イラク情勢Watch vol.56 07年7月31日

         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲



Topics
1)イラク関連報道Pick up
2)激戦地ラマディで米軍と地元部族、停戦協定締結か?
3)日本のNPO法人、イラク難民への教育支援を計画中

4)イラク人医療支援スタッフ、8月から来日〜全国で講演活動〜
5)元人質、元「人間の盾」、ジャーナリストが戦場を語る



1)イラク関連報道Pick up


【07.31. CNN】イラクの3人に1人は「緊急援助」が必要 NGO報告

【07.31. AFP/時事】イラク議会、主要法案を通さず夏季休暇入り

【07.30.時事】イラク派遣延長で予備費24億円

【07.29.デイリースポーツ 】イラク初V 混乱続く母国に勇気

【07.26.日経】米国防長官「イラク撤退計画」存在認める・ヒラリー氏に書簡

【07.26.産経】イラク支援 空自機狙い砲撃か 昨秋、熱センサー作動



2)激戦地ラマディで米軍と地元部族、停戦協定締結か?

 イラク中西部、バグダッドから西に100キロ程にあるラマディは、ファルージャと並び「イラク最激戦地」として、米軍と現地武装勢力との衝突が続いてきた。ところが、最近になって現地では、ほとんど両者の衝突はなく、現地の治安は地元の自警団によって守られているのだという。

 
 全国から集められた募金を元に、ラマディやファルージャへの支援を行ってきた高遠菜穂子さんが、現地住民から聞いた話によれば、ラマディの部族指導者達が米軍との停戦を提案。米軍もこれに応じ、現在両者の間で、停戦条件の細部について、話し合いが続いているのだという。


 
 ラマディは長く続いた衝突により、著しく破壊されてしまったが、激戦地であり、イラク人の援助関係者すら、足を踏み入れるのが、極めて困難だったため、食料や水、医薬品も不足するなど、住民達は困窮していた。

 高遠さんは「現地部族と米軍の間で停戦合意が結ばれれば、ラマディ再建のための支援も行いやすくなる」と、停戦合意による治安改善を期待している。



3)日本のNPO法人、イラク難民への教育支援を計画中

  
  イラク難民を訪問する相澤代表(左端)
 
 イラクへの教育・医療支援、文化交流を行う、NPO法人PEACE ONは、隣国シリアに逃れた難民の子ども達への教育支援として、「寺子屋」をつくることを計画中だ。国連によれば、シリアには約250万人ものイラク難民達が避難している。PEACE ON代表の相澤恭行さんは、この5月にシリアを訪問、難民達のニーズを聞いて、「寺子屋」プロジェクトの必要性を感じたのだという。

 相澤さんによれば、シリアに逃げたイラク難民の子ども達は、現地の公立高校に入学することができるものの、高校生以上は在学証明書がないと受け入れられなかったり、教育課程の違いから落第したりするという問題があるのだと言う。そこで、相澤さんが私塾をつくり子ども達に勉強を教える「寺子屋」プロジェクトを提案したところ、難民達からも要望があり、新プロジェクトとしてスタートさせることを決めた。既にPEACE ONのイラク人スタッフがシリアに入り、同国政府との活動許可の交渉を始めており、早ければ、この秋にも「寺子屋」を始める計画だという。



4)イラク人医療支援スタッフ、8月から来日〜全国で講演活動〜
 
 日本イラク医療支援ネットワーク(JIM−NET)の現地人スタッフ、イブラヒムさんが、イラクの医療状況を伝えるため、この8月に初来日する。イブラヒムさんはイラク南部の大都市バスラの出身で、1970年生まれ。2005年1月、パートナーのミリアムさんを白血病で亡くした。
ミリアムさんの治療のため、訪れていたイラク隣国ヨルダンで、JIM−NETの日本人スタッフと出会い、以後、現地スタッフとして、白血病や癌の治療薬をバスラ等の病院に届けるコーディネーターとして活躍中。

 イブラヒムさん(JIM-NETのHPより)

 以下、JIM−NET事務局長、佐藤真紀さんからのメールを転載。
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         イブラヒム先生、初来日!
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 JIM-NETでは、この夏、バスラ(イラク南部の街)からイブラヒムを招聘します。なぜ、イブラヒムなのか?

