イラク情勢Watch vol.48 06年12月28日
         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲



Topics
1)週間イラク報道Pick up
2)数字で観るイラク情勢
3)横行する大量誘拐
4)混迷のバグダッド イラク市民の声は
5)「日本の対イラク支援見直しを」国内NGOネットワークが要請



1)週間イラク報道Pick up 

【06.12.27 東京】イラク国民和解に暗い影 フセイン被告の死刑確定

【06.12.27 共同】けた違いのイラク人死者数 冷めた視線の市民ら

【06.12.26 読売】イラク駐留英軍、バスラの警察署を急襲・爆破7人死亡

【06.12.24 IPS/JanJan】スンニ派からのシーア派民兵「掃討」の申し出を検討した米国

【06.12.23 読売】「米軍撤退なら攻撃せず」イラク武装勢力が停戦声明

【06.12.20 ロイター】イラクでの米軍規模拡大を検討=ブッシュ米大統領

【06.12.13 CNN】米大統領がイラク政策協議終了 新戦略発表は来年1月



2)数字で観るイラク情勢

03年3月から今年6月以来の死亡者数:65万5000人(英医学誌「ランセット」推計)
イラク保健省発表の死亡者推計:15万人(06年11月発表)
イラクでの米軍死亡者数:2980人(06年12月統計)
イラクでの米軍負傷者数:2万2032人(06年12月統計)
イラク国内避難民:160万人(UNHCR発表)
イラク国外へ脱出した難民:180万〜300万人以上?(UNHCR、ヨルダン及びシリア)
イラク人口の47%=1,200万人が食料配給に依存(WFP報告。2006年5月)

  
  
宗派間対立の影に隠れがちだが、米軍による非戦闘員の殺害も続いている。

日本の対イラクODA:
50億ドル。うち、15億ドル(無償資金提供)、8.5億ドル(有償資金提供全体は35億ドル)が実施・決定済み

自衛隊イラク派遣総経費:
785億円。内、「装備品の整備費」「運搬費」「隊員の派遣手当(給与とは別)」の3項目だけで全体の6割。一つの学校の補修費用が600万円とされるから、「派遣手当」の128億円だけで2000以上の学校を補修できる計算。



3)横行する大量誘拐

 先月末くらいから、バグダッド周辺では数十人から百人以上もの人々が一度に誘拐される大量誘拐が何度も起きており、目撃者達からの証言から、民兵組織やイラク治安部隊の犯行もしくは関与が疑われている。以下、バグダッド在住のイラク人ジャーナリスト、イサム・ラシード氏からの報告を抜粋。
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 11月末に、イラク高等教育省を40台以上の警察車両が乗った民兵組織と思われる武装集団が、職員180名を誘拐、3日後、遺体が発見されるという事件がありました。私は目撃者達にインタビューしましたが、この事件には多くの疑問点があります。つまり、

・なぜ、民兵達が警察車両に乗っていたのか?
・なぜ、拘束した大勢の人々を乗せて、彼らの車は自由に移動できるのか?
・誘拐が起きた2時間半の間、イラク軍は一体何をやっていたのか!?
・米軍は何をやっていたのか!?
・なぜ民兵が持っていた銃はイラク警察が使っている銃と同じものだったのか?

これらの疑問に対して米軍やイラク政府は何ら答えていません。12月17日にも、同じような車に乗った民兵達に、イラク赤新月のスタッフ27人が拘束されてしまいましたが、彼らの行方はいまだにわからないのです。また12月10日にも、バグダッドの市場で、50人が連れ去られました。目撃者の話では、犯行グループはマハディ軍やバドル団などのシーア派民兵でした。彼はこう語ります。「彼らはイラン出身だと思う。我々が怯えて出歩けなくなることで、バグダッドの機能を停止させたいのではないでしょうか」。

そして、民兵達はついに女学生達にも手をかけました。今月20日、アルムスタンシリア大学から3人の女性が誘拐され、3日後に遺体安置所で3人の亡骸が見つかりました。彼女達は強姦されていました。なぜ、民兵達は女学生達を殺したのか。元イラク軍関係者はこう話します。「男子学生が危険を避けるため大学に行かなくなったので、今度は女学生達を大学に行かさないようにしたいのでしょう」。
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4)混迷のバグダッド イラク市民の声は

