人の暴動」と報道、関東大震災の朝鮮人虐殺の布石にもなったと言われていること、今、安倍政権は北朝鮮の脅威を煽り、徴用工問題からの対韓報復という状況の中で、1月6日に日韓市民、弁護士が正しい解決のための共同呼びかけ文を東京・ソウルで発表、日韓問題解決の原則、①事実を認めて謝罪すること、②謝罪の証としての賠償、③事実を後代に伝える、を前提とする。これを支持して取り組みをすすめる。3.1に向けて2月28、29日に屋内集会とキャンドル行動をすることを通じて、安倍政権を告発しながら市民の良心に訴えたいと話されました。

関本幸さん

沖縄問題に関して、辺野古・高江を守ろう!NGOネットワークの関本幸さんが、シルビア・アール博士が始めたホープスポット、世界的に重要な海を海洋学者が生物多様性、文化的価値などから認定するものに、辺野古・大浦湾が選ばれたこと、北限のアオサンゴ、ジュゴンなど20平方キロのなかに5300種もがいるという貴重な生物多様性、地域の人々の権利や暮らしを守ることが環境保護につながる。辺野古の工事をとめるために、環境保護の観点からもできることがあると話されました。

最後に安倍9条改憲NO!全国市民アクションの高田健さんの行動提起と、新署名スタート!「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」の呼びかけで締めくくりました。集会の参加者は900人にのぼりました。

新署名スタート!「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」

護衛艦たかなみは 中東に行くな!

 

DSC00402.jpg 海上自衛隊護衛艦「たかなみ」の中東派遣に反対するとりくみが、21日と2日、2日間にわたって行われました。

 

DSC00387.jpg 1日の「2.1海自護衛艦「たかなみ」の中東派遣に中止を求める緊急行動は、神奈川平和運動センター、三浦半島地区労センターが主催し、フォーラム平和・人権・環境、平和センター関東ブロック連絡会の共催で行われ、関東圏の仲間たちが横須賀ヴェルニー公園に結集し、「護衛艦を中東に送るな!」と声を上げました。

 

DSC00375.jpg 集会では、神奈川平和運動センター代表の福田護弁護士、平和フォーラムの北村智之副事務局長、平和センター関東ブロック代表の持田明彦埼玉平和運動センター議長らあいさつを行ったほか、社民党の福島みずほ参議院議員がアピールを行いました。

現地報告としてヨコスカ平和船団の新倉裕史さんが登壇し、一般社会より自殺者の割合が高い自衛隊隊員のいのちの問題に触れました。そして海外派兵が行われるたびに、戦争後遺症とも考えられる自殺者の増加が、アメリカと同様に日本の自衛隊にあることを指摘したうえで、自衛隊員のいのちを踏みにじり、米国の意向に沿った安倍政権の中東派遣の決定に抗議しました。

DSC00378.jpg

また、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の仲間たちも集会に多数参加し、代表して高田健共同代表があいさつをしました。

参加者は、集会後桟橋に移動し、出向の準備を進める護衛艦「たかなみ」に向け、「自衛隊員のいのちを守れ!」「中東派遣は憲法違反だ」と抗議のこぶしを振り上げました。

DSC00417.jpg 翌日2日も、早朝から護衛艦「たかなみ」を臨む桟橋付近から、出向強行に抗議する行動を行いました。海上では、平和船団の2隻のボートも「中東派遣反対」の横断幕を広げながら、「たかなみは中東に行くな!自衛隊員のいのちを守ろう」と訴えました。

 2019年12月4日、アフガニスタンで人道支援にとりくむNGO「ペシャワール会」の中村哲さんが、アフガン人スタッフのザイヌッラ・モーサムさんら5人とともに銃撃され命を落とした。心から哀悼の意を表したい。「共に撃たれしアフガンびとを悼みたる家族の声のとうとかりけり」「撃たれたる医師のひつぎを肩にして大統領の皺ふかき頬」年明けの朝日歌壇では、4人の選者がともに中村さんを悼む歌を選んだ。葬儀の日、中村さんの棺にはアフガンの国旗がかけられ、両脇には、中村さんの信頼の厚かったザイヌッラさんと4人の警備担当者の遺影が置かれた。選者のひとり佐佐木幸綱さんは、評の中で「福岡での中村哲氏の告別式における長男・健さんの挨拶は、アフガニスタン人の運転手、警備の人への哀悼の言葉からはじまったという」と書いた。同じく馬場あき子さんは、「沢山の中村医師追悼歌の一首。大統領の表情から事の重大さを察する」と書いている。中村さんの死は、大きな衝撃を持って迎えられた。

 中村さんは、生前「誰もが行きたがらないところへいけ」が信条といっていた。冒険家は、誰もが行けないところにあえて行く。そこは危険で誰もいない。誰も行きたがらないところではあるが、中村さんの行くところには誰かがいる。誰かがいるからこそ、中村さんは行く。違いは大きい。

 国会前の戦争法反対の場で、「家に帰れば愛犬が吠えて迎える。寝る前の缶ビール一本に平和がある」と言って笑われたが、ペシャワール会の村上優会長は、追悼の辞で、「人の幸せは、3度のご飯が食べられて、家族が一緒に穏やかに暮らせることだ」との中村さんの言葉を紹介していた。それは、誰も行きたがらないところの現実の中で中村さんが感じたこと、だから衆院テロ対策特別委員会の席上で彼は「自衛隊は有害無益でございます」と述べて、自民党議員の野次と怒号を買った。

 小さな命の積み重ねが平和であると考えれば、命は重たい。その重たい命を賭して中村さんは生きた。2008年に日本人スタッフ伊藤和也さんが銃弾に倒れた。中村さんは日本人スタッフを全員帰国させてひとりアフガンに残った。医師であった彼もまた、命の重さを知るひとりだった。

 小説「花と龍」のモデル玉井金五郎とマン夫妻が祖父母という中村さんは「侠気」の人、誰もがまねできる生き方ではない。がしかし、その中にある思いを、理解することはできる。理解してのち、ささやかでも自分のできることを探すこと、何か自分にできることがあるに違いない。私も、そう思いながら生きて行こう。
(藤本泰成)

ニュースペーパー2020年2月


安倍政権の自衛隊私物化を許さない!中東に送るな!!
 安倍政権は米国のよびかけた「有志連合」に直接は参加しなかったものの、2019年12月27日に、防衛省設置法の「調査・研究」を根拠に自衛隊を中東に派遣するというトンデモ閣議決定し、1月10日には河野太郎防衛大臣が、海上護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機に対して、中東への派遣命令を出しました。哨戒機は11日に沖縄の那覇基地から出発し、護衛艦「たかなみ」は2月2日に横須賀から出港します。
 今回の自衛隊派遣を通して、日米軍事一体化がますます進められていくこととなります。
 そもそも自衛隊と米軍は、2015年4月に日本とアメリカとの間で改めて結ばれた「日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)」で「平時から緊急事態までのいかなる状況においても、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域において防衛協力する」ことが取り決められています。単なる行政協定に過ぎない日米ガイドラインが、平和憲法をないがしろにし、安全保障条約の条約上で明記されている「極東」の範囲を飛び越えて、運用されている実態があります。
 日本が米国と一体となって「戦争ができる国」へと進むことを許さず、自衛隊員が「普通の国の軍隊」のように他国に派遣され、殺し殺される関係の中に入っていくことは何としても阻止しなければなりません。(写真は2019年12月27日早朝、首相官邸前で閣議決定に抗議する行動)

