イラク情勢Watch vol.66 08年6月30日

         発行:フォーラム平和・人権・環境  編集:志葉 玲



Topics
1)イラク関連報道Pick up
2)イラク駐留恒久化?―米イ両政府が協議、サドル師派は反発
3)航空自衛隊、イラクでの活動継続か、撤退か―国連安保理決議の期限切れで
4)米軍が殺害したイラク人市民の映像
5)イラク国内・国外避難民への救済を―イラク支援NGOグループが声明
6)イラク等での拷問はラムズフェルド前国防長官の指示―米上院で指摘
7)日本イラク医療支援ネットワーク、南部バスラへ11回目の給水活動



1)イラク関連報道Pick up


【08.06.30 CNN】ブッシュ政権、対イラン秘密作戦を強化か 米誌報道

【08.06.29 奈良】イラク小児科医 母国の現状訴え-奈良

【08.06.27 ロイター】米上院が1618億ドルのイラク戦費法案を可決、撤退時期は盛り込まず

【08.06.27 日経】イラク、油田改修で外資と合意へ

【08.06.25 共同】投資拡大へ経済フォーラム 日本とイラク、官民が参加

【08.06.23 共同】イラク軍、自立になお時間 治安は大幅改善と米軍高官



2)イラク駐留恒久化?―米イ両政府が協議、サドル師派は反発


イラクの多国籍軍駐の根拠となる国連安保理決議1790が今年末に切れるため、米国・イラク両政府は、米軍駐留継続の地位協定の締結について協議している。だが、その内容は非常に米国側に都合のいい条件であり、スンニ派政党やサドル師派というような米軍の長期駐留に反対している勢力は反感を強めている。


現在協議中の地位協定では、米軍が自由にイラクで作戦行動を行えるという。

 複数のメディアで報じられた地位協定の内容は、「58の米軍基地を恒久化」「米軍はイラクで自由に作戦行動を行える」「制空権を米軍に認める」「米軍はイラク側の承認なしに脅威と思われる人物を拘束できる」「米軍の人員はイラク当局から起訴されない」「免責特権を民間軍事企業にも認める」というもの。

 今月25日、ブッシュ大統領と会談したイラクのタラバニ大統領は、「地位協定の交渉は前進している」と発言。一方、サドル師派は結果によっては武力行使も辞さない構えだ。現在、サドル師派の民兵組織・マハディ軍は、同派リーダーのムクタダ・サドル師の命令により、米軍と停戦しているが、「もし、米軍の駐留が長期化するのであれば攻撃を再開する」とけん制している。



3)航空自衛隊、イラクでの活動継続か、撤退か―国連安保理決議の期限切れで

 日本政府は今月13日の閣議で、イラクでの航空自衛隊の活動期限の1年延長を決定したが、国連安保理決議1790の期限切れの問題もあり、「空自の活動は終了の可能性が強い」と谷垣禎一自民党政調会長が発言した様に、与党内でも「年内撤退」論が広がりつつあるなど、実際にその活動を継続できるかは、不透明な状況だ。


通算700回目のイラク運行を伝える空自のHP

 共同通信が報じたところによれば、日本政府はイラク政府と、自衛隊のイラクでの活動について地位協定を結ぶ方向で協議する予定だという。だが、米国とイラクでの地位協定の締結も難航している中で、日本との地位協定締結にイラク政府が応じるかは不透明だ。日本の国会でも、野党が反発することは確実で、今秋の米大統領選の結果によっては、イラクからの米軍の早期撤退の可能性もあるだけに、空自のイラク派遣の継続はかなりハードルが高いといえる。



4)米軍が殺害したイラク人市民の映像

 イラク系ニュースサイト「URUK NET」は27日、米兵によって殺害されたイラク市民の映像を公開した。この映像は、先月20日、イラク中北部サラハディン州バイジ市近郊の村で撮影されたもの。URUK NETの記事によれば、これらの犠牲者達は、米軍の刑務所から解放された被拘束者を祝うパーティーに向かう親戚や隣人達で、乗っていた車が、近くで掃討作戦を行っていた米軍に銃撃され、そこへ米軍ヘリがさらに攻撃を加えられたという。米兵達は、生存者を助けることもせず、冷酷に銃殺し、遺体の額に数字を書いたのだと言う。映像を見てわかる通り、7人の犠牲者の中には少年や少女もいた。米軍兵士達がなぜ彼らを攻撃したかは不明。