 今年2月のアスカリ聖廟爆破事件以来、シーア・スンニ両派による激しい宗派間対立が続くバグダッド。なぜ、衝突は続くのか?インターネット等を通して連絡のつくイラク人達に聞いてみた。質問は、以下の四つ。

A. 市民を無差別に殺傷するなど、暴れまわっているシーア派民兵は、イラク隣国でシーア派国家のイランから支援を受けているという見方があるが、もしそうならば、イランはなぜイラク情勢を混乱させたいのか。

B. 米軍はなぜ宗派間の殺し合いを止めることに消極的なのか?あるいはイラクが内戦状態になることを望んでいるのか。

C. 今やマハディ軍はイラクのシーア派民兵の中でも最大勢力となったが、マハディ軍を配下とするサドル派のムクタダ・サドル師は、イラクの内戦を止めるつもりはないのか?あるいはマハディ軍の統制が取れない状況に陥ったのか。

D.イラクのメディアは宗派間対立を煽ってきたと思うか。

 以下、質問に答えてくれたイラク市民の回答。本人達のセキュリティに配慮し、名前はイニシャル表記とする。

Mさん(NGO幹部):
A:米国がイラク情勢に手一杯になり兵力も資金も使っていれば、イランが「次の標的」 にされないからだと思う。それにイランの大統領は、その力をより強大なものにしたい と考えている。レバノンでのヒズボラやパレスチナのハマスなどもやはりイランからの 支援を受けていて、その影響下にあるけれど、イラクのシーア派に梃入れすることで、影響力を拡大しようと企んでいるのだろう。これは米国にとっても都合が悪いことで、そのため米国は一度追放したバース党の党員たちを公職に復帰させるよう、イラク政府に指示した。

B:よくわからないが、米軍はイラク内戦を望んでいるのだと思う。例えば、最近たくさんの車両を使った大規模な誘拐事件が起きているが、なぜこれらの犯行グループの車は無数にある米軍のチェックポイントを通り抜けることができるのか?

C:今、サドル師はマハディ軍を統率できていないと思う。マハディ軍はあまりに巨大になりすぎた。そのメンバーの数は現在100万人に達するといわれている。しかも、マハディ軍の中には、犯罪者集団が紛れ込んでいる。だから、もはやマハディ軍はコントロール不可能だ。

D:確かにメディアは内戦を煽っている。シーア派であれ、スンニ派であれ、今のイラクのテレビ局はそのオーナーである宗教政党のプロパガンダ機関だ。シーア派系のテレビ局はテロが起きると「バース党の連中の仕業だ」と騒ぐ一方で、民兵組織の暴虐には触れない。スンニ派系テレビはその逆で、民兵組織の残虐さばかり報道し、テロに関してはほんの少ししか報道しない。一面的で偏った報道が互いに悪い印象を与えている。

Kさん(技術者):
A.イランにとっては、米軍がイラクへの対応に追われていることが、米国からの攻撃や圧 力を避ける上で重要なのだろう。それにイランは米軍が去った後、イラクを占領したい と考えているのでは。

B.民兵達がスンニ派住民を殺すことは、米軍にとっても有益なんだろうね。米軍に協力しないイラク人の数を減らすことになるのだから。米軍はスンニ派を「サダム支持層」と敵視しているから、シーア派民兵達に可能な限り、スンニ派を殺させる機会をつくっていると思う。

C.いくつかのメディアが伝えるところによれば、サドル師はバグダッドの支配権を他のシーア派政治家から約束されたらしい。それに民兵達はスンニ派住民の家財を略奪する権利を与えられている。それで貧しい若者たちが民兵組織に参加してしまうんだ。

D. イラク国営放送のイラキーヤは宗派間対立のツールだ。罪の無いスンニ派住民を番組の中で「シーア派住民を殺したテロリスト」として晒し者にする。イラク警察は捕まえたスンニ派住民に自分がテロリストであると言うことを強要するんだ。
  その一方で、あちこちに虐殺されたスンニ派住民の遺体がころがっていることは決し て報道しないんだ。


Wさん(メディア助手):
A.宗派間の対立はおそらく、1400年前にスンニとシーア、両派が分かれた頃からの問題なんだろうね。それに1980年代にイラン・イラク戦争があったことも大きいと思う。
  米軍の侵攻はイランがイラクに付け入る絶好のチャンスだった。イランに亡命してい  たイラク・イスラム革命評議会の民兵組織「バドル団」をイラクに送り込み、2003年の政権崩壊からバース党員を暗殺してきたんだ。米軍もバドル団をレジスタンス活動を封じ込めるために活用してきた。このことがイラクを分裂させたんだ。