インタビュー・シリーズ:153
温暖化被害でおこる地球規模の大量殺人をいかに阻むか 私たちは問われている
明日香 壽川さんに聞く


あすか じゅせんさん
 東北大学東北アジア研究センター教授地球温暖化問題や越境大気汚染問題のような、一国だけでは解決できない問題に取り組んでいる。日本における脱原発、脱温暖化は、目標設定や制度改革があれば既存の技術で十分可能であり、かつ経済合理的でもあることを示す戦略レポート「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」を発表した「未来のためのエネルギー転換研究グループ」のメンバー。

─台風大型化など異常気象と気候変動は関係がありますか
あります。例えば、温暖化が進めば海面温度が上がり、海面温度が上がれば、台風が巨大化します。それは科学者が前から予測していたことであり、それが現実となっています。基本的には、より大きな太陽エネルギーを地球が蓄えるようになって、そのエネルギーがいろいろな形で気象に影響しています。特に、集中豪雨と熱波については、個別の事象に対して人為的な影響がどのくらいの割合になっているかが、ある程度定量的に言えるようになっています。
途上国だけでなく、アメリカのような先進国でもハリケーン・カトリーナなどによって何千人の人が犠牲になるような被害が多く出ています。それらと比べると日本の被害はまだ小さいです。もちろん、これは悪いことではなく、そういう意味では日本は恵まれています。集中豪雨や台風の被害はありますが、干ばつと山火事はないからです。大量に押し寄せる環境難民もいません。そのためもあって、温暖化問題への関心は他の国と比べて低いのが現状です。

─世界の若者の動きが伝えられています。
スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさんたちの動きがあり、同時発生的にいくつかの動きも世界で起きています。グレタさんは2018年8月に一人で座り込みを始めたのですが、それより前の2017年に、アメリカではサンライズ・ムーブメントという若い人たちのグループが議員の事務所を占拠したりしています。グレタさんが呼びかけたFridaysforFutureでは、2019年9月27日の金曜日に160カ国以上で約400万人の若者たちが街頭に出て温暖化問題の重要性を訴えました。若者たちの訴えは、「もっと温暖化問題を真剣に考えて、もっと行動してもらいたい」「将来世代に気候変動対策の責任を押し付けないでほしい」「私たちの未来を奪わないでほしい」というシンプルかつストレートなものです。

─ヨーロッパ、アメリカで温暖化問題への関心は高いのですか。
日本よりは高いです。特にヨーロッパは高いです。ただ、グレタ・トゥンベリさんたちにとっては十分でないので、彼女はスウェーデン政府を批判する行動を起こしました。それが世界に飛び火して、何百万人が同時にアクションをするまでになっています。最近、いろいろな国で選挙があり、スイス、オーストリア、ドイツなどでは、緑の党が大きく躍進しています。アメリカでも、今、大統領選に向けて民主党の中で候補者選びが行われていますが、大きな争点のうちの一つは温暖化です。多くの国で、温暖化対策で票が集まる状況になりつつあります。その背景にあるのが、温暖化被害の拡大と若者たちの異議申し立てです。被害は本当に深刻です。海面上昇も、想定よりも速いスピードで進んでいて、海岸侵食などが実際に起きています。ガンジス川のデルタに多くの人口が集中するバングラディシュでは、ユニセフの報告によると、すでに600万人が気候変動によって移動を強いられています。

─温暖化と格差問題の関係についてのお考えはいかがでしょうか
温暖化の責任という意味では、国全体のCO2排出量は大事ですが、それよりも大事なのが一人当たりのCO2排出量です。また、歴史的なCO2排出も問われます。そのような観点で見れば、温暖化問題における加害者は、これまでCO2をたくさん排出してきた人々で、今豊かな生活をしている先進国に住む人々です。一方、被害者というのは、豪雨やハリケーン被害を考えると、水辺の粗末な家に住んでいて、堤防もないし、保険にも入っていないし、歴史的な排出量も一人当たりのCO2排出量も少ない貧しい人たちです。先進国の中でも貧しい人がより大きな被害を受けます。格差や差別の問題と温暖化問題は強く結びついています。だからこそ、「社会システム自体を変えないと温暖化対策は無理」という議論が米民主党の大統領候補の人たちによってもなされています。しかし、日本ではそうした社会正義に結びつけた議論が少なく、「日本は公害を解決し、空気もきれいだから、温暖化対策は必要ない」「アメリカ、中国、途上国が悪い」「技術やイノベーションで解決できる」といった理解不足と責任転嫁と言いうる議論が横行しています。残念ながら、日本での温暖化問題の議論は非常に「軽い」です。

─グリーン・ニューディールとはどういうことですか
グリーン・ニューディールは、温暖化対策を進めることによって、経済成長や雇用拡大が同時に達成できるというものです。すでに多くの国で、原発や化石燃料業界に従事する人よりも、再生可能エネルギー業界に従事している人の方が多いです。米民主党の候補の多くはグリーン・ニューディールを支持しているので、民主党候補が選挙に勝てばアメリカはかなり変わります。他方、温暖化対策に反対する人々は、お金の力を使って共和党議員を動かしています。また、米国では、いわゆる保守的で宗教心に篤い人たち(例:キリスト教福音派)が、「大きな政府は良くない」「政府の環境規制は無い方がいい」と考えてしまっています。化石燃料会社が発信源である温暖化懐疑論にも影響を受けています。

─日本におけるエネルギー政策をどのように見ていらっしゃいますか。
温暖化対策はエネルギー政策とコインの表裏の関係にあります。というよりも、エネルギー政策、とくにエネルギー・ミックス(発電エネルギー技術ごとの発電量割合)が決まると、温室効果ガス排出量もほぼ決まってしまいます。その意味で、エネルギー・ミックスの数字が非常に重要です。省エネ、再エネ、原発のミックスで、どれだけCO2排出を減らすかということです。政府は、原発は安くて安全、省エネはもう無理、再エネは高い、と繰り返し言ってきました。しかし省エネのポテンシャルはあり、再エネはどんどん安くなっています。一方、原発のコストはどんどん高くなっています。すなわち、原発に頼らなくてもCO2削減はできますし、その方が経済的です。政府や産業界が「温暖化対策のために原発が必要」と言っているのは、完全に方便です。私たちは、今の政府のエネルギー・温暖化政策に対する具体的な対案として、「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」*を提案しています。日本版グリーン・ニューディールでもあり、現在、毎年20兆円も払っている化石燃料輸入費の大部分が国内で回ることになるので、経済的にも日本にとってプラスになります。

─国際的に批判されている日本の石炭火力についてはいかがですか
日本では2015年以降建設計画が50基あり、2019年3月の時点では、そのうちキャンセルが13基、建てられてしまったのが12基、残りは建設中、アセス中、計画中です。先進国で石炭火力を新設している国は、日本ぐらいしかありません。世界の潮流とは真逆であり、国際社会から不思議がられています。

