イラク情勢Watch vol.25 06年2月6日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲

       毎週更新(予定)


Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)米軍による人権侵害の続くファルージャ
3)ラマディでの軍事作戦開始〜現地医療団体がジュネーブ条約の遵守を訴え〜
4)スンニ派政党と世俗派政党が連携−イラク国会で



1)週間イラク報道Pick up

【06.2.4 共同】イラク陸自、数カ月で撤退 柳沢副長官補が明言

【06.2.4 時事】中国にらみ太平洋の戦力増強=テロ対応重視、同盟も強化−米国防計画見直し

【06.2.3 読売】米政府、イラクなどの戦費を1200億ドル追加要請

【06.2.1 毎日】<米シーハンさん>米連邦議事堂内で反戦スローガン、逮捕

【06.1.31 朝日】英軍死者が100人に イラク

【06.1.27 共同】武装勢力の投降狙い妻拘束 イラク米軍、人権団体批判

【06.1.26 共同】米英首脳を提訴へ 大量殺人でフセイン被告



2)米軍による人権侵害の続くファルージャ

 2004年11月の総攻撃以来、イラク西部の街ファルージャは、米軍の管理下に置かれ、さながら街全体が巨大な監獄のような状況になっているという。ファルージャ総攻撃の実態を伝える報告書を作成するなど、イラクの人権状況を知る上で重要な情報を発信し続けている、現地人権団体「イラクの人権モニタリング(MHRI)」が1月29日付けでニュースレターを発行した。MHRIのニュースレターによれば、外部の目から隔離された中で、さまざまな人権侵害が起きているとのこと。以下、ニュースレターから部分的に引用。 

・昨年末12月26日、Al-Dubbat/Al-Oula地区の Al-Somoud club 通りで、若い男性が何の理由もなく、米軍に射殺された。

・今年1月6日、 Al-Dubbat/Al-Thaneya地区で、家を建てていた男性が米軍に撃ち殺された。

・イスラム教徒にとって神聖な祭りであるイドゥル・アドハ(犠牲祭)の前日であった1月9日、Al-Mu’allimeen 地区で40人の若者が不当に拘束された。

・イドゥル・アドハの2日目の11日にもAl-Treiza地区で16人が拘束された。

・1月16日、結婚式の撮影をしていたイラク人カメラマンが、米軍に射殺された。

・おもちゃの銃で遊んでいる少年達が米軍に射殺されるケースが相次いでいる。

・1月25日、イラク西部の街ファルージャのナザル地区で女性が家族の目の前で米兵に強姦された。ファルージャでは同22日から「懲罰的な」家宅捜索が行われ約50人が拘束されていた最中のことだった。



3)ラマディでの軍事作戦開始〜現地医療団体がジュネーブ条約の遵守を訴え〜

 イラクの医療関係者によるNGO「ドクターズ・フォー・イラク」は、1月29日付けの声明で、イラク西部の街ラマディへの米軍とイラク軍による攻撃で住宅地が攻撃を受け、医療活動も妨げられていると訴えた。

 ラマディはバグダッドから100キロ程西にある街で人口は約75万人。ドクターズ〜の声明によると、米軍ヘリが人口が密集した住宅地へミサイル攻撃を行っており、狙撃手があちこちに作られた検問所に陣取っているのだという。検問所では、医療関係者や患者を乗せた救急車も止められてしまっている。ラマディの病院では基本的な医薬品も不足しており、現地の医者達は軍事作戦が一般人に与える悪影響を訴えている。ドクターズ〜は、ジュネーブ条約に従い、医療関係者や患者達が安全な移動ができるよう、米軍とイラク軍に求めている。



4)スンニ派政党と世俗派政党が連携−イラク国会で

 1月28日、イラクのスンニ派政党と非宗教的な世俗派政党は連携を組むことで合意した。カタールに本拠地を置くイスラム系二ュースサイト「イスラムオンライン」やロイター通信などが報じた。昨年末12月15日に実施した国民議会選挙で、定数275議席中、121議席を得て首位を保ったシーア派連合会派の「統一イラク同盟」が、クルド人連合会派「クルド同盟」(53議席)と連立政権を組むことで合意されている。そのため、スンニ派政党と世俗派政党は、イラク国政において埋没することを恐れ合流した模様だ。

 スンニ派連合会派の「イラク合意戦線」(44議席)は、もう一つのスンニ派連合会派「イラク対話戦線」(11議席)、アラウィ元首相率いる世俗派政党「イラク国民リスト」(25議席)との連立を決めた。これにより、スンニ派政党と世俗派政党を合わせた議席数は80議席となり、イラク国民議会での第二の勢力となる。 この第二勢力が目指すのは、昨年10月に承認されたイラク新憲法の改正、特に「連邦制」についての記述の削除だ。シーア派、クルド人の多い地域は油田地帯や農業地帯であり、地方に独立国並みの権限を与え、資源の独占をも可能にする連邦制は「イラクの分裂につながる」とスンニ派や世俗派政党は猛反対しているのだ。またイラク内務省下の治安部隊がスンニ派住民・宗教指導者を拘束、虐待・虐殺していたことについて、新政権がどのような処置を取るかも大きな問題だ。スンニ派・世俗派政党は内務省が特定の政党に支配されてはならない、としている。

 前出のイスラムオンラインの記事(29日付け)によると、スンニ派・世俗派政党は大統領職をスンニ派の政治家に与えるよう、シーア派政党と協議しているという。大統領職は象徴的なもので、実権は首相にあるが、大統領職にスンニ派がつくことで、スンニ派の存在感を示し、イラク・ナショナリズムに基づく宗派・民族の融合をめざす狙いがあると思われる。



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