 イラク戦争から、4年たった今、イラク保健省は、まったく建て直しができていません。戦争したら経済制裁もなくなり、病院の設備も直してあげよう、石油もたくさん買ってあげようと約束したのは、ブッシュ大統領と、ブレア英首相(当時)小泉首相(当時)でした。 しかし、この約束は一体どうなったのでしょう?
日本のODA(=政府開発援助) は、無償の15億ドルはすべて使いきり、残りの35億ドルは円借款です。戦争で壊したのは、わたしたちなのに、金を貸してやるから、病院など直して、後で返しなさい!ていうのはひどい話ですね。イラクを攻撃する理由がまったく正当でなかったとわかったわけですから、日本は、補償しなければいけないくらいです。

 イラクでは、大変なことになっています。援助のお金もそこをつき、薬が足りません。 JIM-NETでは、年間4000万円以上の資金を集め、薬を届けていますが、かなり厳しいです。イラクは来年もよくなるとは思えませんから、JIM-NETの支援は、しばらくは必要です。日本ではイラクの関心が薄まり、募金を集めるのも限界が見えてきてきています。
もうイラクのことも忘れられているのでしょうか?
そこで、急遽、イラクを思い出してもらおうとバスラからイブラヒムを呼ぶことになりました。がんの子どもを救うのにはお金がいるのです。

●○●イブラヒム・ツアーの見どころ、聞きどころ●○●

【1】 地方各地を周ります!
8月6日に来日。東京、大阪、北海道、九州、四国、松本等を周ります!
スケジュールの詳細は、
< http://www.jim-net.net/notice/07/notice070712.html>
でご確認ください。

【2】 『イブラヒムの物語』が絵本になりました!
 妻を白血病で失ったイブラヒムは、失意のどん底に…。アメリカ人や、日本人、ヨルダン人などの親切な人たちの出会いで、奮起したイブラヒムは、危険なイラクに戻っていきます。
オールカラー・32ページ、白血病の子どもが描いた絵をフォトショップで加工し、物語にあわせて編集しました。会場で600円で販売します。
詳しくは以下のブログをご覧ください。
< http://kuroyon.exblog.jp/ >

【3】 エネルギーを節約して、戦争に頼らない日本に!
イラク戦争を支持した理由=石油の確保!それでいいのでしょうか?エネルギー資源のために他国を攻撃していいのでしょか? 日本はかつて資源欲しさに、第2次世界大戦では大陸に進出していきました。同じ過ちを、日本は犯しているのではないでしょうか?
 原子力発電は安全で省エネ???その放射性廃棄物が、武器として転用されています。劣化ウラン弾がそれです。結果イラクの子どもたちの間にガンが増えています。まず、冷房をとめてみましょう。イラクでは50度を超える中、冷房をつける電気がありません。
そこで、イラクではうちわが重宝しています。今回は、会場で冷房をとめて、イラクのうちわを使って、省エネ、エコを考えてみましょう。

☆イブラヒム先生来日についての問い合わせはこちら
eメール:info-jim★jim-net.net (★を@に変えて送信してください。)

☆ツアーのボランティアも募集していますので気軽に連絡をください。

佐藤真紀
JIM-NET事務局長

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5)元人質、元「人間の盾」、ジャーナリストが戦場を語る〜8月9日、新宿でトークショー〜

 この8月9日、東京は新宿で、04年4月の日本人拘束事件の被害者の渡邉修孝さん、03年のイラク開戦時に、市民の被害を軽減するべく、バグダッドの浄水場に立て篭もった「人間の盾」に参加し、その後イラク支援のためNPO法人を立ち上げた相澤恭行さん、そして本コーナー編集人の志葉玲によるトークショーが行われる。

 戦争経験者が少なくなる一方、机上の理論で戦争が語れることが目立つ中で、「戦争経験者」である3人が、自らの戦場体験から、平和について語るという催し。




 詳しくは以下、ご参照(文責:渡邉さん)。
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「戦場で培った謀反」を企てよう!
戦場からPEACEを伝えよう!