─いまカーボン・フリー、脱炭素社会に向けて動いていかないと、グレタさんが言っているような地球の危機とか滅亡などに直接つながっていくのでしょうか。
 科学者的に言うと、地球は滅亡しないです。ただ、人が住みにくくなるのは確かで、このままでは億単位の人が温暖化被害を受けます。多くの命も失われることになります。地球の危機とか滅亡というよりも大量殺人だと私は思います。人間が原因で人間が死ぬのですから。そのような大量殺人を止めるか、止めないかが問われているというのが正しい状況認識です。
 公平性を考えると、先進国の責任は、はるかに大きいです。グローバリゼーションは世界を大きく変えました。しかし、先進国と途上国との関係や貧富の格差という意味では、世界はそれほど大きくは変わっていません。COPなどでの温暖化問題の国際交渉も、結局は南北問題です。途上国は、「自分たちに責任はない」「今の被害に対して先進国は賠償せよ」と言い続けています。ご存知のように、多くの先進国が自国ファーストになってきています。なので、国際政治的には非常に難しくなっています。

─脱原発についてはいかがでしょうか
 原発がなくても、技術的にも経済的にも脱炭素は可能とする研究は世界でも日本でも増えています。原発は高く、再エネは安いというのが明白になっているからです。日本では、原発はおそらく自然死するでしょう。しかし、国民のお金を使って、政治的に自然死させるのをできるだけ遅らせようとする人がいるので、そういう人たちには抵抗しないといけないと思います。エネルギー転換を遅らせることは、日本の将来的な経済成長や雇用拡大にもマイナスです。  正直に言うと、自分は脱原発の必要性を、福島第一原発事故の後に強く認識しました。多くの温暖化問題研究者は、原発事故の前までは原発に関してはあまり語らなかったのは事実です。原発は必要とは言いませんでしたが、不要ともはっきり言わなかった。そこは反省しないといけない。だからこそ、昔から脱原発に関わってきた人と協力し、研究者として具体的な対案をだしていくことで、今の政治に対して大きなインパクトを与えられたらと考えています。
*「「原発ゼロ・エネルギー転換戦略日本経済再生のためのエネルギー民主主義の確立へ」未来のためのエネルギー転換グループ2019年6月25日http://bit.ly/np-zero
参考文献「脱「原発・温暖化」の経済学」明日香壽川、朴勝俊著、中央経済社、2018年

インタビューを終えて
グレタ・トゥンベリさんが一躍有名になった。気候変動をめぐっては、地球の将来を危ぶむ特に若い世代を中心に、大きなムーブメントが起きている。日本では、巨大な台風が首都圏を直撃して大きな被害が出た。しかし、日本社会の反応は鈍い。巨大な低気圧、異常乾燥と森林火災、熱波、多くの人命が失われ、特に貧困層にその被害が大きい。明日香さんの指摘を、私たちは真摯に受け止め運動をつくらないと。
(藤本泰成)

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日米軍事一体化を許すな!オスプレイの飛行訓練反対!
緩やかに全国の運動をつなげ、反基地運動を強化していこう!
北海道平和運動フォーラム 代表 長田 秀樹

拡大する日米共同軍事訓練
 安倍政権による「集団的自衛権」の行使を認める「安保関連法(戦争法)」施行以降、自衛隊と米軍との「実戦」に備えた共同訓練が拡大している。2019年4月から運用が始まった新しい「防衛計画の大綱」では、北海道が「訓練適地」に位置づけられ、同年9月には、道外の部隊としては初めて九州・沖縄を管轄する陸上自衛隊西部方面隊と米陸軍との共同訓練が北海道東部の「矢臼別演習場」で実施された。
 さらに、2020年1月22日から「北海道大演習場」において、自衛隊と米海兵隊との「日米共同訓練(ノーザン・ヴァイパー)」が実施され、普天間基地所属のMV-22オスプレイが参加することになった。日本国内における「日米共同訓練」としては、過去最大規模の日米両部隊で4,100人が参加し、オスプレイの補給拠点として民間空港である新千歳空港に隣接する「航空自衛隊千歳基地」を使用する。「千歳基地」は一部民間機も使用しており、米政府が求める「自衛隊基地も民間施設もより自由に軍事使用できる」ことを加速するものと言わざるを得ない。
 普天間基地所属のオスプレイはすでに2度の墜落事故を起こしている。2016年の名護市沖での空中給油中時の事故は、米軍の緊急時のチェックリストに「ホースやほかの装備がオスプレイにぶつかることがありうる。プロペラにぶつかれば大惨事を引き起こしかねない」と、あらかじめ機体の構造上の危険性が記されていることが判明した。また、2017年のオーストラリア沖で揚陸艦「グリーンベイ」への着艦に失敗した事故は、「オスプレイの強い下降気流が揚陸艦の艦体に跳ね返りローターの弧に入り込んだ」ものとされており、明らかに安全性に問題がある欠陥機と言わざるを得ない。
 オスプレイが参加しての北海道での「日米共同訓練」は2017年8月以来2回目となる。オーストラリア沖で墜落事故を起こしたにもかかわらず、事故原因を明らかにしないまま直後に訓練を強行し、飛行ルート等も一切明らかにせず、住宅密集地での飛行や沖縄県外では初の夜間飛行、訓練終了後も通告なしで飛来するなど、まさに米軍の「やりたい放題」であった。


航空自衛隊千歳基地ゲート前で日米共同訓練に抗議
2020年1月14日
全国基地問題ネットワークが北海道で抗議行動
 2020年1月13日、全国基地問題ネットワーク主催の「WEDON'TNEEDTHISOSPREY!日米共同訓練の中止を求める抗議集会」が千歳市で開催され、全国・全道から500名が結集した。講演で、半田滋(東京新聞論説兼編集委員)さんは、安倍政権による「安保関連法」制定で「護衛艦『いずも』の空母化や自衛隊日報隠蔽問題など、専守防衛や文民統制といった日本の防衛政策の基本がぐらつき始めた」と指摘した。また、飯島滋明(名古屋学院大学教授)さんは、「オスプレイは事故が多く、沖縄では騒音のため眠れず平和的生存権が侵害されている」と述べた。さらに、沖縄からは「辺野古新基地建設と自衛隊の南西諸島配備」、山口・秋田からは「イージス・アショア」の問題が報告された。

全国の反基地運動を共有していこう
 全国基地問題ネットワークは、1995年の沖縄での少女暴行事件以降、米軍基地の撤去を求める運動が全国に広がる中、東京・神奈川・長崎・沖縄・北海道の各平和運動センターが代表委員団体となって1997年に結成し、米軍基地を有する県や米海兵隊の実弾移転訓練など米軍による軍事訓練が強行されている県を中心に組織され、各都道府県による運動のネットワーク化に向け活動してきた。
 今回の「日米共同訓練」は、2016年9月1日の「日米合同委員会」の合意である「オスプレイの訓練は、日本本土を含め沖縄県外における訓練を増加させる」にもとづくもので、1月18日からは宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島演習場などにおいても、オスプレイが参加する「日米共同訓練」が実施されるように、今後、全国に展開することが危惧される。
 こうした状況だからこそ、全国基地問題ネットワークの運動が問われると考える。2019年11月の第19回総会において、新たに「平和フォーラム」が代表委員団体に、事務局を東京平和運動センターが担うこととなった。"緩やかな"運動体でいい。全国の運動を共有化し、「基地のない沖縄・日本」をめざす存在でありたい。
(おさだひでき)