注:非常にショッキングな映像なので、視聴する際は心構えを。

米兵に殺害されたイラク市民の映像




5)イラク国内・国外避難民への救済を―イラク支援NGOグループが声明

イラク国外80の団体、国内200の団体で構成されるNGOの調整委員会であるNCCI(NGOs Coordination Committee in Iraq)は、26日、国際社会に対してイラク国内・国外避難民への救済を求める声明を発表した。


イラク北部クルド人自治区では、非常に大勢の人々が避難生活を送っている。

 声明では、この5年間の戦乱でそれまでの住処を追われたイラクの人々は国内270万人、国外で200万人、5人に一人のイラク人が避難生活を送っていることを指摘。また、近隣の国々に移住したイラク人の多くが、日常的に追放の危機に直面しており、貯金も使い果たして、非常に困窮しているにも関わらず、国際的な支援はごくわずかであると訴えている。
米国や当局や多くの報道機関が「イラク情勢は以前よりも改善された」としているのにも関わらず、避難民が元いた地域へ戻ることは困難だという。避難のため放置された住居の7割は、その後別の人が住み着いたり、対立する宗派・グループが混在していた地域では、破壊されていたりしている。現在の「治安の改善」がまだまだ脆弱な基盤の上にあり、状況が急変する恐れもある中で、避難民達は彼らが体験してきたあまりの恐怖から、帰還することをためらっているという。中でも、戦前、国外からイラクへ来て定住したグループ(スーダン人、パレスチナ人、トルコ人など)は特に迫害の対象となっており、帰還が困難となっている。また、コミュニティが完全に破壊された元の住処へ戻るよりは、むしろ移住先のコミュニティに融和しつつあるのも、避難民が帰還をしぶる理由ともなっている。

 NCCIは、イラク政府や国際社会の避難民や彼らを受け入れている地域への支援が無い限り、地域の安定性や福祉、イラクの社会への希望といったものに、深刻な悪影響を及ぼすと警告している。とりわけ深刻な避難民達の経済的困窮や食料不足などは、イラク政府や国際社会がなすべきことをなさなかった怠慢の結果であると批判。この問題をイラク政府が国家の最重要課題として取り組み、国際社会もそれを支援するよう訴えている。



6)イラク等での拷問はラムズフェルド前国防長官の指示―米上院で指摘


 
 
流出したアブグレイブでの虐待写真

 イラクやアフガニスタン、グアンタナモでの米軍刑務所で行われていた捕虜への拷問は、ラムズフェルド前国防長官が全米軍とその法律顧問に対して指示したものだった…今月18日付けのミドルイースト・オンラインが報じたところによると、同月17日、米上下院軍事委員会でカール・レビン議員が調査結果を報告。「虐待は一部の看守たちの暴走」とのブッシュ政権の主張に反し、2002年から米防衛・諜報関係者の間では、水攻めや性的虐待、軍用犬を使った脅迫や感覚遮断などの拷問の技術が盛んに議論されていた、と明らかにした。
 また、レビン議員は、米軍内の弁護士達が拷問に対し強い違和感を表したのに対し、CIAの対テロ主任顧問が「被拘束者が死ぬなら、それは間違った手法だ」と、殺しさえしなければ、拷問しても良いとの見解を示したとの証言を紹介。さらに、グアンタナモ刑務所の幹部が刑事告発を恐れて、拷問を許可する文書をラムズフェルド国防長官に求めたところ、2002年12月2日付けで、提案されたほとんどの拷問を許可する文書が返ってきたことから、「ラムズフェルド前国防長官が許可したことにより、拷問はバラ撒かれたウイルスの様にイラク、アフガニスタン、グアンタナモの刑務所で蔓延した」と指摘した。



7)日本イラク医療支援ネットワーク、南部バスラへ11回目の給水活動

 日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)は、インフラ復旧の遅れから深刻な水不足が続いているイラク南部バスラで、産科小児科病院への給水支援をこの4月末から続けている。今月4日までの給水活動は11回、総量は352トン、費用は2,326ドル。イラクに関する報道量の低下と共に、日本でのイラク情勢への関心は低下の一方だが、「むしろ、支援の必要性は以前にも増している」と佐藤真紀JIM-NET事務局長は語る。これから、イラクでも暑さが本格化するが、気温50度を超える世界でも最も高温となる地域だけに、安全な水の供給は極めて重要だ。

JIM-NETはイラク支援への寄付金を常時、募っている。詳しくは同団体のサイトか事務所への電話問い合わせで。
http://www.jim-net.net/

電話:03-6228-0746  
eメール:info-jim★jim-net.net (★を@に変えて送信)

       



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