B.宗派間対立のおかげで、イラクの人々は、この国の石油がどこにいったのか、なんて考える余裕はなくなったんだよ。だから、米国には都合がいいのさ。

C.マハディ軍の大多数はイランえ訓練され、イランの指揮下にあるということさ。

D.イラキーヤ放送のスタッフは99%シーア派で占められている。だから、その放送内容がどんなものになるか想像するのは難しくないだろ?



5)「日本の対イラク支援見直しを」国内NGOネットワークが要請

 国内8団体からなる日本イラク医療支援ネットワーク(JIM−NET)は、18日、岩屋外務副大臣に面会し、混迷を極めるイラク情勢を直視し日本の対イラク支援を根本から見直すよう、要請文を提出した。

      
      
外務省を訪問後、記者会見に応じるJVCとJIM−NETのスタッフ達

以下、日本イラク医療支援ネットワークの要請文全文。
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2006年12月18日
外務大臣  麻生太郎殿

イラク緊急事態に際し、日本のイラク支援を包括的に見直すことを要望します

2003年3月国連決議のないまま始まったイラクへの米国による武力介入は、イラクの人々に困難な生活を強いることとなりましたが、私たちは正当性を欠いた武力による他の主権国への介入とその後の軍事占領による「復興」はイラクの人々の困難を解決しないと一貫して主張してきました。
 無謀な武力介入から既に4年が経とうとしている現在、イラクの治安は悪化の一途を辿り、医薬品の提供や教育といった基本的ヒューマン・ニーズは高まるばかりです。

報道によれば、毎月約3000人以上が死亡し、二次被害も含めれば2003年3月の開戦以降、約65万人のイラク人が命を落としたとも言われています。私たちNGOは、こうした悪化する治安の中で限界を感じながらも、イラクの市民や国際協力NGOと協力しながら医療や教育の支援を続けてきました。病院で使用される医薬品のほとんどは、こうしたNGOからの支援によるものです。
 日本は、これまでイラクに対する明確なビジョンを欠いたまま、米国の武力介入に協力し、その後の「復興」においても多額のODA供与と自衛隊派遣を続けてきました。

 2003年10月マドリッドで行われた「イラク復興国際会議」において日本政府は50
ドルの無償・有償資金協力を約束し、現在までにその一部が実施されてきましたが、イラクの人々の暮らしは一向に改善される兆しを見せていません。
 私たちは、日本政府のイラク支援策を包括的に見直す必要があるのではないかと考えてます。理由は、二つあります。一つは、現在のイラクの状況をしっかりと把握して計画を見直す必要があるということ。特に、「内戦」という緊急的な状況の中にあって、いかに効果的に基本的ヒューマン・ニーズに応えるかをまず考えるべきです。二つめに、一向に安定化の兆しが見えないイラクですが、国際社会全体の関心は既に薄れ始めています。
 他国・他地域(例えばスーダン)の状況悪化に伴って、治安回復・復興の目処が立たないイラクから全体に引き気味になっています。日本は、逆に、そういう時だからこそイラクの人々のために何をすべきか考え直すべきではないでしょうか。今こそ、保護とエンパワーという「人間の安全保障」の観点から、イラクへの取り組みを再考すべきと考えます。

 12月6日、米国は超党派による「イラク研究グループ」からブッシュ大統領に向けてイラク政策の見直しを求める報告書を提出しました。報告書は「イラク政府の崩壊と人道的な大災難」の可能性を警告しつつ、米国政府のイラク政策の転換を求めています。そうした政策転換も今後、イラク情勢を大きく変化させる可能性があります。
 既に、イラクで活動するイラク並びに国際NGOの連合体であるNCCIや国連は、こうした事態の到来に備えて対応策の検討を始めています。