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「関西生コン事件」の一断面から
「法令を守れ、公正な取引条件の実現を」がなぜ犯罪にされるのか
小谷野 毅(全日本建設運輸連帯労働組合書記長)

 2018年7月にはじまる「関西生コン事件」について、2019年12月、労働法学会の代表理事経験者ら78人の研究者は、「労働組合運動を理由とする刑事事件としては戦後最大規模」としたうえで、「信じがたい弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表した。(注)
 事件とされているのは、ストライキ、正社員化を要求する団交申し入れや団交拒否に対する抗議行動、破産・企業閉鎖に対抗する工場占拠闘争など、いずれも多くの組合が労働組合の当たり前の団体行動権の行使としてとりくんできた活動ばかり。研究者らが指摘するとおり、憲法28条の労働基本権保障や組合活動は刑事罰の対象としないとする労組法1条2項をないがしろにする深刻な事態にほかならない。

品質保証を求める活動が犯罪にされた
 そのなかで事件数でもっとも多いのが「コンプライアンス活動」で、これはやや馴染みのない組合活動かもしれない。わかりやすくいえば、建設現場の不正防止と公正取引の実現を求める活動だ。
 ご承知のように建設現場では法令違反が横行している。労働災害は長年にわたり全業種中トップであり、大和ハウスのような超大手ゼネコンやハウスメーカーのレオパレスに至るまで、建設業界では手抜きや大規模な欠陥工事が後を絶たない。企業利益を優先し、現場労働者のいのちや健康、消費者の財産を犠牲にする価格競争が、こうした犯罪的な不正を再生産しているのだ。
 1995年の阪神大震災では、阪神道路や山陽新幹線など一瞬にして倒壊したコンクリート構造物の倒壊原因が、安売り競争による欠陥生コンにあったことを明らかにした。私たちはその教訓をふまえて、ゼネコンの価格ダンピングと品質軽視を規制することで適正販売価格を実現すること、それによって中小企業の経営安定、労働者の雇用安定、品質確保を三位一体で実現するという趣旨の産業政策を確立した。その日常活動が「コンプライアンス活動」である。
 最近の活動スタイルは3人一組でおこなう現場巡回活動だ。クレーンの吊り荷の下で作業させている、クレーンの転倒防止策がとられていない、道路使用許可に違反してガードマンが配置されていない、産業廃棄物として処分されるべき汚水が側溝に垂れ流しされているなど。これら法令違反を発見すると1人が現場監督に申し入れをおこない、もう1人が自治体担当課や労基署、交通警察などに臨場して改善指導するよう要請する。残り1人がその様子をビデオで記録するのである。また、ゼネコンが品質管理のずさんな安売り生コン業者を使っていれば、安定供給と品質保証が約束できる生コン協同組合から仕入れていくよう働きかける。

国策事業をチェックすることが恐喝!?
 企業別労働組合が多数を占める日本では珍しいかもしれないが、コンプライアンス活動は世界の産業別労働運動では基本的な活動にほかならない。たとえばITF(国際運輸労連)は日本をふくむ世界各地にインスペクターを配置している。インスペクターとは組合が指名した法令違反の査察担当者のことで、港に寄港する船を訪問して産業別労働協約や国際的な安全基準が守られているかどうかをチェックする。その船に組合員がいるかどうかは問わない。BWI(国際建設林業労連)も世界各国の建設現場でインスペクションをおこなっている。ワールドカップやオリンピックのような巨大イベントの施設工事については国際調査団を派遣して労働環境をチェック。東京五輪のため突貫工事中の新国立競技場建設現場にも国際調査団はやってきて、月28日労働や、コンクリートパネルを吊り上げた下で作業させる危険事例などについて、日本政府と東京都などに質問状を送った。
 こうしてみると私たちのコンプライアンス活動が特段変わったことをやっているのではないことが理解されると思う。しかし、警察と検察はこの活動を敵視して、「軽微な不備に因縁を付けた」、つまり、暴力団のゆすり・たかりになぞらえて恐喝未遂事件にしたのである。不正を告発するビラまきが威力業務妨害だとして逮捕、起訴された組合員も多数いる。法律を守らず、品質不安のある生コンを使う側が、どうして「被害者」なのか。
 新国立競技場の現場では、「現場内で写真を撮ったり、得た情報を流出させたあなたは『国家機密漏えい者』/あなたの軽率な行動が国家事業を揺るがす」などと書かれたポスターが貼られていた。「見ざる、聞かざる、言わざる」で働けということだ。関西生コン事件の本質がここに示されているのではなかろうか。
注・声明全文はホームページ「連帯ユニオン中央本部」に掲載。
(こやのたけし)

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多くの問題を抱え日米貿易協定が発効
トランプ追従、消費者無視の安倍政権
全日本農民組合連合会 書記長 市村 忠文

 2020年1月1日から日米貿易協定が発効しました。新聞やテレビでは「食肉の輸入価格が下がって消費者に恩恵がある」などと報道されましたが、そうでしょうか。内容を精査すると、日本がこれまで結んできた環太平洋経済連携協定(TPP)や、ヨーロッパ連合との経済連携協定(日欧EPA)に比べても、多くの問題が見えてきます。

歯止めない牛肉の輸入拡大
 安倍晋三首相は「両国の全ての国民に利益をもたらすウィンウィンの協定だ」と述べました。しかし、交渉は最初から大統領選挙の再選をめざすアメリカのトランプ大統領のペースで、極めて短期間に進められました。農産物については、TPPによってオーストラリアなどが日本に輸出する牛肉などの関税が下がったために不利になった米国の農業界に配慮し、交渉の前提として関税水準をTPP並みにすることを日本から提起しました。最初から手の内を見せる通商交渉などありえないことです。
 その結果、牛・豚肉などは軒並み現在のTPPの水準まで一気に関税が下がり、大幅な市場開放が行われました。そのうえ、セーフガードという、輸入が急増した時に関税率を上げて制限をすることが国際的に認められていますが、日米協定で牛肉についてはセーフガードを発動する水準を超えて輸入された場合は、すぐに発動水準を上げるための協議をすることが決められました。これではセーフガードの意味をなしません。
 一方、日本からの自動車の関税は、TPPでは撤廃と決まっていたものが継続協議で妥協するなど、日本側の譲歩だけが目立つ「不公平な協定」となりました。安倍首相は「自動車は関税撤廃が前提」と日米首脳会談で合意したと国会で答弁しましたが、協定では「さらなる交渉の対象」とされているだけです。野党側が関税撤廃の根拠を求めても出されませんでした。
 また、今回の協定は世界貿易機関(WTO)のルールにも違反しています。二国間・多国間の貿易協定は、原則的に関税撤廃率90%以上の場合だけ認められています。各国が勝手に協定を結んでブロック経済化することを避けるためです。しかし、アメリカは自動車の関税撤廃を約束していないので、撤廃率は50%台になります。日頃から「世界の自由貿易ルールを守る」と強弁する安倍首相が、WTO違反を容認したのです。
 このように、米国追従と都合の悪い情報は隠ぺいする安倍政権の体質が如実に示されたのが日米貿易協定なのです。


