イラク情勢Watch vol.41 06年8月29日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲



Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)「人道支援とは名ばかり」空自が米兵を輸送、国会議員が指摘
3) 「6000人もの市民が拷問死」現地人権団体が国連に調査と加害者の裁判を要請
4)【番外】レバノン・フォトレポート


1)週間イラク報道Pick up

【06.8.29 時事】アブグレイブ刑務所閉鎖=イラク人虐待の舞台−英紙

【06.8.28 ロイター】イラク軍とシーア派武装勢力が戦闘、イラク兵20人死亡

【06.8.26 産経】安倍氏、自衛隊派遣の恒久法制化に意欲

【06.8.23 朝日】共和党・マケイン議員、「イラク戦争の困難さ説明不足」



2)「人道支援とは名ばかり」空自が米兵を輸送、国会議員が指摘

米空軍のニュースサイト「エアフォースリンク」は8月3日付けで、航空自衛隊のC−130輸送機が7月31日に初めてバグダッド空港に乗り入れたことを伝え、C−130輸送機の搭乗を待つ多国籍軍兵士の写真を掲載した。

  

 同記事によると、空自は定期的にバグダッド空港に乗り入れるのだという。同記事では「多国籍軍のメンバー」としか書かれていないが、砂漠仕様の軍服などから、恐らく米軍兵士だと思われる。この記事に関して、日本共産党の赤嶺政賢、緒方靖夫両議員が今月11日の国会審議で指摘。「人道支援とは名ばかりで、実態は多国籍軍の支援が中心だ」と批判した。

 エアフォースリンクでは、過去にも「自衛隊は有志連合の要」(6月28日付け)という記事が掲載され、「自衛隊は創設以来初めて戦闘地域に派遣される」との記述があった。これに関し、先月28日に民主党の鳩山由紀夫議員が問いただしたが、小泉首相は「自衛隊の派遣されているところは非戦闘地域」との主張を繰り返している。



3)「6000人もの市民が拷問死」現地人権団体が国連に調査と加害者の裁判を要請

 現地人権団体「イラク人権監視センター」は今月23日付けで国連イラク支援ミッション(UNAMI)宛の要請書を公開。志葉を含む各国のジャーナリストにも送られた。 

 報告によると、イラクでは、これまで約6000人の市民が拷問を受け、殺されている。拷問はドリルを使い体に穴を開ける、火傷を負わされたり、強酸など化学薬品をかけられたり、眼球をくり抜かれたりするなど、極めて残忍なものだ。また、誘拐や暗殺、刑務所での性的虐待(同性愛の強要など)、スンニ派やキリスト教徒の住民の強制移住なども横行しているという。これらの人権侵害はイラク警察や治安部隊などによって行われ、イラク治安当局の責任は重いとしている。

 イラク人権監視センターは、UNAMIに対して、イラクでの人権侵害について調査を行い、ルワンダやユーゴスラビアでのような戦争犯罪を裁く裁判を行うこと等を要請している。 



4)【番外】レバノン・フォトレポート

 本コーナー編集の志葉は今月8日から18日まで、イスラエル軍の空爆・侵攻を受けたレバノンで取材を行った。レバノンはシリア、イスラエルと国境を接する中東の小国で、人口約377万9000人(05年推計)で、面積は岐阜県ほど。最近は活発な経済活動を続け、かつて「中東のスイス」と呼ばれた繁栄を取り戻しつつあった。しかし先月12日、現地イスラム・シーア派政党ヒズボラの擁する民兵組織がイスラエル兵士2名を拉致したことを口実に、イスラエルはレバノンへの攻撃を開始。交通網や電力・水道施設が多数破壊された上、多くの都市や村々、特にレバノン南部では民間人の居住地が壊滅的な被害を受け、全国民の4分の1近くが避難生活を余儀なくされた。




イスラエル軍による空爆で多くの民間人が死傷。女性や子ども、老人の犠牲者も
少なくなかった。ベイルートにて



爆撃で火傷を負った少女。南部スール市にて



爆撃で崩壊した高層住宅。スール市にて。



 電力施設が破壊され、水道の配給も滞っていた。そのため、不衛生な水を
飲まざるをえない避難民、特に子どもは病気になりがちだった。スール市にて。



 南部のビントジュベイル市では街の7割以上が破壊されていた。救急車も
破壊されるなど、イスラエル軍の攻撃は正に無差別なものだった。



 広範囲に子爆弾が拡散し、その一部が地雷化するクラスター爆弾は、非人道
的兵器として、その使用が批難される。写真は南部ティブニーン市で見つけた、
クラスター爆弾の子爆弾。



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