 日本政府は、これまでイラクの市民はおろか日本の市民に対しても、イラク支援の実状やその効果について、充分に説明責任を果たしてきたとは言えません。2003年の開戦を契機に、イラクの人々に恐怖と欠乏の毎日をもたらす事態に至ったことに対しても、何ら責任ある、かつ論理的に一貫性をもった説明を行っていません。治安状況が悪化する中で、イラクの人々の声、現場からの叫びが聞こえづらくなっています。今のイラクの状況を打開する安易な「答」はないでしょう。しかし変化する状況に漫然とこれまでの支援を続けることは、不当な戦争に協力した国の責任ある対応とは言えないと思います。
 以上のことから、イラクで活動する私たちNGOは、日本政府に対し、
1)イラクが「緊急」的な状況になるつつあることを認識し、適切な対応策の検討を始めること、
2)これまでのイラクへの対応の是非を責任ある形で見直し、改めてNGOや市民の声を聞きながら現場の状況に基づいた包括的なイラク支援策を再構築すべき、と考えます。特に、以下の3点に対しては、可及的速やかに対応されることを要望します。


【要望事項】

1.「イラク緊急状況」を踏まえての多様な支援
 =医療など基本的なニーズを満たすために、イラク政府への支援に限らず多様なルートを通しての支援をお願いします。

イラクでは現下の緊急的な状況において、基礎医療、水、食料など、生活に必要な人間の基本的なニーズが満たされていません。これまで多額の復興資金が投入されて来ていますが、2006年5月発表のユニセフの調査によると、イラク戦争前の2002年の時点で深刻な栄養失調の子どもは全体の4%だったのに対して、2005年の時点では9%に達しています。
この事例が示すように、現在の状況は2003年のイラク戦争の前に比べて悪化しています。医療に関して言えば、例えばディワニヤ県の国立産科小児科病院の修復に400万ドルが投入されていますが、未だに酸素吸入器も幼児用の注射針もアドレナリンもビタミンKもありません。 また、現場医療に関わる医師が暗殺の対象になり、これまでに2,000人の医師が殺されています。
 今や、医療システムそのものが機能不全に陥る危機に直面しています。本来はイラクの行政機関を通しての支援が復興支援の観点から重要ですが、政府内の党派対立や汚職の影響を受け、あるいは治安の悪化により政府は行政の基本サービスの責任を果たすことができない状況です。

このような状況を鑑み、日本政府に対して以下のことをお願いします。

1)イラクの現状が緊急的な状況にあると認識し、復興支援の枠組みを見直す。
2) 補正予算による追加支援を予算化し、地方施設、病院、NGOなど、多様なルートを
通して、人々の生活に不可欠な基本的なニーズを満たすための支援を実施する。


2.小児ガン・白血病など、日の当たらない分野への行き届いた支援

イラクでは1991年の湾岸戦争以降、白血病やガンにかかる子どもたちの数が増えたと言え、湾岸戦争で使用された「劣化ウラン弾」による影響が疑われています。白血病治療に必要な薬の供給が急務であることは既に専門家によって指摘されていました。その後、2003年の戦争が起こり、フセイン政権の崩壊と共に国内の治安状況は悪化の一途を辿り、保健医療を巡る環境は改善されないまま現在に至っています。
 この状況に対し、私たちNGOはイラクへの医療支援を行う日本NGOのネットワーク組織「日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)」を立ち上げ、緊急人道支援の観点から小児ガンや白血病の治療に携わる5つの専門病院へ医薬品や必要な医療機材の支援を行って来ました。活動を続ける中で、支援先の病院から頻繁に訴えられたのが、イラク保健省など政府ルートからの医薬品供給が不安定であること、特に抗ガン剤を中心とした治療薬が絶対的不足しているということです。

JIM NETのメンバーである日本国際ボランティアセンター(JVC)は2006年7月より10月にかけて、支援先であるイラクの小児ガン・白血病の専門病院における医薬品不足の状況について調査を行いました。
 調査の結果、明らかになったのは、医薬品供給に病院間で格差があるということ、また同じ病院でも医薬品の品目によって供給量に違いがあるという問題です。 相対的に状態の良い首都バグダッドの病院でも、保健省による医薬品供給は40%程度に留まり、NGOの直接支援なくして治療を継続することが困難な状況です。現場の医師も医薬品不足の問題に手をこまねいているだけでなく、入手可能な医薬品で代用したり、投与期間や用量を限定するなどの工夫を行って、患者の子どもたちの延命・治療に努めています。しかしながら、医薬品の不足は、ガンや白血病の治療薬に留まりません。診断に必要な検査試薬や成分輸血に必要な消耗品などの供給も滞っているために、全体として治療行為が限定されているのが現実です。
ガンや白血病は長期の継続的な治療が必要であり、ひとたび治療が途絶えるとこれまで現場の医師の努力によって支えられてきた患者の生命がたちまちのうちに途絶えてしまいます。その意味でこれらの病気は高度医療の分野であっても、現下のイラクの状況に置いては緊急の支援ニーズだと言うことができます。