多くの国会議員も参加した日米貿易協定問題の院内集会
(10月10日・衆議院議員会館)
貿易拡大は食や環境問題の解決に逆行
 それでは、私たちの暮らしにどう影響があるのでしょうか。まず、食料自給率の問題です。この間の安倍政権の農政により食料自給率は低下を続け、2019年は37%と、ついに過去最低になりました。政府はTPP協定の時から一貫して、国内対策によって農畜産物の生産量や農家所得は減少することはなく、自給率も維持されると強弁してきました。ところが、TPP11、日欧EPAの協定が発効してから、牛肉や豚肉の輸入は過去10年で最多水準を更新しています。東京大学の鈴木宜弘教授は「3つの協定によって、牛肉の自給率は、2035年に現在の36%が16%に、豚肉も49%から11%に低下。牛乳や乳製品なども28%に、野菜は43%、果物でも28%になる」と予測しています。
 また、食の安全問題もあります。アメリカで牛の成長を促進するために使われる肥育ホルモンに発がん性の疑いがあるとして、EUは米国からの輸入を止めており、いまだに決着していません。また、遺伝子組み換えやゲノム編集された食品もアメリカは輸出拡大を狙っていますが、それに合わせるように、2019年、日本ではこれらの食品表示の改悪が行われました。
 一方、牛のげっぷや糞尿によるメタンガスが地球温暖化の大きな要因になっていると環境団体から指摘されています。さらに、牛肉1キロを作るのに飼料として穀物10キロが必要であり、8億人と言われる世界的な飢餓問題とも関連します。このように、農畜産物の貿易拡大は、国内外の食や環境にも大きな影響を与えるものです。
 日米交渉はこれで終わったわけでありません。日米首脳の共同声明で「協定発効後4ヶ月以内に次の交渉課題を協議する」ことになっています。さらに「米国は交渉において、日本の農産品に関する特恵的な待遇を追求する」とも記されている。これは、今回の協定にはないコメなどの残された農産物や、食の安全や医療・医薬品などを含め、幅広い分野で再交渉を行うということです。
 平和フォーラムも参加する「TPPプラスを許さない!全国共同行動」は、今後も日米交渉に対し、農産物問題だけではなく、幅広く私たちの暮らしにつながる問題として運動を続けることにしています。
(いちむらただふみ)

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上関原発ボーリング調査(工事)と計画中止を求めて
上関の自然を守る会共同代表 高島 美登里

 2019年11月、福島第一原発事故以降、静かだった上関原発予定地田ノ浦に緊迫した空気が流れました。中国電力が原子炉設置許可申請のためのボーリング調査(工事)準備作業に着手しようとしたからです。

県知事が原発建設に向けた埋立を許可
 その背景には7月に、村岡嗣政山口県知事が予定地の埋め立て免許再延長を認めたことにあります。公有水面埋め立てをめぐっては3・11福島第一原発事故を受け、当時の二井関成知事が埋め立て中止を中国電力に申し入れ、免許は失効するはずでした。ところが、中国電力は失効直前の2012年10月に延長申請を提出しました。山口県は4年にわたり判断を引き延ばした挙句、2016年に延長許可、更に今回の再延長許可です。今回の再延長許可には以下の問題点があります。
 第一に予定地の正面わずか3.8kmに位置する祝島島民の意思を無視していることです。祝島では漁業を中心とした生活を守るために住民の90%が1982年の計画浮上以来38年間反対し続けています。
 第二に国のエネルギー政策において原発の新設はリプレースされていません。県が許可した唯一の根拠は重要電源開発地点指定ですが、これはフクシマ以前の2001年に出されたもので解除して然るべきものです。
 第三は今回の再延長は通常の竣功期限(3年)にボーリング調査(工事)期間6ヶ月を加えていることです。このボーリング調査(工事)は2009年に提出した原子炉設置許可申請に対し、不十分であるとして追加調査を命じられた事項への対処です。フクシマ以降、新規立地基準など存在せず全く根拠がありません。中国電力が再稼働基準を参考に勝手に調査(工事)を実施するのです。
 第四は田ノ浦には環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類に指定されているヒガシナメクジウオはじめ希少海生生物や海藻が生息しています。2006年のボーリング調査でカサシャミセン(2億年前から生息し生きた化石と呼ばれる)やスギモク(日本海特産種の海藻)などが降り積もった泥の影響で死滅しました。このダメージを繰り返させてはいけないとボーリング調査(工事)に先立ち、上関の自然を守る会は、ヒガシナメクジウオの事前調査を実施しました。するとどうでしょう。田ノ浦湾内9か所のうち、ボーリング予定地点に最高密度で生息していたのです!私たちにはヒガシナメクジウオが「僕たちの生命を助けて!!」と叫んでいるように聞こえました。
 第五にフクシマ以降、原発交付金の大幅減により、町長自ら「原発財源に頼らない町政運営」を迫られ、風力発電2基を建設するなど町内世論に変化が起きています。今回の調査(工事)は推進反対の対立構造を再燃させます。


2019年11月26日、原発建設予定地の
田浦海岸での抗議行動。後方に祝島が見える
原発に頼らない町づくりで計画中止へ
 根拠のない無駄な調査はやめさせ、再延長許可を取り消すよう、地元反対組織や原水禁、上関の自然を守る会などが再三、山口県に申し入れましたが、県は許可を取り消さず、中国電力は聞く耳持たずの今回の強行です。
 ことここに至っては、実力行動しかありません。11月8日から祝島の漁船が現場海域に繰り出し、監視行動を行う一方、田ノ浦海岸では守る会や県内外の市民団体が終日座り込み、抗議の意思を示しました。
 攻防は1か月余り続き、12月16日、中国電力は荒天や祝島漁業者の理解が得られないことを理由に調査(工事)中断を発表しました。しかし、社長は年度明けに調査再開を表明しており予断を許しません。
 上関海域は1960年代に瀬戸内海全域で埋め立てや護岸工事、海洋汚染が進む中、最後に遺された手つかずの自然が残る生物多様性のホットスポットです。国内外の研究者から「奇跡の海」と呼ばれ高い評価を受けています。この豊かな自然に育まれ、町民は漁業や農業など一次産業を中心に暮らしを営んできました。原発問題の根底には国の政策による一次産業の衰退、過疎という深刻な経済問題が潜んでいます。この根本問題の解決なしには原発計画を中止に追い込むことはできません。祝島以外の地区でも漁業者と連携した鮮魚の産直や未利用海藻の商品化、自然体験型宿泊施設の開設など新たな兆しが生れています。中国電力が原発計画と共に持ち込んだのは「一時産業は衰退し町はダメになる」という自己否定でした。最近「ここは何も無い所」と言っていた住民が「確かに自然は豊かだよね!」と誇らしげに言うようになり、故郷への誇りと愛情を取り戻しつつあります。
 ボーリング調査(工事)や埋め立てが中断している今こそ、反撃のチャンスです。原発に頼らない町作りが今こそ急務です。
 最後になりますが、本活動に際し、全国からの温かいカンパを頂戴しましたことに篤くお礼申し上げます。今後とも、地元住民を中心に、原水禁など労働団体、自然保護や事故が起これば被害を被る広範な市民など様々な側面から力を合わせ、計画中止まで頑張りたいと思います。
(たかしまみどり)

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再稼働をくい止め、原発稼働ゼロにむけた運動を進めていこう!
2020年脱原発の課題
原子力資料情報室 共同代表 西尾 漠