焼け跡の戦後から60年余りの間、日本だけは憲法に規定された「戦争の放棄」を提唱する第9条によって、この国が戦争の当事者になることなく黄昏の時代を送ることができた。しかしながら、最近の傾向では、与党・自民党が憲法の改悪どころか防衛省から元制服組の軍人を議会に送り込み、国民を戦時体制に引き擦り込もうと目論むプロパガンダづくりに躍起になっているではないか。私たちは今、この流れにクサビを打ち込むためにも黄昏の時代の本質を捉え返し、みずからのフィールドから根源的な議論を開始しなければならない。

 過去、外国の戦争遂行に協力した与党政権に反対する、平和を求める多くの人々が度重なる反戦運動を担ってきた。その、壮絶なるたたかいの軌跡は素直に評価できる。だが、残念なことに一部の運動主体は、実際の戦場の実感を知ることなく運動の分裂と再編を繰り返し、みずからが組織された暴力の体現者となる者すら現れた。そして、本来なら、戦後の焼け跡から再生した平和主義の理想を語るべき一部の政治家や活動家たちは、平和運動を「色ちがいの旗ざお」程度にしか捉えていない現在の有様だ。
 保身と利己になびく運動は、仲間割れと尻すぼまりに終わる。あとは為政者の思う壺だ。歴史が証明しているではないか。

 実際に赴いた世界の戦場体験から平和主義の真理を模索する試みは稀であろう。そこで根源的な議論を進められるのなら、むしろ黄昏の時代を貪る「平和ボケ」の国軍創設を目指す人々か、或いは、戦争による理不尽な暴力や略奪などが存在することすら理解できないヒキコモリ主義者へ送る一服の「毒」になることすら望む。
 今こそ、この滞留したどん底社会に謀反を企てよう!

日時  8月9日(木曜日 ) 18:30開場:19:00開始〜22:30

場所  新宿区百人町1-5-1百人町ビル1階 (西武新宿駅北口1分 / JR新宿東口10分)
      TEL 03-3205-1556 / FAX 03-5287-9177
      Web Site http://www.loft-prj.co.jp/naked/
      携帯 site http://www.loft-prj.co.jp/i/naked
   
   営業  ¥1500(+1drinkから)
        ★LAST ORDER  FOOD&DRINK AM 1:30
        ★CLOSED AM 2:00

出演者:プロフィール

相澤恭行(NPO法人 PEACE ON 代表)
1971年生まれ。宮城県出身。96年まで音楽を中心に活動。その後アイルランド留学等を通じて国際交流に力を入れる。
2003年2月「イラク国際市民調査団」、3〜4月米英軍によるイラク攻撃の最中「HUMAN
SHIELDS」 (人間の盾)に参加してバグダード陥落まで滞在。
2003年10月再びイラクを訪れNGO「PEACE ON」を設立。バグダード在住の現地スタッフとともに、障がい児へのスクールバス支援や文化交流活動を始める。国内では各地講演会やイラク現代アート展を中心に活動。現在、イラク国外難民支援企画として、イラク周辺国に滞在する戦争避難民の家庭や経済的事情によって学校に通えない子どもたちに就学の機会を与えるための「寺子屋プロジェクト」を進行中。
 共著に『いま問いなおす「自己責任論」』(新曜社)がある。

志葉 玲(フリージャーナリスト)
1975年生まれ。番組制作会社を経て2002年からフリーに。主に戦争と平和、環境、人権、NGO等をテーマに活動中。
イラク戦争/占領では2002年末から2004年夏まで5回、現地取材を敢行、その後も取材で得た人脈を活かし情報を発信。05年春と冬にインド洋大津波被災地、06年夏にレバノン侵攻を現地取材。主に雑誌や新聞で記事を執筆する他、テレビ局や番組制作会社に映像を提供したり、コメンテーターとしてメディアに登場することも。講演活動も全国各地で行っている。現在、ドキュメンタリー映画を撮るべく構想を練っている。
 著書に『たたかうジャーナリスト宣言』(社会批評社)がある。

渡邉修孝(フリーター)
1967年生まれ。栃木県出身。
高校を卒業後、陸上自衛隊第一空挺団に入隊。満期退職後、陸上自衛隊板妻駐屯地へ再入隊後退職。90年にビルマ少数民族のカレン族解放闘争にオブザーバーとして現地視察。以後、様々な社会運動を経て、2000年から1年間をレバノンに政治亡命中の元日本赤軍、岡本公三氏の生活介助ボランティアに就く。帰国後、04年から「米兵・自衛官人権ホットライン」の「在イラク自衛隊監視センター」スタッフとして、イラク現地で自衛隊の調査・ 監視活動にあたる。同年4月、現地の武装勢力に拘束され、解放後帰国。近々、パレスチナと周辺国へ現状視察に行く予定。
  著書に『戦場イラクからのメール』『戦場で培った非戦』(社会批評社)がある。

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