このような事情に鑑み、以下のことをお願いします。

1)ガン・白血病の患者が湾岸戦争や経済制裁および今時の戦争の負の遺産の犠牲者であることを認識し、2) 緊急支援の方途を活用し、多様なルートを用いた支援を差し向ける。


3.「緊急的状況」において新たに発生した難民・避難民への支援とすべての難民に対する
人道的保護

2003年、イラク攻撃の際には、約2000人の難民がヨルダンの難民キャンプに収容されました。今までに1542名 が第三国定住として先進国に移住し、一部はイラク国内へ送還されました。しかし、3年9ヶ月経つ今も、難民キャンプには115名が残り厳しい環境下でテント生活を送っています。一方、最近は、イラクの治安の悪化に伴い、国内や、国境越えて、ヨルダンやシリアに避難する人たちの数が急増しています。UNHCRによると2006年2月サマラの聖廟爆破事件に単を発し、宗派対立が激化してからすでに36万5000人以上が国内避難民とし、一日あたり1000人がヨルダンへ、2000人がシリアへ避難しています。しかし、入国を拒否されるイラク人も多く、行き場を失った人たちが、ヨルダン−イラク国境の緩衝地帯(ノーマンズランド)に滞留しており、国連機関などの支援もなく、安全な水や医療にはアクセスできないでいる人も少なくありません。また、北イラクは、治安が安定しており、バグダッドなどからの避難民も増えていますが、アラブ系住民に対しての規制がはじまり、宗派対立や、武装勢力からの脅迫によって命の危険を脅かされているイラク人も多数存在します。
 一方ヨルダン国内には、70万人以上のイラク人が、主に首都アンマンで都市難民として暮らしています。ビザが切れても、危険なイラクには帰国できず、強制送還されることを恐れながら生活をつづけています。住民登録をしていない難民の子どもたちは公立学校にも行けず、医療も受けられません。妊産婦は出産に必要な費用を払えず危険な状態に陥るケースが多く、また出産することで不法滞在が発覚することへの不安も抱えています。

 イラク国内の治安が悪化の一途をたどっている今、難民や国内避難民となった人々を保護し、人道支援を拡大することが求められています。

日本政府は、2003年の開戦前から、世界大2位の経済大国に相応した難民支援を国際社会に約束しましたが、開戦直後の160帳のテント寄贈と、2003年夏に終了したJPFを通した医療支援で終わっています。私たちは難民支援に関わってきたNGO として日本政府に、難民問題の解決に責任を持つことと、現状のイラクを緊急事態ととらえ、新たに発生している難民、国内避難民の支援に真摯に取り組んでいただきたく、以下のことをお願いします。

1) 2003年のイラク戦争時に発生し、いまだにルウェイシェッド難民キャンプに残留している115名の難民の日本への受け入れ(第三国定住)を行う。あるいは、他の先進国が受け入れるように、外交的、財政的な協力を行う。
2) 新たな難民・避難民になった人々に対し、
 @シェルターとして周辺諸国に難民キャンプを設営するか、すでに存在する難民キャンプを拡大し、人道支援を行う。
 Aノーマンズランドにいる194名の難民は、シェルターとして、ヨルダン内のルウェイシェッド難民キャンプに保護するよう、ヨルダン政府と交渉にあたる。
 B周辺諸国に対して、保護が必要な難民を入国拒否しないよう働きかける。

3) 都市で暮らす難民たちの保護
ヨルダンや、シリアで暮らす都市難民たちの保護や支援のプログラムに取り組む。その際子どもの権利、障害者やジェンダー、リプロダクティブヘルスに特段の注意を払う。

                                 
日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
−日本国際ボランティアセンター(JVC)
−日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
−アラブの子どもとなかよくする会
−アジアとむすぶ市民の会・長崎
−子どもの平和と生存のための童話館基金
−イラク医療支援・通販生活
−劣化ウラン廃絶キャンペーン(CADU-JP)
−スマイルこどもクリニック






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