 2020年も、反原発・脱原発の課題は目白押しといえる。まずは、2019年に1基も新規の再稼働をさせなかった実績を2020年も維持することだ。
 原発マネー不正還流の発覚で見通しが立たなくなったが、関西電力は、原子力規制委員会の新規制基準に適合しているとされた高浜原発1号機と美浜原発3号機の再稼働計画を放棄していない。60年まで運転期間の延長を許可された老朽炉である。何としても阻止しなくてはならない。
 新たな新規制基準適合は、既に審査書がまとめられた女川原発2号機に加えて、島根原発2号機でと予想されている。原子力規制委員会の審査を止めるのは難しいが、立地自治体の再稼働同意(事前了解)を阻止することこそ、運動の出番だ。宮城県石巻市の「女川原発の避難計画を考える会」は2019年11月、避難計画に実効性がかけているとして知事、市長を相手取り、同意差し止めの仮処分を仙台地裁に申し立てた。避難計画の実効性欠如はどこでも指摘されており、そもそも避難計画が策定できていないところも多い。周辺自治体も巻き込んだ再稼働阻止の大きな柱の一つである。
 東海第二原発の再稼働をめぐっては、2020年1月6日から「いばらき原発県民投票の会」が県条例直接請求の署名集めを開始した。島根原発2号機の再稼働についても、住民投票条例制定運動にむけた動きがある。
 再稼働を食い止めれば、2020年は稼働原発ゼロにどんどん近づいていく。伊方原発3号機の運転差し止め仮処分が1月17日、広島高裁で決定されたうえに、特定重大事故等対処施設の設置が期限に間に合わないことから、3月17日までに川内原発1号機、5月21日までに同原発2号機、8月3日までに高浜原発3号機、10月8日までに同原発4号機は、確実に運転を停止するからだ。大飯原発3・4号機は定期検査で止まる。
 他方で4月1日から新たな検査制度が施行され、定期検査が電力会社の自主性に委ねられることから、検査期間の短縮と検査間隔の延長が懸念される。しっかり監視していかなくてはならない。

第6次エネルギー基本計画策定のスタートに向けて
 廃炉が進めば現行エネルギー基本計画に盛られた「2030年原子力発電比率22~24%」の目標は、ますます非現実的となる。2020年に開始されると見られている第6次エネルギー基本計画策定に向けて原子力ムラは、パリ協定の運用開始で気候変動対策の強化が必要と「発電時にCO2を出さない原子力」を錦の御旗に新増設の盛り込みを図ろうとしているが、新増設こそ現実にありえないことを内心では承知の上だ。
 新増設の盛り込みで原発の有用性を宣伝し、既設原発の維持に望みをつなごうとしているだけに、未申請の新規制基準適合性審査申請に圧力がかかることも考えられる。そうした動きを許さない運動も必要である。「安全対策費」の高騰と、それにもつながる電力各社の工事発注のあり方の追及が、ブレーキとなる。気候変動問題については、反石炭火電の運動とも手を結び、真に有効な対策を世論に訴えていくことが大切だろう。
 第6次エネルギー基本計画に新増設を盛り込ませないのではなく、新増設はしないと明記させることを目標としたい。4月1日には、先行した東京電力に続いて、8電力会社で発電と送電の法的分離がスタートする。電力システム改革をそこで終わりとすることなく、より望ましい姿を追求していくこと、原子力発電を優遇・温存するための市場制度設計を見直していくことも、第6次エネルギー基本計画の課題となる。

やっかいな後始末
 後始末がいちばん問題なのは、言うまでもなく福島原発事故だ。除去土壌等の再生利用・埋め立てが、廃炉廃棄物のクリアランス(規制解除)とからまって、2020年の大きな課題となる。トリチウム等汚染水の処分問題は、オリンピック後に山場を迎えると予測されている。
 廃炉が決まったとたんに使用済み燃料の搬出先が問われる。六ヶ所再処理工場の運転を前提としていた虚構のツケである。同工場の新規制基準適合性審査は、日本原燃のお粗末な対応でずるずると遅れながらも、「国策」として合格が必至とされる。そのおかしさを審査書へのパブリックコメントで世論に訴えるとともに、地元自治体に操業合意をさせない大きな運動が、2020年には必要だ。
 あてにならない六ヶ所再処理工場に代えて、中間貯蔵施設という形で使用済み燃料の搬出先をつくろうとする動きとの対決が、2020年の課題である。関西電力は2020年末までに候補地を提示することを福井県に約束しているが、どこにもつくらせない運動を進めたい。
 なお2020年1月には伊方原発3号機で、使用済みMOX燃料を原子炉から取り出しプールに移すことが始まった。すぐ続いて高浜原発3号機でも初取り出しを迎える。六ヶ所再処理工場が仮に操業を開始できたとしても処理できないものであることを考えれば、新たなMOX燃料の装荷を止めることが重要だ。
 再処理後の高レベル放射性廃棄物の処分候補地を求めてNUMO(原子力発電環境整備機構)や資源エネルギー庁の宣伝活動が強化されている。岡山県の「放射能のゴミはいらない!県条例を求める会」では、この年末年始に、改選された6市町の首長から改めて高レベル放射性廃棄物拒否の文書回答を得て、県内全自治体の拒否回答を完全なものにした。全国のあらゆる自治体に拒否されてこそ、真剣に高レベル放射性廃棄物の後始末をどうするかの議論が始められる。それは、原発ゼロ法案の成立と連動するものである。
(にしおばく)

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米国の新たな核状況
INF対象ミサイル実験と新型低威力核弾頭製造

 射程500~5500kmの地上発射弾道・巡航ミサイル(核弾頭と通常弾頭の両方)の生産・実験・保有を禁止した米ロの条約──「中距離核戦力(INF)」全廃条約(1987年発効)──が失効してから約半年になります。まずINFをめぐる昨年の動きを簡単に整理しておきましょう。
 昨年2月、米トランプ政権は、ロシアの条約違反を理由に、条約廃棄意向をロシアに通告しました。ロシアは実験方式をごまかすことでINF対象範囲の射程を持つ巡航ミサイル9M729(NATO側呼称SSC-8)を陸上に配備しているというのが米国の主張でした。米国はまた条約に参加していない中国がINF対象ミサイルを多数保有していることも破棄意向の理由の一つに挙げました。2007年以来ロシアも条約を多国化するべきと主張していたこともあって、INF条約は、8月2日に失効しました。
 米国防省は、昨年3月、INF失効後に二つの通常弾頭型ミサイルの実験を行うとしていました。地上発射巡航ミサイルの実験を8月に、地上発射中距離弾道ミサイルの実験を11月にという予定でした。
 実際、米国は、条約失効から2週間余りの8月18日、カリフォルニア州サンニコラス島からINF対象の地上発射巡航ミサイル(射程約1000km)の実験を行いました。米国のNGO関係者は、INF脱退を強調するための実験であり、軍事的必要があってのことではないとの見方を示しています。「憂慮する科学者同盟(UCS)」のデイビッド・ライトは、米国は航空機や艦船(水上艦及び潜水艦)から発射できる何千発もの巡航ミサイルを保有していると指摘しています。例えば、米国は、2017-18年にシリアの目標に対し船から100発以上のトマホーク巡航ミサイル(通常弾頭)で攻撃を仕掛けたと述べています。(トマホークの核弾頭はすべて廃棄されています。)
 実験は、イージス弾道ミサイル防衛システムの垂直発射装置Mk-41を使って海洋発射型トマホークを発射するというものでした。ロシアは、米国がルーマニアに配備し、ポーランドでも配備を計画している地上配備型イージス・システム「イージス・アショア」の発射装置が将来、INF違反の巡航ミサイルの発射に使われうるとの懸念を表明していました。これに対して、米国は「このシステムには、トマホークのような攻撃用弾道・巡航ミサイルを発射するのに必要なソフトウェア、発射管制ハードウェア、支援装置がない」と主張していました。INF条約7条7項には、禁止対象のミサイルの地上発射を実際に実験しないと違反にならないとの規定があったので、能力の存在自体は条約違反にはならないと「米科学者連合(FAS)」のハンス・クリステンセンは説明しています。しかし、今回の実験は、システム変更が簡単にできることを示したもので、ロシア側の懸念が理由のないものではなかったことがわかります。
 11月に予定されていた通常弾頭型中距離弾道ミサイル発射実験は、12月12日に、カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から行われました。

近いうちに日本に配備?
 エスパー国防長官は、INF条約失効の翌日の8月3日に地上配備型の中距離ミサイルのアジア配備について「数カ月(での配備)が望ましい」と述べています。もっとも、「ただこうしたことは想定よりも時間がかかるものだ」(日経新聞)とも付け加えています。
 河野太郎防衛大臣は、10月4日、米国が中距離ミサイルの日本配備を計画しているとの報道を受け、「全くございません」と答えています。
 エスパー国防長官は、12月12日の実験後、「開発ができ、司令官らが必要とするとなれば、ヨーロッパ、アジアその他の同盟国と配備の可能性について綿密に協議する」と述べました。しかし、同盟国配備は無理であり、配備するとすればグアムというのが米国のNGOの間での大方の見方のようです。また、国防省関係者は、中距離弾道ミサイル(射程3000~4000km)の配備は少なくとも5年間はないと3月に述べていました。12月末に成立した2020年度米国防権限法では、資金をINF対象ミサイル調達・配備に使うことを禁止し(開発・実験は禁止せず)、代替措置などについて報告を義務付けています。

戦略原子力潜水艦用「低威力」戦術核弾頭生産開始
 昨年1月、戦略原子力潜水艦(SSBN)から発射するミサイル(SLBM)用の「低威力」核弾頭の製造がテキサス州アマリロのパンテックス工場で始まりました。トランプ政権の2018年「核態勢の見直し(NPR)」で、「使える核」の面での遅れ「ギャップ」を埋めるためものとして提示されていた計画一つです(もう一つは、「海洋発射巡航核ミサイル(SLCM)」)。これは、短期的目標として掲げられていたもので、SLBMに搭載されている既存の核弾頭W76-1の一部を改造してW76-2としました(原爆を起爆装置にして水爆を爆発させる仕組みの弾頭の原爆部分だけが作動する構造)。前者の威力が約100キロトンであるのに対し、後者は5-6キロトン(広島の原爆の3分の1程度)とされています。クリステンセンは、50発程度を製造する計画と見ています。
 米国は14隻の戦略原潜を保有しています(太平洋側のワシントン州バンゴール海軍基地所属8隻、太西洋側のジョージア州キングズ・ベイ海軍基地所属6隻)。12隻が運用状態、2隻は整備・修理状態という態勢です。それぞれ20基のトライデントⅡD5ミサイルを搭載。そのうちの2基にW76-2が搭載されるとクリステンセンは推測します。核問題の専門家ウイリアム・アーキンは最初のW76-2(複数)が9月に海軍に引き渡されたとの情報をニューズ・ウイーク誌電子版記事で紹介しています。例えば、米イラン戦争突入のような緊張状態の中で原潜搭載の「使える核兵器」が載っているメニューを見た大統領がどのような判断を下すのか。それがトランプ大統領だとどうなるのか。アーキンは、軍部関係者も懸念する事態の深刻さを指摘しています。
(「核情報」主宰田窪雅文)

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これからの高校生平和大使・高校生1万人署名活動

 ある日、署名活動を終えて戻ってきて、高校生と話していたとき「平和大使になって、署名活動もやって、すごいね。同級生ではここまで平和について活動している子はいないんじゃない?」と声をかけたとき、「そんなんじゃダメなんです。こういうことが当たり前になっていない今の日本がおかしいんです」と気圧されたことがあります。
 若者の平和活動に注目が集まっています。なぜなら、被爆者の話を聞くことが出来る「最後の世代」であると同時に、被爆者の思いを、平和の理念を引き継いでいく「希望の世代」であるとも思います。その一方で、注目されるということは、若者の活動自体が「珍しいもの」であるからでもあります。高校生に気圧されたように「平和活動して偉いね」ではなく、「自分たちの未来をしっかりとつくっていってね」と声をかけるべきなのかもしれません。

各地に広がる高校生の平和活動
 「政治」を自分のことと捉え、「戦争も核兵器もない平和な世界の実現」を求めて高校生1万人署名活動を行っている高校生が日本各地にいます。元々は、「高校生平和大使」が誕生し、平和大使と一緒に海外などへはいけないけれど、平和の思いを持って一緒に活動したいと長崎で始まったのが、「高校生1万人署名活動」です。高校生平和大使も2019年に第22代が選出され、今では全国各地で署名活動が行われています。平和センターや教職員組合などが支援する地域もあれば、高校生が独自に学校で署名を集め、送付してくることもあります。春には第23代の高校生平和大使の選考会がはじまり、また一段と活動の広がりとともに注目されると考えられます。
 2019年12月18日、「メンバーの確保」「署名活動の知名度の向上」「核・平和を考えてもらう」ことを目的に東京の高校生が企画し、ワークショップを行いました。二部構成にし、一部では「署名活動の説明」「第22代高校生平和大使による帰国報告」を行い、二部では「【戦争】をなくすための9つの方法」というアクティビティを行いました。Facebookでの告知を見て参加申し込みをした子や、街頭での署名活動の際に直接案内チラシを受け取って申し込みをした子など、初めて顔を合わせるメンバーばかりでしたが、準備段階での「議論が成立しなかったどうしよう」などという心配は杞憂だったと思うほどに、活発に意見が交わされました。同級生に誘われて参加した子からは「難しかったけど、有意義な時間だった」「学校ではこういう話が出来ないから、話せる場所があって良かった」と回答するアンケートもあり、若者同士で交流出来る場を提供することの意義は大いにあるのだとわかりました。東京の署名活動のメンバーは、今回のノウハウをもとに、定期的にワークショップを企画していくこととしました。若者が考えて行動に移していけるような場を、大人が提供し、見守ってあげることこそが、平和運動の継承につながるはずです。

海外の高校生との交流も
 今年も3月中旬には、韓国釜山にホームステイをしながら、在外被爆者と交流をする韓国訪問が予定されています。被爆74周年原水禁大会の長崎大会において、釜山に訪問した高校生が分科会で「訪問する前後で意識が変わった」と報告をしています。また、3月末には福岡で、九州地方の高校生が集まり「高校生平和サミット」が二日間にわたって行われます。そのほか、静岡県では年に一回「高校生ピースフォーラム」の実施をするなど、高校生が主体となって、企画の段階から一緒に話し合い実現するイベントが行われています。
 原水禁では、高校生平和大使を支援する全国連絡会を通して、2020年2月29日から3月1日までの二日間で、ビキニデーに関連する高校生の交流イベントを企画しました。なぜ原水禁が高校生の活動を支援するのか、原水禁運動とは何か、ビキニデーという被爆の実相を材料に、学んでもらいたいと思います。久保山愛吉墓前祭、焼津市民俗資料館での第五福竜丸展示コーナーの見学、ワークショップ、署名活動、ビキニデー集会の参加など、休む間もないほどの内容です。しかし、普段活動する場所を離れて、同世代の高校生と会話し、一緒に活動することで、高校生の意識は変わっていくはずです。
 高校生平和大使たちは過密スケジュールの欧州訪問を終えると「とてもハードだったけど、充実していた」と感想を述べます。ただただ、「楽しかった」という感想で終えるのではなく、感じたこと、体験したことを持ち帰って、その後の活動につなげてもらいたいと思います。今回のビキニデーに関する高校生の交流イベントも、同様に有意義な時間になるように、高校生と議論を重ねてまいります。
 高校生が活動する地域や支援者の皆様、一層のご理解とご協力をお願いいたします。
(橋本麻由)

賛同カンパ口座記号番号00100-2-486011口座名高校生平和大使を支援する全国連絡会

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加盟団体の活動から(第24回)
私鉄総連の取り組み
日本私鉄労働組合総連合会

 私鉄総連は、1947年(昭和22年)1月10日に結成されました。戦後の賃金闘争や輸送復興闘争から労働協約闘争、基地撤去や原水禁運動など、反戦・平和の運動、そして春闘や交通政策要求などに取り組んできており、この間、大きな組織的動揺や分裂もなく、産業別統一闘争を中心にたたかいを進めてきています。当初は、鉄軌道関係組織から出発し、バス専業組合、ハイヤー・タクシーなど加盟対象を広げ、現在は9地連、その他本部直轄で沖縄県連、ハイタク協議会を含め、227組合で活動をしています。
 持続可能な地域社会をめざすという観点から、高齢者や子どもといった交通弱者の交通手段はもとより、環境保全や災害時の移動手段、省エネ問題の解決などに公共交通は極めて有効な手段です。しかし、モータリゼーションの進展や少子高齢化の進行、規制緩和の弊害などの影響によって、鉄軌道・バス・ハイタクといった公共交通の利用者は年々減少しており、地域の移動手段を守るどころか、存続さえも危ぶまれている状況もみられます。このため、関係省庁や自治体などに対して、連携する各級議員などとともに要請行動をおこない、諸課題の解決や交通産業の活性化に向けた取り組みを進めています。
 また、平和行動としては、私鉄沖縄交流を1976年から取り組んでいます。戦後70年が過ぎてもなお、沖縄県内には多くの米軍基地があり、犯罪・事故・騒音の問題や民意を無視した環境破壊などが解決されないままになっています。このようななかで、少しでも多くの青年女性に、戦争の悲惨さや愚かさを知ってもらい、そして基地の存在や戦争の爪痕などを見ることにより、「平和」について改めて考え、二度と同じ過ちを起こさないという想いとともに、交流で培われた地連、単組を越えた繋がりを大切にし、平和運動をさらに広げていく取り組みを進めています。
 今後も私鉄総連は、「地域の発展」「地域住民の利便性の向上」「防災・減災機能の強化」なども含めた安全・安心な公共交通の確立、労働環境の改善等によって働きがいのある職場づくり、そして、交通運輸産業にとって欠かすことのできない「平和」への取り組みを強めるために、「一人でも泣いている者がないように」という基本理念のもとで組織一丸となって運動を展開していきます。

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加盟団体の活動から(第25回)
ユニオンネット平和センターの決意
ユニオンネット平和センター

 ユニオンネット平和センター(ユニオン平和)は、2019年4月25日に開催した平和フォーラム第21回総会で、中央団体の一員に加わることができました。私たち、「ユニオンネット平和センター」は、「健康で働き続け、生活のできる賃金」をスローガンに、全国で活動する地域ユニオンの協議体です。
 安倍首相は、「息を吐くように、ウソを吐く」のごとく、2020年の年頭挨拶から「賃金水準を上げ、正規雇用を増やしてきた」などと、ウソを繰り返しました。日本の賃金水準は、国際的に見ても、実質賃金の賃下げが続くのは、G7で日本のみ。第2次安倍政権発足からの8年で、非正規雇用労働者を300万人も増やしています。
 「泣いているものがないように、飢えているものがないように」など、労働相談を通じた呼びかけから、組合員の拡大と組織化を進めています。北海道から九州まで加盟する地域ユニオンは、32団体です。私たちの運動を牽引する指導部の多くが、「社会党・総評ブロック」で運動を経験してきた者たちです。
 今日、改憲の動きや、職場での不当労働行為が当たり前に強いられている現状に、「平和・人権・環境」の理念を持つ平和フォーラムは、より重要になっています。私たちは、微力ですが、平和フォーラムの一員に加わることから、地域と職場から「平和・人権・環境」を訴え、平和フォーラムの運動を進める思いでいます。
 9条改憲阻止、原発再稼働反対、辺野古新基地建設反対等の行動が続いています。19日国会行動をはじめ、新宿駅西口3000万人署名、国会院内集会などの参加から、総がかり行動の仲間たちと繋がりを持ち、信頼も生まれています。安倍内閣は、国会が終了した年末の12月27日に「自衛隊の中東派兵」を閣議決定しました。これは国会議論の無視、自衛隊の海外派兵を現実にした憲法違反であり、国民を戦争に引きずり込む暴挙です。私たちは、安倍政権の暴挙を許しません。そのためにも1日も早く安倍内閣を退陣させるしかありません。全国、各地から安倍内閣退陣、戦争反対、平和を守れ、の声と行動を起こし、「市民と野党」そして労働者の共闘で安倍内閣退陣にむけ頑張る決意でいます。

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核のキーワード図鑑 橋本 勝


核軍拡も宇宙時代へ

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短信

安倍政権を退陣させる! 2.6市民集会
日時:2月6日(木)18:30~20:30
場所:北とぴあさくらホール(JR・地下鉄「王子」下車)
内容:講演・講師古賀茂明さん(元内閣審議官)
講演・講師宮子あずささん(看護師)
主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会

「建国記念の日と憲法を考える集会-日本と韓国の今-」
日時:2月11日(火・休日)13:30~16:30
場所:日本教育会館8階第二会議室(地下鉄「神保町」「竹橋」下車)
内容:第一部シンポジウム「日韓に壁はあるか-交流の現場から考える-」
 第二部報告「教科書検定と採択-様々な動きをめぐって」
 報告者相可文代さん
主催:フォーラム平和・人権・環境

ニュースペーパーのリニューアルについて
 みなさまにご愛読いただいている本紙・ニュースペーパーですが、2020年4月号より紙面をリニューアルし、原則8ページ(現在は12ページ)で発行致します。料金につきましては、これまで印刷費の高騰や消費税の増税等がありましたが、1部¥200、年間購読¥2,000で発行してまいりました。今後も同料金で発行し、引き続きご愛読いただけますよう取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

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